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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W09
審判 全部申立て  登録を維持 W09
管理番号 1359796 
異議申立番号 異議2018-900315 
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-03-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-11-01 
確定日 2020-02-06 
異議申立件数
事件の表示 登録第6069777号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6069777号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6069777号商標(以下「本件商標」という。)は,「PingWord」の文字を標準文字で表してなり,平成29年11月8日に登録出願,第9類「人工知能搭載のヒューマノイドロボット,小型電子翻訳機,電子辞書,電子手帳,電子顔認証装置,乳児用はかり,電光掲示板,スマートフォン,テレビ電話,電子書籍リーダー,教育用映像・音声周波機械器具及び電子応用機械器具,スライド映写機,教育用映像周波機械器具・教育用音声周波機械器具・その他の教育用視聴覚機械器具,充電式蓄電池」を指定商品として,同30年7月23日に登録査定,同年8月10日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において,本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する標章は,別掲のとおり「PING」の文字をデザイン化した標章を含む「PING」の文字からなる標章(以下「使用標章」という。)よりなり,申立人の業務に係る商品「ゴルフ用品」を表示するものとして需要者の間に広く知られていると主張するものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第8号及び同項第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第8号について
本件商標は,申立人の米国子会社である「PING.inc」(以下「PING社」という。)及び申立人の日本法人である「ピンゴルフジャパン株式会社」(以下「ピンゴルフジャパン社」という。また,両者を併せて「申立人子会社ら」という。)の著名な略称である「PING」の語を含む商標であり,申立人及び申立人子会社らが,商標権者に対して,本件商標の使用ないし登録について承諾を与えた事実はない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
「PING」は,申立人の商標として広く一般に知られている(甲1?甲7)から,これと類似する本件商標がその指定商品に指定された場合,商品の出所について混同を生ずるおそれがある。

4 当審の判断
(1)使用標章及び申立人子会社らの略称としての「PING」の周知著名性について
ア 申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば,以下のとおりである。
(ア)「PING」の語は,申立人の創設者であるカーステン・ソルハイム氏が1959年(昭和34年)に自宅で開発した最初のゴルフ用パターの打球音にちなんで採用された名前であり,1967年(昭和42年)に「KARSTEN MANUFACTURING CORPORATION」を設立し,現在の申立人の母体となっている(甲1)。
(イ)申立人は,2004年(平成16年)1月21日に日本子会社であるピンゴルフジャパン社を設立し,ピンゴルフジャパン社は,ゴルフクラブ,ゴルフ用具等の輸出入,販売,製造,加工及び修理等の業務を行っている(甲1)。
(ウ)ピンゴルフジャパン社は,「PING.com」,「CLUB PING」,「PING FITTING STUDIO」,「PING レンタルクラブサービス」の使用標章を表示した日本消費者向けのウェブサイトを作成し(甲1),日本のゴルフ用品ショップにおいて申立人の「PING」ブランドのゴルフ用品等に使用標章を付して販売している(甲2)。
(エ)ピンゴルフジャパン社は,2006年(平成18年)ないし2018年(平成30年)まで,毎年「PING」ブランドのゴルフ用品のパンフレットに使用標章を付して発行している(甲3)。
(オ)申立人は,ピンゴルフジャパン社の日本における「PING」ブランド商品の売上高は,2014年(平成26年)は約300億円であり,2017年(平成29年)には約500億円に到達し,2018年(平成30年)には約800億円に到達していると主張するが,その事実を裏付ける証拠は提出されていない。
(カ)2013年(平成25年)12月16日付け「Sports Business Magazine」において,ピンゴルフジャパン社の代表取締役社長のインタビューの記事として,「『PINGは』・・・米国におけるクラブのシェアは15%以上,欧州では20%以上・・・2年前,日本市場のシェアは1%台だった・・・」との記載がある(甲4)。
(キ)申立人は,「PING」の登録商標を,昭和50年代から現在に至るまで30件以上保有・維持している(甲5)。
(ク)「ランダムハウス英和辞典 第2版」においては「ping」の語が「(商標):ピン:米国製のゴルフクラブ」と解説されている(甲6)。
(ケ)東京税関及び大阪税関が申立人の「PING」の商標権を侵害するおそれがある侵害疑義貨物(ゴルフクラブ,ゴルフクラブヘッドカバー,ゴルフクリップマーカー)を発見したとして,認定手続開始通知書を申立人に対して通知している(甲7)。
イ 使用標章の周知性について
上記(ア)ないし(ケ)において認定した事実によれば,使用標章は,申立人の業務に係るゴルフ用パター等のゴルフ用品名として,1959年(昭和34年)に採用され,我が国ではピンゴルフジャパン社により遅くとも2006年(平成18年)以来,ウェブサイト,パンフレット及びゴルフ用品ショップにおいて,ゴルフ用品の販売又はゴルフ用品の加工,修理又は貸与といったゴルフ関連の商品及び役務において継続して使用され,ゴルフの愛好家やその取引者の間ではある程度知られていることはうかがえるとしても,我が国においてその周知性の度合いを客観的に判断するための資料,すなわち,申立人の業務に係る商品(ゴルフ用品)を広告・宣伝した時期,回数及びその方法,あるいは,該商品をどの時期に,どの地域で,どの位の台数を販売したものか等,その取引状況を具体的に示す取引書類等の提出はない。
また,外国におけるシェアが直ちに我が国における販売実績を示すものとはいえず,申立人提出の上記証拠によっては,使用標章を付した商品又は役務の取引状況を把握することができないから,使用標章の周知著名性の程度を推し量ることができない。
さらに,「PING」の登録商標が30件以上あり,英和辞典に「ping」の語が「(商標):ピン:米国製のゴルフクラブ」と解説され,東京税関・大阪税関において侵害疑義物品の取り締まり実績があるとしても,このような事情が,我が国における需要者の認識に直接反映されるものとはいい難い。
そうすると,申立人は,我が国において,遅くとも2006年(平成18年)から現在までゴルフ用品等に使用標章を継続して使用していることは認められるものの,ゴルフ用品の販売実績等を示す証左は見いだせないから,使用標章は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人及び申立人子会社らの業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
ウ 申立人子会社らの略称としての「PING」の著名性について
申立人の販売するゴルフ用品に「PING」の文字が使用され,カタログやウェブサイトにおいて「PING」の文字が略称的に使用されているとしても,「PING」の文字が我が国において申立人子会社らの著名な略称として広く知られている根拠とすることはできない。
そして,申立人は,「PING」の文字が我が国において申立人子会社らの略称として広く使用され知られている事実を立証しておらず,「PING」の文字は,甲各号証によっては,我が国において申立人子会社らの著名な略称と認めるに足りない。
したがって,「PING」の文字は,申立人子会社らを指称する著名な略称として認識されるに至っていたということはできないものである。
(2)商標法第4条第1項第8号該当性について
申立人の米国子会社の名称は「PING社」及び申立人の日本法人の名称は「ピンゴルフジャパン社」であるところ,提出された証拠からは,上記(1)ウのとおり,「PING」の文字は,本件商標の登録出願時及び登録査定時に我が国において,申立人子会社らの略称を表示するものとして著名になっていたものと認めることはできない。
してみれば,本件商標は,その構成中に「Ping」の文字を有しているとしても,他人の著名な略称を含む商標ということができない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 本件商標と使用標章との類似性について
(ア)本件商標
本件商標は,「PingWord」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成文字は,同じ書体,同じ大きさ,等しい間隔で,全体としてまとまりよく一体的に表されているといえるものであり,かつ,その構成全体から生じる「ピンワード」の称呼も長音を含めて5音という簡潔な音構成であって,よどみなく一連に称呼し得るものである。
また,本件商標を構成する「Ping」の文字は,「弾丸が金属板に当たったときの鋭い金属音」の意味を有する語(甲6)であり,「Word」の文字は,「単語,言葉」の意味を有する語(株式会社小学館「ランダムハウス英和大事典」)であり,いずれも平易な語であって,当該各文字は,いずれかが出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとも認められないから,各文字間において特に軽重の差があるものとはいえない。
そうすると,本件商標は,その構成態様及び称呼からすれば,その構成全体をもって,一連一体のものとして看取,把握されるものであり,また,その構成全体から特定の意味合いを想起,理解させるとはいい難い。
してみれば,本件商標は,その構成全体に相応して「ピンワード」の称呼のみを生じるものであり,特定の観念を生じないものである。
(イ)使用標章
使用標章は,「PING」の文字からなるものであるから,その構成文字部分に相応して「ピン」の称呼を生じ,「弾丸が金属板に当たったときの鋭い金属音」の観念を生じるものである。
そして,使用標章は,上記意味を有する既成語であることから,その独創性の程度は高いとはいえないものである。
(ウ)本件商標と使用標章の類似性
上記(ア)のとおり,本件商標は,「PingWord」の文字を表してなるものであり,上記(イ)のとおり,使用標章は,「PING」の文字からなるものであるから,両商標は,「Word」の文字の有無という明らかな差異を有するものであり,外観上,相紛れるおそれはないものである。
また,本件商標から生じる「ピンワード」の称呼と,使用標章から生じる「ピン」の称呼とを比較すると,両商標は,「ワード」の有無という顕著な差異により,それぞれ一連に称呼するときは,全体の語調,語感が相違し,明瞭に聴別することができるものであるから,称呼上,相紛れるおそれはないものである。
さらに,本件商標は特定の観念を生じず,使用標章は,「弾丸が金属板に当たったときの鋭い金属音」の観念を生じるから,観念上,紛れるおそれはない。
そうすると,本件商標と使用標章とは,その外観,称呼及び観念のいずれの点についても,互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきものであり,両者の類似性の程度は低いものである。
イ 本件商標の指定商品と使用標章が使用される商品との関連性並びに商品の取引者及び需要者の共通性について
本件商標の指定商品は,第9類「人工知能搭載のヒューマノイドロボット,小型電子翻訳機,電子辞書,電子手帳,電子顔認証装置,乳児用はかり,電光掲示板,スマートフォン,テレビ電話,電子書籍リーダー,教育用映像・音声周波機械器具及び電子応用機械器具,スライド映写機,教育用映像周波機械器具・教育用音声周波機械器具・その他の教育用視聴覚機械器具,充電式蓄電池」であって,これらは,様々な商業又はサービス業用機械器具として使用される外見や動作を人間に似せたロボット,小形の電子翻訳機など電子の作用を応用したもので,電子の作用をその機械器具の機能の本質的な要素とするもの,テレビ電話など電気の作用をその機械器具の機能の本質的な要素としている通信機械器具に関するもの,乳児用の計量装置,スライド(透明陽画)を投影拡大して鑑賞する器具,充電式の蓄電池」である。
一方,使用標章が使用される商品は,ゴルフにおいてボールを打つために使用される用具等である。
そうすると,本件商標の指定商品と使用標章が使用される商品とは,その用途や機能が全く異なるものであり,需要者の範囲も異なるものであって,販売経路などの取引の実情も一致するというべき事情は見いだせないから,両商品の関連性の程度及び需要者の共通性は低いものである。
ウ 出所の混同のおそれについて
使用標章は,上記(1)イのとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人及び申立人子会社らの業務に係る商品「ゴルフ用品」を表すものとして,我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。
そして,本件商標と使用標章とは,上記ア(ウ)のとおり互いに紛れるおそれのない非類似の商標であって,類似性の程度は低いものである。
また,上記イのとおり,本件商標の指定商品と使用標章が使用される商品との関連性の程度は低いものといえる。
そうすると,本件商標権者が,本件商標をその指定商品に使用した場合,これに接する取引者,需要者が,使用標章を想起又は連想するようなことはないというべきであり,該商品が,申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,商品の出所について,混同を生じさせるおそれはないものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第8号及び同項第15号のいずれにも該当するものではなく,その登録は,同法第4条第1項の規定に違反してされたものとはいえないものであり,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲 使用標章の例


異議決定日 2019-09-10 
出願番号 商願2017-146635(T2017-146635) 
審決分類 T 1 651・ 23- Y (W09)
T 1 651・ 271- Y (W09)
最終処分 維持  
前審関与審査官 齋藤 健太浦崎 直之 
特許庁審判長 薩摩 純一
特許庁審判官 平澤 芳行
大森 友子
登録日 2018-08-10 
登録番号 商標登録第6069777号(T6069777) 
権利者 深▲せん▼小西科技有限公司
商標の称呼 ピングワード、ピンワード、ピング、ピン、ワード 
代理人 特許業務法人快友国際特許事務所 

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