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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0708
審判 全部申立て  登録を維持 W0708
審判 全部申立て  登録を維持 W0708
審判 全部申立て  登録を維持 W0708
審判 全部申立て  登録を維持 W0708
管理番号 1372927 
異議申立番号 異議2020-900042 
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-02-17 
確定日 2021-03-31 
異議申立件数
事件の表示 登録第6199288号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6199288号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6199288号商標(以下「本件商標」という。)は、「Mizumi」の欧文字を横書きにしてなり、平成30年10月31日に登録出願、第7類「食料加工用又は飲料加工用の機械器具,電気洗濯機,食器洗浄器,電気ミキサー,電機ブラシ,コーヒー豆ひき器(手動式のものを除く),搾乳機」及び第8類「電気かみそり,電気バリカン,手動利器,手動工具,つめ磨き器(電動式のもの又は電動式でないもの)」を指定商品として、令和元年10月7日に登録査定され、同年11月22日に設定登録されたものである。

第2 引用商標等
1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録第4778867号商標(以下「引用商標」という。)は、「MISUMI」の欧文字を横書きにしてなり、平成15年5月2日に登録出願、第7類「食料加工用又は飲料加工用の機械器具,農業用機械器具,食器洗浄機,電気式ワックス磨き機,電気洗濯機,電気掃除機,電気ミキサー,電機ブラシ」を含む第7類の商品、第8類「電気かみそり及び電気バリカン,手動利器,手動工具」を含む第8類の商品、第1類ないし第6類、第9類ないし第32類、第34類に属する商品を指定商品として、及び第35類ないし第45類に属する役務を指定役務として、同16年6月18日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
2 申立人が、本件登録異議の申立ての理由において、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するとして引用する商標は、引用商標と「MiSUMi」の欧文字からなる標章(以下「引用標章」という。)で、申立人が、第7類及び第8類に係る商品に幅広く使用していると主張するものである。
以下、引用商標及び引用標章をまとめて、「申立人商標」という場合がある。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号によって取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第20号証を提出した。
1 具体的理由
(1)本件商標の特定
本件商標は、上記第1のとおりであるところ、欧文字6文字を普通に用いられる態様により横書きしたものであり、その文字構成から「ミズミ」の称呼が自然に生じると考えられる。また、本件商標は辞書等には掲載されていない造語であり、特段の観念は生じないと考えられる(甲1)。
(2)引用商標の特定
引用商標は、上記第2の1のとおりであるところ、その文字構成から「ミスミ」の称呼が自然に生じると考えられる(甲2)。
また、引用商標を構成する欧文字「MISUMI」は辞書等には掲載されていない用語であるため、特段の観念は生じないと考えられる。
さらに、引用商標は、申立人が、1989年頃から各種機械器具やその部品、付属品等に広く使用していた商標であるため、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「MISUMI」の商標は、第7類や第8類に係る商品に使用される商標として、我が国内において、少なくとも周知であったものであり、既に著名の域に達していたものであったと考えられる。
(3)濁点の有無の相違を有する商標間における称呼の類似性について
本件商標から生じる称呼「ミズミ」と引用商標から生じる「ミスミ」の称呼は、中間音に清濁の相違はあるものの、類似すると評価せざるを得ないものである。
商標を対比する場合において、称呼の相違点が濁音のみである場合、濁音が商標中のどの部分に位置するかによって、需要者、取引者が聴取する印象が全く異なることとなる。
また、濁音の前後の音によっても、需要者、取引者が聴取する印象は異なることになると考えられる。
本件商標と引用商標を対比すると、それぞれの商標から生じる3音のうち、「zu」部分から生じる「ズ」と「SU」部分から生じる「ス」の音のみが相違しており先頭音と語尾音は同一である。ここで、「ズ」と「ス」とは、いずれも歯茎を調音点とする歯茎音であって、帯同する母音(u)を共通にしており、極めて近似した摩擦音となる。
この音は、他の両唇音(「ム」、「プ」等)などの音と対比するとその差は比較的聴取し難い音であると考えられ、商標中の発声位置によっては聴別し難くなると考えられる。
特に、本件商標と引用商標の最初と最後の音は、はっきりと響く両唇音である「ミ」であることから、これらの間に位置することによって、「ズ」と「ス」とは聴取し難い音となると考えられる。
また、本件商標から生じる「ミズミ」の称呼と引用商標から生じる「ミスミ」の称呼とは、イントネーションについて明確な違いが存在していない。すなわち、中間音「ズ」や「ス」部分があえて不自然に強調されて発声されることはなく、「ズ」と「ス」は「ミ」と比較して低い声量で発声されると考えるのが自然であるから、本件商標と引用商標に接する需要者、取引者は、それぞれの最初と最後の音が印象に残り、聴取し難い「ズ」と「ス」については印象に残らないことになると考えられるため、本件商標と引用商標は、ともに最初と最後の「ミ」の音が強く印象に残る全体として相互に近似した印象を与える称呼からなる商標と考えられる。
(4)欧文字商標の外観の類似について
欧文字商標の類否判断においては、称呼の共通性と併せて、文字構成の共通性が対比される。この際、過去の審決においては、その文字構成中、先頭の数文字と語尾の数文字が共通することとが考慮され、この共通性と称呼の近似性とを考察して類否判断を行う審判例が散見される。
称呼が近似する商標同士の欧文字のつづりが先頭部分や語尾の文字構成において共通すると、他の文字構成に相違点が存在したとしても、商標全体として外観が近似すると判断した審判例が存在している。
これを本件商標「Mizumi」と引用商標「MISUMI」に当てはめて考察すると、本件商標と引用商標はいずれも欧文字6文字で構成され、中央の小文字「z」と大文字「S」の相違があるとしても、先頭の大文字「M」が共通し、他の文字要素は大文字と小文字の相違点がある以外は一致している。「z」と「S」も左右に波打った形状が近似しており、先述の称呼の類似性を考慮すると、外観において近似すると評価できる。
(5)本件商標と引用商標の類似性について
本件商標と引用商標とは、外観及び称呼において極めて近似する類似商標である。
ア 称呼の類似性
本件商標と引用商標との称呼を対比すると、本件商標は「ミズミ」と発声されるのに対して引用商標は「ミスミ」と発声されるが、両商標は何れも3音で発声される点で共通している。
また、先頭音と語尾音が何れも両唇鼻音の「ミ」からなり、上唇と下唇とを重ねたうえで発声する音声であることからはっきりと明確に聴取されるものである。
一方、本件商標と引用商標とは、2音目において、引用商標(決定注:「本件商標」の誤記と認める。)が「ズ」であるのに対し、本件商標(決定注:「引用商標」の誤記と認める。)が「ス」である点で相違している。
しかしながら、「ズ」と「ス」は何れも歯茎音からなるものであり、発声する際に上の歯茎に舌先を近づけて調音する音であり、母音を共通することも併せると極めて近似した音である。
これら「ズ」、「ス」は何れも聴取し難い摩擦音であることや、先頭音と語尾音が何れも両唇鼻音の「ミ」で構成され摩擦音よりも明確に聴取可能であること、さらに、中間の「ズ」及び「ス」に不自然なイントネーションが付されて取引に資されることは考え難いことから、本件商標と引用商標に接する需要者、取引者は、先頭音と語尾音に強く印象付けられ、中間を構成する摩擦音に対しては印象が薄くなることになる。
すなわち、本件商標と引用商標は、称呼において極めて近似する類似の商標であり、両商標を発声すると聴別し難く、出所の混同の生じ得る商標であると評価できる。
イ 外観の類似性
本件商標と引用商標との外観を対比すると、両商標は何れも欧文字6文字からなり、先頭の文字が大文字「M」である点で共通している。
また、2文字目の「i」と「I」及び4ないし6文字目の「umi」と「UMI」が大文字小文字の差異はあるが、共通する欧文字である。一方、本件商標と引用商標とは、3文字目が小文字「z」と大文字「S」で相違しているが、「z」と「S」は左右に波打った形状が近似していることや、中間のやや目立ちづらい位置に配置された文字であることを考慮すると、全体で他の共通点を凌駕する程度まで異なる印象を与えるということは出来ないと考えられ、むしろ、両商標の文字構成の共通性や先述の称呼の類似性から考察すると、両商標は外観上も極めて近似する印象をこれに接する需要者、取引者に与えることになると考えるのが自然である。
すなわち、本件商標と引用商標は、外観においても極めて近似する類似の商標であり、対比的観察や離隔的観察の何れの対比を行っても、外観上近似すると判断可能な、出所の混同を生じ得る商標である評価できる。
ウ 観念の類似性
本件商標と引用商標との観念を対比すると、本件商標と引用商標とは何れも辞書に掲載されるような用語ではないことから、観念が生じない用語であると考えられ、商標の類否判断は、専ら外観と称呼の共通性によるものと考えられる。
しかしながら、少なくとも、観念が生じない商標同士が称呼及び外観における近似性を無視して観念の点だけから全体として非類似であるという結諭が出されることはない。
エ 指定商品の類似性
本件商標は、第7類「食料加工用又は飲料加工用の機械器具,電気洗濯機,食器洗浄器,電気ミキサー,電機ブラシ,コーヒー豆ひき器(手動式のものを除く),搾乳機」、及び、第8類「電気かみそり,電気バリカン,手動利器,手動工具,つめ磨き器(電動式のもの又は電動式でないもの)」を指定商品として登録出願されたものであるが、これらは全て引用商標の指定商品の類似範囲に属する事は明白である。
すなわち、本件商標は、その全ての指定商品が引用商標の指定商品と類似するため、出所の混同を生じ得る商標であると評価できる。
オ 審決例
「ズ」、「ス」の差異音が称呼全体に及ぼす影響は少なく、両称呼をそれぞれ一連に称呼した場合は、全体としての語調、語感が近似するため、互いに聞き誤るおそれがあると判断した審決例が多数存在している。
これらの審決例から考察しても、本件商標と引用商標とでは、2音目の「ズ」と「ス」の濁音と清音の音の差異を有するのみであることや、外観も近似すると考えられることから相紛れるおそれのある類似の商標と判断可能であると考えられる。
カ 小括
以上より、本件商標は申立人の所有する引用商標と類似する関係にあるといい得るものであり、商標法第4条第1項第11号に違反して登録された商標に該当するものである。
(6)申立人の商標の使用態様及び周知性について
申立人は、電子機器、ベアリングの販売を目的として1963年に設立された会社であり、引用商標「MISUMI」を1989年頃から第7類及び第8類に係る商品に幅広く使用している。
例えば、本件商標の登録出願前に申立人が発行した各種商品カタログには、第7類及び第8類に係る部品等が多数掲載されている(プラ型用・ダイカスト型用標準部品(1989年):甲5、プレス金型用標準部品(1990年):甲6、自動機用標準部品(1991年):甲7、プラ型用標準部品(2008年):甲8、FA用メカニカル標準部品(2009年):甲9、プレス金型用標準部品(2009年):甲10、安全保護・環境衛生・オフィス用品(2015年):甲11)。
これらは、継続的に発行されて需要者、取引者に配布されているものであり、いずれにも「MISUMI」が商標として目立つように使用されている。
ちなみに、申立人は、2008年から商標を「MiSUMi」のような大文字と小文字を混在させた態様で使用しているが、引用商標「MISUMI」とは2文字目と6文字目の「I」と「i」が異なるのみであり、実質的には同じ構成であるので、実質的に同一であり、商標の周知性に与える影響は無い。
また、インターネットサイトにおいても、第7類及び第8類に係る商品を継続して販売してきており、機械部品、電気部品、工具、配線などあらゆる製品が入手可能な幅の広い需要に応じられる展開となっている(甲12?甲19)。
申立人は、長年にわたり、ものづくりに必要な機器及びその部品の販売を継続しており、時代の変化に応じて業務モデルの革新を続けている。
特に、デジタルものづくりの進化がグローバル規模で加速する昨今において、申立人は、グローバルで確実な短納期の優位性などに磨きをかけることによって市場シェアを伸ばすことに成功しており、更なるデジタルものづくりに適合した事業モデルの革新に継続して取り組んでいる。このような業務モデルの継続的な革新により、申立人の事業は持続的な成長を果たすことに成功しており、申立人グループの連結売上高は、2019年度において、3000億円を超えるまでに成長している(甲20)。
このように、申立人は商標「MISUMI」を長年にわたって継続的に使用してきており、広告ないし業績は上述のとおりであるので、本件商標の登録出願時及び登録査定時においては、第7類及び第8類に係る商品を取り扱う需要者、取引者の間では、商標「MISUMI」は申立人の業務に係る商品を表示するものとして、相当程度、周知著名になっていたものと思料する。
(7)商標法第4条第1項第10号違反について
本件商標「Mizumi」と引用商標「MISUMI」は、商標が類似する関係にあると考えられ、また、申立人は、1989年より、商標「MISUMI」を第7類及び第8類に係る商品に幅広く使用しているという実績があり、本件商標の指定商品は、申立人が商標「MISUMI」を使用するこれら各種商品と類似する関係にあると考えられる。
また、申立人は、引用商標を第7類及び第8類に係る商品に長年にわたって使用してきたという実績があるため、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者、取引者の間に広く認識されているものと考えられ、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、このような状況が継続していたものと考えられる。
すなわち、本件商標は、申立人が長期にわたり使用し、現在も権利維持している商標と類似する関係にあるといい得るものであり、また、申立人が継続使用してきた商標「MISUMI」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、日本国内で周知であったと考えられるため、本件商標は商標法第4条第1項第10号に違反して登録された商標に該当するものと考えられる。
(8)商標法第4条第1項第15号違反について
申立人が使用する商標「MISUMI」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、需要者、取引者の間で周知、著名性を有していたものと考えられる。また、本件商標「Mizumi」と申立人商標は、外観及び称呼のいずれにおいても極めて近似している。
このような状況において、本件商標を第7類の商品「食料加工用又は飲料加工用の機械器具,電気洗濯機食器洗浄器,電気ミキサー,電機ブラシ,コーヒー豆ひき器(手動式のものを除く),搾乳機」及び第8類の商品「電気かみそり,電気バリカン,手動利器,手動工具,つめ磨き器(電動式のもの又は電動式でないもの)」に対して使用した場合は、申立人又はその関連企業の業務に係わる商品であるかのように誤って認識されるおそれがあり、申立人の業務に係る商品として、本件商標が付された商品が存在するのではないかとの誤認、混同を生じさせるおそれが十分に考えられる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号や同項第10号に該当すると判断されるべきのみならず、本件商標はさらに、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生じるおそれがある商標に該当すると考えられるため、同項第15号の規定に違反して登録されたものと考えられ、本件商標の登録は、出所混同を防止する点からも取り消されるべきである。

第4 当審の判断
1 申立人商標の周知性について
(1)申立人の提出に係る甲各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 申立人は、電子機器、ベアリング等の金型及び自動機用標準部品の企画販売、金型用CAD/CAMシステム、機械設計支援ソフトの開発販売を目的として、1963年(昭和38年)2月23日に設立された会社である(甲5)。
イ 申立人は、引用商標「MISUMI」を1989年頃から第7類及び第8類に係る商品に使用し、申立人の商品カタログの表紙、裏表紙等に使用している(甲5?甲7)。
なお、申立人は、2008年(平成20年)頃から、同人の取り扱う商品に、「MiSUMi」(引用標章)の欧文字を使用している(甲8?甲11)。
ウ 申立人は、インターネットのウェブサイトにおいて、「MiSUMi-VONA」の標章が付された「平ベルト 食品搬送用」、「汚水用水中ポンプ 農業。園芸用」、「2層式洗濯機」、「排水用配管資材エスロンHDTV継手 食器洗浄機用チーズ」、「DCモータ」、「充電式バリカン」、「ニッパー」、「両口スパナ」の商品を販売した(甲12?甲19)。
エ 申立人の「ANNUAL REPORT 2019」によると、申立人グループの連結売上高は、2019年(令和元年)度3,550億円(予想)であることが記載されている(甲20)。
(2)上記(1)において認定した事実によれば、申立人商標は、申立人の業務に係る商品「電子機器,ベアリング」等(以下「申立人商品」という。)に1989年(平成元年)から使用し、申立人商品が実際に販売されていることは認められる。
しかしながら、商品カタログは、頒布数量、頒布地域、頒布の期間等が明らかではなく、当該商品カタログに申立人商標が掲載されていたとしても、申立人商標が、需要者、取引者の間で、広く知られていたことを判断し得る程度の客観的な証拠とはみることができない。
さらに、申立人は、グループの連結売上高が2019年(令和元年)度において、3,550億円(予想)であると主張しているが、この主張を裏付ける証拠の提出はなく、かつ、我が国における市場占有率(販売シェア)等などの販売実績を示す証拠は提出されていない。
そうすると、申立人が提出した全証拠によっては、我が国における市場占有率(販売シェア)等の量的規模を客観的な使用事実に基づいて、申立人商標の使用状況を把握することができず、申立人商標の周知性の程度を推し量ることができない。
したがって、申立人商標が我が国において、申立人商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知性を獲得していたとは認められないものである。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、「Mizumi」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成文字に相応して「ミズミ」の称呼を生じるものである。
また、「Mizumi」の欧文字は、辞書等に載録がないものであって、かつ、当該文字が、我が国において、特定の意味合いを有する語として親しまれている等の特段の事情は存在しないから、特定の観念を生じないものである。
したがって、本願商標は、「ミズミ」の称呼を生じるものであり、特定の観念は生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標は、「MISUMI」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成文字に相応して「ミスミ」の称呼を生じるものである。
また、「MISUMI」の欧文字は、辞書等に載録がないものであって、かつ、当該文字が、我が国において、特定の意味合いを有する語として親しまれている等の特段の事情は存在しないから、特定の観念を生じないものである。
したがって、引用商標は、「ミスミ」の称呼を生じるものであり、特定の観念は生じないものである。
(3)本件商標と引用商標との比較
ア 外観について
本件商標と引用商標との外観を比較すると、「Mizumi」及び「MISUMI」は、ともに6文字で構成されている点について共通にするとしても、本件商標の3文字目の「z」と引用商標の3文字の「S」を相違するものである。
また、本件商標は、最初の1文字目の「M」の欧文字のみを大文字で、その他の文字を小文字で書してなるのに対し、引用商標は、構成文字全てを大文字で書してなる点について相違するものである。
さらに、表示態様について、本件商標は、明朝体で書されているのに対し、引用商標は、ゴシック体で書されている点についても相違する。
そうすると、本願商標と引用商標との外観について、このような構成文字及び表示態様の差異を考慮すると、両者は、外観上、互いに紛れるおそれはない。
イ 称呼について
本件商標から生じる「ミズミ」の称呼と引用商標から生じる「ミスミ」の称呼とを比較すると、両者は中間における「ズ」と「ス」の音に差異を有するところ、濁音と清音という異なった音質の音であって、いずれも3音という短い音構成からなる両称呼全体に及ぼす影響は決して小さいものとはいえず、両称呼は、これらを全体として称呼した場合には、その語調、語感が相違したものであるから、両者は、称呼上、互いに紛れるおそれはない。
ウ 観念について
本件商標及び引用商標は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、両者は、観念上、比較することはできない。
エ 小活
以上から、本件商標と引用商標とは、観念において比較できないものであるとしても、外観及び称呼において相違するものであり、これらを総合して判断すれば、両者は、相紛れるおそれのない非類似の商標とみるのが相当であるから、これらは別異の商標というべきである。
その他、本件商標と引用商標とが類似するというべき特段の事情は見いだせない。
(4)まとめ
したがって、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、その指定商品の類否について言及するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
商標法第4条第1項第10号は、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用するもの」と規定している。
そして、申立人商標は、上記1のとおり、申立人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。
また、上記2のとおり、本件商標と引用商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
さらに、引用標章は、引用商標の構成文字中の「I」を「i」に変更したにすぎないことからすると、本件商標と引用標章は、本件商標と引用商標が別異の商標と判断すると同様に、別異の商標というべきものである。
そうすると、本件商標の指定商品と申立人商品とは、同一又は類似するものであるとしても、本件商標は、同号の適用要件を欠くものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)申立人商標の周知性について
申立人商標は、上記1のとおり、申立人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)本件商標と申立人商標との類似性について
上記2及び上記3のとおり、本件商標と申立人商標とは別異の商標であり、全体として異なる印象を与えるものであって、類似性が高いとはいえないものである。
(3)本件商標の指定商品と申立人商品との関連性について
本件商標の指定商品と申立人商品は、いずれも、機械や工具に関連する商品であり、これらは、製造業者、販売場所及び需要者等を共通にするものである。
したがって、本件商標の指定商品と申立人商品とは、密接な関連性を有している。
(4)出所の混同のおそれについて
本件商標の指定商品と申立人商品は、製造業者、販売場所及び需要者等を共通にするものであるとしても、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商標は、申立人商品を表示する商標として需要者の間に広く認識されているとはいえないものであり、上記2及び上記3のとおり、本件商標と申立人商標とは別異の商標であるから、本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が、申立人商標又は申立人を連想又は想起するとは考え難い。
そうすると、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、その取引者、需要者をして、当該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものと認めることはできない。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 申立人の主張について
申立人は、本件商標と引用商標に接する需要者、取引者は、両商標の文字構成の共通性や称呼の類似性から考察すると、両商標は外観上も極めて近似する印象をこれに接する需要者、取引者に与えることになる旨を主張している。
しかしながら、本件商標と引用商標は、上記2のとおり、外観及び称呼に明確な差異を有するものとみるのが相当であるから、両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
したがって、申立人の上記主張は採用することができない。
6 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
異議決定日 2021-03-19 
出願番号 商願2018-140391(T2018-140391) 
審決分類 T 1 651・ 25- Y (W0708)
T 1 651・ 262- Y (W0708)
T 1 651・ 263- Y (W0708)
T 1 651・ 261- Y (W0708)
T 1 651・ 271- Y (W0708)
最終処分 維持  
前審関与審査官 齋藤 健太赤澤 聡美 
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 小俣 克巳
豊田 純一
登録日 2019-11-22 
登録番号 商標登録第6199288号(T6199288) 
権利者 信歴合同会社
商標の称呼 ミズミ 
代理人 末岡 秀文 
代理人 広瀬 文彦 

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