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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W09162541
管理番号 1367198 
異議申立番号 異議2020-900026 
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-11-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-01-28 
確定日 2020-10-19 
異議申立件数
事件の表示 登録第6212485号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6212485号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6212485号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成30年12月14日に登録出願、第9類、第16類、第25類及び第41類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和元年12月17日に登録査定され、同2年1月7日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第108号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 当事者
(1)申立人について
申立人は、昭和25年に発足し、宗教活動、宗教団体の包括などの公益事業のほか、不動産賃貸業を行うことを目的として、昭和27年に成立した宗教法人であり、現在も活発に活動している我が国有数の宗教法人である(甲2、甲3、甲8)。
申立人は、「世界救世教いづのめ教団」及び「東方之光」の包括法人であり(甲3?甲7)、かつては商標権者も申立人の被包括法人であった。
また、申立人の信徒数(商標権者との包括被包括関係が廃止される前の商標権者の信徒数を含む。)は、世界34か国で約117万1400名であり、日本国内では57万9430名である(甲8)。
(2)商標権者について
商標権者は、申立人の被包括法人として、宗教活動などの公益事業のほか、物品販売事業、出版事業などを行うことを目的として、平成11年に成立した宗教法人である(甲9?甲11)。
商標権者は、令和2年2月4日から、法人名として、「世界救世教主之光教団」を使用しつつも、宗教活動につき、「世界メシア教」の名称を使用しており、「世界メシア教」の名称の外国語表記も使用している(甲11、甲12)。
(3)申立人と商標権者との現在の関係について
商標権者は、履歴事項全部証明書の記載上、申立人の被包括法人とされているが(甲9)、申立人は、平成30年1月30日、商標権者において世界救世教の規則、教規に著しく違反する行為があったことを理由に、商標権者との包括被包括関係を廃止した(甲13?甲16)。
なお、商標権者は、上記廃止が無効であり、依然として申立人の被包括法人であること等を主張し、静岡地方裁判所沼津支部に仮処分の申請をしたが、令和2年2月12日、同裁判所は、商標権者について既に申立人の被包括法人ではなくなったと認定し、商標権者の仮処分申請を却下した(甲95、甲96)。
2 申立人商標
(1)「世界救世教」の名称について
ア 「世界救世教」の使用状況
申立人は、宗教法人「日本観音教団」及び宗教法人「日本五六七教会」を発展的に解散し、昭和25年2月4日、「世界救世(メシヤ)教」として発足した宗教法人であり、「世界救世教」の名称は、現在まで約70年間の長期間にわたり、申立人により継続的に、宗教名又は宗教法人の代表的出所標識として使用されている(甲3、甲17、甲18等)。
前記のとおりの申立人の信徒数に加え、かかる使用状況から、「世界救世教」の名称は、申立人の信徒の間のみならず、宗教に関心のある者の間で広く知られ、申立人を指し示すものとして広く一般に受け入れられているものである。
イ 「世界メシヤ教(世界メシア教)」が「世界救世教」を示すこと
各種辞書類などによれば、「世界メシヤ教(世界メシア教)」は、「世界救世教」と同義と解釈される用語であることは明らかである(甲21?甲24)。
また、「世界メシヤ教(世界メシア教)」は、昭和25年2月から今日に至るまで、長期間にわたり、一貫して「世界救世教」を指し示すものとして、申立人又はその関係者により使用されている(甲3、甲17、甲18)。
(2)「世界救世教」の図形について
ア 日本観音教団図形
申立人及びその前身である「日本観音教団」は、昭和22年頃から、別掲2のとおりの「日本観音教団図形」を使用していた(甲25?甲42)。
イ 日本五六七教会図形
申立人及びその前身である「日本五六七教会」は、昭和23年頃から、別掲3のとおりの「日本五六七教会図形」を使用していた(甲43?甲56)。
ウ 世界救世教図形
申立人及びその被包括法人は、昭和25年頃から今日に至るまで、別掲4のとおりの「世界救世教図形」を使用している(甲18?甲20、甲57?甲67)。
3 商標権者による一連の不正出願商標
(1)包括被包括関係廃止後の出願
商標権者は、申立人により平成30年1月30日に商標権者との包括被包括関係が廃止された後、前記仮処分事件において申立人との包括被包括関係がある旨の主張をしていながら、申立人に秘匿したまま、平成30年10月9日以降、合計16件の出願(以下「一連の不正出願商標」という。)をした(甲1の1?16)。
(2)商標権者の名称について
商標権者は「世界救世教主之光教団」の名称からなるところ(甲9)、該名称は、申立人の名称「世界救世教」を含むものであり(甲9、甲10)、申立人が使用している「世界救世教」の名称(甲3、甲17、甲18等)と類似性を有し、紛らわしいものであることは明らかである。
そうすると、商標権者は、その名称から、申立人である「世界救世教」と経済的又は組織的に何らかの関係がある者と容易に認識できる者といえる。
なお、商標権者は、令和2年2月4日から、宗教活動につき、「世界メシア教」の名称を使用しているが、法人名は「世界救世教主之光教団」の名称のままである(甲11、甲12)。
(3)「世界メシア教」について
一連の不正出願商標のうち、2件は「世界メシア教」の文字からなるものである(甲1の1、甲1の9)。
前記のとおり、「世界メシヤ教(世界メシア教)」は、「世界救世教」と同義であり(甲21?甲24)、約70年間という長期間にわたり、一貫して「世界救世教」を指し示すものとして、申立人等により使用されている(甲3、甲17、甲18等)。
また、商標権者も、自身が発行する印刷物において、「世界メシヤ教(世界メシア教)」と「世界救世教」とを同義の用語として使用している(甲68?甲76)。
そうすると、上記商標は、申立人を強く意識した商標であることは明白であり、これより、「世界救世教」を容易に連想、想起させるものである。
(4)「世界メシア教」の外国語表示について
一連の不正出願商標のうち、外国語表示の商標(甲1の2?5、甲1の10?13)は、いずれも「世界のメシアの教会(教団)」の意味合いを容易に認識できる(甲11、甲12、甲19、甲20、甲77?甲81)。
これら外国語表示の商標は、その構成文字全体より認識できる意味合いから、商標権者が各商標を使用する際には、当該商標は、前記「世界メシア教」を外国語で表示した商標であると自然に捉えられる。
そして、これまで長期間、継続的に申立人及び商標権者も「世界メシヤ教(世界メシア教)」と「世界救世教」とを同義の用語として使用していること、並びに申立人の極めて多数の外国人信徒の存在を考慮すると、それら外国語表示の商標は、「世界メシヤ教(世界メシア教)」を外国語で表したものであって、申立人を強く意識した商標であることは明白であり、これより「世界救世教」を容易に連想、想起させるものである。
(5)世界救世教の図形を模倣したもの
一連の不正出願商標のうち図形からなる商標6件のうち、2件(甲1の6、甲1の14)は、申立人及びその前身により昭和22年頃から使用され、昭和25年頃から次第に使用されなくなったものの、申立人の信徒において今なお申立人を連想、想起させる商標として広く認識されている「日本観音教団図形」(別掲2)に酷似するものである。
また、本件商標及び他の1件(甲1の7、甲1の15)は、申立人及びその前身により昭和23年頃から使用され、昭和25年頃から次第に使用されなくなったものの、申立人の信徒において今なお申立人を連想、想起させる商標として広く認識されている「日本五六七教会図形」(別掲3)に酷似するものである。
さらに、2件(甲1の8、甲1の16)は、申立人及びその被包括法人(被包括法人であった商標権者を含む。)により、昭和25年頃から今日まで継続して使用されている「世界救世教図形」(別掲4)に酷似するものである。
世界救世教が創立されるまでの経緯や図形の使用状況を踏まえると、上記各図形に接する場合、「世界救世教」を容易に連想、想起できるものである。
なお、「日本観音教団図形」「日本五六七教会図形」「世界救世教図形」を変形した図形商標を利用する行為は、教祖が存しているとすればその著作者人格権の侵害となるべき行為といい得る(著作権法第60条、同法第113条第7項)。
4 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標を含む一連の不正出願商標は、知財高裁判決(平成17年(行ケ)第10349号)及び商標審査基準にいう「指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合」「当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合」に該当し、商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」である。
(1)本件商標の出願の経緯等
ア 「世界救世教」を連想・想起させる不正出願商標であること
前記のとおり、本件商標は、一連の不正出願商標の一つとして出願されたものである。
そして、本件商標は申立人の前身「日本五六七教会」のシンボルマークと酷似するものであり、申立人が「日本観音教団」及び「日本五六七教会」を発展的に解散し発足されたという経緯、申立人発足後しばらくの間は申立人も「日本五六七教会」のシンボルマークの使用を続けていた事実を踏まえると、本件商標は、その構成から「世界救世教」を容易に連想、想起させるものである。ましてや、商標権者は、「世界救世教主之光教団」の名称からなるから、商標権者が本件商標を使用すると、申立人と宗教的にはもちろんのこと、経済的又は組織的にも何らかの関係がある者と容易に認識されるものである。
イ 出願の目的が不正であること
商標権者は、申立人の前身「日本五六七教会」のシンボルマーク及び申立人による当該シンボルマークの使用を知りながら、これと酷似する本件商標を採択したものであるが、商標権者において、これら商標を使用し独占しなければならない正当な理由はない。むしろ、本件商標は商標権者が申立人から包括被包括関係を廃止された直後に出願されたものであること、その出願時において商標権者は包括被包括関係の廃止について申立人との間で紛争が継続していたこと、商標権者は申立人の教義に著しく反することを公然と行うようになる一方、信徒の繋ぎ止めを始め、その宗教団体の維持に奔走していたことなどから、商標権者は、包括被包括関係の廃止への対抗手段として、申立人に秘匿したまま、「世界救世教」を連想、想起させる本件商標の登録出願を行ったと強く推認される。
また、商標権者による本件商標の出願の目的は、「世界救世教」に化体した信用、名声及び信徒や顧客に対する誘引力に便乗して、申立人の宗教的資産を侵奪し、その独占的使用権である商標権を取得し、将来商標権を行使することにより、申立人及び被包括法人の活動や事業を妨害し、あるいは、不当な利益を得ることにあったことも容易に推認でき、不正の目的であったことは明らかである。
ウ 重大な義務違反があること
商標権者は、自らを未だ申立人の被包括法人であると主張している。
しかしながら、世界救世教の規則等の内容からも、被包括法人に対し包括法人の宗教的、事務的規制が及ぶように規定されていることは、商標権者も十分理解していたはずである。
そうとすれば、「世界救世教」を連想、想起させる商標について、宗派として被包括体制を統括し、被包括法人を指導監督する包括法人を差し置いて、その承諾なしに被包括法人が登録出願を行うことは、被包括法人としての著しい義務違反である。
さらに、世界救世教において、重要な財産の取得や利用(新規の商標出願を含む。)については、被包括法人は、包括法人の許諾(決裁)を必要としており、申立人の許諾なく、被包括法人が商標出願をすることはできないという慣習が存在している。この事実は、商標権者も知る立場にあった。
そうすると、商標権者は、申立人との包括被包括関係がある旨の主張をしつつ、申立人との関係で、重大な義務違反、あるいは越権行為をしてきたというほかない。
他方、包括被包括関係が廃止されたという前提に立つ場合には、商標権者には、「世界救世教」を連想、想起させる商標についての出願をする正当な理由は、全くない。
また、本件商標の出願及び登録は、日本国内のみならず、世界各国に信徒が存する状況において、商標権者によるその指定商品又は指定役務についての使用の独占をもたらすことは、「世界救世教」の名声、名誉を傷つけるおそれがあるばかりでなく、公正な取引秩序を乱し、ひいては国際信義にも反するものといえる。
エ 健全な法感情に照らし条理上許されないこと
商標権者は、申立人より包括被包括関係を廃止され、申立人と無関係の宗教団体となったものであるが、これにより多くの信徒が離れ、また、自己の名称(世界救世教主之光教団)中の「世界救世教」の文字やシンボルマークの使用ができなくなることをおそれ、一方では依然として申立人の被包括法人であると主張して仮処分を申請する等して申立人と争い、さらには、申立人の名称「世界救世教」と相紛らわしい文字やシンボルマークの商標登録を得て、申立人と無関係の宗教団体であると理解されることを防ぐとともに登録商標の独占的使用権をもって申立人に対抗し、申立人の活動を妨害する意図で、本件商標について出願をしたものと強く推認されるものである。
そして、商標権者が、本件商標をその指定商品又は指定役務に使用する場合、本件商標は、商標権者の名称「世界救世教主之光教団」と相まって、あたかも申立人である「世界救世教」と今なお密接に関連性のある者の商品又は役務のごとく誤信させるおそれも高いものといえる。
そうすると、平成30年1月30日に申立人により商標権者との包括被包括関係が廃止されたことから、商標権者は、当該関係廃止に対抗する目的で、申立人が「世界救世教」を連想、想起させる商標について登録をしていないのを奇貨として、本件商標の出願に及んだものと評価せざるを得ず、剽窃的なものといわなければならない。
また、包括被包括関係の廃止により申立人と関係がなくなった(前記のとおり裁判所はそのように判断した。)とするならば、商標権者が、「世界救世教」を連想、想起させる本件商標を使用したときには、これが「世界救世教」と関係がある商品又は役務であるかのごとく公衆に暗示又は誤信させるおそれがある。
そして、商標権者は、宗教活動を「世界メシア教」の名称で行うと宣言し、申立人の教義とは全く異なる教義を信奉する申立人とは関係がない宗教団体へと変貌した。もし、本件商標が取り消されずに維持されるならば、宗教上の教義の異なる商標権者の行為が、申立人の行為と誤信され、その場合には、申立人の尊厳を毀損し、世界救世教の信徒の宗教感情を害するおそれも生ずる。
申立人のシンボルマークが有する他から識別する機能が損なわれるような誤認混同を生じ得る相紛らわしい本件商標が使用されることは、社会生活上無視し得ない混乱を招来しかねないものである。さらに、商標権者は、上記のような公共的利益を損なう結果に至ることを十分予測しながら、本件商標の出願に及んだものといえるから、これを単なる商標権者と申立人との間の商標権の帰属等をめぐる私的な紛争として処理されるべきものとは到底いえない。
そうすると、商標権者は、申立人に先回りして、不正な目的をもって剽窃的に出願したものと認められるから、出願について先願主義を採用し、また、現に使用していることを要件としていない我が国の法制度を前提としても、そのような出願は、健全な法感情に照らし条理上許されないというべきであり、また、商標法の目的(商標法第1条)にも反し、公共の利益を損ない、また、公正な取引秩序を乱すものというべきである。
オ 申立人への不利益が重大であること
<1>本件商標は申立人も使用していた申立人の前身「日本五六七教会」のシンボルマークと酷似するといえること、<2>申立人は現在まで約70年間の長期間にわたり広く受け入れられた宗教法人であること、<3>商標権者において本件商標を出願・登録するに至った経緯が不正な目的に基づくものであることからすると、商標権者が本件商標を使用することに正当な理由はなく、また、本件商標が使用されると、あたかも申立人と宗教的にはもちろんのこと、法律的・組織的にも何らかの関係がある者の商品等であると公衆を誤信させるおそれがあるから、申立人が被る不利益は重大というべきであること、商標権者が「世界救世教」を容易に連想、想起できる本件商標を使用することにより、申立人の信用、名声が侵害されることは明らかである。
しかも、申立人と宗教上の教義が異なる商標権者の行為が、申立人の行為と誤信されるおそれがあり、このような法的にも無視し得ない混乱が生ずることは、申立人のみならず、公衆に対しても不利益を与えるものといえる。
(2)まとめ
上記(1)のとおり、本件商標は、「世界救世教」を容易に連想、想起させるというべきであり、商標権者は申立人が本件商標について登録をしていないのを奇貨として本件商標の出願に及んだものと評価せざるを得ず、剽窃的なものといえる。
そして、本件商標は、「世界救世教」に化体した信用、名声及び顧客誘因力に便乗して不当な利益を得る等の目的、あるいは申立人との金銭的な交渉又は立場の維持に関する交渉を想定し、自己に有利な交渉材料とする目的、さらには、申立人に対抗、敵対し、あわよくば世界救世教の宗教的資産を侵奪し、申立人に代わってその勢力を拡大し、信者も含めた社会に対し、大きな影響を与える目的等、不正な目的をもって「世界救世教」を連想、想起させる商標を敢えて出願し、一連の不正出願商標(甲1の1)の審査において虚偽の主張をし、その登録を受けたものであり、公序良俗に反し、商道徳に反し、一般的な信義則に反するものというべきである。
上記本件商標の登録出願の経緯及び目的に鑑みると、商標権者による本件商標の出願は、申立人との間の信義則上の義務違反となるのみならず、健全な法感情に照らし条理上許されないというべきであり、また、商標法の目的(商標法第1条)にも反し、公正な取引秩序を乱すものというべきであるから、著しく社会的妥当性を欠く、いわゆる「悪意の出願」というべきである。さらに、本件商標の出願の時点において、商標権者が申立人との関係において、本件商標を出願し、登録することについて、正当な権利を有する者ということもできない。加えて、本件商標が使用されることによる申立人の不利益は重大といえるし、公益的に見ても、申立人を連想、想起させる商標を商標権者に独占させることは、申立人と商標権者とを、申立人の信徒やその他宗教に関心のある者が誤信するおそれが大きく、社会的な影響も大きいといわざるを得ない。
このような本件商標に対して登録を与えることは、社会秩序や道徳的秩序に反する商標を、法が登録を与えて助長することがないようにする商標法第4条第1項第7号の規定の趣旨(知財高裁 平成27年(行ケ)第10223号)に反するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号所定の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものである。

第3 当審の判断
1 商標法第4条第1項第7号の解釈について
商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、<1>その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、<2>当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、<3>他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、<4>特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、<5>当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである。(知財高裁 平成17年(行ケ)第10349号)
しかしながら、先願主義を採用している日本の商標法の制度趣旨などからすれば、商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは、商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので、特段の事情のある例外的な場合を除くほか、許されないというべきである。
そして、特段の事情があるか否かの判断に当たっても、出願人と、本来商標登録を受けるべきと主張する者との関係を検討して、例えば、本来商標登録を受けるべきであると主張する者が、自らすみやかに出願することが可能であったにもかかわらず、出願を怠っていたような場合や、契約等によって他者からの登録出願について適切な措置を採ることができたにもかかわらず、適切な措置を怠っていたような場合は、出願人と本来商標登録を受けるべきと主張する者との間の商標権の帰属等をめぐる問題は、あくまでも当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから、そのような場合にまで「公の秩序や善良な風俗を害する」特段の事情がある例外的な場合と解するのは妥当でない。(知財高裁 平成19年(行ケ)第10391号)
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次のとおりである。
ア 申立人は、昭和25年に発足し昭和27年に成立した宗教法人であり、「世界救世教いづのめ教団」及び「東方之光」の包括法人であること(甲2?甲7)、商標権者は平成11年6月に成立した宗教法人であること(甲9)、申立人は商標権者の包括法人であったが平成30年1月30日に商標権者との包括被包括関係を廃止したこと(甲13、甲96)、及び商標権者は当該廃止が無効であり依然として申立人の被包括法人であること等を主張して静岡地方裁判所沼津支部に仮処分の申請をし、当該仮処分の申請は令和2年2月に却下されたこと(甲95)が認められる。
イ 申立人(前身、被包括法人を含む。)は、発足当時から自己の名称を「世界救世教」の文字に「めしや」や「メシヤ」のルビを付して表示すること及び「世界救世(メシヤ)教」と表示することがあり、かかる表示は現在も用いられていることが認められる(甲17、甲7、甲3)。
ウ 本件商標を含む商標権者による16件の商標登録出願(甲1)のうち、本件商標を含む3件は平成30年12月14日に、1件は同年10月9日に、4件は同年10月22日に、及び8件は令和元年5月28日に登録出願されたものである(甲1)。
(2)上記(1)アの事実からすれば、申立人と商標権者は、少なくとも申立人が商標権者との包括被包括関係を廃止した平成30年1月30日までの相当の期間、包括被包括関係にあったと認められる。
そうすると、本件商標については、その出願は申立人が商標権者との包括被包括関係を廃止した後にされたものであるが、包括被包括関係にあった者の間における商標権の帰属等をめぐる問題であり、あくまでも当事者同士の私的な問題として解決すべきであって、「公の秩序や善良な風俗を害する」特段の事情がある例外的な場合には該当しないものと判断するのが相当である。
なお、本件が当事者同士の私的な問題であることは、申立人が、商標権者は包括被包括関係の廃止への対抗手段として本件商標の登録出願を行ったなどと述べていることからも裏付けられる。
そして、他に本件商標が「指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合」や「当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合」など、商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものといえない。
3 むすび
以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものではなく、その登録は、同項の規定に違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1(本件商標)

(色彩は原本参照。)

別掲2(日本観音教団図形)

(色彩は原本参照。)

別掲3(日本五六七教会図形)

(色彩は原本参照。)

別掲4(世界救世教図形)

(色彩は原本参照。)


異議決定日 2020-10-07 
出願番号 商願2018-153760(T2018-153760) 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W09162541)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小林 大祐 
特許庁審判長 木村 一弘
特許庁審判官 板谷 玲子
山田 啓之
登録日 2020-01-07 
登録番号 商標登録第6212485号(T6212485) 
権利者 世界救世教主之光教団
代理人 藤森 裕司 
代理人 前田 幸嗣 
代理人 飯島 紳行 
代理人 伊藤 大地 

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