ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y36 |
---|---|
管理番号 | 1369068 |
審判番号 | 取消2019-300315 |
総通号数 | 253 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2021-01-29 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2019-04-18 |
確定日 | 2020-10-26 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5074161号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5074161号商標(以下「本件商標」という。)は、「ORE」の欧文字を標準文字で表してなり、平成18年10月26日に登録出願、「建物の管理,建物の貸与」を含む第36類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同19年8月31日に設定登録されたものである。 そして、本件審判の請求の登録は、令和元年5月13日であり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、平成28年5月13日から令和元年5月12日までの期間(以下「要証期間」という。)である。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。 以下、証拠の表記に当たっては、「甲(乙)第○号証」を「甲(乙)○」のように省略して記載する。 1 請求の理由 本件商標は、その指定役務について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。 2 答弁に対する弁駁 (1)被請求人は、乙1及び乙3を提出し、「ORE広尾ビル」について、被請求人が所有する建物の貸与を目的とした広告の展示又は頒布をしていると主張する。 しかしながら、乙1の広告は、広告日の記載がない。乙3によれば、2019年3月20日付けで「ORE広尾ビル」の賃貸借契約が締結されているが、被請求人が、要証期間内に、乙1の広告を展示又は頒布したことは証明されていない。 (2)被請求人は、乙2及び乙4を提出し、「ORE名古屋伏見ビル」について、被請求人が、被請求人の子会社であるオリックス銀行株式会社が所有する物件の貸与を目的とした広告の展示又は頒布をしていると主張する。 しかしながら、乙4の賃貸借契約書によれば、契約締結日は、2010年7月21日と9年以上前の日付である。したがって、乙2の広告が、たとえ、要証期間内の広告であるとしても、乙2の広告が、被請求人によってなされたものであるか明らかではない。 なお、被請求人は、乙4の賃貸借契約書は、被請求人とオリックス銀行株式会社との間で、2016年8月1日に締結されたと述べているが、乙4によれば、貸主は「オリックス不動産株式会社」であり、契約締結日は、2010年7月21日である。 (3)乙5ないし乙8は、「ORE●●ビル」の構成からなる賃貸物件に関する広告であるところ、いずれも展示又は頒布された日付が明記されていない。また、乙5ないし乙7は、ウェブサイトに掲載されていたものではなく、紙媒体の広告と推察されるところ、頒布された事実も証明されていない。さらに、乙5、乙6及び乙8には、賃貸物件の所有者の記載もない。 (4)被請求人は、乙9ないし乙14を提出し、被請求人の子会社であるオリックス不動産投資法人が、本件商標の通常使用権者であって、本件商標を指定役務「建物の管理,建物の貸与」に使用していると主張する。 しかしながら、オリックス不動産投資法人が行っている業務は、投資家や金融機関から調達した資金を不動産で運用し、得た利益を分配金として投資家等に還元する業務であるところ、これは、「不動産投資」であって、「建物の管理」や「建物の貸与」の範躊に含まれる役務ではない。 また、乙14は、オリックス不動産投資法人が、「ORE札幌ビル」「ORE錦二丁目ビル」「ORE大宮ビル」を保有していることを示すにすぎず、本件商標を使用して「建物の管理」や「建物の貸与」を行っていたことを証明するものでもない。 さらに、乙14は、各物件の取得時期は記載されているが、「建物の管理」や「建物の貸与」に関する日付の記載はなく、これらを要証期間内に行っていたことを証明するものではない。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙1ないし乙14を提出した。 1 被請求人は、本件商標を指定役務「建物の管理,建物の貸与」に要証期間内に実際に使用している。 2 被請求人は、自ら又は100%子会社であるオリックス銀行株式会社が所有する物件の貸与を目的とした広告を展示又は頒布している(乙1及び乙2)。 この広告には、「ORE広尾ビル」及び「ORE名古屋伏見ビル」の用語が商標的使用態様で表示されている。このうち「広尾」「名古屋伏見」「ビル」は指定役務との関係では自他役務識別力の低い用語であるか、又は商標に付加された地名(対象物件名)にすぎないことから、「ORE」部分が自他役務識別標識としての機能を発揮するとともに、出所表示機能及び広告的機能を発揮した商標部分であると考えられる。 乙2に係る広告中に「情報最終更新」として「2018/08/24」との表示があり、少なくとも2018年8月24日にはこの広告が掲載されていたことが明確であると考えられる。また、乙3は乙1に係る「ORE広尾ビル」に係る賃貸借契約書であり、被請求人と賃借人との間で、2019年3月20日に「ORE広尾ビル」に係る賃貸借契約が締結されたことが明記されている。さらに、乙4は、乙2に係る広告に掲載された「ORE名古屋伏見ビル」に係る賃貸借契約書であり、オリックス銀行株式会社と被請求人との間で、2016年8月1日に「ORE名古屋伏見ビル」に係る賃貸借契約が締結されたことが明記されている。これは、オリックス銀行株式会社が所有する物件を被請求人が自ら賃借したものである。これらの契約書が存在することから、乙1及び乙2に係る広告が現実的かつ継続的に展示又は頒布されていたことや、役務「建物の管理,建物の貸与」が現実的に行われていたことが確認できるものと考えられる。 このように、上記広告に本件商標を付して展示又は頒布する使用態様は、商標法第2条第3項第8号の使用に該当するものである。 3 本件商標を使用する被請求人(又は通常使用権者であるオリックス不動産投資法人)は、長年にわたり、他の物件の広告を展示又は頒布しており(乙5ないし乙8)、これらは「ORE●●ビル」(●●は地名)のように、地名と「ビル」の語を付した用語を商標的使用態様にて掲載している。また、地名や「ビル」の用語は、指定役務「建物の管理,建物の貸与」との関係では、極めて自他役務識別力が低い用語又は賃貸対象物件名(物件の特定)であることから、「ORE」部分が出所識別標識としての機能を発揮する取引のための用語であり、該「ORE」の用語が付された賃貸物件に係る広告に接する需要者、取引者は、それらの広告が何れも被請求人(又はオリックス不動産投資法人)の管理に係る物件であることを表示するものであり、そのことが容易に認識できるものと考えられる。 上記広告や賃貸借契約書に付された商標の使用態様は、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標の使用に該当すると考えられる。すなわち、被請求人は、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標を使用しているものである。 4 本件商標を現実的に使用する者は、被請求人以外にオリックス銀行株式会社及びオリックス不動産投資法人がある。 オリックス不動産投資法人は、被請求人の100%子会社であるオリックス・アセットマネジメント株式会社を資産運用会社とする投資法人である。 被請求人と本件商標を使用するオリックス不動産投資法人との間では、商標の使用等に関する覚書及び条件変更契約を締結しており(乙9及び乙10)、オリックス不動産投資法人が新たに取得し、管理・賃貸するオフィスビル名称の使用についてはオリックス不動産投資法人より、当該覚書に基づく通知書(乙11ないし乙13)が差し入れられている。 また、これらの物件、「ORE札幌ビル」、「ORE錦二丁目ビル」及び「ORE大宮ビル」がオリックス不動産投資法人の保有資産であることは乙14に示すとおりである。 したがって、使用許諾契約が現在も有効に存続していることのみならず、オリックス不動産投資法人が「建物の管理,建物の貸与」の役務に「ORE」を使用していることは明らかである。 5 乙1、乙2、乙5ないし乙8に係る広告については、広告の主体が不動産仲介業者等であって、不動産仲介業者等が「建物の貸借の代理又は媒介」の役務に使用しているにすぎず、被請求人や通常使用権者による商標の使用ではないとの指摘を受けることが予想される。もっとも不動産の所有者が所有する物件名を不動産仲介業者等に使用させることは当該不動産を特定する上で必須であり、不動産の賃貸借取引が多ければ多いほど不動産の所有者としては経済上の利益があることから、不動産の所有者は不動産仲介業者等が「建物の貸借の代理又は媒介」の役務に物件名を使用することについて黙示の許諾を行っているといえるので、不動産仲介業者等も通常使用権者と同視できるものと思われる。 第4 当審の判断 1 被請求人の提出に係る証拠によれば、次の事実が認められる。 (1)「あしたのオフィス」と称するウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)は、全国の賃貸オフィスを検索可能なウェブサイトであり、本件ウェブサイトには、2018年(平成30年)8月24日を情報最終更新日とし、「ORE名古屋伏見ビル」の文字を表してなる商標(以下「使用商標」という。)を見出しとして、物件名を「ORE名古屋伏見ビル」とし、住所を「愛知県名古屋市(略)」とする物件(以下「本件物件」という。)が本件物件の写真とともに掲載されている(乙2)。 (2)本件商標の商標権者(以下、単に「商標権者」という。)とオリックス不動産株式会社は、2010年(平成22年)7月21日付けで賃貸借契約を締結し、商標権者は、オリックス不動産株式会社から本件物件を賃借した(乙4)。 当該賃貸借契約における契約書では、その第4条第1項として、賃貸借期間は2年間とされ、同条第2項として、その賃貸借期間について書面による意思表示をしない場合、2年間自動的に更新され、以降も同様とする旨が定められている。 2 前記1において認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。 (1)使用役務について 前記1(1)のとおり、本件ウェブサイトは、全国の賃貸オフィスを検索可能なウェブサイトであるから、「オフィス用建物の貸与」(以下「使用役務」という。)に関する広告であるといえる。 そして、使用役務は、本件商標の指定役務中「建物の貸与」に含まれる役務である。 (2)使用商標について 本件商標は、前記第1のとおり「ORE」の欧文字を標準文字で表してなるものであり、使用商標は、前記1(1)のとおり「ORE名古屋伏見ビル」の文字を表してなるものである。 使用商標は、その構成文字からして、「ORE」、「名古屋」、「伏見」及び「ビル」の文字(語)からなるものと容易に理解、認識されるものである。 そして、使用商標は、その構成中「名古屋」及び「伏見」の文字(語)は地名を表し、使用役務との関係では、役務の提供の場所を表すものであり、また、「ビル」の文字(語)は、使用役務との関係では、役務の提供の用に供するものを表すものである。 そうすると、使用商標は、その構成中「ORE」の文字部分が出所識別標識としての要部ということができる。 してみると、使用商標は、その要部が本件商標と同一の文字からなるものであるから、本件商標と社会通念上同一と認められる商標といえる。 (3)使用時期について 前記1(1)のとおり、本件ウェブサイトには、平成30年8月24日を情報最終更新日とし、使用商標を見出しとして、本件物件が本件物件の写真とともに掲載されている。 また、前記(1)のとおり、本件ウェブサイトは、使用役務に関する広告であるといえる。 そうすると、本件ウェブサイトにより、情報最終更新日である平成30年8月24日に、本件物件についての使用役務に関する広告を内容とする情報に使用商標を付して電磁的方法(インターネット)により提供されたということができる。 そして、平成30年8月24日は、要証期間内である。 (4)使用者について 前記1(2)のとおり、平成22年7月21日に、商標権者は、オリックス不動産株式会社から本件物件を賃借した。 そうすると、本件ウェブサイトにより、本件物件についての使用役務に関する広告を内容とする情報に使用商標を付して電磁的方法(インターネット)により提供したのは、商標権者であると推認することができる。 したがって、使用商標の使用者は、商標権者である。 (5)小括 以上によれば、商標権者は、要証期間内である平成30年8月24日に、本件商標の指定役務中「建物の貸与」に含まれる使用役務に関する広告を内容とする情報に、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標を付して電磁的方法により提供したと認めることができる。 そして、この行為は、商標法第2条第3項第8号にいう「・・・役務に関する広告・・・を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。 3 請求人の主張について 請求人は、商標権者とオリックス不動産株式会社とが締結した賃貸借契約書(乙4)によれば、契約締結日は、平成22年7月21日であって、9年以上前の日付であるから、たとえ、本件ウェブサイト(乙2)が、要証期間内の広告であるとしても、この広告が、商標権者によってなされたものであるか明らかではない旨主張している。 しかしながら、たとえ、商標権者とオリックス不動産株式会社との本件物件に関する賃貸借契約が9年以上前に締結されているとしても、前記1(2)のとおり、当該契約における契約書の第4条第2項として、その賃貸借期間について書面による意思表示をしない場合、2年間自動的に更新され、その後も同様とする旨が定められており、その後に当該契約が解消又は変更されたことを示す証拠は何ら認められないことからすると、本件ウェブサイトによる広告は、商標権者によってなされたものと推認することができるというべきである。 したがって、請求人の主張は、採用することができない。 4 まとめ 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が、本件商標の指定役務中「建物の貸与」に含まれる役務について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていることを証明したということができる。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審理終結日 | 2020-06-01 |
結審通知日 | 2020-06-03 |
審決日 | 2020-06-17 |
出願番号 | 商願2006-99805(T2006-99805) |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Y
(Y36)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉澤 拓也、清川 恵子 |
特許庁審判長 |
木村 一弘 |
特許庁審判官 |
板谷 玲子 山田 啓之 |
登録日 | 2007-08-31 |
登録番号 | 商標登録第5074161号(T5074161) |
商標の称呼 | オーレ、オオアアルイイ |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 黒川 朋也 |
代理人 | 末岡 秀文 |
代理人 | 魚路 将央 |
代理人 | 広瀬 文彦 |