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審決分類 審判 査定不服 外観類似 登録しない W0942
審判 査定不服 称呼類似 登録しない W0942
審判 査定不服 観念類似 登録しない W0942
管理番号 1368272 
審判番号 不服2019-4731 
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-09 
確定日 2020-10-22 
事件の表示 商願2017-125457拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第9類、第41類及び第42類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成29年9月19日に登録出願され、その後、指定商品及び指定役務については、原審における同30年11月16日付け及び同月19日付けの手続補正書により、第9類「電子信号又はデジタル信号の処理用・記録用・再生用・ストリーミング用・送信用及び受信用の音響装置,電子信号又はデジタル信号の処理用・記録用・再生用・ストリーミング用・送信用及び受信用のコンピュータソフトウェア,コンピュータ構成部品の試験用及び校正用装置,電子信号又はデジタル信号の処理用・記録用・再生用・放送用・ストリーミング用・送信用及び受信用のオーディオ及びビデオ機器に使用される騒音計,音声信号・音声ファイル・音声・視覚信号・画像ファイル及び画像の生成用・処理用・測定用・分析用・記録用・増幅用・増強用・再生用・送信用・制御用・試験用・受信用及び演奏用のコンピュータプログラム・コンピュータソフトウェア・コンピュータハードウェア及びコンピュータの構成部品,マルチチャンネルデジタル式音響処理装置,映画サンドトラック音楽用デジタル式音響処理装置,劇場用サラウンドサウンドアダプター装置,映画用撮影機,映画用カメラ,映画用映写機,デジタル信号処理用コンピュータチップ,集積回路,デジタル方式で処理及び改良された音・効果音・サウンドトラックが記録されたコンパクトディスク・オーディオディスク・ビデオディスク・DVD・デジタルビデオディスク・高精細デジタルディスク・光学式記録媒体及び磁気式記録媒体,ダウンロード可能な録音済記録媒体・録画済記録媒体及び録音録画済記録媒体,音声信号・音声ファイル・音声・視覚信号・画像ファイル・画像の生成用・処理用・測定用・分析用・記録用・増幅用・増強用・作成用・再生用・送信用・保存用・制御用・試験用及び受信用の録音録画装置並びにこれらの部品及び付属品,サウンドカード,コンピュータマザーボード,音声信号をエンコード処理及びデコード処理するためのコンピュータプログラム及びコンピュータソフトウェア,オーディオスピーカー・オーディオ用増幅器・オーディオ受信機・サウンドバースピーカー及びホームシアター用装置に接続・制御及び操作するためのコンピュータソフトウェア,携帯電話・タブレット型コンピュータ及びパーソナルコンピュータに使用するコンピュータソフトウエア,オーディオ製品及びホームシアター用装置を操作及びカスタマイズするために使用されるコンピュータソフトウエア,劇場用映写装置,3D映写装置,映写機,3D映写機,家庭用ビデオ映写装置,映写用スクリーン,ビデオプロジェクター,デジタル映写装置,直接操作又は遠隔操作による映画・番組の保存用・スケジューリング用・モニタリング用のサーバー,グラフィックカード,グラフィックプロセッサ,デジタルメディアサーバー,デジタル映画サーバー,デジタル音声データ記録済磁気式記録媒体,デジタル音声データ記録済光学式記録媒体,デジタル音声データ記録済デジタル記録媒体,デジタル音声データ記録済コンピュータハードドライブ,ソリッドステートドライブ,デジタル音声データ記録済フラッシュドライブ,音声・画像・音楽・音及び映像が記録されたコンピュータディスク・コンパクトディスク・ビデオディスク・オーディオディスク・DVD・デジタルビデオディスク及び高精細デジタルディスク,音声・画像・音楽・音及び映像が記録された大容量デジタルディスク,音声・画像・音楽・音及び映像が記録された大容量光学式・磁気式ディスク,ダウンロード可能なビデオ映像記録物,映画フィルム,コンピュータハードウエア及びコンピュータソフトウエア,音声・映像受信機,テレビジョン受信機,サウンドバースピーカー,ヘッドフォン,デジタルメディアアダプター,液晶ディスプレイ,オーディオ及びビデオ機器用遠隔制御装置,会議システム用遠隔制御装置,携帯型録音再生装置,音声及び画像の録音用・送信用・再生用装置,ビデオカメラ,ビデオカメラ用インターフェース回路,身体装着式携帯情報端末用インターフェース回路,電子信号用ケーブル,スピーカー用ケーブル,高精細ケーブル,高精細マルチメディアインターフェースケーブル,ビデオゲーム用ソフトウエア,コンピュータゲーム用ソフトウエア,ビデオ用コンピュータプログラム,コンピュータゲーム用コンピュータプログラム,視聴開始画面用の画像・信号・映像及び合成映像の作成用・ミキシング用・校正用・モニタリング用及び制作用のコンピュータソフトウエア,セットトップボックス,音声・映像及びコンピュータデータの再生用及び記録用の光学式及び磁気光学式ディスクプレーヤー及びレコーダー,コンピュータ用・テレビジョン受信機用及びタブレット型コンピュータ用のディスプレイスクリーンフィルター,コンピュータ,パーソナルコンピュータ,タブレット型コンピュータ,ラップトップ型コンピュータ,携帯電話機,スマートフォン,携帯型データ受信機,携帯型コンピュータ,携帯型インターネット接続用デジタルメディア受信機,コンピュータサーバー,有料テレビサービスへのアクセス制御に用いられる電子応用機械器具,車載用DVDプレーヤー,車載用DVDレコーダー,電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具」及び第42類「録音装置の設計に関する品質管理及び検査,音響及びビジュアル記録物の製造に関する品質管理及び検査,音響及びオーディオビジュアル記録物のフィルムへの転写に関する品質管理及び検査,オーディオビデオ記録物の複製に関する品質管理及び検査,映画における音声及び映像の最適な再生に関する品質管理及び検査,劇場及び映画館の音響映像再生装置設置についての調査・評価及び分析,他人のためにする劇場及び映画館の音響映像再生装置設置についての調査に関する助言,他人のためにする劇場及び映画館の座席・音響効果及び防音設備についての設計及び配置についての評価及び分析に関する助言,他人のためにする劇場及び映画館の設計に関する助言,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,機械器具に関する試験又は研究」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定は、「本願商標は、登録第3130624号商標、登録第6049260号商標及び国際登録第977092号商標と類似の商標であって、その商標に係る指定商品及び指定役務と同一又は類似の商品及び役務に使用をするものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審における審尋
当審において、令和元年12月17日付けの審尋をもって、本願商標は、原査定において引用した商標を含め、拒絶理由通知に引用した以下の登録商標と類似の商標であって、当該商標の指定商品・役務と同一又は類似の商品・役務について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する旨を通知し、相当の期間を指定して請求人に対し意見を求めた。
(1)登録第3130624号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成5年3月4日
設定登録日:平成8年3月29日
最新更新登録日:平成28年3月15日
指定商品:「測定機械器具,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具」を含む第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
(2)登録第6049260号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
登録出願日:平成29年4月27日
設定登録日:平成30年6月8日
指定商品及び指定役務:「おもちゃ・人形及び娯楽用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む第35類、第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務
(3)国際登録第977092号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲4のとおり
国際商標登録出願日:2008年(平成20年)2月21日
設定登録日:2010年(平成22年)3月5日
指定商品:「connector cables,light conducting cables.」を含む第9類、第10類、第20類及び第28類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの商品
(4)国際登録第1280362号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:「ATOMOS」
国際商標登録出願日:2015年(平成27年)7月10日
設定登録日:2019年(令和元年)10月25日
指定商品及び指定役務:「Electronic and electric apparatus for displaying, editing, recording,encoding, storing, transferring or reproducing video and audio; electric monitoring apparatus; teaching apparatus; apparatus and instruments for conducting, switching, transforming, accumulating, regulating or controlling electricity; apparatus for recording, transmission or reproduction of sound or images; magnetic data carriers, recording discs; cash registers,calculating machines, data processing equipment and computers; digital cameras and parts and accessories therefor; remote controls for cameras and digital cameras; cases for digital cameras; straps for digital cameras; computer software for editing and managing of photographs and movies; electronic publications; computer software, firmware and hardware; liquid crystal projectors; digital cameras with liquid crystal projectors; electron microscopes; x-ray electron microscopes; solid state memory cards; flash memory cards; digital photo frames; filters for ultraviolet rays for digital cameras; filters for digital cameras; flash-bulbs for digital cameras; flashlights for digital cameras; shutter releases for digital cameras; shutters for digital cameras; slides (photography); transparencies (photography); mobile phones; cellular phones; smartphones; handheld communication terminal devices; scanners(data processing equipment); CCD (charge-coupled device) cameras; SD memory cards; usb hubs; flash card readers.」を含む第9類及び「Scientific and technological research and development; industrial analysis and research services; design and development of computer hardware and software; information, advisory and consultancy services in relation to the aforementioned.」を含む第42類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務
(5)国際登録第1291176号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:別掲5のとおり
国際商標登録出願日:2016年(平成28年)1月4日(2015年7月3日にAustraliaにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権主張)
設定登録日:2020年(令和2年)3月6日
指定商品及び指定役務:「Apparatus and instruments for conducting, switching, transforming,accumulating, regulating or controlling electricity; apparatus for recording,transmission or reproduction of sound or images; magnetic data carriers,recording discs; data processing equipment and computers; digital cameras and parts and accessories therefor; remote controls for digital cameras; cases for digital cameras; straps for digital cameras; computer software for editing and managing of photographs and movies; electronic publications; computer software, firmware and hardware; liquid crystal projectors; digital cameras with liquid crystal projectors; electron microscopes; X-ray electron microscopes; flash memory cards; digital photo frames; filters for ultraviolet rays for digital cameras; filters for digital cameras; shutter releases for digital cameras; shutters for digital cameras; slides (photography); transparencies(photography); viewfinders for digital cameras; tripods for digital cameras;mobile phones; cellular phones; smartphones; scanners (data processing equipment); CCD (charge-coupled device) cameras; SD memory cards; usb hubs; flash card readers.」を含む第9類及び「Scientific and technological research and development; industrial analysis and research services; design and development of computer hardware and software; information, advisory and consultancy services in relation to the aforementioned.」を含む第42類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務
以下、これらをまとめて「引用商標」という場合がある。

4 審尋に対する請求人の意見の要旨
請求人は、上記3の審尋に対して、以下のとおり意見を述べた。
(1)本願商標の図形部分は、請求人(以下「ドルビー」という場合がある。)のマスターブランド(ハウスマーク)として、「DOLBY ATMOS」は、ドルビーの立体音響技術を示す技術ブランドとして、それぞれ著名である。したがって、本願商標からは、「ドルビーアトモス」の称呼及び「ドルビーの立体音響技術(3次元空間の雰囲気・空気感まで再現できる技術)」という観念が生じる。
(2)ドルビーは、自社の技術を他社にライセンスすることで収入を得るというビジネスモデルを採用しており、技術のライセンスと同時に、商標の使用を許諾し、自社が定めた商標を表示した製品については、搭載した技術の品質を保証しただけでなく、商標の入ったすべての製品の品質イメージを高く維持させる取り組みを行ってきたことから、ドルビーの需要者であるライセンシーが「ATMOS(アトモス)」のみで取引に当たることはない。
(3)ドルビーの技術が搭載された製品の購入者は、音や映像等に強いこだわりを持つ消費者が多いと考えられる。そうすると、彼らはドルビーの技術が搭載された製品を購入するに当たり、慎重な検討を行うと推認できることから、消費者が「ATMOS」の部分のみに着目して製品の購入に当たることはない。
(4)仮に本願商標と引用商標から共通の称呼が生じる場合があるとしても、両者の構成全体の外観及び観念における顕著な相違は、称呼の共通性を凌駕するものであるから、本願商標と引用商標は、商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれのない非類似の商標である。

5 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本願商標について
本願商標は、別掲1のとおり、黒塗りの長方形内に白抜きで左右対称に円弧部分を向き合わせた半円状の図形を表した図形部分と、その下に「ATMOS」の欧文字を横書きした文字部分からなるものである。
そして、請求人の提出した資料(資料2、4、6等)によれば、請求人の音響技術を搭載した製品のプレスリリースやカタログ等において、当該図形部分と同様の図形が使用されていることはうかがえるものの、いずれも「DOLBY」の文字とともに使用されており、当該資料からは、本願商標の構成中の図形部分のみが、請求人の取扱いに係る商品等を表示するものとして、需要者間において広く知られているとは認められない。
また、その他に、当該図形部分が、請求人の取扱いに係る商品等を表示するものとして、需要者間において広く知られていると認めるに足りる事情も見いだせない。
そうすると、本願商標の構成中の図形部分は、我が国において、特定の観念を想起させる図形として知られているとはいえないものである。
また、本願商標の構成中の文字部分は、一般的な辞書等に採録された語ではなく、特定の意味合いを想起させる語として知られているものとも認められないから、特定の観念を生じることのない造語とみるのが相当である。
してみれば、本願商標の構成中の図形部分と文字部分とは、観念上のつながりもなく、視覚上、分離して看取され得るものであるから、それぞれが要部として認識されるものというのが相当である。
したがって、本願商標は、要部である文字部分から、「アトモス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである
イ 引用商標について
(ア)引用商標1について
引用商標1は、別掲2のとおり、「ATMOS」の欧文字と「アトモス」の片仮名を上下2段に横書きしてなるところ、これらの文字は、一般的な辞書等に採録された語ではなく、特定の意味合いを想起させる語として知られているものとも認められないから、特定の観念を生じることのない造語とみるのが相当である。
また、下段の片仮名部分は、上段の欧文字部分の読みを表したものと容易に理解されるものである。
そうすると、引用商標1は、「アトモス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(イ)引用商標2について
引用商標2は、別掲3のとおり、「atmos」の欧文字(語頭の「a」が灰色で表されている。)を横書きしてなるところ、当該文字は、一般的な辞書等に採録された語ではなく、特定の意味合いを想起させる語として知られているものとも認められないから、特定の観念を生じることのない造語とみるのが相当である。
そうすると、引用商標2は、構成文字に相応して「アトモス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(ウ)引用商標3について
引用商標3は、別掲4のとおり、中央に「ATMOS」の欧文字を青色で大きく横書きし、その上下に半円状の青色の曲線を対象に配した構成からなるところ、その構成中、「ATMOS」の欧文字は、一般的な辞書等に採録された語ではなく、特定の意味合いを想起させる語として知られているものとも認められないから、特定の観念を生じることのない造語とみるのが相当である。
また、引用商標3の構成中の半円状の曲線部分は、格別特徴のある図形ではなく、単に装飾的に配置されているとの印象を与えることから、これより特定の称呼及び観念は生じないというべきである。
そうすると、引用商標3においては、中央に大きく表された「ATMOS」の文字部分が強く支配的な印象を与えるものといえるから、当該文字部分を要部として抽出し、商標そのものの類否を判断することが許されるものというべきである。
したがって、引用商標3は、その構成中の「ATMOS」の文字に相応して、「アトモス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(エ)引用商標4について
引用商標4は、上記3(4)のとおり、「ATOMOS」の欧文字を横書きしてなるところ、当該文字は、一般的な辞書等に採録された語ではなく、特定の意味合いを想起させる語として知られているものとも認められないから、特定の観念を生じることのない造語とみるのが相当である。
そうすると、引用商標4は、構成文字に相応して「アトモス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(オ)引用商標5について
引用商標5は、別掲5のとおり、中心に小さな円図形を配した曲線を組み合わせた幾何図形と、その下に「ATOMOS」の欧文字を横書きした構成からなるところ、その構成中の幾何図形は、我が国において、特定の観念を想起させる図形として知られているとはいえないものであり、「ATOMOS」の文字部分は、一般的な辞書等に採録された語ではなく、特定の意味合いを想起させる語として知られているものとも認められないものである。
してみれば、引用商標5の構成中の図形部分と文字部分とは、観念上のつながりもなく、視覚上、分離して看取され得るものであるから、それぞれが要部として認識されるものというのが相当である。
したがって、引用商標5は、要部である文字部分から、「アトモス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである
ウ 本願商標と引用商標の類否について
本願商標の要部である「ATMOS」の欧文字部分と引用商標1及び引用商標3の要部である「ATMOS」の欧文字部分、引用商標2の「atmos」の欧文字とを比較すると、両者は大文字と小文字の相違があるものの、そのつづりを共通にするものであるから、外観上近似するといえるものであり、「アトモス」の称呼を共通にするものである。
また、本願商標の要部である「ATMOS」の欧文字部分と引用商標4及び引用商標5の要部である「ATOMOS」の欧文字部分とを比較すると、両者は「AT」、「MOS」の文字を共通にし、中間に位置する「O」の文字の有無の差異を有するにすぎないものであるから、外観上近似した印象を与えるものであり、「アトモス」の称呼を共通にするものである。
そして、本願商標及び引用商標は、いずれも、特定の観念を有しないものであるから、観念において比較することはできない。
そうすると、本願商標の要部である「ATMOS」の欧文字部分と引用商標1及び引用商標3の要部である「ATMOS」の欧文字部分、引用商標2の「atmos」の欧文字、引用商標4及び引用商標5の要部である「ATOMOS」の欧文字部分とは、観念において比較できないとしても、外観において近似した印象を与えるものであり、称呼を共通にするものであるから、これらを総合して考察すれば、本願商標と引用商標とは、互いに相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
エ 本願商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品及び指定役務の類否について
本願商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品及び指定役務は、上記1及び3のとおりであり、本願商標の指定商品及び指定役務は、引用商標の指定商品及び指定役務と同一又は類似の商品及び役務を含むものであるから、本願商標の指定商品及び指定役務は、引用商標の指定商品及び指定役務と同一又は類似するものである。
オ 小括
以上によれば、本願商標は、引用商標と類似する商標であって、引用商標の指定商品及び指定役務と同一又は類似の商品及び役務について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、取引の実情として、「自社の技術を他社にライセンスすることで収入を得るビジネスモデルを採用しており、ライセンシーに対して商標の入ったすべての製品の品質イメージを高く維持させる取り組みを行ってきたため、需要者であるライセンシーが『ATMOS』のみで取引に当たることはない。また、請求人の技術が搭載された製品の購入者は、音や映像等に強いこだわりを持つ消費者が多いと考えられることから、消費者が『ATMOS』の文字部分のみに着目して製品の購入に当たることはない。」旨主張する。
しかしながら、商標の類否判断において参酌されるべき取引の実情とは、その指定商品全般についての一般的、恒常的なそれを指すものであって、当該商標が現在使用されている商品についてのみの特殊的、限定的なそれを指すものではない(最高裁昭和47年(行ツ)第33号)ところ、請求人の主張する上記の取引の実情は、当該商標が現在使用されている商品についてのみの特殊的、限定的な取引の実情といえるものであり、このような取引の実情は商標の類否の判断に当たり考慮することは相当ではない。
イ 請求人は、本願商標の図形部分は、請求人のマスターブランド(ハウスマーク)である旨述べて、「本願商標において『ATMOS』の文字は図形部分の3分の1程度の大きさしかなく、かつ細い文字で表され、しかも、ゴシック体という一般的な書体であるから、本願商標はその外観上、『ATMOS』の文字部分だけが独立して見る者の注意を引くように構成されているということはできない・・・取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として格別に強い印象を与えるものではない。したがって、取引者、需要者がドルビーの出所識別標識として周知な図形部分を捨象し、相対的に識別力の弱い『ATMOS』の部分に着目して取引に当たることはない。」旨主張する。
しかしながら、上記(1)アのとおり、本願商標の構成中の図形部分は、請求人の取扱いに係る商品等を表示するものとして需要者間において、広く知られているものとは認められず、また、文字部分は、特定の観念を生じることのない造語とみるのが相当であるから、本願商標の構成中の図形部分と文字部分は、それぞれ要部と認識されるものであり、「ATMOS」の文字部分に着目して取引に当たる場合も少なからずあるものとみるのが相当である。
ウ 請求人は、「DOLBY ATMOS」は、請求人の立体音響技術、立体音響を示すものとして周知である旨述べて、本願商標の図形部分と「DOLBY ATMOS」が、それぞれ周知であることから、本願商標は、「ドルビーアトモス」の称呼を生じ、「DOLBY ATMOS(ドルビーの立体音響技術)」の観念を生じるものであって、引用商標とは非類似である旨主張する。
しかしながら、請求人の提出した資料(資料2、4、9等)からすると、請求人の音響技術を搭載した製品のプレスリリースやカタログ等において、「DOLBY ATMOS」の文字が使用されていることはうかがえるものの、提出された資料からは、どれだけの需要者において周知であるのかが判然とせず、当該文字が、請求人の取扱いに係る商品等を表示するものとして需要者間において広く知られているとは認められないものである。
また、その他に、「DOLBY ATMOS」の文字が、請求人の取扱いに係る商品等を表示するものとして、需要者間において広く知られていると認めるに足りる事情も見いだせない。
そして、上記(1)アのとおり、本願商標の構成中の図形部分は、我が国において、特定の観念を想起させる図形として知られているとはいえないものであるから、特定の称呼を生じないものである。
してみれば、「DOLBY ATMOS」の周知性を根拠として、本願商標は、「ドルビーアトモス」の称呼を生じ、「DOLBY ATMOS(ドルビーの立体音響技術)」の観念を生じるという請求人の主張は、その前提において採用することはできないものであり、上記(1)アのとおり、本願商標の要部である「ATMOS」の文字部分からは、「アトモス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないといえるものであるから、本願商標と引用商標とは、上記(1)ウのとおり、類似の商標であるというべきである。
エ したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用できない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
別掲1 本願商標


別掲2 引用商標1


別掲3 引用商標2


別掲4 引用商標3(色彩については、原本参照。)


別掲5 引用商標5




審理終結日 2020-05-07 
結審通知日 2020-05-13 
審決日 2020-06-04 
出願番号 商願2017-125457(T2017-125457) 
審決分類 T 1 8・ 261- Z (W0942)
T 1 8・ 263- Z (W0942)
T 1 8・ 262- Z (W0942)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 根岸 克弘大島 康浩 
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 小田 昌子
木住野 勝也
商標の称呼 アトモス 
代理人 山崎 行造 
代理人 熊谷 美和子 

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