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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 021
管理番号 1345989 
審判番号 取消2017-300776 
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2017-10-16 
確定日 2018-10-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第4013748号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4013748号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,平成4年12月4日に登録出願,第21類「清掃用具及び洗濯用具」を指定商品として,同9年6月20日に設定登録されたものである。
そして,本件審判の請求の登録は,平成29年10月31日にされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は,商標法第50条第1項の規定により,本件商標の登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)本件商品には本件商標は使用されていないこと
ア 被請求人が本件商標を使用していると主張する商品「掃除用スポンジ」(乙1の1?4)(以下「本件商品」という場合がある。)の出所を表示する商標は,本件商品の正面の中段に目立つように大きく記された「おそうじ消しゴム」の文字と,下段に目立つようにロゴの態様で記された「azuma」の文字である。
上記「おそうじ消しゴム」の文字は,アズマ工業株式会社(以下「アズマ工業社」という。)が第21類「清掃用具」を指定商品とする登録第5140201号として商標権を,同じく「azuma」の文字は,アズマ工業社が第21類「清掃用具及び洗濯用具」を指定商品とする登録第5172581号として商標権を保有している(甲2,3)。
また,本件商品の正面には青色,白色,黒色の上下三本の横方向に延びる帯状の着色が施されて一つの色模様を構成しているが,この色模様は,本件商標権者である株式会社トンボ鉛筆が第21類「清掃用具及び洗濯用具,化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。),おけ用ブラシ,金ブラシ,管用ブラシ」を指定商品とする登録第5298387号とする商標権を保有している(甲4)。
この場合,本件商品に接した需要者,取引者は,上記色模様からそれが本件商標権者の商標であることを想起する可能性があるが,上記したように本件商品の側面又は裏面には品質表示,製造者表示,注意書きと並んで「licensed by TOMBOW」の文字が記してあるので,それが本件商標権者の許諾を受けたものであることを理解し,無用の出所の混同を防止している。
すなわち,本件商品の側面または裏面に記された「TOMBOW」の文字は,それと結合している「licensed by」の文字と一体となって,正面の青色,白色,黒色の上下三本の横方向に延びる帯状の着色が施されて一つの色模様を構成する商標が本件商標権者の使用許諾を得て使用されていることを示す表示であり,決して「TOMBOW」の文字が本件商品の出所を表示する商標として使用されているわけではない。
イ これに対し,被請求人は,「本件商標を目印に取引を行う場合は十分にあり得る。単にアズマ工業社が被請求人より使用許諾を受けていることのみを表示するならば,本件商標権者を通常書体で表示すれば足りるが,ロゴの態様からなる本件商標に接した需要者は,本件商標は,アズマ工業社が本件商標権者より使用許諾を受けている旨を表示するものと理解すると同時に,自他商品を識別させるために付されている商標であると認識されるものであり,本件商品について本件商標は自他商品識別標識としての機能を十分に果たしているのである。」と主張する。
しかしながら,「licensed by ○○」の表記は,ある対象が○○により許諾を受けている事実を伝達するための表記であると考えるのが社会通念上自然の解釈である。すなわち,○○とは使用許諾する主体であり,使用許諾される客体は「licensed by ○○」の表記が指し示すものである。
本件の場合,使用許諾する主体である○○は「TOMBOW」であり,使用許諾される客体は「licensed by TOMBOW」の表記が指し示す本件商品の包装パッケージであり,具体的には本件商標権者に係る登録第5298387号商標における正面に配された青色,白色,黒色の上下三本の横方向に延びる帯状の着色が施された色模様である。
事実,乙第3号証のアズマ工業社の公式ホームページ「快適百貨」の3頁目1?6行目には,「メラミンスポンジの最大の特長は水アカなどの汚れを,洗剤を使わずに水を浸けるだけで簡単に落とすことができることです。・・・このメラミンスポンジは使用すると,汚れとこすれ合うことで消しクズが出てきます。その姿はまるで消しゴムのようです。そこで,市場での話題性を高めるために消しゴムのデザインとして新発売することにしました。大手文房具メーカー株式会社トンボ鉛筆様にその旨をお伝えしたところ,快く了承していただき,『消しゴム モノ』のデザインをイメージしたメラミンスポンジの発売となりました。」との記載がある。
したがって,使用許諾の主体を「株式会社トンボ鉛筆」と記すより,同社を表すコーポレートIDとして広く知られている「TOMBOW」ロゴで表した方がより分かりやすいからそうしただけであり,被請求人の上記主張には理由がない。
(2)乙第7号証の1の契約書及び乙第7号証の2の合意書(以下,これらをまとめて「本件契約」という。)には,本件商標を商品「掃除用スポンジ」について使用許諾したことは記されていない。被請求人もこの点については自認している。
これに対し,被請求人は,「第4条において,アズマ工業社は,被請求人の許諾を受けている旨をショーカードの裏面に表示するものとする旨規定されている。この契約書第4条の規定に従い,アズマ工業社は,商品包装パッケージの裏面に本件商標を付しているのである(乙1の1?4)。したがって,本件契約の第4条の規定から勘案すると,被請求人は,アズマ工業社に対し,メラミン樹脂スポンジに本件商標を使用することについて黙示の許諾を与えていたものと認めることができる。」と主張する。
しかしながら,上記第4条に記載されているのは「乙(アズマ工業社)はショーカード裏面中に,このショーカードデザインが甲(本件商標権者)の許諾を受けている旨を表示するものする。」の文書であり,許諾の主体の表示として甲(本件商標権者)のコーポレートIDである「TOMBOW」ロゴを使用することについて黙示の許諾を与えているにすぎず,そこからは「TOMBOW」ロゴからなる本件商標をおそうじ消しゴムの商標として使用許諾しているとは到底読み取ることができない。
(3)以上のとおり,被請求人の主張は理由がなく,本件商標が商品「掃除用スポンジ」に使用されていないことは明らかであり,本件商標権は取り消されるべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第9号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件商標は,本件審判の請求の登録前3年以内(以下「要証期間内」という。)に本件商品について使用されている。この「おそうじ消しゴム」は,硬質のメラミン樹脂を発泡させた「掃除用スポンジ」であり,洗剤を使わず,水を含ませて消しゴムを使うようにこするだけで簡単に水アカなどの汚れが落ちる特徴を有している。本件商品は,第21類「清掃用具」に含まれる商品である。
「おそうじ消しゴム」には多数の種類があり,「おそうじ消しゴム」はシリーズ商品の総括的名称であり(乙1の1?4),それらが掲載されたカタログ,ウェブサイトがある(乙2?5)。
2 本件商標の使用者は,本件商標権者から使用許諾を受けた通常使用権者である。
本件商標権者は,我が国で著名な文房具メーカーであり,その製造・販売に係る消しゴム「MONO」は,1969年の発売以来,定番の消しゴムとして広く知られている。
他方,通常使用権者のアズマ工業社は,掃除用品メーカーであり,「おそうじ消しゴム」という名称のメラミン樹脂の掃除用スポンジを製造,販売している(乙1の1?4,乙2?5)。
このメラミン樹脂の掃除用スポンジを使用すると,汚れとこすれ合うことで消しクズが出てくる様は,まるで本件商標権者の著名な「MONO」消しゴムを連想させることから,アズマ工業社は,市場での話題性を高めるために掃除用スポンジを消しゴムのデザインとして新発売するに当たり,「MONO」消しゴムのカバーに使用されている青・白・黒の三色からなるデザインを使用することになった(乙3,6)。
本件契約により,アズマ工業社は,平成20年9月9日付けで,本件商標権者より青・白・黒の三色からなるデザインについて使用の許諾を得ており,本件契約は,平成30年9月8日まで延長されている(乙7の2)。
本件契約には,本件商標の使用を許諾する旨の明示の規定はないが,アズマ工業社は,本件商標権者の許諾を受けている旨をショーカードデザイン(「ショーカードデザイン」とは,包装パッケージ,台紙及びその広告のデザインを意味する。)に表示するものとする旨規定されている。本件契約に従い,アズマ工業社は,商品包装パッケージの裏面に本件商標を付している(乙1の1?4)。
したがって,本件契約の規定から勘案すると,本件商標権者は,アズマ工業社に対し,メラミン樹脂スポンジに本件商標を使用することについて黙示の許諾を与えていた(乙7の1・2)。
なお,乙第2号証ないし乙第5号証には,「おそうじ消しゴム」商品の表面のみで,裏面部分の表示は見当たらないが,本件契約に従い,裏面部分には,乙第1号証の1ないし4のとおり,必ず本件商標が付されている。
3 アズマ工業社が被請求人に提出した「おそうじ消しゴム」の出荷数量及び出荷金額を記載した,平成29年7月4日付け,同年8月5日付け及び同年9月4日付けの月次報告書(乙8の1?3),さらに,アズマ工業社から取引業者宛ての「おそうじ消しゴム」に係る,平成29年8月1日付け,同年9月5日付け,同年9月12日付け,同年10月13日付け及び同年10月18日付けの売上伝票(乙9の1?5)によれば,実際に取引されていることは明らかである。
4 以上のとおり,本件商標は,要証期間内に日本国内において,その指定商品中の「清掃用具」に含まれる本件商品について,通常使用権者により使用されている。

第4 当審の判断
1 証拠及び当事者の主張によれば,以下の事実が認められる。
(1)本件商標権者は,文房具メーカーである。
(2)アズマ工業社は,掃除用品メーカーであり,本件商品の製造・販売者である(乙1の1?5,乙2,3等)。
(3)本件商標権者とアズマ工業社とが平成20年9月9日に締結した契約書(乙7の1。以下「本件契約書」という。)によれば,本件商標権者は,アズマ工業社に対し,本件商品のショーカードデザイン(本件商品の包装パッケージ,台紙及びその広告のデザインを指す。)として,本件商標権者の製造販売に係る消しゴム「MONO」の商品表示として周知な青・白・黒の三色からなるデザイン(以下「青白黒デザイン」という。)を使用することを許諾した。本件契約書の第4項には,青白黒デザインを使用した本件商品のショーカードデザインの決定には,本件商標権者の事前承認が必要なこと,また,本件商品のショーカード裏面中に,青白黒デザインが本件商標権者の許諾を受けている旨を表示することが規定されている(乙7の1)。当該契約の有効期間は,平成30年9月8日まで延長されている(乙7の2)。
(4)本件商品の写真(乙1の3)によれば,本件商品の包装には青白黒デザインが使用されており,その正面の白色の背景部分には「おそうじ消しゴム(R)」((R)は,登録商標であることを表示したものと認められる,○内に「R」の文字が小さく付されていることを表す。)の文字が,黒色の背景部分の中央には「azuma」の文字が白抜きで,及び同じく黒色の背景部分の右下には「品名:おそうじ消しゴム BIG OK826」の文字が白抜きで,それぞれ記載されている。また,本件商品の包装の裏面には「licensed by TOMBOW」(「licensed by」部分は小さく表示されているのに対し,「TOMBOW」部分は本件商標と同一の構成であって相対的に大きく表示されている。以下同じ。),「azuma」及び「アズマ工業株式会社」の各文字の記載がある(以下,本件商品の一種である商品(品名)「おそうじ消しゴム BIG OK826」を「本件使用商品」という。)。
(5)アズマ工業社が平成28年3月に発行した商品カタログ「Order Catalogue vol.11」(乙2)には,2葉目の項番「5」に,本件使用商品がその正面写真付きで掲載されている。
(6)株式会社内田洋行がカタログ有効期限を平成29年2月28日として発行した通販カタログ「UCHIDAS 2016 Vol.10」(乙4)には,2葉目の最下段の中央に,本件使用商品がその正面写真付きで掲載されている。
(7)「Amazon.co.jp」のウェブサイトの写し(乙5。印刷日は平成29年11月21日)の5葉目には,本件使用商品がその正面写真付きで掲載されている。当該ウェブサイトにおける本件使用商品の取扱い開始日は,平成21年4月6日である。
(8)アズマ工業社に係る売上伝票(乙9の1,3,4)によれば,アズマ工業社は,平成29年8月1日,同年9月12日及び同年10月13日に,日本国内の取引先に,それぞれ,本件使用商品を54個,720個及び144個販売した(当事者間に争いのない事実)。なお,当該売上伝票の取引先は,いずれもマスキングされているが,当該売上伝票の名称及び各項目の見出し等が全て日本語で記載されていることからすると,当該商品は,日本国内の取引先に販売されたものと推認できる。
(9)上記(1)ないし(8)の認定事実によれば,本件契約書により,本件商標権者から,青白黒デザインを本件商品(掃除用スポンジ)の包装に使用することを許諾されたアズマ工業社は,本件商品の一種である本件使用商品の包装に青白黒デザインを使用し,その包装裏面中に,本件商標権者の許諾を受けている旨の表示である「licensed by TOMBOW」を付したものを,平成29年8月1日,同年9月12日及び同年10月13日に,日本国内の取引先に,それぞれ,54個,720個及び144個販売したものと認められる。
なお,本件使用商品自体は,アズマ工業社が平成28年3月に発行した商品カタログ及び株式会社内田洋行がカタログ有効期限を平成29年2月28日として発行した通販カタログに掲載されていたこと,及び「Amazon.co.jp」のウェブサイトでも平成21年4月6日から取り扱われていたことが認められる。
2 上記1の認定事実によれば,以下のとおり判断できる。
(1)本件商標の使用であるか否かについて
請求人は,本件使用商品の包装裏面中に記された「TOMBOW」(本件商標)の文字は,それと結合している「licensed by」の文字と一体となって,1つの色模様を構成する商標が本件商標権者の使用許諾を得て使用されていることを示すものであって,本件使用商品の出所を表示する商標として使用されているわけではない旨主張する。
しかしながら,本件使用商品の包装裏面中に記された「licensed by TOMBOW」との表示が,本件使用商品に接する取引者,需要者に対して,本件商標権者に係る消しゴムの包装に使用している周知な青白黒デザインを,本件使用商品の包装に使用することを本件商標権者が許諾したものであるということを示しているということは,すなわち,「TOMBOW」(本件商標)部分は,その使用が本件商標権者によって正式に許諾されたものであることを証明する商標(商標法第2条第1項第1号)にほかならないのであるから,本件使用商品の包装には,本件商標も使用されているものと認めることができる。
したがって,請求人の上記主張は採用できない。
(2)本件使用商品について
本件使用商品は,本件商品(掃除用スポンジ)の一種であるから,本件審判の請求に係る指定商品中の第21類「清掃用具」に含まれるものと認められる。
(3)本件商標の使用時期について
アズマ工業社が,日本国内の取引先に対して,本件使用商品を販売した平成29年8月1日,同年9月12日及び同年10月13日は,いずれも要証期間内である。
(4)使用者について
本件契約書によれば,本件商標権者は,アズマ工業社に対し,本件商品(本件使用商品)の包装に青白黒デザインを使用することを許諾しただけでなく,青白黒デザインを使用した本件使用商品の包装裏面中に,本件商標権者の許諾を受けている旨を表示するよう要求しており,かつ,その包装の決定には,本件商標権者が事前承認することになっていたのであるから,本件使用商品の包装裏面中にある「licensed by TOMBOW」との表示を含め,本件商標権者の承認を受けていたものと認められる。
したがって,アズマ工業社は,本件商標の通常使用権者と認められる。
(5)小括
以上によれば,本件商標の通常使用権者は,要証期間内である平成29年8月1日,同年9月12日及び同年10月13日に,本件使用商品の包装に本件商標を付したものを日本国内の取引先に譲渡又は引き渡したものと認められる。
そして,通常使用権者による上記行為は,商標法第2条第3項第1号にいう「商品の包装に標章を付する行為」及び同項第2号にいう「商品の包装に標章を付したものを譲渡又は引き渡す行為」に該当する。
3 まとめ
以上のとおり,被請求人は,要証期間内に日本国内において,本件商標の通常使用権者が,その請求に係る指定商品中の第21類「清掃用具」に含まれる商品「掃除用スポンジ」について,本件商標の使用をしていることを証明したというべきである。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により取り消すべきではない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲 本件商標


審理終結日 2018-08-09 
結審通知日 2018-08-13 
審決日 2018-08-24 
出願番号 商願平4-320749 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (021)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 酒井 福造 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 田村 正明
平澤 芳行
登録日 1997-06-20 
登録番号 商標登録第4013748号(T4013748) 
商標の称呼 トンボー、トンボ 
代理人 特許業務法人 清水・醍醐特許商標事務所 
代理人 神保 欣正 

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