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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W44 |
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管理番号 | 1360729 |
異議申立番号 | 異議2019-900272 |
総通号数 | 244 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2020-04-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-09-24 |
確定日 | 2020-03-18 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6167124号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6167124号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6167124号商標(以下「本件商標」という。)は、「ヴィンテージ ビューティー クリニック」の文字を横書きしてなり、平成30年11月27日に登録出願、第44類「医業,医療情報の提供」を指定役務として、令和元年6月13日に登録査定、同年8月2日に設定登録されたものである。 2 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)「ヴィンテージビューティークリニック横浜」について 「ヴィンテージビューティークリニック横浜」(以下「本件医院」という。)は、2018年10月29日付で、申立人が開設した医院であり、申立人のみが医師として所属している(甲2、甲8)。申立人は、同日付で、それまで経営していた「川崎駅前スキンコスメクリニック」(以下「川崎クリニック」という。)を診療所譲渡により廃止している(甲3)。 本件医院の開設にあたり、申立人は開院の案内状を送付している(甲4)。当該案内状は、川崎クリニックの患者宛(甲16)に、2018年10月29日付で、8,173件送付した(甲5)。本件医院スタッフによるブログ(甲11の3)に、以前からのお客様、患者様からのお祝いを掲載していることからも、前記患者に本件医院が周知となっていたことがわかる。 また、申立人は、医療機器等の関連業者や知り合いの医師、本件医院の周辺の店舗に対して、内覧会のお知らせが付いた開院の案内状を送付し(甲7)、2018年11月4日に、本件医院の内覧会を行い(甲10、甲11の2)、同月15日に、一般向けに本件医院を開院している(甲4、甲11の3)。 開院前から本件医院の公式ウェブサイト(甲8)を稼働させており、「2018.11.15 開院いたしました。」との記載から、少なくとも、開院時には公式ウェブサイトが稼働していたことが明らかである。 (2)申立人と商標権者との関係について 申立人と商標権者とは、2005年11月に、川崎クリニックを開院して以来、共同で経営をしていた(甲12)。2011年10月18日時点の川崎クリニックのウェブサイトに、申立人が院長、商標権者が副院長として掲載されている(甲13の2)。 申立人は、2018年10月29日付にて川崎クリニックを廃止しているが(甲3)、その原因として、以前から両者の間において金銭等に関するトラブルが発生していたことがある。 しかしながら、当事者では解決に至らなかったことから、2018年(平成30年)3月14日付にて、申立人は、商標権者を相手方とする民事調停申立書を提出した(甲15)。 調停は7回行われたが不成立に終わり、2019年7月31日付にて、申立人(原告)は、商標権者(被告)を相手とし提訴している(甲12)。 (3)商標法第4条第1項第7号該当性について 本件商標は、「ヴィンテージ ビューティー クリニック」と片仮名で表されるところ、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的な印象を与える文字からなるものとはいえず、本件商標を使用することが社会公共の利益や一般道徳観念に反するものとすべき事実はなく、他の法律によってその使用が禁止されているものでもなく、特定の国や国民を侮辱し、又は国際信義に反する商標と認められるものではないことは、申立人においても認めるものである。 一方、本件商標の登録出願(2018年11月27日)前において、上記の事実により本件医院が開院していることは明らかである。 さらには、本件医院の開院の案内状は、両者が共同で経営していた川崎クリニックの患者8,173名に送付されていることから、患者を通して、現在も川崎クリニックで勤務する商標権者が知り得る状況にあった。上記8,173名の中に商標権者の親戚が含まれているため、より商標権者が知る可能性は高いといえる。 また、案内状(甲7)を送った医療機器等の関連業者の中には、川崎クリニックで取引のあった業者もいる(甲11の2)。 その上、2018年11月上旬から、公式ウェブサイト、FacebookやInstagramの公式ページ、本件医院スタッフによるブログ(甲8?甲11)も稼働しており、インターネットを検索すれば確認し得る状況であった。 加えて、申立人と商標権者とは、同じ美容外科・美容皮膚科を専門とする同業の医師であって、両者ともに日本美容外科学会会員であり(甲8、甲13の1)、実質的な競合関係にある。その上、元々共同経営者であったのが仲違いしたことにより通常以上に折り合いが悪い関係にあることは、両者が裁判中であることからも明らかである。 また、本件医院「ヴィンテージビューティークリニック横浜」は、構成文字に相応して「ビンテージビューティークリニックヨコハマ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものであって、申立人が考えた造語である。 他方、本件商標は、「ビンテージビューティークリニック」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 そうすると、本件商標は、本件医院の要部と共通することから、外観及び称呼において類似するものであり、本件商標と本件医院とは類似の商標であるといえる。 このため、本件商標は、本件医院と類似の商標と認められるところ、「ヴィンテージビューティークリニック」の語が造語であることからすれば、商標権者が本件医院を知り得ることなく、本件医院の開院直後に偶然に本件商標を採択することは想定し難いものである。 両者の関係が悪いことも相まって、偶然であるとは思えない。 むしろ、商標権者は、申立人と同じ美容外科・美容皮膚科専門医であって、患者を共通とすることから、何らかの方法により本件医院の開業を知った上で、これが商標登録出願及び商標登録されていないことを奇貨として、剽窃的に出願したものというべきである。 いくら商標法が先願主義を採用しているとしても、このような出願の経緯では、社会的相当性を欠くといえるものである。 このまま本件商標の登録が維持されると、申立人の業務に支障をきたすことは明確である。 したがって、本件商標は、「当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合」に当たるものであるから、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であることは明らかである。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 3 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第7号該当性について ア 商標の登録出願が適正な商道徳に反して社会的妥当性を欠き、その商標の登録を認めることが商標法の目的に反することになる場合には、その商標は商標法4条1項7号にいう商標に該当することもあり得ると解される。しかし、同号が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」として、商標自体の性質に着目した規定となっていること、商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については同法4条1項各号に個別に不登録事由が定められていること、及び、商標法においては、商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば、商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法4条1項7号に該当するのは、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである(平成14年(行ケ)第616号、東京高等裁判所平成15年5月8日判決)。 また、出願人が本来商標登録を受けるべき者であるか否かを判断するに際して、日本の商標法の制度趣旨や商標法第4条第1項第19号の趣旨に照らすならば、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することにより、商標登録出願を排除することは、商標登録の適格性に関する予見可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので、特段の事情のある例外的な場合を除くほか、許されないというべきである(平成19年(行ケ)第10391号、知的財産高等裁判所平成20年6月26日判決)。 イ そこで、本件についてみるに、申立人は、「本件商標は、『ヴィンテージビューティークリニック』の語が造語であることからすれば、商標権者が本件医院を知り得ることなく、本件医院の開院直後に偶然に本件商標を採択することは想定し難いものである。両者の関係が悪いことも相まって、偶然であるとは思えない。むしろ、商標権者は、申立人と同じ美容外科・美容皮膚科専門医であって、患者を共通とすることから、何らかの方法により本件医院の開業を知った上で、これが商標登録出願及び商標登録されていないことを奇貨として、剽窃的に出願したものというべきである。」旨主張している。 ウ 本件において、商標権者が本件商標の登録出願をした経緯は、申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 (ア)申立人と商標権者とは、2005年11月に川崎クリニックを開院して以来、共同で経営し(甲12)、申立人が院長、商標権者が副院長であった(甲13の2)。 (イ)申立人は、2018年10月29日付で、診療所(川崎クリニック)譲渡のため当該診療所の廃止届を川崎市長宛てに提出しており(甲3)、その理由として、商標権者との間において金銭等に関するトラブルが発生していたと主張している。 当該金銭トラブルは、当事者間では解決に至らず、調停も不成立に終わり、申立人は、2019年7月31日付で、商標権者を相手とし提訴(残余財産分割請求)している(甲12)。 (ウ)本件医院は、2018年10月29日付で、申立人が開設した医院であり、申立人のみが医師として所属している(甲2、甲8)。 (エ)本件医院の開設にあたり、申立人は、本件医院の開院案内状を川崎クリニックの患者宛に、2018年10月29日付で8,173件送付した(甲4、甲5)。 また、申立人は、医療機器等の関連業者や知り合いの医師、本件医院の周辺の店舗に対して、内覧会のお知らせが付いた開院案内状を送付し(甲7)、2018年11月4日に本件医院の内覧会を行い(甲10、甲11の2)、同月15日付で本件医院を開院している(甲4、甲11の3)。 エ 上記ウによれば、商標権者と申立人は、川崎クリニックを共同経営していたが、金銭トラブルにより仲違いし、申立人が商標権者に川崎クリニックを譲渡(2018年10月29日)したこと、申立人が本件医院を開院(2018年10月29日)し、川崎クリニックの患者に対し本件医院の開院案内状を送付したことがうかがわれる。 しかしながら、申立人の主張及び同人の提出に係る甲各号証を総合してみても、例えば、具体的に、商標権者が申立人に対し、本件商標を金銭的な交渉材料に利用して不当な利益を得ようとしていたとか、申立人の事業の遂行を妨害しているなど、商標権者が不正の目的を持って本件商標を使用するものであると認めるに足りる具体的事実は見いだせない。 また、本件医院の開院を川崎クリニックの患者が知っていたとしても、そのことのみをもって、本件医院が周知であるということはできないから、商標権者による本件商標の登録出願が、その周知性に便乗するものということもできない。 加えて、商標権者と申立人の間における金銭トラブルを発端とする本件医院の開院及び商標権者による本件商標の登録出願に至る事情は、当事者間の私的な問題といわざるを得ず、出願人(商標権者)が本来商標登録を受けるべき者であるか否かを判断するに際して、商標法第4条第1項第7号を適用して商標登録出願を排除することが許される特段の事情のある例外的な場合には当たらないというべきである。 そうすると、本件商標を、その指定役務について使用することが、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するということもできず、他の法律によってその使用が禁止されているものでもなく、本件商標の構成自体が、非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような構成態様でもない。 その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足りる証拠はない。 してみれば、たとえ、商標権者が申立人の業務に係る本件医院の名称を知っていたとしても、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠き、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合に当たるとまではいえないから、本件商標が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」がある商標に該当するということはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 (2)むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものでなく、その登録は同条第1項の規定に違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2020-03-06 |
出願番号 | 商願2018-150878(T2018-150878) |
審決分類 |
T
1
651・
22-
Y
(W44)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 佐藤 篤至、竹之内 正隆 |
特許庁審判長 |
山田 正樹 |
特許庁審判官 |
鈴木 雅也 冨澤 美加 |
登録日 | 2019-08-02 |
登録番号 | 商標登録第6167124号(T6167124) |
権利者 | 細川 俊彦 |
商標の称呼 | ビンテージビューティークリニック、ビンテージビューティー、ビンテージ |
代理人 | 北村 周彦 |