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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z01
管理番号 1373927 
審判番号 取消2020-300214 
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2020-03-23 
確定日 2021-04-19 
事件の表示 上記当事者間の登録第4323796号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4323796号商標(以下「本件商標」という。)は、「FAST FIX」の欧文字を標準文字で表してなり、平成10年3月16日に登録出願され、第1類「化学品,のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。)」並びに第7類及び第16類に属する商標登録原簿記載の商品を指定商品として、同11年10月8日に設定登録され、その後、同21年10月13日及び令和元年5月21日に商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録は、令和2年4月21日になされたものであり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、平成29年(2017年)4月21日から令和2年(2020年)4月20日までの期間(以下「本件要証期間」という。)である。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中、第1類「のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。)」(以下「取消請求商品」という。)についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証(以下、証拠の表記に当たっては、「甲(乙)第○号証」を「甲(乙)○」のように、「第」及び「号証」を省略して記載する。)を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、取消請求商品について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により、取消しされるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、本件商標が使用されている商品として「荷崩れ防止接着剤」なる商品を示し、これが取消請求商品に該当する商品であると解釈しているようである。
(2)しかし、この「荷崩れ防止接着剤」なる商品は、以下のとおり、そもそも取消請求商品とは非類似の商品である。
ア 従来から、農産物、水産物等の食品や各種工業製品等は、段ボールやカートン等の紙器に詰められ、それらが積み重ねられた状態で輸送、貯蔵等されている。しかし、単に積み重ねただけでは、振動、傾き等により滑りが生じ、荷崩れを起こすおそれがある。そこで、これを防止する手段として、段ボール同士をシュリンクフィルム等で固定する方法と段ボールの表面に防滑剤(粘着性のものと非粘着性のものがある。)を塗布する方法がある(甲3)。
この点、乙2ないし乙7において、「荷崩れ防止接着剤」なる商品につき、「ストレッチフィルム及びホットメルト接着剤等の荷崩れ防止剤の代替え品としてご利用いただけます。」とうたわれ、乙1の2において、「材質はシリカを主体とする安全性の高い水溶液です。」とうたわれていることからすると、甲3の記載と相まって、この「荷崩れ防止接着剤」なる商品は、段ボールの表面に塗布される非粘着性の防滑剤と推認できる。
そうだとすると、「荷崩れ防止接着剤」なる商品とは、段ボール箱と段ボール箱を微弱かつ一時的に接着させることを手段として、積み上げられた段ボール箱の荷崩れを防止することを目的とする商品であり、その本質は、正に化学的製品を用途的にとらえた「化学剤」にほかならない。
もちろん、「化学剤」を用途的にとらえた結果として、他類又は同類の他の商品に該当する例(例えば、せっけん類、陶磁器用釉薬等)もあるが、「荷崩れ防止接着剤」なる商品が取消請求商品に該当すると解釈する余地はない。
なぜならば、「JISハンドブック(29)接着」(甲4)は、「接着剤」を「物体の間に介在することによって物体を結合することのできる物質。」と定義し、ブリタニカ国際大百科事典、デジタル大辞泉及び百科事典マイペディア(甲5)といった通常の百科事典や国語辞典における定義も、概ねこれと変わりないことからすると、そもそも「接着剤」は、物体を結合させること自体を本質ないし用途としているのであるから、「荷崩れ防止接着剤」なる商品が有する微弱かつ一時的な接着性及び滑り止めとしての用途まで、この「接着剤」の本質・用途に含めて解釈することには、極めて大きな無理があるからである。
イ 判例は、「不使用取消審判の請求の対象となっている登録商標を現実に使用している商品が当該登録商標の指定商品に該当するか否かは、単にその名称、表示等の形式のみによって判断すべきではなく、当該商品の取引者及び需要者の判断を基準として実質的に判断すべき」とする(東京高裁昭和60年5月14日判決(昭和57年(行ケ)第67号))。
したがって、乙1の1ないし乙7に「接着剤」という語句の記載があるにもかかわらず、本件商標は取消請求商品について使用されていないとする請求人の主張は、判例も否定するものではない。
また、同判例によると、「荷崩れ防止接着剤」なる商品が取消請求商品に該当するかどうかは、その取引者及び需要者の判断を基準とすべきこととなるが、専門的にも一般的にも広くかつ統一的に認識されている接着剤の定義(甲4及び甲5)を壊してまで、取引者及び需要者が「荷崩れ防止接着剤」なる商品を取消請求商品に該当すると認識しているとは、到底思えない。
したがって、「荷崩れ防止接着剤」なる商品は、取消請求商品ではなく、化学的製品を用途的にとらえた「化学剤」であるとする請求人の主張は、判例も否定するものではない。
ウ 平成7年審判第20394号審決は、「補正後の本願商標の指定商品である『積まれた紙箱の水平方向での滑り又は移動を抑制するけれども、垂直方向には離れ易い、紙箱の接触面を破損させない程度の粘着性のある、紙箱の表面に塗布して使用する、コーティング用特別製の合成物』は、出願人の商品説明(願書に添付された公開特許公報等)によれば、『紙箱の表面に塗布して使用する水平方向滑り止め用粘着性の化学剤』と認められるものである。そして、上記商品は、引用商標の指定商品中の『化学品』に含まれること明らかである。」としている。
かかる指定商品は、その機能及び用途の点で、「荷崩れ防止接着剤」なる商品と全く同一であるが、前記審決は、これを「化学剤」と認定し、「のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。)」と認定していない。
粘着性はあるものの、その性質・強度、さらには、その用途を勘案した結果、「化学品」に属する「化学剤」と認定したものと推認される。
したがって、かかる判断と同一の判断が、かかる指定商品と機能及び用途を同一にする「荷崩れ防止接着剤」なる商品にも、なされてしかるべきである。
(3)以上のとおり、被請求人が本件商標を使用した商品であるとする「荷崩れ防止接着剤」なる商品は、当該商品の実質的判断、接着剤の定義、判例及び特許庁の審決からして、取消請求商品とは非類似の「化学剤」であるから、被請求人は、取消請求商品について本件商標の使用義務を果たしていないとみるべきであり、本件商標の取消請求商品についての登録は、取り消されてしかるべきものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙1ないし乙7(枝番号を含む。)を提出している。
1 答弁の理由
本件商標の商標権者(以下、単に「商標権者」という。)は、本件商標を、本件要証期間内に継続して、日本国内において、取消請求商品について使用しているものであるから、本件商標の取消請求商品についての登録は、商標法第50条第1項の規定に基づき取り消されるべきものではない。
2 被請求人の主張
(1)商標権者が本件商標を使用している事実
ア 被請求人(商標権者)は、被請求人のウェブサイトの会社案内のページ(乙1の3)に記載されているとおり、荷崩れ防止用塗布システム及び荷崩れ防止剤の製造販売を目的として、平成8年(1996年)に設立された法人である。
そして、被請求人は、当該「荷崩れ防止用塗布システム及び荷崩れ防止剤」として、具体的には、被請求人のウェブサイト(乙1の1)に記載される「荷崩れ防止接着剤&塗布システム」を製造販売している。
この「荷崩れ防止接着剤&塗布システム」は、例えば、乙1の1の右側の動画又は乙1の2の動画に示されるように、缶ビール等を収容した段ボール箱をコンベアで搬送しながら、その上面に荷崩れ防止接着剤をローラで塗布するシステムである。
そして、荷崩れ防止接着剤が塗布された段ボール箱の上面は摩擦係数が高められるので、段ボール箱をパレット上に数段に重ねて搬送する場合でも荷崩れが防止できることを特徴とする(乙1の1の「ストレッチフィルムなし荷崩れの心配なし!」の文の上の写真参照。)。
なお、「荷崩れ防止接着剤&塗布システム」は、その名のとおり、荷崩れ防止接着剤と、その塗布装置とから構成されるシステムであり、前者は後者の消耗品に該当する。
前者の「荷崩れ防止接着剤」は、乙1の2の第1葉の下部に、「荷崩れ防止接着剤 FASTFIX 製品一覧」というタイトルの下、「段ボール・クラフト袋用」、「樹脂フィルム・樹脂シート用塗布液」、「再接着タイブ荷崩れ防止剤塗布液」及び「瞬間接着タイプ荷崩れ防止剤塗布液」と列挙され、その下の「納入単位」に「200kg(樹脂ドラム缶)」と記載されることから、消耗品として塗布装置とは別に販売されていることが分かる。
なお、「荷崩れ防止接着剤」は、各証拠で「荷崩れ防止剤」及び「荷崩れ防止剤塗布液」と表示している場合もあるが、同じ物である。
イ 被請求人の製造販売に係る前記「荷崩れ防止接着剤&塗布システム」のリーフレット(乙2)は、乙1の2の赤字で示された「クリックして詳細をご覧ください」の下にある画像をクリックすることでPDFファイルとして入手することができる。
乙2のリーフレットには、最上段右に、「FAST FIX」が大きな太文字書体(FASTが横縞入り赤字でFIXが青字)で表示されており、3段目には白地に大きな青文字で「再接着 荷崩れ防止接着剤・塗布システム」と記載されている。
そして、乙2のリーフレットの最下欄の「ファーストケミカル株式会社」の会社名の上にも「FAST FIX」がブロック体(FASTが赤字でFIXが青字)で表示されている。
ウ 以上から、被請求人は、商品に関するリーフレット(広告または取引書類)に本件商標を付けて展示もしくは頒布し、または、これらを内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供することを通じ、本件商標を使用している。
(2)本件商標の使用が取消請求商品について行われている点
前記(1)イでも述べたとおり、乙2のリーフレットの3段目には、白地に大きな青文字で、「再接着 荷崩れ防止接着剤・塗布システム」と記載され、さらに、その下の5段目には、「FAST FIXは、物流資材のゴミの削減を実現する水性タイプの荷崩れ防止剤です。ストレッチフィルム及びホットメルト接着剤等の荷崩れ防止剤の代替え品としてご利用いただけます。ゴミの発生のない環境にやさしい接着剤です。その材質は、安全性の高い水溶液です。自動塗布システムは飲料メーカーの高速生産ラインにも対応し、多くのパッカー様でご利用いただけます。」と記載されている。
したがって、乙2のリーフレットから、「FAST FIX」の商標が荷崩れ防止用の接着剤について使用されていることは明らかである。
また、乙2のリーフレットの5段目には、前記のように「自動塗布システムは飲料メーカーの高速生産ラインにも対応し、多くのパッカー様でご利用いただけます。」と記載されていることから、乙2でいう「荷崩れ防止用の接着剤」は、生産ラインで使用されるものであって、事務用又は家庭用のものでないことも明らかである。
したがって、被請求人は、本件商標を取消請求商品について使用している。
(3)本件商標の使用が本件要証期間内に継続して行われている点
乙2は、答弁書提出時点において乙1の2に示す被請求人のウェブサイトから入手可能なものであるが、同様の内容の広告が、日報ビジネス株式会社発行の雑誌「食品包装」2020年1月号第64巻第1号、通巻810号(2020年1月1日発行)の広14頁等(乙3ないし乙7)に掲載されている。
そして、乙3ないし乙7は、いずれも、本件要証期間内に発行されたものである。
したがって、被請求人は、本件商標を本件要証期間内に継続して使用している。
(4)本件商梗の使用が日本国内において行われている点
乙3ないし乙7は、日本語で記載され、日本の出版社である日報ビジネス株式会社によって発行された雑誌「食品包装」に掲載された広告であり、我が国での取引において使用されるものであることは、それ自体、明らかである。
したがって、被請求人は、本件商標を日本国内において使用している。
(5)むすび
以上、乙1ないし乙7に基づいて詳述したとおり、本件商標は、本件要証期間内に継続して、日本国内において、商標権者が、取消指定商品について、使用しているものであるから、その登録は、商標法第50条第1項の規定に基づき取り消されるべきものではない。

第4 当審の判断
1 認定事実
被請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。
(1)2020年1月1日に日報ビジネス株式会社が発行した月刊誌「食品包装」(第64巻1号)の頁番号不詳の頁には、「ゴミゼロ対策を解決するための 再接着荷崩れ防止接着剤・塗布システム」の見出しの下、「荷崩れ防止剤塗布システム」及び「FAST FIX(当審注:「X」の欧文字の右肩に小さく「TM」の欧文字が付されている。以下同じ。)は、物流資材のゴミの削減を実現する水性タイプの荷崩れ防止剤です。ストレッチフィルム及びホットメルト接着剤等の荷崩れ防止剤の代替え品としてご利用いただけます。ゴミの発生のない環境にやさしい接着剤です。その材質は、安全性の高い水溶液です。自動塗布システムは飲料メーカーの高速生産ラインにも対応し、多くのパッカー様でご利用いただけます。」と記載されており、当該頁の末行に、「FAST FIX」の欧文字及びその下にやや大きく「ファーストケミカル株式会社」の文字並びにその住所、電話番号その他の連絡先が記載(以下、これらの記載を「本件記載」という。)され、荷崩れ防止接着剤とこれを塗布する装置から構成される商品の写真が掲載されている(乙3)。
また、同月刊誌の104頁には、「(毎月1回1日発行)」との記載がある。
(2)2019年10月1日発行の同誌(第63巻10号)の広12頁(乙4)、2019年1月1日発行の同誌(第63巻1号)の広6頁(乙5)、2018年1月1日発行の同誌(第62巻1号)の広6頁(乙6)及び2017年8月1日発行の同誌(第61巻8号)の広26頁(乙7)には、前記(1)と同じ記載がある。
2 判断
前記1において認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用商標について
本件記載は、その内容によれば、商品名が「FAST FIX」の欧文字(以下「使用商標」という。)の商品を広告宣伝するものであることが、明らかである。
このように、使用商標は、「FAST FIX」の欧文字からなるものであるところ、本件商標は、前記第1のとおり、「FAST FIX」の欧文字を標準文字で表してなるものであって、両者は同一のつづりからなるものである。
よって、両者は、社会通念上同一の商標といえる。
(2)使用商品について
本件記載によれば、使用商標が付されている商品(以下「使用商品」という。)は、「荷崩れ防止剤」であるとともに、「ゴミの発生のない環境にやさしい接着剤」であると認められるから、使用商品は、荷崩れ防止剤として用いられる接着剤であり、使用商標は、当該接着剤の名称として使用されていると認められる。
そして、本件記載中、「自動塗布システムは飲料メーカーの高速生産ラインにも対応し、多くのパッカー様でご利用いただけます。」との記載によれば、当該接着剤は、生産工場等で使用されるものといえるから、事務用又は家庭用の接着剤ではない。
このように、使用商品は、事務用又は家庭用でない接着剤に該当するといえるから、取消請求商品の範ちゅうに属する商品である。
(3)使用者について
本件記載には、前記1(1)で認定したとおり、被請求人の名称及びその連絡先が記載されているから、使用商標の使用者は、被請求人である商標権者である。
(4)使用時期及び使用行為について
本件記載は、前記(1)及び(2)によれば、使用商品に関する広告であって使用商標を付されたものといえる。そして、本件記載は、前記1(1)の認定のとおり、2020年1月1日発行の月刊誌「食品包装」に掲載されたものであるところ、当該日付は本件要証期間内であり、また、使用者は、前記(3)のとおり、被請求人である。さらに、同月刊誌は、毎月1回発行されていることからすれば、同雑誌発行後に購読者に対して頒布されたことが推認される。そうすると、被請求人は、本件要証期間内である2020年1月1日に、使用商品に関する広告に使用商標を付して頒布したものと推認される。
加えて、前記1(2)の認定によれば、被請求人は、当該日付に加えて、2019年10月1日、同年1月1日、2018年1月1日及び2017年8月1日にも、同様の使用行為をしたといえるところ、これらの日付も、本件要証期間内である。
よって、被請求人は、本件要証期間内において継続して、使用商品に関する広告に使用商標を付して頒布したと認められる。
(5)小括
以上によれば、本件商標の商標権者は、本件要証期間内において、「のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。)」の範ちゅうに属する「荷崩れ防止剤として用いられる接着剤」について、使用商品に関する広告に本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標を付して頒布したと認めることができる。
そして、この行為は、商標法第2条第3項第8号にいう「商品に関する広告に標章を付して頒布した行為」に該当する。
3 請求人の主張について
請求人は、使用商品である「荷崩れ防止接着剤」なる商品は、段ボールの表面に塗布される非粘着性の荷崩れ防止剤であり、当該商品の実質的判断、接着剤の定義(甲3ないし甲5)、判決例及び特許庁の審決例からすれば、「のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。)」とは非類似の「化学剤」である旨主張する。
しかしながら、「ウィスカーを主体とする段ボール箱防滑剤」の表題の論文(甲3)によれば、荷崩れを防止する手段として用いられる防滑剤に粘着性のものと非粘着性のものがあるとしても、乙3ないし乙7には、使用商品が荷崩れ防止剤であると同時に、荷崩れ防止「接着剤」であることが明記されていることからすれば、使用商品は荷崩れ防止を目的とした接着剤として取引に資されている商品であって、取引者、需要者も同様の認識をしているものとみるのが相当であり、使用商品の材質がシリカであるからといって、当該商品が接着剤ではないということはできないものである。また、「JISハンドブック 29 接着」(甲4)の「接着剤」の項に「物体の間に介在することによって物体を結合することのできる物質」と記載され、ウェブサイトの辞書(甲5)に、「2つの物体の接合に用いられる物質」等と記載されているところ、使用商品は、塗布することにより、二つの段ボール箱を接着(接合)し、荷崩れを防止する商品といい得るものであるから、上記「接着剤」に該当しない商品であるとはいい難いものである。
さらに、請求人の挙げる判決例において、「不使用取消審判の請求の対象となっている登録商標を現実に使用している商品が当該登録商標の指定商品に該当するか否かは、単にその名称、表示等の形式のみによって判断すべきではなく、当該商品の取引者及び需要者の判断を基準として実質的に判断すべき」とされているとしても、使用商品は上記のとおり、取引者及び需要者が「荷崩れ防止を目的とした接着剤」と認識している商品というべきであり、加えて、請求人の挙げる審決例の商品が使用商品と同一の商品と認めるに足る証拠はない。
そして、請求人は、使用商品の本質は、化学的製品を用途的にとらえた「化学剤」にほかならない旨主張するが、ある商品が二つの指定商品の範ちゅうに属する二面性を有することはあり得るから、仮に、使用商品が「防滑剤」の範ちゅうに属すると認められる場合であっても、そのことから、取消請求商品の範ちゅうに属しないとの結論が当然導かれるとは限らず、よって、検討されるべきは、使用商品が取消請求商品の範ちゅうに属するか否かである。そして、使用商品が取消請求商品の範ちゅうに属することは、前記2(2)で認定したとおりである。
したがって、上記請求人の主張は、認めることができない。
4 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標の商標権者が、その請求に係る商品に含まれる使用商品について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしたことを証明したということができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

審理終結日 2020-11-20 
結審通知日 2020-11-27 
審決日 2020-12-11 
出願番号 商願平10-21542 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Z01)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 木村 一弘
特許庁審判官 山村 浩
中束 としえ
登録日 1999-10-08 
登録番号 商標登録第4323796号(T4323796) 
商標の称呼 ファーストフィックス 
代理人 井出 正威 
代理人 鈴木 礼至 

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