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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W43
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W43
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W43
管理番号 1372827 
審判番号 無効2020-890033 
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2020-03-26 
確定日 2021-03-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第5859643号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5859643号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5859643号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成27年12月17日に登録出願,第43類「簡易食堂における飲食物の提供,レストランチェーン店における飲食物の提供,セルフサービス式レストランにおける飲食物の提供,ビュッフェ式レストランにおける飲食物の提供,ファーストフードレストランにおける飲食物の提供,コーヒーハウスにおける飲食物の提供,劇場型のバーにおける飲食物の提供,韓国式のバーにおける飲食物の提供,パブにおける飲食物の提供,バーにおける飲食物の提供,喫茶店における飲食物の提供,レストランにおける飲食物の提供,西洋料理のレストランにおける飲食物の提供,日本料理のレストランにおける飲食物の提供,中華料理のレストランにおける飲食物の提供,韓国料理のレストランにおける飲食物の提供,軽食堂における飲食物の提供,ベーカリーにおける飲食物の提供,パンを主とする飲食物の提供,ケータリング」を指定役務として,同28年5月10日に登録査定,同年6月17日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録商標は,以下の5件である(以下,これらをまとめて「引用商標」という。)。引用商標1ないし引用商標3及び引用商標5は,現に有効に存続しているものである。
1 登録第5802810号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 別掲2のとおり
指定商品及び指定役務 第14類,第18類,第25類及び第35類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務
登録出願日 平成26年4月11日
設定登録日 平成27年10月30日
2 登録第4013719号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 別掲3のとおり
指定商品 第18類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
登録出願日 平成4年7月22日
設定登録日 平成9年6月20日
3 登録第4169226号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様 別掲4のとおり
指定商品 第25類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
登録出願日 平成4年7月22日
設定登録日 平成10年7月24日
4 登録第4237193号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様 別掲5のとおり
指定商品 第14類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
登録出願日 平成4年7月22日
設定登録日 平成11年2月5日
抹消登録日 令和2年4月17日
5 登録第5704331号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の態様 別掲6のとおり
指定商品及び指定役務 第14類,第18類,第25類及び第35類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務
登録出願日 平成26年4月11日
設定登録日 平成26年9月26日

第3 請求人の主張
請求人は,本件商標についての登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第40号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,商標法第4条第1項第15号,同項第7号及び同項第19号に違反してされたものであるから,同法第46条第1項第1号の規定により,無効にすべきものである。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)請求人について
請求人は,1989年(平成元年)に英国に設立された被服の製造・販売を行う企業であり,同社の扱う商品は,「BOY」あるいは「BOY LONDON」ブランドとして知られている。請求人は,設立以降,一度も名称を変更することなく現在に至り,一貫して「BOY」ブランドを主たるブランドとして運営する企業である(甲10)。請求人のブランドは,1980年代,イギリスを中心にパンクファッションおよび文化の礎的存在として爆発的な人気を博した(甲11)。世界的な人気を誇っていたボーイ・ジョージ,エルトン・ジョン,マドンナに愛され,ポップカルチャー・パンク文化を代表するアイコンとしてもてはやされた(甲12)。2017年に公開された映画「アトミックブロンド」の劇中,主人公は引用商標5が付されたシャツを着用している。このことからも,請求人の商品が,当時代を代表するブランドであったことが如実に示されている。「BOY」ブランドは,高級服飾を扱う雑誌等に取り上げられるブランドとは一線を画し,若者を中心に広く知られたブランドとなった。その後,2012年(平成24年)には歌手のリアーナが着用し話題を呼ぶなど,現在に至るまで,とりわけストリートファッションを好む世界中の若者に一定の著名度を有している。
請求人は,現在,関連会社であるアングロフランチャイズジャパン株式会社を通じて,請求人の商品販売を行っている(甲13)。
(2)本件商標と引用商標の類似性について
引用商標は,いずれも「BOY」を要部とする商標であり,請求人のブランド名を表示するものである。請求人は長い歴史のなかで,ほぼそのデザインに変更を加えていない。「BOY」の文字が目立つような工夫を怠らない。請求人のブランドには,些細な相違が存在することは事実であるが,全商標に統一感が維持され,同一人による出所表示機能が維持されている。
ア 引用商標1は,本件商標と同様,両翼を左右に大さく広げ,顔を右側に向けた鷲の図形とその足元に「BOY」を配した構図からなる。本件商標と引用商標1は線の太さこそ相違するものの,遠隔観察すれば相違はほとんど看取されず,社会通念上明らかに同一の商標である。
イ 引用商標2,引用商標3及び引用商標4は,引用商標1と同様,両翼を左右に大きく広げ,顔を右側に向けた鷲の図形を中央に配し,その足元に「BOY」と「LONDON」の欧文字を二段に書した構成よりなる。本件商標と引用商標2,引用商標3及び引用商標4は,「LONDON」の文字の相違のみであり,相紛らわしい類似商標であるといえる。
ウ 引用商標5は,「BOY」と「LONDON」を二段に書してなるところ,本件商標が想起させる「BOY」ブランドの商標として,著名なものである。よって,本件商標は引用商標5と出所混同を生じるほど類似する商標であるといえる。
(3)出所混同を生ずるおそれ
本件商標は引用商標と酷似である。本件商標が引用商標と関連した商標と印象づけることで,引用商標の周知表示にただ乗りし,引用商標とのダイリューションを引き起こそうとすることにほかならない。本件商標の指定商品(パン,菓子等)(審決注:当合議体は,「本願商標の指定役務(簡易食堂における飲食物の提供等)」の誤記と認める。)と請求人の取り扱う商品(被服)とは,性質を異にするものの,どちらの商品(審決注:当合議体は,「商品及び役務」の誤記と認める。)も一般需要者を対象とするものであり,昨今の企業の多角経営を考慮すれば,本件商標に接する需要者が,本件商標から,請求人を想起し,請求人を出所とする商品(審決注:当合議体は,「役務」の誤記と認める。)である,あるいは請求人と経営的に関連性を有する者を出所とするものであると誤認する蓋然性は極めて高い。
加えて,後述するとおり,被請求人は,取引者に対し,被請求人自身が引用商標の日本における正当権利者であると主張し信頼させることで,市場における現実の混同を引き起こしている。このことは,本件商標が,請求人の所有商標との間において出所混同を生じている事実を示すにほかならない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
2 商標法第4条第1項第7号について
(1)請求人は,我が国において,1991年(平成3年)以降,商標出願を行い商標の権利化を図り,同様に,多くの国にて商標権を獲得している(甲14?甲30)。しかしながら,請求人規模の一企業が全ての国において一律に権利化の体制に万全を期すことは困難であり,未登録出願の国があること,取扱商品の全てについて万全に権利化し得ていないことも事実であり,我が国においても,本件商標の指定商品である第30類(審決注:当合議体は,「本件商標の指定役務である第43類」の誤記と認める。)にまで商標登録を行っていなかった。被請求人は,請求人のブランドの周知・著名性に目をつけ,我が国において,請求人の許諾や同意を受けることなく,請求人が,第30類に属する指定商品(審決注:当合議体は,「第43類に属する指定役務」の誤記と認める。)について権利を有していないことを奇貨として,出願したものである。
(2)被請求人は,「BOY」ブランドが本来請求人のものであると知っていたにもかかわらず,株式会社クラウド(以下「クラウド社」という。)に対して,被請求人が現在の「BOY」ブランドの運営者であるかの説明を行い,我が国における商標権者であるとの誤解を与え,我が国にて,引用商標を付した被請求人商品の販売取引契約を締結していた(甲8)。
クラウド社が我が国において請求人の引用商標と同一又は類似の商標を付した商品の販売を開始したことを知った請求人は,同社を被告とする商標権侵害訴訟を2014年(平成26年)8月に提起した。当該訴訟は,2015年(平成27年)12月21日に和解が成立し,その和解条項において「被告(クラウド社)は被告商品を日本国内に輸入しこれを日本国内で販売する行為が,原告(請求人)の商標権を侵害するものであることを認め」,「訴外株式会社ボーイロンドンコリア(被請求人)との間のBOYLONDONブランド関連商品の輸入独占契約を破棄」している(東京地方裁判所 平成26年(ワ)第20435号,甲9)。
請求人が侵害訴訟を提起したことを知った被請求人は,請求人の引用商標と同一ではないが,引用商標と出所混同を生じさせる程度に類似する本件商標を出願したものである。この行為は,被請求人が日本国内の販売代理店及び潜在的な販売代理店等に自らこそが英国ブランド「BOY」の運営企業であると欺き,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する不正な目的をもっていたことを明確に示すものである。
(3)本件商標の出願の経緯と,請求人及び被請求人商品の販売代理店間の訴訟の経緯を並列すれば,被請求人が,請求人が日本国内にて本件商標と社会通念上同一の商標である引用商標を所有していたことを確認したうえで,本件商標の出願を行ったことが明らかである。
本件商標の維持は,引用商標の出所表示機能が希釈化(ダイリューション)されて,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力が毀損されるばかりでなく,公正な取引秩序を乱すものといわざるを得ない。
してみれば,本件商標は,不当な利益を得る等の不正の目的をもってひょうせつ的に出願したものであることは明らかであり,出願の経緯に社会的相当性を欠き,登録を認めることが商標法の目的にも反するものであるから,商標法第4条第1項第7号に該当する。
3 商標法第4条第1項第19号について
請求人のブランドは,1990年代にはすでに我が国においても著名性を獲得していた。1990年代に発売された「地球の歩き方ロンドン」(甲31?甲37)には,毎年「世界中の若者から支持されている」と紹介されていたほどである。40年ほどが経過する今なお,需要者の間に広く認識されている。また,(英国内における)その周知・著名性は,「BOYLONDON」を社名として登記した企業に対して社名取消を決定した英国法人登記所の判断からも確認することができる(甲38,甲39)。
被請求人は,請求人が我が国において商標登録を行っていることを知りながら,第三者であるクラウド社に,我が国において,真正なる権利者である請求人の同意を得ずに,請求人の引用商標を付した被請求人の商品の販売を許諾し,自社製品の日本への輸入・販売をそそのかす行為を行った。さらにクラウド社に対して請求人が訴訟を提起した後,本件商標を出願し,権利化を図ろうとしたものである。
請求人が被請求人の商品の我が国における販売を巡って提訴した上述の訴訟が終結する直前の2015年(平成27年)12月17日に,引用商標1と同一の態様よりなる商標を,本件商標のほか,第43類に属する役務についても出願し登録を得たことは,明らかに被請求人に請求人の引用商標に対するただ乗りとひょうせつの意思があったことを示すものである。
本件商標は,引用商標と同一の態様ではないが,称呼及び観念において類似し,外観においても共通性を有するうえ,その指定商品(審決注:当合議体は,「指定役務」の誤記と認める。)についても請求人の取扱商品と類似する。
本件商標と引用商標の間で,「BOY」ブランドの真の権利者について出所混同が生じることは,上述の請求人とクラウド社間の訴訟におけるクラウド社の存在からも明らかである。
以上のことからすれば,本件商標の登録は,被請求人が,外国で周知な請求人の商標と類似の商標が日本国にて登録されていないことを奇貨として,請求人の日本国内参入を阻止する悪意と不正の目的をもって出願したものに他ならない。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。

第4 被請求人の答弁
被請求人は,請求人の主張に対して何ら答弁していない。

第5 当審の判断
1 請求人適格について
請求人が本件審判を請求することの利害関係の有無については当事者間に争いがなく,また,当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)商標法第4条第1項第7号について
本号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には,(a)その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,(b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合,(c)他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合,(d)特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合,(e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合,などが含まれるというべきである(知財高裁 平成17年(行ケ)第10349号 平成18年9月20日判決)。
(2)請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば,次のとおりである。
ア 請求人について
請求人は,洋服,帽子等の製造及び販売を行う,1989年(平成元年)に英国に設立された企業である(甲10)。請求人は,自身が展開するブランドである「BOY」及び「BOY LONDON」(以下「BOYブランド」という。)の商標に関して,多くの国及び地域にて商標権を取得する(甲14?甲30)とともに,我が国においては,1991年(平成3年)以降,商標登録出願を行い商標の権利化を図ってきたものであり,引用商標の商標権者である(甲3?甲7)。
イ 請求人と被請求人の関係について
(ア)被請求人は,2014年(平成26年)1月,クラウド社と「商品輸入独占契約」を結び,当該契約書には,「エングロフランチャイズリミテッドは英国にBOYLONDONの商標のみ登録し,営業能力と資金力がなくて衣類事業を展開できなかった」及び「『甲』(被請求人)は,上記のような合法的な根拠に基づいて日本や中国市場で本社の正規品を輸入販売する代理商にBOYLONDON商品輸入販売契約を締結している。」との記載がある(甲8)。
(イ)請求人は,引用商標と同一又は類似の商標を付した商品の販売を開始したクラウド社に対して,引用商標2ないし引用商標4を基に,同社を被告とする商標権侵害訴訟を平成26年に提起した。当該訴訟は,被告であったクラウド社が侵害行為を認め,平成27年12月21日に和解が成立したところ,その和解条項には,「訴外株式会社ボーイロンドンコリア(被請求人)との間のBOYLONDONブランド関連商品の輸入独占契約を破棄する」との記載がある(甲9)。
(3)本件商標と引用商標1ないし引用商標4の比較について
ア 本件商標
本件商標は,別掲1のとおり,左右に大きく両翼を広げ,右に顔を向けた鷲の図形とその下に「BOY」の欧文字を配した構成からなるものである。
イ 引用商標
(ア)引用商標1は,別掲2のとおり,左右に大きく両翼を広げ,右に顔を向けた鷲の図形とその下に「BOY」の欧文字を配した構成からなるものである。
(イ)引用商標2ないし引用商標4は,別掲3ないし別掲5のとおり,左右に大きく両翼を広げ,右に顔を向けた鷲の図形とその下に「BOY」及び「LONDON」の欧文字を上下二段に配した構成からなるものである。
ウ 本件商標と引用商標1ないし引用商標4との比較
本件商標と引用商標1ないし引用商標4の構成は上記のとおりであるところ,両者を比較すると,いずれも左右に大きく両翼を広げ,右に顔を向けた鷲の図形とその下に「BOY」の欧文字を配した構成からなるうえに,鷲の胴体をはじめ広げた翼の内部の描き方が独創的であること,鷲の脚部分が「O」の欧文字に近接して描かれていること,鷲の図形と「BOY」の欧文字との全体のバランスが近似していることなどを共通にするものであるから,両者は,ほぼ同一又は酷似であること明らかである。
なお,引用商標2ないし引用商標4には,「LONDON」の欧文字も表されてはいるものの,当該文字は,それぞれの構成において非常に小さく表されていることに加え,指定商品との関係において自他商品を識別する機能がない又は極めて弱いものであるから,本件商標と引用商標2ないし引用商標4とを比較するうえで当該文字の有無が与える影響は小さいというべきである。
エ 商標法第4条第1項第7号の該当性について
上記(2)からすれば,請求人は,我が国において平成3年(1991年)以降に「BOYブランド」である引用商標について商標登録出願を行い商標登録を受けていること,被請求人は,平成26年(2014年)にクラウド社と請求人の「BOYブランド」に関する「商品輸入独占契約」を結んだことなどからすると,被請求人は遅くとも平成26年(2014年)には,請求人の「BOYブランド」である引用商標を知っていたということができる。
そして,引用商標の中でも特に引用商標1ないし引用商標4と本件商標とは,上記ウのとおり,同一又は酷似であることからすれば,被請求人が偶然に本件商標を採択したとは認め難いものである。
また,被請求人は,クラウド社との「商品輸入独占契約」において,被請求人が現在の「BOYブランド」の運営者であるかのような説明を行い,我が国で引用商標を付した被請求人商品の販売取引契約を締結していたことをうかがい知ることができる。
さらに,請求人がクラウド社に対して商標権侵害訴訟を提起し,両者の和解成立のための和解条項に「訴外株式会社ボーイロンドンコリア(被請求人)との間のBOYLONDONブランド関連商品の輸入独占契約を破棄する」との記載があることからすれば,被請求人は,当該侵害訴訟事件を知り得る機会があったというべきであり,本件商標を商標登録出願したのは当該和解成立のわずか4日前である。
そうすると,被請求人は,「BOYブランド」が本来請求人のブランドであることを知っていたにもかかわらず,日本国内の販売代理店又は潜在的な代理店等に自らこそが「BOYブランド」の運営企業であると欺き,引用商標に化体した信用,名声,及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する不正な目的をもっていたと推認することができ,さらに,被請求人は,請求人が本件指定役務と同一又は類似の役務に関して,未だ商標登録を受けていないことを奇貨として,引用商標1ないし引用商標4と同一又は酷似の本件商標の商標登録出願を行い,商標登録を受けたといわなければならない。
以上を踏まえて判断すると,被請求人は,不当な利益を得る等の不正な目的をもってひょうせつ的に本件商標を商標登録出願したものと認められ,本件商標は,その商標登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当すると判断するのが相当である。
なお,被請求人は,上記第4のとおり,請求人の主張に対し何ら答弁していない。
したがって,本件商標は,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものであるから,商標法第4条第1項第7号に該当する。
3 まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当するものである。なお,請求人は,上記理由のほか,本件商標が商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当する旨主張しているが,請求人の主張及び提出に係る証拠によっては,上記理由に該当するものと認めることはできない。
したがって,本件商標は,商標法第46条第1項第1号により,その登録は無効とされるべきである。
よって,結論のとおり審決する。

別掲


別掲1(本件商標)


別掲2(引用商標1)


別掲3(引用商標2)


別掲4(引用商標3)


別掲5(引用商標4)


別掲6(引用商標5)



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審理終結日 2020-10-20 
結審通知日 2020-10-22 
審決日 2020-11-05 
出願番号 商願2015-124434(T2015-124434) 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (W43)
T 1 11・ 271- Z (W43)
T 1 11・ 222- Z (W43)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大森 友子 
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 佐藤 松江
藤村 浩二
登録日 2016-06-17 
登録番号 商標登録第5859643号(T5859643) 
商標の称呼 ボーイ、ビイオオワイ 
代理人 豊崎 玲子 

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