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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y30
管理番号 1359657 
審判番号 取消2017-300479 
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2017-07-04 
確定日 2020-01-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第5061515号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5061515号商標(以下「本件商標」という。)は、「選旨」及び「えらうま」の文字を二段に書してなり、平成18年8月1日に登録出願、第30類「米」を指定商品として、同19年7月13日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、平成29年7月18日である。
なお、本件審判において商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、平成26年7月18日ないし同29年7月17日である(以下「要証期間」という場合がある。)。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきものである。
2 審判事件弁駁書における主張
(1)乙第1号証ないし乙第4号証(本件商標権者のカタログ)について
本件商標権者のカタログは、本件商標権者が販売する「包装用袋」について、例えばこのようにパッケージ上に文字が印刷できますよ、という印刷例の一つとして「えらうま」及び「選旨」なる文字が印字されているにすぎない。仮に、当該カタログが要証期間に頒布されていたとしても、当該カタログはあくまで本件商標権者の販売に係る商品「包装用袋」の広告物にすぎず、本件商標を商品「米」について使用をしたものとは認められない。
なお、被請求人によれば、当該カタログを使用するに際して(R)(「R」の欧文字を丸で囲んだ記号。以下同じ。)の表示をアピールしたとのことであるが、乙第1号証ないし乙第4号証において(R)の表示は視認できず、かかる主張はにわかに信じ難い。また、たとえ(R)の表示が極々小さく付されていたと仮定しても、本件商標権者の販売に係る商品が「包装用袋」であることに変わりはない。
(2)乙第5号証ないし乙第7号証について
乙第5号証の1、乙第6号証の1及び乙第7号証の1は、菅野包装資材株式会社(以下「菅野包装資材」という。)に宛てた本件商標権者による発注書であり、乙第5号証の3、乙第6号証の3及び乙第7号証の2は、有限会社ミルテック(以下「ミルテック」という。)に宛てた本件商標権者による注文請書であるが、これら取引書類に「SFポリ 選旨」なる表示がなされているとしても、本件商標権者の販売に係る商品は、第16類に属する商品「プラスチック製包装用袋」であって、第30類に属する商品「米」ではない。また、乙第5号証の3及び乙第6号証の3についても、包装用袋のデザインと思しき画像であるにすぎない。
したがって、被請求人が主張する上記事実は、本件商標権者が本件商標を本件商標の指定商品たる「米」について使用をしたと認めるに足りるものではない。
(3)乙第8号証ないし乙第15号証について
乙第8号証の1ないし乙第12号証の3は、本件商標権者がミルテックに対して送信した電子メールであって、商品「包装用袋」のデザインと思しき添付データには「えらうま」及び「選旨」なる文字が記載されている。また、乙第14号証の1ないし乙第15号証の2は本件商標権者がミルテック宛に発行した納品書であるところ、商品名の欄には「選旨」なる文字が記載されている。しかしながら、本件商標権者とミルテックとの間で取引されている商品は、「包装用袋」であって「米」ではない。なお、乙第13号証はミルテックの電子メールと社名が表示されたアドレス帳であるが、単に乙第8号証の1ないし乙第12号証の3によって示されているアドレスがミルテックのものとして本件商標権者のアドレス帳に登録されていることを示すにすぎない。
したがって、被請求人が主張する上記事実は、本件商標権者が本件商標を指定商品「米」について使用をしたと認めるに足りるものではない。
(4)乙第16号証について
乙第16号証は、スーパーマーケットと思しき店内写真であって、「選旨 こしブレンド」と表示された札が付された棚に、「選旨」なる文字が付された商品「米」が陳列されていることが見てとれる。しかしながら、当該証拠は、いずれかの店舗において「米」が陳列されていることを示しているにすぎない。
被請求人は、「ハローズ」なるスーパーマーケットが当該「米」を販売している旨や、府中米穀企業組合(以下「府中米穀」という。)なる団体が米を包装している旨を述べるが、具体的な書証は何ら提出されておらず、これを認めることはできない。また、仮にかかる事実が今後証されたとしても、本件商標権者が本件商標を本件商標の指定商品たる「米」について使用をしたと認めるに足りるものではない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第27号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 審判事件答弁書における主張
(1)自社カタログの発行及び頒布
本件商標権者である株式会社アサヒパック(株式会社旭紙工社から名称変更)(審決注:本件商標の登録原簿によれば、本件商標の商標権者は受付日を平成29年8月31日として「株式会社旭紙工社」から「株式会社アサヒパック」へ登録名義人の表示の変更がされている。)は、本件商標を、本件商標の指定商品である「米」の包装パッケージとして自社カタログに「セレクトパック」として表示して、自社カタログを2010年12月、2013年1月、2015年4月、2017年3月の各月において、継続的に発行し頒布している(乙1?乙4)。各カタログにおいて、「商品番号953 お米縁の里」として商品名表示する包装袋の写真には、本件商標を縦書き表示したデザイン文字が、商品「米」を包装するための包装袋として掲載されている(乙1?乙4)。
本件商標権者は、営業活動においても力タログ使用時に、(R)の表示によって商標権があることをアピールし、受注につなげる提案を行ってきた。
(2)包装袋のデザイン調整及び販売
本件商標権者は、本件商標を付した「米」用の包装袋について、代理店であるミルテックの発注を受けて、包装デザインの調整のメール応対(乙8?乙13)を行い、その後、ミルテックを介して、府中米穀へ2017年3月から5月にかけて販売している(乙5?乙15)。
乙第5号証の1は、10kg用の包装袋「選旨/えらうま」に関し、本件商標権者による包装袋製造の外注先である、菅野包装資材に対して本件商標権者が包装袋を発注した発注書であり、乙第5号証の2はその発注番号の包装袋のデザインである。また、乙第5号証の3はミルテックからの発注を受けたことを示す発注請書である。発注日は2017年2月24日、出荷予定日は同年3月17日である。同発注に係る包装袋には、本件商標を縦書き表示したデザイン文字が掲載されている(乙5)。
乙第6号証の1は、5kg用の包装袋「選旨/えらうま」に関し、本件商標権者による包装袋製造の外注先である菅野包装資材に対して本件商標権者が包装袋を発注した発注書であり、乙第6号証の2はその発注番号の包装袋のデザインである。また、乙第6号証の3はミルテックからの発注を受けたことを示す発注請書である。発注日は2017年2月24日、出荷予定日は同年3月17日である。同発注に係る包装袋には、本件商標を縦書き表示したデザイン文字が掲載されている(乙6)。
乙第7号証は、乙第5号証と同じ10kg用の包装袋「選旨/えらうま」に関する、第二回目の発注の取引を示す書類である。まず乙第7号証の1は、本件商標権者による包装袋製造の外注先である、菅野包装資材に対して本件商標権者が包装袋を発注した発注書であり、乙第7号証の2はミルテックからの発注を受けたことを示す発注請書である。ミルテックからの正式な受注日は2017年4月24日、出荷予定日は同年5月17日である。同発注に係る包装袋には、本件商標を縦書き表示したデザイン文字が掲載されている(乙7)。
乙第8号証ないし乙第12号証は、本件商標権者の営業担当者が、ミルテックの担当者に対して包装デザインの調整分を送信した電子メールである。
電子メールの送信日は、2017年2月17日、同月20日、同月21日、同月24日(以上納品前)、同月26日(納品後)となっている。乙第13号証は送信先であるミルテックの担当者の電子メールアドレスを示すメールソフトの画像である。
乙第14号証は本件商標権者からミルテックに納品した10kg用包装袋の納品書、及び納品した包装袋の写真である。納品は2017年3月21日、同年4月27日の2回に分けて行われた。
乙第15号証は本件商標権者からミルテックに納品した5kg用包装袋の納品書である。納品は2017年3月21日、同年7月12日の2回に分けて行われた。
(3)販売先による米の販売
本件商標権者からミルテックへの販売を受けて販売先の府中米穀に包装袋が納品された後、府中米穀によって本件商標を使用した包装袋に包装された米が、2017年3月から同年6月にかけて、広島市内に店舗展開される食品スーパーマーケットである株式会社ハローズ(以下「ハローズ」という。)各店にて継続的に販売された(乙16)。乙第16号証はハローズ神辺モール店の店内の販売における商品陳列写真であり、平成29年8月に写真撮影された。
(4)上記のとおり、本件商標権者は、少なくとも平成22年12月から同29年6月の間に日本国内において本件商標を使用している。また、同使用期間は取消しの審判の請求前3月からその審判請求登録の日までの間ではなく、いわゆる駆け込み使用に該当しない。
2 平成30年4月17日付け審尋回答書における主張
(1)府中米穀による使用の事実
ア 府中米穀による袋詰め(商標法第2条第3項第1号の使用)
本件商標の商品「米」は、府中米穀の精米工場工場長であるAの陳述書(乙24)に記載されるように、2017年3月24日から同年7月17日の期間に、府中米穀によって精米されるとともに、本件商標を付した米袋に袋詰めされた。
中でも、乙第16号証及び乙第17号証の写真に示される「国内産選旨 こしブレンド」10kgの商品は、各写真から、「精米日 2017年6月28日」と印字されていることが読み取れるところ、この商品は、Aの陳述書(乙24)に記載されるように2017年6月28日に精米及び袋詰めされたものである。なお、乙第16号証及び乙第17号証は、ハローズ店舗の米売り場で撮影された本件商標の付された商品「米」の陳列写真である。
これらの袋詰めは、商品又は商品の包装に標章を付する行為であって、商標法第2条第3項第1号の「使用」に該当する。当該行為日は乙第24号証の陳述書にあるように、2017年3月24日から同年7月17日の期間並びに同年6月28日であるから、本件の要証期間における使用である。
当該行為者は府中米穀であって、本件商標権者から本件商標の使用を許諾された通常使用権者である。通常使用権の許諾については、後述するように、当該行為よりも前の2017年2月22日までに、当事者間で明確に合意が形成されている(乙23、乙25、乙26)。
よって、本件商標は、商品「米」に、通常使用権者によって、要証期間に商標法第2条第3項第1号の使用をされたことが明らかである。
イ 府中米穀による納品(商標法第2条第3項第2号の使用)
(ア)本件商標を付した米袋に袋詰めされた商品「米」は、Aの陳述書(乙24)に記載されるように、2017年3月24日から同年7月17日の期間に、府中米穀によって、納品先であるハローズの各店(府中店、戸手店、引野店を含むハローズ各店)に納品された。
中でも、府中米穀の納品書(乙21)中に記載されるように、本件商標を付した商品「国内産選旨 こしブレンド 10kg」は、ハローズ戸手店用として12袋が、2017年4月14日に府中米穀によって、ハローズの物流センターである早島ドライセンター(乙22)に納品された。
乙第21号証は、府中米穀から早島ドライセンターへ商品を納品した際の2017年4月14日付け納品書であり、伝票番号019334561として前記商品が記載されている(乙20、乙21)。なお、ハローズ戸手店店長の陳述書(乙20)に記載されるように、乙第21号証の納品書中の伝票番号019334561の商品「国内産選旨 こしブレンド 10kg」は、2017年4月16日にハローズ引野店の店舗内で販売された。
そして、乙第18号証に示される販売チラシは、納品先のハローズによって2017年6月10日から同月12日に頒布されたものであり、この販売チラシ内には「国内産 選旨 こしブレンド 10kg 2,778円」との表示が掲載されている。ハローズ引野店、戸手店の各店長の陳述書(乙19、乙20)に記載されるように、当該掲載内容の商品は、2017年6月10日から同月12日にハローズ引野店、戸手店の各店で販売された。これらは、府中米穀によって本件商標の付された商品が2017年6月10日から同月12日よりも以前に納品された事実を示すものである。
また、ハローズ引野店店長の陳述書(乙19)に記載されるように、2017年6月28日を精米日とする商品「国内産選旨 こしブレンド 10kg」は、府中米穀によってハローズに納品され、2017年6月30日にハローズ引野店の店舗内で販売された。これは、府中米穀によって本件商標の付された商品が2017年6月28日から同月30日の間に納品された事実を示すものである。
これらの納品は、商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡又は引き渡しする行為であって、商標法第2条第3項第2号の「使用」に該当する。
(イ)当該行為日のうち、乙第24号証の陳述書に記載される納品日は2017年3月24日から同年7月17日の期間であり、乙第21号証の納品書に記載される納品日は2017年4月14日である。よって、乙第24号証、乙第21号証に基づく各納品行為は、いずれも本件の要証期間における使用である。
また、納品先による乙第18号証のチラシに掲載の商品の販売日は2017年6月10日から同月12日の期間であり、納品先による乙第19号証中の精米日同年6月28日の商品の販売日は同年6月30日である。よって、府中米穀による納品日は、これらよりも前であって乙第24号証の陳述書に記載される2017年3月24日から同年7月17日の期間であるから、乙第18号証及び乙第19号証の各納品行為は、いずれも本件の要証期間における使用である。
そして、当該行為者は府中米穀であって、本件商標権者から本件商標の使用を許諾された通常使用権者である。通常使用権の許諾については、当該行為よりも前の2017年2月22日までに、当事者間で明確に合意が形成されている(乙23、乙25、乙26)。
よって、本件商標に係る商品「米」は、本件商標の通常使用権者によって、要証期間に商標法第2条第3項第1号の使用をされたことが明らかである。
(2)通常使用権者である府中米穀による本件商標の使用の事実
ア 本件商標を付した商品の開発経緯
本件商標を付した商品は、本件商標権者の営業担当者Bの陳述書(乙26の1)に示すように、ハローズ各店舗で扱っていた岡山米の販売終了に伴うブレンド米の後継商品として、2017年1月23日以前から府中米穀及びハローズで企画されていた。そして、2017年1月23日に府中米穀の営業課長Cから本件商標権者の営業担当者Bに対して、本企画に関する米袋のデザインの電話依頼がなされた。
このデザインの依頼を受けて、本件商標権者の営業担当者Bは、府中米穀の営業課長Cと1回目の打合せ(乙26の2)を行い、その後の2017年2月17日に府中米穀へ米袋のデザインのメール提案を行った(乙8の1)。その後、修正デザインの提案(乙9の2、乙10の2)を経て、府中米穀の営業課長Cと2回目の打合せを行った。2回目の打ち合わせの際、本件商標権者の営業担当者Bは府中米穀の営業課長Cに対し、「選旨/えらうま」が本件商標権者の商標権であること、府中米穀の競合他社が選旨と同じ名前を使って米を販売できないという強みがあることを伝えた(乙26の1,乙26の3)。
そして、2回目の打ち合わせの翌日である2017年2月22日には、府中米穀の営業課長Cから本件商標権者の営業担当者B宛に、本件商標を使用したデザインで商品化を進める旨の最終決定の電話連絡があった。この電話の際、本件商標権者の営業担当者Bは府中米穀の営業課長Cに対し、府中米穀に本件商標権をライセンシーとして使用してもらうことを伝えた(乙26の1)。
イ 上記経緯において、本件商標権者は、府中米穀に対して、本件商標の使用を許諾することを前提としてデザインの提案を行っており、さらに2017年2月22日には、府中米穀に通常使用権を許諾する意思を明確に表示している。そして、乙第25号証に示すように、本件商標権者は、府中米穀に対し、「国内産選旨 こしブレンド」に関して通常使用権を許諾しており、また乙第23号証に示すように、府中米穀は、本件商標権の通常使用権者として2017年3月及び4月に「国内産選旨 こしブレンド」を販売し、その後も継続して販売している。
よって、府中米穀は、本件商標権者から本件商標の使用を許諾された通常使用権者であることを、本件商標を付した商品の使用前から認識しており、この認識の下で本件商標を使用していることが明らかである。
したがって、本件商標は、商品「米」に、本件商標の通常使用権者によって、要証期間に商標法第2条第3項第1号又は第2号の「使用」をされたことが明らかである。
(3)本件商標権者による使用の事実
ア 本件商標権者による米袋の製造及び納品(商標法第2条第3項第1号及び第2号の使用)
本件商標を付した米袋(米用の包装袋)は、本件商標権者によって製造され、2017年3月21日、同年4月27日、同年7月12日の各日に、府中米穀へ納品された(乙27)。納品された物品は内容物の入っていない米袋ではあるものの、乙第5号証の2や乙第6号証の2に示すように、この米袋に付された「選旨/えらうま」の商標は包装袋自体に識別力を付与するものではなく、あくまでも袋の内容物である米に識別力を付与する態様で米袋のデザインとして付されている。
これは、商品「米」の包装である米袋に、米袋としての商標を付する行為であって、納品の時点では内容物が袋内に収容(袋詰め)されていなくとも、米を収容した態様で市場に流通することが明確であり、この時点で内容物の米についての自他識別力を発揮する。よって、本件商標を付した米袋(米用の包装袋)の製造は、商標法第2条第3項第1号の「使用」に該当する。また、本件商標を付した米袋(米用の包装袋)の納品すなわち引渡しは、商標法第2条第3項第2号の「使用」に該当する。
ここで、行為者は本件商標権者であるとともに、本件商標の通常使用権者である府中米穀の依頼を受けてデザインを行い、通常使用権者の意思に従って業務を行う者である。行為者である本件商標権者自体は米を業として精米ないし袋詰めする者ではないものの、精米卸業者である府中米穀の意思に従って、包装材たる米袋のデザインを行い、確定したデザインの包装材を製造して、製造した包装材を、精米卸業者の米の販売のために提供する者である。
したがって、上記本件商標を付した米袋(米用の包装袋)を使用する者は、本件商標権者又は通常使用権者の業務に係る商品「米」についての行為者と考えられるから、本件商標権者も当該米袋(米用の包装袋)を使用する者に該当する。
イ 本件商標権者による米袋のカタログ掲載(商標法第2条第3項第8号の使用)
カタログ(乙1?乙4)に掲載された各米袋は、本件商標権者の用意する内容物「米」についてのデザイン素材であり、このデザイン素材の中に、本件商標のデザイン素材のサンプル画像が含まれている。上記したように、本件商標権者自体は米ではなく米袋をデザインし製造、譲渡する者ではあるものの、本件商標は包装袋自体の識別力を発揮するものではなく、米のみを内容物とする米専用包装袋として、包装袋の内容物「米」について識別力を発揮するものである。カタログの発行日は、乙第1号証が2010年12月、乙第2号証が2013年1月、乙第3号証が2015年4月、乙第4号証が2017年3月となっている。
そして、本件商標権者は、米袋の納品先である精米卸業者に対して米袋のデザイン製作と共に包装袋を業として提供する者であるから、自社カタログに「セレクトパック」として本件商標のサンプルを掲載する行為は、未必(未確定)の顧客(精米卸業者)に対してその商品「米」に関する広告、価格表若しくは取引書類であるカタログに標章を付して頒布する行為に他ならない。本件商標を使用する米の精米卸業者が確定せず商品「米」が製造される前であっても、カタログに米袋の内容物「米」のパッケージデザインとして識別可能に掲載された時点で、商標の広告的機能やこれによる信用の蓄積作用は発揮されている。よって、米の精米卸業者ではなくとも、米専用の包装袋を業としてデザインし供給する本件商標権者において、本件商標をカタログに掲載する行為は、商標法第2条第3項第8号の使用に該当する。
仮に、このような米袋のデザインサンプルとしての商標のカタログ掲載が、商品「米」の「使用」と認められなければ、米の精米卸業者に対して登録商標のデザインサンプルとしての信用を蓄積することができず、競合他社が同様のデザインの米袋を自由に模倣できてしまうなど、内容物「米」自体の取引秩序を乱す結果となってしまう。本件商標権者のような内容物「米」のパッケージデザインを顧客たる精米卸業者のためにデザイン提案して米袋を供給する業者にとっては、提案に係る「米」の袋のデザインそのものが自社の識別対象となっており、セレクトパックのようなデザイン提案を目的としたカタログ形態において、内容物のパッケージデザインと離れた包装袋自体を識別対象とする意味は乏しい。むしろ競合他社の模様デザインを防ぐことができるという自他識別力は、顧客である米の精米卸業者の購入の動機になるとともに、精米卸業者の業務に係る商品「米」についての識別力を付与するという意味で、本件商標権者にデザインを依頼することを通じた「米」の取引の秩序を確保するものとなっている。
また、本件商標権者の所有に係る商標権の商標を付した米袋(米用の包装袋)の製造の依頼においては、依頼者である精米卸業者は当該商標権の使用を許諾してもらい、精米卸業者が商標の専用使用権者又は通常使用権者となることが前提的に合意されると考えられる。この前提合意という取引形態をかんがみた場合、本件商標権者によるカタログ掲載の行為は、依頼者である未必の商標使用権者の業務に係る商品「米」について、その商品「米」に使う予定の商標を予めカタログにおいて広告する行為と考えられる。
したがって、本件商標権者において、本件商標をカタログに掲載する行為は、商標法第2条第3項第8号の「使用」に該当する。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る乙各号証及び被請求人の主張によれば、以下のとおりである。
(1)本件商標権者(被請求人)は、2010年(平成22年)、2013年(平成25年)、2015年(平成27年)及び2017年(平成29年)に米用の包装袋についてのカタログを作成した(乙1?乙4)。
2017年(平成29年)のカタログ(乙4)の第1葉目には、本件商標権者の名称及び住所とともに本件商標権者のロゴ及び「PACKAGE COLLECTION」の記載、第2葉目には、「セレクトパック」の表題の下、「お好みのベース米袋に、文字デザインや産地・銘柄などを後印刷するだけでかんたんにオリジナル米袋が作れます。」の記載、第3葉目には、「後印刷の制作例」の一つとして「選旨」及び「えらうま」の文字が表示された袋の画像とともに「953 お米縁の里」の記載がある。
(2)本件商標権者は、2017年(平成29年)2月24日及び同年4月24日にミルテックより「商品コード 701070960」「商品名 別注10kg SFポリ 選旨」とする米袋を「府中米穀(企)精米工場」を届け先として、「受注番号 1070960-1」及び「受注番号 1070960-2」を受注し、同日に菅野包装資材宛てに当該米袋を発注した(乙5の1?3、乙7の1、2)。
2017年(平成29年)2月24日発注の当該米袋の見本(乙5の2)には、枠外に「受注番号 1070960-01」、「2017年2月24日」及び本件商標権者のロゴが記載され、当該米袋の見本の表側には、図柄を背景に中央に大きく縦書きで「選旨」の文字及び「選」の文字の横に小さく「えらうま」の文字を配し、また左右側面及び下側面に横書きで「選旨」及び「えらうま」の文字を一列に配し、加えて、「10kg」「名称 精米」「販売者 府中米穀(企)」などの記載がある。
(3)本件商標権者は、2017年(平成29年)3月21日及び同年4月27日付けでミルテック宛てに納品書を作成した。当該納品書には、3月17日及び4月26日に「商品コード 70107」「商品名 別注10kg SFポリ 選旨」を府中米穀精米工場に直送した旨の記載がある(乙14の1、2)。
乙第14号証の3は、被請求人によれば、納品された包装袋の写真であり、透明な袋に乙第5号証の2の見本と同一の図柄及び文字が印刷されている。
(4)乙第16号証は、被請求人によれば、食品スーパーマーケットハローズ神辺モール店の店内の販売における商品「米」の陳列写真(全5葉)であって、当該写真には店名及び撮影日の記載はないものの、米売場の陳列棚に、乙第14号証の3と同一の図柄及び文字が印刷された包装袋に米がパッケージされた状態で陳列されており、当該包装袋には「28年産 17.6.28」及びやや不鮮明ではあるものの「販売者 府中米穀(企)」の記載がある。
(5)乙第18号証は、ハローズが発行した2017年(平成29年)6月10日から同月12日の販売期間のチラシであり、各種商品が掲載されている中に、米の写真とともに「国内産/選旨こしブレンド10kg/2,778円」の記載がある。
(6)乙第21号証は、ハローズが発行した2017年(平成29年)4月14日付けの納品書であり、取引先である府中米穀が2017年(平成29年)4月14日に発注された商品「米」を同月16日に納品する旨の記載があり、その内訳には「国内産選旨 こしブレンド 10kg」の記載がある。
(7)府中米穀の理事長は、府中米穀が「選旨(えらうま)」の文字を使用したデザインのオリジナル米袋を2017年(平成29年)2月頃ミルテックに発注しており、その発注に際しては、本件商標権者が商標権を取得している米袋ということを確認し、「選旨(えらうま)」を米のパッケージに使用することを前提として発注した。本件商標権者の営業担当者からは、本件商標権者が商標のライセンスを許諾する形になるという説明を受けた。また、府中米穀は、「選旨(えらうま)」の商標権の通常使用権者として、2017年(平成29年)3月及び4月に「選旨(えらうま)」の米袋に米を詰めて2017年(平成29年)4月16日にハローズへ「国内産選旨 こしブレンド」として販売し、その後も継続して販売している旨陳述している(乙23)。
(8)府中米穀精米工場の工場長は、2017年(平成29年)3月21日に納品された「国内産選旨 こしブレンド」のパッケージを使用して、同年3月24日から同年7月17日までの間に、精米日の当日に精米した米を工場内で袋詰めした。「国内産選旨 こしブレンド 10kg」について、2017年(平成29年)6月28日に精米した米を10kg袋として袋詰めし、袋詰めした日と同日の日付を精米日として印字した。袋詰めした上記商品を2017年(平成29年)3月24日から同年7月17日までの間に、ハローズ各店に納品した旨陳述している(乙24)。
そして、ハローズ引野店店長は、府中米穀から納品された精米日2017年(平成29年)6月28日の「国内産選旨 こしブレンド 10kg」をハローズ引野店の店舗内で2017年(平成25年)6月30日に販売した旨陳述している(乙19)。
(9)本件商標権者の代表取締役は、本件商標権者が、府中米穀に対し、本件商標を日本全国の範囲において2017年(平成29年)2月22日から「国内産選旨 こしブレンド」販売終了までの期間、通常使用権を許諾した旨陳述している(乙25)。
2 上記1からすれば、次の事実を認めることができる。
本件商標権者は、図柄や文字をデザインした米用の包装袋を販売する事業を行っており(乙1?乙4)、平成29年(2017年)2月24日及び同年4月24日には、ミルテックを通じて府中米穀を届け先とする米用の包装袋について注文を受け(乙5の1?3、乙7の1、2)、同年3月17日及び4月26日には、縦書きで「えらうま」及び「選旨」の文字、また、横書きで「選旨」及び「えらうま」の文字(以下、これらをまとめて「使用商標」という。)を表示した米用の包装袋を府中米穀の精米工場へ納品した(乙14の1?3)。
府中米穀は、平成29年(2017年)3月24日から同年7月17日までの間にハローズに当該米袋に詰めた米を販売し、ハローズがこれを販売したことがうかがわれる(乙18、乙21、乙23、乙24)。
そして、府中米穀精米工場の工場長が「国内産選旨 こしブレンド 10kg」について、平成29年(2017年)6月28日に精米した米を10kg袋詰めし、袋詰めした日と同日の日付を精米日として印字し、ハローズ各店に納品した旨を陳述し、ハローズ引野店店長は上記米が納品され、これを同月30日に販売した旨陳述していること、さらに、米売場の陳列棚の写真(乙16)において、商品「米」の包装袋に、使用商標、販売者「府中米穀(企)」、「28年産」、「17.6.28」の表示があることからすれば、米売場に陳列された商品「米」は、府中米穀が、平成28年に収穫された米を平成29年(2017年)6月28日に精米した商品であって、これが、精米後、要証期間にハローズに販売され、その後、ハローズの店舗で販売されたことが推認できる。
なお、府中米穀は、平成29年(2017年)2月22日から「国内産選旨 こしブレンド」販売終了まで、本件商標を国内で使用することについて本件商標権者から通常使用権者として許諾を受けている(乙25)。
してみると、本件商標の通常使用権者である府中米穀は、平成29年(2017年)6月28日に使用商標が表示された包装袋に商品「米」を詰め、その後、ハローズに販売したというのが自然である。
3 判断
(1)使用商標について
上記1(2)のとおり、使用商標は縦書きで「選旨」及び「えらうま」の文字、並びに、横書きで「選旨」及び「えらうま」の文字からなるものであり、本件商標は前記第1のとおり「選旨」及び「えらうま」の文字を二段に書してなるものである。
そうすると、両商標は、いずれも「選旨」及び「えらうま」の文字からなるものであるから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標といえる。
(2)使用者及び使用商品について
使用商標を使用した者は府中米穀であり、府中米穀は本件商標を使用することについて本件商標権者から許諾を受けた本件商標の通常使用権者である。
また、使用商品は、上記2のとおり、「米」であり、取消の対象である指定商品「米」と同一の商品である。
(3)使用時期について
上記2の事実からすれば、通常使用権者である府中米穀は、使用商標が表示された包装袋に、平成29年(2017年)6月28日に精米した米を詰め、その後ハローズに販売したといえるところ、当該米を精米した上記日付は要証期間であり、これが、要証期間にハローズに販売されたものといえる。
(4)小括
以上によれば、通常使用権者が、要証期間に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を表示した包装袋に米を詰め、これをハローズに販売したと認められるところ、当該行為は、商標法第2条第3項第1号にいう「商品の包装に標章を付する行為」及び同項第2号にいう「商品に標章を付したものを譲渡する行為」に該当する。
4 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において本件商標の通常使用権者が本件審判の請求に係る指定商品について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを証明したものと認めることができる。
したがって、本件商標の登録は、本件審判の請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2019-10-31 
結審通知日 2019-11-05 
審決日 2019-12-05 
出願番号 商願2006-76240(T2006-76240) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Y30)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 小松 里美
中束 としえ
登録日 2007-07-13 
登録番号 商標登録第5061515号(T5061515) 
商標の称呼 エラウマ、センシ 
代理人 森田 拓生 
代理人 服部 京子 
代理人 森川 淳 
代理人 徳永 弥生 
代理人 洲崎 竜弥 
代理人 齊藤 整 

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