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審決分類 |
審判 査定不服 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 登録しない W41 |
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管理番号 | 1365095 |
審判番号 | 不服2019-6488 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-05-17 |
確定日 | 2020-07-27 |
事件の表示 | 商願2017-167191拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 本願商標 本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第41類「音楽コンクールの企画・運営又は開催,音楽の演奏,技芸・スポーツ又は知識の教授,コンサートの企画又は運営,セミナーの企画・運営又は開催」を指定役務として、平成29年12月21日に登録出願されたものである。 2 原査定の拒絶の理由の要点 原査定は、「本願商標は、その構成中に『SHIGERU KAWAI』のローマ字を含むものであり、また、現存する他人の氏名『河合滋(かわいしげる)』又は『河合茂』を含むものであって、かつ、それらの者の承諾を得ているものとは認められない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 3 当審においてした証拠調べ通知 当審において、本願商標が商標法第4条第1項第8号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲2に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、令和2年1月20日付け証拠調べ通知書によって通知し、期間を指定してこれに対する意見を求めた。 4 証拠調べの結果に対する請求人の意見の要点 請求人は、上記3の証拠調べ通知に対して、以下のとおり意見を述べた。 (1)商標法第4条第1項第8号は、“他人の氏名と同じ読み”を含む商標は商標登録を受けることができないとは定められていない。そして、「他人の氏名」における「氏名」とは、使用する者が恣意的に選択する余地がなく、特定人を指し示す法令上の正式な氏名というべきであり、日本人の氏名の場合、「戸籍簿で確定される氏名」がそれに該当する。 (2)証拠調べ通知書等において引用した他人の氏名はいずれも漢字で表記された氏名であり、本願商標の構成中にあるのは、欧文字で表記されたものである。その上、欧文字は戸籍の氏名に使用できないものであるため、本願商標は、商標法第4条第1項第8号にいう「他人の氏名」を含む商標ではない。 (3)本願商標中の「SHIGERU KAWAI」の文字は、通常の書体ではない独自性のある書体をもって白抜き文字で表しているものであり、当該文字は、登録第4369010号商標と同じ態様であり、この登録商標は、漢字で構成された氏名の他人の人格的利益を20年以上害することなく、平穏に一貫して使用し続け、世界の著名な演奏家やコンクールに採用される最高級の楽器(特にピアノ)の商標として、信用を蓄積し顧客吸引力を保持し続けている。 (4)本願商標と同一の態様の商標は、米国、欧州連合、中国、韓国、インドネシア、ロシア、香港、台湾、ベトナムで商標登録を受けている。 (5)以上のことから、本願商標は、商標法第4条第1項第8号には該当しない。 5 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第8号の趣旨 商標法第4条第1項第8号が、他人の肖像又は他人の氏名、名称、著名な略称等を含む商標は、その他人の承諾を得ているものを除き、商標登録を受けることができないと規定した趣旨は、人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像、氏名、名称等に対する人格的利益を保護すること、すなわち、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがないという利益を保護することにあると解される(最高裁平成15年(行ヒ)第265号同16年6月8日第三小法廷判決、最高裁平成16年(行ヒ)第343号同17年7月22日第二小法廷判決)。そうすると、ある氏名を有する他人にとって、その氏名を同人の承諾なく商標登録されることは、同人の人格的利益を害されることとなると考えられる(知財高裁平成28年(行ケ)第10065号同28年8月10日判決)。 (2)商標法第4条第1項第8号該当性について 本願商標は、別掲1のとおり、黒色の背景に、黄色のグラデーションが施された大小6個の円図形と白抜きの5本の曲線を組み合わせた図形を配し(以下「図形部分」という。)、その下部にややデザイン化した書体で「SHIGERU KAWAI」の欧文字と、その下に「INTERNATIONAL」及び「PIANO COMPETITION」の欧文字を2段に横書きした文字を配した(以下「文字部分」という。)構成からなるものである。 そして、本願商標の構成中、図形部分と文字部分とは、視覚上、分離して看取し得るものであり、図形部分は、我が国において特定の意味合いを表すものとして知られているというような事情は見いだせないものである。また、文字部分についてみるに、「SHIGERU KAWAI」の欧文字部分と「INTERNATIONAL」及び「PIANO COMPETITION」の欧文字部分とは、書体や文字の大きさが相違することから、それぞれが分離して看取されるものである。 ところで、我が国においては、例えば、パスポートやクレジットカードなどには、本人の氏名がローマ字表記されるなど、氏名をローマ字表記することは少なくない。 さらに、氏名をローマ字で表記する場合は通常、「名」、「氏」の順で表記し、クレジットカードなどにおいては、「名」、「氏」の順で表記されているものが少なくないなど、氏名をローマ字表記する場合、「名」、「氏」の順で記載することは、社会一般に行われているところである。 そうすると、上記のとおりの構成からなる本願商標は、これに接する取引者、需要者をして、その構成中の「SHIGERU KAWAI」の文字部分を、「カワイ(氏)シゲル(名)」を読みとする氏名について、「名」、「氏」の順にローマ字表記したものと容易に認識するものと判断するのが相当である。 そして、別掲2のとおり、「カワイ シゲル」と読む氏名の者が、本願商標の登録出願時から現在まで生存している者であると推認できる。 また、請求人である「株式会社河合楽器製作所」(取締役会長兼社長 河合弘隆)と別掲2に示した氏名の者は他人であると認められ、請求人は、当該他人の承諾を得ているものとは認められない。 以上のことからすれば、本願商標は、その構成中に他人の氏名を含む商標であって、かつ、その他人の承諾を得ているものではない。 したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。 (3)請求人の主張について ア 請求人は、「『他人の氏名』とは、使用する者が恣意的に選択する余地がなく、特定人を指し示す法令上の正式な氏名というべきであり、日本人の氏名の場合、『戸籍簿で確定される氏名』がそれに該当する」旨及び「他人の氏名と客観的に把握されることがあるとしても・・・『河合滋』氏や『河合茂』氏を想起・連想させるものではない」ことから、本願商標は、商標法第4条第1項第8号にいう「他人の氏名」を含む商標ではない旨主張する。 しかしながら、商標法第4条第1項第8号は、「『他人の氏名・・・を含む商標』と規定するものであり、当該『氏名』の表記方法に特段限定を付すものではない。・・・自己の『氏名』であれば、それがローマ字表記されたものであるとしても、本人を指し示すものとして受け入れられている以上、その『氏名』を承諾なしに商標登録されることは、同人の人格的利益を害されることになると考えられる。したがって、同号の『氏名』には、ローマ字表記された氏名も含まれると解される。」(知財高裁平成31年(行ケ)第10037号)旨判示されている。 そして、上記(2)のとおり、「SHIGERU KAWAI」の文字部分は、「カワイ(氏)シゲル(名)」を読みとする人の氏名として客観的に把握されるものであるというが相当である。 以上のことからすれば、本願商標は、その構成中に「他人の氏名」を含むものといわざるを得ない。 イ 請求人は、本願商標中の『SHIGERU KAWAI』の文字は、標準文字や通常の書体で表されたものではなく、請求人が独自に案出したものであり、同じ態様の登録商標は、漢字で構成された氏名の他人の人格的利益を20年害することなく使用し続けている旨述べ、「世界の著名な演奏家やコンクールに採用される最高級の楽器(特にピアノ)の商標として、信用を蓄積し顧客吸引力を保持し続けている」旨主張する。 しかしながら、本願商標の構成中の「SHIGERU KAWAI」の欧文字は、ややデザイン化された書体であるとしても、「カワイ(氏)シゲル(名)」を読みとする氏名を、「名」、「氏」の順にローマ字表記したものと容易に認識されるものであるというのが相当であり、請求人が、独自に案出したとはいえないものである。 そして、商標法第4条第1項第8号の趣旨やその規定ぶりからすると、同号にいう「他人の氏名」が、著名又は周知なものに限られるとは解し難く、また、同号の適用が、他人の氏名を含む商標の登録により、当該他人の人格的利益が侵害され、又はそのおそれがあるとすべき具体的事情の証明があったことを要件とするものであるとも解し難い(知財高裁平成28年(行ケ)第10065号)旨判示されているところである。 そうすると、請求人の上記主張は、いずれも本願商標の商標法第4条第1項第8号該当性の判断を左右するものではない。 ウ 請求人は、「本願商標と同一の態様の商標は、米国、欧州連合、中国、韓国、インドネシア、ロシア、香港、台湾、ベトナムで商標登録を受けている。」旨主張する。 しかしながら、諸外国における他人の氏名を含む商標の登録に関する法制や取扱いが、直ちに我が国における法解釈に影響を及ぼすものではないから、当該事実が、本願商標の商標法第4条第1項第8号該当性の判断を左右するものではない。 エ したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。 (4)まとめ 以上のとおり、本願商標は、他人の氏名を含む商標であり、かつ、その承諾を得ているとは認められないものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当し、登録することができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1 本願商標(色彩については、原本参照。) 別掲2 証拠調べ通知において開示した事実 「カワイ シゲル」を読みとすると考えられる氏名の者が、本願商標の登録出願時から現在まで現存している者であると推認できること。 (1)北海道札幌市に住所を有する者として「河合 茂」氏が、2019年12月版(掲載情報は2019年9月4日現在)の「ハローページ(札幌市中央・西部版)」に掲載されている。 (2)愛知県豊橋市に住所を有する者として「河合 茂」氏4名が、2019年7月版(掲載情報は2019年3月18日現在)の「ハローページ(愛知県豊橋版)」に掲載されている。 (3)愛知県豊田市に住所を有する者として「河合 茂」氏が、2019年7月版(掲載情報は2019年3月18日現在)の「ハローページ(愛知県豊田版)」に掲載されている。 (4)岐阜県岐阜市に住所を有する者として「河合 茂」氏が、2019年12月版(掲載情報は2019年8月19日現在)の「ハローページ(岐阜県岐阜版)」に掲載されている。 (5)茨城県潮来市に住所を有する者として「河合 滋」氏が、2019年3月版(掲載情報は2018年12月3日現在)の「ハローページ(茨城県潮来・鹿嶋・神栖市版)」に掲載されている。 (6)東京都東村山市に住所を有する者として「河合 滋」氏が、2019年2月版(掲載情報は2018年11月1日現在)の「ハローページ(小平・西東京・東村山市版)」に掲載されている。 (7)石川県小松市に住所を有する者として「河合 滋」氏が、2019年9月版(掲載情報は2019年6月5日現在)の「ハローページ(石川県かが版)」に掲載されている。 |
審理終結日 | 2020-04-30 |
結審通知日 | 2020-05-12 |
審決日 | 2020-06-04 |
出願番号 | 商願2017-167191(T2017-167191) |
審決分類 |
T
1
8・
23-
Z
(W41)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤平 良二、大島 康浩 |
特許庁審判長 |
冨澤 美加 |
特許庁審判官 |
小田 昌子 木住野 勝也 |
商標の称呼 | シゲルカワイインターナショナルピアノコンペティション、シゲルカワイ、カワイシゲル、インターナショナルピアノコンペティション、インターナショナルピアノ、インターナショナル、ピアノコンペティション |
代理人 | 名古屋国際特許業務法人 |