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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W09
審判 全部申立て  登録を維持 W09
管理番号 1354331 
異議申立番号 異議2019-900070 
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-02-25 
確定日 2019-07-25 
異議申立件数
事件の表示 登録第6103465号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6103465号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6103465号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲に示すとおりの構成よりなり,平成30年3月22日に登録出願,第9類「コンピュータ,コンピュータ周辺機器,コンピュータソフトウェア(記憶されたもの),コンピュータプログラム(記憶されたもの),記録済みコンピュータ用ゲームソフトウェア,電子信号送信機,信号の電気的遠隔制御装置,電気スイッチ,警報器,盗難防止用電気式設備」を指定商品として,同年11月13日に登録査定,同月30日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は,「Think」の欧文字よりなる標章(以下「使用標章」という。)であり,申立人の業務に係る商品(ビジネス向けPC関連商品)を表示するものとして需要者の間に広く認識されている標章であると主張するものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するものであるから,その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第73号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第10号について
ア 申立人は,香港に本店を置く,パーソナルコンピュータ,スマートフォン及びそれらの関連商品のメーカーであるレノボ・コーポレイション(以下「レノボ」という。甲2)を頂点とする世界的企業体「レノボグループ」に属するシンガポール法人であり,後述するレノボの世界的ブランドである「THINK」関連の商標を管理する法人である。
レノボは,1984年(昭和59年)に設立され,IBM社のPC部門や日本電気(NEC)のPC部門などを買収し,2013年(平成25年)からは世界シェア1位のPCベンダーとなった。2014年(平成26年),レノボは,Google社から,同社の携帯電話端末部門を買収,2018年(平成30年)6月のTOP500(コンピューター性能ランキング)でスーパーコンピュータのシェア世界1位のベンダーとなった(甲2)。
イ 我が国では,レノボは,2011年(平成23年)にNECのPC部門を買収し,「合弁会社NECレノボ・ジャパングループ」を設立し,2017年(平成29年)に富士通のPC部門を買収し,レノボグルーブは,国内で43.8%という圧倒的なシェアを得た(甲3)。
ウ 2004年(平成16年)のIBM社から買収したPC部門には,同社の世界的ブランドであったノートPC「ThinkPad」事業が含まれる(甲4)。「ThinkPad」ブランドは,IBM社内で全社的に使用された標語であった「THINK」に由来する(甲3)。
IBM社による「THINK」の思想は,買収後,レノボによって連綿と受け継がれ,ビジネス向けPCブランドとして「THINK」が引き続き採用されている(甲2,甲4?甲6)。
レノボのビジネス向けPC関連製品は,「THINKブランド」,「THINKシリーズ」,「THINKファミリー」と総称されるほか,単に「THINK」とも称され(甲7?甲12),第三者によっても,レノボのビジネス向けPC関連製品を紹介するに当たり,「THINKシリーズ」,「THINKファミリー」,「THINK製品」,「THINKブランド」といった総称が使用されている(甲13?甲58)。「・・・シリーズ」,「・・・ファミリー」,「・・・製品」といった表現は,連続性・関連性を有する一連のものを総称する際に用いる表現であり,「・・・」の部分が主,「シリーズ」,「ファミリー」,「製品」の部分が従として理解されるから,「THINKシリーズ」等の場合,当然「THINK」の部分が(商標的に見て)要部である。
レノボが提供する「Think」を接頭辞とする製品は「THINK」(THINK製品,THINKファミリー,THINKブランド)と総称されており,かかる事実は,我が国はもちろん,世界的にも広く認識されている。また,レノボは,「THINK」ブランドが適切に保護されるよう世界各地において数々の「THINK」を接頭辞とする商標の登録を受け(甲59),日本でも,同ブランドの保護のために,「THINK」を接頭辞とする登録商標を所有している(甲60?甲73)。
エ 本件商標は,緑色の,やや縦長のフォントをもって欧文字「ThinkHome」を横書きに表してなるものであり,その文字要素のうち「i」の情報の点の部分には二重の円弧が覆い被さるように描かれているが,かかる図案化によっても欧文字からなる文字要素の認識を妨げられず,本件商標が欧文字「Think」を接頭辞とする商標であることを容易に理解することができる。
「THINK」を接頭辞とする商標が,「THINK」(THINK製品,THINKファミリー,THINKブランド)と総称されているから,レノボ製品が属する分野においては,「THINK」を接頭辞とする商標は,「THINK」の部分のみをもって取引に資されることが少なくないといえる。
してみれば,本件商標も,同様に,「シンク」と略称され,「考える,思う」等の観念が生ずるとみるのが相当である。
よって,本件商標は,申立人が属するレノボグループを象徴する商標「THINK」と称呼及び観念において同一であるといえるから,本件商標は,使用標章に類似し,本件商標の指定商品である「コンピュータ,コンピュータ周辺機器,コンピュータソフトウェア(記憶されたもの),コンピュータプログラム(記憶されたもの),記録済みコンピュータ用ゲームソフトウェア,電子信号送信機,信号の電気的遠隔制御装置,電気スイッチ」は,レノボの「THINK」ブランドの製品であるコンピュータやコンピュータ周辺機器,携帯情報端末等と,製造者,販売場所,需要者,用途等が一致するから,これらの商品は互いに類似する。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
上記において述べたとおり,「THINK」を接頭辞とする商標は,レノボ製品が属する分野,すなわちレノボ製品に類似する本件商標の指定商品が属する分野において,レノボ製品を表象するブランドとして理解,認識され,「THINK」,「THINKブランド」,「THINKファミリー」,「THINK製品」のように呼称されており,この事実は相当程度我が国においても浸透している(甲5?甲58)。
してみれば,同様に「THINK」を接頭辞とする本件商標をその指定商品に使用した場合,本件商標が,あたかもレノボの「THINK」ブランドの一つであるかのごとく誤信されるおそれがあるから,本件商標権者による本件商標の使用により,レノボないしレノボグループの業務を表象する「THINK」プランドが真っ先に想起される可能性が高いことは明らかであり,その場合には,あたかも本件商標権者が,レノボないしレノボグループと何らかの関連を有する者であるかのごとく誤認混同されるおそれを否定することは決してできない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 当審の判断
(1)使用標章の周知著名性について
ア 申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば,以下のとおりである。
(ア)申立人は,香港に本店を置くパーソナルコンピュータ,スマートフォン等のメーカーであるレノボ・コーポレイション(レノボ)のグループ(レノボグループ)に属する法人であることがうかがえる。
(イ)レノボは,1984年(昭和59年)に設立され,IBMのPC部門や日本電気のPC部門などを買収し,2013年(平成25年)からは世界シェア1位のPCベンダーとなった(甲2)。
(ウ)我が国において,レノボは2011年(平成23年)に「合弁会社NECレノボ・ジャパングループ」を設立し,2017年(平成29年)の富士通とレノボのPC事業の統合で,国内パソコン出荷台数では,レノボグルーブのシェアは43.8%で1位となった(甲3)。
(エ)レノボは,2004年(平成16年)にIBMとパーソナルコンピュータ事業の買収を含む戦略的提携を発表し,2005年(平成17年)頃以降,現在までパーソナルコンピュータ「ThinkPad」やX86サーバー・ワークステーション「ThinkStation」及び「ThinkCentre」の製造販売を行っている(甲4)。
(オ)レノボグループ及び他者のウェブページにおいて,レノボグループのパーソナルコンピュータ「ThinkPad」,「ThinkStation」及び「ThinkCentre」などを総称して,「Thinkブランド」,「Thinkシリーズ」,「Thinkファミリー」,「Think製品」及び「Think」などと表記している(甲7?甲57)。
また,書籍「戦略的サプライチェーンマネジメント」(2017年(平成29年)9月20日発行)において,「Thinkブランド」,「Thinkファミリー」及び「Think製品」と表記している(甲58)。
(カ)「ThinkPad」,「ThinkStation」及び「ThinkCentre」などの商品の我が国における販売台数,売上額,出荷台数,シェアなど取引実績に係る主張はなく,それを示す証左は見いだせない。
なお,「Think」の文字が単独でレノボグループの商品又はその包装に付されていることを示す証左(甲10)は見受けられるが,商品名に「Think」の文字が冠された商品全体の取引実績を示す証左は見いだせない。
イ 上記アの事実からすれば,レノボグループは2005年(平成17年)頃から現在までパーソナルコンピュータ「ThinkPad」やワークステーション「ThinkStation」及び「ThinkCentre」などの商品の製造販売を行っており,それら商品を総称して「Thinkブランド」及び「Thinkシリーズ」などと表記しているものが相当数あることから,「Think」を冠したシリーズ商標として使用されていることが認められる。
しかしながら,パーソナルコンピュータ「ThinkPad」やワークステーション「ThinkStation」及び「ThinkCentre」の取引実績及び商品名に「Think」の文字が冠された商品全体の取引実績を示す証左はいずれも見いだせないから,これらの証拠によっては,我が国における市場比率(販売シェア)等の量的規模を客観的な使用事実に基づいて,使用標章の使用状況を把握することができず,使用標章の周知著名性の程度を推し量ることができない。
また,他に「Think」の文字が他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めるに足る事情は見いだせない。
そうすると,「Think」の文字からなる使用標章は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)本件商標と使用標章について
ア 本件商標について
本件商標は,別掲のとおり,緑色で表された「Th」の文字と「nkHome」の文字との間に,「i」の文字の一部である「・」(ドット)に二重の円弧を配した文字を表示してなる構成からなるものであるところ,その構成及び態様からすれば,当該二重の円弧を配した文字は,やや図案化されているものの「i」の文字を図案化して表したものと把握され得るから,本件商標は,全体として「ThinkHome」の文字を表したものと認識されるものである。
また,本件商標の構成中,「Think」は,「シンク」の読み及び「考える,思う」等の意味を有する英語として,「Home」は,「ホーム」の読み及び「我が家,家庭」等の意味を有する英語として,それぞれ,我が国で親しまれている語であるから,両語の間に識別力の点からも軽重の差はなく,かつ,「Home」の表現をもって商品の品質・特徴を表すものとして普通に使用されているとはいい難く,この文字部分を捨象するほど自他商品の識別標識として機能を果たさないとまではいえないから,ことさら,「Think」の文字部分のみが印象付けられることはないというべきである。そして,両語の組合せ全体から生じる「シンクホーム」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものである。
そうすると,本件商標は,その構成文字全体をもって,一連一体のものとしてのみ看取,把握されるとみるのが相当であり,これより「シンクホーム」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
イ 使用標章について
使用標章は,「Think」の文字からなるものであるから,当該文字に相応して,「シンク」の称呼を生じ,当該文字は「考える,思う」等の意味を有する語であるから,当該文字よりは,「考える,思う」の観念を生じるものである。
ウ 本件商標と使用標章との類否について
本件商標と使用標章との類否を検討すると,両者は外観において後半部の「Home」の文字の有無という顕著な差異を有するから,外観上,判然と区別することができるものである。
本件商標から生ずる「シンクホーム」の称呼と使用標章から生ずる「シンク」の称呼を比較すると,両者は後半部において「ホーム」の音の有無という差異を有するものであるから,それぞれを称呼するときは,称呼上,明瞭に聴別し得るものである。
本件商標は,特定の観念が生じないのに対し,使用標章は「考える,思う」の観念を生じるから,両商標は,観念上,相紛れるおそれはない。
そうすると,本件商標と使用標章とは,その外観,称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(3)商標法第4条第1項第10号該当性について
上記(1)イのとおり,使用標章は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,他人(申立人)の業務に係る商品であることを表示するものとして,我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものである。
そして,上記(2)ウのとおり,本件商標と使用標章は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標は,別掲のとおりの構成からなるものであり,使用標章は,上記2のとおり,「Think」の文字からなるところ,上記(2)ウのとおり,互いに紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標というべきものであり,その類似性の程度は決して高いとはいえないものである。
次に,使用標章は,上記(1)イのとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人及びその関連会社の業務に係る商品「ビジネス向けPC関連商品」を表すものとして,我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものである。
さらに,使用標章は,「Think」の文字からなるところ,「考える,思う」等の意味を有する成語であることから,その独創性の程度は低いものである。
また,本件商標の指定商品と使用標章の商品とは,共に第9類の「電子応用機械器具」の範ちゅうに属する商品であるから,取引者,需要者は共通しており,その生産者や販売経路などの取引の実情も共通している。
以上のことからすれば,本件商標と使用標章とは,外観において「Think」の部分を共通とし,称呼において「シンク」の称呼を共通にする部分を有するとしても,類似性の程度は決して高いものではない。
そして,使用標章は,申立人及びその関連会社の業務に係る商品を表すものとして,我が国の需要者の間に広く認識されていたものではなく,その独創性の程度は低いことから,両商標の指定商品の取引者,需要者及び取引の実情が共通するとしても,本件商標権者が,本件商標をその指定商品に使用した場合,これに接する取引者,需要者が,使用標章ないし申立人を想起又は連想するようなことはないというべきであり,該商品が,申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,商品の出所について,混同を生じさせるおそれはないものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するものではなく,その登録は,同条第1項の規定に違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲 本件商標(色彩については原本参照。)


異議決定日 2019-07-17 
出願番号 商願2018-33473(T2018-33473) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W09)
T 1 651・ 25- Y (W09)
最終処分 維持  
前審関与審査官 浦崎 直之 
特許庁審判長 薩摩 純一
特許庁審判官
早川 文宏
平澤 芳行
登録日 2018-11-30 
登録番号 商標登録第6103465号(T6103465) 
権利者 ▲寧▼波智▲軒▼物▲聯▼▲網▼科技有限公司
商標の称呼 シンクホーム 
代理人 横川 聡子 
代理人 伊藤 寛之 
代理人 北口 貴大 
代理人 奥野 彰彦 
代理人 SK特許業務法人 
代理人 岩瀬 吉和 
代理人 永岡 愛 
代理人 城山 康文 

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