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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X1825
管理番号 1353296 
審判番号 取消2017-300167 
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2017-03-08 
確定日 2019-06-24 
事件の表示 上記当事者間の登録第5190866号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5190866号商標の指定商品中,第18類「かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘」及び第25類「全指定商品」についての商標登録を取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5190866号商標(以下「本件商標」という。)は,「Attraction」の文字を標準文字で表してなり,平成20年5月12日に登録出願,第18類「かばん類,袋物,皮革製包装用容器,愛玩動物用被服類,携帯用化粧道具入れ,傘」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物」を指定商品とし,同年12月19日に設定登録されたものである。
なお,本件審判の請求の登録は,平成29年3月21日になされている(以下,当該登録前3年以内を「要証期間内」という。)。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べた。
本件商標は,その指定商品中,第18類「かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物」について,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが,継続して3年以上日本国内において使用した事実が存しないから,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。

第3 参加人の主張
1 参加の申請
本件審判については,平成29年8月24日付けで,株式会社アトラクションズから参加申請書(請求人側への参加)の提出があり,当審において,同年10月13日付けで当該参加の申請を許可する旨の決定を行った。
2 答弁に対する弁駁
(1)デザイン企画書(乙13)に掲載されたデザイン画のパーカー(以下「デザイン画パーカー」という。)においては本件商標が自他商品識別機能を有する態様で使用されていると認められないこと
デザイン画パーカーには,「Surfing」,「Nature&Blue」及び「Attraction」の文字が3段に横書きされているところ(以下「本件使用商標」という。),このような使用態様では,需要者から見た場合,本件商標を含む本件使用商標全体に,出所識別機能,自他商品識別機能が認められるのであり,その一部である本件商標部分に独立して自他商品識別機能が認められることはない。
以上からすると,本件使用商標は,デザイン画パーカーの表部分中央やや上部付近にまとまって記載がされ,3列の横幅や間隔の配置,3列それぞれの文字の大きさ太さ,さらには刺繍方法の調和によって,その外観において,全体として一つの商標を構成しているといえる。
「Surfing」は「波乗り,サーフィン」を意味し,「Nature&Blue」は「自然と青色」を意味し,「Attraction」は「魅力・引き付ける」を意味する。
これらの意味と,「Surfing」という文字があることからすれば,デザイン画パーカー中の「Nature&Blue」の文字は自然と青色は海を連想させ,そして「Attraction」の文字は,サーフィンや海の魅力といった意味に理解するのが自然な解釈である。すなわち,デザイン画パーカー中の3列の各文字の意味はそれぞれ関連し合い,つなげて1つのまとまりとして意味をなしているのであり,逆にこのように配置的にも意味的につながりをもった3列の各文字を分断してとらえることは不自然な解釈である。
したがって,デザイン画パーカー中の3列の各文字は意味的にも,全体として一つの商標を構成している。
(2)本件商標が使用された事実はないこと
ア 被請求人は,株式会社メルカリが運営するインターネット上のフリーマーケットサービスであるメルカリ(以下「メルカリ」という。)において出品されていた商品「パーカー」(以下「被請求人提示パーカー」という。)を根拠にして,品番「7753034」のパーカーに「Attraction」の文字が刺繍されているのであるから,本件商標が使用された事実があると主張する。
しかし,品番「7753034」のパーカーの現物は,参加人が平成29年11月21日にメルカリで購入したパーカー(以下「参加人購入パーカー」という。)であり,参加人購入パーカーには「Attraction」の文字の刺繍はない。
他方で,被請求人提示パーカーは,被請求人が当該パーカーの刺繍の版下データであると主張するものとも整合しないものであり,かつ,メルカリにおける被請求人提示パーカーの出品,落札の日時の不自然な動きからすれば,本件紛争になってから何らかの加工を施した上で,メルカリに出されたとしか考えられないものである。
イ 品番「7753034」の商品「パーカー」は,「Attraction」の文字の刺繍がない参加人購入パーカーであること
(ア)品番「7753034」の商品「パーカー」として参加人購入パーカーが現存していること
品番「7753034」の商品「パーカー」は,参加人購入パーカー(丙1)であり,参加人購入パーカーには「Attraction」の文字の刺繍はない。
(イ)「BEACHSOUND」のインスタグラムの公式ホームページでも,参加人購入パーカーが紹介されていること
エクシス株式会社(以下「エクシス社」という。)が株式会社アートヴィレッジから引き継いだ「BEACHSOUND」ブランドには,公式のインスタグラムが存在し,新商品等について定期的に紹介がされていた。この公式インスタグラムの平成27年11月11日にアップされたページには,本件で問題となっている商品「パーカー」が紹介されているが,そのパーカーは,「Attraction」なる文字が刺繍されていない参加人購入パーカーと同一のものである(丙8)。
ところで,品番「7753034」の商品「パーカー」は,平成27年11月2日にエクシス社に納入されている(乙10)。そうすると,その9日後にアップされた公式インスタグラムのページは,エクシス社が新着の新商品である品番「7753034」の商品「パーカー」を紹介したものであると考えられる。
以上からして,参加人購入パーカーが品番「7753034」の商品「パーカー」であることは明らかである。
(ウ)参加人購入パーカーがリメイク等の加工がなされた可能性は皆無であること
被請求人は,参加人購入パーカー(丙1)が参加人の意向に沿ったリメイク等の加工がなされていないとは言い切れないと主張する。
参加人購入パーカーは,「BEACHSOUND」ブランドの公式インスタグラムで,平成27年11月に紹介されている上,それがメルカリに出品されたのは,同28年11月12日であり(丙11の2),被請求人が品番「7753034」のパーカーに「Attraction」の文字が使用されているなどと主張するよりも相当前のことである。参加人が半年後に当該主張がされることを想定して予め加工することなどあり得ない。
ウ 被請求人提示パーカーは参加人購入パーカーに加工を施したものと考えられること
品番「7753034」のパーカーの現物として参加人購入パーカーが存在しているところ,同一品番で異なるデザイン,仕様の商品が制作されることはない。
(ア)被請求人提示パーカーの刺繍と版下データとに明らかな差異があること
加工指示書(乙4)及び版下データ(乙5)が本物であり,当該版下データどおりに発注,制作されたものが被請求人提示パーカーであるならば,商品「パーカー」の完成品には,版下原寸と同じ文字の大きさ位置関係で,「Surfing」,「Nature&Blue」及び「Attraction」の各文字が刺繍されることになる。
ところが,検証報告書(丙9)にあるとおり,被請求人提示パーカーの刺繍と,被請求人提示パーカーの版下データであると主張しているものを照合してみると,上段の「Surfing」「Nature&Blue」と下段の「Attraction」との位置関係には,パーカーの収縮等の誤差では説明のつかない明らかな差異が認められるのであり,被請求人提示パーカーが,被請求人が主張する版下データを元に制作されたものでないことは明らかである(丙9,10)。要するに,被請求人提示パーカーも,被請求人が当該パーカーの刺繍の版下データであるとするものも,いずれも品番「7753034」のものではないのである。
(イ)被請求人提示パーカーがメルカリに出品され,落札された日時が不審であること
株式会社メルカリヘの照会で,被請求人提示パーカーがメルカリに出品された日時が平成30年1月13日の17時47分41秒であること,落札された日時が同日の20時40分48秒であることが分かっている。
被請求人提示パーカーのメルカリにおける出品,落札の動きは以上のとおりであり,参加人購入パーカーが品番「7753034」のパーカーの現物であると参加人が主張したのを受けるように,被請求人提示パーカーがメルカリに出品され,3時間足らずで落札され(参加人購入パーカーは,出品から落札まで約1年を要している(丙11の2)。),その約10日後には被請求人が被請求人提示パーカーの存在を主張しているのである。そうすると,被請求人において,被請求人提示パーカーを用意し,メルカリに出品すると同時に落札されるようにしたと考えてもおかしくない。
エ 加工指示書(乙4,16)が被請求人の主張を裏付けるものでなく,その作成経緯が疑わしいこと
加工指示書(乙4,16)だけでは,そもそも,当該加工指示書に記載されたものが現実に製造されたことまでを裏付けるものではない。前述したとおり,品番「7753034」の製品として現実に製造されて公式ホームページで紹介され,現物も存在しているパーカーは,当該加工指示書に記載されているものではないのであるから,それにもかかわらず,当該加工指示書に記載されているから当該加工指示書に記載のパーカーが製造されていることは証拠上,明らかであるなどという主張はこじつけである。
しかも,加工指示書(乙4,16)の作成経緯には相当に疑わしいところがある。加工指示書(乙4)と,そこに手書き部分が加わった加工指示書(乙16)の2つが存在していることについて,被請求人は,手書き部分がないものを平成27年7月28日にコピーしたのであって,それが加工指示書(乙4)であり,その後,同年8月10日に,原本に手書き部分が書き加えられ,それが加工指示書(乙16)であると説明する。
しかし,平成27年7月28日にコピーされたはずの加工指示書(乙4)の「最終仕様確認印欄」には,同年8月10日付けの担当者(矢野氏,山崎氏)の押印がある。これはありえない矛盾であり,この点にかかる被請求人の説明は破綻している。被請求人が説明し得ない異なる2つの加工指示書が存在しているということは,加工指示書(乙4,16)については,何らかの事後的加工が施されている疑いがあるということである。
(3)まとめ
以上のとおり,品番「7753034」のパーカーの現物は,「Attraction」の文字の刺繍がない参加人購入パーカーであり,同品番のパーカーに「Attraction」の文字が刺繍されていた事実も,本件商標が使用された事実も存在しない。

第4 被請求人の答弁
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨次のように述べた。
1 本件商標権者は,被服等を企画・製造・販売することを主たる業務としている。
2 商標使用の事実について
(1)本件商標権者は,エクシス社にパーカーのデザイン作成を依頼し,その依頼を受けて,エクシス社のデザイナーである矢野氏がデザインの企画をした(乙1?4)。
デザイン企画の際,矢野氏は,本件商標権者から,「Attraction という登録商標を保有しているので,それを入れてほしい。」との要望を受けた。
本件商標権者は,企画のデザインの「Surfing」や「Nature&Blue」の文字にインパクトがないことから,「Attraction」をデザイン中に付加することを考えて提案し,それが受け入れられ,「Attraction」を含む上記のデザインの企画がされた。
デザイン画パーカーの品番は「7753034」であり,以下の3種類のデザインが作成された(乙1?8)。
ア 09/BK・・・09はエクシス管理色番号,BKはBlack(黒)を意味する。
イ 31/SP・・・31はエクシス管理色番号,SPはSalmon Pink(サーモンピンク)を意味する。
ウ 79/N・・・79はエクシス管理色番号,NはNavy(ネイビー)を意味する。
(2)エクシス社のデザイナーで企画担当である矢野氏と生産管理の山崎氏は,パーカーのデザインについて平成27年7月28日に打合せを行った(乙1?5,13?17)。
同月28日に矢野氏が,サンプル仕様及びロゴに関し,デザイン企画書(乙1),縫製仕様書(乙2),仕様規格書(乙3),加工指示書(乙4),品番7753034版下原寸(乙5)を作成し,同月28日に生産管理部の山崎氏と打ち合わせ,同年8月10日にサンプル仕様及びロゴに関する最終仕様の確認の打合せをし,将来の若干の修正を許容することを了解の上,基本的に合意に達し,同日それぞれが記名・押印をし,それらの写し(乙1?5)を山崎氏が保有し,それらの原本(乙13?17)は矢野氏が保有した。
その後,若干の修正が行われた。つまり,同年8月10日及び同月24日に矢野氏が仕様規格書の原本に手書きの別紙を加えたもの(乙15)を作成し,同時に加工指示書の原本に手書きで修正を加えたもの(乙16)を作成して,修正が加えられた。
(3)本件商標権者は,前記企画に基づくパーカーを製造依頼するため,香港に住所を有するアパレル商品の製造法人であるLAPIN INTERNATIONAL Co.,LTD(以下「LAPIN社」という。)に製造注文した。LAPIN社は,その注文に応じて,パーカーを製造し,輸入業者であるSMT PLANNING CO.LTD(以下「SMT社」という。)を通じて日本に輸入し,平成27年10月30日付けで3通の請求書(乙6)を発行した。
(4)LAPIN社の製造したパーカーをSMT社を通じて受け取った本件商標権者は,エクシス社に対し,平成27年11月2日にその商品を引き取ってくれるよう指示し(乙10),同月30日にその請求書(乙9)を発行した。
(5)さらに,製造注文を受けた本件商標権者は,エクシス社に対し,パーカーの品番「7753034」の09BKを2着,31SPを4着,79Nを4着納品し,エクシス社は保有するいくつかの店舗においてパーカーを販売した(乙11)。
(6)本件商標権者は,パーカーの現物を完売しており,本件審判の請求を受けたときには既に手元にない状況であった。
参加人が発見した参加人購入パーカー(丙1の1?6,丙11別紙2)は,品番「7753034」に相当する商品「パーカー」から「Attraction」が表示されていないものである。このように,オリジナルなデザインとは別に,例えば「Attraction」を外したものを作成してほしいと店舗から直接製造元に注文を出して作成することも業界では見られることであり,したがって,参加人が発見したパーカーは,エクシス社の店舗から直接LAPIN社に「Attraction」を外したものを作成してほしいと依頼して製造されてできたものである可能性がある。
しかしながら,被請求人提示パーカーと参加人購入パーカーとは同一品番の中で,色彩の異なる別種類の商品であり,参加人購入パーカーがあるから被請求人提示パーカーはない,とすることは論理的でなく全く不合理である。
(7)本件商標権者は,LAPIN社に対する発注書類を入手しようとしたが,LAPIN社は既に破産して消滅している(乙19)ため入手できない。また,エクシス社からの発注書も見当たらない。
(8)参加人は,品番「7753034」の製品として現実に製造されたパーカーには「Attraction」の文字が入っていないこと,及びエクシス社のインスタグラム公式ホームページに「Attraction」の文字が入っていない(丙8)ことから,品番「7753034」の製品の現物は,「Attraction」の文字が入っていないパーカーである旨主張する。
しかしながら,そもそもエクシス社のインスタグラム公式ホームページにおいて,全てのパーカーが掲載されているわけではなく「Attraction」の文字が入っていないパーカーが紹介されているからといって,それだけとは限らず,「Attraction」の文字が入っているパーカーが別途,存在するのである。現に,被請求人提示パーカーの現物が発見され,それには,「Attraction」が入っている。
参加人は,「被請求人の説明によれば,品番『7753034』のパーカーの正規デザインは,『Attraction』の文字の入ったものであり,それを平成27年11月2日付引取指示書(乙10)をもってエクシス社に引き渡したはずであるのに,その9日後のエクシス社の公式ホームページでは,正規のデザインではないパーカーが紹介されていたことになる。被請求人の説明によるならば,わずか9日間の間に,エクシス社の店舗が勝手に直接製造元に『Attraction』の文字を外したものを製造させて輸入するなりして,正規デザインでないものが作られ,公式ホームページで紹介されたことになる。余りに不合理な説明である。」と主張している。
しかしながら,平成27年11月2日付の引取指示書(乙10)は,一例であり,当該引取指示書はこれだけではない。つまり,当該引取指示書に基づいて被請求人提示パーカーが取引されたとすることがこじつけで理由がない。
また,エクシス社の公式ホームページでは,「Attraction」の入っていないパーカーが紹介されているからといって,それが全てではなく,「Attraction」の入ったパーカーが取引され販売されていたのである。
(9)以上のとおり,商品の企画から,注文,製造,納品,商品取引,現物が市場に出回っていた事実から,要証期間内に,本件商標が使用されていたことは,証明されている。

第5 当審の判断
被請求人は,要証期間内に,本件商標権者が,本件審判の取消請求に係る指定商品中の第25類「パーカー」について本件商標を使用している旨主張するので,以下検討する。
1 事実認定
証拠及び当事者の主張によれば,以下の事実が認められる。
(1)本件商標権者,LAPIN社及びエクシス社について
ア 本件商標権者は,被服等を企画・製造・販売することを主たる業務とする企業である(被請求人の主張)。
イ LAPIN社は,香港に住所を有するアパレル商品の製造法人である(被請求人の主張)。
ウ エクシス社は,小売業,卸売業,ファッションデザイン事業等を目的とし,平成27年6月22日に設立した法人であり,サーフ系ファッションブランド「Beach Sound」を展開し,平成27年4月に民事再生法を申請した株式会社アートヴィレッヂの受け皿会社として設立された(丙4,5)。
(2)デザイン画パーカーについて
デザイン画パーカーは,品番を「7753034」とし,2015年(平成27年)の秋冬用として企画された商品「パーカー」のデザイン画であって,当該商品の胸部には,「Surfing」,「Nature&Blue」及び「Attraction」の文字が記載されている。そして,デザイン画パーカーには,Black(黒),Pink(サーモンピンク)及びNavy(ネイビー)の3色がある(乙13?16)。
(3)本件商標権者によるパーカーの製造依頼及びエクシス社への商品の引渡しについて
ア LAPIN社とSMT社に係る2015年(平成27年)10月15日付け売買契約書(乙8)及びLAPIN社が輸入業者SMT社に宛てた同年10月30日付のインボイス(乙6)によれば,それぞれの品名欄において商品「Tシャツ」と商品「パーカー」の記載が異なるとしても,品番「7753034」で一致すること,商品の品質が男性用ニット製であること,商品の色彩(黒,サーモンピンク,ネイビー)毎の合計数量がほぼ一致することに照らせば,LAPIN社は,当該売買契約に基づき,ブランド名「BEACH SOUND」に係る品番「7753034」の商品「パーカー」,総計651枚を,SMT社に対して輸出したと認められる。
イ 本件商標権者がエクシス社に宛てた2015年(平成27年)11月2日付けの引取指示書(乙10)及び本件商標権者がエクシス社に宛てた同日付けの納品書(乙11)によれば,本件商標権者は,エクシス社に平成27年11月2日付けで,ブランド名「Beach Sound」に係る品番「7753034」の商品「パーカー」,総計651枚を引き渡したと認められる。
ウ 本件商標権者がエクシス社に宛てた2015年(平成27年)11月30日付けの請求書(乙9)によれば,本件商標権者は,品番「7753034」に係る商品,総計651枚について,その代金をエクシス社に請求したと認められる。
(4)エクシス社に係るインスタグラムに掲載された商品「パーカー」について
エクシス社の「BeachSound」のインスタグラムでの公式ホームページ(平成27年11月11日,丙8)には,オレンジ色の商品「パーカー」(以下「インスタグラム掲載商品」という。)が掲載され,その胸部に「Surfing」の文字及び「Nature&Blue」の文字が表示されている。しかしながら,インスタグラム掲載商品には,「Attraction」の文字の表示はない。
(5)参加人購入パーカーについて
参加人購入パーカー(丙1の1?6,丙11の1別紙2)は,参加人が平成29年11月21日にメルカリで購入した商品であって,オレンジ色でその胸部に「Surfing」の文字及び「Nature&Blue」の文字が付されているが,「Attraction」の文字の表示はない。そして,参加人購入パーカーは,その背織のタグ(丙1の4,丙11の1別紙2の5葉目)には「Beach Sound」の文字が,内側タグには品番「7753034」(丙1の5)及び「エクシス(株)」(丙1の6)の文字がそれぞれ付されている。
(6)被請求人提示パーカーについて
被請求人提示パーカー(乙12)は,平成30年1月13日にメルカリに出品され,同日に購入された商品(丙11の2,丙13)であって,その胸部に「Surfing」の文字,「Nature&Blue」の文字及び「Attraction」の文字が付されている。
(7)被請求人提示パーカー(乙12)の刺繍と版下データ(乙17)を照合した,「Noubu’s Art Maker」による検証報告書(丙9)には,「甲(審決注:被請求人)が情報提示した『Attraction』の刺繍が入った商品画像の商品の刺繍と本版下データとの間には,収縮等の誤差では説明のつかない明らかな差異があり,甲が情報提示した『Attraction』の刺繍が入った商品画像の商品の刺繍は,本版下データを基に制作されたものでないことが確認できます。他方で,・・・(略)・・・乙(審決注:参加人)が情報提示した商品画像の商品の刺繍と,本版下データの『Attraction』を除いた部分は整合していることが確認できます。」の記載がある。そして,当該検証報告書の写真11によると,「Attraction」の文字部分は,版下データと一致していない。
2 判断
上記1において認定した事実によれば,以下のとおり判断できる。
(1)本件商標は,上記第1のとおり,「Attraction」の文字を標準文字で表してなるものである。
(2)上記1(3)のとおり,LAPIN社がSMT社に輸出した商品「パーカー」と本件商標権者がエクシス社に引き渡した商品「パーカー」とは,その取引時期が近接していること,そのブランド名「Beach Sound」,品番「7753034」,及び商品の合計数量が一致することからすると,本件商標権者は,LAPIN社に対しブランド名「Beach Sound」に係る品番「7753034」である商品「パーカー」(以下「使用商品」という。)を製造依頼し,平成27年10月30日頃に輸入業者SMT社を介して受領し,受領した当該商品を,同年11月2日にエクシス社に引き渡したと推認できる。
(3)なお,被請求人は,本件商標権者はデザイン画パーカーが掲載されたデザイン企画書等(乙13?17)に基づいて,パーカーをLAPIN社に製造依頼した旨主張する。
しかしながら,当該デザイン企画書等に基づいて,本件商標権者がLAPIN社に製造依頼したとする証拠はない。
そうすると,本件商標権者は,デザイン画パーカーが掲載されたデザイン企画書等に基づいて商品「パーカー」の製造をLAPIN社に発注したとはいえない。
(4)上記1(4)及び(5)のとおり,インスタグラム掲載商品と参加人購入パーカーとは,色彩(オレンジ色)が一致すること,「Surfing」の文字及び「Nature&Blue」の文字が付されている(なお,「Attraction」の文字は付されていない。)ことからすると,両者は,同一の商品と推認できるから,インスタグラム掲載商品には,その背織のタグには「Beach Sound」の文字が,内側タグには品番「7753034」及び「エクシス(株)」の文字がそれぞれ付されていたといえる。
(5)上記(2)のとおり,使用商品は,そのブランド名「Beach Sound」,品番「7753034」であって,平成27年11月2日にエクシス社に引き渡され,上記1(4)のとおり,その9日後の同月11日にエクシス社のブランドである「BeachSound」に係るインスタグラムには「Beach Sound」の文字及び品番「7753034」が付されたインスタグラム掲載商品が掲載されたのであるから,使用商品とインスタグラム掲載商品は,同一の商品というのが相当である。
(6)以上を総合すると,本件商標権者は使用商品を平成27年11月2日にエクシス社に引き渡したことは認められるとしても,デザイン画パーカーが掲載されたデザイン企画書等に基づいて商品「パーカー」の製造をLAPIN社に発注したとはいえないこと,使用商品とインスタグラム掲載商品は,同一の商品というのが相当であることからすると,使用商品には,「Attraction」の文字は付されていなかったといわざるを得ない。
したがって,本件商標権者は,要証期間内に商品「パーカー」に本件商標(本件商標と社会通念上同一の商標を含む。以下同じ。)「Attraction」の文字を付した,または,商品「パーカー」に本件商標を付したものをエクシス社に譲渡し若しくは引き渡したということはできない。
3 被請求人の主張に対し
(1)被請求人は,被請求人提示パーカーが発見され,それには,「Attraction」の文字が入っている旨主張する。
しかしながら,被請求人提示パーカーは,上記1(6)のとおり,要証期間外の平成30年1月13日にメルカリに出品され,購入された商品である。
しかも,「Noubu’s Art Maker」による検証報告書(丙9)によれば,上記1(7)のとおり,被請求人提示パーカーの刺繍と版下データ(乙17)とは,収縮等の誤差では説明のつかない明らかな差異があると報告され,当該検証報告書の写真11によると,両者は,「Attraction」の文字部分が版下データと一致しておらず,この点について,被請求人は何ら反論していない。
そうすると,被請求人提示パーカーは,要証期間内に存在したということはできない。
その他,被請求人提示パーカーが使用商品と同一の商品のものとする証拠はない。
(2)被請求人は,オリジナルなデザインとは別に,例えば「Attraction」の文字を外した商品を直接製造元に注文を出して作成することも業界では見られることであって,参加人購入パーカーは,エクシス社の店舗から直接LAPIN社に「Attraction」を外したものを作成してほしいと依頼して製造されてできたものである可能性がある旨主張する。
しかしながら,たとえ,被服等を取り扱う業界において,直接製造元にオリジナルなデザインとは別に注文依頼することがあるとしても,被請求人は,使用商品に関してその可能性を述べるにすぎないから,上記判断を左右するものではない。
(3)被請求人は,エクシス社の公式ホームページでは,「Attraction」の文字が付していないパーカー(インスタグラム掲載商品)が紹介されているからといって,それが全てではなく,「Attraction」の入ったパーカーが取引され販売されていた旨主張する。
しかしながら,たとえ,インスタグラム掲載商品以外の色彩に係る商品が存在するとしても,同一品番で「Attraction」の文字の有無等のデザインが異なる商品が存在することは,商取引上不自然といわざるを得ない。
その他,「Attraction」の文字が付された商品「パーカー」が要証期間内に取引され販売されていたとする証拠はない。
(4)したがって,被請求人の上記主張は,それぞれ採用することはできない。
4 まとめ
以上のとおり,被請求人は,要証期間内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,その請求に係る指定商品のいずれかについて,本件商標の使用をしていることを証明したということができない。
また,被請求人は,本件審判の取消請求に係る指定商品について本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,本件商標の登録は,その指定商品中の「結論掲記の指定商品」について,商標法第50条の規定により,取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2019-03-07 
結審通知日 2019-03-11 
審決日 2019-05-13 
出願番号 商願2008-36286(T2008-36286) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (X1825)
最終処分 成立  
前審関与審査官 吉野 晃弘 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 山田 啓之
平澤 芳行
登録日 2008-12-19 
登録番号 商標登録第5190866号(T5190866) 
商標の称呼 アトラクション 
代理人 杉本 太郎 
代理人 竹内 耕三 
代理人 狩野 友哉 

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