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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない W24
管理番号 1368264 
審判番号 取消2020-300010 
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2020-01-07 
確定日 2020-10-14 
事件の表示 上記当事者間の登録第5665720号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5665720号商標(以下「本件商標」という。)は、「スリープテック」の片仮名及び「SLEEP TECH」の欧文字を上下二段に横書きした構成からなり、平成25年10月18日に登録出願、第24類「かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」を指定商品として、同26年4月25日に設定登録されたものである。
なお、本件審判の請求の登録日は、令和2年1月22日であり、この登録前3年以内の期間を以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べた。
1 請求の理由
本件商標は、指定商品について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁の要旨
(1)使用態様について
ア 上下2段表示の本件商標と欧文字表記「SLEEPTECH」との関係について
(ア)本件商標の欧文字表記「SLEEPTECH」を単独で使用すると、「SLEEPTECH」は造語であるので、すぐには称呼が認識されるのではなく、綴りから、識別し易い「SLEEP」と「TECH」とを個別に認識し、まずその意味を把握する思考が優先される。
そして、「SLEEP」からは、「人間の眠り、及び日々使用しているパソコン、スマホ等のスリープ機能」が観念され、「TECH」からはTECHNOLOGYの省略形であるとの認識から、「高度な技術、IT技術」がそれぞれ観念される。
「SLEEP」の複数の観念からは、「TECH」の観念である「高度な技術」との連想結合から、技術に関する「パソコンのスリープ機能」が選択され、「SLEEPTECH」には「スリープ機能を使いこなす高度技術」という観念が第一に生じる。
そしてこの観念により、称呼を特定する思考作業となるが、「TECH」が「TECHNOLOGY」の略したものと認識されているので、「テク」の読みが認識され、「スリープテク」と理解される。
(イ)被請求人は、「SLEEP」からは「睡眠」、「TECH」から「科学技術」程度の観念が一義的に生じるかのように述べているが、人間の連想に関する思考を考慮しない考え方である。
それは、「眠り」がIT技術等とは全く異なる人間の生理的な作用であって、連想結合の思考作用からは両者を容易に結び付けられないからである。
これに対して、本件商標のように2段表記により片仮名で読みを表す「スリープテック」を併記した場合、観察者は先ず「スリープテック」に着目した上で、「SLEEPTECH」の意味内容を把握することになり、「SLEEP」に続く「TECH」は、「SLEEP」の後ろに付けた接尾語と認識され、「SLEEP」が主体となって「眠り」の意味が優先され、被請求人の言う観念が生じることになる。
(ウ)2段表記と欧文字単独表記とでは、明らかに観念が異なるので、単独表記である「SLEEPTECH」を用いるだけでは本件商標と社会通念上同一の商標の使用とはいえないものであり、被請求人の主張は当を得ていない。
イ 乙第3号証ないし乙第7号証に記載された標章について
(ア)被請求人が乙第3号証ないし乙第5号証のカタログ並びに乙第6号証及び乙7号証のウェブサイトにおいて本件商標が使用されているとした箇所には、単に文字列「SLEEPTECH」だけが記載されているのではなく、別掲1及び別掲2のとおりの構成からなる標章が記載されており、これらの構成要素である「SLEEPTECH」を抜き出して本件商標の使用であるとする被請求人の主張は当を得ていない。
(イ)乙3号証ないし乙第5号証のカタログの別掲1の標章は周りに他の記載がない状態で孤立的に配置されており、乙第6号証及び乙第7号証のウェブサイトの別掲2の標章については、一連の横書きとして認識されるものである。
(ウ)別掲2の標章が一つの概念を生じさせるための一体不可分の商標としての使用であることは、例えば、何れも別掲2の標章と同じ態様の標章である被請求人が保有する登録商標又は出願中の標章から明らかである。
すなわち、これら横書きの標章は全体として一つの概念をじゃっ起させているのであって、この標章の各部は一体不可分の関係となっており、その一部分を認識させるものではない。
したがって別掲2の標章の一部分である文字列「SLEEPTECH」のみを捉えて、本件商標の使用とする被請求人の主張は当を得ていない。
また、被請求人が別掲2の標章と同一標章としている別掲1の標章も同様の理由で本件商標の使用ではない。
(エ)以上のように、乙第3号証ないし乙第7号証の標章は、本件商標と社会通念上同一の商標ではなく、本件商標の使用でもないことは明らかである。
ウ 小括
以上のように、乙第3号証ないし乙第7号証の各標章は、前記ア及びイの項目で述べた理由により2段表記の本件商標の使用には該当しないことが明らかである。
(2)商標の使用の事実及び時期等について
ア 被請求人が提示した乙第8号証のパンフレットには、発行日、あるいは印刷日等の記載がなく、本件商標の使用に関して全く意味がない。
イ 被請求人は乙第3号証ないし乙第5号証のカタログに記載された別掲1の標章のうち、その一部分の「SLEEPTECH」の文字列のみを捉えて、本件商標が記載されているものとしているが、「SLEEPTECH」は単独の標章として認識されるものではないので、その主張は当を得ていない。
仮に、「SLEEPTECH」を単独の標章とした場合でも、2段表記の本件商標とは観念が明らかに異なる上、外観も大きく異なるので、本件商標と社会通念上同一の商標の使用とはいえず、この点においても被請求人の主張は当を得ていない。
乙第3号証ないし乙第5号証のカタログには、マットレスをメインとして大きく表示し、その他多数の寝具商品の一つとして小さくコンファーターが表示されているにすぎず、「SLEEPTECH」は布団ではなくマットレスに対する標章であるかのような扱いである。
このような状況を踏まえれば、上記各カタログに付されている別掲1の標章は、社会通念上、指定商品「布団」に使用しているものでないことは明らかである。
ウ 被請求人は乙第3号証ないし乙第5号証のカタログの製作を業者に依頼した際のそれぞれの「売上伝票・納品書・受領書」(乙9ないし乙11)を提出したとしているが、この対応関係には信ぴょう性がない。
すなわち、例えば乙第3号証のカタログの製作を業者に依頼した際の「売上伝票・納品書・受領書」が乙第9号証とのことであるが、被請求人のいうA氏を用いたカタログは多種類あることがうかがわれ、同じモデルであっても異なるカタログが存在することは明らかである。
したがって、モデルや商品名等が同じでも、異なるカタログがあるので、それだけでは、「売上伝票・納品書・受領書」(乙9)がカタログ(乙3)に対応するものとはいえない。
乙第4号証、乙第5号証と乙第10号証、乙第11号証との対応関係も同様である。
以上の事実からすれば、乙第9号証ないし乙第11号証と、乙第3号証ないし乙第5号証との対応関係は不明瞭であり、乙第3号証ないし乙第5号証のカタログが製作された日は依然として不明であって、要証期間内に作成されたとはいえない。
エ 乙第12号証ないし乙第15号証の送り状は、乙第3号証ないし乙第5号証のカタログの送り状とは到底いえないものである。
被請求人が「エアー」としている商品及びその関係書類は2018年以降多数あり、単に「エアー販促物」との特定では、当該送り状によって送られたものが乙第3号証ないし乙第5号証のカタログとするには無理がある。
そして、当該送り状の日付「19年11月26日」は、納品書(乙9ないし乙11)の日付である令和元年11月28日よりも以前の日付であり、少なくとも上記納品書で納品されたカタログ等を送るものでないことは明らかである。
したがって、乙第3号証ないし乙第5号証のカタログが頒布された日付が要証期間内であるとは到底いえるものではない。
オ 乙第6号証の1ページ左上には「2020/1/22」が記載され、乙第7号証の1ページ左上には「2020/3/5」が記載されている。
被請求人はこれらの記載には言及せず、更には当該ウェブサイトの日付について述べることなく、本件商標の使用であるといえると述べているが、上記左上の記載が日付だとすると、要証期間外であるので使用の証拠にならないことは明白である。
カ 被請求人によると、乙第16号証は乙第7号証の過去分表示ということではあるが、被請求人自身が認めているとおり過去分の表示画面そのものではなく、加工されている。
したがって、乙第6号証は被請求人のいう日時に表示されたものではないので、証拠としての信ぴょう性がない。
また、乙第16号証の表示と乙第7号証の表示とは全く異なっており、同じウェブ画面であるか明瞭ではないが、乙第16号証によれば、標章の近傍にはマットレスしか記載されておらず、指定商品が第24類の「布団」である本件商標の使用とは何の関係もない。
キ 乙第17号証には日付が入っておらず、被請求人の主張は当を得ていないものである。
ク 被請求人は要証期間内に本件商標が使用されていたことを示すものとして乙第18号証ないし乙第24号証を提示している。
しかしながら、これらは、雑誌、新聞等の記事であり、商標権者による本件商標の使用を示すものではない。
また、これら記事には、被請求人がいうとおり、「SLEEP TECH」、又は「『SLEEP TECH』寝具」と記載されているだけであって、指定商品である布団に対する使用を表してはいない。
さらに、これら記事は単に「SLEEP TECH」の文字列が記載されているにすぎず、本件商標とは異なる態様であって、本件商標の使用とは全く関係がないものである。
ところで、本件商標は片仮名表記「スリープテック」と欧文字表記「SLEEPTECH」を上下二段表記としたものであるところ、その一方である文字列「SLEEPTECH」のみの使用も、本件商標の使用であると被請求人は主張しているが、当該文字列「SLEEPTECH」の「P」と「T」との間に1文字以上の間隔をあけて、「SLEEP」と「TECH」とが別単語として認識される文字列とした「SLEEP TECH」が本件商標の使用に当たらないことは明らかである。
なお、上記各記事には、標章としてのSLEEP TECHに対して鍵括弧を追加してあたかも両単語が関連するかのように「SLEEP TECH」と表示しているが、鍵括弧のない状態で文字列をみれば、二つの独立した単語が配置されているにすぎないものであり、本件商標とは認識されるものではない。
また、上記記事には指定商品「布団」と「SLEEP TECH」との関係が分かる図面等の表示がないのであって、上記記事の記載によって、文字列「SLEEP TECH」が指定商品に使用されていることにはならない。
ケ 被請求人の提出した乙第25号証及び乙第26号証は要証期間内における本件商標の使用を示すものでないことは明らかである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第26号証を提出した。
1 本件商標を使用している商品
本件商標の商標権者は、本件商標を指定商品中の「布団」に使用している。
2 使用態様について
乙第3号証ないし乙第7号証には、本件商標が、指定商品「布団」に含まれる「コンフォーター(掛け布団)」等が掲載されたカタログ及びウェブサイトに付される形で使用されている。乙第3号証ないし乙第5号証については、カタログ裏表紙部分に「SLEEPTECH」の語が横書きされており、乙第6号証及び乙第7号証については、ウェブサイト左上部分に、「SLEEPTECH」の語が横書きされている。
本件商標は、片仮名「スリープテック」と欧文字「SLEEPTECH」を二段に横書きしたものであり、片仮名部分が欧文字部分の読みを表したものであるのが明らかなこと、「スリープテック」又は「SLEEPTECH」の語からは、明確な観念は生じないものの、これらを構成する各語からは「スリープ(SLEEP)」からは「睡眠」、「テック(TECH)」からは「科学技術」程度の観念を生ずることからすれば「スリープテック」と「SLEEPTECH」は、称呼及びそこから生ずる観念を共通にするものである。
したがって、「スリープテック」又は「SLEEPTECH」のいずれか一方の使用であっても、本件商標と同一又は本件商標と社会通念上同一の商標の使用といって差し支えがないと認められる(以下、「本件商標と社会通念上同一の商標」も含め「本件商標等」という。)。
3 本件商標等の使用者
本件商標等は、商標権者である被請求人がその商品について使用をしている。
4 商標の使用の事実及び時期等
被請求人は、被請求人の研究機関である「日本睡眠科学研究所」(乙8)がその研究に基づき開発した商品群等について、本件商標等を使用しており、当該商標は現在に至るまで、継続して使用されているものである。
(1)乙第3号証ないし乙第5号証は、被請求人の発行した商品カタログであって、被請求人ウェブサイトにも掲載されているものである。当該カタログには、「コンフォーター(掛けふとん)」他の各種商品が掲載されており、かつ、その裏表紙にあたる部分に本件商標等が付されている。
通常、カタログの表紙や裏表紙には、ハウスマークや、そのカタログに記載された商品群の目印となる商標が付されることが普通であることを踏まえて考えれば、本件商標等は、そのカタログに掲載された各商品についての商標の使用であるといって差し支えがなく、本件商標の指定商品中の「布団」等について、商標法第2条3項第8号に該当する使用である。
なお、その裏表紙の左下部分には、「2019.11」と表示されており、これがカタログの発行時期であることは容易に想像がつき、要証期間内に発行されたものであることが把握できる。
(2)乙第9号証は乙第3号証のカタログ、乙第10号証は乙第4号証のカタログ、乙第11号証は乙第5号証のカタログの製作を業者に依頼した際の、当該業者の「売上伝票・納品書・受領書」の写しである。
乙第3号証のカタログには、その右下部分に「AIR01」とあり、かつ、モデルのA氏が起用されているのに対し、乙9号証にはカタログ製作に係る品名部分に「01」及びA氏の氏名が記されており、乙第4号証のカタログには、その右下部分に「AIRSI」とあり、同様にA氏が起用されているのに対し、乙10号証にはカタログ製作に係る品名部分に「SI」及びA氏の氏名が記されている。また、乙第5号証のカタログには、その右下部分に「AIRSX」とあり、かつ、サッカー選手のB氏が起用されているのに対し、乙11号証にはカタログ製作に係る品名部分に「SX」及びB氏の氏名が記されている。これらをみれば、乙第9号証ないし乙第11号証が、それぞれのカタログの製作に係る伝票類であることが把握できる。
なお、それぞれの伝票の発行日付も要証期間内の令和元年11月28日となっており、件名にも「11月15日」と記載があるため、要証期間内にカタログが製作されていることも分かる。
(3)乙第12号証ないし乙第15号証は、カタログ(乙3ないし乙5)を実際に顧客に対し頒布していることを示すために提出する送り状の写しである。当該カタログについては、共通して「AIR」の語が付されている関係から、送り状の品名は「AIR(エアー)販促物」又は「Airカタログ」等となっているが、「売上伝票・納品書・受領書」(乙9ないし乙11)の写しにおいて、件名が「A氏販促ツール制作11月15日」、「B選手販促ツール制作11月15日」となっており、かつ、品名部分にも「AIR」等の記載があること、また、その送り状に記載の送付日付が11月27日ないし29日となっていることからして、送り状に記載されたカタログが、乙第3号証ないし乙第5号証に係るカタログを指すものであって、これが製作を依頼した業者から11月15日に被請求人に納品され、その到着後に被請求人から各顧客に対して発送されたしたものであることは容易に理解できる。
(4)乙第6号証は、被請求人のウェブサイトの記載であって、被請求人の取扱商品である、「コンフォーター(掛け布団)」が紹介されているとともに、そのウェブサイトのページの左上部分に本件商標等が表示されている。さらにそのページ下部には、商品価格が記されている。また、乙第7号証は、同様に被請求人のウェブサイトの写しであって、やはり「コンフォーター(掛け布団)」等が紹介されているとともに、ページの左上部分に本件商標が付されている。
通常、ウェブサイトの商品紹介ページ等において、このような位置に付されるのは、ハウスマークや、その商品シリーズの目印となる商標であることが普通であることを踏まえて考えれば、本件商標等は、そのページに表示されている商品についての商標の使用といって差し支えがなく、本件商標の指定商品中の「布団」についての、商標法第2条第3項第8号に該当する使用である。
なお、ウェブサイトの過去のページの表示状態(ウェブページアーカイブ)を確認することができる「WaybackMachine」を使用して、要証期間内において本件商標の使用がされていたことを確認することができる(乙16)。
(5)乙第18号証ないし乙第23号証は、ANAの国際線に、本件商標等を使用した商品である、「Sleep Tech」寝具が採用されたことを示すウェブサイト、ニュースリリース、新聞、雑誌の記事であり、また、乙第24号証はプロ野球選手のオフィシャルウェブサイト2019年7月18日の記事であって、「『SLEEP TECH』寝具をご体験頂けます。」との記載がある。
(6)第25号証は、本件商標等を付した商品用下げ札及びシールの発注に係る見積書であり、乙第26号証はその見積書に記載されている下げ札及びシールのデザインの版下である。
(7)以上の使用例をみれば、被請求人が、本件商標等を使用した商品を取り扱っており、要証期間内に、その商品に関する広告等に標章を付して頒布し、かつ、これを内容とする情報に標章を付してインターネットを通じて電磁的方法により提供する行為を行っていることが把握できる。
また、その他各種掲載記事等をみても、要証期間内に本件商標等を使用した商品が存在していることが分かる。
したがって、被請求人は、商標法第2条第3項第8号等に該当する行為を行っており、本件商標が使用されている明らかである。
5 結論
以上述べたとおり、本件商標については、要証期間内に、日本国内において、その商標権者が、本件審判の請求に係る指定商品中、「布団」について本件商標を使用していた。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る乙各号証及び被請求人の主張によれば、以下の事実が認められる。
(1)商品カタログについて
ア 乙第3号証は、表紙の中央に「SLEEP for Smile」、同右下に「AiR 01/FIRST AiR 03/ZERO/THREE」の表示がある全8ページからなるモデルのA氏を起用した商品カタログであり、乙第4号証は、表紙の右下に「SLEEP for Me」、「AiR SI/SPINE/IDEALIZER」の表示がある全6ページからなるモデルのA氏を起用した商品カタログであり、乙第5号証は、表紙の下方に「SLEEP for Success」、同右下に「AiR SX」の表示がある全6ページからなるサッカー選手のB氏を起用した商品カタログ(以下、乙3ないし乙5のカタログをまとめて「本件カタログ」という。)であるところ、それぞれの裏表紙左上に「nishikawa」の記載、中央に別掲1の標章の表示及び左下に「2019.11」の記載がある。
そして、本件カタログには、「[エアーCN] コンフォーター」(審決注:英語表記comforter「掛け布団、羽毛布団」 英辞郎、weblio、コトバンク参照。)(以下「本件使用商品」という。)、「マットレス」、「ピロー」等の商品が掲載されている。
以上よりすると、本件カタログは、本件使用商品などを掲載した商品カタログであり、2019年11月に発行したものであると認められる。
イ 乙第9号証は、株式会社ミネルヴァ(以下「ミネルヴァ社」という。)が令和元年11月28日付けで作成した、本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)宛ての売上伝票、納品書及び受領書の写しであり、それぞれの件名の欄には、「AIR 01 A氏の氏名 販促ツール制作 11月15日」の記載があり(納品書の件名の上部には、「下記の通り納品致しましたので御査収下さい。」の記載がある。)、品名の欄には、「NEW 01 BOOK 8ページ) A氏の氏名」、「A5 サイズリーフレット 8P両観音 100枚 1セット」の記載及びその数量の欄には、「678」の記載がある。
乙第10号証は、ミネルヴァ社が令和元年11月28日付けで作成した、本件商標権者宛ての売上伝票、納品書及び受領書の写しであり、それぞれの件名の欄には、「AIR SI A氏の氏名 販促ツール制作 11月15日」の記載があり(納品書の件名の上部には、「下記の通り納品致しましたので御査収下さい。」との記載がある。)、品名の欄には、「AIR SI BOOK 6ページ) A氏の氏名」、「A5 サイズリーフレット 6P両観音 100枚 1セット」の記載及びその数量の欄には、「656」の記載がある。
乙第11号証は、ミネルヴァ社が令和元年11月28日付けで作成した、本件商標権者宛ての売上伝票、納品書及び受領書の写しであり、いずれも件名の欄には、「AIR SX B選手 販促ツール制作 11月15日」の記載があり(納品書の件名の上部には、「下記の通り納品致しましたので御査収下さい。」との記載がある。)、品名の欄には、「AIR SX BOOK 6ページ A5ペラ) B選手」、「A5 サイズリーフレット 6P両観音 100枚 1セット」の記載及びその数量の欄には、「621」の記載がある。
ウ 上記伝票等の件名及び品名等における記載内容と本件カタログの表紙の記載及び起用されているモデル名又はサッカー選手名が一致し、また、本件カタログの作成が2019年11月であることなど、その記載内容に齟齬がないことから、上記伝票等に記載されている「リーフレット」は、本件カタログといえ、また、本件カタログに記載の「nisikawa」は、本件商標権者を表すものであり、本件商標権者は、本件カタログの製作をミネルヴァ社に依頼し、これが、令和元年11月15日に本件商標権者に納品され、その売上伝票、納品書及び受領書が同月28日に作成されたことが推認できる。
(2)送り状について
乙第12号証ないし乙第15号証は、福山通運発行の送り状(お客様控)であり、その荷送人は本件商標権者であって、品名欄には「エアー販促物」、「AiR販促物」又は「AiRカタログ」の記載がある。また、乙第12号証は左上部に「19年11月26日」の記載があり、その届け先は「(株)静岡伊勢丹 6F快眠ショップ」、乙第13号証には、届け希望日に「11月27日」の記載があり、その届け先は「(株)岡島 5F寝具売場」、乙第14号証には、左上部に「11月25日」及び届け希望日に「11月27日」の記載があり、その届け先は「(有)ホームファッションしまばやし」、乙第15号証は、左上部に「19年11月26日」及び届け希望日に「11月28日」の記載があり、その届け先は「(株)横山リビング」の記載がある。
2 判断
(1)本件商標と使用商標について
ア 本件商標は、前記第1のとおり、「スリープテック」の片仮名と「SLEEP TECH」の欧文字を上下二段に書してなるところ、「スリープテック」の片仮名は、欧文字部分の読みを特定するものと容易に認識されるものである。
また、「SLEEP TECH」の欧文字については、「SLEEP」の文字(語)が「眠り」の意味を有し、「TECH」の文字(語)が「科学技術」(ランダムハウス英和大辞典 株式会社小学館)の意味を有する語として一般に親しまれているとしても、「SLEEP TECH」の欧文字全体から一般に親しまれた特定の観念を生じるものではない。
そうすると、本件商標からは、その構成文字に相応して「スリープテック」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものの、「SLEEP」及び「TECH」の語が一般に親しまれた語であることから「眠り」及び「科学技術」の意味合いを想起させるものである。
イ 使用商標は、本件カタログの裏表紙中央に表示された別掲1の標章(以下「本件使用商標」という。)であり、12個の小さな赤い四角を十字状に並べた図形と、その横に「AiR」(「i」の文字は赤色である。)の欧文字を配し、それらの下にやや間隔を空けて、「SLEEPTECH」の欧文字を「AiR」の文字に比べ小さい文字で横書きした別掲1のとおりの構成からなるところ、上記構成からなる本件使用商標は、図形部分、「AiR」及び「SLEEPTECH」の各部分が視覚上分離して看取されるものであり、また、「AiR」と「SLEEPTECH」の文字において、観念上のつながりも見いだせず、ほかに、本件使用商標又は「AiR」と「SLEEPTECH」の文字部分が不可分一体のものとして認識されるべき格別の事情もないことから、図形部分、「AiR」及び「SLEEPTECH」の各部分がそれぞれ要部といえるものである。
そして、本件使用商標の構成中、「SLEEPTECH」の文字は、その構成文字及び意味合いから、「SLEEP」の文字(語)と「TECH」の文字(語)とからなるものであると容易に認識されるものである。
そうすると、本件使用商標の構成中、「SLEEPTECH」の文字からは、上記アと同様に「スリープテック」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものの、「SLEEP」及び「TECH」の語が一般に親しまれた語であることから「眠り」及び「科学技術」の意味合いを想起させるものである。
ウ してみると、本件商標と本件使用商標の要部である「SLEEPTECH」とは、「SLEEPTECH(SLEEP TECH)」の欧文字部分を共通にし、同一の称呼及び観念(意味合い)が生じるものであるから、本件使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる。
(2)本件使用商品について
上記1(1)のとおり、本件使用商品は、商品「コンフォーター(掛け布団)」であって、「布団」の一種であるといえるから、本件商標の指定商品中、「布団」に含まれることは明らかである。
(3)使用者及び使用時期について
上記1のとおり、本件商標権者は、本件審判の請求に係る指定商品に含まれる「コンフォーター(掛け布団)」が掲載された本件カタログの製作をミネルヴァ社に依頼し、要証期間内である2019年11月15日に当該商品カタログの納品を受けたことが推認できる。
そして、本件カタログは、モデル又はサッカー選手を起用したものであって、寝具に特化した商品のカラー写真及び説明等により構成されているものであるから、顧客の商品選択のために販売する商品が掲載された商品カタログといえ、また、100枚1セットをそれぞれ600セット以上製作されていること(乙9ないし乙11)及び送り状(乙12ないし乙15)の記載内容も併せ考慮すれば、本件使用商標が表示され、本件使用商品が掲載された本件カタログは、本件商標権者が顧客に提供するために製作され、これが、令和元年11月27日頃に販売店等に頒布されたものと推認し得るものである。
(4)小括
以上によれば、本件商標権者は、要証期間内に、日本国内において、本件審判の請求に係る指定商品中、第24類「布団」に含まれる「コンフォーター(掛け布団)」のカタログに、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して頒布したと認めることができる。
上記行為は、商標法第2条第3項第8号に該当する。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、本件商標の欧文字部分である「SLEEPTECH」を単独使用すると、「SLEEP」の複数の観念からは、「TECH」の観念である「高度な技術」との連想結合から、技術に関する「パソコンのスリープ機能」が選択され、当該文字全体からは「スリープ機能を使いこなす高度技術」という観念が第一に生じ、また、「TECH」が「TECHNOLOGY」の略したものと認識されるので、「テク」の読みが認識され、称呼は「スリープテク」と理解され、他方、本件商標のように2段表記により片仮名で読みを表す「スリープテック」を併記した場合、観察者は先ず「スリープテック」に着目した上で「SLEEPTECH」の意味内容を把握することになり、「SLEEP」に続く「TECH」は、「SLEEP」の後ろに付けた接尾語と認識され、「SLEEP」が主体となって「眠り」の意味が優先され、「SLEEP」からは「睡眠」、「TECH」からは「科学技術」の観念が生じることになるから、2段表記と欧文字単独表記とでは明らかに観念が異なるので、単独表記である「SLEEPTECH」を用いるだけでは本件商標と社会通念上同一の商標の使用とはいえない旨主張する。
しかしながら、「TECH」が「TECHNOLOGY」の略称であるとしても、「SLEEP」の文字は「眠り」の意味合いを表す語として広く親しまれており、また、本件使用商品が就寝時に使用する「布団」であることからすれば、「SLEEP」に続く文字が「TECH」であったとしても、需要者が当該文字から「パソコンのスリープ機能」の観念を第一に想起するとはいい難いものであり、さらに、例えば、「fin Tech」を「フィンテック」と称し、「Ins Tech」を「インステック」と称するように(いずれも「現代用語の基礎知識2019」)、「TECH」の文字は、他の語の後ろに結合し、「○○テック」と称されることが多いことからすると、「SLEEPTECH」の文字からは、「スリープテック」の称呼を生じるとみるのが相当である。
(2)請求人は、被請求人のいうA氏を用いたカタログは多種類あることがうかがわれ、モデルや商品名等が同じでも、異なるカタログがあるので、それだけでは、「売上伝票・納品書・受領書」(乙9)が本件カタログに対応するものとはいえない、また、請求人は、被請求人が「エアー」としている商品及びその関係書類は2018年以降多数あり、単に「エアー販促物」との特定では、当該送り状によって送られたものが本件カタログとするには無理があって、送り状(乙12ないし乙15)の日付「19年11月26日」は、納品書(乙9ないし乙11)の日付である令和元年11月28日よりも以前の日付であり、少なくとも上記納品書で納品されたカタログ等を送るものでないことは明らかであるから、本件カタログが頒布された日付が要証期間内であるとは到底いえない旨主張する。
しかしながら、上記納品書の件名及び品名等における記載内容と本件カタログの表紙の記載及び起用されているモデル又は選手名が一致し、また、本件カタログの作成が2019年11月であることなど、その記載内容に齟齬がないことから、納品書等(乙9ないし乙11)が本件カタログに係るものであることは、上記1(1)のとおりである。
また、被請求人が「エアー」と称する商品が複数あるとしても、売上伝票、納品書及び受領書のいずれにおいても作成者であるミネルヴァ社の名称、住所等の上部に「令和元年11月28日」と記載されていることからすれば、当該日付はこれら書面の作成日とみるのが自然であり、また、納品書には「下記の通り納品致しましたので御査収ください。」の記載の下に「・・・販促ツール制作 11月15日」と記載されていることから、その納品日は令和元年11月15日とみることができるものである。
さらに、被請求人が「エアー」と称する商品が複数あり、送り状の記載が「AiR販促物(エアー販促物)」であるとしても、当該送り状の送付前に納品された販促ツールである本件カタログは、商品「AiR」に係るものであるから、これが送付されたものとみるのが相当である。
(3)したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、要証期間内に日本国内において、商標権者が、その請求に係る指定商品中の第24類「布団」に含まれる商品「コンフォーター(掛け布団)」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしたことを証明したとものと認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(色彩は原本参照。)


別掲2(色彩は原本参照。)


審理終結日 2020-08-05 
結審通知日 2020-08-12 
審決日 2020-08-31 
出願番号 商願2013-81278(T2013-81278) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (W24)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡辺 悦子椎名 実 
特許庁審判長 木村 一弘
特許庁審判官 中束 としえ
山田 啓之
登録日 2014-04-25 
登録番号 商標登録第5665720号(T5665720) 
商標の称呼 スリープテック、テック 
代理人 TH弁護士法人 

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