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審決分類 審判 全部取消 商標の同一性 無効としない Z41
管理番号 1370184 
審判番号 取消2019-300858 
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2019-11-19 
確定日 2020-12-21 
事件の表示 上記当事者間の登録第4246767号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
登録第4246767号商標(以下「本件商標」という。)は、「養 正 館」の漢字を標準文字で表してなり、平成9年11月21日登録出願、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,動物の調教,植物の供覧,動物の供覧,図書及び記録の供覧,美術品の展示,庭園の供覧,洞窟の供覧,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,ゴルフの興行の企画・運営又は開催,相撲の興行の企画・運営又は開催,ボクシングの興行の企画・運営又は開催,野球の興行の企画・運営又は開催,サッカーの興行の企画・運営又は開催,柔道・柔術・剣道・空手・合気道・その他の武道の興行の企画・運営又は開催,競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,当せん金付証票の発売,音響用又は映像用のスタジオの提供,運動施設の提供,娯楽施設の提供,興行場の座席の手配,映写機及びその附属品の貸与,映写フィルムの貸与,楽器の貸与,スキー用具の貸与,スキンダイビング用具の貸与,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,おもちゃの貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与」を指定役務として、同11年3月5日に設定登録、その後、同20年11月11日及び同31年2月26日に、商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録は、令和元年12月2日になされたものであり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、平成28年12月2日から令和元年12月1日までの期間(以下「本件要証期間」という。)である。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証(以下、証拠の表記に当たっては、「甲(乙)第○号証」を「甲(乙)○」のように、「第」及び「号証」を省略して記載する。)を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取消しされるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
本件商標の通常使用権者は存在しないから、被請求人の答弁には理由がない。
(1)前提
乙2の1の3、乙2の2の2及び乙2の3の5の、剱持博章(以下「劔持」という。)、畑口和三(以下「畑口」という。)及び森下龍志(以下「森下」という。)による各証明部分は、いずれも被請求人による偽造であること
ア 乙2の1の3について
(ア)乙2の1の3は、令和2年1月17日付けの被請求人による証明の要請の部分(以下「証明要請部分」という。)と、同年1月20日付けの劔持による証明の部分(以下「証明部分」という。)が、共に、同一の1枚の紙面上に、同一の字体及び文字サイズ(フォント)をもって、印字されたものである。
これからして、上記両部分は、共に、一人の人物が、一つの(Word等の)文書ファイルとして作成し、一つの機会にプリンターで出力して作成したものであることが合理的に明らかである。
(イ)上記(ア)の事実のみからして、既に、乙2の1の3の記載内容は、事実に反することが明らかである。
第一に、上記両部分は、一つの機会(一つの時点)において作成されたにもかかわらず、文面上、証明要請部分の日付は令和2年1月17日、証明部分の日付は同年1月20日と、別日付になっている。これは論理的にあり得ないから、上記の日付の記載の少なくとも一つは、虚偽である。
第二に、上記両部分は、一人の人物が作成したにもかかわらず、文面上、証明要請部分の作成者は被請求人、証明部分の作成者は劔持と、別の人物になっている。これも論理的にあり得ないから、両部分の作成者の記載の少なくとも一つは、虚偽である。かつ、乙2の1の3を作成する積極的動機を有するのは、被請求人であるから、要するに、証明部分の作成者の記載が虚偽であり、証明部分についても、被請求人自身が作成したことが明らかである。
(ウ)以上を踏まえれば、要するに、乙2の1の3は、証明部分についても、被請求人が(作成者を偽って)文書ファイルで作成し、被請求人において、記載の信憑性を増そうと考え、同部分の日付を、証明要請部分の日付と殊更にずらして後日付とする細工を施した上、被請求人が入手した劔持姓の認印を用いて押印したものであることが明らかである。
すなわち、証明部分は被請求人による偽造である。
(エ)かつ、以上の経緯からは、乙2の1の3への押印(すなわち偽造)に用いられた劔持姓の認印の印影からは、劔持による押印ではなく、被請求人による押印であることが、推認されることになる。
イ 乙2の2の2について
劔持を畑口に読み替え、証明部分の日付を1月20日から1月21日に読み替える他は、上記アで乙2の1の3について論じたところが、そのまま当てはまる。
ウ 乙2の3の5について
劔持を森下に読み替え、証明部分の日付を1月20日から1月25日に読み替える他は、上記アで乙2の1の3について論じたところが、そのまま当てはまる。
(2)前提からの推論
乙2の1、乙2の2及び乙2の3(いずれも商標使用権許諾契約書)は、いずれも被請求人による偽造であること
ア 乙2の1について
(ア)乙2の1は、文面上は、被請求人と劔持によって、平成22年10月10日に作成された、両者間の商標使用権許諾契約書である。
しかし、実際は、乙2の1は、被請求人によって(おそらくは令和2年1月頃に至って)偽造されたものである。
(イ)すなわち、第一に、上記(1)ア(特に、同(エ))で述べたとおり、乙2の1の3への押印に用いられた劔持姓の認印の印影からは、劔持による押印ではなく、被請求人による押印であることが、推認されることになる。
そうであるところ、乙2の1の3上の劔持姓の認印の印影と、乙2の1上の劔持姓の認印の印影は、明らかに同一である。
したがって、乙2の1の劔持姓の押印は、劔持による押印ではなく、被請求人による押印であることが明らかである。
それゆえ、乙2の1は、被請求人による偽造である。
イ 乙2の2について
上記アと同様の理由で、乙2の2は、被請求人による偽造である。
ウ 乙2の3について
上記アと同様の理由で、乙2の3は、被請求人による偽造である。
エ 乙2の1、乙2の2及び乙2の3全てについて
(ア)以上に加えて、乙2の1(文面上は平成22年(2010年)10月作成)、乙2の2(文面上は平成30年(2018年)4月作成)及び乙2の3(文面上は平成20年(2008年)9月作成)と、乙2の1の3、乙2の2の2及び乙2の3の5(いずれも文面上は令和2年(2020年)1月作成)とは、文面上の作成日において最大で満11年以上の隔たりがあり、かつ、被請求人以外の当事者がそれぞれ異なる、別個の機会に別個の意思決定に基づき作成されたはずの書面にもかかわらず、これらへの押印に用いられた被請求人(望月姓)の認印の印影はすべて同一であり(実印なら格別、単なる認印の印影が、長期間にわたりこれだけ一致することは不自然である。)、かつ、これらの書面の字体及び文字サイズ(フォント)、さらには印刷のシャープさ(インクの濃淡・シミの有無等の印刷上の個性)までも酷似しており、さらに、乙2の1、乙2の2及び乙2の3については、当事者名を除いた本文部分は、一言一句、余白の字数に至るまで、相互に完全に同一である。
(イ)上記アないしウに上記(ア)の事情を併せれば、乙2の1、乙2の2及び乙2の3は、いずれも文面上の作成日に作成されたものではなく、本件審判の請求がなされた後の令和2年1月頃(乙2の1の3、乙2の2の2及び乙2の3の5を作成した頃)に、乙2の1の3、乙2の2の2及び乙2の3の5の作成(証明部分については偽造)の作成と併せて、本件審判を有利に進める目的で、日付を過去に遡及させて、被請求人が偽造したものと、合理的に推認される。
(3)原本確認の必要性について
なお、上記(1)及び(2)で述べた点に関し、乙2の1、乙2の2及び乙2の3、並びに乙2の1の3、乙2の2の2及び乙2の3の5につき、被請求人に対して原本の提出を求めて、原本確認の上、その成立の真否につき、慎重に審理されたい。
(4)小括
以上より、乙2の1、乙2の2及び乙2の3は偽造された証拠であるからこれに基づく事実認定はなされるべきではなく、かつ、これらの偽造証拠のほかは、被請求人が劔持、畑口及び森下に本件商標の通常使用権を許諾したことを示す証拠は存しない。
すなわち、劔持、畑口及び森下が、本件商標の通常使用権者であるとは認定できない。
したがって、劔持、畑口及び森下が、本件商標を本件指定役務に使用しているか否かを論じるまでもなく、本件審判請求が成り立たない旨の被請求人の答弁には理由がない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙1ないし乙2(枝番号を含む。)を提出している。
1 被請求人は、本件要証期間内に日本国内において、通常使用権者が「スポーツの教授」について本件商標を使用していることを立証する。
(1)本件商標権には、通常使用権者が存在していること
乙2の1は、被請求人と剣持との間に取り交わされた契約書の写しであり、これによれば、被請求人は、劔持に対して、平成22年10月10日に本件商標について指定役務「技芸・スポーツ又は知識の教授」につき通常使用権を許諾している事実がある。
乙2の2は、被請求人と畑口との間に取り交わされた契約書の写しであり、これによれば、被請求人は、畑口に対して、平成30年4月1日に本件商標について指定役務「技芸・スポーツ又は知識の教授」につき通常使用権を許諾している事実がある。
乙2の3は、被請求人と森下との間に取り交わされた契約書の写しであり、これによれば、被請求人は、森下に対して、平成20年9月25日に本件商標について指定役務「技芸・スポーツ又は知識の教授」につき通常使用権を許諾している事実がある。
(2)通常使用権者は起算日以前に本件商標を「スポーツの教授」に使用していること
ア 乙2の1ないし乙2の1の5は、本件商標が指定役務「スポーツの教授」に使用されている事実を示すものであり、乙2の1は、靱持との間に取り交わされた契約書の写し、乙2の1の1は、国際武道塾 養 正 館(正風会 静岡)入門規定一式の写し、乙2の1の2は、入門届の写し(特に、A氏の平成30年2月1日付け入門届、B氏の平成31年1月6日付け入門届を参照。)、乙2の1の3は、乙2の1の2の入門届記載の者のうち5名が令和2年1月17日現在会員を継続していることを示すもの、乙2の1の4は、活動内容の裏付けである平成29年度、平成30年度及び令和元年度の収支決算書の写し、乙2の1の5は、稽古場所である静岡市北部体育館の領収書の写しであって、乙2の1の1に記載の稽古日である土・日曜日午後6時30分(6時)ないし午後8時30分(9時)に、稽古場所である公共施設(静岡市北部体育館)を使って、平成29年ないし令和元年に稽古を行っていることを示すものである。
なお、乙2の1の5記載の日付の「17年」、「18年」及び「19年」は、それぞれ、「2017年」、「2018年」及び「2019年」を省略したもので、乙2の1の5記載の日時より、乙2の1の1に記載の稽古日である土・日曜日午後6時30分(6時)ないし午後8時30分(9時)に、稽古場所である公共施設(静岡市北部体育館)を使って、平成29年ないし令和元年に稽古を行っていることを示すものである。
イ 乙2の2ないし乙2の2の5は、本件商標が指定役務「スポーツの教授」に使用されている事実を示すものであり、乙2の2は、畑口との間に取り交わされた契約書の写し、乙2の2の1は、入門届の写し、乙2の2の2は、乙2の2の1の入門届記載の2名が平成30年4月1日から令和2年1月17日現在、会員を継続していることを示すもの、乙2の2の3は、会員募集のパンフレットの写し、乙2の2の4は、乙2の1の1に記載の稽古場所の登録証の写し、乙2の2の5は、乙2の1の1に記載の稽古場所の登録証の写しである。
ウ 乙2の3ないし乙2の3の7は、本件商標が指定役務「スポーツの教授」に使用されている事実を示すものであり、乙2の3は、森下との間に取り交わされた契約書の写し、乙2の3の1は、武道養正館品川倶楽部運営規約の写し、乙2の3の2は、活動内容の裏付けであるH30年度会計報告の写し、乙2の3の3は、団体名「武道養正館品川倶楽部」の社会教育関係団体登録申請書兼パスワード申請書(稽古場所の申請書)の写し、乙2の3の4は、団体名「武道養正館品川倶楽部」の稽古場所の登録証の写し、乙2の3の5は、稽古場所の申請書記載の者のうち6名が、平成31年4月1日より令和2年1月25日現在、会員を継続していることを示すもの、乙2の3の6は、品川区の社会教育関係団体の登録申請の手引きの写し、乙2の3の7は、乙2の3の3の社会教育関係団体登録申請書兼パスワード申請書記載の戸越台中学校格技室を具体的に示すものである。
なお、乙2の3の6によれば、登録証の有効期限は2年間となっているので、乙2の3の4の登録証の有効期間は、令和元年9月30日から令和3年9月30日までとなる。また、乙2の3の3には、申請日が記載されていないが、乙2の3の6によれば、申請から交付まで2週間程かかることから、乙2の3の3の申請は、令和元年9月半ばであり、少なくとも、令和元年12月2日以前の3年の間に行われている。
エ 以上のことから明らかなように、本件商標については、本件要証期間内に、取り消しに係る指定役務「スポーツの教授」について本件商標を使用している。
2 よって、答弁の趣旨とおりの審決を求める。

第4 当審の判断
1 認定事実
被請求人の提出に係る各証拠によれば、次の事実が認められる。
(1)「国際武道塾 養 正 館(正風会 静岡) 入門規定」と題する書面(以下「本件入門規定書」という。)には、その1葉目の上下方向の中央付近に、水平な直線が付されており、当該直線の上部に、「静岡支部- 養正館合気道 日本柔術 居合道(香取神道流系)-」、「*稽古日(4回/月)及び時間(中略)土・日曜日 午後6時30分(6時)?午後8時30分(9時)」、「※稽古場所 公共施設(静岡市北部体育館)」、「※指導者 養正館師範 劔持博章(合気道八段 日本柔術八段 居合道参段(後略)」、「入門費 一 金 5,000円」、「月謝 一 金 5,000円 一般(週1コース) 4,000円 18歳未満(週1コース)(後略)」及び「静岡支部連絡先(中略)劔持(けんもつ)博章」と記載されている。また、本件入門規定書には、当該直線の下部に、「国際武道塾 養 正 館(正風会 静岡) 入門届」(以下「本件入門届」という。)と記載されている。
そして、本件入門届には、「誓約 私は会の趣旨に賛同し、努力精進します。 また、稽古中の怪我等については一切の責任を問いません」と記載されているとともに、日付、本人氏名及び住所その他の連絡先を記入する欄が設けられている。(乙2の1の1)
(2)C氏は、平成28年12月28日、劔持に、本件入門届を、所定事項を記入した上で、提出した。(乙2の1の2)
(3)A氏は、平成30年2月1日、劔持に、本件入門届を、所定事項を記入した上で、提出した。(乙2の1の2)
(4)「商標使用権許諾契約書」と題する書面には、「望月鉄馬(以下『甲』という)と剣持博章(以下『乙』という)とは、甲の所有する下記の登録商標(以下『本商標』という)の乙に対する通常使用権の許諾について、次のとおり契約を締結する。」、「登録番号 第4246767号」、「指定役務 技芸・スポーツ又は知識の教授」、「第1条(通常使用権の設定) 甲は乙に対し、本商標について次の範囲の通常使用権を許諾する。 役務 技芸・スポーツ又は知識の教授 地域 日本国内 期間 本契約期間中 対価 無償」、「第2条(有効期間) 本契約の有効期間は、本契約締結日から3年間とする。 但し、期間満了の3ケ月前迄に甲もしくは乙から書面による異議の申し出がない場合は、第1条に定める条件と同一の条件で更に3年間延長されるものとする。以後も同様とする。」及び「本契約締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名捺印のうえ各自その1通を保有する。 平成22年10月10日 甲(中略)望月 鉄馬 乙(中略)劔持 博章」と記載されているとともに、「望月」の印影及び「劔持」の印影が付されている。(乙2の1)
2 判断
(1)使用商標について
本件商標は、上記第1のとおり、「養 正 館」の漢字を標準文字で表してなるものである。
他方、上記1(1)の認定によれば、本件入門規定書には、「国際武道塾 養 正 館」の文字(以下「使用商標」という。)が記載されているところ、使用商標の構成中、「養」、「正」及び「館」の漢字は、「国際武道塾」の漢字に比べて、やや大きく太字で書されている(乙2の1の1の一葉目の第1行)。また、同構成中、「国際武道塾」の漢字は、その構成文字からみて、「国際的な武道の塾」程の意味合いを容易に理解させるものであるから、使用役務(後記(2))との関係においては、自他役務識別標識としての機能を有しないかあるいは極めて弱いものというのが相当である。
そうすると、使用商標は、その構成中、「養 正 館」の部分が出所識別標識としての要部ということができる。
してみると、本件商標と使用商標の要部とは、いずれも、「養 正 館」の漢字から構成されているから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一といえるものである。
(2)使用役務について
上記1(1)の「養正館合気道 日本柔術 居合道(香取神道流系)」の記載によれば、使用商標は、いわゆる「武道の教授」の役務について使用されていると認められる。そして、当該役務は、本件商標の指定役務中、「技芸・スポーツ又は知識の教授」の範ちゅうに属するものである。
(3)使用時期、使用場所及び使用行為について
上記1(1)の認定のとおり、本件入門規定書は、使用役務についての入門費及び月謝に係る規定を含むから、役務に関する価格表であるといえる。
そして、劔持は、上記1(2)及び(3)のとおり、平成28年12月28日及び同30年2月1日の日付でそれぞれ入門届けを受け取っていることからすれば、少なくとも、平成28年12月28日頃及び同30年2月1日頃に、静岡県内において、本件入門規定書を配布したことが推認できるところ、本件要証期間は、上記第1のとおり、平成28年12月2日から令和元年12月1日までの期間である。加えて、本件入門規定書には、使用商標が記載されている。
以上によれば、劔持は、本件要証期間内に、日本国内において、使用役務に関する価格表に使用商標を付して頒布したものと認められ、この行為は、商標法第2条第3項第8号に該当する。
(4)使用者について
上記(3)の認定判断に上記1(1)の認定を併せてみれば、本件要証期間内に、使用役務に関する価格表に使用商標を付して頒布した劔持は、少なくともその当時において、養正館師範の肩書きをもっていたことになる。
このような立場の劔持が、使用商標を以上のように使用した状況にかんがみれば、商標権者は、劔持に対して、少なくとも上記頒布を行った時期において、本件商標について、「技芸・スポーツ又は知識の教授」の範囲で、通常使用権を許諾していたと認めるのが相当である(なお、この認定は、上記1(5)で認定した「商標使用権許諾契約書」と題する書面(乙2の1)の記載事項にも沿う。)。
したがって、本件商標の使用者は、通常使用権者である劔持である。
(5)小括
以上によれば、本件商標の通常使用権者である劔持が、本件要証期間内に、日本国内において、本件商標の指定役務中「技芸・スポーツ又は知識の教授」の範ちゅうに属する役務について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしたといえる。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、乙2の1が、被請求人によって偽造された文書であり、かつ、乙2の1のほかには、被請求人が劔持に本件商標の通常使用権を許諾したことを示す証拠が存在しないから、劔持は、通常使用権者であるとは認定できない旨主張する。
しかしながら、乙2の1が仮に本件審判に証拠提出されていないとしても、上記2(4)で認定判断したとおり、劔持は、通常使用権者であると認定できる。
(2)請求人は、乙2の2及び乙2の3についても同様の主張をするが、当該主張は、上記2の認定判断を左右するものではない。
(3)よって、請求人の主張は、いずれも、採用することができない。
4 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者が、その請求に係る指定役務中「技芸・スポーツ又は知識の教授」の役務の範ちゅうに属する「武道の教授」の役務について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしたことを証明したということができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2020-09-28 
結審通知日 2020-10-01 
審決日 2020-11-09 
出願番号 商願平9-179270 
審決分類 T 1 31・ 11- Y (Z41)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 木村 一弘
特許庁審判官 山村 浩
中束 としえ
登録日 1999-03-05 
登録番号 商標登録第4246767号(T4246767) 
商標の称呼 ヨージョーカン、ヨージョー、ヨーセーカン、ヨーセー 
代理人 北川 修平 
代理人 入江 一郎 

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