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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W030535
審判 全部申立て  登録を維持 W030535
管理番号 1361745 
異議申立番号 異議2019-900184 
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-05-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-06-26 
確定日 2020-04-10 
異議申立件数
事件の表示 登録第6136288号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6136288号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6136288号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成30年1月12日に登録出願、第3類「育毛料(育毛効果のある頭髪用化粧品),化粧品,せっけん類」、第5類「育毛促進用薬剤,毛髪用剤,サプリメント」及び第35類「育毛料(育毛効果のある頭髪用化粧品)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,せっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,育毛促進用薬剤の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,薬剤(農薬に当たるものを除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定商品及び指定役務として、同31年3月14日に登録査定され、同年4月5日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりである(以下、それらをまとめて「引用商標」という。)。
1 申立人が引用商標として明示した商標
(1)登録第5393681号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 MONSTER ENERGY(標準文字)
指定商品 第32類「アルコール分を含まない飲料,清涼飲料,果実飲料」
登録出願日 平成22年7月8日
設定登録日 平成23年2月25日
(2)登録第5844119号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 MONSTER ENERGY(標準文字)
指定役務 第35類及び第41類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成27年1月30日
設定登録日 平成28年4月22日
(3)登録第6096929号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様 MONSTER ENERGY ULTRA(標準文字)
指定商品 第5類、第30類及び第32類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成29年10月16日
設定登録日 平成30年11月9日
(4)登録第5903396号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様 MONSTER REHAB
指定商品 第5類及び第30類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成28年3月14日
設定登録日 平成28年12月9日
2 申立人主張の全趣旨から、合議体が引用商標と認めたもの
(1)「MONSTER」の欧文字からなる商標(以下「引用商標5」という。)
(2)「モンスター」の片仮名からなる商標(以下「引用商標6」という。)

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第15号及び同項第7号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第387号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 引用商標の周知性について
(1)申立人の使用に係る商標と取扱い商品
申立人は、1930年代に創業した米国の飲料メーカーであり、創業以降、アルコールを含有しない飲料、すなわち、炭酸飲料、フルーツジュース、エネルギー補給用飲料等の様々な飲料製品の企画、開発、製造、マーケティング、販売の事業に従事していたが、2015年(平成27年)6月からはエネルギー補給飲料(エナジードリンク)の事業に注力している(甲2、甲58)。
申立人の使用に係る「MONSTER」は、申立人が2002年(平成14年)に創設したエナジードリンク(エネルギー補給飲料)事業のブランド「MONSTER ENERGY」の基軸商標として2002年(平成14年)から現在に至るまでの長年にわたり継続して使用されているものであり、同ブランドのエナジードリンクは、2002年(平成14年)に米国で最初に販売を開始後、日本では2012年(平成24年)5月から販売を開始し、現在では日本を含む世界130以上の国及び地域で販売中である。申立人は2002年(平成14年)以降、現在まで継続して、当該ブランドから発売された数多くの異なる種類のドリンクの個別商品名のすべてに「MONSTER」の文字を採択しており、当該各種ドリンクの缶の正面に「MONSTER」の文字を特徴的なデザインの太字を用いて大きく目立つ態様で表示して使用している。このように「MONSTER」を基調とする商標を用いた申立人のエナジードリンク事業の成功は、経済界でも高い評価を受けている(甲2?甲33、甲51?甲58)。
2012年(平成24年)5月から現在までに国内発売された「MONSTER」の文字が付されたエナジードリンクのシリーズは、「MONSTER ENERGY」、「MONSTER KHAOS」、「MONSTER ABSOLUTELY ZERO」、「MONSTER ENERGY M3」、「MONSTER COFFEE」、「MONSTER ENERGY ULTRA」、「MONSTER ENERGY THE DOCTOR」、「MONSTER CUBA LIBRE」、「MONSTER PIPELINE PUNCH」である(甲5?甲7、甲10、甲12?甲15、甲59?甲62、甲101?甲103、甲118、甲127?甲131、甲252?甲264、甲274、甲291、甲323?甲326、甲353?甲360ほか)。
(2)広告及び販売促進活動
申立人による当該エナジードリンクの広告及び販売促進活動は、世界の有名アスリート、レーシングチーム、スポーツ競技会、アマチュアスポーツ選手、音楽祭及びミュージシャンに対するスポンサー提供、スポーツ、音楽、コンピュータゲーム(eスポーツ)などの娯楽イベントの開催、米国ラスベガスの公共交通機関モノレールの「モンスター列車」の走行、これらのイベント開催などと関連して頻繁に実施されるエナジードリンク販売キャンペーン、各イベント会場におけるサンプリング(サンプル配布)、販売プロモーションキャンペーンの応募当選者に対する様々な「モンスター限定グッズ」の提供、「MONSTER」の文字を付したポスター・商品ネームプレート・チラシ・陳列棚・冷蔵庫などの店舗用什器の使用及び展示などを行っているほか、新商品発売・懸賞キャンペーン・イベント開催情報などを掲載したプレスリリース、申立人ウェブサイト及びソーシャルメディアを通じ、2002年(平成14年)から現在まで世界規模で継続的に実施されている。これらの広告物及び販売促進物には、「MONSTER」及びその音訳「モンスター」の文字が独立の商品出所識別標識として認識される態様で使用されてきた(甲7?甲17、甲34?甲91、甲101?甲133、甲136?甲168、甲225?甲274、甲279?甲296、甲323、甲324、甲335?甲352、別紙2)。
(3)ライセンスによる引用商標の使用
申立人は、2002年(平成14年)から、ブレスレット、ラペルピン、キーホルダー、Tシャツ、スウェットシャツ、帽子、レーシングジャケット、手袋などのアパレル製品、運動用ヘルメット、バッグ類、ステッカー、傘、ビデオゲームなどの「MONSTER」ライセンス商品の製造販売を第三者に使用許諾している。当該ライセンス商品のカタログやオンラインショッピングサイトは、ブランド名及び個別商品名として「MONSTER」「Monster」の文字を単独で表示し、販売及び宣伝広告している。これらのライセンス商品は、国内の実店舗のほか、オンラインショップや通信販売を介して国内の一般消費者にも販売されている(甲47、甲48、甲58、甲92?甲100、甲134、甲135)。
これらのライセンス商品の人気の高さに便乗して、海外で製造された模倣品が日本の税関で輸入差止される事案が遅くとも平成25年7月から現在に至るまで継続して度々発生している(甲169?甲224、別紙1)。
(4)世界における商標出願及び登録
申立人は、エナジードリンク等の飲料製品及び上記ライセンス商品等について、引用商標をはじめ、「MONSTER」の文字を基調とする様々な構成の商標について日本を含む世界150を超える国及び地域で商標出願し、登録を取得している(甲58、甲361?甲385)。
(5)申立人の「MONSTER」エナジードリンクの国内市場占有率など
第三者による市場調査報告書やエナジードリンクの市場に関する記述によれば、2013年(平成25年)時点で申立人の「MONSTER」エナジードリンクの国内市場占有率は既に25%を超えており、それ以降も着実に売上げを伸ばし、男子若年層を中心とした従来の主要需要者層に止まらず、女性層にも知名度、人気を拡大している。また、実際の市場で申立人の「MONSTER」エナジードリンクは「モンスター」と呼ばれ、「モンスター」の表記で認知されている(甲311?甲322)。
(6)小括
以上の事柄に照らせば、「MONSTER」及びその表音「モンスター」は、本件商標の登録出願時及び査定時には、申立人の業務に係る商品及び役務、とりわけ商品「エナジードリンク」の出所識別標識として国内外の取引者、需要者の間で広く認識されていたことが明らかである。
2 商標法第4条第1項第15号該当性
(1)本件商標は、図案化された英文字で「MONSTAR HAiR」と横書きしてなるものであり、視覚上、「MONSTAR」と「HAiR」の2語に分離している。また、「MONSTAR HAiR」の構成文字全体は、辞書等に掲載されている成語に当たるものでもなく、何ら既成の熟語的観念を生じるものではないから、これらを常に一体不可分のものとして把握すべき理由もない。
そして、「HAiR」の文字部分は、その表音「ヘア」が「髪、髪の毛」等を意味する外来語「ヘア(hair)」として親しまれている(甲386、甲387)から、「HAiR」の文字を本件商標の指定商品及び指定役務(以下「本件指定商品等」という。)に使用する場合は、当該商品又は当該役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物の用途、効能が「毛髪用、頭髪用」のものであるという品質又は質を表示するものとして看取されるに止まり、自他商品役務の識別標識として機能し得ない。仮に何らかの自他商品役務の識別力が「HAiR」の文字部分に認められることがあるとしても、その出所識別力の程度は「MONSTAR」の文字部分と比べて極めて弱いことは明白である。
したがって、本件商標の構成においては、語頭の「MONSTAR」の文字部分が商品役務の出所識別標識として強く支配的な印象を取引者、需要者に与える。
当該「MONSTAR」の文字部分は、申立人の使用に係る「MONSTER」と「モンスター」の称呼が完全に一致し、また、構成文字全7文字中の6文字がその配列も含めて共通するから外観も酷似し、「MONSTER」と誤認、混同される可能性が極めて高い。
よって、本件商標は、申立人の使用に係る商標「MONSTER」と類似性の程度が極めて高いことが明らかである。
(2)本件指定商品等は、申立人の主要取扱い商品であるエナジードリンクとその製造部門、原材料、使用目的、効能、販売場所、需要者の範囲等において一致ないし重複する第5類「サプリメント」及び第35類「薬剤の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」といった商品及び役務を包含している。本件指定商品等の最終的な需要者は一般消費者であるから、通常の需要者の注意力の程度は高いものとはいえない。
(3)上記のとおり、本件商標の登録出願時及び査定時には、「MONSTER」は申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして取引者、需要者の間で広く認識されていた。
(4)したがって、本件商標が本件指定商品等に使用された場合、これに接した取引者、需要者は、申立人の使用に係る商標「MONSTER」及び申立人を想起連想し、当該商品が申立人又は申立人と経済的又は組織的関係を有する者(例えば、申立人の商標を使用許諾されたライセンシー)の取り扱いに係るものであると誤信し、その出所について混同を生じるおそれが高い。
さらに、本件商標の使用は、申立人の商品及び役務の出所識別標識として広く認識されている「MONSTER」の出所識別力希釈化するものであり、その名声、顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第7号該当性
本件商標は、社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神並びに国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査(インターネット情報、新聞記事情報など)によれば、次のとおりである。
ア 申立人は、米国の飲料メーカーであって、我が国においてはアサヒ飲料株式会社を通じて2012年(平成24年)5月にエナジードリンク「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)」及び「MONSTER KHAOS(モンスターカオス)」の販売を開始し、その販売量は同年9月には累計100万箱を超え、12月には累計157万箱となった(甲7?甲9)。
イ 申立人は、我が国において2013年(平成25年)5月に「MONSTER ENERGY ABSOLUTELY ZERO(モンスターアブソリュートリーゼロ)」(甲10)、2014年(平成26年)8月に「MONSTER ENERGY M3(モンスターエナジー M3)」(甲59)、同年10月に「MONSTER COFFEE(モンスターコーヒー)」(甲60)、2015年(平成27年)7月に「MONSTER ENERGY ULTRA(モンスターウルトラ)」(甲101)、2017年(平成29年)6月に「MONSTER ENERGY THE DOCTOR(モンスターロッシ)」(甲257)、2018年(平成30年)4月に「MONSTER CUBA-LIBRE(モンスターキューバリブレ)」(甲323、甲324)、2019年(平成31年)4月に「MONSTER ENERGY PIPELINE PUNCH(モンスターパイプラインパンチ)」(甲357?甲360)の販売を開始した(以下、これら商品と上記アの商品をまとめて「申立人商品」という。)。
ウ 申立人商品のうち、「MONSTER ENERGY」、「MONSTER KHAOS」(2016年(平成28年)5月から)、「MONSTER ENERGY ABSOLUTELY ZERO」、「MONSTER ENERGY M3」、「MONSTER ENERGY ULTRA」、「MONSTER ENERGY THE DOCTOR」及び「MONSTER ENERGY PIPELINE PUNCH」の容器には、その中央に別掲2のとおりの商標(色彩が異なるものを含む。以下「別掲2商標」という。)が表示されている(甲7、甲10、甲59、甲101、甲130、甲257?甲263、甲357ほか)。
また、「MONSTER COFFEE」の容器にはその中央に別掲2商標の上段のデザイン化された「MONSTER」の文字部分(以下「MONSTERロゴ」という。)と「COFFEE+ENERGY」の文字が2段に表示され、「MONSTER CUBA-LIBRE」の容器には、「MONSTERロゴ」が表示されている(甲60、甲324ほか)。
エ 申立人は、我が国で開催される各種のスポーツ競技会、イベントにおいて、看板、ユニフォーム、車体など多種多様なものに、別掲2商標を表示している(甲73?甲80、甲82ほか)。
オ 我が国において、別掲2商標が表示されたステッカー、衣類、帽子、ヘルメットなどが販売されている(甲47、甲48、甲98ほか)。
カ 平成25年7月以降、我が国の税関において、申立人の商標(国際登録第1048069号など)に係る商標権を侵害する疑いがある貨物(帽子、ショートパンツ、Tシャツなど)が多数発見されている(甲169?甲224)。
キ JMR生活総合研究所による消費者調査 No.196「エナジードリンク(2014年(平成26年)7月版)」によれば、ブランド認知率の1位は「レッドブル・エナジードリンク」で45%、2位が「モンスターエナジー」で31%であった(甲311)。また、同消費者調査 No.232「エナジードリンク(2016年(平成28年)8月版)」でも、ブランド認知率の1位は「レッドブル・エナジードリンク」であり、2位は「モンスターエナジー」であったと推認できる(甲312)。
ク 飲料総研の調査によれば、我が国における2013年(平成25年)のエナジードリンクの出荷数は約950万ケース(1ケース30本換算)であり、首位のレッドブルが550万ケース、2位のモンスターエナジーは240万ケースであった(甲317、甲318、甲320)。
ケ ジャストシステムによるエナジードリンクに関する調査(2014年(平成26年)4月)によれば、認知度が高い商品の1位は82.8%の「RedBull」、2位は47.6%の「MONSTER ENERGY」であった(甲319)。
コ JMR生活総合研究所による消費者調査データ No.269「エナジードリンク(2018年(平成30年)5月版)」には、「モンスター、レッドブル、リアルゴールド 寡占化すすむエナジードリンク市場」のタイトルのもと、「今回の調査では、『リアルゴールド(日本・コカコーラ)』『レッドブル・エナジードリンク(レッドブル・ジャパン)・・・』『モンスターエナジー(アサヒ飲料)』の3ブランドがほとんどの項目で上位3位を独占した。」の記載がある。
(職権調査:https://www.jmrlsi.co.jp/trend/mranking/02-drink/mranking269.html)
また、同消費者調査データ No.293「エナジードリンク(2019年(令和元年)5月版)」には、「リアルゴールド、レッドブル、モンスターエナジー。3強上位独占」のタイトルのもと、「エナジードリンクの市場は、2桁の伸びの後に、2016年(平成28年)は対前年比5%増、2017年(平成29年)は同じく8%増とやや落ち着いたものの、依然として成長を続けている。」の記載がある。
(職権調査:https://www.jmrlsi.co.jp/trend/mranking/02-drink/mranking293.html)
サ 申立人及びアサヒ飲料株式会社は、本件商標の登録出願の日前から、申立人商品のキャンペーンに係るニュースリリース、ポスターなどで申立人商品を「モンスター」と表示しているものが見受けられ、また、両社以外のウェブページにおける当該キャンペーンについてのポスターやその他の記事においても「MONSTER」及び「モンスター」の文字が表示されているところ、当該ニュースリリース、ポスター、ウェブサイト等には、申立人商品の画像又は別掲2商標若しくは「モンスターエナジー」の文字が同時に表示又は掲載されている(甲69、甲71、甲79、甲101?甲103、甲111、甲113、甲115、甲118、甲119、甲124ほか)。
(2)上記(1)のとおり、申立人は、我が国において、2012年(平成24年)5月からエナジードリンク「MONSTER ENERGY」及び「MONSTER KHAOS」の販売を開始し、その後現在まで、計9種の申立人商品を販売するとともに、各種のスポーツ競技会、イベント及びキャンペーンなどを通じ、申立人商品の広告宣伝を行っていたこと、2013年(平成25年)のエナジードリンクの出荷数約950万ケースのうち、申立人商品の出荷数は240万ケースで第2位であったこと、申立人商品の認知度が2014年(平成26年)において、その数値は31%と47.6%と差異はあるものの、いずれの調査でも第2位であったことが認められ、2016年(平成28年)の認知度はその数値は不明であるものの2位であったと推認できることに加え、2018年(平成30年)及び2019年(令和元年)の調査において、いずれも申立人商品はエナジードリンクで3強の一つとされ、また、エナジードリンクの市場は2017年(平成29年)において成長を続けているとされていることを併せみれば、申立人商品は、本件商標の登録出願の日(平成30年1月12日)前から、登録査定日(同31年3月14日)はもとより現在においても継続して、我が国のエナジードリンクの需要者の間に広く認識されているものと判断するのが相当である。
そして、申立人商品は、そのほとんどの容器の中央に「MONSTER ENERGY」の文字が別掲2のとおりの態様で表示されていること、及びニュースリリース、各種記事などにおいて「MONSTER ENERGY」「モンスターエナジー」と表示され、「モンスターエナジー」と称されていることから、「MONSTER ENERGY」及び「モンスターエナジー」の文字は、いずれも本件商標の登録出願の日前から、登録査定日はもとより現在においても継続して、申立人及びアサヒ飲料株式会社の業務に係る商品(エナジードリンク)を表示するものとして、エナジードリンクの需要者の間に広く認識されているものといえる。
そうすると、「MONSTER ENERGY」の文字からなり、指定商品中に「エナジードリンク」を含む引用商標1は、申立人商品(エナジードリンク)を表示するものとして、エナジードリンクの需要者の間においては、広く認識されているものというべきである。
しかしながら、申立人商品の広告宣伝は、各種のスポーツ競技会、イベント及びキャンペーンなどを通じて行われているものの、老若男女を問わず幅広い需要者層が目にする機会の多い一般的なメディアを通じたものとはいえないばかりか、我が国における申立人商品の清涼飲料に対する市場占有率等も確認することができないこと等を総合的に判断すると、申立人商品及び引用商標1は、幅広い需要者層を有する一般的な清涼飲料の分野においてまでも、取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたとまでは認めることができない。
また、申立人商品は、その容器に「MONSTER」及び「ENERGY」の各文字が比較的近接して表示されているものがほとんどであり、MONSTERロゴのみが表示されている商品である「MONSTER CUBA-LIBRE」についての出荷数、シェア等の販売実績は確認できない。
そして、「MONSTER」の文字及び「モンスター」の文字は、ニュースリリース、ポスター、ウェブサイト等において、申立人又は申立人商品の略称として表示または掲載が見受けられるものの、常に申立人商品又は「モンスターエナジー」若しくは別掲2商標の文字と同時に表示または掲載されている。
そうであれば、当該ニュースリリース、ポスター、ウェブサイト等に接する需要者は、そこに表示または掲載された「MONSTER」の文字及び「モンスター」の文字について、申立人商品(モンスターエナジー)に係るニュースリリース、ポスター、ウェブサイト等に使用されていることを前提として、申立人商品(モンスターエナジー)を指称する文字であるということを認識するのが相当である。
そうすると、申立人商品又は「モンスターエナジー」の文字若しくは別掲2商標と関連なく表示されている「MONSTER」の文字及び「モンスター」の文字までもが、需要者において申立人商品を表示するものと理解されるとはいい難い。
したがって、「MONSTER」の文字からなる引用商標5及び「モンスター」の文字からなる引用商標6は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
また、引用商標2ないし引用商標4は、いずれもそれらが使用された指定商品及び指定役務についての販売実績及び取引実績が確認できないから、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)申立人は、本件商標は引用商標5「MONSTER」との関係で出所の混同を生じるおそれがある旨主張していると認められるので、まず、その点について検討する。
ア 本件商標と引用商標5との類似性の程度
(ア)本件商標は、別掲1の構成からなるところ、語頭及び2文字目の「MO」がやや図案化してなるものの、全体より「「MONSTAR HAiR」の文字をまとまりよく一体的に表したものといえるものであり、これから生じる「モンスターヘア」の称呼も、格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
そして、本件商標は、たとえ、その構成中「HAiR」の文字が「髪、髪の毛」などの意味を有し一般に親しまれた英単語「hair」に通じるとしても、かかる構成及び称呼においては、該文字部分が指定商品及び指定役務の品質、質等を表示したものとして認識されることなく、「MONSTAR HAiR」の構成文字全体が一体不可分のものとして認識、把握されるものであって、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
さらに、本件商標は、その構成中のいずれかの文字部分を分離抽出し他の商標と比較検討することが許されるというべき事情は見いだせない。
また、上記1のとおり、「MONSTER」の文字は、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないことに加え、当該「MONSTER」の文字が「怪物」の意味を有する我が国で広く親しまれた英単語であること、及び一般に清涼飲料の範ちゅうに含まれる「エナジードリンク」と本件商標の指定商品及び指定役務の関連性の程度は高いといえないことから、本件商標は、その構成中「MONSTAR」の文字部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものということはできない。
そうすると、本件商標は、その構成文字全体が一体不可分のものであって、「モンスターヘア」のみの称呼を生じ、特定の観念を生じないものといわなければならない。
(イ)引用商標5は、「MONSTER」の文字からなり、該文字に相応し「モンスター」の称呼を生じ、「怪物」の観念を生じるものである。
なお、「MONSTER」の文字は、上記1のとおり申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないことに加え、清涼飲料の範ちゅうに含まれる「エナジードリンク」と本件商標の指定商品及び指定役務の需要者が共通するとはいえないこと、当該「MONSTER」の文字が「怪物」の意味を有する我が国で広く親しまれた英単語であることから、引用商標5は、本件商標の指定商品及び指定役務との関係においては上記のとおり「怪物」の観念を生じるものと判断するのが相当である。
(ウ)そこで、本件商標と引用商標5との類否を検討すると、外観においては、本件商標の構成文字「MONSTAR HAiR」と引用商標5の構成文字「MONSTER」の比較において、両者は後半部の「HAiR」の文字の有無という差異を有することに加え、「MONSTAR」の6番目の文字「A」と「MONSTER」の6番目の文字「E」が相違し、これらの差異が両商標の外観全体の視覚的印象に与える影響は大きく、相紛れるおそれのないものとみるのが相当である。
次に、本件商標から生じる「モンスターヘア」と引用商標5から生じる「モンスター」の称呼を比較すると、両者は後半部における「ヘア」の音の有無という差異を有し、この差異が両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、かれこれ聞き誤るおそれのないものと判断するのが相当である。
さらに、観念においては、本件商標は特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標5からは「怪物」の観念が生じるから、両者は、観念上、相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標5とは、外観、称呼及び観念において相紛れるおそれがない非類似の商標であって、その類似性の程度も極めて低い別異の商標というべきものである。
イ 出所混同のおそれ
上記1のとおり、引用商標5は申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないことに加え、上記アのとおり、本件商標と引用商標5は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、類似性の程度も極めて低い別異の商標というべきものであること、引用商標5は、その構成文字「MONSTER」が我が国で広く親しまれた英単語であって独創性の程度が低いこと、本件商標の指定商品及び指定役務と申立人の商品「エナジードリンク」との関連性の程度は高いとはいえないこと、及び、それら商品等の需要者が共通性を有するといえないことを総合し判断すれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品及び指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標5を連想又は想起させることはなく、その商品及び役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、引用商標5との関係において、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
(2)また、本件商標は、引用商標1ないし4及び6との関係において、出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
(3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人は、本件商標は引用商標5「MONSTER」の出所表示力を希釈化するおそれが高いなどとして、本件商標は、商標法の精神及び国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがある旨主張している。
しかしながら、上記1のとおり、引用商標5は需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないことに加え、上記2(1)アのとおり、本件商標と引用商標5とは相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものであり、また、本件商標は引用商標5を連想又は想起させることのないものである。
そうすると、本件商標は、引用商標5の出所表示力を希釈化する、その名声にただ乗りするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
さらに、本件商標が、商標法の精神及び国際信義に反するものであるなど、公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
別掲1(本件商標)


別掲2(申立人商品の容器に表示されている商標)


異議決定日 2020-03-31 
出願番号 商願2018-3295(T2018-3295) 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W030535)
T 1 651・ 271- Y (W030535)
最終処分 維持  
前審関与審査官 浦辺 淑絵 
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 大森 友子
平澤 芳行
登録日 2019-04-05 
登録番号 商標登録第6136288号(T6136288) 
権利者 アンドビューティジャパン株式会社
商標の称呼 モンスターヘアー、モンスター 
代理人 香原 修也 
代理人 柳田 征史 
代理人 古井 かや子 

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