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審決分類 審判 査定不服 商3条1項5号 簡単でありふれたもの 取り消して登録 W1621
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 取り消して登録 W1621
管理番号 1353241 
審判番号 不服2018-12039 
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-07 
確定日 2019-07-03 
事件の表示 商願2016- 65193拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願商標は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願商標
本願商標は,「V60」の文字を標準文字で表してなり,第7類,第9類,第11類,第16類及び第21類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として,平成28年6月15日に登録出願されたものであり,その後,指定商品については,当審における同30年9月7日付けの手続補正書により,第16類「コーヒー抽出用ペーパーフィルター」及び第21類「コーヒードリッパー(電気式のものを除く)」と補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由(要点)
原査定は,「本願商標の構成は欧文字一字と二桁の数字を組み合わせた極めて簡単な構成からなるものであり,このような構成からなるものは,商品の品番等を表示するものとして一般に使用されているものである。そして,本願の指定商品との関係においても,欧文字一字と数字の組合せからなる構成のものが,商品の品番として使用されている事実がある。そうすると,本願商標は,極めて簡単で,かつ,ありふれた標章のみからなる商標というのが相当であるから,商標法第3条第1項第5号に該当する。また,本願商標は,提出された証拠における本願商標の使用状況や使用態様からは,出願人が本願商標を本願指定商品について使用していることは確認できるものの,本願指定商品を取り扱う分野における,出願人が述べている本願商標を使用した商品の販売数量の裏付けが確認できず,市場占有率などが不明である。そうすると,出願人が本願商標を使用した結果,本願商標が,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識されるに至っていると認めることができず,本願商標は,商標法第3条第2項の適用を受けることができるものということはできない。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 商標法第3条第1項第5号該当性について
本願商標は,「V60」の文字を標準文字で表してなる商標である。そして,一般に,欧文字1字のつぎに数字2文字を組み合わせたものからなる標章は,商品の品番,型番,種別,形式,規格等を表した記号又は符号として,取引上普通に採択・使用されているのが実情である。
してみれば,本願商標は,これをその補正後の指定商品に使用しても,これに接する取引者,需要者が商品の記号又は符号の一類型を表示したものと理解するにとどまるものであって,極めて簡単で,かつ,ありふれた標章のみからなる商標というのが相当である。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第5号に該当する。
2 商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて
(1)請求人は,本願商標は,商標法第3条2項に規定する要件を具備しており,登録されるべき商標である旨を主張し,証拠として,原審において資料1ないし資料30(枝番を含む。)を,当審において資料31ないし資料45(枝番を含む。)を提出している。
なお,本審決では,当該証拠の番号を甲第1号証ないし甲第45号証と読み替え,また,枝番については,例えば資料1-1を甲第1号証の1のように,「-(ハイフン)」を「の」に読み替えるものとする。
そこで,請求人提出の証拠の内容に照らし,本願商標が,使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているか否かについて,以下検討する。
ア 本願商標と使用商標の同一性について
本願商標は,上記1のとおり,「V60」の文字を標準文字で表してなるものである。
他方,請求人が自己の商品の包装袋や包装箱及び商品のカタログ上において使用する商標(以下「使用商標」という)は,ゴシック体による「V60」の文字からなるものである(甲1,甲31?甲39,甲43)。
したがって,本願商標と使用商標とは,外観において同視できるものであり,同一性を有するものと認められる。
イ 使用商標の使用開始時期及び使用期間
請求人は,使用商標を,請求人の製造に係る円すい型のコーヒー抽出用ペーパーフィルター及びコーヒードリッパー(電気式のものを除く)(以下,これらを「使用商品」という。)に付して,製造,販売しているところ,使用商品が掲載されているカタログの表紙には,発行年と思しき4桁の数字が記載されていることから,使用商標は,遅くとも2006年(平成18年)には使用を開始され(甲1の1),使用商品の販売実績(甲40)及び市場調査(甲41)の調査年等によれば,現在も継続して使用されているものと認められる。
ウ 使用商品の販売地域
使用商品は,2018年(平成30年)9月の時点で,北海道から九州まで全国各地に存在する54の百貨店等の大規模な総合小売店において販売されている(甲41,甲42)。
エ 使用商品の販売実績及び市場占有率
(ア)請求人は,使用商品中のコーヒードリッパー(電気式のものを除く)の2008年(平成20年)から2017年(平成29年)までの10年間の我が国における販売数の合計を,約2百60万個であり,販売金額の合計を,約19億円である(甲40)旨主張している。
(イ)請求人は,使用商品中,円すい型のコーヒー抽出用ペーパーフィルター(単体及びセット販売)の2008年(平成20年)から2017年(平成29年)までの10年間の我が国における販売数の合計を,約7億4千万個であり,販売金額の合計を,約29億2千万円である(甲44)旨主張している。
また,請求人は,2014年(平成26年)の上記コーヒー抽出用ペーパーフィルターの販売金額を,ペーパーフィルター単体で約2億8千万円,同じシリーズのコーヒードリッパーとのセット販売で約6千8百万円であり,単体とセットの合計販売金額は,約3億5千万円である(甲44)旨主張している。
(ウ)請求人は,使用商品中,円すい型のコーヒー抽出用ペーパーフィルターの市場占有率を,ほぼ100%である(甲41,甲42)旨主張している。
(エ)2014年(平成26年)1月29日付けのキーコーヒー株式会社の「-コーヒータイムをさらに彩るアイテム- クリーミーポーション 生クリーム仕立て 円すい型コーヒーフィルター 2014年3月 新発売!」の見出しのニュースリリースには,「円すい型フィルター市場規模:1.8億円?2億円(推定)」との記載がある。
(オ)以上よりすると,使用商品中の円すい型のコーヒードリッパーの販売金額と,上記(エ)のニュースリリースで推定された市場規模の金額とは,使用商品中の円すい型のコーヒードリッパーの販売金額の市場占有率が100%とした場合,著しくかけ離れた数字とはいえないことから,請求人の主張する上記(ア)ないし(ウ)に係る販売実績額及び市場占有率は,不自然なものとはいえないから,当該販売実績額及び市場占有率等は信用できる。
オ 広告宣伝のされた期間・地域及び規模
(ア)請求人は,使用商品を掲載した商品カタログを,2006年(平成18年)から2017年(平成29年)に発行した(甲1)。
(イ)2014年(平成26年)3月6日発売の雑誌「Discover Japan」4月号(株式会社エイ出版社発行)に,使用商標を目立つよう記載した使用商品の広告が掲載された(甲4)。
(ウ)2006年(平成18年)3月29日,2009年(平成21年)11月11日,2011年(平成23年)11月9日,2012年(平成24年)3月21日のそれぞれに発行された加工食品・嗜好食品情報の週刊新聞である「帝飲食料新聞」に,使用商標を目立つよう記載した使用商品の広告が掲載された(甲5)。
(エ)2006年(平成18年)から2011年(平成23年)まで,使用商品に係るテレビコマーシャルが放映され,当該コマーシャルでは使用商標を目立つよう表示された(甲1の1?6)。
カ 第三者による使用商品の紹介,請求人の受賞実績
(ア)2011年(平成23年)から2014年(平成26年),2016年(平成28年)から2017年(平成29年)に,新聞,書籍,雑誌,及びインターネットにおける各記事に「HARIO V60」,「<ハリオ>のV60」又は「ハリオ V60」の文字とともに,使用商品に係る特集が掲載されている(甲2,甲3,甲6?甲25)。
(イ)職権による調査によれば,以下を認めることができる。
a 「ピントルのコーヒー専門ページ」のウェブサイトの「ドリッパーおすすめランキングの一覧表」に「第1位:ハリオ V60 透過ドリッパー 第2位:Kalita コーヒードリッパー 第3位:Melitta コーヒーフィルター・・・」との記載がある。
(https://food-drink.pintoru.com/coffee/dripper-top-picks/)
b 「キナリノ」(2018年03月09日更新)のウェブサイトにおいて,「日本発,世界が認めたドリッパー「HARIO v60」は何が凄いの?」との見出しの下,「海外のカフェでもよく見かける「HARIO」のロゴですが,実は90年以上続く日本の耐熱ガラスメーカー。中でも「HARIO v60」は,今や世界でドリッパーのスタンダードになりつつあります。では,「HARIO v60」って一体どんなところがすごいの!?まずは“コーヒーを美味しく淹れられる秘密”から紐解いていきましょう。」との記載がある。
(https://kinarino.jp/cat2-%E7%94%9F%E6%B4%BB%E9%9B%91%E8%B2%A8/10094-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%99%BA%E3%80%81%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%8C%E8%AA%8D%E3%82%81%E3%81%9F%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%91%E3%83%BC%E3%80%8Chariov60%E3%80%8D%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%8C%E5%87%84%E3%81%84%E3%81%AE%EF%BC%9F)
c 「MITTS COFFEE STAND」のウェブサイトに,使用商品の紹介として,「2005年の発売以来,世界のスタンダード的な存在になっているHARIO V60。その名前の由来は,円錐形の形である「V」と,底部の角度の「60度」から来ています。独特の形状,スパイラルリブが,ドリッパーの壁面とペーパーの間に空間を生み,抽出効率を上げています。底面が大きなひとつ穴になっていることから,よりスッキリとした飲み口に仕上げることができ,名だたる世界のスペシャルティコーヒーショップやロースターがこぞって使っています。」との記載がある。
(http://www.mitts-coffee.com/coffee/quality/)
d 「公益財団法人日本デザイン振興会」のウェブサイトに,「受賞対象名 V60透過ドリッパー [VD-01, VD-02, VD-03, VDC-01, VDC-02]」及び「受賞企業 ハリオグラス株式会社(東京都)」との記載があり,請求人が2007年度のグッドデザイン賞を受賞した。
(https://www.g-mark.org/award/describe/33271)
(2)小括
上記(1)を総合して考察すれば,請求人は,2006年(平成18年)から,本願商標と同一視できる使用商標を登録出願時はもとより,現在まで継続して使用商品について,使用しているものであり,請求人発行のカタログ,あるいは,テレビコマーシャル,新聞,雑誌等において,継続して使用商標を目立つよう記載した使用商品の広告宣伝を行っている。また,使用商品は,多数の新聞,雑誌記事により紹介され,全国に販売されていることが認められる。
そして,上記(1)エのとおり,使用商品の販売実績及び市場占有率が極めて高いことが認められる。
してみれば,本願商標は,使用商品について,請求人によって,長年にわたり,継続的に使用をされた結果,需要者が,請求人の業務に係る商品であることを認識するに至ったものというのが相当である。
したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備するものというべきである。
3 まとめ
以上検討したところによれば,本願商標は,商標法第3条第1項第5号に該当するものの,同法第3条第2項の要件を具備するものであり,商標登録を受けることができるものであるから,原査定は取消しを免れない。
その他,本願について拒絶の理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
審決日 2019-06-18 
出願番号 商願2016-65193(T2016-65193) 
審決分類 T 1 8・ 17- WY (W1621)
T 1 8・ 15- WY (W1621)
最終処分 成立  
前審関与審査官 浦崎 直之高橋 幸志 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 大森 友子
山根 まり子
商標の称呼 ブイロクジュー、ブイロクゼロ 
代理人 大塚 忠 

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