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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201717175 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない W44
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W44
管理番号 1356067 
審判番号 不服2018-9866 
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-19 
確定日 2019-09-12 
事件の表示 商願2017- 78078拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第44類「医業・健康診断・歯科医業・調剤に関する情報の提供,医業,医療情報の提供,健康診断,歯科医業,調剤,栄養の指導,医療用機械器具の貸与」を指定役務として、平成29年6月13日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、ありふれた四角形内に『東京23区の1つ』の『世田谷』の文字と、これに相応する『SETAGAYA』の文字及び『人工関節・脊椎』の文字と『整形外科の』を意味する『ORTHOPAEDIC』の文字、並びに『診療所』を意味する『クリニック』、『CLINIC』の文字からなるところ、全体として『世田谷区にある人工関節・脊椎についての整形外科の診療所』程の意味合いを容易に認識させる。よって、これをその指定役務に使用しても、これに接する需要者は、該役務が世田谷区にある人工関節・脊椎についての整形外科の診療所で提供する役務であると認識させるにとどまり、単に役務の質(内容)、提供の場所を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、提出された証拠からは、本願商標が出願人に係る役務を表示するものとして需要者の間で認識され、識別力を発揮しているとはいえない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審においてした証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲2に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、平成31年3月11日付け証拠調べ通知書によって通知し、期間を指定してこれに対する意見を求めた。

4 証拠調べの結果に対する請求人の意見の要点
請求人は、上記3の証拠調べ通知に対して、以下のとおり意見を述べた。
(1)本願商標は、文字、図形及び色が一体となって、シンプルでありながらも独特のデザイン性を備えており、視覚上特異な商標として看者に印象付けられるものであるから、指定役務に使用しても、自他役務識別標識としての機能を十分果たし得るものである。
(2)病院名の日本語表記と英語表記とを整合させるのが、本願の指定役務の分野において普通であり、本願商標の文字の選択及び組合せは、当該分野において異質なものであり、本願商標は、役務の質(内容)、提供の場所を普通に用いられる方法で表示するものではない。
(3)「世田谷人工関節・脊椎クリニック」の名称は、様々なメディアで露出しており、全国的に高い認知度を示しており、本願商標に接した需要者は、本願商標が「世田谷人工関節・脊椎クリニック」に係る役務であることを認識する。よって、本願商標は、商標法第3条第2項の規定が適用され、商標登録を受けることができる。

5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、別掲1のとおり、緑色に塗られた縦長長方形の内側に白抜きの横線を配し、その上部に白抜きの文字で「SETAGAYA」、「ORTHOPAEDIC」及び「CLINIC」の欧文字(以下「上部文字部分」という。)を三段に書してなり、さらに、白抜きの横線の下部に同様に白抜きの文字で「世田谷」、「人工関節・脊椎」及び「クリニック」の文字(以下「下部文字部分」という。)を三段に書してなる構成からなるところ、その構成中の「SETAGAYA」、「世田谷」の文字は「東京23区の一つ」の意味を、「CLINIC」、「クリニック」の文字は「診療所」の意味を(「プログレッシブ英和中辞典」小学館)、「ORTHOPAEDIC」の文字は「整形外科の」の意味を(同参照)、「人工関節・脊椎」の文字は「機能が著しく低下した関節を再建するために用いられる医療器具」及び「脊柱をなす骨」の意味を有する語(「デジタル大辞泉」小学館)であり、上部文字部分からは「世田谷に所在の整形外科のクリニック(診療所)」の意味合いを、下部文字部分からは「世田谷に所在の人工関節・脊椎に関するクリニック(診療所)」の意味合いを看取させるものである。
また、別掲2によれば、「人工関節・脊椎」の文字は整形外科の分野において使用されている実情があり、また、「人工関節クリニック」、「脊椎クリニック」等の文字が使用され、さらに、世田谷区に所在するクリニックの名称に「世田谷○○○クリニック」などの文字が使用されている実情がある。
そして、本願商標の構成態様についてみるに、その構成は、ありふれた縦長長方形状の緑色を背景に、特異な書体とは認められない白抜きの文字と横線を表したものであるから、全体として、視覚上特異な構成態様ということはできないとみるのが相当である。
以上のことからすると、本願商標は、本願の指定役務との関係において、「世田谷に所在の整形外科のクリニック(診療所)」又は「世田谷に所在の人工関節・脊椎に関するクリニック(診療所)」程の意味合いを看取させるにとどまるものであるから、単に役務の質を普通に用いられる方法で表示するものであり、自他役務の識別標識としては認識し得ないものというのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項該当性について
請求人は、本願商標は、商標法第3条第2項の規定が適用され、商標登録を受けることができるものである旨主張し、その証拠方法として、審判請求書に添付の添付資料1ないし添付資料9及び証拠調べ通知に対する意見書に添付の添付資料1ないし添付資料5を提出している。
しかしながら、提出された証拠において本願商標と同一の商標の使用が確認できるのは、審判請求書に添付の添付資料7のパンフレットのみであり、請求人の主張によれば、当該パンフレットは、請求人のクリニックで配布し、ウェブサイトに掲載している旨主張しているが、これらの主張及び証拠からは、本願商標の使用状況などに関する事実を十分に把握することができないから、本願商標についての需要者の認識の程度を推定することができない。
また、提出された証拠からは、本願の指定役務のすべてについて、本願商標が使用されていることも確認できない。
したがって、本願商標は、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるものとは認められないから、商標法第3条第2項に規定する要件を具備するものではない。
(3)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、「本願商標は、『世田谷 人工関節・脊椎 クリニック』だけではなく、異なる意味の『SETAGAYA ORTHOPAEDIC CLINIC』という文字部分も含むものであり、全体としても一般的に使用されておらず、役務の質(内容)を直接的かつ具体的に表示したものではない。・・・本願商標は、『世田谷 人工関節・脊椎 クリニック』という日本語の文字部分と、異なる意味の『SETAGAYA ORTHOPAEDIC CLINIC』という英語の文字部分の両方を含む商標であり、少なくとも本願商標全体についてみれば、独占適応性を有するものである。」旨主張し、証拠調べ通知に対する意見書において、「病院名の日本語表記と英語表記とを整合させるのが、本願の指定役務の分野において普通であり、本願商標の文字の選択及び組合せは、当該分野において異質なものであり、本願商標は、役務の質(内容)、提供の場所を普通に用いられる方法で表示するものではない。」旨主張している。
しかしながら、本願商標の構成中の「ORTHOPAEDIC」の欧文字は、「整形外科の」の意味を有しており、別掲2のとおり、整形外科の分野において、手術等の治療の対象として「人工関節」、「脊椎」の文字が使用されていることからすると、「人工関節・脊椎」の文字は、整形外科の分野の具体的な治療の対象を表したものと認識されるというのが相当である。
そうすると、本願商標の構成中、上部文字部分と下部文字部分とは、異なる意味合いを表しているとまではいえないものであり、上記(1)のとおり、本願指定役務との関係において、それぞれの文字部分は、自他役務の識別標識としては認識し得ないものというのが相当である。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同条第2項に規定する要件を具備するものではないから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 本願商標(色彩については、原本参照。)


別掲2 証拠調べ通知書において示した事実
(1)「整形外科」の分野における「人工関節」、「脊椎」の文字の使用例(下線は審判長が付加。以下同じ。)
ア 「医療法人社団紺整会 船橋整形外科病院/船橋整形外科クリニック」のウェブサイトにおいて、「人工関節センター」の見出しの下、「活動内容」の項に「船橋整形外科病院での、人工関節適応患者さまへの人工関節の各種情報提供、手術、リハビリ、術後外来経過観察を中心とした日常診療業務を実践すること。」の記載がある。
(http://www.fff.or.jp/seikei/artificialjoint_center/)
イ 「東京大学医学部附属病院」のウェブサイトにおいて、「整形外科 人工関節センター」の見出しの下、「整形外科・人工関節センターは2016年9月より整形外科・脊椎外科の中に新設された変形性関節症、関節リウマチ等の関節疾患に対し人工関節治療が必要な患者様のための人工関節治療専門グループです。」の記載がある。
(http://www.h.u-tokyo.ac.jp/patient/depts/seikei_md_2/index.html)
ウ 「医療法人社団 大室整形外科脊椎・関節クリニック」のウェブサイトにおいて、「診察案内」の見出しの下、「当院は脊椎疾患、関節疾患(特に人工関節)を中心として治療を行う有床クリニックです。専門スタッフとともに、地域に根ざした整形外科診療を行なっていきます。」の記載がある。
(https://omuroseikei.com/contents/medical/index.html)
エ 「医療法人蜂友会 はちや整形外科病院」のウェブサイトにおいて、「はちやの治療とは」の見出しの下、治療項目の記載として「脊椎」、「人工関節」の記載がある。
(http://www.hachiya.or.jp/treatment/)
オ 「浜松医療センター」のウェブサイトにおいて、「整形外科・下肢関節再建人工関節センター」の見出しの下、「診療科の特徴」の項に「浜松医療センター整形外科では、『下肢関節再建・人工関節センター』を設置し主として股関節や膝関節疾患の治療に関して整形外科医・手術センタースタッフ・リハビリテーション科スタッフ・整形外科病棟看護スタッフなどから専門的知識をもったスタッフを集約し、股関節・膝関節疾患に対する手術的治療・術後リハビリテーション・長期経過観察などに関し高い専門性をもった診療を提供する体制を構築しております。」の記載、また、診療内容の項目として「3.脊椎疾患の外科的治療」の記載がある。
(https://www.hmedc.or.jp/department/orthopedics/)
カ 「独立行政法人国立病院機構 東京医療センター」のウェブサイトにおいて、「指導医・専修医の声」の見出しの下、「<指導医の声>」の項に「国立病院機構東京医療センターの整形外科の特徴は、外傷・脊椎・人工関節の3本柱で幅広い疾患を取り扱い、年間の手術件数は約1250件あります。」の記載がある。
(http://www.ntmc.go.jp/p_other/contents/147.html)
(2)「人工関節クリニック」、「脊椎クリニック」等の文字の使用例
ア 「名古屋整形外科・人工関節クリニック」のウェブサイトにおいて、「人工関節の手術を考えている方だけでなく、腰痛、骨折などでお困りの方やリハビリなど手術をしない治療を希望の方も診察しています」の記載がある。
(http://nagoya-seikei.com/)
イ 「京都府立医科大学 整形外科」のウェブサイトにおいて、「専門クリニックのご案内」の見出しの下、人工関節手術を扱うクリニックとして「股関節クリニック」、「膝関節クリニック」の記載があり、脊椎の手術等を扱うクリニックとして「脊椎・脊髄クリニック」の記載がある。
(http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/orthoped/professional_clinic/)
ウ 「大阪病院」のウェブサイトにおいて、「人工膝関節クリニック」の見出しの下、「人工膝関節外科クリニックの方針」の項に「人工関節の耐久性向上を目指して大腿骨側、脛骨側共にうまくかみ合わせた状態で回旋の動きを許容する最新の人工関節を使用しています。」の記載がある。
(https://osaka.jcho.go.jp/sikansetsu/)
エ 「清水脊椎クリニック」のウェブサイトにおいて、「首、腰の病気に特化した低侵襲で専門性の高い医療を行なっています。」の記載がある。
(https://www.sekitsui.jp/)
オ 「アレックス脊椎クリニック」のウェブサイトにおいて、「アレックス脊椎クリニックの特徴」の見出しの下、「当院は脊椎疾患専門のクリニックです。」の記載がある。
(https://ar-ex.jp/spine/512810126198/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E8%84%8A%E6%A4%8E%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF%E3%81%AE%E7%89%B9%E5%BE%B4)
カ 「あかまる整形外科・脊椎クリニック」のウェブサイトにおいて、「専門領域の脊椎・脊髄疾患はもちろん、関節疾患やスポーツ傷害、外傷など整形外科全般の診療も、誠心誠意行いますので、お気軽にご相談ください。」の記載がある。
(https://www.akamaru-clinic.jp/)
(3)東京都世田谷区に実在する診療所の名称に「世田谷」及び「クリニック」の文字と「診療科目名」が組み合わされて使用されている例
ア 「世田谷脳神経外科クリニック」のウェブサイトにおいて、「診療科目」の項に「脳神経外科」の記載がある。
(http://setagaya-n-s.com/practice.html)
イ 「世田谷メンタルクリニック」のウェブサイトにおいて、「院長ごあいさつ」の見出しの下、「世田谷メンタルクリニックは小田急線豪徳寺駅および東急世田谷線山下駅すぐ近くの心療内科・精神科クリニックです。」の記載がある。
(http://www.setagayamental.jp/clinic.html)
ウ 「世田谷歯科クリニック」のウェブサイトにおいて、「世田谷歯科クリニックは、歯の治療を通じ地域に密着した皆様に愛される歯科として、様々な診察内容で皆様の幸せのお手伝いができればと考えています。」の記載がある。
(http://www.set-dental.com/)


審理終結日 2019-07-18 
結審通知日 2019-07-19 
審決日 2019-07-31 
出願番号 商願2017-78078(T2017-78078) 
審決分類 T 1 8・ 17- Z (W44)
T 1 8・ 13- Z (W44)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 旦 克昌根岸 克弘 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 小俣 克巳
木住野 勝也
商標の称呼 セタガヤオーサペディッククリニック、セタガヤオルソペディッククリニック、オーサペディッククリニック、オルソペディッククリニック、セタガヤオーサペディック、セタガヤオルソペディック、セタガヤジンコーカンセツセキツイクリニック、ジンコーカンセツセキツイクリニック、セタガヤジンコーカンセツセキツイ 
代理人 磯田 志郎 

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