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審決分類 |
審判 一部申立て 登録を維持 W37 審判 一部申立て 登録を維持 W37 |
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管理番号 | 1357044 |
異議申立番号 | 異議2019-900214 |
総通号数 | 240 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2019-12-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-08-02 |
確定日 | 2019-11-08 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6142312号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6142312号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6142312号商標(以下「本件商標」という。)は、「TPD工法」の文字を標準文字で表してなり、平成31年2月5日に登録出願、「コンピュータハードウェアの設置工事、保守及び修理,ドア及び窓の取り付け工事,火災報知機の設置工事及び修理,空調機械器具の設置工事及び修理,建設工事に関する情報の提供,電気機器の干渉有害電波の抑制工事,盗難警報機の取付け及び修理,壁紙張り,建設工事」を含む第37類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同年4月17日に登録査定、令和1年5月10日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標(以下「引用商標」という。)は、「TPD工法」の文字からなるものであり、申立人が「無線基地局工事に伴うコンクリート柱基礎の構築工事(鋼管回転圧入掘削工事)」に使用をしてきたものである。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、その指定役務中「コンピュータハードウェアの設置工事、保守及び修理,ドア及び窓の取り付け工事,火災報知機の設置工事及び修理,空調機械器具の設置工事及び修理,建設工事に関する情報の提供,電気機器の干渉有害電波の抑制工事,盗難警報機の取付け及び修理,壁紙張り,建設工事」(以下「本件申立役務」という。)について、商標法第4条第1項第10号又は同項第7号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第17号証(枝番号を含む。)を提出した。以下、証拠については、「甲1」のように記載する。 (1)引用商標について 引用商標は、未登録ながら本件商標に先行して、申立人が継続的に使用している商標である。 申立人は、昭和42年創業、同43年7月9日設立の一般土木工事や基礎工事等を得意とする会社であって、地元の岡山県や倉敷市などの地方公共団体のほか、大本組、広成建設、清水建設、JFEといった民間企業からの工事を受注しており、従業員72名、平成31年6月期の売上高は21億円である(甲3)。 申立人では、早くから様々な土木技術の開発を行っており(甲4)、その独自工法の一つとして、いわゆる携帯電話のキャリアと呼ばれる移動体通信業者の無線基地局(携帯電話基地局)の工事に伴うコンクリート柱基礎の構築工事につき、鋼製ケーシングを回転圧入する工法を開発し、「TPD工法」の名称で提供している(甲5)。2012年(平成24年)7月には「TPD工法(鞘管圧入中堀工)」と題したパンフレット(甲6の1)を、2015年(平成27年)8月には「TPD工法-研究会(鞘管圧入中堀工)」と題したパンフレット(甲6の2)を、それぞれ自社で制作し積極的な営業に努めてきた(甲6の3)。 以上のような「TPD工法」は、2011年(平成23年)5月にソフトバンクモバイルの無線基地局工事に伴うコンクリート柱基礎の構築工事として採用され、2016年(平成28年)にはKDDIの無線基地局工事にも採用されて、以後、岡山県内のみならず、兵庫県・広島県・山口県の一部においても施工実績がある(甲7及び甲8)。 なお、無線基地局の新設は2013年(平成25年)がピークであり(甲10)、近年では電力会社の送配電用鉄塔を借用するなどの手法もとられるようになったことなどから、移動体通信業者独自の無線基地局の新設工事は減少傾向にある。 (2)商標法第4条第1項第10号について 本件商標と引用商標とを比較すると、両商標は、ともに「TPD工法」の文字からなる点において実質的に同一商標であるといえ、また、本件申立役務は、引用商標が使用されてきた役務であり、建設工事に含まれるところの、無線基地局工事に伴うコンクリート柱を建設時に基礎部分を鋼製ケーシングで構築する工法、すなわち、コンクリート柱基礎用の鋼管回転圧入掘削工事と相互に類似している。 そして、引用商標は、申立人が提供する独自工法の土木工事の名称として平成23年5月頃から現在に至るまで継続して使用してきたものであり、岡山県を中心に数多くの取引先との施工実績を有しているものであって、無線基地局工事に伴うコンクリート柱基礎の構築工事という、特化した工事部分においては工事事業者の設計仕様書において指定される(甲5)など、需要者間において広く知られていたものである。 よって、本件商標は、申立人の業務に係る役務(無線基地局工事に伴うコンクリート柱基礎の構築工事)を表示するものとして需要者の間に広く認識されている引用商標と同ーであって、その役務と同一又は類似する役務(建設工事)について使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第7号について 商標権者は、平成7年4月3日から平成27年10月31日までの間、正社員として申立人に雇用され営業担当をしており(甲11ないし甲14)、申立人の提供する土木工事「TPD工法」の営業担当者として無線基地局の工事業者との折衝にも当たっていたものである(甲15及び甲16)。 そして、商標権者は、申立人を退職した後に、現役時代に培った無線基地局の工事業者との取引関係を利用して、申立人と同じ岡山県倉敷市周辺地域において「TPD工法」の名称を用いて、自己が提供する土木工事の営業活動を行うなどしている(甲2)。 これら商標権者による本件商標に関する商標登録出願行為、及び本件商標を使用する行為は、公正な商取引の秩序を混乱させ、ひいては社会公共の利益及び公の秩序に反するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 4 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第10号該当性について 申立人の提出に係る証拠によれば、申立人は、2011年(平成23年)5月から2019年(平成31年)2月までの間に、ソフトバンクモバイル及びKDDIからの発注に基づき施工した建設工事の一工法の名称として引用商標の使用をしていたことが認められる(甲5、甲7及び甲8)。 また、申立人は、引用商標を名称とする工法についてのパンフレットを2012年(平成24年)7月及び2015年(平成27年)8月に制作したことが認められる(甲6の1ないし甲6の3)。 しかしながら、引用商標を名称とする工法による建設工事の施工実績は、2013年(平成25年)がピークであり、2014年(平成26年)まではある程度の実績は認められるものの、これ以降の実績は少なく、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、極めて少なくなっている(甲7及び甲8)。 また、引用商標を名称とする工法についてのパンフレットについては、その作成部数、配布部数及び配布先などを示す証拠は提出されていない。 そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 さらに、職権による調査によっても、引用商標が申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたというべき事情は見いだせない。 してみると、たとえ本件商標が引用商標又はこれに類似する商標であって、申立人の業務に係る役務又はこれに類似する役務に使用をするものであるとしても、引用商標は需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 (2)商標法第4条第1項第7号該当性について 申立人の提出に係る証拠によれば、本件商標の商標権者(以下、単に「商標権者」という。)は、平成7年4月3日から平成27年10月31日までの間、申立人に雇用されていたことが認められる(甲11ないし甲14)。 また、商標権者は、申立人に雇用されている間、申立人の営業担当として、引用商標を名称とする工法による建設工事に係る営業に当たっていた時期があったことが認められる(甲15及び甲16)。 さらに、商標権者は、平成31年2月頃から、無線基地局工事に伴うコンクリート柱を建設時、基礎部分を鋼製ケーシングで構築する工法の名称として、「TPD工法」の文字からなる商標の使用をしていることが認められる(甲2)。 しかしながら、これらの事実が認められるとしても、これらのみによって、商標権者による本件商標を登録出願する行為及び本件商標の使用をする行為が直ちに公正な商取引の秩序を混乱させるものとはいえない。 また、前記(1)のとおり、引用商標は需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないから、たとえ本件商標が引用商標と同一又は類似する商標であるとしても、商標権者が本件商標を登録出願する行為及び本件商標の使用をする行為が、引用商標の信用、名声、顧客吸引力等へのただ乗り又はこれらを希釈化若しくは毀損させるおそれなどの不正の目的をもった行為とは認められず、社会公共の利益に反するとも認められない。 他に、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるものというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 (3)まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第10号に該当するものではなく、本件申立役務についての登録は、同項の規定に違反してされたものとはいえない。 他に、本件申立役務についての本件商標の登録が商標法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標の登録は、商標法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2019-10-29 |
出願番号 | 商願2019-21153(T2019-21153) |
審決分類 |
T
1
652・
22-
Y
(W37)
T 1 652・ 255- Y (W37) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 池田 光治 |
特許庁審判長 |
小出 浩子 |
特許庁審判官 |
板谷 玲子 山田 啓之 |
登録日 | 2019-05-10 |
登録番号 | 商標登録第6142312号(T6142312) |
権利者 | 坂本 純一 |
商標の称呼 | テイピイデイコーホー、テイピイデイ |
代理人 | 土野 史隆 |
代理人 | 森 寿夫 |
代理人 | 特許業務法人Toreru |
代理人 | 宮崎 超史 |
代理人 | 小林 健一郎 |