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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない W42
管理番号 1370215 
審判番号 取消2018-300105 
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2018-02-20 
確定日 2020-12-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第5711249号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5711249号商標(以下「本件商標」という。)は,「スマート介護」の文字を標準文字で表してなり,平成26年5月21日に登録出願,第42類「インターネットにおける電子掲示板へのアクセスタイムの賃貸,インターネットサイトにおける検索エンジンの提供,インターネットサイトにおけるブログ検索用の検索エンジンの提供,オンラインによる登録ユーザーの認証及びこれに関する情報の提供,キーワードや業種・店舗名から電話番号の検索を可能とするための電子計算機用データベースへのアクセスタイムの賃貸,事業の管理・運営用コンピュータプログラムの設計・作成又は保守,写真情報を内容とするコンピュータデータベースへのアクセスタイムの賃貸,電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,インターネットにおける電子掲示板用のサーバーの記憶領域の貸与,ウェブサイト経由から接続可能なダウンロードできないソフトウェアアプリケーションの一時使用の提供,インターネットにおいて利用者が交流するためのソーシャルネットワーキング用サーバーの記憶領域の貸与,電気通信を利用した顧客情報管理装置のコンピュータプログラムの提供及びこれに関する情報の提供,電子認証のためのコンピュータプログラムの提供,インターネットにおける電子会議室用のサーバーの記憶領域の貸与,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」を含む第42類,第36類,第38類,第39類,第41類及び第43類ないし第45類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として,同年10月17日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。
なお,本件審判の請求の登録日は,平成30年3月5日であり,本件審判の請求の登録前3年以内の同27年3月5日から同30年3月4日までを,以下「要証期間」という場合がある。

第2 請求人の主張
請求人は,商標法第50条第1項の規定により,本件商標の指定役務中,第42類「インターネットにおける電子掲示板へのアクセスタイムの賃貸,インターネットサイトにおける検索エンジンの提供,インターネットサイトにおけるブログ検索用の検索エンジンの提供,オンラインによる登録ユーザーの認証及びこれに関する情報の提供,キーワードや業種・店舗名から電話番号の検索を可能とするための電子計算機用データベースへのアクセスタイムの賃貸,事業の管理・運営用コンピュータプログラムの設計・作成又は保守,写真情報を内容とするコンピュータデータベースへのアクセスタイムの賃貸,電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,インターネットにおける電子掲示板用のサーバーの記憶領域の貸与,ウェブサイト経由から接続可能なダウンロードできないソフトウェアアプリケーションの一時使用の提供,インターネットにおいて利用者が交流するためのソーシャルネットワーキング用サーバーの記憶領域の貸与,電気通信を利用した顧客情報管理装置のコンピュータプログラムの提供及びこれに関する情報の提供,電子認証のためのコンピュータプログラムの提供,インターネットにおける電子会議室用のサーバーの記憶領域の貸与,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」(以下「取消請求役務」という。)については登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を審判請求書,弁駁書及び口頭審理陳述要領書において要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定役務中,取消請求役務について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されていないから,商標法第50条第1項の規定により,その登録は取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は,乙第1号証,乙第2号証を証拠として,「『スマート介護』の文字からなる商標を,被請求人の業務に係わる介護・福祉施設向けデリバリーサービスのカタログの表紙等に付している。」としているが,当該証拠において,「スマート介護」の文字からなる商標は,商品「カタログ」に使用されており,取消請求役務に使用されていないことは明らかである。
(2)被請求人は,乙第3号証,乙第4号証を証拠として,「『スマート介護』の文字からなる商標を,本件サービスの公式ウェブサイト及び同ウェブサイトに表示されたデジタルカタログに付している。」としているが,当該証拠において,「スマート介護」の文字からなる商標は,役務「カタログ情報の提供」についての使用であり,取消請求役務には使用されていないことは明らかである。
(3)被請求人は,乙第5号証,乙第6号証を証拠として,「青色略正方形図形内において『スマート』及び『介護』の各文字が二段で白抜きされてなる商標を,介護・福祉施設向けデリバリーサービスを利用する際のアイコンとして使用している。」としているが,当該証拠において,取消請求役務に「スマート介護」の文字からなる商標は使用されていないことは明らかである。
(4)被請求人は,乙第7号証,乙第8号証を証拠として,「本件商標を,本件サービスの告知用ウェブサイトに付している。」としているが,当該証拠は,カタログ発行の告知であり,当該証拠において,取消請求役務に「スマート介護」の文字からなる商標が使用されていないことは明らかである。
(5)まとめ
以上のとおり,乙第1号証ないし乙第8号証は,要証期間内に日本国内において,取消請求役務について,本件商標を使用しているとの証拠にはならない。
3 口頭審理陳述要領書による主張
(1)乙第11号証及び乙第12号証は,発行元が不明であり,証拠としての信頼性がない。
また,乙第13号証及び乙第14号証は,配送先一覧として称して被請求人がプリントアウトしたものであり,証拠としての信頼性がない。
(2)乙第15号証には,「ジョインテックスカンパニー」の記載があるが,これが「プラス株式JTX」であるか不明である。
(3)被請求人の「合議体の暫定的見解に対する意見」について
ア 乙第1号証及び乙第2号証において,「スマート介護」からなる商標はカタログの名称としてフロントページに大きく表記されていると共に,各ページの最下欄に「スマート介護 お悩み解決!」と表記されている。ここで,「ウェブサイト作成」サービスの内容が掲載されているページにおいて,「スマート介護」の文字からなる商標は,「ウェブサイト作成」サービスの内容が掲載されている位置との関係で,それが「ウェブサイトの作成」サービスの商標であると需要者が認識できるように(自他役務識別標識力を発揮するように)使用されていない。すなわち,「ウェブサイト作成」サービスの内容が編集されているページにおいて,「Googleマップ インドアビュ?TM・HP作成サービス」の文字からなる商標がページ最上段,並びにその下方に大きく表示されている。
したがって,需要者は,「Googleマップ インドアビューTM・HP作成サービス」を,「ウェブサイト作成サービス」の商標(サービス名)として認識するものである,「スマート介護」の文字からなる商標を「ウェブサイト作成」サービスの商標として認識しない。
そのため,乙第1号証,乙第2号証において,「スマート介護」の文字からなる商標が,本件審判事件において請求人が取消を求めている取消請求役務に使用されていないことは明らかである。
イ 乙第3号証において,「スマート介護」の文字からなる商標が各種商品・サービスのデジタルカタログ情報を提供するウェブページのサイト名(タイトル)として表記されている。
ここで,乙第3号証には,「スマート介護」からなる商標は,「ウェブサイト作成」サービスの商標と需要者が認識するよう使用されていない。
また,乙第4号証には,「Googleマップ インドアビューTM・HP作成サービス」について掲載されているが,「スマート介護」の文字からなる商標が,「ウェブサイト作成」サービスの商標として需要者が認識できるように使用されていない。
さらに,乙第4号証が,乙第3号証のデジタルカタログ内の内容であるかについても確認できない。
ウ 乙第5号証において,「スマート介護」の二段表記がアイコンとして使用されているとしているが,「スマート介護」の二段表記の商標と,「ウェブサイトの作成」サービスの内容が掲載されている箇所との関係が乙第6号証からも不明である,需要者が「ウェブサイト」サービス名として「スマート介護」の二段表記の商標を認識できるようには表示されているかを確認できない。
エ 乙第7号証及び乙第8号証は,カタログ発行の告知であり,当該証拠において,請求人が取消を求めている取消請求役務に「スマート介護」の文字からなる商標が使用されていないことは明らかである。
オ まとめ
以上のとおり,被請求人が提出した証拠は,被請求人が,要証期間内に日本国内において,取消請求役務について,本件商標を使用しているとの証拠にはならない。

第3 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を答弁書,口頭審理陳述要領書,上申書において要旨以下のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第30号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件商標の使用について
ア 被請求人は,別掲のとおり,「スマート介護」の文字からなる商標(以下「使用商標1」という。)を,被請求人の業務に係る介護・福祉施設向けデリバリーサービス(以下「本件サービス」という。)のカタログの表紙等に付している(乙1,乙2)。
本件商標は,「スマート介護」の文字(標準文字)からなる商標であるところ,使用商標1は,本件商標の書体のみ変更を加えた同一の文字からなる商標である(商標法第50条第1項及び同法第70条第1項)。
イ 被請求人は,使用商標1を,本件サービスの公式ウェブサイト及び同ウェブサイトに表示されたデジタルカタログに付している(乙3,乙4)。
デジタルカタログは,紙媒体のカタログと同一内容の情報で構成された電子媒体であり,本件サービスの利用者は,デジタルカタログを閲覧して,本件サービスを利用することができる。
ウ 被請求人は,青色略正方形図形内において,「スマート」及び「介護」の各文字が二段で白抜きされてなる商標(以下「使用商標2」という。)を,本件サービスを利用する際のアイコンとして使用している(乙5,乙6)。
使用商標2は,本件商標と称呼及び観念を共通にする社会通念上同一と認められる商標である(商標法第50条第1項及び同第70条第1項)。
本件サービスの利用者は,スマートフォンの画面などに作成及び表示されたアイコン(使用商標2)をタップすることにより,本件サービスのウェブサイトに飛ぶことができ,デジタルカタログを閲覧して,本件サービスを利用することができる(乙5,乙6)。
エ 被請求人は,使用商標1及び使用商標2を,本件サービスの告知用ウェブサイトに付している(乙7,乙8)。
本件サービスの利用者は,本件サービスの告知用ウェブサイトに表示されたURLをクリックすることにより,本件サービスのウェブサイトに飛ぶことができ,デジタルカタログを閲覧して,本件サービスを利用することができる(乙5,乙6)。
(2)指定役務についての使用について
ア 本件サービスには,文具・生活用品,レクリエーション・リハビリ用品の販売サービスのほか,介護・福祉施設経営者向けの「お悩み解決サービス」が含まれる(乙1,乙2)。
「お悩み解決サービス」には,「ホームページ制作サービス」が含まれ(乙1,乙2,乙4)「ホームページ制作サービス」は,本件商標の指定役務中の「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守」に包含される「ウェブサイトの作成」である(乙9)。
「ウェブサイトの作成」に関し,制作費用につき,「¥67,000+税?」の記載があり,サービス年間利用料につき,「¥29,760+税(月額換算¥2,480+税)」の記載がある(乙1,乙2,乙4)。
当該告知用ウェブサイトのとおり,平成26年5月に開始されたものであり,本件サービスのカタログについては,「スマート介護カタログvol.3」が平成28年5月1日に30,000部発行されており,「スマート介護カタログvol.4」が平成29年5月1日に30,000部発行されおり(乙7,乙8),カタログの頒布は,要証期間内である。
また,デジタルカタログは,紙媒体のカタログと同一内容の情報で構成された電子媒体であるから,その公表時期は,紙媒体のカタログの配布時期と共通し,要証期間内である。
イ 「ホームページ制作サービス」は,介護・福祉施設などの利用者に対して直接提供される場合のほか,被請求人の取引先である販売店を通じて利用者に対して提供する場合があるところ,平成28年5月20日発行の請求書(乙10)は,本件サービスの販売店に対して発行されたものである。被請求人の販売店を通じて利用者に対して提供される場合,利用者は,販売店から本件サービスの成果物を受け取ることになる。
当該請求書中,平成28年4月28日の「10 991-335 HP初期製作費用_DS」の項目につき,「6,265円」の記載があり,同日の「10 991-336 HP初期製作費用_DH」の項目につき,「50,685円」の記載があり,同日の「初期導入サポートパック_DS」の項目につき,「900円」の記載があり,同日の「初期導入サポートパック_DH」の項目につき,「8,100円」の記載があり,被請求人は,要証期間内に,本件サービス中の「ホームページ制作サービス」を提供している。
ウ 結語
以上によれば,被請求人は,要証期間内に日本国内において,本件審判の取消請求役務中の「ウェブサイトの作成」のカタログ及びウェブサイトについて,本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標1及び使用商標2を付して頒布し,又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供しているといえる(商標法第2条第3項第8号)。
したがって,本件商標に係る商標権者は,要証期間内に日本国内において,取消請求役務について,本件商標の使用をしているものである。
2 口頭審理陳述要領書における主張
乙第11号証は,乙第1号証のカタログ(平成28年5月1日発刊のスマート介護vol.3)に関し,平成28年4月30日に印刷会社が被請求人宛てに発行した請求書一式であり,乙第12号証は,乙第2号証のカタログ(平成29年5月1日発刊のスマート介護vol.4)に関し,平成29年4月28日に印刷会社が被請求人宛てに発行した請求書一式である。
乙第1号証及び乙第2号証のカタログの作成者は被請求人であるが,カタログの印刷等の業務は,被請求人が印刷会社にその業務を委託しているところ,乙第11号証及び乙第12号証から,要証期間内における,乙第1号証及び乙第2号証のカタログの作成者,作成・印刷された事実を把握することができる。
次に,乙第13号証は,乙第1号証のカタログ(スマート介護vol.3)に関する配送先一覧であり,乙第14号証は,乙第2号証のカタログ(スマート介護vol.4)に関するは配送先一覧である。
乙第13号証には,乙第1号証のカタログ(スマート介護vol.3)の配布先等が記載されており,乙第14号証には,乙第2号証のカタログ(スマート介護vol.4)の配布日及び配布先等が記載されている。
乙第13号証及び乙第14号証から,要証期間内における,乙第1号証及び乙第2号証のカタログの配布方法(配布日・配布先等)を把握することができる。
(2)合議体の暫定的見解に対する意見
合議体は,カタログに記載された「プラス株式会社ジョインテックスカンパニー」と被請求人との関係が明確ではなく,請求書に記載された「プラス株式会社JTX」と被請求人との関係が明確ではない旨の暫定的見解を示されたが,乙第15号証及び乙第16号証のとおり,「プラス株式会社ジョインテックスカンパニー(プラス株式会社JTX)」は,被請求人の社内カンパニーである。
そして,「プラス株式会社JTX」は,「プラス株式会社ジョインテックスカンパニー」のうちの「ジョインテックスカンパニー」の表示部分を「JTX」と略語で表示したにすぎず,同一のカンパニーを示す。
(3)弁駁に対する意見
請求人は,被請求人提出の証拠(乙1?乙8)が取消請求役務についての本件商標の使用の証拠にならない旨主張する。
しかし,請求人の上記主張は当を失する。以下,その理由を述べる。
ア 上記第2の2(1)に対する意見
乙第1号証及び乙第2号証は,被請求人が本件サービスの提供するために発行されているカタログであり,本件サービスには,取消請求役務中の「ウェブサイトの作成」(ホームページ制作サービス)が含まれる(乙1,乙2,乙4,乙9)。そして,当該カタログは,「ウェブサイトの作成」(ホームページ制作サービス)に関する取引書類(商標法第2条第3項第8号)である。
したがって,本件商標は,取消請求役務との具体的関係において使用されているものであり,商品「カタログ」との具体的関係において本件商標が使用されているものではない。
イ 上記第2の2(2)に対する意見
乙第3号証及び乙第4号証は,被請求人が本件サービス(ホームページ制作サービスを含む。)の提供するために発信している公式ウェブサイト及びデジタルカタログであり,「ウェブサイトの作成」(ホームページ制作サービス)に関する情報が含まれる。
そして,公式ウェブサイト及びデジタルカタログに本件商標を使用することは,「役務に関する広告,価格表若しくは取引書類を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)であるから,本件商標は,取消請求役務との具体的関係において使用されているものである。
ウ 上記第2の2(3)に対する意見
乙第5号証及び乙第6号証は,本件サービスを利用する際のアイコンとして本件商標を使用していることを示す証拠であり,報告書記載の説明のとおり,アイコンをタップすれば,公式ウェブサイト及びデジタルカタログ(乙3)を見ることができる。
公式ウェブサイト及びデジタルカタログ(乙3)には,「ウェブサイトの作成」(ホームページ制作サービス)に関する情報が含まれる(乙4)。
このような仕組みになっていることに照らすと,アイコンとしての本件商標の使用は,「役務に関する広告,価格表若しくは取引書類を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)であるから,本件商標は,取消請求役務との具体的関係において使用されているものである。
エ 上記第2の2(4)に対する意見
乙第7号証及び乙第8号証は,本件サービス(ホームページ制作サービスを含む。)の告知用ウェブサイトであり,告知用ウェブサイトに表示)されたURLをクリックすることにより,本件サービスのウェブサイトに飛ぶことができ,デジタルカタログを閲覧して,本件サービスを利用することができる。そして,使用商標1及び使用商標2は,当該告知用ウェブサイトにおいて,本件サービスと具体的に関連する商標と理解できる位置に明記されている。
このような仕組みになっていることに照らすと,告知用ウェブサイトにおける本件商標の使用は,「役務に関する広告,価格表若しくは取引書類を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)であるから,本件商標は,取消請求役務に係る役務との具体的関係において使用されているものである。
オ 上記第2の2(5)に対する意見
乙第1号証ないし乙第8号証は,いずれも,被請求人が要証期間内に日本国内において,取消請求役務について本件商標を使用しているとの十分な証拠になるものであり,請求人の主張は,いずれも理由がなく,失当というほかない。
3 上申書(平成30年10月26日付け)における主張
(1)乙第12号証は,乙第2号証のカタログ(スマート介護カタログvol.4)一式に係る請求書であって,同カタログを30,000部作成したものについての請求書である。
同請求書の商品名欄記載の「企画編集」,「撮影」,「制作」,「データ納品」,「その他」,「用紙」,「印刷」,「名入れ」,「発送」,「納品用ダンボール」,「発送(ユーザー直送分)」の数量は,「1」と記載されているが,30,000部のカタログ作成の各作業に対応する作業項目数として「1」を記載したものである。
(2)乙第2号証のカタログを30,000部作成し,頒布した事実を示す乙第12号証以外の証拠として,乙第17号証の見積明細書,乙第18号証ないし乙第30号証の請求書及び見積明細書を提出する。
乙第17号証の見積明細書は,乙第2号証のカタログの作成費用に係る見積書であり,作業項目毎に,詳細な数量・単価・金額が記載されている。30,000部のカタログ作成に係る見積明細書であることは,例えば「スマート介護カタログ印刷・名入れ 30,000冊」という記載から把握できる。そして,乙第17号証より,乙第2号証のカタログにつき,社内用カタログが555部,販売店サンプル用カタログが610部,サプライヤー用カタログが400部発送されることを把握できる。
次に,乙第18号証ないし乙第30号証の請求書及び見積明細書は,乙第2号証のカタログの配送費用に係る請求書及び見積書である。乙第18号証は,初回配送分のものであり,15,062部の配送費が記載されている。
乙第19号証は,平成29年5月都度配送分のものであり,1,342部の配送費が記載されている。乙第20号証は,平成29年6月都度配送分のものであり,1,643部の配送費が記載されている。乙第21号証は,平成29年7月都度配送分のものであり,912部の配送費が記載されている。乙第22号証は,平成29年8月都度配送分のものであり,447部の配送費が記載されている。乙第23号証は,平成29年9月都度配送分のものであり,748部の配送費が記載されている。乙第24号証は,平成29年10月都度配送分のものであり,1,643部の配送費が記載されている。乙第25号証は,平成29年11月都度配送分のものであり,1,417部の配送費が記載されている。乙第26号証は,平成29年12月都度配送分のものであり,1,228部の配送費が記載されている。乙第27号証は,平成30年1月都度配送分のものであり,584部の配送費が記載されている。乙第28号証は,平成30年2月都度配送分のものであり,663部の配送費が記載されている。乙第29号証は,平成30年3月都度配送分のものであり,1,208部の配送費が記載されている。乙第30号証は,平成30年4月都度配送分のものであり,662部の配送費が記載されている。
以上より,初回配送分から平成30年4月都度配送分までの合計配送数は,27,559部である
(3)カタログの作成・頒布方法の詳細について
カタログの作成は,被請求人が印刷会社にその業務を委託して作成される。カタログの頒布は,被請求人が印刷会社にその業務を委託して配送する場合と,被請求人が保有するものを直接配送する場合の2つの方法があるが,主に前者の方法で頒布される。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出した証拠及び同人の主張によれば以下の事実が認められる。
(1)乙第2号証について
乙第2号証は,「スマート介護vol.4」と称するカタログの抜粋の写し(以下「カタログ」という。)である。
ア カタログの表紙について
カタログの表紙上部に使用商標1(スマート介護)が表示されている。
また,前記使用商標1の文字の右下に,「vol.4」,「カタログ/有効期限」及び「2018.4.30まで」の記載がある。
さらに,表紙の右下に「プラス株式会社ジョインテックスカンパニー」の記載がある。
イ カタログの2葉目について
カタログの2葉目には,「施設経営者様への『お悩み解決』メニュー」の見出しの下,「こんなとき,どうしよう?!」の項目に,「ホームページ制作サービス」(以下「使用役務」という場合がある。)の記載がある。
ウ カタログの3葉目について
カタログの3葉目には,「GoogleストリートビューTM・/ホームページ制作サービス」の見出しの下,「ホームページをお手軽に/制作・リニューアルしませんか?/ホームページ制作サービス」の項目に,「リーズナブルの料金体系/制作から,日々のランニング費用までリーズナブルにご提供いたします。様々な有料オプション※もご用意していおりますので,ご予算に応じてご利用いただけます。※例)新規ドメイン取得支援:¥10,000+税」,その下に「制作費用/¥67,000+税 + サービス年間利用料/¥29,760+税」及び「※初回は,制作費用とサービス年間利用料の合計金額でのご請求となります。」等の記載がある。
エ カタログの裏表紙について
カタログの裏表紙には,左下に「プラス株式会社 ジョインテックスカンパニー」,「東京都千代田区永田町2丁目13番10号 プルデンシャルタワー 12F/13F」の記載がある。
(2)乙第12号証について
乙第12号証は,カタログの請求書であり,「東京都千代田区永田町2丁目13番10号プルデンシャルタワー13F プラス株式会社ジョインテックスカンパニー 御中」,「納品日」の欄に「H29.4.28」,「商品名」の欄に「スマート介護カタログvol.4 制作」,「印刷」等の記載がある。
(3)乙第8号証について
乙第8号証は,被請求人のウェブサイトの写しであり,「ニュースリリース/プラス、『スマート介護』vol.4カタログ発刊/2017.05.09」の見出しの下,「<「スマート介護」カタログvol.4 概要>」の項目に,「発刊日:2017年5月1日(年1回)」,「発行部数:30,000部」,「配送エリア:全国(一部離島を除く)」の記載がある。
(4)乙第14号証について
乙第14号証は,カタログを配送業者から顧客へ発送したデータの写しであり,「vol.4カタログ お客様データ一覧 西濃運輸」の見出しの下,「発送年月日」の欄に「2017.04.24」,「2017.04.25」,「2017.04.26」,「2017.04.27」,「2017.04.28」,「2017.04.29」及び「2017.5.01」の記載ある。
そして,前記「発送年月日」の欄に対応する「着荷主住所1」の欄に例えば「大阪府大阪市福島区」,「群馬県伊勢崎市」等の住所の記載があり,また,「品名・荷役2」の欄に「スマート介護vol.4」の記載がある。
(5)乙第16号証について
乙第16号証は,被請求人のウェブサイトの写しであり,1葉目に「PLUS JOINTEX/プラス株式会社 ジョインテックスカンパニー」の見出しの下,「商号 プラス株式会社」,「カンパニー名 ジョインテックスカンパニー」,「本部所在地 東京都千代田区永田町2丁目13番10号 プルデンシャルタワー 12F・13F」の記載がある。
(6)乙第17号証について
乙第17号証は,カタログを印刷,作成した業者の見積明細書であり,3葉目に「プラス株式会社 ジョインテックスカンパニー 御中」,「平成29年4月20日」,「品名」の欄に「スマート介護カタログ・印刷・名入れ30,000冊」の記載がある。
(7)乙第18号証について
乙第18号証は,要証期間にカタログを配送した業者の請求書及び見積明細書である。
請求書には,「プラス株式会社/ジョインテックスカンパニー御中」,「納品日」の欄に「H29.4.28」,「商品名」の欄に「スマート介護カタログvol4 制作」,「発送(ユーザー直送分)」の記載がある。
また,見積明細書には,「プラス株式会社 ジョインテックスカンパニー 御中」,「平成29年4月20日」,「品名」の欄に「スマート介護カタログ 発送」,「ユーザー用15,062部」の記載がある。
2 判断
(1)使用者について
カタログ(乙2)の表紙には,使用商標1が記載されており,当該カタログの裏表紙に記載されている「プラス株式会社ジョインテックスカンパニー」はカタログの発行元を表したもの捉えることができるものであり,当該「プラス株式会社ジョインテックスカンパニー」は,被請求人のウェブサイト(乙16)によれば,被請求人の社内カンパニーであるから,被請求人の一部署といえる。
したがって,使用商標1の使用者は,被請求人(商標権者)といえる。
(2)使用商標について
本件商標は,上記第1のとおり,「スマート介護」の文字を標準文字で表してなるところ,使用商標1は,別掲のとおり,青地に白抜きで「スマート介護」と横書きしてなるものである。
そして,両者は,外観において,文字のつづりが同一であり,称呼においても同一の称呼を生じるから,使用商標1は,本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
(3)使用役務について
カタログ(乙2)の2葉目には使用役務である「ホームページの制作」の記載があり,3葉目には,当該サービスの料金体系及び制作費用が掲載されていることからすれば,使用役務は,本件商標の指定役務中の「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守」の範ちゅうに属する役務と認められる(乙2)。
(4)使用時期について
被請求人のウェブサイト(乙8)によれば,カタログ(乙2)の発刊日は平成29年(2017年)5月1日(年1回)であり,配送エリアは全国(一部離島を除く)であること(乙8),また,カタログは,印刷業者によって,平成29年4月頃までに印刷,作成され(乙12,乙17),配送業者によって,平成29年4月24日ないし5月1日に日本国内の販売店やユーザーへ頒布(配送)していた(乙14,乙18)と認められるものであり,これらの日付は,いずれも要証期間のものである。
(5)小括
上記(1)ないし(4)からすれば,被請求人(商標権者)は,要証期間に日本国内において,取消請求役務の範ちゅうに属する「ホームページの制作」に使用していたということができる。
そして,上記行為は,商標法第2条第3項第8号の「商品若しくは役務に関する広告,価格表若しくは取引書類に標章を付して頒布する行為」に該当する。
3 請求人の主張について
(1)請求人は,被請求人のカタログは,商品「カタログ」に使用されているものであり,第42類の指定役務に使用にされていない旨主張している。
しかしながら,当該カタログは,被請求人の取り扱う商品又は役務の内容の紹介や料金を記載しているものであって,販売店やユーザーに頒布するものであることからすると,被請求人の取り扱う商品や役務を内容とする「カタログ」と捉えるのが自然である。
(2)使用商標1はカタログの名称として表紙に大きく表記されていると共に,各ページの最下欄に「スマート介護 お悩み解決!」と表記され,「ウェブサイトの作成」の役務内容が掲載されているページにおいて,使用商標1は,「ウェブサイトの作成」の役務の内容の商標であると需要者が認識できるように使用されておらず,また,「ウェブサイトの作成」の役務を掲載しているページにおいて,他の文字からなる商標が最上段等に大きく表示されていることからしても,使用商標1は,「ウェブサイトの作成」サービスの内容の商標であると需要者が認識できるように使用されていない旨主張している
しかしながら,カタログに掲載している役務にカタログの名称以外の商標が使用されているとしても,これらのカタログの名称以外の商標が使用されている役務について,カタログを介して役務の提供をしていることからすれば,カタログの名称がカタログに掲載されている役務の商標として機能をしているとみるのが自然である。
したがって,請求人の主張はいずれも採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者が,取消請求役務の範ちゅうに含まれる「ホームページの制作」について,本件商標の使用をしていたことを証明したものと認められる。
したがって,本件商標の登録は,その請求に係る指定役務について,商標法第50条の規定により取り消すことができない
よって,結論のとおり審決する。
別掲
別掲 使用商標1(色彩は原本を参照)


審理終結日 2020-09-18 
結審通知日 2020-09-24 
審決日 2020-11-20 
出願番号 商願2014-40435(T2014-40435) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (W42)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 あおい 
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 小俣 克巳
齋藤 貴博
登録日 2014-10-17 
登録番号 商標登録第5711249号(T5711249) 
商標の称呼 スマートカイゴ、スマート 
代理人 飯島 紳行 
代理人 藤森 裕司 

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