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審決分類 審判 査定不服 商3条1項4号 ありふれた氏、名称 登録しない W07
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない W07
管理番号 1366149 
審判番号 不服2019-5111 
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-17 
確定日 2020-08-11 
事件の表示 商願2017-143653拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は,別掲1のとおりの構成よりなり,第7類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として,平成29年10月31日に登録出願され,指定商品については,当審における令和2年2月10日受付の手続補正書により,第7類「ドリルビット,タイル穴あけ用ドリルビット,コンクリート穴あけ用ドリルビット,木工用ドリルビット」に補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は,「本願商標は,『ミヤナガ』の文字を格別特異とはいえない書体で横書きしてなるところ,当該文字は我が国においてありふれた氏の一つと認められる『宮永』を片仮名で表示したものであるから,本願商標は,単にありふれた氏普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と判断するのが相当である。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第4号に該当する。また,出願人が本願商標を使用した結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認めることはできない。したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備するということはできない。」旨を認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 商標法第3条第1項第4号該当性について
本願商標は,別掲1のとおり,「ミヤナガ」の片仮名(横線はやや細く,斜め線と縦線は太い)を横書きしてなるところ,原審が説示するように,その構成各文字の書体は,格別特異なものともいえないものであるから,全体として,普通に用いられる方法で表された標章と認められるものである。
そして,別掲2によれば,「宮永」の文字は,我が国においては,氏を表す語として広く一般に用いられているものとみるのが相当である。
また,一般の商取引においては,氏は必ずしも漢字だけで表すものではなく,片仮名で表す場合も決して少なくないものであり,標章を構成する文字の横線を細くしたり縦線を太くしたりする表示方法も一般的に採択,採用されていることは当審において顕著な事実であって,普通に用いられる方法の一つである。
そうすると,本願商標に接する取引者,需要者は,これをありふれた氏である「宮永」を片仮名で表したもの,すなわち,ありふれた氏普通に用いられる方法で表示したものと理解し,認識するにすぎないといわざるを得ない。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第4号に該当する。
2 商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて
(1)請求人は,本願商標は,請求人が使用する商品について長年にわたり使用された結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものであるから,商標法第3条第2項の要件を具備している旨述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証(枝番号を含む。)を提出している。
ア 本願商標の周知性について
請求人提出の証拠及び主張によれば,以下のとおりである。
(ア)請求人は,大正5年(1916年)に宮永目立所として創業し,昭和39年(1964年)10月に,現社名である「株式会社ミヤナガ」を設立し,事業目的を「コンクリートドリル,超硬工具,ダイヤモンド工具及び付属機器の製造販売並びに施工」とする(甲1,甲2)。
(イ)請求人は,本願商標を,100周年記念誌(甲1),製品総合カタログ(甲2,甲3),展示会(甲4),商品パンフレット(甲5,甲6),封筒(甲7の2),商品の包装(甲9)に表示している。上記製品総合カタログには,請求人に係る商品として,「コアドリル,ホールソー,メタルボーラー,ドリルビット,ダイヤドリル,ディスク」等が掲載されている。
製品総合カタログ(甲3の1:1975年,甲3の2:1980年,甲3の3:1981年)の作成時は掲載されているが,製品総合カタログ(甲3の4?14),商品パンフレット(甲5の1?4,甲6の1?8)は,作成年月日が不明である。
請求人は,展示会(甲4の1?4)の写真は,本願商標を使用した商品を陳列した出店ブースを撮影した写真であると主張するところ,「JAPAN DIY HOMECENTER SHOW 2014」は2014年8月28日ないし30日,「JAPAN DIY HOMECENTER SHOW 2015」は2015年8月27日ないし29日,「JAPAN DIY HOMECENTER SHOW 2016」は2016年8月25日ないし27日,「JAPAN DIY HOMECENTER SHOW 2017」は2017年8月24日ないし26日,「JAPAN DIY HOMECENTER SHOW 2018」は2018年8月23日ないし26日,「JAPAN DIY HOMECENTER SHOW 2019」は2019年8月29日ないし31日,「第42回ジャンボびっくり見本市2016」は2016年4月8日及び9日に開催され,入場者数は「JAPAN DIY HOMECENTER SHOW」が3日間で約10万人,「第42回ジャンボびっくり見本市」が約2万人であった(甲4の5,7,9,11,13,15,17)。しかしながら,当該展示会の写真(甲4の1?4)と,JAPAN DIY HOMECENTER SHOW2014ないし2019の会場ガイドマップ(甲4の6,8,10,12,14,16)及び第42回ジャンボびっくり見本市2016実績報告(甲4の17)に掲載された写真を結びつける証拠はない。
(ウ)請求人は,請求人に係る商品(「デルタゴンビット」,「メタルボーラー(カッター)」,「ホールソー」,「コアドリル」,「ハンマー用コアビット」,「ドリル」等)の包装の写真(甲9の1?15)について,当該写真のプロパティ(甲9の1の1?15の1)を提出するが,プロパティに記載の撮影日が商品の包装の写真の撮影日であるとの証拠はない。
(エ)小売店における商品の陳列棚の写真(甲11の1?18)は,撮影日が不明であって,かつ,画像が小さく,本願商標の表示及び請求人に係る商品の陳列棚であるのか否かを確認することができない(甲11の8及び15を除く。)。
(オ)主要納品先(一般小売)一覧(甲10)において,請求人の納品先は全国に128店あるが,そのうち関東が55店,北陸・中部が40店で全体の74.2%を占める。
(カ)東京商工リサーチ企業情報によれば,請求人の営業種目は「コンクリートドリル製造,コアドリル製造」とされ,請求人の売上は,2014年(平成26年)3月期が41億4,000万円,2015年(平成27年)3月期が42億円,2016年(平成28年)3月期が42億5,000万円,2017年(平成29年)3月期が42億3,900万円,2018年(平成30年)3月期が43億700万円であり,業界内売上高順位は全国15758社中,552位である(甲12)。
請求人は,請求人の主力商品は,コンクリート,モルタル,金属などの非常に硬い素材に穴をあける穿孔用のドリルビット(以下「使用商品」という。)であり,それらのドリルビットの売上は上記の売上金額の8割以上を占めていることから,使用商品の年間売上金額は,少なく見積もっても33億円から35億円の範囲で推移している旨主張するが,当該主張を裏付ける証拠は提出されていない。また,商品「ドリルビット」等の市場規模,請求人の使用商品に係る商品の市場シェアは明らかでない。
イ 判断
上記アによれば,請求人は,コンクリートドリル,超硬工具,ダイヤモンド工具及び付属機器の製造販売並びに施工を事業目的とし,主に「コンクリートドリル,コアドリル」の製造及び販売を行っており,遅くとも昭和50年(1975年)頃から請求人に係る商品の総合カタログ等に本願商標を使用し,請求人に係る商品の納入先が,全国に128店存在する。
しかしながら,製品総合カタログ(甲3の4?14),商品パンフレット(甲5の1?4,甲6の1?8)は,作成年月日が不明であって,製品総合カタログ及び商品パンフレットの発行部数や頒布の地域及び期間等の事実は明らかではないこと,展示会の写真(甲4の1?4)とJAPAN DIY HOMECENTER SHOW2014ないし2019の会場ガイドマップ(甲4の6,8,10,12,14,16)及び第42回ジャンボびっくり見本市2016実績報告(甲4の17)に掲載された写真を結びつける証拠はなく,本願商標を使用した商品を展示していたと直ちに認めることはできないこと,請求人に係る商品の包装の写真(甲9の1?15)の撮影日がプロパティ(甲9の1の1?15の1)に記載の撮影日であるとの証拠はなく,仮に撮影日が事実であるとしても,請求人に係る商品が継続して使用されたということはできず,これら商品の包装の使用時期,使用期間は明らかではないこと,小売店における商品の陳列棚の写真(甲11の1?18)は,撮影日が不明であって,請求人に係る商品の陳列棚であるか明らかでなく,本願商標の表示も見当たらないこと,請求人に係る商品の納品先は全国に128店中,関東と北陸・中部で全体の74.2%を占め,それ以外の地域は少なく,具体的にどの商品がどのような割合で納品されているのかについても明らかではないこと,使用商品(ドリルビット)について,それらの市場におけるシェア等を確認することができないことから,本願商標は,その指定商品について使用された結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているものということはできない。
したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備しない。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は,本願商標は人の氏である「宮永」を片仮名で書したものであるが,その外観形状は独特で需要者及び取引者の記憶に留まりやすい商標といえる。また,「宮永」姓の人は全人口の0.0079%程度と見込まれるので,需要者又は取引者によっては,これをありふれた氏又は名称とは認識しない場合もあり得る旨主張する。
しかしながら,別掲2のとおり,「宮永」の文字は,姓氏の一つであると認められること,上記1のとおり,標章を構成する文字の線を細くしたり太くしたりする表示方法は普通に行われていることから,本願商標に接する取引者,需要者は,これをありふれた氏である「宮永」を片仮名で表したもの,すなわち,ありふれた氏普通に用いられる方法で表示したものと理解し,認識するにすぎないといわざるを得ない。
よって,請求人の主張は採用することはできない。
イ 請求人は,自己が取り扱う商品のマーケットシェアを割り出すための情報を含め,本願商標の長年の使用の結果需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったことを客観的に裏付ける資料を引き続き収集しており,本願商標の認知度調査の結果と併せて3月末までに提出するので,本件の結審について猶予願いたい旨主張する。
しかしながら,提出予定の3月末から相当の期間が経過するも上記資料及び認知度調査結果の提出はないから,これ以上,本件の審理を遅延させるべき合理的な理由はないものと判断し,審理を終結することとした。
3 まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第4項に該当するものであって,かつ,同条第2項の要件を具備するものではないから,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 本願商標


別掲2 「宮永」の文字がありふれた姓氏の一つであること
1 「NTT東日本株式会社」発行の「50音別 個人名 ハローページ 東京都23区全区版 下」(2005.3?2006.2)に,「宮永」の姓が多数(84名)掲載されている。
2 「日本人の姓」(佐久間英著1972年3月8日再版,六藝書房発行)に,「宮永」の姓が約8千人で全国第1646位に位置づけられている。
3 「名字由来net」のウェブサイトには,「宮永」の姓は「全国順位1608位」,「全国人数およそ10000人」の記載がある。
(https://myoji-yurai.net/searchResult.htm?myojiKanji=宮永)
4 「姓名分布&ランキング」のウェブサイトには,「宮永」の姓は「全国順位1608位」,「件数1846件」の記載がある
(http://www2.nipponsoft.co.jp/bldoko/index.asp)

審理終結日 2020-06-10 
結審通知日 2020-06-12 
審決日 2020-06-24 
出願番号 商願2017-143653(T2017-143653) 
審決分類 T 1 8・ 14- Z (W07)
T 1 8・ 17- Z (W07)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 健太浦崎 直之 
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 平澤 芳行
渡邉 あおい
商標の称呼 ミヤナガ 
代理人 特許業務法人 有古特許事務所 

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