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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない W01
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W01
管理番号 1373888 
審判番号 不服2020-9306 
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-04 
確定日 2021-04-14 
事件の表示 商願2018-107318拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「使い切り」の文字を標準文字で表してなり、第1類「化学品」を指定商品として、平成30年8月24日に登録出願され、その後、本願の指定商品については、原審における令和元年10月8日付け手続補正書により、第1類「使い切りタイプの化学用試剤,使い捨てタイプの化学用試剤」に補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
本願商標は、「使い切り」の文字を標準文字で表してなるところ、該文字は、「一度だけ使って捨てること、使い捨て」程の意味合いを表すものである。
そして、近年、商品を取り扱う分野において、容器からの移し替えによる異物・雑菌の混入を防いだり、洗浄の手間を省く等の理由により、使い捨ての容器が使用されている実情があり、必要な分量だけを容器に入れた使い捨ての化学品も製造・販売されている実情がある。
そうすると、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する需要者・取引者は、該商品が「使い捨ての化学品、一度だけ使って捨てる量の化学品」程の意味合いを認識するにとどまり、単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示するにすぎず、自他商品の識別標識としては認識しないとみるのが相当である。
したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
また、出願人は、本願商標が、商標法第3条第1項第3号に該当する商標であっても、使用をされた結果、需要者が出願人の業務に係る製品であることが認識できるものであり、同条第2項の規定に基づき、商標登録を受けることができる旨等を述べている。
しかしながら、商標登録出願された商標が、商標法第3条第2項の要件を具備し、登録が認められるか否かは、商標の使用態様、使用数量(生産数、販売数等)、使用期間、使用地域、並びに広告宣伝の規模等を総合勘案して、出願商標が使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものと認められるか否かによって決すべきところ、出願人の挙げるウェブサイトでは、上記のような裏付けとなる事実が不明であり、他にこれを認めるに足りる資料も見出すことができないから、本願商標が使用された結果、出願人の商品であることを認識することができるに至っているものと認めることができず、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備しない。

3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、前記1のとおり、「使い切り」の文字を標準文字で表してなるところ、該文字は、「全部使ってしまうこと。一度で使い切れる大きさの包装などにもいう。一度だけ使って捨てること。使い捨て。」の意味を有する語(別掲1参照)として、一般に広く知られているものである。
そして、本願の指定商品である「使い切りタイプの化学用試剤,使い捨てタイプの化学用試剤」を含め、化学品を取り扱う業界においては、例えば、原審において示した別掲2に加えて別掲3に示す例のように、一度で使い切れる使い切りの商品が一般に製造、販売されており、その商品紹介において「使い切り」「使い切りタイプ」「使い切りサイズ」のように説明されている実情が少なからず見受けられる。
そうすると、「使い切り」の語からなる本願商標をその指定商品である「使い切りタイプの化学用試剤,使い捨てタイプの化学用試剤」に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、本願商標について、一度で使い切れる使い切りの商品であること、すなわち、商品の品質を表したものとして看取、理解するにとどまり、商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識することはないとみるのが相当である。
してみれば、本願商標は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて
ア 商標法第3条第2項について
商標法第3条第1項第3号から第5号に該当する商標について、同法第3条第2項所定の「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」に至ったか否かを判断するに当たっては、当該商標と外観において同一と見られる標章が指定商品又は指定役務とされる商品又は役務に使用されたことを前提として、その使用開始時期、使用期間、使用地域、使用態様、当該商品又は役務の販売数量又は売上高等及び当該商品又は役務やこれに類似した商品又は役務における当該商標又は標章に類似した他の標章の存否などの事情を総合的に考慮すべきものといえる(知的財産高等裁判所 平成27年(行ケ)第10019号、平成27年10月29日判決参照)。
また、同法第3条第2項にいう「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」とは、同法第3条第1項第3号ないし第5号に該当する出所表示機能を欠く商標であっても、永年使用されることにより、特定の者の出所表示としてその商品又は役務の需要者の間で全国的に認識されるに至っている(特別顕著性がある)をいうと解される(知的財産高等裁判所平成19年(行ケ)第10127号、平成19年11月22日判決参照)。
そして、請求人は、本願商標について、商標法第3条第1項第3号に該当するものであっても、その使用がされた結果、需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識することができるに至った商標であるから、同条第2項の規定により、商標登録を受けることができるものである旨主張し、その証拠方法として、製品カタログ、販売店一覧、販売記録を提出しているため、本願商標が同条第2項の要件を具備するかについて、上記判決に照らし、以下、検討する。
イ 商標の使用状況に関する事実について
(ア)使用開始時期及び使用期間
請求人は、令和2年6月4日付け審判請求書において、「昨年7月31日より、使い切り試薬シリーズとして、日本薬局方対応容量分析用標準液の販売を開始」した旨主張するところ、当該主張によれば、令和元年(2019年)7月31日から、「使い切り試薬シリーズ」の販売が開始されたこととなるが、そのことを裏付ける証拠は何ら提出されていない。
また、請求人の提出に係る「販売記録(2019年4月1日?2020年3月31日)」には、見出しに「販売記録(2019年4月1日?2020年3月31日)」との記載があるところ、当該販売記録に記載された製品に本願商標が使用されていたかは証拠上明らかでなく、また、仮に、請求人が、2019年4月から本願商標を使用した商品を販売していたとしても、その販売期間(使用期間)は2年にも満たない。
(イ)使用地域
請求人の提出に係る「販売店一覧」によれば、請求人の製品を取り扱う提携販売店は、全国に295社存在することが認められるものの、そのことのみをもって、直ちに、本願商標を使用した使い切り試薬シリーズ(以下「請求人商品」という。)が全国的に流通しているとはいい難く、その他、これらの販売店において、本願商標を使用した請求人商品が販売されている事実を確認することができる証拠の提出はない。
(ウ)使用態様
請求人の提出に係る「医薬品試験用 使い切り試薬シリーズ」と称する製品カタログ(2020年3月作成とおぼしきもの。)には、商品の説明として「使い切り可能な少量包装」との記載がある(1葉目)。また、「pH標準液(JCSS)」と称する商品の説明として「1回使い切りであるため、試薬開封後の安定性を確認する必要がありません」「使い切りサイズであるため、開封後の交差汚染・劣化リスクの心配がありません」との記載がある(2葉目)。さらに、「日本薬局方対応 容量分析用標準液」及び「残留溶媒試験用試薬」と称する商品の説明として「<使い切り試薬>廃棄量低減・保管スペースの有効活用」との記載がある(3葉目及び4葉目)。
(エ)商品の販売数量及び市場占有率等
請求人は、2019年4月1日ないし2020年3月31日の間に、提携販売店75社を通じて、「使い切り試薬シリーズ」全体で1,590個を販売した旨主張するが、当該期間の販売記録とする、「販売記録(2019年4月1日?2020年3月31日)」に記載された製品には、上記(ア)のとおり、本願商標が使用されていたかは明らかでないから、当該記録にある合計本数が請求人商品の販売数であると直ちに認めることはできない。また、他に当該主張を具体的に裏付ける証拠の提出はなく、その他、本願商標を使用した請求人商品の売上高、売上げの多寡を評価し得る市場占有率等の証拠の提出はない。
(オ)広告宣伝等の方法、期間、地域及び規模
請求人は、上記(ウ)のとおり、「医薬品試験用 使い切り試薬シリーズ」と称する製品カタログを作成しているが、当該カタログの頒布時期、頒布地域(頒布先)、頒布部数を認めるに足りる的確な証拠はない。
また、請求人は、請求人ウェブサイトにおいて製品情報を掲載している旨主張するものの、それを具体的に裏付ける証拠の提出はなく、掲載内容の詳細については明らかでないことに加え、請求人ウェブサイトの閲覧者数も不明である。
さらに、請求人は、2019年7月及び同年9月に開催された展示会に出展した旨主張するが、何らの証拠の提出もなく、出展に係る具体的な商品やその商品の紹介方法、参加人数などといった詳細が不明であり、どのような広告宣伝活動がされたかは不明である。
ウ 請求人以外の事業者による使用状況
上記(1)のとおり、本願の指定商品を取り扱う業界において、請求人以外の事業者により、一度で使い切れる使い切りの商品が、複数存在し、流通している事実があり、その商品紹介において「使い切り」「使い切りタイプ」「使い切りサイズ」のように説明されている実情が少なからず見受けられる。
エ 判断
以上によれば、請求人は、遅くとも2020年3月には、「使い切り試薬シリーズ」と称する商品を販売していたことがうかがえるものの、その販売期間は、さほど長いものではない。
また、請求人の製品カタログにおいて、「使い切り」の文字は、商品の品質を表すものとして記述的に用いられていることから、これらカタログに接する需要者が、出所識別標識として、「使い切り」の文字に着目するとは考えにくいし、当該記述に接する需要者は、それを単なる商品紹介の説明と理解するにとどまるとみるのが自然である。加えて、当該カタログの頒布部数等を認めるに足りる的確な証拠はない。
さらに、本願商標を使用した請求人商品の売上げや市場占有率、具体的な広告宣伝方法を認めるに足りる的確な証拠はない。
加えて、上記(1)のとおり、本願の指定商品を取り扱う業界において、請求人以外の事業者により、一度で使い切れる使い切りの商品が、複数存在し、流通している事実があり、その商品紹介において「使い切り」「使い切りタイプ」「使い切りサイズ」のように説明されている実情が少なからず見受けられる。
そうすると、本願商標は、その指定商品である「使い切りタイプの化学用試剤,使い捨てタイプの化学用試剤」について使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとはいえない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備しない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであり、かつ、同条第2項に規定する要件を具備するものとも認められないから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
1 原審において示された「使い切り」の意味
「コトバンク」のウェブサイトにおいて、「使い切り(読み)ツカイキリ」の見出しの下、「デジタル大辞泉の解説」として「1 全部使ってしまうこと。一度で使い切れる大きさの包装などにもいう。 2 一度だけ使って捨てること。使い捨て。」の記載がある。
https://kotobank.jp/word/%E4%BD%BF%E3%81%84%E5%88%87%E3%82%8A-330203

2 原審において示された「使い切り」の用例(下線は合議体による。以下同じ。)
(1)2016年10月13日付け「化学工業日報」(3ページ)において、「アサノ通運-昭和パックス、油・薬品に強い内袋装備ソフトタンク投入」の見出しの下、「アサノ通運と昭和パックスはこのほど、内袋を装備したソフトタンクを市場投入した。・・・内袋は耐油性、耐薬品性に優れ、今までのソフトタンクで輸送できなかった化学品(非危険物)、酒類、食用油などの輸送を可能にした。内袋は使い切りなので衛生面の向上や洗浄の手間を省ける。」の記載がある。
(2)2015年4月20日付け「日刊工業新聞」(19ページ)において、「アークレイ/糖尿病用試薬に少量包装の使い切りタイプ」の見出しの下、「アークレイは大量検体測定に適した糖尿病の検査項目であるHbA1c向け測定試薬『サンクHbA1c』の少量包装タイプを発売した。・・・測定時に使い切れる量とすることで検査業務を省力化するとともに、容器からの移し替えなどによる異物、雑菌の混入リスクを低減できる。」の記載がある。
(3)2006年4月13日付け「日経産業新聞」(5ページ)において、「迅速・容易に遺伝子を解析できる小型装置」の見出しの下、「英国のラブ・ナインオーワン社が開発した『ScreenTape』は医療診断や遺伝子工学など幅広い分野で使用できる小型の遺伝子解析装置。・・・試料を搭載する使い切りタイプのプラスチック製マイクロチップには解析に必要な化学試薬があらかじめ梱包されており、煩雑な作業を不要にした。」の記載がある。

3 化学品を取り扱う業界における「使い切り」の用例
(1)「富士フイルム和光純薬株式会社」のウェブサイトにおいて、「脱酸素脱水溶媒」の見出しの下、「脱酸素脱水溶媒は溶存酸素量1ppm以下、水分含量0.001%以下を保証した高品質な溶媒です。・・・使い切りタイプの100mL容量も充実しました。」の記載がある。
https://labchem-wako.fujifilm.com/jp/category/00275.html
(2)「富士フイルム和光純薬株式会社」のウェブサイトにおける「有機合成・クロマト試薬」を見出しとするウェブカタログにおいて、「超脱水溶媒」の項目に、「水分含量0.001%以下(10ppm以下)を保証している超脱水溶媒シリーズの品目・容量を充実しました。・・・3L容量は使い切りのねじ込み式キャップを使用しています。」の記載がある。また、「クロスカップリング反応剤」の項目に、「本シリーズは・・・溶液タイプです。・・・少量サイズですので、開封後長期保管を避けたい場合などに、1回使い切りタイプとして便利にお使いいただけます。」の記載がある。さらに、「反応補助試薬 100mL包装」の項目に、「本品は、核酸合成におけるホスホロアミダイト法に用いる反応補助試薬です。・・・この度、小・中量合成機に適した100mL包装の試薬が発売になりました。使い切りサイズとして便利にお使いいただけます。」の記載がある。
http://kaken-techno.co.jp/wp-content/uploads/2018/11/47053c2e2a4c9cf74377f5dc5c20efd1.pdf
(3)「三興石油工業株式会社」のウェブサイトにおいて、「光触媒抗菌剤」の見出しの下、「【使い切りタイプ】光ギンテックスプレー『さわやか変身』は、簡単1プッシュするだけの消臭・抗菌スプレー缶です。1回ごとの使い切りタイプです。」の記載がある。
http://www.sanko-sekiyu-kogyo.co.jp/kankyo.html
(4)「東京化成工業株式会社」のウェブサイトにおいて、「使い切り容量のビオチン化試薬」の見出しの下、「秤量不要、1本ごとに使い切り」の記載、「・・・ビオチン化試薬です。・・・2mg容量のものを5本セットにしていますので、秤量の手間が省け、1本ごとに使い切りできます。」の記載がある。
https://www.tcichemicals.com/JP/ja/product/pick/Pre-Weighed_Biotinylation_Reagents


審理終結日 2021-01-05 
結審通知日 2021-01-29 
審決日 2021-02-09 
出願番号 商願2018-107318(T2018-107318) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W01)
T 1 8・ 17- Z (W01)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早川 真規子浦崎 直之 
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 大森 友子
石塚 利恵
商標の称呼 ツカイキリ 

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