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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X30 |
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管理番号 | 1377900 |
審判番号 | 取消2019-300222 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2019-03-22 |
確定日 | 2021-08-17 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2719036号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第2719036号商標の指定商品中、第30類「パスタ」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第2719036号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの態様からなり、昭和63年4月23日に登録出願、第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成9年1月31日に設定登録され、その後、指定商品については、同20年5月21日に第30類「パスタ及び調理済みパスタ」とする書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。 そして、本件審判の請求の登録日は、平成31年4月8日であり、その請求の登録前3年以内の平成28年4月8日から同31年4月7日までの期間を以下「要証期間」という場合がある。 第2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品中、第30類「パスタ」(以下「請求に係る指定商品」という場合がある。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきである。 2 答弁に対する弁駁 被請求人提出の証拠は、本件商標が要証期間に使用された事実を立証していない。 (1)乙第1号証について 乙第1号証は、本件商標権者とPasta ZARA S.p.A社(以下「PastaZARA社」という。)との関係を示すものであるが、本件商標が要証期間に使用されたことを立証するものではない。 (2)乙第2号証について 本件商標は、円形図形の内部に畑及び空の絵柄が描かれ、これが小麦の束を抱えている女性の図柄と一体的に構成されている一方で、納品書に記載された商標には当該円形図形並びに小麦畑及び空の絵柄がない(または、赤一色の帯状の図形に変わっている、ともいえる)のであるから、その全体的構成において、互いに大きな差異があるというべきである。加えて、納品書に記載された商標には、『pasta ZARA』の欧文字が記載された横長の楕円形部分の下に、イタリア国旗が一体的に結合している点においても、本件商標とは異なる。さらに、本件商標は全体的に黒ずんでおり、女性の図柄の細部の認識が困難であるところ、納品書に記載された商標は鮮やかに着色され、図柄は明瞭になっており、両商標に記載された女性の図柄は一見して同一視できるものではない。 これらの相違点は、「社会通念上同一」といえるものではない。 また、当該カタログには、発行日付がなく、また日本国内で頒布されたかも明らかではない。 (3)乙第3号証及び乙第4号証について 乙第3号証及び乙第4号証の「納品書」には、それぞれ2017年10月7日付及び2018年9月21日付で、PastaZARA社が日本国所在の会社に対し、パスタに相当する商品「スパゲッティ」を納品したことがうかがえるとしても、当該納品書に使用されている商標は、同社のカタログ記載のものと同一であるところ、上記したとおり、「社会通念上同一」といえるものではない。 (4)乙第5号証ないし乙第7号証について 乙第5号証ないし乙第7号証においては、本件商標権者が2018年及び2019年の「FOODEX JAPAN」に出展したことは認めるが、本件商標が請求に係る指定商品について要証期間に使用されたことを立証するものではない。 (5)まとめ 以上のとおり、被請求人は、本件商標を要証期間に日本国内において、請求に係る指定商品について使用したということはできない。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とすると答弁し、その理由及び弁駁に対する回答(審決注:当合議体は被請求人が提出した令和2年11月19日付け審判事件弁駁書を回答書として取扱う。)を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第10号証を提出した。 1 本件商標権者は、要証期間に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を請求に係る指定商品「パスタ」に付し、当該商品に本件商標を付したものを譲渡等し、さらに商品に関する広告、取引書類等に本件商標を付して頒布等してきた事実がある。 (1)要証期間における本件商標の使用 ア 本件商標権者(旧名称)は、2010年、イタリアのパスタ等の大手生産業者、かつ、輸出業者であるPastaZARA社との間で、本件商標の商標権の独占的通常使用権を許諾する旨の契約(以下「商標ライセンス契約」という。)を締結した(乙1、乙8)。 この商標ライセンス契約における、ライセンスの対象商標は「PASTA ZARA」等であると記載されており、本件商標は「PASTA ZARA」の一態様である。また、ライセンスの対象商品は「食品・食品加工部門に関連する商品」等であることが記載されているところ、「パスタ」は、「食品」の一種類であることから「食品に関連する商品」に該当する。この商標ライセンス契約を補完するための本件商標権者作成の「宜誓書」(乙9)においては、商標ライセンス契約の対象に本件商標登録第2719036号「pasta ZARA」が含まれることが明記されている。 これらのことから、PastaZARA社は、本件商標の通常使用権者である。 イ この契約に基づいて、PastaZARA社は、本件商標を、PastaZARA社製品のブランドとして使用してきた。例えば、「CATALOGO GENERALE」(「一般カタログ」)と題されたPastaZARA社のカタログ(乙2)には、本件商標と同一の構成要素からなる商標が、カタログ表面の中央に、大きく目立つように表示されており、スパゲッティ、リングイネ等様々な「パスタ」の出所標識として使用されている。 このカタログ表面中央に記載されたこの商標は、「pastaZARA」の欧文字部分と文字部分を取り囲む横長の楕円形部分、及び小麦の束を抱えている女性の図柄部分において本件商標と全く同一であるから、本件商標とでは、構成上、本件商標と外観において同視されるべきものである。よって、カタログに記載された商標は本件商標と社会通念上同一の商標である。 したがって、乙第2号証のカタログにおいて使用されている商標は、本件商標と外観において同視でき、本件商標と社会通念上同一の商標である。また、当該カタログにおいて、商標が、「パスタ」に関して、独立して自他商品識別力を発揮する態様で使用されているのは明らかであり、かかるカタログにおける本件商標と社会通念上同一の商標の使用は、「商品・・・に関する広告・・・に標章を付して展示し、若しくは頒布・・・する行為」に該当する(商標法第2条第3項第8号)。また、カタログ2枚目に、実際に国内で販売されている商品「パスタ」に本件商標が付された写真が掲載されているが、これは、商標法第2条第3項第1号の「商品又は商品の包装に標章を付する行為」に該当する。 ウ 納品書(乙3、乙4)において、PastaZARA社から、日本国所在の会社に対し、スパゲッティ等の「パスタ」が納品されたことが示されている。 当該納品書に記載された商標は、小麦の束を抱えている女性の図形部分、 「pastaZARA」の欧文字部分とそれを取り囲む横長の楕円形部分であり、商標の識別機能を発揮するこれらの構成要素が、本件商標と同一であり、確かに女性の背景、イタリア国旗及び欧文字の有無においてわずかに差異が認められるものの顕著な差異であるとはいえず、これらは商標の同一性を損なうものではない。 よって、当該納品書における本件商標の使用は、「商品・・・に関する・・取引書類に標章を付して展示し、頒布・・・する行為」に該当し(商標法第2条第3項第8号)、これは要証期間の国内使用である。また、当該納品書に表示された、本件商標と社会通念上同一の商標が付された「パスタ」は、実際に国内の会社に納品されており、これは、「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し・・・行為」(商標法第2条第3項第2号)に該当する。 また、仮に当該納品書において使用されている商標が社会通念上の同一性の範囲を超えるものであると認められるとしても、「Company profile 2015」(「2015年の会社案内」)と題されたPastaZARA社の会社案内(乙10)の表紙に用いられている商標は、麦の束を抱えている女性の図形部分、「PastaZARA」の欧文字部分と文字部分を取り囲む横長の楕円形部分に加えて女性の背景が本件商標と同一であるうえに、本件商標と同様にイタリア国旗及び欧文字は表示されておらず、各構成要素は同一である。このことから両商標は同一視されるべきものであり(取消審決2016-300574、2016-300575)、乙第10号証において使用されている商標は本件商標と社会通念上同一の商標であることは明らかである。また、乙第10号証には同社の各種パスタ商品が紹介され、商標が、独立して自他商品識別力を発揮する態様で使用されているのは明らかであり、第7ページ目には当該商品が日本においても流通していることが示されていることから、本件商標と社会通念上同一の商標の使用は、「商品・・・に関する広告・・・に標章を付して展示し、若しくは頒布・・・する行為」に該当する(商標法第2条第3項第8号)。 したがって、PastaZARA社のカタログ及び納品書(乙2?乙4)に示される商標は本件商標と社会通念上同一と認められるものであり、仮にこれが本件商標の社会通念上同一性の範囲内にないとしても、同社の会社案内(乙10)に示される商標は本件商標の社会通念上同一であると認められるべきものであり、本件商標について使用されるものである。 エ PastaZARA社は、直近では、2018年度及び2019年度の「FOODEX JAPAN」に出展を行い、パスタ、ホールトマト等を含む商品に本件商標を付して宣伝・広告を行った(乙5?乙7)。 よって、本件商標が、「パスタ」について要証期間に国内で独立して自他商品の識別力を発揮する態様で使用されてきたことは明らかである。 2 まとめ 以上のことから、本件商標権者、通常使用権者が、日本国内において本件商標と社会通念上同一と認められる商標を「パスタ」について、商標法第2条第3項第1号、同項第2号及び同項第8号の使用をしている。 第4 当審の判断 1 被請求人は、本件商標と社会通念上同一の商標を要証期間内に本件審判の請求に係る指定商品である第30類「パスタ」に使用していると主張しているので、以下検討する。 (1)請求人及び被請求人が提出した証拠によれば、以下のとおりである。 ア 2010年6月1日に「FFAUF S.A.」(本件商標権者の旧名称)と「PastaZARA社」とが締結した商標ライセンス契約において、「FFAUF S.A.」が「PastaZARA社」に対して「PASTA ZARA」等の商標を、乾燥パスタ等について使用するためのライセンスを付与し、また、この契約は2010年6月1日から10年間有効である旨の記載があることから、この契約は要証期間内において有効であるということができる(乙8)。 イ 本件商標権者による、宣誓書(2020年10月)には、上記商標ライセンス契約を補完するものとして、当該契約における商標登録及びその商標登録の全指定商品を含む旨宣誓し、その商標登録の一つとして本件商標及びその登録番号が記載されている(乙9)。 ウ PastaZARA社のカタログの表紙には、小麦の束を抱えた女性やイタリア国旗の一部と思しき図形並びに欧文字を内包する一部を湾曲させた薄い茶色の縁取の赤色長方形図形を背面にした、「pastaZARA(ZARAの右上には小さい円形内にRの文字あり。以下同じ。)」の欧文字を内包する白い縁取の赤色楕円形図形(以下「使用商標1」という。)が表示されており、女性の図形の背景には何も描かれていない。また、当該カタログには、乾燥パスタが掲載されている(乙2)。 エ PastaZARA社の作成に係るとされる納品書の写しには、その上部に、使用商標1とほぼ同じ構成及び色彩の商標(以下「使用商標2」という。)が表示されており、使用商標1に比べて小さめに表された女性の図形の背景には何も描かれていない。 また、当該納品書の中程に「spaghetti」の文字が記載されている(乙3、乙4)。 オ PastaZARA社の会社案内の表紙には、小麦畑と思しき図形を背景に、使用商標1と同様に、小麦の束を抱えた女性の図形並びに「pastaZARA」の欧文字を内包する白い縁取の赤色楕円形図形(以下「使用商標3」という。)が表示されているものの、本件商標のように赤色楕円形に架かる円形図形は描かれていない。また、当該会社案内には、同社のカタログと同様に、乾燥パスタが掲載されている(乙10)。 カ PastaZARA社は、「FOODEX Navi2018」及び「FOODEX Navi2019」に出展し、そこで、「パスタ・ザラ」と称する展示ブースにおいて乾燥パスタのような商品を陳列していることはうかがえるものの、本件商標の表示は確認できない(乙5?乙7)。 2 判断 (1)本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。以下同じ。)の使用者について 本件商標権者は、2010年6月にPastaZARA社と、商標「PASTA ZARA」等についてライセンス契約を締結したところ、当該商標は、使用商標1ないし使用商標3と構成文字を共通にするものであるうえに、要証期間外ではあるものの宣誓書において、上記ライセンス契約には本件商標が含まれることを宣誓していることからすれば、PastaZARA社に対して本件商標の使用を許諾したものといえる。 そうすると、PastaZARA社は、本件商標権者から通常使用権を許諾された通常使用権者と認めて差し支えない。なお、この点について、請求人は争っていない。 (2)使用商標について ア 本件商標 本件商標は、別掲1のとおり、小麦の束を抱えた女性の図形を内包する円形図形を背面にした、「pastaZARA」の欧文字を内包する楕円形図形からなるものであって、女性の図形の背景には、小麦畑と思しき図形が描かれている。 イ 使用商標 使用商標1は、別掲2のとおり、また、使用商標2は、別掲3のとおり、共に、小麦の束を抱えた女性の図形やイタリア国旗の一部と思しき図形並びに欧文字を内包する一部を湾曲させた赤色長方形図形を背面にした、「pastaZARA」の欧文字を内包する白い縁取の赤色楕円形図形からなるものであって、女性の図形の大きさ及び欧文字等は異なるものの、両者の構成及び色彩はほぼ同じである。 また、使用商標3は、別掲4のとおり、小麦畑と思しき図形を背景に、小麦の束を抱えた女性の図形並びに「pastaZARA」の欧文字を内包する白い縁取の赤色楕円形図形からなるものである。 以下、使用商標1ないし使用商標3をまとめて、使用商標という。 ウ 本件商標と使用商標との社会通念上の同一性 本件商標と使用商標1及び使用商標2とは、小麦の束を抱えた女性の図形及び「pastaZARA」の欧文字を内包する楕円形図形は共通にするものの、当該女性の背景及び当該楕円形図形に架かる円形図形の有無に明らかな差異を有し、外観において同視される図形とはいえないものであるから、使用商標1及び使用商標2は、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることはできない。 また、本件商標と使用商標3とは、小麦の束を抱えた女性の図形及びその背景並びに「pastaZARA」の欧文字を内包する楕円形図形を共通にするものの、当該楕円形図形に架かる円形図形の有無に明らかな差異を有するものである。さらに、本件商標は当該円形図形があることによって、女性の図形及びその背景と当該楕円形図形とが、まとまりよく看取、把握され得るものであるのに対し、使用商標3は、当該円形図形が描かれていないうえに、当該女性の図形が比較的大きく描かれており、本件商標とは異なった印象を需要者等に与えるというべきであるから、両者は、外観において同視される図形ということはできない。 そうすると、使用商標3は、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることはできない。 エ 小括 したがって、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることはできない。 (3)取扱い商品について PastaZARA社が、同社のカタログ及び会社案内に乾燥パスタを掲載していることから、同社が乾燥パスタを取扱っており、また、乾燥パスタは請求に係る指定商品に含まれるものであることからすれば、同社は、請求に係る指定商品を取扱っているものと認めることができる。 3 小括 上記によれば、PastaZARA社は本件商標の通常使用権者と認められ、請求に係る指定商品を取扱っていることは認められるものの、同社が、本件商標を使用した事実を認めることはできない。 また、被請求人が提出した証拠において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、要証期間内に、請求に係る指定商品について、本件商標の使用をしていたことを認めるに足る証拠はない。 4 まとめ 以上のとおり、被請求人は、要証期間内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る指定商品について、本件商標の使用をしていることを証明したものと認めることはできない。 また、被請求人は、本件商標を請求に係る指定商品について使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。 したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その指定商品中の結論掲記の指定商品について、その登録を取り消すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 1 本件商標 2 使用商標1(色彩は原本参照。) 3 使用商標2(色彩は原本参照 。) 4 使用商標3(色彩は原本参照 。) |
審理終結日 | 2021-03-04 |
結審通知日 | 2021-03-11 |
審決日 | 2021-04-08 |
出願番号 | 商願昭63-46871 |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Z
(X30)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 薩摩 純一 |
特許庁審判長 |
齋藤 貴博 |
特許庁審判官 |
小田 昌子 岩崎 安子 |
登録日 | 1997-01-31 |
登録番号 | 商標登録第2719036号(T2719036) |
商標の称呼 | パスタザラ、ザラ |
代理人 | 田島 壽 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 外川 奈美 |
代理人 | 福井 孝雄 |
代理人 | 小暮 君平 |