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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2018890037 審決 商標
不服201514815 審決 商標
不服201811453 審決 商標
不服201615097 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商8条先願 無効としない W1825
管理番号 1362470 
審判番号 無効2018-890036 
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-05-15 
確定日 2020-04-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第5883912号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5883912号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成28年(2016年)3月10日に登録出願、第18類「皮革及び模造皮革,皮革製包装用容器,かばん類,袋物,トランク,旅行かばん,傘,日傘,乗馬用具」及び第25類「被服,帽子,履物」を指定商品として、同年8月9日に登録査定、同年9月23日に設定登録されているものである。

第2 引用商標
請求人が、登録の無効の理由として引用する登録商標は、以下の20件であり、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第2353908号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成元年(1989年)1月24日
設定登録日:平成3年(1991年)11月29日
書換登録日:平成16(2004年)年1月21日
最新更新日:平成23(2011年)年7月19日
指定商品:第25類「被服」
2 登録第4805259号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
登録出願日:平成12年(2000年)9月29日
設定登録日:平成16年(2004年)9月24日
最新更新日:平成26年(2014年)5月27日
指定商品:第25類「被服」
3 登録第4871727号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲4のとおり
登録出願日:平成13年(2001年)2月2日
設定登録日:平成17年(2005年)6月17日
最新更新日:平成27年(2015年)6月9日
指定商品:第25類「被服,仮装用衣服」
4 登録第5438318号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:別掲5のとおり
登録出願日:平成21年(2009年)5月22日
設定登録日:平成23年(2011年)9月16日
指定商品:第12類、第14類、第18類、第21類、第28類、第29類及び第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
5 登録第5455278号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:別掲6のとおり
登録出願日:平成20年(2008年)1月10日
設定登録日:平成23年(2011年)12月9日
指定商品及び指定役務:第3類、第5類、第12類、第18類、第21類、第28類、第29類、第30類、第32類、第34類及び第38類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務
6 登録第5671240号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成:別掲7のとおり
登録出願日:平成25年(2013年)10月10日
設定登録日:平成26年(2014年)5月23日
指定商品:第14類、第18類、第21類、第28類及び第29類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
7 登録第5196427号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の構成:別掲8のとおり
登録出願日:平成20年(2008年)3月13日
設定登録日:平成21年(2009年)1月16日
最新更新日:平成31年(2019年)2月5日
指定商品:第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」
8 登録第5198737号商標(以下「引用商標8」という。)
商標の構成:別掲9のとおり
登録出願日:平成20年(2008年)6月11日
設定登録日:平成21年(2009年)1月23日
最新更新日:平成31年(2019年)2月5日
指定商品:第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」
9 登録第5217055号商標(以下「引用商標9」という。)
商標の構成:別掲10のとおり
登録出願日:平成20年(2008年)8月18日
設定登録日:平成21年(2009年)3月23日
最新更新日:平成31年(2019年)3月26日
指定商品:第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」
10 登録第5248266号商標(以下「引用商標10」という。)
商標の構成:別掲11のとおり
登録出願日:平成20年(2008年)12月24日
設定登録日:平成21年(2009年)7月17日
最新更新日:令和元年(2019年)6月18日
指定商品:第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」
11 登録第5250011号商標(以下「引用商標11」という。)
商標の構成:別掲12のとおり
登録出願日:平成20年(2008年)8月18日
設定登録日:平成21年(2009年)7月24日
最新更新日:令和元年(2019年)6月18日
指定商品:第25類「被服」
12 登録第5332314号商標(以下「引用商標12」という。)
商標の構成:別掲13のとおり
登録出願日:平成22年(2010年)2月2日
設定登録日:平成22年(2010年)6月25日
指定商品:第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」
13 登録第5332315号商標(以下「引用商標13」という。)
商標の構成:別掲14のとおり
登録出願日:平成22年(2010年)2月2日
設定登録日:平成22年(2010年)6月25日
指定商品:第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」
14 登録第5394825号商標(以下「引用商標14」という。)
商標の構成:別掲15のとおり
登録出願日:平成22年(2010年)2月26日
設定登録日:平成23年(2011年)3月4日
指定商品:第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」
15 登録第5631446号商標(以下「引用商標15」という。)
商標の構成:別掲16のとおり
登録出願日:平成25年(2013年)7月3日
設定登録日:平成25年(2013年)11月22日
指定商品:第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」
16 登録第5783707号商標(以下「引用商標16」という。)
商標の構成:別掲17のとおり
登録出願日:平成27年(2015年)3月2日
設定登録日:平成27年(2015年)8月7日
指定商品:第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」
17 登録第5864187号商標(以下「引用商標17」という。)
商標の構成:別掲18のとおり
登録出願日:平成26年(2014年)12月17日
設定登録日:平成28年(2016年)7月8日
指定商品:第25類「被服」
18 登録第6003536号商標(以下「引用商標18」という。)
商標の構成:別掲19のとおり
登録出願日:平成29年(2017年)5月17日
設定登録日:平成29年(2017年)12月15日
指定商品:第18類「愛玩動物用被服類,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,皮革」、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」
19 登録第6003537号商標(以下「引用商標19」という。)
商標の構成:別掲20のとおり
登録出願日:平成29年(2017年)5月17日
設定登録日:平成29年(2017年)12月15日
指定商品:第24類「布製身の回り品,布団,布団カバー,まくらカバー,毛布,カーテン,テーブル掛け」、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」
20 登録第6005774号商標(以下「引用商標20」という。)
商標の構成:別掲21のとおり
登録出願日:平成29年(2017年)6月5日
設定登録日:平成29年(2017年)12月22日
指定商品:第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」
以下、上記の引用商標1ないし同20をまとめて「本件引用商標」という。また、引用商標1、同3ないし同5及び同7ないし同15をまとめて「本件引用商標A」という場合があり、引用商標2、同6、同16及び同17をまとめて「本件引用商標B」という場合がある。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べた。
1 請求人が、出願人である商願2017-117098(別掲22)、商願2017-117101号(別掲23)及び商願2017-117099(別掲24)の審査において、出願商標との類似を指摘され、本件商標を引用した拒絶理由が通知されている。
2 一方、本件商標と明らかに類似する引用商標3件(引用商標1ないし引用商標3)の権利が存続し、また、請求人は、いわゆるスマイルマークと称される商標を多数所有(引用商標4ないし引用商標17等)しており、これらも本件商標との類似性を有している。
3 このような特許庁の判断が分かれることは、統一性がなく、国民の安定した事業活動を困難にしている。
4 請求人として、請求人の登録出願において、本件商標が引用商標の対象となり、登録が拒絶されることを看過できない。
5 本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、同法第46条第1項第1号によりその登録は無効とすべきである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を平成30年8月24日付け審判事件答弁書において要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第10号証を提出した。以下、証拠については、乙1のように表記する。
1 請求の理由の要旨
請求人は、本件商標は、本件引用商標と類似する商標であるから商標法第4条第1項第11号に該当すると主張しているが、本件商標と本件引用商標がどのような点で類似の商標と判断すべきであるかについては一切述べていない。
また、請求人は、本件審判請求に係る第18類及び第25類の全ての指定商品について請求がなされているものと解する。さらに、請求人は、請求人自身の商標登録出願である商願2017-117098(別掲22)、商願2017-117101(別掲23)及び商願2017-117099(別掲24)の審査において、これらの出願に係る商標に類似する商標として本件商標が引用された旨主張している。
2 本件商標と本件引用商標の対比
(1)本件商標について
本件商標は、円形の輪郭内のやや上方、中央寄りに二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置してなる目と、その下方に両端上がりの弧線を円周にほぼ沿って配置してなる口と、この弧線の両端に短い線を配置してなる口角とで表された、簡略化された人の笑顔に、開口部に折り返し部又はリブ部が設けられた縁無しの帽子を被せた図柄からなる構成を有する。
当該構成より、本件商標は、全体として「ニット帽を被った人の笑顔」を認識させるものであり、本件商標の構成中、人の笑顔に当たる部分とニット帽に当たる部分とは、ほぼ同程度の大きさを有しており、本件商標は、全体として縦長の図柄からなるものとなっている。
本件商標は、ニット帽を被った人の笑顔を表現した図形よりなるところ、人の笑顔の描写方法や描写態様は多種多様であり、当該図形部分をして直ちに特定の図案やキャラクターを描いたものとも認識し得ないから、これより特定の称呼及び観念は生じない。
(2)本件商標と引用商標1の対比について
引用商標1は、円形の輪郭内に二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置してなる目と、その下方に両端上がりの弧線を配置してなる口と、弧線の両端に短い線を配置してなる口角からなる構成を有しており、全体として人の笑顔を簡潔に表現したものである。
本件商標と引用商標1とを比較すると、円形輪郭内に目、口、口角といった構成要素が配置されている点では共通するものの、本件商標においてニット帽が商標全体の半分近くを占める大きな特徴となっているのに対し、引用商標1ではニット帽が描かれていない点で著しく異なっている。また、目、口、口角といった個々の要素についても、その大きさや形状、位置関係は両商標で大きく異なっており、全体として生じる表情の印象は大きく異なっている。人間の知覚が表情の認知において、とりわけ鋭敏であることに鑑みても、これらの差異が全体の印象に与える影響は大きく、両商標を時と所を異にして接する場合であっても、外観上混同を生じる可能性は低い。
(3)本件商標と引用商標2の対比について
引用商標2は、横書きで両端下がりに配された「LOVE EARTH」の文字の下方に、円形輪郭内に二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置してなる目と、その下方に両端上がりの弧線を配置してなる口と、弧線の両端に短い線を配置してなる口角からなる構成を有する。
本件商標と引用商標2とを比較すると、円形輪郭内に目、口、口角といった構成要素が配置されている点では共通するものの、本件商標においてニット帽が商標全体の半分近くを占める大きな特徴となっているのに対し、引用商標2ではニット帽が描かれていない点で著しく異なっている。また、引用商標2では、「LOVE EARTH」の文字が、その下方の円図形に沿うような形で配されており、文字と図形が一体感を生じるように構成されている点でも本件商標と大きく異なっている。さらに、目、口、口角といった要素も、その大きさ、形状、位置が両商標では異なっており、全体として生じる表情の印象も異なる。これらの差異点により、両商標が外観において混同を生じる可能性は低い。
(4)本件商標と引用商標3の対比について
引用商標3は、円形の輪郭内に二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置してなる目と、目を表す楕円形内に白色の円で描かれた瞳と、目の下方に両端上がりの弧線を配置してなる口と、弧線の両端に小さな黒塗りの円を配置してなる口角からなる構成を有しており、全体として人の笑顔を簡潔に表現したものである。
本件商標と引用商標3とを比較すると、円形輪郭内に目、口、口角といった構成要素が配置されている点では共通するものの、本件商標においてニット帽が商標全体の半分近くを占める大きな特徴となっているのに対し、引用商標3ではニット帽が描かれていない点で著しく異なっている。また、引用商標3では、目の中に白色の円で瞳が描かれている点でも本件商標と大きく異なっている。さらに、目、口、口角といった要素も、その大きさ、形状、位置が両商標では異なっており、全体として生じる表情の印象も異なる。これらの差異点により、両商標が外観において混同を生じる可能性は低い。
(5)本件商標と引用商標4の対比について
引用商標4は、円形の輪郭内に二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置してなる目と、その下方に両端上がりの弧線を配置してなる口と、弧線の両端に短い線を配置してなる口角からなる構成を有しており、全体として人の笑顔を簡潔に表現したものである。
本件商標と引用商標4とを比較すると、円形輪郭内に目、口、口角といった構成要素が配置されている点では共通するものの、本件商標においてニット帽が商標全体の半分近くを占める大きな特徴となっているのに対し、引用商標4ではニット帽が描かれていない点で著しく異なっている。さらに、目、口、口角といった要素も、その大きさ、形状、位置が両商標では異なっており、全体として生じる表情の印象も異なる。これらの差異点により、両商標が外観において混同を生じる可能性は低い。
(6)本件商標と引用商標5の対比について
引用商標5は、円形の輪郭内に二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置してなる目と、その下方に両端上がりの弧線を配置してなる口と、弧線の両端に短い線を配置してなる口角からなる構成を有しており、全体として人の笑顔を簡潔に表現したものである。なお、口及び口角を表す線が他の部分よりも著しく太い線で描かれていることにより、口及び口角が強調された構成となっている。
本件商標と引用商標5とを比較すると、円形輪郭内に目、口、口角といった構成要素が配置されている点では共通するものの、本件商標においてニット帽が商標全体の半分近くを占める大きな特徴となっているのに対し、引用商標5ではニット帽が描かれていない点で著しく異なっている。さらに、目、口、口角といった要素も、その大きさ、形状、位置が両商標では異なっており、全体として生じる表情の印象も異なる。これらの差異点により、両商標が外観において混同を生じる可能性は低い。
(7)本件商標と引用商標6の対比について
引用商標6は、円形の輪郭内に二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置してなる目と、その下方に両端上がりの弧線を配置してなる口と、弧線の両端に短い線を配置してなる口角からなる図形とその下に「SMILEY」の文字を配してなる構成を有しており、図形部分は、人の笑顔を簡潔に表現したものである。
本件商標と引用商標6の図形部分とを比較すると、円形輪郭内に目、口、口角といった構成要素が配置されている点では共通するものの、本件商標においてニット帽が商標全体の半分近くを占める大きな特徴となっているのに対し、引用商標6の図形部分にはニット帽が描かれていない点で著しく異なっている。さらに、目、口、口角といった要素も、その大きさ、形状、位置が両商標では異なっており、全体として生じる表情の印象も異なる。これらの差異点により、両商標が外観において混同を生じる可能性がないことは論じるまでもない。
(8)本件商標と引用商標7の対比について
引用商標7は、円形の輪郭内に二本の縦線を左右に配置してなる目と、その下方に両端上がりの弧線を配置してなる口からなる構成を有しており、全体として人の笑顔を簡潔に表現したものである。
本件商標と引用商標7とを比較すると、円形輪郭内に目、口といった構成要素が配置されている点では共通するものの、本件商標においてニット帽が商標全体の半分近くを占める大きな特徴となっているのに対し、引用商標7ではニット帽が描かれていない点で著しく異なっている。さらに、引用商標7は、全ての要素が均一な太さの線で描かれており、より単純化された笑顔を認識させるものとなっている。加えて、両商標の間には目の形状や口角の有無といった大きな差異点もあり、全体として生じる表情の印象は著しく異なる。これらの差異点により、両商標が外観において混同を生じる可能性は低い。
(9)本件商標と引用商標8の対比について
引用商標8は、円形の輪郭内に二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置してなる目と、その下方に両端上がりの三日月型の図形を配置してなる口からなる構成を有しており、全体として人の笑顔を簡潔に表現したものである。
本件商標と引用商標8とを比較すると、円形輪郭内に目、口といった構成要素が配置されている点では共通するものの、本件商標においてニット帽が商標全体の半分近くを占める大きな特徴となっているのに対し、引用商標8ではニット帽が描かれていない点で著しく異なっている。さらに、引用商標8では、目の形状がより円に近い楕円形で表されており、その大きさも本件商標と比べて著しく大きく描かれている。加えて、両商標では口の形状や口角の有無においても大きく異なっており、全体として生じる表情の印象は著しく異なる。これらの差異点により、両商標が外観において混同を生じる可能性は低い。
(10)本件商標と引用商標9の対比について
引用商標9は、円形の輪郭内に二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置してなる目と、目を表す楕円図形の上端部に短い線を放射状に配して表されたまつ毛と、目の下方に両端上がりの弧線を配置してなる口と、弧線の両端に短い線を配置してなる口角からなる構成を有しており、全体として人の笑顔を簡潔に表現したものである。
本件商標と引用商標9とを比較すると、円形輪郭内に目、口、口角といった構成要素が配置されている点では共通するものの、本件商標においてニット帽が商標全体の半分近くを占める大きな特徴となっているのに対し、引用商標9ではニット帽が描かれていない点で著しく異なっている。また、引用商標9では、目の上部にまつ毛が描かれていることにより、女性をイメージさせるものとなっている点でも本件商標と大きく異なっている。さらに、目、口、口角といった要素も、その大きさ、形状、位置が両商標では異なっており、全体として生じる表情の印象も異なっている。これらの差異点により、両商標が外観において混同を生じる可能性は低い。
(11)本件商標と引用商標10の対比について
引用商標10は、手書きの不均一な線で描かれた円に近い形状の輪郭内に、二つの不揃いな形状の小さい図形により表された目と、その下方に右側がより上方まで伸びた両端上がりの不均一な弧線を配置してなる口と、弧線の右側の端部に短い線を配置してなる口角からなる構成を有しており、全体として人の笑顔を簡潔に表現したものである。
本件商標と引用商標10とを比較すると、円形輪郭内に目、口、口角といった構成要素が配置されている点では共通するものの、本件商標においてニット帽が商標全体の半分近くを占める大きな特徴となっているのに対し、引用商標10ではニット帽が描かれていない点で著しく異なっている。また、引用商標10は全体が手書きの不均一な線で描かれていることを大きな特徴としている点でも本件商標とは異なっている。さらに、目、口、口角といった要素も、その大きさ、形状、位置が両商標では異なっており、全体として生じる表情の印象は大きく異なる。これらの差異点により、両商標が外観において混同を生じる可能性は低い。
(12)本件商標と引用商標11の対比について
引用商標11は、円形の輪郭内に二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置してなる目と、その下方に両端上がりの三日月型の図形を配置してなる口と、三日月型の図形の両端に短い線を配置してなる口角からなる構成を有しており、全体として人の笑顔を簡潔に表現したものである。
本件商標と引用商標11とを比較すると、円形輪郭内に目、口、口角といった構成要素が配置されている点では共通するものの、本件商標においてニット帽が商標全体の半分近くを占める大きな特徴となっているのに対し、引用商標11ではニット帽が描かれていない点で著しく異なっている。さらに、引用商標11では、目を表す楕円図形が本件商標と比べて著しく大きく描かれている。加えて、両商標では口の形状や口角を表す線の向きにおいても大きく異なっており、全体として生じる表情の印象は著しく異なる。これらの差異点により、両商標が外観において混同を生じる可能性は低い。
(13)本件商標と引用商標12の対比について
引用商標12は、円形の輪郭内に二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置してなる目と、その下方に両端上がりの三日月型の図形を配置してなる口からなる構成を有しており、全体として人の笑顔を簡潔に表現したものである。
本件商標と引用商標12とを比較すると、円形輪郭内に目、口といった構成要素が配置されている点では共通するものの、本件商標においてニット帽が商標全体の半分近くを占める大きな特徴となっているのに対し、引用商標12ではニット帽が描かれていない点で著しく異なっている。さらに、引用商標12では、目を表す図形が相対的に小さく描かれている点で本件商標とは異なっている。加えて、両商標では口の形状や口角の有無においても大きく異なっており、全体として生じる表情の印象は著しく異なる。これらの差異点により、両商標が外観において混同を生じる可能性は低い。
(14)本件商標と引用商標13の対比について
引用商標13は、円形の輪郭内に二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置してなる目と、その下方に両端上がりの弧線を配置してなる口と、弧線の両端に短い線を配置してなる口角からなる構成を有しており、全体として人の笑顔を簡潔に表現したものである。
なお、引用商標13では、目、口、口角を表す図形が円輪郭の右上方に偏った位置に配置されていることにより、正面ではなく、左下方から見た笑顔を認識させる構成となっている。
本件商標と引用商標13とを比較すると、円形輪郭内に目、口、口角といった構成要素が配置されている点では共通するものの、本件商標においてニット帽が商標全体の半分近くを占める大きな特徴となっているのに対し、引用商標13ではニット帽が描かれていない点で著しく異なっている。また、本件商標が正面から見た顔を認識させるのに対し、引用商標13は、左下方から見た顔を認識させる構成となっている点でも両商標は異なっている。さらに、目、口、口角といった要素も、その大きさ、形状、位置が両商標では異なっており、全体として生じる表情の印象も異なる。これらの差異点により、両商標が外観において混同を生じる可能性は低い。
(15) 本件商標と引用商標14の対比について
引用商標14は、円形の輪郭内に二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置してなる目と、目を表す楕円図形の上部に短い線を配して表されたまつ毛と、目の下方に両端上がりの弧線を配置してなる口と、弧線の両端に短い線を配置してなる口角と、からなる構成を有しており、全体として人の笑顔を簡潔に表現したものである。
本件商標と引用商標14とを比較すると、円形輪郭内に目、口、口角といった構成要素が配置されている点では共通するものの、本件商標においてニット帽が商標全体の半分近くを占める大きな特徴となっているのに対し、引用商標14ではニット帽が描かれていない点で著しく異なっている。また、引用商標14では、目の上部にまつ毛が描かれていることにより、女性をイメージさせるものとなっている点でも本件商標と大きく異なっている。さらに、目、口、口角といった要素も、その大きさ、形状、位置が両商標では異なっており、全体として生じる表情の印象は著しく異なっている。これらの差異点により、両商標が外観において混同を生じる可能性は低い。
(16)本件商標と引用商標15との対比について
引用商標15は、下方で全周の4分の1ほどが切断された円形の輪郭内に二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置してなる目と、その下方に両端上がりの弧線を配置してなるロと、弧線の両端に短い線を配置してなる口角と、からなる構成を有しており、全体として人の笑顔を簡潔に表現したものである。
なお、口及び口角を表す線が他の部分よりも著しく太い線で描かれていることにより、口及び口角が強調された構成となっている。
本件商標と引用商標15とを比較すると、円形輪郭内に目、口、口角といった構成要素が配置されている点では共通するものの、本件商標においてニット帽が商標全体の半分近くを占める大きな特徴となっているのに対し、引用商標15ではニット帽が描かれていない点で著しく異なっている。また、引用商標15は、円形の輪郭が下方で切断されていることにより不完全な印象を与えるものとなっている点でも本件商標と異なっている。さらに、目、口、口角といった要素も、その大きさ、形状、位置が両商標では異なっており、全体として生じる表情の印象も異なる。これらの差異点により、両商標が外観において混同を生じる可能性は低い。
(17)本件商標と引用商標16との対比について
引用商標16は、円形の輪郭内に二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置してなる目と、その下方に両端上がりの弧線を配置してなる口と、弧線の両端に短い線を配置してなるロ角と、からなる図形と、円形の輪郭の下部に重ねるようにして配された「HARVEY BALL」の文字と、からなる構成を有しており、図形部分は、全体として人の笑顔を簡潔に表現したものである。
本件商標と引用商標16とを比較すると、円形輪郭内に目、口、口角といった構成要素が配置されている点では共通するものの、本件商標においてニット帽が商標全体の半分近くを占める大きな特徴となっているのに対し、引用商標16ではニット帽が描かれていない点で著しく異なっている。また、引用商標16では、円形の輪郭の下部に「HARVEY BALL」の文字が重ねられていることにより、これらの文字と図形とが一体的に構成されている点が特徴となっており、この点でも本件商標とは異なっている。さらに、目、口、口角といった要素も、その大きさ、形状、位置が両商標では異なっており、全体として生じる表情の印象も異なる。これらの差異点により、両商標が外観において混同を生じる可能性は低い。
(18)本件商標と引用商標17との対比について
引用商標17は、円形の輪郭内に二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置してなる目と、その下方に両端上がりの弧線を配置してなる口と、弧線の両端に短い線を配置してなるロ角と、からなる図形と、円形の輪郭の上部に重ねるようにして配置された「SMILEY」の文字と、からなる構成を有しており、図形部分は、全体として人の笑顔を簡潔に表現したものである。なお、口及び口角を表す線が他の部分よりも著しく太い線で描かれていることにより、口及び口角が強調された構成となっている。
本件商標と引用商標17とを比較すると、円形輪郭内に目、口、口角といった構成要素が配置されている点では共通するものの、本件登録商標においてニット帽が商標全体の半分近くを占める大きな特徴となっているのに対し、引用商標17ではニット帽が描かれていない点で著しく異なっている。また、引用商標17では、円形の輪郭の上部に「SMILEY」の文字が重ねられており、これらの文字の最下部が円形の輪郭に沿って弧を描くように配置されていることにより、これらの文字と図形とが一体的に構成されている点が特徴となっており、この点でも本件商標とは異なっている。さらに、目、口、ロ角といった要素も、その大きさ、形状、位置が両商標では異なっており、全体として生じる表情の印象も異なる。これらの差異点により、両商標が外観において混同を生じる可能性は低い。
(19)本件商標と引用商標18との対比について
引用商標18は、円形の輪郭内に二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置してなる目と、その下方に左端部に三角形の図形を有する両端上がりの弧線を配置してなる口とからなる構成を有しており、全体として人の笑顔を簡潔に表現したものである。
本件商標と引用商標18とを比較すると、円形輪郭内に目、口といった構成要素が配置されている点では共通するものの、本件登録商標においてニット帽が商標全体の半分近くを占める大きな特徴となっているのに対し、引用商標18ではニット帽が描かれていない点で著しく異なっている。さらに、引用商標18では、目を表す楕円図形が本件登録商標と比べて著しく大きく描かれている。また、引用商標18では、口を表す弧線の左端部に三角形の図形が組み合わされており、三角形の図形が口角を表しているように見えると同時に、矢印の図形で口を表現しているようにも見え、外観に特徴を与えている点でも本件商標とは異なっている。
加えて、両商標では口の形状や口角の有無においても異なっており、全体として生じる表情の印象は著しく異なる。これらの差異点により、両商標が外観において混同を生じる可能性は低い。
(20)本件商標と引用商標19との対比について
引用商標19は、円形の輪郭内に二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置してなる目と、その下方に両端上がりの弧線を配置してなる口と、弧線の両端に短い弧線を配置してなる口角からなる構成を有しており、全体として人の笑顔を簡潔に表現したものである。目を表す楕円図形内には、それぞれ二本の平行な白色の縦線が描かれている。
本件商標と引用商標19とを比較すると、円形輪郭内に目、口、口角といった構成要素が配置されている点では共通するものの、本件登録商標においてニット帽が商標全体の半分近くを占める大きな特徴となっているのに対し、引用商標19ではニット帽が描かれていない点で著しく異なっている。また、引用商標19では、目の形状がより円に近い楕円形で表されており、その内部には二本の平行な縦線が描かれているという独特な構成となっている。
加えて、両商標では口や口角の形状及び位置が大きく異なっており、全体として生じる表情の印象は著しく異なる。これらの差異点により、両商標が外観において混同を生じる可能性は低い。
(21)本件商標と引用商標20との対比について
引用商標20は、円形の輪郭内に二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置してなる目と、その下方に両端上がりの弧線を配置してなる口と、弧線の両端に短い線を配置してなるロ角と、からなる図形と、この図形の左下方に配された、直径が3分の1程度の小さな手書きの円形の輪郭内に、二つの不揃いな形状の小さな図形により表された目と、その下方に右側がより上方まで伸びた両端上がりの不均一な弧線を配置してなる口と、弧線の右側の端部に短い線を配置してなる口角と、からなる図形と、からなる構成を有しており、全体として、大小二つの人の笑顔を簡潔に表現したものである。なお、大きい方の図形においては、口及び口角を表す線が他の部分よりも著しく太い線で描かれていることにより、口及び口角が強調された構成となっている。
本件商標と引用商標20を構成する二つの図形部分のそれぞれとを比較すると、円形輪郭内に目、口、口角といった構成要素が配置されている点では共通するものの、本件商標においてニット帽が商標全体の半分近くを占める大きな特徴となっているのに対し、引用商標20では、いずれの図形部分においてもニット帽が描かれていない点で著しく異なっている。さらに、目、口、口角といった要素も、その大きさ、形状、位置が両商標では異なっており、全体として生じる表情の印象も異なる。
加えて、引用商標20では、大小二つの図形部分が組み合わされていること自体にも特徴があるというべきであり、こうした構成は本件登録商標とは著しく異なるものである。これらの差異点により、両商標が外観において混同を生じる可能性は低い。
そして、本件商標は、本件引用商標のいずれに対しても、称呼において混同を生じる可能性はなく、また、本件商標と本件引用商標とが「笑顔」という大きなくくりにおいて共通するとしても、それをもって両商標が観念上類似するとみるのは妥当ではない。
(22)小活
以上のとおり、本件商標と本件引用商標とは、外観、称呼、観念において相紛れるおそれのない非類似の商標であり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではないことが明らかである。
3 人の表情を表した図形による商標の類否判断について
現在、人の表情を目及び口のみで表現するシンプルな構成による商標は、様々な出願人によって多数出願されており、たとえ先行登録商標との相違点が小さなものであっても、それが全体の印象に与える影響が大きいと判断され、登録となっている例が多数存在している。
例えば、登録第4952253号商標(乙1)は、2005年1月7日に出願されたものであるが、当該出願日よりも以前に、次のような類似の指定商品・役務を指定する他人の登録商標が存在していたにも関わらず、登録を受けることができている。
登録第2154392号(乙2)、登録第4665592号(乙3)、登録第4665594号(乙4)、登録第4696061号(乙5)、登録第4724155号(乙6)、 登録第4725686号(乙7)、登録第4725687号(乙8)
また、本件審判の請求人が保有する登録第5929664号商標(乙9)は、2016年9月27日に出願されたものであるが、当該出願日よりも以前に、類似の指定商品・役務を指定する他人の登録商標(登録第4952253号 乙10)が存在していたにも関わらず、登録となっている。
なお、登録第5929664号商標に対しては、その登録時に登録第4952253号の存在を理由とした異議申立てがなされたが、当該異議申立てにおいても登録維持の決定がなされている。
これらの例にも示されるように、人の表情を目及び口のみで表現するシンプルな構成による商標の類否判断においては、比較的細かな部分の相違点(例えば、輪郭線の太さ、目及び口の形状及び位置、顔を表す要素以外の要素(例えば翼など)の有無など)であっても、それが全体の印象に与える影響は大きいと判断され、外観上非類似との判断がなされてきている。
すなわち、この種の商標では、そのシンプルな構成故に、小さな差異点であっても際立った特徴となることが珍しくない。
以上より、本件商標の類否判断においても、先行する登録商標との明らかな差異点は、本件商標を他の商標と区別する際立った特徴となるものであり、決して過小評価されるべきではない。
4 請求人の商標登録出願における審査官の判断について
請求人は、請求人自身の商標登録出願である商願2017-117098、商願2017-117101、商願2017-117099の審査において、これらの出願に係る商標に類似する商標として本件商標が引用された旨を述べている。
しかしながら、商標の類否についての判断は、当該商標の構成態様とその商品又は役務の取引の実情を考慮して、個別具体的に判断されるべきものであって、かつ、その判断時期は査定時又は審決時と解されるべきものであるから、未だ審査に係属中の出願における拒絶理由通知の内容を敷衍して本件商標の類否判断の基準とすることは適当ではないことはいうまでもない。
5 結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではないから、同法第46条第1項に規定する無効理由には該当しない。

第5 当審の判断
1 本件審判の請求の利益について
本件審判請求に関し、利害関係については当事者間に争いがなく、当合議体も、請求人は本件審判の請求適格を有するものと判断するので、本案に入って審理する。
2 本件商標と本件引用商標の類否について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、全体が卵形の不規則な楕円状の輪郭で、中央付近の二本の曲線により、上下に区切られた図形からなるものである。そして、2本の曲線の間には5本の垂線が表され、下方の円形の輪郭内のやや上方、中央寄りに二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置し、その下に円輪郭に沿って、両端上がりで、両端に短い線を有する弧線を配置してなるところ、その構成中の上部は、「折り返し部分を有する帽子」と視認されるものであり、構成中の下部について、二つの黒塗りの縦長楕円形は、人の「目」を表し、また、両端上がりで、両端に短い線を有する弧線は、人の「口」及び「口角」を表していると理解させることから、本件商標の構成中の「下方の円形の輪郭」並びにその内側に配置された「二つの黒塗りの縦長楕円形」及び「両端上がりで、両端に短い線を有する弧線」は、「人の笑顔を簡潔に表現した図形」であると認識され得る。
そうすると、本件商標は、構成全体として「折り返し部分を有する帽子を被った人の笑顔を表現した図形」を表すものと認識されると見るのが自然である。
また、本件商標は、特定の人物や物品等を表現する図形とは認められず、かつ、著名なキャラクター等を表現する図形とも認められないため、本件商標は、特定の称呼や観念は生じない。
(2)本件引用商標について
ア 引用商標1
引用商標1は別掲2のとおり、円形の輪郭内のやや上方、中央寄りに二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置し、その下に円輪郭に沿って、両端上がりで、両端に短い線を有する弧線を配置してなる図形からなり、構成全体として「人の笑顔を簡潔に表現した図形」と認識させるものである。
なお、引用商標1は、特定の人物や物品等を表現する図形とは認められず、かつ、著名なキャラクター等を表現する図形とも認められないため、特定の称呼や観念は生じない。
イ 引用商標2について
引用商標2は、別掲3のとおり、両端下がりで横書きされた「LOVE EARTH」の欧文字とその下に、円形の輪郭内のやや上方、中央寄りに二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置し、その下に円輪郭に沿って、両端上がりで、両端に短い線を有する弧線を配置してなる図形からなり、構成中の図形部分は、「人の笑顔を簡潔に表現した図形」と認識させるものである。
そして、構成中の「LOVE EARTH」の欧文字部分は、前記図形の上部に横書きされ、その大きさも円輪郭に比して小さなものであり、格別特徴的な書体というものでもない。そうすると、引用商標2は、その主要部分を占める前記図形部分が看者に対して強い印象を与えるものであって、文字部分と図形部分とを分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分一体的に結合しているとはいえないことから、類否判断において、当該図形部分を要部として取り出して他の商標と比較することが許されるものである。
そして、引用商標2の図形部分は、特定の人物や物品等を表現する図形とは認められず、かつ、著名なキャラクター等を表現する図形とも認められないため、特定の称呼や観念は生じない。
ウ 引用商標3について
引用商標3は、別掲4のとおり、円形の輪郭内のやや上方、中央寄りに二つの黒塗りの縦長楕円形(中に白い小さな点を配してなる。)を左右に配置し、その下に円輪郭に沿って、両端上がりで、両端に短い線を有する弧線を配置してなる図形からなり、構成全体として「人の笑顔を簡潔に表現した図形」と認識させるものである。
なお、引用商標3は、特定の人物や物品等を表現する図形とは認められず、かつ、著名なキャラクター等を表現する図形とも認められないため、特定の称呼や観念は生じない。
エ 引用商標4について
引用商標4は、別掲5のとおり、円形の輪郭内のやや上方、中央寄りに二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置し、その下に円輪郭に沿って、両端上がりで、両端に短い線を有する弧線を配置してなる図形からなり、構成全体として「人の笑顔を簡潔に表現した図形」と認識させるものである。
なお、引用商標4は、特定の人物や物品等を表現する図形とは認められず、かつ、著名なキャラクター等を表現する図形とも認められないため、特定の称呼や観念は生じない。
オ 引用商標5について
引用商標5は、別掲6のとおり、円形の輪郭内のやや上方、中央寄りに二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置し、その下に円輪郭に沿って、両端上がりで、両端に短い線を有する弧線を配置してなる図形からなり、構成全体として「人の笑顔を簡潔に表現した図形」と認識させるものである。
なお、引用商標5は、特定の人物や物品等を表現する図形とは認められず、かつ、著名なキャラクター等を表現する図形とも認められないため、特定の称呼や観念は生じない。
カ 引用商標6について
引用商標6は、別掲7のとおり、円形の輪郭内のやや上方、中央寄りに二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置し、その下に円輪郭に沿って、両端上がりで、両端に短い線を有する弧線を配置してなる図形とその下に横書きされた「SMILEY」の欧文字からなるものである。
そして、引用商標6は、構成中の「SMILEY」の欧文字部分は、前記図形の下部に横書きされ、その大きさも円輪郭に比して小さなものであり、格別特徴的な書体というものでもない。そうすると、引用商標6は、その主要部分を占める前記図形部分が看者に対して強い印象を与えるものであって、文字部分と図形部分とを分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分一体的に結合しているとはいえないことから、類否判断において、当該図形部分を要部として取り出して他の商標と比較することが許されるものである。
そして、引用商標6の図形部分は、特定の人物や物品等を表現する図形とは認められず、かつ、著名なキャラクター等を表現する図形とも認められないため、特定の称呼や観念は生じない。
キ 引用商標7について
引用商標7は、別掲8のとおり、円形の輪郭内のやや上方、中央寄りに二本の縦線を左右に配置し、その下に円輪郭に沿って、両端上がりの弧線を配置してなる図形からなり、構成全体として「人の笑顔を簡潔に表現した図形」と認識させるものである。
なお、引用商標7は、特定の人物や物品等を表現する図形とは認められず、かつ、著名なキャラクター等を表現する図形とも認められないため、特定の称呼や観念は生じない。
ク 引用商標8について
引用商標8は、別掲9のとおり、円形の輪郭内のやや上方、中央寄りに二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置し、その下に円輪郭に沿って、両端上がりの三日月型図形を配置してなるものであり、構成全体として「人の笑顔を簡潔に表現した図形」と認識させるものである。
なお、引用商標8は、特定の人物や物品等を表現する図形とは認められず、かつ、著名なキャラクター等を表現する図形とも認められないため、特定の称呼や観念は生じない。
ケ 引用商標9について
引用商標9は、別掲10のとおり、円形の輪郭内のやや上方、中央寄りに上端部に4本の短い線を放射状に描いた二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置し、その下に円輪郭に沿って、両端上がりで、両端に短い線を有する弧線を配置してなる図形からなるところ、人の目に該当する二つの黒塗りの縦長楕円形の上端部に、4本の短い線を放射状に描いており、これが、まつ毛又はつけまつ毛を描いた印象を与えるため、構成全体として「人の笑顔を簡潔に表現した図形」、特に、「まつ毛が特徴的な人の笑顔を簡潔に表現した図形」と認識させる。
なお、引用商標9は、特定の人物や物品等を表現する図形とは認められず、かつ、著名なキャラクター等を表現する図形とも認められないため、特定の称呼や観念は生じない。
コ 引用商標10について
引用商標10は、別掲11のとおり、全体を手書き風で描かれており、不均一な円形の輪郭内のやや上方、中央寄りに、左右で大きさの異なる楕円形状図形を横並びに配置し、その下に不均一な円輪郭に沿って、両端に短い線を有し、右側が左側に比べてより上方まで伸びた不均一な弧線を配置してなる図形からなるものであり、構成全体として「人の笑顔を簡潔に表現した図形」と認識させるものである。
なお、引用商標10は、特定の人物や物品等を表現する図形とは認められず、かつ、著名なキャラクター等を表現する図形とも認められないため、特定の称呼や観念は生じない。
サ 引用商標11について
引用商標11は、別掲12のとおり、円形の輪郭内のやや上方、中央寄りに二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置し、その下に円輪郭に沿って、両端上がりの三日月型図形を配置してなるものであり、構成全体として「人の笑顔を簡潔に表現した図形」と認識させるものである。
なお、引用商標11は、特定の人物や物品等を表現する図形とは認められず、かつ、著名なキャラクター等を表現する図形とも認められないため、特定の称呼や観念は生じない。
シ 引用商標12について
引用商標12は、別掲13のとおり、円形の輪郭内のやや上方、中央寄りにやや小さな二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置し、その下に円輪郭に沿って、両端上がりの三日月型図形を配置してなるものであり、構成全体として「人の笑顔を簡潔に表現した図形」と認識させるものである。
なお、引用商標12は、特定の人物や物品等を表現する図形とは認められず、かつ、著名なキャラクター等を表現する図形とも認められないため、特定の称呼や観念は生じない。
ス 引用商標13について
引用商標13は、別掲14のとおり、円形の輪郭内のやや上方、右寄りに二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置し、その下に円輪郭に沿って、両端上がりの三日月型図形を配置してなるものであり、構成全体として「人の笑顔を簡潔に表現した図形」と認識させるものである。
なお、引用商標13は、特定の人物や物品等を表現する図形とは認められず、かつ、著名なキャラクター等を表現する図形とも認められないため、特定の称呼や観念は生じない。
セ 引用商標14について
引用商標14は、別掲15のとおり、円形の輪郭内のやや上方、中央寄りに上端部に1本の短い線を描いた二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置し、その下に円輪郭に沿って、両端上がりで、両端に短い線を有する弧線を配置してなる図形からなるところ、構成全体として「人の笑顔を簡潔に表現した図形」と認識させるものである。
なお、引用商標14は、特定の人物や物品等を表現する図形とは認められず、かつ、著名なキャラクター等を表現する図形とも認められないため、特定の称呼や観念は生じない。
ソ 引用商標15について
引用商標15は、別掲16のとおり、中央下に3分の1程切れている円弧内のやや上方、中央寄りに二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置し、その下に、両端上がりで、両端に短い線を有する弧線を配置してなる図形からなり、構成全体として「人の笑顔を簡潔に表現した図形」と認識させるものである。
なお、引用商標15は、特定の人物や物品等を表現する図形とは認められず、かつ、著名なキャラクター等を表現する図形とも認められないため、特定の称呼や観念は生じない。
タ 引用商標16について
引用商標16は、別掲17のとおり、中央下に3分の1程切れている円輪郭内のやや上方、中央寄りに二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置し、その下に、両端上がりで、両端に短い線を有する弧線を配置してなる図形と中央下の切れた円輪郭部分を埋めるように横書きされた「HARVEY BALL」の文字からなり、図形部分は「人の笑顔を簡潔に表現した図形」と認識させるものである。
そして、引用商標16は、構成中の「HARVEY BALL」の欧文字部分が、前記図形の切れている円輪郭部分に横書きされ、その大きさも円輪郭に比して小さなものであり、格別特徴的な書体というものでもない。そうすると、引用商標16は、その主要部分を占める前記図形部分が看者に対して強い印象を与えるものであって、文字部分と図形部分とを分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分一体的に結合しているとはいえないことから、類否判断において、当該図形部分を要部として取り出して他の商標と比較することが許されるものである。
そして、引用商標16の図形部分は、特定の人物や物品等を表現する図形とは認められず、かつ、著名なキャラクター等を表現する図形とも認められないため、特定の称呼や観念は生じない。
チ 引用商標17について
引用商標17は、別掲18のとおり、中央上に5分の1程切れた円輪郭内のやや上方、中央寄りに二つの黒塗りの縦長楕円形を左右に配置し、その下に円輪郭に沿って、両端上がりで、両端に短い線を有する弧線を配置してなる図形と中央上の切れた円輪郭部分に沿うように横書きされた「SMILEY」の文字からなり、図形部分は「人の笑顔を簡潔に表現した図形」と認識させる。
そして、引用商標17は、構成中の「SMILEY」の欧文字部分が、前記図形の切れている円輪郭上部に沿って横書きされ、その大きさも円輪郭に比して小さなものであり、格別特徴的な書体というものでもない。そうすると、引用商標17は、その主要部分を占める前記図形部分も看者に対して強い印象を与えるものであって、文字部分と図形部分とを分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分一体的に結合しているとはいえないことから、類否判断において、当該図形部分を要部として取り出して他の商標と比較することが許されるものである。
そして、引用商標17の図形部分は、特定の人物や物品等を表現する図形とは認められず、かつ、著名なキャラクター等を表現する図形とも認められないため、特定の称呼や観念は生じない。
(3)本件商標と本件引用商標Aとの類否
本件商標と本件引用商標Aとは、両商標の構成要素である、目、口、顔の輪郭において、線の太さ、形状が相違し、目の形状及び配置、口の形状及び配置等が異なるものである。
さらに、本件商標には折り返し部分を有する帽子と思しき図形を配置してなるのに対し、本件引用商標Aには当該帽子と思しき図形がなく、この相違点は看者に与える印象の骨格を決定付ける図形要素の1つであり、看者に異なる印象、記憶を生じさせるものというべきである。
そうすると、本件商標からは、「折り返し部分を有する帽子を被った人の笑顔を簡潔に表現した図形」を、本件引用商標Aからは、「人の笑顔を簡潔に表現した図形」を認識させるものであり、折り返し部分を有する帽子と思しき図形の有無が全体の印象に与える影響は大きく、両商標に時と所を異にして接する場合であっても、全体としては外観上相紛れるおそれはない。
また、前記(1)及び(2)のとおり、本件商標と本件引用商標Aとは、特定の称呼及び観念を生じないことから、両者は称呼及び観念において比較できない。
以上から、本件商標と本件引用商標Aとは、称呼及び観念において比較できないとしても、外観において相紛れるおそれはないことから、非類似の商標である。
(4)本件商標と本件引用商標Bとの類否
本件引用商標Bは、前記(2)のとおり、「人の笑顔を簡潔に表現した図形」と欧文字部分からなるところ、本件商標と本件引用商標Bの要部である図形部分とは、折り返し部分を有する帽子と思しき図形の有無が全体の印象に与える影響は大きく、時と所を異にして接する場合であっても、両商標は外観上相紛れるおそれはない。
また、本件商標と本件引用商標Bの要部である図形部分からは、特定の称呼及び観念が生じないから、称呼及び観念において比較できない。
以上のことを総合して考察すると、本件商標と本件引用商標Bとは、その要部の比較において、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれはない。
その他、本件商標と引用商標Bとが類似する商標であるとする理由は、見いだせない。
(5)小括
したがって、本件商標と本件引用商標A及びBとは非類似の商標であるから、その指定商品における類否について判断するまでもなく、商標法第4条第1項第11号には該当しない。
他方、引用商標18ないし同20は、いずれも本件商標の出願日(平成28年3月10日)より後の出願(引用商標18及び19は出願日が平成29年5月17日、引用商標20は出願日が平成29年6月5日)であるから、商標の類否及びその指定商品における類否について判断するまでもなく、本件商標が商標法第4条第1項第11号該当するとの要件を欠くものである。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではなく、その登録は、同項の規定に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、無効にすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。



別掲1(本件商標)



別掲2(引用商標1)


別掲3(引用商標2)


別掲4(引用商標3)


別掲5(引用商標4)


別掲6(引用商標5)


別掲7(引用商標6)


別掲8(引用商標7)


別掲9(引用商標8)


別掲10(引用商標9)


別掲11(引用商標10)


別掲12(引用商標11)


別掲13(引用商標12)


別掲14(引用商標13)


別掲15(引用商標14)


別掲16(引用商標15)


別掲17(引用商標16)


別掲18(引用商標17)


別掲19(引用商標18)


別掲20(引用商標19)


別掲21(引用商標20)


別掲22(商標登録願2017年第117098号)
登録出願日:平成29年8月22日
出願人:有限会社ハーベイ・ボール・スマイル・リミテッド
商標

指定役務
第35類「織物及び寝具類(まくら・マットレスを除く)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,布製身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,清掃用具及び洗濯用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」

別掲23(商標登録願2017年第117101号)
登録出願日:平成29年8月22日
出願人:有限会社ハーベイ・ボール・スマイル・リミテッド
商標

指定役務
第35類「織物及び寝具類(まくら・マットレスを除く)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,布製身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,清掃用具及び洗濯用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」

別掲24(商標登録願2017年第117099号)
登録出願日:平成29年8月22日
出願人:有限会社ハーベイ・ボール・スマイル・リミテッド
商標

指定役務
第35類「織物及び寝具類(まくら・マットレスを除く)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,布製身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,清掃用具及び洗濯用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」
審理終結日 2019-12-20 
結審通知日 2019-12-24 
審決日 2020-02-20 
出願番号 商願2016-26287(T2016-26287) 
審決分類 T 1 11・ 4- Y (W1825)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 順子 
特許庁審判長 小出 浩子
特許庁審判官 木村 一弘
豊田 純一
登録日 2016-09-23 
登録番号 商標登録第5883912号(T5883912) 
代理人 三好 玲奈 
代理人 高岡 亮一 
代理人 會田 悠介 
代理人 小田 直 

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