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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W35
審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W35
管理番号 1357921 
異議申立番号 異議2018-900308 
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-01-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-10-25 
確定日 2019-12-02 
異議申立件数
事件の表示 登録第6067989号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6067989号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第6067989号商標(以下「本件商標」という。)は、「ZENSHO」の欧文字を標準文字により表してなり、平成29年11月1日に登録出願、第35類「職業の紹介及び人材の紹介,人材募集,人材募集に関する情報の提供,人材募集に関する指導及び助言,求人情報の提供」を指定役務として、同30年7月20日に登録査定、同年8月3日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議申立ての理由として引用する商標は、以下の5件であり、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第2317468号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様:別掲1のとおり
指定商品:第29類、第30類及び第32類に属する商標登録原簿に記載の商品
出願日:昭和63年7月5日
設定登録日:平成3年6月28日
最新更新登録日:平成23年1月11日
(2)登録第3133042号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様:別掲2のとおり
指定役務:第42類「牛丼を主とする飲食物の提供」
出願日:平成4年9月29日
設定登録日:平成8年3月29日
最新更新登録日:平成27年10月6日
(3)登録第4997127号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様:ZENSHO(標準文字)
指定商品及び指定役務:第43類「飲食物の提供」を含む、第29類、第30類、第31類、第32類及び第43類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
出願日:平成17年10月14日
設定登録日:平成18年10月20日
更新登録日:平成28年5月10日
(4)登録第5274996号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様:別掲3のとおり
指定商品及び指定役務:第43類「飲食物の提供」を含む、第29類、第30類、第31類、第32類、第33類、第35類、第42類、第43類及び第45類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
出願日:平成20年3月4日
設定登録日 平成21年10月23日
更新登録日:令和元年6月11日
(5)登録第5274995号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の態様:別掲4のとおり
指定商品及び指定役務:第43類「飲食物の提供」を含む、第29類、第30類、第31類、第32類、第33類、第35類、第42類、第43類及び第45類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
出願日:平成20年3月4日
設定登録日:平成21年10月23日
更新登録日:令和元年6月11日
以下、上記の引用商標1ないし引用商標5をまとめていうときは、「引用各商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号によりその登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第381号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第8号について
本件商標は、申立人の著名な略称を含む商標であって、申立人の承諾を得ないで登録出願されたものである。
2 商標法第4条第1項第15号について
引用各商標は、申立人の業務に係る商品又は役務を表示する商標として、需要者の間に広く認識されているため、これと同一又は類似する本件商標がその指定役務に使用された場合、申立人の業務に係る商品・役務と出所の混同を生ずるおそれがある。

第4 取消理由の通知
当審において、令和元年7月31日付けで、商標権者に対し、以下の4件の商標を引用して、「本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第8号に該当する。」旨の取消理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。
1 引用商標2
2 引用商標4
3 申立人が、自己の業務に係る役務「飲食物の提供」に使用して周知、著名性を獲得していると主張する「ZENSHO」の文字からなる商標(以下「引用商標6」という。)
4 申立人が、自己の業務に係る役務「飲食物の提供」に使用して周知、著名性を獲得していると主張する「ゼンショー」の文字からなる商標(以下「引用商標7」という。)
以下、上記1ないし4をまとめて、「引用商標」という。

第5 商標権者の意見
上記第4の取消理由に対し、商標権者は、何ら意見を述べるところがない。

第6 当審の判断
1 引用商標の周知・著名性について
(1)申立人提出の証拠及び同人の主張によれば、次のとおりである。
ア 申立人について
(ア)申立人のホームページ情報によれば、申立人である株式会社ゼンショーホールディングスは、1982年(昭和57年)6月に神奈川県横浜市で株式会社ゼンショーとして設立された(甲8)。
(イ)申立人は、創業当時、ランチボックス(弁当)の販売及び牛丼店「すき家」を運営していたが、その後の「すき家」の店舗数の増大に伴い、1999年(平成11年)9月に東京証券取引所市場第二部に上場した。2000年(平成12年)に大手外食チェーンの株式会社ココスジャパンの株式を取得し、2001年(平成13年)9月には、東京証券取引所市場第一部に上場した。その後も、各ジャンルの外食チェーン企業を傘下におさめ、2011年(平成23年)10月に、持株会社として株式会社ゼンショーホールディングスを設立した(甲8)。
(ウ)申立人は、外食事業のほか、小売事業、介護事業、保険事業にも参入している(甲8、甲9)。
(エ)申立人は、グループ企業を傘下に有し(以下「申立人グループ」ということがある。)、世界9ヶ国で事業展開を行っており、店舗数は5,106店、従業員は約12万8,000人、売上高は5,791億円とされる(甲17)。
(オ)申立人グループの事業の中心となるのは国内外食事業であり、牛丼チェーン最大手の「すき家」を中心とし、外食チェーンの「なか卯」、ファミリーレストランチェーンの「ココス」の他、「ビッグボーイ」、「ヴィクトリアステーション」、「ジョリーパスタ」、「エルトリート」、「はま寿司」、「華屋与兵衛」、「牛庵」、「久兵衛屋」、「瀬戸うどん」、「伝丸」等、多種多様なフードチェーン店を運営している。また、「ユナイテッドベジーズ」、「マルヤ」、「ヤマグチスーパー」、「マルエイ」、「フジマート」等でスーパーマーケット事業を展開している。さらに、「かがやき」、「ロイヤルハウス」、「シニアライフサポート」等の高齢者住宅、有料老人ホームの運営を行っている(甲19)。
イ 引用商標の使用について
(ア)申立人の会社案内1997年版ないし会社案内1999年版、申立人の会社概要1999年3月期、申立人の会社案内2002年版、同2007年版、申立人グループの会社案内2007年版の各表紙、本文中の見出し、奥付等には、引用商標2と同一の構成態様で「ZENSHO」の文字、引用商標6及び引用商標7が表示されている(甲10?甲16)。
(イ)申立人グループ「すき家」のホームページ(甲22)、申立人グループの外食店で使用できるプリペイドカード「ZENSHO/CooCa」のホームページ(甲42)、2015年11月6日にプリントアウトしたとされるプリペイドカード「ZENSHO/CooCa」の業務に関するテレビニュースの画面(甲43)、2017年3月17日付け及び同年4月26日付けの申立人の広報リリース(甲44、甲45)、申立人が運営するインターネット通販事業「ZENSHO/net store」に係る「2018年夏号の通信販売カタログ」(甲47)、申立人グループ「株式会社サンビシ」のホームページ(甲49)、申立人グループ「株式会社トロナジャパン」のホームページ(甲50)には、引用商標2と同一の構成態様で「ZENSHO」の文字及び引用商標4と同一の構成態様で「ZEnSHO」(Eの文字にはアクセント記号が付されている。)の文字並びに引用商標6及び引用商標7が表示されている。
(ウ)2017年3月28日又は同月29日にプリントアウトしたとされる牛丼チェーン店「すき屋」の業務に関するテレビニュースの画面(甲65?甲69)、2017年4月6日付け及び同年3月24日付け申立人の業務に係る広報リリース(甲72、甲75)には、引用商標4と同一又はこれと色彩が異なる構成態様で「ZEnSHO」(Eの文字にはアクセント記号が付されている。)の文字が表示されている(甲72、甲75)。
(エ)申立人グループの外食チェーン店「すき家」、「はま寿司」、「ココス」、「ビッグボーイ」、「ジョリーパスタ」、「華屋与兵衛」、「なか卯」、「久兵衛屋」、「瀬戸うどん」、「たもん庵」、「焼肉倶楽部いちばん」、「牛庵」、「宝島」、「エルトリート」、「モリバコーヒー」の各ホームページの末尾に、「ゼンショーグループ」、「ZENSO HOLDINGS」の記載や、申立人グループのロゴマークと共に、引用商標4と同一の構成態様で「ZEnSHO」(Eの文字にはアクセント記号が付されている。)の文字が表示されている(甲22、甲28?甲41)。
(オ)申立人が運営するインターネット通販事業「ZENSHO/net store」(甲48)、申立人グループの食品製造企業「株式会社サンビシ」、「株式会社トロナジャパン」、「ヤマトモ水産食品株式会社」の各ホームページの末尾に、引用商標4と同一の構成態様で「ZEnSHO」(Eの文字にはアクセント記号が付されている。)の文字が表示されている(甲49?甲51)。
さらに、申立人グループのスーパーマーケット「株式会社ユナイテッドベジーズ」、「株式会社マルヤ」、「株式会社マルエイ」、「株式会社フレッシュコーポレーション」の各ホームページの末尾に、引用商標4と同一の構成態様で「ZEnSHO」(Eの文字にはアクセント記号が付されている。)の文字が表示されている(甲52?甲55)。
(カ)申立人グループの高齢者住宅「かがやき」及び介護付き老人ホーム「ロイヤル川口」の各ホームページの末尾に、引用商標4と同一の構成態様で「ZEnSHO」(Eの文字にはアクセント記号が付されている。)の文字が表示されている(甲56、甲57)。
(キ)申立人は、建築、運送、食品製造、保険、IT開発に関する事業も行っており、建築事業に関しては、申立人グループ「株式会社テクノサポート」を通じて事業を行い(甲58)、運送事業に関しては、「株式会社グローバルフレッシュサプライ」を通じて事業を行っている(甲59)。保険事業については、「株式会社ゼンショー・インシュアランス・サービス」を通じて事業を行っており(甲61)、IT開発については、「株式会社グローバルITサービス」を通じて事業を行っている(甲62)。そして、いずれも、そのホームページの末尾に、引用商標4と同一の構成態様で「ZEnSHO」(Eの文字にはアクセント記号が付されている。)の文字が表示されている。
ウ 申立人の売上高等について
日経MJ(流通新聞)によれば、2015年度の申立人の店舗売上高は、約4,452億円、2016年度の店舗売上高は、約4,492億円であり、いずれも、飲食業界のシェア1位を占める(甲209、甲286)。また、2018年5月28日付け食品産業新聞によれば、上場外食企業の2018年3月期決算における申立人の売上高は、5,791億800万円であり、業界トップとされ(甲359)、外食の市場規模のおける申立人シェアは業界トップクラスとされている(甲211等)。
エ 申立人に関する第三者の紹介記事について
2014年から2018年にかけて、申立人の事業に関する話題は、テレビ・新聞・雑誌等において、取り上げられた(甲65?甲69、甲101、甲128、甲130、甲142、甲143、甲145、甲148、甲153、甲155、甲157、甲158、甲167?甲169、甲171等)。
(2)判断
上記(1)によれば、申立人は、1982年(昭和57年)の創業後、「牛丼を主とする飲食物の提供」を中心とした多数の外食チェーン店の運営を通じて「飲食物の提供」に係る業務を継続して行い、2011年(平成23年)に株式会社ゼンショーホールディングスへの組織変更を経て、飲食業の分野において、2015年度店舗総売上高第1位(甲209)、2016年度店舗総売上高第1位(甲286)、2016年度総売上高第1位(甲338)、2018年3月期決算における売上高第1位(甲359)、2011年度から2014年度まで連続して市場シェア第1位(甲211)等、その売上高やシェアは、業界トップクラスとなっている。
また、申立人の事業は、2014年から2018年にかけて、テレビ・新聞・雑誌等において広く一般に紹介されてきたものである。
そして、そのような実情の下、1997年から2007年にかけて、申立人の事業を紹介する広告書類において、引用商標2と同一又は同一性が認められる範囲の構成態様で「ZENSHO」の文字、引用商標6及び引用商標7が継続的に表示されていたこと、2011年の組織変更に伴う名称変更後も、2015年から2018年かけて、申立人グループの外食チェーン店のホームページ、申立人の広報リリース、牛丼やコーヒーの通信販売カタログにおいて、「ZENSHO」ないし「ZEnSHO」(Eの文字にはアクセント記号が付されている。)の文字が、引用商標2及び引用商標4と同一又は同一性が認められる範囲の構成態様で使用され、また、引用商標6が継続的に使用されていることが認められる。
してみれば、引用商標は、遅くとも2017年11月には我が国の取引者、需要者において、申立人の業務に係る「飲食物の提供」を表すものとして、高い周知・著名性を獲得しており、その周知・著名性は、現在においても継続しているものと判断できる。
したがって、引用商標は、本件商標の登録出願時(平成29年(2017年)11月1日)及び登録査定時(平成30年(2018年)7月20日)において、申立人の業務に係る「飲食物の提供」を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識されていたものというのが相当である。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知・著名性
引用商標は、上記1(2)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る「飲食物の提供」を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識されていたものである。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度
ア 本件商標
本件商標は、「ZENSHO」の文字を表してなるところ、当該文字は、一般的な英和辞書などに載録されていない語であり、その構成文字に相応してローマ字風の発音をもって「ゼンショー」の称呼を生ずるものである。
また、「ZENSHO」の文字は、上記1のとおり、申立人の業務に係る役務「飲食物の提供」を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている引用商標の構成文字「ZENSHO」とそのつづりを同じくするものであり、同「ゼンショー」の欧文字表記であると認められる。
そうすると、本件商標は、該文字に相応し「ゼンショー」の称呼、「(申立人のブランドとしての)ZENSHO」の観念を生じるものといわなければならない。
イ 引用商標
引用商標2は、別掲2のとおり、「ZENSHO」のレタリング文字を青色で横書きした構成からなるところ、その構成文字に相応して「ゼンショー」の称呼を生じ、「(申立人のブランドとしての)ZENSHO」の観念を生ずるものである。
引用商標4は、別掲3のとおり、「ZEnSHO」(Eの文字にはアクセント記号が付されている。)のレタリング文字を、「ZEn」の文字部分を灰色がかった青色で、「SHO」の文字部分を青色で一連に横書きした構成からなるところ、その構成文字に相応して「ゼンショー」の称呼を生じ、「(申立人のブランドとしての)ZENSHO」の観念を生ずるものである。 引用商標6は、「ZENSHO」の文字からなるところ、その構成文字に相応して「ゼンショー」の称呼を生じ、「(申立人のブランドとしての)ZENSHO」の観念を生ずるものである。
また、引用商標7は、その構成文字に相応して「ゼンショー」の称呼を生じ、「(申立人のブランドとしての)ゼンショー」の観念を生ずるものである。
ウ 本件商標と引用商標2との対比
本件商標と引用商標2は、外観において、色彩やレタリングの有無における差異を有するものの、いずれも同じつづりからなる「ZENSHO」の欧文字を表したものとみるのが相当であるから、外観上の共通性を有し、近似した印象を与えるものである。
してみれば、本件商標と引用商標2は、外観において近似し、「ゼンショー」の称呼及び「(申立人のブランドとしての)ZENSHO」の観念を共通にすることから、これらによって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、本件商標と引用商標2は、互いに相紛れるおそれのある類似の商標というのが相当である。
エ 本件商標と引用商標4との対比
本件商標と引用商標4は、外観において、色彩やレタリングの有無における差異を有するものの、いずれも同じつづりからなる「ZENSHO」及び「ZEnSHO」の欧文字を表したものとみるのが相当であるから、外観上の共通性を有し、近似した印象を与えるものである。
してみれば、本件商標と引用商標4は、外観において近似し、「ゼンショー」の称呼及び「(申立人のブランドとしての)ZENSHO」の観念を共通にすることから、これらによって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、本件商標と引用商標4は、互いに相紛れるおそれのある類似の商標というのが相当である。
オ 本件商標と引用商標6及び引用商標7との対比
本件商標と引用商標6は、「ZENSHO」の構成文字の外観において共通し、いずれもその構成文字に相応して「ゼンショー」の称呼及び「(申立人のブランドとしての)ZENSHO」の観念を生ずるものであり、外観、称呼、観念において共通する類似の商標である。
また、本件商標と引用商標7は、構成文字の外観は異なるものの、いずれもその構成文字に相応して「ゼンショー」の称呼を生じ、「(申立人のブランドとしての)ZENSHO」ないし「(申立人のブランドとしての)ゼンショー」の観念を生ずるものであり、これらによって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、互いに相紛れるおそれのある類似の商標というのが相当である。
カ 以上より、本件商標と引用商標とは、同一又は類似の商標ということができる。
(3)引用商標の独創性の程度
引用商標を構成する「ZENSHO」、「ZEnSHO」及び「ゼンショー」の語は、我が国の一般的な辞書に載録がなく、特定の意味をもって親しまれた語ではないことから、申立人による一種の造語ということができる。 また、これらの語は、外食事業の分野においてありふれたものということはできず、相当程度の独創性を有するといえる。
(4)引用商標がハウスマークであるか否か
引用商標を構成する「ZENSHO」、「ZEnSHO」及び「ゼンショー」の文字は、申立人の名称「株式会社ゼンショーホールディングス」から、会社組織を表す「株式会社」及び持株会社を表す「ホールディングス」の文字を省略した「ゼンショー」の文字、あるいはそのローマ字表記であり、かつ、上記1のとおり、申立人の業務を表示する商標として周知・著名であることから、申立人のハウスマークとして我が国の取引者、需要者に広く認識されているものといえる。
(5)申立人の多角経営の可能性
申立人は、上記1のとおり、我が国の外食事業の市場においてトップクラスのシェアを占める大企業であり、外食事業の他にも、通信販売、介護、建築、運送、食品製造、保険、IT開発に関する事業を行っており、幅広い分野にわたって事業活動を行っている。
そうすると、申立人が、今後、「職業の紹介及び人材の紹介,人材募集,人材募集に関する情報の提供,人材募集に関する指導及び助言,求人情報の提供」といった役務に事業活動を拡大していくことは十分考えられるところであり、申立人の多角経営の可能性は高いものであるといえる。
(6)役務の関連性、需要者の共通性
本件商標の指定役務「職業の紹介及び人材の紹介,人材募集,人材募集に関する情報の提供,人材募集に関する指導及び助言,求人情報の提供」と、申立人の業務に係る役務「飲食物の提供」とは、役務の目的、役務の提供場所、業種等において異なるものであるから、両者の関連性は認められず、両役務の取引者、需要者の範囲の共通性が高いとはいえない。
(7)出所の混同のおそれについて
上記(1)ないし(6)を総合して判断するに、引用商標は、申立人の業務に係る役務と本件商標の指定役務との関連性は高いとはいえず、需要者の範囲の共通性がないとしても、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、我が国において、申立人の業務に係る役務「飲食物の提供」を表示するものとして、需要者及び取引者の間に広く認識されていたものと認められ、申立人のハウスマークといえるものであって、かつ、その独創性の程度は高く、申立人の多角経営の可能性も高いものである。
そして、本件商標は、引用商標と同一又は類似するものである。
そうすると、本件商標権者が、本件商標をその指定役務に使用した場合、これに接する需要者、取引者は、引用商標を連想又は想起し、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
(8)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第8号該当性について
本件商標を構成する「ZENSHO」の文字は、申立人の名称「株式会社ゼンショーホールディングス」から会社組織を表す「株式会社」及び持株会社を表す「ホールディングス」の文字を省略した「ゼンショー」の文字をローマ字表記したものといえ、申立人の略称とみることができる。そして、当該「ZENSHO」の文字は、上記1(2)のとおり、本件商標の登録出願時には既に、申立人の業務に係る役務を表示する商標として、取引者、需要者の間に広く認識されていたものであって、申立人の名称の略称として、本件商標の指定役務に係る取引者、需要者のみならず、一般に知られていたとみるのが相当である。そして、その状態は、本件商標の登録査定時においても、継続していたものということができる。
また、本件商標は、商標登録を受けることにつき、申立人の承諾を得たものとは認められない。
そうすると、本件商標は、他人である申立人の名称の著名な略称からなる商標であって、申立人の承諾を得ていないものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当する。
4 むすび
以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第8号に該当し、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものといわざるを得ないから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1 引用商標1


別掲2 引用商標2(色彩は、原本参照)


別掲3 引用商標4(色彩は、原本参照)


別掲4 引用商標5(色彩は、原本参照)



異議決定日 2019-10-23 
出願番号 商願2017-144204(T2017-144204) 
審決分類 T 1 651・ 23- Z (W35)
T 1 651・ 271- Z (W35)
最終処分 取消  
前審関与審査官 滝口 裕子 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 冨澤 美加
鈴木 雅也
登録日 2018-08-03 
登録番号 商標登録第6067989号(T6067989) 
権利者 Zensho Agency株式会社
商標の称呼 ゼンショー 
代理人 山田 薫 
代理人 岩瀬 ひとみ 
代理人 橋本 千賀子 
代理人 塩谷 信 
代理人 塚田 美佳子 
代理人 大貫 絵里加 

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