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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 |
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管理番号 | 1376989 |
異議申立番号 | 異議2021-900001 |
総通号数 | 261 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2021-09-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-01-04 |
確定日 | 2021-08-16 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6303404号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6303404号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6303404号商標(以下「本件商標」という。)は、「リカバリー」の片仮名と、「recovery」の欧文字とを、いずれも普通に用いられるセリフが付いた書体で、上下二段に横書きしてなり、令和元年12月27日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服」を指定商品として、同2年9月7日に登録査定、同年10月13日に設定登録されたものである。 第2 登録異議申立人が引用する商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立ての理由において、引用する国際登録第1350101号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、2016年4月21日にスペイン国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2016年(平成28年)10月14日に国際商標登録出願、第23類「Yarns and threads for textile use.」、第24類「Fabric and cloth in the form of rolls; textile piece goods for use in manufacture; cloth for making clothing articles; bed and table linen.」及び第25類「Clothing, footwear [other than special footwear for sports], headgear.」を指定商品として、平成30年6月8日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するから、その登録は同法第43条の2第1号の規定により、取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証(枝番号を含む。)を提出した。 以下、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。 1 申立人及び引用商標の周知著名性について (1)申立人について 申立人は、スペインを拠点とする紡績企業である。1914年にスペインで生地工場を開業したことに始まり、1947年には生地からリサイクルコットン糸を作る技術を開発した。2006年に、申立人は、ブランド「RECOVER」を立ち上げ、2014年から本格的に販売を開始、「ZARA」、「H&M」など多くのアパレル関連企業に商品を提供している。 (2)申立人に係る商品について 2011年から2021年までの11年間の申立人に係る商品の我が国における輸入量及び輸入額は、総計約26万キログラム及び100万ユーロ(約1億4千万円)であり、近年、申立人に係る商品が我が国において相当数輸入されていることがうかがえる。 また、申立人に係る商品は、有名ブランドや有名セレクトショップなど、多様なメーカー、ショップで取り扱われている(甲5)。 さらに、申立人は、我が国において積極的かつ継続的に宣伝広告活動を展開しており、雑誌や新聞で特集、紹介がなされている(甲6)。 2 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標について 本件商標は、上下二段の段組み構成からなり、上段には片仮名「リカバリー」を表示し、下段には欧文字「recovery」を、上段と同様の書体で表示してなるものである。 そして、本件商標を構成する欧文字「recovery」は、「取り戻すこと、回収」などを意味する名詞形の英語であり(甲7)、その意味は、英語を母国語としない我が国においても相当程度知られており、英語「recovery」の表音表記である上段の片仮名も、我が国においては非常になじみのある語であるから(甲8)、本件商標からは、「取り戻すこと、回収」程の観念が想起され、その構成文字に相応して「リカバリー」の称呼が生じる。 (2)引用商標について 引用商標は、欧文字「recover」からなり、その書体は、中央部の「o」を除き、格別に顕著な態様ではなく、商標全体で統一された印象を与えるものであって、中央部の「o」の文字が、反時計回りに半円を描く2つの矢印によって構成されているものの、離隔的に観察した場合、引用商標を構成する他の文字「r」、「e」、「c」、「v」、「e」、「r」の並びの中で、違和感なく存在しており、引用商標に接した看者をして直ちに「recover」の語を看取させる。 してみれば、引用商標を構成する「recover」の語は、「取り返す、取り戻す、回収する」という意味の動詞形の英語であり(甲7)、英語を母国語としない我が国においても、その意味は広く知られているから、引用商標からは、「取り返す、取り戻す、回収する」程の観念が生じ、その構成文字に相応して「リカバー」の称呼が生じる。 (3)本件商標と引用商標の類否について 両商標の外観について検討すると、本件商標下段の「recovery」の文字と引用商標の「recover」の文字とは、品詞が相違するのみで、語源を同じくする英語であり、名詞形「recovery」と動詞形「recover」のつづりの相違は、外観上看過されやすい語尾の「y」の文字の有無のみである。また、本件商標上段の「リカバリー」の文字は、下段の欧文字の片仮名表記にすぎないので、両商標の比較においては、有意な差異を看者に与えるほどの要素とはなり得ない。 また、引用商標中の「o」の文字は図案化されているが、通常に看取され得る程度の図案化であって、「recover」の文字を直ちに看取することに疑いはなく、本件商標と引用商標の外観上の類否において、当該「o」の文字の図案化は、有意な差異を構成するものではない。 以上を整理すると、本件商標の欧文字部分と引用商標は、品詞が異なるだけの語源が同じ英語であることに加え、商標の識別において、外観上、最も大きな影響がある語頭からの最初の7文字が共通しており、差異点は、最も看過されやすい語尾の「y」の文字の有無のみである。その他の外観上の相違点は、本件商標の片仮名及び引用商標中の「o」の文字の図案化があるが、本件商標の片仮名は、下段の欧文字の表音表記にすぎず、また、引用商標中の「o」の図案化は、「o」を容易に看取させ得る程度のものであるから、時と場所を異にする離隔観察において、これらの差異は、有意な差異として取引者・需要者に看取されるものではなく、本件商標と引用商標は、外観において相紛れるおそれがある。 次に観念について検討すると、本件商標からは「取り戻すこと、回収」程の観念が想起されるところ、引用商標からは、「取り返す、取り戻す、回収する」程の観念が生じる。厳密にいえば、本件商標から生じる観念は名詞形であり、引用商標から生じる観念は動詞形である点において両商標は相違するものの、簡易迅速を尊ぶ取引の実際において、一般の取引者・需要者が、英語の品詞の区別にまで想到して取引に当たるとは考え難く、観念上、これら品詞の相違が、取引者・需要者に有意な差異として認識されることはないから、称呼上の近似性を考慮すれば、両商標は、観念において相紛れるおそれがある。 最後に、称呼について検討すると、本件商標からは「リカバリー」の称呼が生じ、引用商標からは「リカバー」の称呼が生じるところ、両商標は、称呼の識別上、最も重要な語頭からの最初の3音「リ」、「力」、「バ」を共通にし、それぞれ5音、4音(長音を含む。)の構成音数のうち、語頭からの3音を共通にするから、外観上及び観念上の近似性を考慮すれば、両商標は、称呼において相紛れるおそれがある。 (4)指定商品の類否について 本件商標の指定商品中、第25類「被服,履物」は、引用商標の指定商品中、第25類「Clothing, footwear[other than special footwear for sports], headgear.」と同一又は類似である。 さらに、申立人による引用商標の実際の使用(甲9)において、引用商標は、「被服」等の商品のタグや包装に顕著に目立つ態様で表示されていることから、取引の実情の観点からも、本件商標と引用商標は、本件商標に係る指定商品「被服」等について出所混同が生じる蓋然性が高いことは明らかである。 (5)小括 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。 3 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)本件商標と引用商標との類似性の程度について 本件商標と引用商標は、上記2(3)のとおり、外観、観念、称呼において相紛れるおそれのある類似の商標である。 (2)引用商標の周知度について 上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時までに、申立人の業務に係る商品の出所識別標識として広く親しまれていたことは明らかである。 (3)引用商標の独創性等について 引用商標を構成する「recover」の文字は、我が国でよく知られた英語ではあるが、本件商標の指定商品との関係においては、当然に識別力を有し、その意味において、申立人による引用商標の採択は、十分独創的な行為である。 (4)引用商標がハウスマークであるかについて 引用商標を構成する「recover」の文字は、申立人の名称「Recover IPCo, LLC」の要部である。よって、引用商標は、実質的に申立人のハウスマークである。 (5)申立人における多角経営の可能性について 本件においては、本件商標に係る指定商品「被服」等と引用商標が使用される商品は共通しているので、当該要件を検討する必要性はない。 (6)商品間の関連性、商品等の取引者・需要者の共通性について 本件商標に係る指定商品「被服」等と引用商標が使用される商品は共通しており、よって、取引者・需要者も共通している。 (7)小括 本件商標は、上記(5)を除く全ての要件において、商品の出所について誤認混同が生じるおそれがある。また、取引の実情においても、引用商標は、顕著に目立つ態様で商品タグや商品包装に表示されているため、本件商標がその指定商品「被服」等に使用された場合、その使用態様は、引用商標の使用態様と同様のものになる蓋然性が高く、本件商標に接した取引者・需要者が、本件商標に係る商品について、申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同するおそれがある。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。 第4 当審の判断 1 引用商標の周知性について 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。 申立人は、1914年(大正3年)開業のスペインを拠点とする紡績企業であり、約70年前からリサイクルコットン糸を生産している(甲4、甲6)。また、2006年(平成18年)に、「RECOVER」のブランドを立ち上げたこと(甲4、甲6)、及び2019年(平成31年)2月25日(甲5の7)、同年(令和元年)8月13日(甲5の8)、2020年(令和2年)5月22日(甲5の10)及び同年9月7日(甲5の6)の日付のウェブサイトにおいて、引用商標又は「RECOVER」の文字を使用したリサイクルコットン糸を素材とする被服、タオル及び靴下等が掲載されている。 なお、申立人は、上記以外に、引用商標又は「RECOVER」の文字を使用したリサイクルコットン糸を素材とするTシャツ等の商品を掲載したウェブサイト(甲5の2?甲5の5、甲5の11?15)を提出しているが、これらは、2021年(令和3年)2月5日を掲載日、同年3月31日又は同年4月1日を印刷日とするものであり、これらはいずれも本件商標の登録査定後の日付である。 また、2017年(平成29年)1月、同年9月、2018年(平成30年)4月には、申立人及び申立人に係るリサイクル糸についての新聞記事が掲載された(甲6の2?甲6の4)。 しかしながら、申立人から、2011年(平成23年)から2021年(令和3年)までの申立人に係る商品の我が国における輸入量及び輸入額について主張はあるものの、これを裏付ける客観的な証拠の提出はなく、当該輸入実績が申立人の主張どおりであるとしても、その輸入総額は、11年間で1億4千万円と、年間にして1千万円程度であるから、決して高いものとはいい難く、その他、申立人に係る商品の売上高、販売数、市場シェア等の販売実績及び広告宣伝の実績も確認することができない。 そうすると、申立人に係る商品に使用されている引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 2 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標について 本件商標は、前記1のとおり、「リカバリー」の片仮名と、「recovery」の欧文字とを、いずれも普通に用いられるセリフが付いた書体で、上下二段に横書きしてなるところ、当該文字は、「取り戻すこと。」(「ベーシックジーニアス英和辞典」大修館書店)の意味を有する平易な英語であるから、本件商標からは「リカバリー」の称呼及び「取り戻すこと。」の観念を生じるものである。 (2)引用商標について 引用商標は、別掲のとおり、「rec」の欧文字、曲線状の矢印を2つ組み合わせてなる「o」状の図形及び「ver」の欧文字を連結してなるところ、いずれも太字で同じ大きさ及び等間隔をもって表され、視覚上、まとまりある一体的なものとして看取されるものであり、また、「recover」の欧文字が「・・・を取り戻す。」(「ベーシックジーニアス英和辞典」大修館書店)の意味を有する平易な英語であることから、「o」状の図形はアルファベットの「o」を図案化したものと把握、理解されるものといえる。 そうすると、引用商標は、「o」の欧文字を図案化した「recover」の欧文字からなるものと認められ、その構成文字に相応して、「リカバー」の称呼を生じ、「・・・を取り戻す。」の観念を生じるものである。 (3)本件商標と引用商標との類否について 本件商標と引用商標は、それぞれ前記(1)及び前記(2)のとおりの構成よりなるところ、商標全体としては、片仮名及び図形の有無等により、外観上、明らかに区別できるものである。 また、本件商標と引用商標の欧文字部分とを比較してみても、本件商標においては、普通に用いられるセリフが付いた書体で表されているのに対して、引用商標においては、セリフなしの書体で、「o」の欧文字は特徴的にデザイン化された態様で表されている上、両商標は、末尾における「y」の欧文字の有無という差異もあることから、看者に与える印象が大きく異なるものであって、外観上、明らかに区別できるものである。 次に、称呼においては、本件商標から生じる「リカバリー」の称呼と、引用商標から生じる「リカバー」の称呼とを比較すると、両称呼は、4音又は5音(長音を含む。)という比較的短い音構成中、その4音目において、「リ」の音の有無の差異を有することから、この差異が称呼全体の音調、音感に与える影響は大きいといわざるを得ないものであって、両商標は、十分に聴別し得るものである。 そして、観念においては、本件商標からは、「取り戻すこと。」の観念が生じ、引用商標からは、「・・・を取り戻す。」の観念が生じるところ、これらの語は、上記のとおり、いずれも平易な英語であるから、観念において、相紛れるおそれはない。 したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念において相紛れるおそれはないから、非類似の商標というべきである。 (4)小括 上記のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との類否について判断するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第15号該当性について 前記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして取引者・需要者の間に広く認識されていると認めることはできないものである。 また、前記2のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、その類似性は高いものとはいえない。 そうすると、たとえ本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品とは関連性があり、その需要者を共通にする場合があるとしても、本件商標に接する取引者・需要者が、引用商標を連想又は想起することはないというのが相当である。 してみれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者・需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 4 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものではなく、その登録は同条第1項の規定に違反してなされたものとはいえないものであり、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲(引用商標) |
異議決定日 | 2021-08-04 |
出願番号 | 商願2019-169042(T2019-169042) |
審決分類 |
T
1
651・
263-
Y
(W25)
T 1 651・ 271- Y (W25) T 1 651・ 261- Y (W25) T 1 651・ 262- Y (W25) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 白鳥 幹周、上山 達也 |
特許庁審判長 |
中束 としえ |
特許庁審判官 |
杉本 克治 黒磯 裕子 |
登録日 | 2020-10-13 |
登録番号 | 商標登録第6303404号(T6303404) |
権利者 | タキヒヨー株式会社 |
商標の称呼 | リカバリー |
代理人 | 門田 尚也 |
代理人 | 杉村 光嗣 |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 長嶺 晴佳 |