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審決分類 審判 判定 その他 属する(申立て成立) W36
管理番号 1367202 
判定請求番号 判定2019-600029 
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2020-11-27 
種別 判定 
2019-10-23 
確定日 2020-10-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第5934328号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 役務「飲食物の提供」に使用するイ号標章は、登録第5934328号商標の商標権の効力の範囲に属する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5934328号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成28年6月21日に登録出願、第36類「建物又は土地の情報の提供」、第38類「電子掲示板通信,データ・メッセージ・グラフィック・画像・情報の電子送信」、第39類「地域観光に関する情報の提供,旅行に関する情報の提供」、第41類「教育・文化に関するイベント(広告に関するものを除く。)の企画・運営又は開催及びそれらの情報の提供,スポーツに関するイベント(広告に関するものを除く。)の企画・運営又は開催及びそれらの情報の提供,旅行に関するイベント(広告に関するものを除く。)の企画・運営又は開催及びそれらの情報の提供,食に関するイベント(広告に関するものを除く。)の企画・運営又は開催及びそれらの情報の提供,娯楽に関するイベント(広告に関するものを除く。)の企画・運営又は開催及びそれらの情報の提供,地域の伝統行事に関する情報の提供,地域の教育・文化に関するイベントについての情報の提供,地域のスポーツに関するイベントについての情報の提供,地域の旅行に関するイベントについての情報の提供,地域の食に関するイベントについての情報の提供,地域の娯楽に関するイベントについての情報の提供,インターネットを利用した映像・画像・動画・音楽・文字情報の提供」、第42類「電子計算機用プログラムの提供」、第43類「飲食店に関する情報の提供,宿泊施設に関する情報の提供,育児に関する情報の提供」、第44類「医療に関する情報の提供,美容に関する情報の提供,介護・介護施設に関する情報の提供」及び第45類「オンラインによるソーシャルネットワーキングサービスの提供,個人に関する情報の提供,インターネットによる友人探し及び紹介のための情報の提供,官公庁・政治経済政策に関する情報の提供,防犯又は防災に関する情報の提供」を指定役務として、同29年3月24日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 イ号標章
請求人が判定を求める標章(以下「イ号標章」という。)は、「マチマチ」の文字からなり、その使用役務を「飲食物の提供」とするものである。
なお、請求人から提出された令和元年10月23日付け判定請求書中、イ号標章及び判定の対象となる役務「飲食店に関する情報の提供,飲食物の提供」(以下「被請求人役務」という。)については、当該判定請求書の記載内容及び証拠からは不明確であることから、当審において、同2年5月14日付けの審尋を発し、請求人から提出された同年6月22日付け回答書及び証拠により、上記のイ号標章及び使用役務として特定されたものである。

第3 請求人の主張
請求人は、イ号標章は、本件商標に類似し、その被請求人役務と本件商標の指定役務中、「飲食店に関する情報の提供」とは同一又は類似するものであるから、本件商標の商標権の効力の範囲内に属するものであるとの判定を求め、その理由を判定請求書及び回答書において要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第12号証を提出した。
1 判定請求書における主張
(1)判定請求の必要性
請求人は、被請求人に令和元年6月3日付けの書簡にて、被請求人による「machi machi」などの使用について懸念を伝えたところ、被請求人からの回答は得られなかった(甲1)。
その後、被請求人が「マチマチ」の商標を使用開始するに至ったことから、被請求人による「マチマチ」の使用は本件商標又はこれに類似する商標の使用であることを明らかにすべく、厳正中立的な立場からの判定を求める。
(2)イ号標章の説明
被請求人は、遅くとも令和元年6月15日より、被請求人の子会社、株式会社フレーバーワークスが運営する台湾発チーズティー専門店(甲2)に関する情報を需要者に提供するウェブサイトを開設している(甲3)。なお、当該ウェブサイトのドメインが「baycrews.co.jp」であることが当該ウェブサイトの開設者が被請求人であることを示している。
被請求人は、当該ウェブサイトを通じて台湾発チーズティー専門店という飲食店に関する情報の提供を行うに当たり、当該ウェブサイトのタイトルにイ号標章を使用することによって(甲3)、電磁的方法により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為を行うものであり、あるいは、当該ウェブサイトのhtmlファイルのタイトルタグにイ号標章を記載することによって(甲4)、役務に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為を行うものであり、役務「飲食店に関する情報の提供」についてイ号標章を使用している。
仮に被請求人が、被請求人と被請求人の子会社、株式会社フレーバーワークスは実質的に同一主体であるとの主張をするとすれば、被請求人は、台湾発チーズティー専門店における飲食物の提供の広告を上記ウェブサイトで行っており、上記ウェブサイトのhtmlファイルのタイトルタグにイ号標章を記載することによって(甲4)、役務に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為を行うものであり、役務「飲食物の提供」についてイ号標章を使用している。
(3)イ号標章が商標権の効力の範囲に属するとの説明
本件商標は「マチマチ」の文字と図形を含むものであり、「マチマチ」の文字は当該図形と不可分的に結合しているとはいえないから、「マチマチ」の文字部分より「マチマチ」の称呼を生じ、当該部分は特定の観念は生じさせない。これに対し、被請求人がウェブサイトのタイトルに用いるイ号標章は、当然に「マチマチ」の称呼を生じ、特定の観念を生じさせない。
したがって、本件商標とイ号標章とは称呼を共通にし、観念において対比ができず、外観において称呼の共通性を凌駕する差異が存在しないことから、イ号標章は本件商標に類似の標章というべきである。
そして、上述のとおり、被請求人は役務「飲食店に関する情報の提供」についてイ号標章を使用しており、当該役務は本件商標の指定役務と同一である。仮に、被請求人は役務「飲食物の提供」についてイ号標章をしていると解しても、「飲食店に関する情報の提供」を求める者は「飲食物の提供」を受けるためにかかる情報を求めるのであるから需要者の範囲が一致し、両者は役務として明らかに類似する。
以上のとおり、イ号標章は本件商標と類似する商標であり、その使用役務も本件商標の指定役務と同一又は類似する役務であるから、被請求人が使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。
2 回答書における主張
(1)審尋事項1及び2について
請求人は、甲第3号証が被請求人のウェブサイトであると主張しているのではなく、甲第4号証のhtmlファイルによって表示される被請求人のウェブサイトの検索エンジンによる検索結果を示すものが甲第3号証である。
甲第5号証は、「JPRS WHOISサービス」においてドメイン「baycrews.co.jp」を検索した結果を示しており、このサービスでは、ドメイン名登録者の名前を含む情報が提供される(甲6)。ドメイン「baycrews.co.jp」を検索した結果として、株式会社ベイクルーズが登録者の組織名として示されている(甲5)。
そして、我が国には、株式会社ベイクルーズという商号の会社は1社しか存在せず、当該会社の所在地は被請求人と同一である(甲7)。
したがって、被請求人である株式会社ベイクルーズがドメイン「baycrews.co.jp」の登録者であり、当該ドメインを有するウェブサイトは、被請求人のウェブサイトである、すなわち、被請求人により開設されたウェブサイトであることが明らかである。
なお、検索エンジンGoogleの検索結果に示されるタイトルは、ウェブページのタイトルタグに付されたタイトルであることから(甲8)、甲第3号証は、被請求人が開設するウェブサイトではないが、そこで表示される検索結果は、被請求人が開設するウェブサイトを表示するためのhtmlに記載された内容であり、甲第3号証は、甲第4号証に加えて、被請求人によるイ号標章の使用態様を示すものである。
また、甲第4号証により示されるhtmlファイルによって表示される被請求人ウェブサイトには、「『machi machi(マチマチ)』は、台湾メディアにて“神のチーズティー”と称され、現地で話題沸騰中のチーズティー専門店」と記載されていることから、明らかに飲食店に関する情報が需要者に提供されている(甲9)。よって、甲第3号証及び甲第4号証により示されるイ号標章の使用が、文字どおり「飲食店に関する情報の提供」についてのものであること、あるいは、「飲食物の提供」についてのものである。
(2)審尋事項3について
株式会社FLAVORWORKSの発行済み株式の総数は200株であるところ(甲10)、株式会社FLAVORWORKSの大株主又は出資者は200株保有の「ベイクルーズ」であることから(甲11)、株式会社FLAVORWORKSは被請求人の子会社である。
(3)答弁書に対する反論
甲第2号証には、タイトルの下に日時2019年5月16日14時00分に続いて「株式会社ベイクルーズ」と記載されている。我が国には、株式会社ベイクル-ズという商号の会社は1社しか存在しないのであるから(甲7)、被請求人が甲第2号証で示されるプレスリリースの作成者である。
なお、当該プレスリリースは、「PR TIMES」と呼ばれるプレスリリース配信サービスを用いて配信されているが、甲第2号証が仮に被請求人によって発信されたものではないと評価されると仮定してみても、その作成者が被請求人であることは変わらない。請求人は、被請求人の子会社ないしグループ会社、株式会社FLAVORWORKSが台湾発のチーズティー専門店を運営する事実を甲第2号証によって立証するものであって、甲第2号証の発信が被請求人によるものであるか否かはなんら甲第2号証に基づく立証に影響を及ぼすものではない。
被請求人は、請求人に対して甲第1号証の連絡に対して返答する意味がないと判断したから返答をせず、今回の判定請求によって答弁の必要性に迫られたので、対応しているにすぎないと主張する。
しかしながら、被請求人は、令和元年11月26日に請求人代理人に架電し、使用許諾の協議を申し入れている。
甲第3号証は、甲第4号証に記載された内容が検索エンジンの検索結集表示画面に表示されることを示すものである。甲第4号証のhtmlによって表示される被請求人ウェブサイトである甲第9号証からは、「MENU」として飲食店で提供される飲食物について情報が提供されていること、「SHOP LIST」として複数の飲食店店舗についての情報が提供されていることなどから、「飲食店に関する情報の提供」又は「飲食物の提供」についてイ号標章が使用されていることが理解される。
この手続は訴訟ではないのであるから、訴訟における事実認定に伴う原則である「立証責任」が適用されるものではない。
被請求人は、甲第2号証によっては被請求人の商標使用行為を認定することができないと主張する。
しかしながら、甲第2号証は、被請求人グループ会社である株式会社FLAVORWORKSが台湾発チーズティー専門店を運営することを立証するものであって、請求人の商標使用行為を直接に立証するものではないから、被請求人の主張は失当である。
被請求人は、甲第3号証についても、役務との関連性、請求人との関連性が不明であり、これによっては被請求人の商標使用行為を認定することはできないと主張する。
しかしながら、役務との関連性については、甲第3号証自体に「『machi machi(マチマチ)』は、台湾メディアにて“神のチーズティー”と称され、現地で話題沸騰中のチーズティー専門店です。」と記載されており、「飲食店に関する情報の提供」又は「飲食物の提供」との関連性が明らかである。
被請求人は、一般論として「飲食店に関する情報の提供」と「飲食物の提供」の類否につき述べているが、「飲食店に関する情報の提供」及び「飲食物の提供」が共に同一の類似群コードを付与されていることに被請求人も争いはなく、被請求人が相応の主張立証をしなければ、両者が類似するとの推定が覆る余地はない。
(4)小括
甲第4号証及び甲第9号証が被請求人の提供によるものであり、甲第3号証は甲第4号証に記載された内容が検索エンジンの検索結果表示画面に表示されたものである。
甲第3号証、甲第4号証及び甲第9号証によって、被請求人のイ号標章の使用態様は明らかである。
被請求人の当該使用態様は、本件商標の指定役務である役務「飲食店に関する情報の提供」又はそれに類似する「飲食物の提供」にイ号標章を使用するものである。

第4 被請求人の主張
被請求人は、イ号標章は、本件商標の効力の範囲に属さないとの判定を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べた。
1 答弁書における主張
(1)イ号標章の説明について
請求人は、「遅くとも令和元年6月15日より、被請求人の子会社株式会社フレーバーワークスが運営する台湾発チーズティー専門店(甲2)に関する情報を需要者に提供するウェブサイトを開設している(甲3)。」と主張し、証拠方法には、甲第2号証について「被請求人プレスリリース」と説明している。
しかし、甲第2号証が、被請求人のプレスリリースであるとする根拠は示されておらず、同号証に示されているウェブサイトの複写とおぼしき書類の下部にあるURLをみても、被請求人が発信した情報なのか、被請求人ではない法人が発信したのか、あるいは、第三者が取材して掲載したものなのか、確認することができない。
請求人は、判定請求書にて「当該ウェブサイトのドメインが『baycrew’s.co.jp』であることが当該ウェブサイトの開設者が被請求人であることを示している。」と主張している点からすると、少なくとも被請求人が管理するウェブサイトではないことは明らかである。
したがって、甲第2号証が「被請求人プレスリリース」であるとは証明されていない。
甲第3号証については、「被請求人ウェブサイトの検索結果表示両面」と説明しているところ、これが改変なく真に実在するものなのか、どのデータベースをいつ検索した結果で、作成者は誰なのか情報がなく、証拠としての体をなしていない。よって、証拠能力のない書類である。
そうすると、請求人が主張している内容は、証拠に裏付けされたものは何一つなく、イ号標章を特定するに至っていない。
したがって、当該判定請求はその体をなしておらず、実質的な答弁を行うことは困難である。
請求人は、「被請求人からの回答は得られなかった」と述べているが、当該判定の請求と同程度の主張であったことから返答する意味がないと判断し、判定の請求がなされて答弁の必要性に迫られたので、対応しているにすぎない。
(2)使用役務について
甲第3号証に示された書類が役務「飲食店に関する情報の提供」と主張しているが、甲第3号証は被請求人が作成したものではない。これが仮にどこかのデータベースの検索結果のスクリーンショットであるのであれば、被請求人はそのデータベースの提供も検索結果の表示にも関与していない。
加えて、「飲食物の提供」を使用役務と挙げているが、この主張は「仮に被請求人が、被請求人と被請求人の子会社(後省略)」という、仮の議論の中で特定しているにすぎない。
よって、役務の特定としては不十分である。
(3)株式会社フレーバーワークスについて
請求人は、株式会社フレーバーワークスを被請求人の子会社であるとの前提で主張しているが、それを示す証拠は何も示されていない。立証責任は請求人にあるものであり、被請求人としては、株式会社フレーバーワークスという名称の法人については言及することができない。
(4)商標的使用について
甲第2号証の書類中に「マチマチ」の語が存在していることは認める。しかし、これは商標として使用されているものではない。プレスリリースというのは、辞書にも示されているように「報道関係者向けの公式発表」であって、報道のための情報材料にすぎない。したがって、プレスリリースは、広告、取引書類、役務の提供の用に供する物には該当しない。そして甲第2号証の発表主体が不明である以上、被請求人の商標使用行為とはいえない。
甲第3号証の書類においても、この中に存在する「マチマチ」の表示は、検索結果の表示であって、それ自体に役務との関連性、請求人との関連性が不明なことから、被請求人による商標的使用ということはできない。
請求人は被請求人の商標としての使用行為を何ら特定していない。
(5)役務の類否について
請求人は、被請求人が「飲食店に関する情報の提供」及び「飲食物の提供」を行っていると主張している。しかし、被請求人がこれらの行為を行っている事実は何ら特定されていない。
また、「飲食店に関する情報の提供」と「飲食物の提供」は、全く異なる役務で類似するものではない。
(6)結論
以上のとおり、被請求人が被請求人適格を有していること、イ号標章、使用役務について、何ら証拠で特定されていない。
2 回答書に対する答弁(再答弁)における主張
(1)甲第9号証について
甲第9号証には「『machi machi(マチマチ)』は、台湾メディアにて“神のチーズティー”と称され、現地で話題沸騰中のチーズティー専門店」の記載はあるものの、他人のための役務ではないことは明らかである。当該記載は、自身の店の紹介をしているにすぎず、他人のための飲食店に関する情報を提供するものではない。
また、甲第9号証の「SHOP LIST」に関しては、自身の店を紹介しているものであり、「飲食店に関する情報の提供」に該当するものではなく、当該役務を行っているものでもない。さらに、「MENU」の記載については、自身の店で取り扱う商品を紹介しているにすぎない。
以上のとおり、請求人は、いまだイ号標章を使用しているとする商品又は役務を特定するに至っていない。
(2)役務の類否の考え方について
請求人は、特許庁作成の「類似商品・役務審査基準」の類似群コードの共通性を根拠に役務が類似する旨主張するが、これは商標の審査に用いられる基準であり、商標権の効力の範囲の判断に利用されるものではない。
(3)結論
被請求人が行っているとする役務については、「飲食店に関する情報の提供」及び「飲食物の提供」ではない。

第5 当審の判断
1 本件商標について
本件商標は、別掲のとおり、赤色及び緑色の三角形と黄色の四角形を組み合わせた図形の横に「マチマチ」の文字を横書きしてなるところ、その構成中の図形部分と「マチマチ」の文字部分とは、その構成態様及び両者の間にやや間隔があることから、視覚的に分離して看取されるものである。
そこで、本件商標の構成中の図形部分をみるに、当該図形は、我が国において親しまれた事物を表すものとはいえず、特定の称呼及び観念を生じるとみるべき事情は見いだせないものであり、また、文字部分をみるに、「マチマチ」の文字は、一般的な辞書等に採録された語ではなく、特定の意味合いを想起させる語として知られているものとも認められないから、特定の観念を生じることのない造語とみるのが相当である。
してみれば、本件商標の構成中の図形部分と文字部分とは、外観や観念上、何らかの関連性があるとは認められないものであり、それを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとは認められないものであって、それぞれが要部として認識されるものというのが相当である。
そうすると、本件商標は、その構成中、要部である「マチマチ」の文字に相応して、「マチマチ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
2 イ号標章について
イ号標章は、「マチマチ」の文字からなるところ、当該文字は、一般的な辞書等に採録された語ではなく、特定の意味合いを想起させる語として知られているものとも認められないから、特定の観念を生じることのない造語とみるのが相当である。
そうすると、イ号標章は、「マチマチ」の文字に相応して「マチマチ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
3 本件商標とイ号標章の類否について
本件商標とイ号標章を比較すると、両者は全体の構成において相違するものの、本件商標の要部である「マチマチ」の文字部分とイ号標章を比較すると、外観においては、「マチマチ」の文字を共通にするものであるから、外観上、類似するものである。
次に、称呼においては、本件商標とイ号標章とは共に「マチマチ」の称呼を共通にするものである。
そして、本件商標とイ号標章は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念上、比較することはできない。
そうすると、本件商標とイ号標章とは、観念において比較できないとしても、外観において類似し、称呼を共通にするものであるから、これらを総合して考察すれば、本件商標とイ号標章とは、互いに相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
4 本件商標の指定役務とイ号標章の使用役務の類否について
(1)本件商標の指定役務について
本件商標の指定役務は、上記1のとおりであり、第43類「飲食店に関する情報の提供」を含むものである。
(2)イ号標章の使用役務について
請求人が提出した甲第9号証は、被請求人のウェブサイトと認められるところ、1頁目の上部に「マチマチ オフィシャルサイト」の文字が記載されており、中段の「ABOUT」の項には「『machi machi(マチマチ)』は、・・・チーズティー専門店です。」の記載があり、2頁目の「MENU」の項には「Cream Cheese Tea/クリームチーズティー」等の記載と共に当該商品の写真が掲載されている。
また、職権による調査によれば、例えば、シブヤ経済新聞のウェブサイト(https://www.shibukei.com/headline/14231/)によれば、「台湾発チーズティー専門店『マチマチ』、ラフォーレ原宿に日本1号店」の見出しの下、「テークアウトが中心となるが、店内とテラスにハイテーブルを用意する。・・・ストレートティーにチーズクリームを注ぐチーズティー(518円?)・・・ボトル入りドリンク(680円)などを提供。」の記載があることからすると、被請求人は、店舗内にテーブル等を用意し、上記「MENU」の項に記載されている商品と推認される飲料を提供している実情がうかがえる。
そうすると、被請求人がイ号標章を使用している役務(使用役務)は、「飲食物の提供」というのが相当である。
(3)本件商標の指定役務と使用役務の類否について
本件商標の指定役務中、「飲食店に関する情報の提供」とは、主に飲食をしようとする者が飲食店を探す際に当該情報を利用する役務といえるものであり、その情報の内容として、例えば、飲食店の場所、メニュー、値段等がある。
他方、被請求人の使用役務である「飲食物の提供」とは、飲食をしようとする者が利用する役務といえるものであり、当該役務に関する広告、価格表、例えば、店舗の場所、メニュー、値段等が掲載されたちらしなどに商標を使用する行為は、商標法第2条第3項8号の商標の使用行為といえるものである。
そうすると、上記役務の需要者層は、いずれも飲食をしようとする一般の消費者といえるものであって、「飲食店に関する情報の提供」に係る情報の内容と「飲食物の提供」に係る商標の使用行為は、一部共通するものであるから、両者は、密接な関連性を有するといえるものである。
してみれば、本件商標の指定役務中の「飲食店に関する情報の提供」と被請求人の使用役務である「飲食物の提供」とは、需要者の範囲を共通にするものであり、密接な関連性を有する役務であることから、これらの役務に同一又は類似の商標を使用するときは、同一営業主の提供に係る役務と誤認されるおそれがあるというのが相当である。
したがって、本件商標の指定役務中の「飲食店に関する情報の提供」と被請求人の使用役務である「飲食物の提供」とは類似の役務というのが相当である。
5 まとめ
以上のとおり、イ号標章は、本件商標と類似するものであって、本件商標の指定役務と類似の役務に使用をするものであるから、被請求人が役務「飲食物の提供」に使用するイ号標章は、本件の商標権の効力の範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。

別掲
別掲 本件商標(色彩については、原本参照。)



判定日 2020-09-30 
出願番号 商願2016-67286(T2016-67286) 
審決分類 T 1 2・ 9- YA (W36)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中尾 真由美中村 聖 
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 木住野 勝也
小田 昌子
登録日 2017-03-24 
登録番号 商標登録第5934328号(T5934328) 
商標の称呼 マチマチ 
復代理人 岡村 太一 
代理人 特許業務法人大島・西村・宮永商標特許事務所 
代理人 大谷 寛 

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