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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X28
管理番号 1364141 
審判番号 取消2018-300476 
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2018-06-23 
確定日 2020-06-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第5513900号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5513900号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5513900号商標(以下「本件商標」という。)は、「天使」の文字を標準文字で表してなり、平成23年12月2日に登録出願、第28類「遊戯用器具,ビリヤード用具」を指定商品として、同24年8月10日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成30年7月9日にされたものであり、この登録前3年以内の期間を、以下「本件要証期間」という。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書及び平成30年9月12日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同年10月22日付け審判事件弁駁書にて、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第3号証(以下、証拠については、「甲1」等のように表示する。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品第28類「遊戯用器具,ビリヤード用具」(以下「本件指定商品」という。)について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されていないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2 答弁書に対する弁駁
下記(1)ないし(6)のとおり、被請求人によって提出された答弁書及び証拠書類によっては、本件商標の商標権者又はその使用権者が、本件商標を本件要証期間に本件指定商品のいずれかについて使用していたということはできない。
(1)被請求人が主張する商品について
被請求人は、答弁書において商品名「ANGEL EYE」からなる「カジノゲーム用遊戯用器具」と称する商品(以下「被請求人商品1」とする。)を示して、本件商標に係る指定商品中の「遊戯用器具」であると主張する。
被請求人が示す乙1及び乙5において示されている商品は、被請求人が提出する乙5によると、「バカラゲームの完全性をサポートするシステム」と記載されているように、カジノゲーム用遊戯用器具を使用するゲーム(バカラゲーム)で使用する商品であることが示されている。このバカラに使用する用具「バカラ用具」は、特許情報プラットフォームの「商品・役務名検索」によると、「遊戯用器具」の範ちゅうに属する商品ではない。また、被請求人商品1は、立体商標として出願され、審決取消訴訟(平成28年(行ケ)第10266号)において争われているが、当該判決によると、「カジノゲーム用遊戯用器具を配る際に、複数組のカジノゲーム用遊戯用器具カードを収納した上、上から1枚ずつ前方に滑らせて繰り出すための容器(カジノゲーム用遊戯用器具繰り出し装置)としての一般的なカードシューの機能に電子的にカジノゲーム用遊戯用器具カードを識別認識し、カジノゲーム用遊戯用器具の真偽又はゲームの勝敗を判定するプログラムを内蔵するなどの機能を付加してなるものである」と認定している(甲2)。さらに、被請求人商品1は、審判番号2013年第300208号の取消審判においても争われている(甲3)。
以上のように、被請求人が示した証拠資料や過去における裁判所及び特許庁における認定によると、少なくとも被請求人商品1は、「バカラ用具」、又は「電気通信機械器具」の範ちゅうに属する商品であり、いずれも「遊戯用器具」と同一又は類似する商品ではない。
したがって、被請求人が各証拠資料で主張する被請求人商品1は、本件指定商品ではないことから、その使用を証明したとしても、商標法第50条第2項で定める登録商標の使用を証明したものとはいえない。
(2)乙1について
乙1をみるに、外装の包装用箱の側面下部分にのみ小さく「天使」との表示がなされているが、「写真撮影報告書」(乙1)に記載の作成日は、平成30年9月3日であり、撮影日は同年8月30日とあるように本件要証期間に撮影されたものはないため、撮影された包装用箱が本件要証期間に存在していたことを証明していない。また、乙1に示されている写真には、外装の包装用箱と「カジノゲーム用遊戯用器具」の包装用箱が包装されているように撮影されているが、この外装の包装用箱が商品の包装用箱として使用されているとするには、本件要証期間において商品を包装した状態で譲渡等されている客観的事実を証明する必要があるところ、写真撮影報告書(乙1)において撮影された包装用箱は、被請求人の会社内で撮影されたものであることからすると、少なくともこの包装用箱が輸出に使用された箱でないことは明らかである。
(3)乙2について
過去の審決例(乙2)は、カタログ中の商品について商標の使用が認められるかという争点に対する判断であって、乙1で示されているのは、カタログでもパンフレットでもない包装用の箱であるから、被請求人が示している証拠とは明確に異なり、この審決の判断と本件審判事件とを同列に解することはできない。
(4)乙3について
陳述書(乙3)に添付されている請求書に記載された商品名は、「ANGEL EYE 2(「2」はローマ数字。以下同じ。)-EX」であって、乙1に添付されている写真には「ANGEL EYE 2-EX」の表示はなく、陳述書(乙3)に添付された請求書で示された商品が、写真撮影報告書(乙1)に添付された写真と同じ商品であることの証明がなされていない。また、陳述書(乙3)に添付された請求書には、「Shoe base card checking device for baccarat」及び「バカラ用シューベースカードチェック機器」の記載があるが、この商品は、「電気通信機械器具」の範ちゅうに属する商品であり、本件指定商品ではない。
(5)乙4及び乙5について
被請求人は、辞書(乙4)の写しを示して、「遊戯」は勝負ごと、の意味合いを有し、指定商品中の「遊戯用器具」も勝負ごとに用いられる器具と言い換えられると主張し、商品説明(乙5)より、賭け事で使用される「バカラ器具用シュー」であるから、本件指定商品中の「遊戯用器具」の範ちゅうの商品であると主張する。
しかしながら、「バカラ器具用シュー」及び「バカラ用具」が、本件指定商品中の「遊戯用器具」に含まれないことは、甲1ないし甲3が示すところであり、このような主張は失当であるといえる。
(6)まとめ
以上のとおり、被請求人により提出された答弁書及びその証拠書類によっては、本件商標権者又はその使用権者が、本件商標を本件要証期間に、本件指定商品である第28類の指定商品「遊戯用器具,ビリヤード用具」のいずれかについて使用していたということはできない。

第3 被請求人の主張の要点
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、答弁書及び審尋に対する平成31年3月14日付け回答書(以下「回答書」という。)において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、答弁書で乙1の1ないし乙5を、回答書で乙1の2、乙4の2、乙6ないし乙16を提出した。
1 答弁書による主張の要旨
(1)被請求人は、被請求人の業務に係る被請求人商品1の包装に「天使」の文字からなる商標(以下「使用商標1」という。)を付しており(乙1)、使用商標1と本件商標とは、書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標である(商標法第50条第1項かっこ書き)。被請求人商品1の大きさは、縦が420mm、横が133mm、高さが150mmであるところ、その包装の大きさは、商品の大きさにあわせて、縦が535mm、横が170mm、高さが178mmであり、その包装は、被請求人商品1の専用のものである。
ところで、一般的に、企業において、代表的出所標識(ハウスマーク)といわれる商標は、個々の商品に表示されるばかりでなく、看板や広告、カタログ、パンフレット、ホームページ等々において、その取り扱いに係る商品全般にわたる出所標識として広く使用されているのが実情である(乙2)。そして、被請求人商品1の個別商標は「ANGEL EYE」であるとはいえ、その包装に付された使用商標1は、被請求人の商号商標の略称である「エンゼル(ANGEL)」を漢字で表示したものであり(乙1、乙3)、被請求人の代表的出所標識を付したものといえるから、使用商標1の使用は、被請求人商品1の出所標識として使用されているといえる。
(2)陳述書(乙3)に添付された請求書は、本件要証期間である平成29年11月17日に発行されたものであり、同請求書には、被請求人商品1が2セット、オーストラリアに輸出されたことが記録されており、被請求人は、本件要証期間に、被請求人商品1の包装に使用商標1を付したものを輸出したことが把握できる(乙3)。
(3)「遊戯」とは、「勝負ごと。」の意味合いを有すること(乙4)からすれば、本件指定商品中の「遊戯用器具」は、勝負ごと、すなわち賭け事などに用いられる器具と言い換えることができる。被請求人商品1は、商品説明のとおり、専らカジノゲーム場においてバカラゲームをサポートするために使用される器具(バカラ器具用シュー)であり(乙5)、まさに賭け事であるバカラゲーム用の器具(バカラゲーム用遊戯用器具)といえるから、被請求人商品1は、本件指定商品中の「遊戯用器具」である。
(4)以上から、本件商標に係る商標権者は、本件要証期間に日本国内において、本件指定商品について、本件商標の使用(商標法第2条第3項第1号及び第2号)をしているものであるから(乙1ないし乙5)、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
2 回答書による主張の要旨
(1)当審における審尋
審判長は、被請求人に対し、平成31年2月26日付けで、合議体の暫定的見解を示し、被請求人が答弁書で提出した乙1ないし乙5によっては、(ア)被請求人が本件要証期間に本件指定商品の包装に該包装用箱を用いて輸出したことが証明されていない、(イ)「陳述書」(乙3)に添付された請求書に係る取引が行われたことが証明されていない、(ウ)オーストラリアに輸出された商品と「写真撮影報告書」(乙1)に添付された写真第1ないし写真第6に表された包装用箱に納められた商品が同じ商品である点に疑義がある、(エ)本件商標の商標権者である「エンゼルプレイングカード株式会社」と請求書に記載された「エンゼルプレイングカード株式会社」が同一人であることに疑義がある、(オ)被請求人商品1は、「トランプ及びトランプの附属品」の範ちゅうの商品と推認できるため、本件指定商品には含まれないことから、被請求人は、本件要証期間に、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者が、本件指定商品について本件商標を使用していることを証明していない旨の審尋を送付し、期間を指定して、これに対する意見を求めた。
(2)回答書による主張の要旨
被請求人は、前記(1)の審尋に対し、回答書において要旨以下のように述べた。
ア 指定商品「遊戯用器具」についての本件商標の使用であること
(ア)被請求人商品1は、請求人提出の証拠(甲2)記載の指定商品と同一の商品であり、カードシューに「トランプに内蔵印刷されたトランプ識別コード識別認識機能及び識別認識結果によりトランプの真偽又はゲームの勝敗を判定するプログラムを内蔵してなる」ものであり、単なる「トランプ」を手で繰り出し、トランプを配るための箱状のカードシューではなく、種々の機能を有し、機械的要素を有するテーブルゲームマシーンといえる。また、被請求人商品1は、甲3に記載の指定商品と同一の商品であり、「コードが印刷されたカードをスキャナで読み取り、パソコンなどとの間でデータ交換をする機能を有する商品」ともいえる。
(イ)被請求人商品1は、専ら「バカラ」を行う際に使用する商品であるとしても、「トランプ」の範ちゅうの商品ではない。また、「附属品」のように、それ単独では何らの機能を有さないものではなく、種々の機能を有し、機械的要素を有するテーブルマシーンであるから、「トランプの附属品」の範ちゅうの商品とはいえない。さらに、「附属品」とは、「主だったものに附属している物品」を意味する語として広く一般に知られるところ(乙4の2)、(a)カジノのテーブルゲームにおけるバカラでは、トランプは1回きりの使用で使い捨てられるものであるのに対して、被請求人商品1は長年にわたって使用できるものであること、(b)トランプは1組当たり1米ドル以下程度の価格であるのに対し、被請求人商品1は高度なマイクロプロセッサーやセンサーを備えた機器であるため、価格は数千ドルであり、トランプとは価格差が大きいこと、(c)トランプの顧客への販売はトランプだけで行われるものであり、トランプを購入する際にトランプの数千倍の価格である被請求人商品1が附属するということはないこと、(d)被請求人商品1はトランプとは別の価格建てとなっており、顧客であるカジノへの販売は本件商品が単独でなされること、(e)トランプを収納するキャビネットから新しいトランプのパッケージを取り出して用いるときに、被請求人商品1も新しいものにするということもないことからしても、被請求人商品1は、単なる「トランプの附属品」ではない。
(ウ)被請求人商品1は、カジノの現場でゲームの管理や不正防止のセキュリティのために用いられるものであり内部には高度なマイクロプロセッサーやセンサーなどの電子機器やそれらを制御するソフトウェアを備えた機器であり、「遊戯用器具[game machine and apparatus]」の範ちゅうの商品というのが相当であり、そのように解釈することは、各指定商品の英語表記を見ても合理性がある。
(エ)請求人は、被請求人商品1につき、「バカラ用品」又は「電気通信機械器具」の範ちゅうの商品であり、「遊戯用器具[game machine and apparatus]」の範ちゅうの商品ではない旨主張するが、「バカラ用品」は、その表示自体、内容及び範囲が明確であると必ずしもいい切れない。例えば、「カジノゲーム用チップ」は、「バカラ用品」であるとしても、「カジノゲーム用チップを扱うための遊戯用器具」(乙7ないし乙10)は、「バカラを行う際に使用する遊戯用器具」にほかならず、「遊戯用器具」の範ちゅうの商品である。
通常使用権者による使用の事実(商標法第2条第3項第1号)について(ア)報告書(乙11)添付の資料について
a 資料1-1は、被請求人商品1の包装を作成するための図面であり、「品名」には、「検査機用 AE」と記載されている。「検査機」は、「バカラ用シューベースカードチェック機器」であり、「AE」は、「ANGEL EYE」である。この包装には、使用商標1が付されている。同資料の上段に、図面の登録日「15/04/20」(2015年4月20日)、最終仕上日「16/11/22」(2016年11月22日)、日付「18/06/18」(2018年6月18日)が記載されている。登録日は、本件要証期間前であるが、当該資料は、登録日以降、本件要証期間に包装の作成に使用されている。「納入先」は、「エンゼルプレイングカード製造京都(株)」であるが、平成29年4月に、「エンゼルプレイングカード製造株式会社」から「エンゼルプレイングカード製造京都株式会社」に商号変更された(資料1-5)ためである。
ところで、被請求人商品1は、「ANGEL EYE」の標章(以下「使用商標2」という。)を付した商品としてシリーズ化されており、「ANGEL EYE 2」以降のシリーズ商品は、商品の外形寸法がほぼ同じであり、包装としては、同資料で作成される同じものを使用している。ただし、「SUPER ANGEL EYE」については、「ANGEL EYE」の標章ではなく、「SUPER ANGEL EYE」の標章(以下「使用商標3」という。)が使用されている。
b 資料1-2は、本件商品(SUPER ANGEL EYE)(以下「被請求人商品2」という。)の包装を作成するための図面である。図面のとおり、この商品の包装には、使用商標1が付されている。この商品の包装の画像については、写真撮影報告書(乙1の2)のとおりである。「品名」には、「検査機用 SAE」と記載されている。「検査機」は、「バカラ用シューベースカードチェック機器」であり、「SAE」は、「SUPER ANGEL EYE」である。同資料の上段に、図面の登録日「15/05/13」(2015年5月13日)、最終仕上日「17/10/12」(2017年10月12日)、日付「18/06/18」(2018年6月18日)が記載されている。登録日は、本件要証期間前であるが、当該資料は、登録日以降本件要証期間に包装の作成に使用されている。「納入先」は、「エンゼルプレイングカード製造京都(株)」である。
c 資料1-3は、被請求人商品1及び被請求人商品2(以下、「被請求人商品1」等をまとめていう場合は、「被請求人商品」という。)の包装を発注したメール及び納品書である。
資料1-3の1枚目は、被請求人が被請求人商品の製造を委託している「エンゼルプレイングカード製造京都株式会社」(旧社名のエンゼルプレイングカード製造株式会社も含めて、以下「APM社」という。)の担当者が、被請求人商品の包装を製造する紙器製造会社の担当者にあてた注文メールであり、平成28年8月31日に「SUPER ANGEL EYE用内装用箱500枚」と「ANGEL EYE用内装箱100枚」を発注し、指定場所に同年9月29日前後に納品するように指示したものである。同担当者は、これらの商品の包装を「内装箱」と表現している。
資料1-3の2枚目は、1枚目で発注した箱を、紙器製造会社が納品したことを示す納品書であり、「SUPER ANGEL EYE用内装箱500枚」を「検査機SAE用 数量500」と、「ANGEL EYE用内装箱100枚」を「検査機 AE用 数量100」として記載し、指定納入場所に平成28年9月29日に納品されたことを示し、納品書における品名は、いずれも資料1-1及び資料1-2の図面にある表記と同じである。
資料1-3の3枚目は、APM社の担当者が、被請求人商品2の包装を製造する紙器製造会社の担当者にあてた注文メールであり、本件要証期間である平成29年9月15日に「SAE機(SUPER ANGEL EYEの略称)1台入内装箱600枚」を発注し、指定場所に同年10月16日に納品するよう指示したものである。
資料1-3の4枚目は、3枚目で発注した箱を、紙器製造会社が納品したことを示す納品書であり、「SAE機1台入内装箱600枚」を「検査機 SAE用 数量600」として記載し、指定納入場所に平成29年10月12日に納品されたことを示し、納品書における品名は、資料1-2の図面にある表記と同じである。なお、被請求人商品は顧客からの受注生産であるが、APM社は、被請求人商品の包装について、受注数にかかわらず一度に一定数発注することが通例である。
d 資料1-4は、被請求人がAPM社に対して、被請求人商品2の生産を発注していることを示す発注文書であり、同資料の左上部の「APC」は、「エンゼルプレイングカード株式会社」を示し、被請求人が、本件要証期間である平成29年3月1日に、発注先であるAPM社に被請求人商品を222台発注していることが示される。APM社は、当該発注に基づき、必要な部材を調達し、商品の製造を行う。
e 資料1-5は、APM社の履歴事項全部証明書であり、APM社は平成29年4月1日に「エンゼルプレイングカード製造株式会社」から商号変更していることが記載されている。
(イ)商標法第2条第3項第1号に該当すること
上記(ア)のとおり、被請求人商品の包装用箱は、被請求人が被請求人商品の製造を委託するAPM社が作成した図面を紙器製造会社に提供し、APM社の指示により作成されるものであるから、これらの商品の包装用箱の作成者は、APM社である。そして、「ANGEL EYE」のシリーズ商品は、同じ商品の範ちゅうの商品である。そうすると、APM社は、本件要証期間に、被請求人商品の包装用箱に使用商標1を付する行為をしたといえる。そしてAPM社は、被請求人が被請求人商品の製造を委託する被請求人のグループ会社であり、被請求人は、同社に対し、通常使用権を許諾している(乙12ないし乙16参照)。
したがって、本件商標に係る通常使用権者は、本件要証期間に被請求人商品の包装に使用商標1を付する行為をしているといえる(商標法第2条第3項第1号)。
ウ 商標権者による使用の事実(商標法第2条第3項第2号)について
(ア)報告書(乙11)添付の資料について
a 資料2-1は、本件商品(ANGEL EYE 2-EX)(以下「被請求人商品3」という。)の取引が行われたことを証明する資料である。
資料2-1の1枚目は、顧客からの注文書(Purchase Order=P/O)であり、顧客が被請求人の販売会社である「Angel Playing Cards Singapore Pte Limited」(以下「APCS社」という。)に発注し、Purchase Order番号1608644として、オーストラリアのタスマニア地区ホバート市(Horart、TAS)に納入するよう指示したことが示されている。同資料の中段に、注文書の発行日(PO Creation Date)として、本件要証期間である平成29年8月30日(30-Aug-17)が示され、下段には、Item & Code Descriptionとして、Angel Eye EX Baccarat Shoeが「2 Unit」発注されていることが示されている。
資料2-1の2枚目は、1枚目の注文を受けてAPCS社が発行した発注文書であり、同資料の上部の「APCS⇒APC」は、APCS社が、「エンゼルプレイングカード株式会社」(以下「APC社」という。)に対して発注した文書であることを示している。同資料は、「発注日 平成29年8月30日」、「発注先 エンゼルプレイングカード(株)」、「品コード ANGEL EYE 2-EX」、「品名 エンゼルアイ 2-EX」(「2」はローマ文字。)、「数量 2台」、「納期 平成29年11月21日」、「オーストラリア向け」であることが示され、1枚目で顧客が発注したものをAPCS社が被請求人に発注していることが示されている。
資料2-1の3枚目は、被請求人の社内組織であるカスタマーサポート室が、機器生産部に対して商品の製造を指示する「社内生産仕上げ依頼書」であり、同依頼書の作成日は、「発注日」である平成29年11月1日であることが示されている。記載されている品コード、品名、数量、納期、オーストラリア向けなどの情報は2枚目と同じであり、顧客からの発注に基づいて商品を製造する指示を出していることを示している。
資料2-1の4枚目は、2枚目の注文を受けて被請求人が顧客向けに被請求人商品3を出荷したことを示す出荷インボイスであり、同資料の上部には荷受人(Consignee)としてAPCS社が、出荷先(Ship to)として顧客の指定場所であるオーストラリアタスマニア地区ホバート市(Hobart、TAS)が示されている。また、同資料の上部にはインボイス番号「WP-171120」(審決注:「WP-AE171120」の誤記と思われる。)が記載され、本件要証期間である平成29年11月17日に発行されたことが示されている。同資料の中段には、品名(Descriptions)が「ANGEL EYE 2-EX」であり、数量(Quantity)が「2 sets」であることが示されている。同資料の中央部には、顧客の注文番号(PO#)が1608644であることが示されている。顧客との取引は、被請求人とは別法人のAPCS社を仲介して行っているため、被請求人商品3は、被請求人から顧客宛に直接発送するが、荷受人(Consignee)としてはAPCS社を記載している。
資料2-1の5枚目は、出荷梱包リスト(PACKING LIST)であり、同資料の右上部に2枚目(審決注:「4枚目」の誤記と思われる。)と同じインボイス番号(Invoice No. WP-AE171120)が記載されている。
資料2-1の6枚目は、輸出許可通知書であり、同資料の上部に、申告年月日が平成29年11月20日、輸出者が被請求人、仕向人がオーストラリアタスマニア地区ホバート市(HOBART、TAS AUSTRALIA)であることが示されている。また、同資料の中段には、仕入書番号として「B-WP-AE171120」と記載されており、2枚目及び3枚目(審決注:「4枚目及び5枚目」の誤記と思われる。)のインボイス番号が示されている。同資料の下段の税関通知欄に、関西空港税関支署長が本件要証期間である平成29年11月20日に貨物の輸出を許可したことが示されている。
資料2-1の7枚目は、航空貨物運送状(Air Waybill)であり、同資料の中段の目的地空港(Airport of Destination)欄にホバート市(Hobart)が示され、同資料の中段に「INVOICE NO: WP-AE171120」と示されている。このインボイス番号は、4枚目ないし6枚目に記載の番号と一致しており、被請求人商品3が顧客の発注書を元にオーストラリア向けに出荷されたことを示している。同資料は、本件要証期間である平成29年11月20日に発行されたことが同資料の下段に示されている。
資料2-1の8枚目は、被請求人商品3の取引にかかわる納品書である。本件取引はAPCS社を介して行われるため、被請求人からAPCS社への納品書である。納品書の左下部に、顧客の注文番号である「P/O1608644」が示されており、被請求人商品3の取引を行ったことを示すものである。
b 資料2-2は、被請求人商品2の取引が行われたことを証明する資料である。
資料2-2の1枚目は、顧客からの注文書であり、同資料の上部に、注文書番号(PO Number:Purchase Order Number)がPO0006126として、平成29年10月1日に発行されたことが示されている。同資料の上部に顧客が、被請求人の販売会社であるANGEL PLAYING CARD MACUA LTD.(以下「APCM社」という。)に発注し、送り先(SHIP TO)としてマカオ(Macau)の指定場所に納入するよう示されている。同資料の中段には、ITEM NAMEとして、被請求人商品2(Card Shoe,Baccarat,Super Angel Eye)が、「240 Unit」発注されていることが示されている。
資料2-2の2枚目は、1枚目の注文を受けて被請求人がAPM社に対して製品の製造を発注した「発注文書」であり、「発注日 平成29年3月1日」、「発注先 エンゼルプレイングカード製造(株)関西学研」、「品コード SUPER ANGEL EYE」、「品名 スーパーエンゼルアイ」、「数量 222台」、「納期 平成29年4月1日」であることが示されている。
資料2-2の3枚目は、1枚目の注文を受けて被請求人がAPM社に対して、製品の製造を発注した「発注文書」であり、「発注日 平成29年3月1日」、「発注先 エンゼルプレイングカード製造(株)関西学研」、「品コード SUPER ANGEL EYE」、「品名 スーパーエンゼルアイ」、「数量 18台」、「納期 平成29年4月1日」であることが示され、2枚目と合計して、顧客が発注した240台の製品の生産を指示していることを示している。
資料2-2の4枚目は、1枚目の注文を受けて被請求人が顧客向けに被請求人商品2を出荷したことを示す出荷インボイスであり、同資料の上部には荷受人(CONSIGNEE)がAPCM社であること、インボイス番号(Invoice No.)がMGCSAE171013、顧客の注文番号(PO#)がPO0006126であることが示され、本件要証期間である平成29年10月5日に発行したことが示されている。品名(Descriptions)が「SUPER ANGEL EYE」であり、数量(Quantity)が「222 sets」と「18 sets」の合計「240 sets」であることが示されている。顧客との取引は、被請求人とは別法人のAPCM社を仲介して行っているため、マカオの顧客に対しては、被請求人から同社に被請求人商品2を発送しているため、荷受人(CONSIGNEE)はAPCM社を記載している。
資料2-2の5枚目は、出荷梱包リスト(PACKING LIST)であり、同資料の右上部に2枚目(審決注:「4枚目」の誤記と思われる。)と同じインボイス番号(Invoice No. MGCSAE171013)及び注文番号(PO0006126)が記載されている。
資料2-2の6枚目は、輸出許可通知書であり、同資料の上部に、申告年月日が平成29年10月13日(2017/10/13)であること、輸出者が被請求人であること、仕向人がマカオ(MACAU)(審決注:「APCM社」の誤記と思われる。)であることが示され、同資料の中段には、仕入書番号として「B-MGCSAE171013」と記載され、4枚目及び5枚目のインボイス番号が示されている。同資料の下段の税関通知欄に、関西空港税関支署長が本件要証期間である平成29年10月13日に許可したことが示されている。
資料2-2の7枚目は、航空貨物運送状(Air Waybill)であり、同資料の中段の目的地空港(Airport of Destination)欄にマカオ(MACUA)が示され、同資料の中段にインボイス番号として「INVOICE NO: MGCSAE171013」と示されている。このインボイス番号は、4枚目ないし6枚目に記載の番号と一致しており、被請求人商品2が顧客の発注書を元にマカオ向けに出荷されたことを示している。同資料の発行日は、本件要証期間である平成29年10月13日であることが同資料の下段に示されている。
資料2-2の8枚目は、被請求人商品2の取引にかかわる納品書であり、この商品の取引は被請求人とAPCM社を介して行われるため、被請求人から同社への「SUPER ANGEL EYE 222台」の納品書である。納品書の左下部に、顧客の注文番号である「PO0006126」が示されており、被請求人商品2の取引を行ったことを示すものである。
資料2-2の9枚目は、被請求人商品2の取引にかかわる納品書であり、この商品の取引は被請求人とAPCM社を介して行われるため、被請求人から同社への「SUPER ANGEL EYE 18台」の納品書である。8枚目の納品書と合わせて、240台が納品されたことを示している。納品書の左下部に、顧客の注文番号である「PO0006126」が示され、本件要証期間である平成29年10月13日に発行されていることから、被請求人商品2の取引を本件要証期間に行ったことを示すものである。
(イ)商標法第2条第3項第2号に該当すること
上記(ア)のとおり、被請求人は、本件要証期間に、被請求人商品の包装に使用商標1を付す行為をしているといえる(商標法第2条第3項第2号)。
エ 合議体指摘の疑義について
(ア)同一商品である点に関する疑義
被請求人が平成25年2月に発行した「エンゼルグループトランプづくり50年」冊子の68頁には、ANGEL EYEシリーズの開発経緯が記載されているが、74頁に「ANGEL EYEシリーズ」として「ANGEL EYE 1」、「ANGEL EYE 2」、「ANGEL EYE 2 EX(ツーイーエックス)」並びに「ANGEL EYE 3(スリー)」が「ANGEL EYEシリーズ」であることが示されている(乙11 資料3-1)。これらは顧客の間でも「『ANGEL EYE』シリーズ」として知られ、商品の外形寸法がほぼ同じであるため、資料1-1に示した同一の箱を用いて出荷している。顧客からはシリーズのうちの顧客の要望や仕様に応じて機種を指定して発注され、被請求人は受注生産をして顧客ごとに出荷しており、顧客の注文書、出荷インボイスなどに機種が明記されるため、シリーズで同じ箱を使用しても顧客は混乱することはない。
そして、紙器製造会社、包装会社に提供される図面のうち、「ANGEL EYE 2-EX」及び「ANGEL EYE 3」は、共通の図面(AE用包装)であり、被請求人商品1及び被請求人商品3の包装には、「ANGEL EYE」の標章が付され、「2-EX」(「2」はローマ文字である。)や「3」(「3」はローマ文字である。)のシリーズを表す標章は付されない。また、写真撮影報告書(乙1-1)に添付の写真には、「ANGEL EYE EX」の標章が付された商品が入れられており、同商品に「2」(「2」はローマ文字である。)の標章がないとはいえ、この商品と請求書記載の商品とが一致するといって差し支えない。
(イ)同一人である点に関する疑義
被請求人の登記簿上の住所は、本件商標の商標登録原簿と同一の「滋賀県東近江市青野町」であるが、営業所在地としては、京都駅前事務所の「京都府京都市下京区塩小路通烏丸西入ル東塩小路町」と関西学研事務所の「京都府相楽郡精華町精華台」の2つが存在し、陳述書(乙3)添付の請求書記載の住所は、上記関西学研事務所の住所であることが理解できる。
したがって、陳述書(乙3)添付の請求書は、被請求人による取引書類である。
オ 結語
以上の次第で、商標権者及び通常使用権者は、本件要証期間に日本国内において、本件指定商品についての本件商標の使用(商標法第2条第3項第1号及び同第2号)をしているものである。

第4 当審の判断
1 被請求人の立証責任
商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、その請求に係る指定商品のいずれかについての登録商標の使用をしていることを証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取消しを免れない。
すなわち、本件商標の使用をしていることを証明するには、商標法第50条第2項に規定されているとおり、被請求人は、ア 本件要証期間に、イ 日本国内において、ウ 商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、エ 本件指定商品のいずれかについての、オ 本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標の使用(商標法第2条第3項各号のいずれかに該当する使用行為)をしていることをすべて証明する必要がある。
2 被請求人の提出した乙1ないし乙16の証拠及び同人の主張によれば以下のとおりである。
(1)被請求人が、「カジノゲーム用遊戯用器具」と称する商品は、答弁書による「カジノゲーム場においてバカラゲームをサポートするために使用される器具(バカラ器具用シュー)」との商品説明や、APC社のI氏が作成した審判長あての平成30年9月3日付け陳述書(乙3)に添付の2017年11月17日付け「SHIPPING INVOICE」(以下「請求書1」という。)、APC社のO氏が作成した審判長あての平成31年3月11日付け報告書(乙11)の添付資料2-1の4枚目の2017年11月17日付け「SHIPPING INVOICE」(請求書1と同じもの。)及び添付資料2-2の4枚目の2017年10月5日付け「SHIPPING INVOICE」(以下「請求書2」という。)における「Descriptions」の欄の「Shoe base card cheking device for baccarat」の記載から、「バカラ用シューベースカードチェック機器」であると認められる。
したがって、被請求人商品1は、商品名「ANGEL EYE」、被請求人商品2は、商品名「SUPER ANGEL EYE」、被請求人商品3は、商品名「ANGEL EYE 2-EX」とする、いずれも「バカラ用シューベースカードチェック機器」といえる。
(2)平成31年3月11日付け写真撮影報告書(乙1の2)に添付された写真第1ないし写真第6によると、被請求人商品2の包装用と思しき直方体型包装箱(以下、「被請求人商品2の包装用箱」という。)の正面に使用商標3及び、その側面の右下に、使用商標1の記載が確認できる。
また、乙11の添付資料1-2として提出された包装用箱の仕様書と思しき書類中の仕様図における「←535→」の記載の下に使用商標3、「←170→」の記載の下の「GUARDIAN」の欧文字の右下に使用商標1が記載されていることから、被請求人商品2の包装用箱は、当該仕様書により作成されたものと推認できる。
さらに、乙1の2に添付された写真第3には、被請求人商品2と思しき商品が、その包装用箱の横に置かれている。
なお、乙1の2の作成日及び写真第1ないし写真第6の撮影時期である平成31年3月11日、乙11の添付資料1-2の登録日である2015年(平成27年)5月13日は、いずれも、本件要証期間外であるが、乙11の添付資料1-3の1枚目ないし4枚目によると、APM社の担当者が、2016年(平成28年)8月31日付けで、「○○○紙器株式会社」の担当部長に、被請求人商品2の包装用箱500枚を直送依頼し、同年9月29日に「○○○紙器株式会社」から「テ○○○(株)」に納入されたこと、及び、APM社の担当者が、2017年(平成29年)9月15日付けで、「○○○紙器株式会社」の担当部長に、被請求人商品2の包装用箱600枚を直送依頼し、同年10月12日に「○○○紙器株式会社」から「テ○○○(株)」に納入されたこと、及びその発注数等から、本件要証期間に被請求人商品2の包装用箱が存在したことが推認し得るものである。
(3)請求書1及び請求書2における「ANGEL PLAYING CARDS CO.,LTD.」の住所表記は、「8-1-5 Seikadai,Seika-cho,Souraku-gun,Kyoto 619-0238,JAPAN」(京都府相楽郡精華町精華台8-1-5)であり、本件商標の商標権者であるAPC社の本件商標の登録原簿に記載の住所「滋賀県東近江市青野町4600番地」と相違しているが、乙11の添付資料4-4として提出された「エンゼルプレイングカード株式会社の会社概要及び沿革」によると、「京都府相楽郡精華町精華台8-1-5」は、同社の事業所の住所であることが確認できるため、当該請求書に記載された「ANGEL PLAYING CARDS CO.,LTD.」は、本件商標の商標権者であるAPC社と同一人であるといえる。
(4)請求書2によると、APC社は、荷受人(CONSIGNEE)をAPCM社として、被請求人商品2を「トレーニング用のバカラ用シューベースカードチェック機器」と合わせて240セット、大阪から中国のマカオに輸出したといえ、前述(2)のとおり、被請求人商品2が、大阪から中国のマカオに輸出された時期に、被請求人商品2の包装用箱が存在したことが推認できる。
(5)請求書1によると、APC社は、荷受人(Consignee)をAPCS社として、出荷先(Ship to)は、マスキングのため確認できないものの、被請求人商品3を2セット、大阪からオーストラリアのホバートに輸出したものといえる。
しかしながら、平成30年9月3日付け写真撮影報告書(乙1の1)に添付された写真第1ないし写真第6を確認しても、当該写真における包装用箱及び「バカラ用シューベースカードチェック機器」に、被請求人商品3の商品名である「ANGEL EYE 2-EX」の記載は確認できないため、乙1の1に添付された写真第1ないし写真第6に表された包装用箱に納められた商品が被請求人商品3であるとは認められない。
また、被請求人商品1(商品名「ANGEL EYE」からなる「バカラ用シューベースカードチェック機器」)については、被請求人が提出した証拠によっては、実際に取引されたことが証明されていない。
3 上記2によれば、当審の判断は、以下のとおりである。
(1)本件商標の商標権者であるAPC社は、被請求人商品2を2017年10月5日頃に、「トレーニング用のバカラ用シューベースカードチェック機器」と合わせて240セット、大阪から中国マカオに輸出した。
そして、使用商標1が記載された被請求人商品2の包装用箱は、被請求人商品2が輸出された時期に存在し、かつ、被請求人商品2が輸出された時期は本件要証期間である。
そうすると、本件商標の商標権者であるAPC社は、本件要証期間である2017年(平成29年)10月5日に、被請求人商品2を輸出したことが認められ、また、被請求人商品2は、使用商標1が表示された包装用箱に入れられて輸出されたことが推認できる。
(2)被請求人商品2の包装用箱には、使用商標1(天使)及び使用商標3が記載されている。
本件商標と使用商標1は、共に「天使」の漢字を書してなり、書体のみの相違にすぎないことから、本件商標と使用商標1は社会通念上同一の商標と認められる。
なお、被請求人商品2の包装用箱に記載された使用商標3(SUPER ANGEL EYE)は、これらの外観及び称呼が本件商標と明らかに相違するため、使用商標3は、本件商標と社会通念上同一の商標とはいえない。
(3)答弁書等における被請求人の主張によると、諸外国のカジノ施設で、バカラ等のトランプゲームが行われる場合、ディーラーが、トランプを繰り出す際、複数組のトランプを収納した容器が使用され、その容器を「カードシュー」などと称されていることがわかる。
そして、「カードシュー」は、前述のとおり、その目的は複数組のトランプの収納であり、「カードシュー」に収納されたトランプをディーラーが繰り出すことで、バカラなどのトランプゲームが行われるものであって、「カードシュー」のみを単独で使用し、バカラ等のトランプゲームを行うことはできない。そうすると、「カードシュー」は、複数組のトランプと共に使用することにより機能する商品といえる。
一方、被請求人の主張によると、商品「バカラ用シューベースカードチェック機器」は、「カードシュー」に「トランプに内蔵印刷されたトランプ識別コード識別認識機能及び識別認識結果によりトランプの真偽又はゲームの勝敗を判定するプログラムを内蔵してなるもの」と認められるところ、当該商品を諸外国のカジノ施設で使用する場合、当該商品に収納されたトランプをディーラーが繰り出すことで、バカラなどのトランプゲームが行われるものであり、当該商品のみで使用することができない、トランプと共に用いて初めて機能する商品といえる。
そうすると、商品「バカラ用シューベースカードチェック機器」は、その使用目的や使用方法が「カードシュー」と共通し、「カードシュー」は、トランプと共に使用することにより機能するトランプ専用の商品というべきものであり、商品「トランプ」が「遊戯用器具」の範ちゅうの商品ではないことからすれば、被請求人使用商品2「バカラ用シューベースカードチェック機器」も同様に「遊戯用器具」の範ちゅうの商品と認めることができない。
(4)小括
以上から、本件商標の商標権者であるAPC社は、本件要証期間に、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる使用商標1の記載がある包装箱を使用して、被請求人商品2を大阪から中国のマカオに輸出したことが認められる。
しかしながら、被請求人商品2「バカラ用シューベースカードチェック機器」は、本件指定商品である「遊戯用器具,ビリヤード用具」の範ちゅうの商品と認めることができないものである。
その他、被請求人が提出した証拠によっては、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者が、本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標を、本件指定商品に含まれる商品に使用しているとは認められない。
4 被請求人の主張について
被請求人は、「本請求に係る指定商品中の『遊戯用器具』は、勝負ごと、すなわち賭け事などに用いられる器具と言い換えることができる。そして、使用商品『バカラ用シューベースカードチェック機器』は、専らカジノゲーム場においてバカラゲームをサポートするために使用される器具であるから、『遊戯用器具』に該当する。」旨主張する。
しかしながら、前記3の(4)のとおり、「バカラ用シューベースカードチェック機器」は、カジノ施設等で使用されるとしても、その使用目的やその使用方法は、複数組のトランプの収納及びトランプの繰り出しであり、また、当該商品は、トランプと共に用いて機能する商品であるといえることから、「遊戯用器具」には含まれないと判断するのが相当である。
よって、被請求人の上記主張は、採用できない。
5 むすび
以上のとおり、被請求人が提出した全証拠によっては、被請求人は、本件要証期間に、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)を、本件指定商品について、商標法第2条第3項各号に規定する使用行為を行ったことを証明していない。
また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2019-10-31 
結審通知日 2019-11-05 
審決日 2020-05-07 
出願番号 商願2011-86803(T2011-86803) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (X28)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小田 明 
特許庁審判長 木村 一弘
特許庁審判官 豊田 純一
中束 としえ
登録日 2012-08-10 
登録番号 商標登録第5513900号(T5513900) 
商標の称呼 テンシ 
代理人 小野寺 隆 
代理人 飯島 紳行 
代理人 藤森 裕司 

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