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審決分類 審判 全部取消 商標の同一性 無効としない X33
管理番号 1367061 
審判番号 取消2018-300326 
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2018-05-23 
確定日 2020-09-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第5101245号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5101245号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおり、「木花」、「KONOHANA」及び「このはな」の文字を三段に表してなり、平成19年4月19日に登録出願、第33類「日本酒」を指定商品として、同年12月28日に設定登録がされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、平成30年6月6日であり、その請求の登録前三年以内の同27年6月6日から同30年6月5日までの期間を以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
請求人は、本件商標は、継続して3年以上日本国内において、「日本酒」(以下「請求に係る指定商品」という。)について本件商標の使用をしていないものであるから、商標法第50条第1項の規定によりその登録は取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
請求人は、被請求人の答弁に対して、要旨次のとおり弁駁した。
(1)乙第1号証について
乙第1号証の1は、本件商標権者がオリジナル和酒を本格的に製造販売する前のサンプル(以下「本件商品サンプル」という。)の製造に関する取引書類のようである。
そして商標の使用態様を確認すると、乙第1号証の1及び同号証の2には「オリジナル清酒本醸造 720ml KONOHANA」と記載されているものの、本件商標は上下三段書きの「木花\KONOHANA\このはな」の文字で構成されているから本件商標中の一部の文字の使用にすぎない。また、「KONOHANA」(又は「このはな」)の漢字表記は「此花」「木野花」「木華」など複数考えられるから、「KONOHANA」の欧文字のみの使用をもって本件商標と社会通念上同一と認められる商標が使用されていると認定することは極めて困難である。
次に、本件商標が指定商品に使用されていたか否かを確認すると、乙第1号証の書類を作成した2017年(平成29年)10月及び11月時点において、本件商標を使用する予定の日本酒が存在しなかったことは明白である。したがって、乙第1号証の1及び同号証の2に記載されている「KONOHANA」の欧文字は本件商標の指定商品に使用されていたものと解することも困難である。
さらに、乙第1号証(及び乙第5号証)の書面上の「オリジナル清酒」なる商品と、乙第3号証の写真中の清酒との対応関係についても客観的に確認することができない。
よって、乙第1号証は単独では本件商標の使用の証拠にならないことは明らかであり、また、乙第3号証の写真中の清酒等と結びつけて考慮しなければならない客観的な証拠も見当たらないから、本件商標の使用の証拠には到底なり得ないものと思料する。
(2)乙第2号証について
乙第2号証は日本酒を入れる容器及び外箱のデザインを確認するための見本を撮影した写真にすぎず、当該容器に入れる予定の日本酒が未だ存在しない以上、指定商品に使用されていた事実を裏付ける写真ではない。
また、乙第2号証の写真中の容器及び外箱が、本件商標権者の製造販売にかかる日本酒に使用されるものであることを証明する客観的な証拠も見当たらない。
よって、乙第2号証も本件商標の使用の証拠になり得ない。
(3)乙第3号証について
証拠説明書によれば、乙第3号証は2018年(平成30年)6月頃に被請求人によって作成された資料とのことであるが、本当に被請求人が同月に作成した資料であるなら答弁書を作成した同年7月の前月のことであるから、作成年月日をより具体的に述べることは十分可能と思われる。そうすると、被請求人は故意に乙第3号証の作成年月日について明言せず、曖昧にしていると疑わざるを得ない。
なお、上記(1)で述べたとおり、乙第3号証の写真中の清酒が本件商標権者の手元に届いたのは本件審判の予告登録後であり、そうすると、乙第3号証は本件審判の予告登録後に作成されたものと解するのが自然である。
したがって、乙第3号証は本件審判の予告登録後に作成されたものと解されるため、本件商標の使用の証拠にはなり得ないと思料する。
また、乙第3号証の2の商品容器背面のラベルを見ると、当該商品の製造元は茨城県水戸市所在の「明利酒類株式会社」と記載されているため、本件商標権者は乙第3号証の写真中の清酒の製造者ではないということは明らかである。さらに、乙第3号証を他の証拠資料とあわせてみても、本件商標権者が乙第3号証の写真中の清酒を第三者に譲渡した等の事実を確認することもできない。
したがって、仮に乙第3号証の写真中の清酒が本件審判の予告登録前に製造された本件商品サンプルであったとしても、本件商標権者が当該写真中の清酒を製造し、又は販売した等の事実が証明されていないから、本件商標権者が本件商標を使用した事実を示す証拠には到底なり得ないと思われる。なお、上記(1)で述べたとおり、乙第3号証の写真中の清酒は、あくまでサンプルにすぎず、一般消費者向けに販売される可能性についても不明である。
さらに、上記(1)で述べたとおり、乙第1号証(及び乙第5号証)の書面に品番等が見当たらないため、見積書や請求書上の「オリジナル清酒」なる商品と、乙第3号証の写真中の清酒を結びつける客観的な証拠がない。そのため、そもそも乙第3号証の写真中の清酒が、被請求人の製造販売にかかる日本酒(本件商品サンプル)であることを客観的に確認することができない。
よって、乙第3号証も単独では本件商標の使用の証拠にならないことは明白であり、また、乙第3号証を乙第1号証の見積書や請求書等と結びつけて考慮しなければならない客観的な証拠も見当たらないから、いずれにせよ本件商標の使用の証拠にはなり得ないものと思料する。
(4)乙第4号証について
乙第4号証は「酒造の1年」と題されたブログ記事であり、日本酒の製造工程を説明する資料として提出されたようであるが、そもそも本件審判とは無関係である。
(5)乙第5号証につて
乙第5号証の納品書の「納品日付」は2018年(平成30年)6月5日であるから、そもそも本件審判の予告登録後の資料であり、本件商標の使用の証拠にはなり得ない。
また、上記(1)で述べたとおり、「KONOHANA」という欧文字のみの使用をもって本件商標と社会通念上同一と認められる商標が使用されていると解することには無理がある。
さらに、乙第5号証の納品書は、上記(1)の乙第1号証と同様に、品番等によって実際に製造販売された商品と客観的に結びつけられていないから証拠としての信ぴょう性が乏しい。すなわち、乙第5号証の「KONOHANA」の欧文字のみをもって、乙第3号証の写真中の清酒に関する納品書であると断定することは不可能である。
よって、乙第5号証は単独では本件商標の使用の証拠にならないことは明らかであり、また、乙第3号証の写真中の清酒と紐づけて考慮しなければならない客観的な証拠も見当たらないから、本件商標の使用の証拠にはなり得ないと思料する。
(6)乙第6号証及び乙第7号証について
乙第6号証及び乙第7号証の写真は、上記(3)の乙第3号証と同様に、いつ、どこで、だれによって撮影されたものであるのか不明である。証拠説明書において乙第6号証及び乙第7号証の作成年月日が2018年(平成30年)6月と曖昧になっている点も同様であり、本件商品サンプルの納品日が同月5日であるから、乙第6号証及び乙第7号証も本件審判の予告登録後に作成されたものと解するのが自然である。さらに、乙第6号証及び乙第7号証の陳列棚が設置されている店舗が、本件商標権者の店舗である事実を示す証拠も何ら見当たらないから、本件商標権者が本件商品サンプルを展示していたことを裏付ける証拠にもなり得ない。
したがって、乙第6号証及び乙第7号証は、やはり本件商標の使用の証拠にはなり得ないと思料する。
(7)いわゆる「駆け込み使用」について
被請求人は答弁書第3頁の下から4行目?第5頁6行目にかけて、商標法第50条第3項のいわゆる「駆け込み使用」に該当しない旨を述べているようであるが、そもそも請求人は同条項について主張立証していないので、かかる被請求人の主張自体失当といわざるを得ない。
(8)むすび
以上のように、被請求人が提出した証拠の大半は本件商標権者の使用意思を示すための資料であるから、そもそも本件審判とは無関係である。本件商標の使用の証拠らしき資料は乙第3号証のみと思われるが、上述のとおり乙第3号証は本件商標の使用の証拠には到底なり得ないものである。そうすると、被請求人が提出した証拠によっては、要証期間に本件商標が本件商標権者により使用された事実を客観的に確認することができないから、その商標登録が取り消されてもやむを得ないと思われる。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第16号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 答弁の理由
乙第1号証の1は、モロオカと本件商標権者(被請求人)とが交わしたサンプル製造契約のための見積書であり、2017年(平成29年)10月1日に作成されている。また、乙第1号証の2は乙第1号証の1に基づく請求書であり、その日付は2017年(平成29年)10月31日である。さらに、乙第1号証の3は、乙1号証の2に示す請求書に記載された金員を支払ったという領収書(2017年11月6日)である。
上述した見積書の日付から明らかなように、本件商標権者からの日本酒の製造依頼は2017年(平成29年)10月1日よりも前である。また、同月31日よりも前である。
モロオカから送付された本件商標が付された商品に対する請求書に記載された額の金員の支払いが本件審判の予告登録の3月より前の日付となっている(乙1の3)。
乙第2号証は本件商標を日本酒の瓶に付した場合の見本である。
本件商標権者は、乙第2号証に記載された商標を付した日本酒の製造を、モロオカに2017年(平成29年)10月初旬に依頼し、2018年(平成30年)5月中旬に、当該日本酒の見本(乙1)を受領した。
乙第3号証の1は、上記の日本酒3本と箱とを正面から撮影したものであり、乙第3号証の2は、乙第3号証の1に示す日本酒の瓶のうちの1本を、箱と共に背面から撮影したものである。
日本酒は、1月頃に仕込んで2月を過ぎた頃に絞ることは当業者には周知の事実である(乙4)。したがって、商品の納入が2018年(平成30年)6月に入ってからとなったこと(乙5)は、何ら不思議ではない。
そうすると、本件商標を付した商品の納入は本件審判の予告登録後となってはいるものの、上述したように、本件商標権者は、2017年(平成29年)10月頃には、本件商標をその指定商品である日本酒について使用する意思を明確に有していた。そして、本件審判の請求前の3月以上前に、商品の製造を依頼していたのであるから、本件商標の使用は、駆け込み使用には該当しない。
加えて、本件商標権者は、販売店の棚に置く際に、どのような表示をするとよいのかについても、モロオカに相談をした(乙6の1・2)。そして、モロオカのアドバイスに基づいて乙第7号証のような表示をすることとした。このことも、本件商標をその指定商品である「日本酒」について使用する意思を明確に有していることの証左である。
さらに、指定商品に付された商標は、本件商標と同一の構成態様を有するものであり、社会通念上同一と認められる商標である(乙2、乙3)。このため、「その登録商標の使用をしたことについて正当な理由がある」ことは明らかである。
以上より、請求人の主張は根拠を欠くものであり、本件商標は取り消されるべきものではない。
2 審尋に対する回答
(1)暫定的見解について
ア 本件商標権者が、モロオカに対して、日本酒の製造を依頼したことは、乙第13号証に示す2017年(平成29年)10月1日付け発注書から明らかである。また、その日本酒に本件商標が付された事実を明らかにするために、本件商標権者が、モロオカに対して、商標名「木花」に合った背景の絵柄のラベルの版下の制作の依頼をした版下製作依頼書及びその指示概要(乙14、乙15)を提出する。
そして、2017年(平成29年)10月8日に、モロオカから、ラベルデザインの版下としていくつか示されたが、2つ(乙16の1・2)に絞って印刷を依頼し、最終的に乙第16号証の1を採用した。
イ 本件商標権者は、2017年(平成29年)10月1日にモロオカで打ち合わせを行ない、その際に、最終製品のイメージを確認するためのモックとして示された酒瓶及び箱の写真(乙8)は、モロオカで撮影されたものであり、これにより、乙第3号証の商品が納品書(乙5)の商品であることが確認できる。
ウ 乙第3号証の具体的な撮影日及び撮影場所等について
(ア)乙第3号証の具体的な撮影日及び撮影場所
乙第3号証は、本件商標権者の自宅にて2018年(平成30年)6月8日に撮影されたものである。これを示す証拠が乙第9号証の1及び同号証の2である。
本件商標権者は、2018年(平成30年)6月30日にこの写真及び後述する販売のための見本の展示をおこなったことを示す写真を現像するためにパレットプラザ市ヶ谷店に持ち込み、デジタルプリント20枚を受け取っている(乙10)。
(イ)明利酒類株式会社と本件商標権者との関係について
モロオカは、日本酒を販売したい者と醸造設備を有し、かつ製造認可を受けている蔵元との間をつなぐ企業のひとつであり、本件商標権者は、モロオ力に本件商標を付した日本酒の製造販売を相談したところ、その製造を行なう蔵元として明利酒類株式会社を紹介された。
したがって、明利酒類株式会社は、本件商標権者がモロオカを介して製造を委託した企業である。
(ウ)「製造年月30.6」の表示(乙9の1)について
日本酒の製造は、上記1のとおり、1月頃に仕込んで2月を過ぎた頃に絞ることは当業者には周知の事実であり、出荷に際しては製造年月を表示したラベルを付すから、納品された「日本酒」は要証期間内に製造されたものである。
エ 「日本酒」が商標法上の商品として実際に製造、販売されるなど市場において取引された事実を裏付ける証拠について
本件の「日本酒」は、「ノベルティ」等には該当せず、「独立して商取引の対象たり得べき有体動産」であるから、商標法上の「商品」に該当することは明らかである。この「商品」について、モロオ力での販売について交渉を行ない、2018年(平成30年)6月20日にモロオ力に納品し(乙11)、同月30日に、冷蔵ケース内においてもらうこととした。この行為は、商品を販売のために展示する行為に該当する(乙12号証の1?3)。被請求人は、同日に記念写真を撮り、パレットプラザ市ヶ谷店に持ち込で現像をし、プリントされた写真を受け取っている(乙10)。
したがって、本件商標を付した「日本酒」が商標法上の「商品」に該当することは、この事実によっても裏付けられる。
(2)審判事件弁駁書に対する反論について
最初に、この審判弁駁書には頁番号が表示されていないため、「審判弁駁書」の表示がされている頁を1頁目として、以下に、頁番号を特定している。
ア 乙第1号証について
被請求人は、乙第1号証をもって「社会通念上同一と認められる商標を使用していた」とは主張していない。さらに、見積書には製造する日本酒に使用する商標を特定する表示がされていれば十分であり、ここに本件商標をそのまま記載する必要はそもそもない。
モロオカは同日付けで最終商品の掲載を示す写真(乙8)を本件商標権者に提示していたので、提出する。
イ 乙第2号証について
審判事件答弁書で述べたとおり、日本酒の仕込み時期との関係からも10月という時期に「当該容器に入れる予定の日本酒が存在する」はずはない。請求人は、日本酒を製造販売しようとしていると思料されるが、そうであるならば、このことは当然に承知しているはずである。
ウ 乙第3号証について
請求人の写真の撮影年月日等についての主張については、上記で回答したとおりである。また、請求人は、日本酒の製造者であると主張したことはない。
しかし、そもそも販売の意思がなければ、試験的にではあれ、日本酒の製造は行わない。酒類の製造販売には、相当の設備と許可とが必要とされるため、製造を委託することはしばしば行われており、被請求人がモロオ力を介して明利酒類株式会社に製造を委託したことは、上記のとおりである。
エ 乙第4号証について
本件審判では、日本酒の製造について、時期を含めて説明する必要があったことから提出したものであり、本件審判に必要な証拠である。
オ 乙第5号証について
請求人は、「『納品書の日付』は2018年6月5日であるから、そもそも・・・本件審判の使用証拠には当たらない」と主張している(審判事件弁駁書の6頁3?5行目)が、請求人の主張を見ると、故意に論点をすり替えようとしていると考えるほかない。
カ 乙第6号証及び乙第7号証について
本件商標権者は、本件審判の請求の半年以上も前に、使用意思を持って日本酒の製造を企画し、製品に付すラベルも作製していた。そして、本件商標を付した製品とすべく、内容物となる日本酒(新酒)の仕上がりを待っていたのである。
キ「駆け込み使用」について
被請求人は、本件商標を付した商品が店頭に並んだ時期が本件審判の請求登録後となったことについては、十分に主張立証したと思料する。
商標法上、商品の包装に商標を付す行為は、商標法第2条第3項第1号に規定される「使用」に該当すると規定されている。本件の場合、見積書に本件商標と同一の商標は記載されていないが、特定するための「KONOHANA」という記載がされており、使用意思があったことは請求人も認めている。また、最終製品の形態を示す同日付けの写真もある。さらに、被請求人は最終製品の見本が作製されていたことを立証し、そのとおりに製造された商品(商標法上の「商品」)が存在し、販売されたことも立証している。
本件商標権者の使用は商標法第50条第3項にいう「駆け込み使用」ではない。
ク むすび
被請求人の主張は、以上述べたとおりであり、本件商標の使用が商標法第50条第3項でいういわゆる「駆け込み使用」には該当しないことを、被請求人は立証したと思料する。すなわち、本件商標権者の「使用」は、登録商標の使用であり、使用開始時期が上記のようなこととなったのには正当な理由があった。

第4 当審の判断
1 事実認定
(1)被請求人が提出した証拠は以下のとおりである。
ア 乙第1号証の1は、2017年(平成29年)10月1日付け、モロオカから本件商標権者あての「御見積書」の写しであって、そこには、件名は「オリジナル和酒 製作」、見積金額は「34,263円」、商品の欄に「オリジナル 清酒 本醸造 720ml (KONOHANA)」、「※上記商品 既定範囲内 ラベル付価格」及び「専用デザイン製作費」、見積番号「180620A」と記載されている。
イ 乙第13号証は、2017年(平成29年)10月5日付け、本件商標権者からモロオカにあてた「発注書」の写しであって、そこには「2017年10月1日付け貴社見積書(見積番号 180620A)のとおり発注いたします。」、件名には「オリジナル和酒(木花 KONOHANA このはな)制作」、発注金額は「34,263」と記載されており、これらの発注内容、見積番号等が、上記アの見積と一致する。
ウ 乙第14号証及び乙第15号証は、本件商標権者からモロオカにあてた、2017年(平成29年)10月1日付け「オリジナル清酒『木花 KONOHANA このはな』ロゴマーク版下制作依頼書」及び同日付け「版下制作依頼 指示概要」のそれぞれの写しであって、そこには、オリジナルの「清酒」造りの正式発注に先駆け、事前に、本件商標をオリジナルの「清酒」に使用するためのラベルの制作依頼の概要及びラベルのデザインの要旨が記載されている。
エ 乙第16号証の1はモロオカによる、制作日付「2017年(平成29年)10月8日」の「版下製作概要」の写しであって、そこには、横長長方形の図形内に、花をモチーフとした図形を背景に、本件商標と構成をほぼ同じにする「木花」、「KONOHANA」及び「このはな」の各文字並びに「清酒本醸造」及び「15% 720ml」等の記載がある。
オ 乙第1号証の2は、2017年(平成29年)10月31日付けモロオカから本件商標権者にあてた「御請求書」の写しであって、そこには、乙第1号証の1と同様の、件名、金額及び商品並びに請求番号「180620A」が記載されており、また、乙第1号証の3は、同年11月6日付けモロオカから本件商標権者にあてた「領収証」の写しであって、御品代として「34,263円」との記載があり、さらに乙第5号証は、2018年(平成30年)6月5日付けモロオカから本件商標権者にあてた「納品書」の写しであって、乙第1号証の1と同じ、件名、金額及び商品並びに納品番号「180620A」等が記載されている。
カ 乙第9号証は、本件商標権者が撮影した日本酒の写真とするものであって、乙第9号証の1の瓶は「清酒 本醸造」の表示がされた瓶の裏面である。また、乙第9号証の2の瓶は同号証の1の瓶の正面等の写真であるところ、その瓶の表面に上記エの版下と同じ構成態様の「木花」、「KONOHANA」及び「このはな」の各文字表示されたラベルが貼付されている。それぞれの写真の日付は2018年(平成30年)6月8日である。
キ 乙第11号証は、モロオカから本件商標権者にあてた2018年(平成30年)6月20日付けの物品受領書であって品名として「オリジナル清酒本醸造720ml KONOHANA」、数量として「8」の記載がある。
ク 乙第12号証はモロオカの冷蔵ケース内に販売のため展示された日本酒とする写真であって、撮影されている冷蔵ケースの中ある瓶は、乙第9号証の2の瓶と同じ態様であって、写真の日付は2018年(平成30年)6月30日である。
(2)上記(1)によれば、次の事実を認めることができる。
ア モロオカは、本件商標権者に対して、2017(平成29年)年10月1日付けでオリジナルの「清酒」(KONOHANA)(以下、「使用商品」という。)のラベルデザインを含む製造の見積りを行っており、本件商標権者は、当該見積もりに対し、同月5日に使用商品の製造を正式に発注した。
そして、モロオカは、本件商標権者に対し2017年(平成29年)10月31日付けで使用商品の代金の請求を行ったところ、本件商標権者は、同年11月6日付けで使用商品の代金を支払った。
その後、2018年(平成30年)6月5日にモロオカから本件商標権者に使用商品が納品されたことが認められる。
イ 本件商標権者は、モロオカに2017年(平成29年)10月1日付で上記アの使用商品の製造の見積もりに係る使用商品用のラベルの版下の制作を発注し、モロオカは、当該発注に対して、同月8日付けで、使用商品のラベルの版下を製作したところ、当該版下には本件商標と構成をほぼ同じにする「木花」、「KONOHANA」及び「このはな」の各文字が表示されていることが認められる。
そして、本件商標権者が撮影した瓶のラベルにも、版下と同じ構成態様の「木花」、「KONOHANA」及び「このはな」の各文字(以下「使用商標」という。)が表示されているから、当該瓶は使用商品(の包装)であると認められる。
ウ 本件商標権者は2018年6月20日付けで、モロオカに使用商品を譲渡した。そして、使用商品は遅くとも同月30日にはモロオカの冷蔵庫に展示されている。
2 判断
(1)使用商標について
本件商標は、別掲のとおり、「木花」、「KONOHANA」及び「このはな」の各文字を三段に表した構成からなり、一方、使用商標は、上記1(2)イ(別掲2)のとおり、「木花」、「KONOHANA」及び「このはな」の各文字を三段に表した構成からなるものであり、両者は、構成文字及び態様を共通にするから、社会通念上同一と認められる。
(2)使用商品について
使用商品は、「清酒」であり、これは、本件審判の請求に係る指定商品「日本酒」の範ちゅうに含まれる商品である。
(3)使用者について
使用商品に使用商標を付すためのラベルの版下制作及び使用商品の製造を依頼した者は、本件商標権者であるから、使用者は本件商標権者である。
(4)使用時期について
使用商品が本件商標権者に納品された2018年(平成30年)6月5日は要証期間内であると認められる。
そして、本件商標権者は、要証期間後の2018年(平成30年)6月20日付けで使用商品を譲渡しているから、要証期間内である同月5日に、使用商標を付した使用商品を譲渡目的で所有していたと推認できる。
(5)小括
上記(1)ないし(4)からすれば、本件商標権者は、要証期間内に、日本国内において本件審判の請求に係る指定商品「日本酒」の範ちゅうに含まれる商品の包装に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付したと認められ、この行為は商標法第2条第3項第1号に該当する。
3 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標権者が本件審判の請求に係る指定商品について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを証明したというべきである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
別掲
1 本件商標


2 使用商標(色彩は原本参照)




審理終結日 2020-07-15 
結審通知日 2020-07-21 
審決日 2020-08-11 
出願番号 商願2007-44491(T2007-44491) 
審決分類 T 1 31・ 11- Y (X33)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武谷 逸平冨澤 美加 
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 大森 友子
岩崎 安子
登録日 2007-12-28 
登録番号 商標登録第5101245号(T5101245) 
商標の称呼 コノハナ、キバナ、モクカ、ボクカ 
代理人 特許業務法人綾船国際特許事務所 
代理人 駒崎 健 
代理人 安彦 元 

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