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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X35
管理番号 1338308 
審判番号 取消2017-300044 
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2017-01-18 
確定日 2018-03-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第5401699号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5401699号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおり,「さくら」と「桜」の文字を上下二段に書してなり,平成22年8月30日に登録出願,第35類「衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,耳栓の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かいばおけの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,金属製養鶏用かご・養鶏用かご(金属製のものを除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,家禽用リングの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,燃料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,時計の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,宝玉及びその模造品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,防じんマスクの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,防毒マスクの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,溶接マスクの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,衛生手ふきの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,紙製タオルの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,紙製テーブルナプキンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,紙製手ふきの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,紙製ハンカチの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,家庭用ごみ焼却炉の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,造花(「造花の花輪」を除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として,同23年3月25日に設定登録されたものである。
なお,本件審判の請求の登録日は,平成29年1月30日であり,商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは,同26年1月30日から同29年1月29日(以下「要証期間」という場合がある。)である。

第2 請求人の主張
請求人は,商標法第50条第1項の規定により,本件商標の指定役務中,「時計の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,宝玉及びその模造品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」についての登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を審判請求書及び審判事件弁駁書において要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定役務中,「第35類 時計の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,宝玉及びその模造品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(以下「取消請求役務」という。)について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実がないから,上記役務について,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)答弁書とともに提出された乙第1号証ないし乙第21号証によっては,本件商標が取消請求役務について,本件審判の請求の登録前3年以内に使用されていたことを認めることはできない。
(2)乙第2号証ないし乙第20号証によると,権利者から黙示の通常使用権を受けているスリーハート・コーポレーション株式会社(以下「スリーハート」という場合がある。)がギフト用のカタログに本件商標「さくら/桜」を使用しているとのことである。
しかしながら,上記本件商標をギフト用カタログに使用する行為は,上記本件商標を取消請求役務に使用するものではない。
答弁書によると,被請求人及び「スリーハート」が営む「カタログギフト業」は,被請求人又は「スリーハート」が「ギフトカタログ」を加盟店に納入し,そのカタログを「ギフト購入者」が購入して「受取り手」に贈り,「受取り手」が被請求人に商品を注文する,という流れで進められるものである。ここにおいて役務に対して対価を支払うのは上記「ギフト購入者」である。そして,「ギフト購入者」が購入するのは「カタログ」であるが,それには「ギフト券」が含まれるものであり,被請求人及び「スリーハート」が販売しているものは「ギフト券」である。
答弁書によれば,有効期間が6ヶ月未満の「ギフト券」は財務局への登録は不要であるものの,有効期間が6ヶ月を超える「ギフト券」は前払式手段として財務局への登録等が義務付けられている。
そうであれば,被請求人及び「スリーハート」が提供している役務は,「小売業務」ではなく,「前払い式証票の発行」あるいは「ギフトカタログの販売」である。
(3)乙第2号証の1によると,被請求人及び「スリーハート」が最初に加盟店に納品するのは「ギフトカタログ」あるいは「ギフト券」であって,その後,被請求人が商品を「受取り手」に送付する。そして,ここで重要なことは,「ギフトカタログ」及び「ギフト券」の需要者が「ギフト購入者」であり,「スリーハート」の顧客は「ギフト購入者」である。さらに,「受取り手」が商品を注文する相手は被請求人である。
乙第4号証によれば,本件商標を使用したカタログの発行者は「スリーハート」であるが,乙第9号証によると,商品の注文先は被請求人であるシャディ株式会社(以下「シャディ」という。)である。
上述のとおり,被請求人が提出した乙第4号証に示された商標の使用は,取消請求役務とはいえない。「スリーハート」はむしろ,ギフト券に伴う「贈呈品のあっせん」のような役務を提供していると思われ,これは,取消請求役務ではない。
(4)上述のとおり,答弁書によっては,本件商標が,審判の請求の登録前3年以内に指定役務について使用された事実は証明されていない。

第3 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第21号証(枝番を含む。)を提出した。
1 総論
被請求人は,我が国において,「カタログギフト業(結婚内祝い等の際の贈答商品等をカタログに掲載し,当該カタログの受取り手が好みの品物を選べる形式にて商品を販売する事業)」を営み,当該カタログ名称あるいはカタログコース名称に使用する商標について,取扱商品にかかる小売等役務を指定役務とする商標登録を行い,「カタログギフト業」に係る被請求人の信用の維持を図っている。
本件商標「さくら/桜」は,その代表的な商標の一つであり,ギフト用カタログ「至高」シリ-ズのコース名称の一つとして使用され,前記商品「時計」を含む,結婚内祝い用商品等の選択に供されている。この「至高」シリ-ズのコース名称「さくら/桜」ギフト用カタログ(以下,「本件カタログ」という場合がある。)には,本件商標「さくら/桜」と社会通念上同一とされる「サクラ/桜」,「桜」及び「サクラ」が付されており,他のコース用カタログ共々,各暦年毎に発行され,その何れにおいても,贈答用商品として「時計」に属する商品が取扱われている。
そして,上記の本件カタログは,「スリーハート」によって発行されているが,かかる「スリーハート」は被請求人の完全子会社であり,また,後述するように,本件カタログギフトに係る業務を実質的に被請求人の責任によって行っていることから,被請求人が本件カタログギフトに係る業務主体をなすことが明らかである。
「スリーハート」は「被請求人と同視できる者」に相当し,かかる「スリーハート」と被請求人が共同で業務主体を構成しており,さらには,「スリーハート」は,被請求人から本件商標権に係る(黙示の)使用許諾を受け,本件商標を使用している者「通常使用権者」とも評価できるものでもある。
したがって,指定役務「時計の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(以下「本件役務」という。)を受ける者の利用に供される本件カタログに,本件商標と社会通念上同一の商標が付されており,また,かかる本件カタログを用いて「被請求人」又は,「被請求人とスリーハートの共同体」又は,「スリーハート(黙示の使用許諾による通常使用権者)」が小売等役務を提供しているのであるから,商標法第2条第3項第3号及び同第4号に規定された「使用」がなされているに相違ない。
そして,その「使用」は,平成23年頃から現在に至るまで各暦年毎に発行される本件カタログを利用に供することにより行われており,本件審判請求の登録前3年の間においても,その「使用」が継続している。
2 被請求人の営むカタログギフト業
「被請求人の営むカタログギフト業に係るフローチャート」(乙2の1:別掲2)を示して,自己の業務を説明する。なお,本件カタログの発行者は形式上「スリーハート」であるが,実質的な業務は前述のとおり,「スリーハート」と被請求人が共同して行っていることから,被請求人「シャディ」及び「スリーハート」は取引における当事者「シャディ/スリーハート」としてフローチャートに表している。
フローチャートは,「シャディ/スリーハート」,加盟店(フランチャイジー),カタログギフト購入者(結婚内祝い贈り主等),受取り手(結婚祝いをした者等)の4者間でのカタログギフト(乙3)の流れを表したものである。
フロー(1)(審決注:乙第2号証の数字は○の中に数字が表示されているところ,これを(1)?(5)として表示する。)は,「受取り手」の性質や人数に従って,「ギフト購入者」が,カタログを選んだ上で,カタログギフトを「加盟店」に発注し,「シャディ/スリーハート」がこれを受注する流れを示している。
フロー(2)は,「シャディ/スリーハート」が受注に係るカタログギフトを「加盟店」を介して「ギフト購入者」に納品し,その後「ギフト購入者」から「受取り手」へ贈られる流れを示している。
フロー(3)は,「シャディ/スリーハート」が受注に係るカタログギフトを「加盟店」及び「ギフト購入者」を介さずに「受取り手」に配送される流れを示している。
フロー(4)は,「受取り手」が,ギフト用カタログに掲載された商品を選んで,カタログギフト中のギフト券により「シャディ/スリーハート」に注文する流れを示している。
フロー(5)は,「シャディ/スリーハート」が,注文を受けた商品を「受取り手」に送付する流れを示しており,当該送付により,一連の業務が完了する。
なお,フロー(2)又は(3)は,カタログギフトに係る「シャディ/スリーハート」から「受取り手」へのルートを表しているが,いずれのルートを選択するかは,ギフト購入者の要望により決定される販売形態を採っている。
このように,被請求人「シャディ」及び「スリーハート」は,「小売の業務において行われる顧客に対する便益」を提供する役務を営むものであるが,かかる役務にあって,ギフト用カタログは,その提供を受ける「受取り手」が,商品を選択して注文するに際して,必須の存在であり,取消請求役務の提供を受ける者の利用に供する物に該当することが明らかである。
3 被請求人と子会社「スリーハート」の関係の説明
「スリーハート」は被請求人の完全子会社(出資比率100%)であり(乙2の3),同社は,乙第2号証の1のフローチャートに示す被請求人の営む「カタログギフト業」において,主に物流事業すなわち,カタログギフトの発送業務,返品業務等を担う会社である(乙2の4)。
カタログギフトの構成物品の一つである「ギフト券」には,その有効期限が6ヶ月以上のものと,6ヶ月未満のものとが存在する。有効期限が6ヶ月を超えるものについては,消費者保護の観点から「貸金決済に関する法律」に基づき,前払式手段として財務局への登録及び保証金の供託が義務付けられている。
一方,有効期限が6ヶ月未満の「ギフト券」は財務局への登録は前記法令の適用外であるため,財務局への登録及び保証金の供託は行わない。
被請求人を含むシャディグループは,有効期限が6ヶ月未満の「ギフト券」及び6ヶ月以上の「ギフト券」の双方を取り扱っているが,前述の背景事情にあって,1つの法人が,法的保護を受けることができるギフト券とそうでないギフト券を取扱うと,消費者に混乱を来す可能性があることをシャディグループは懸念している。そのため,同グループでは,法上の保護が受けられる「ギフト券(有効期限6ヶ月以上のギフト券)」については,被請求人「シャディ」を発行者とし,他方,有効期限が6ヶ月未満の「ギフト券」については,形式上,子会社の「スリーハート」を発行者として,かかる2種類の「ギフト券」の発行者を分けることにより前記の混乱を未然に防いでいる。
本件「桜」カタログギフトの「ギフト券」にかかる有効期限は6ヶ月未満であり,したがって,「ギフト券」の発行者は「スリーハート」となるが,これに伴い,本件カタログの発行者も「スリーハート」となっている。
前記のとおり,形式上,「ギフト券」等の発行者を分けてはいるが,実質的には,本件カタログギフトの販売業務は被請求人が行っている。このことは,「被請求人の営むカタログギフト業に係るフローチャート」(乙2の1)のフロー(1)における「加盟店」からの発注書が「シャディ」に送られ,フロー(2)又は(3)における「加盟店」への請求書についても「シャディ」から発行されていること,フロー(4)における受取り手から発送される商品注文書類(乙7,乙11)の送付先住所「大阪府松原市松ヶ丘4丁目20番12号」が被請求人「シャディ」の大阪支社住所(乙2の5)と一致していることからも明らかである。
以上により,本件カタログ及び「ギフト券」の発行者として「スリーハート」が掲載されているものの,その業務は「シャディ」が行っている事実から,「スリーハート」は,実質的に被請求人「シャディ」と一体となって「カタログギフト業」を営んでいるとみるのが自然で,同人は被請求人と同視できるものである。
なお,「スリーハート」は,被請求人の100%子会社であって,被請求人に支配されている法人であることからすれば,商標権者である被請求人から黙示の使用許諾を受け,本件商標をギフトカタログに使用していると評価することもできる。
したがって,本件商標の使用は,被請求人又は,「被請求人とスリーハートの共同体」又は,「スリーハート(被請求人の許諾した通常使用権者)」によって行われており,被請求人により,商標法第2条第3項第3号及び同第4号の「使用」がされていることが明らかである。
4 本件カタログ2015年版による証明
(1)乙第4号証は,「至高」「サクラ/桜」コース用のカタログ2015年版であり,その表紙には「至高」と共に「サクラ/桜」商標が付され,裏表紙には「BOO/サクラコース」の表示が付されている。
また,カタログギフトの受取り手が選べる商品として当該カタログ内に,紳士用腕時計及び婦人用腕時計の「時計」に属する商品が掲載されている。
そして,奥付には,「お問い合わせは/スリーハート・コーポレーション(株)お客様センター」とあるように,このカタログが被請求人と同視できる「スリーハート」の発行に係るものであることが示されている。
さらに,裏表紙の下方にバーコードと共に「15-8012-306」の記載があり,冒頭の「15」の部分が西暦2015年の「15」を表示し,2015年用のカタログであり,当該カタログが2015年の1年間有効であることを示している。この場合,冒頭の「15」を除く「8012-306」の部分は,被請求人に係る社内管理番号で,当該カタログの有効期間等を表示するものではない。
(2)乙第5号証の1及び2は,本件役務中のフロー(1)のプロセスにおいて,「加盟店」から「シャディ」にカタログギフトの発注がなされた発注書の写しである。
乙第5号証の1は,「加盟店」である「ギフトアオキ豊田店(B)(チェーンNo.57900-001)」から「シャディ」に対して,カタログコース「桜」のカタログギフトの発注があったことを示す発注書「『【ボーベル】&【至高】カタログギフト』販売報告書」である。この発注書から,カタログ購入者からカタログコース「桜1個」の発注が加盟店にあったこと,上方のファクシミリ受信日時「2015年2月1日(日)16:29」から被請求人「シャディ」が2015年2月1日に発注書を受け取ったことを示している。当該発注書を加盟店から受理した「シャディ」は,特段の配送先(受取り手)が指定されなければ,発注を行った加盟店を通じてカタログギフトを購入者へ納品することになる。
したがって,乙第5号証の1により発注されたカタログギフトは,乙第2号証の1に示すフロー(2)のプロセスにより納品されるものである。
乙第5号証の2は,「加盟店」である「プレインウッドコーポレーション新別府店(チェーンNo.93043-100)」からの「『ボーベル・至高カタログギフト』販売報告書」であり,カタログギフト購入者からカタログコース「桜」が発注されている。なお,下方のファクシミリ受信日時「2015 06/07 SUN 16:32」から被請求人「シャディ」が2015年6月7日(日)に発注書を受け取ったことを示している。
(3)乙第6号証は,「シャディ」の「加盟店」である「勝原商事 竹原店 ボーベル」への請求書で,取引期間を「2015.10.21から2015.11.20」としてカタログギフト「15至高・BOO桜カタログ」について請求したことを示している。カタログギフト名は,商品欄に「15至高・BOO桜カタログ」で示されているが,これは,乙第4号証の表紙に表示されたカタログ名「至高」と,裏表紙の「BOO/サクラコース」から取った「BOO」と,サクラコースを示す「桜」を連ね,さらに「15-8012-306」で表示された2015年版であることを示すために冒頭に「15」を付した略称であるから,乙第4号証に係る2015年版の「至高」シリ一ズ,コース名「サクラ/桜」カタログギフトを指すものに相違ない。
なお,乙第6号証の「請求書」は複数枚つづりであり,「15至高・BOO桜カタログ」が具体的に何日付の取引であったか明記されていないが,「2015.10.21から2015.11.20」の期間における取引に対する請求書であることから,少なくとも2015年11月20日までに「15至高・BOO桜カタログ」に係る取引が行われたことを示している。
したがって,乙第5号証の請求書により,乙第4号証に係るカタログギフトが,少なくとも2015年11月20日(要証期間内)までに流通に供されていたことが明らかである。
(4)乙第7号証の1ないし3は,本件役務中のフロー(4)のプロセスにおいて,「受取り手」から「スリーハート(シャディ)」に対して,商品注文のあった事例を示すものである。
なお,ギフト券の宛先は「カタログギフト(THC)係行」(THCは,「Three Heart Corporation」の略称)と「スリーハート」行となっているが,実際に商品注文書(お申込みハガキ)の受付業務及び商品発送業務は「シャディ」が行っており,このことは,「お申込ハガキ」の送り先住所「大阪府松原市松ヶ丘4丁目20番12号」が被請求人「シャディ」の大阪支社住所と一致することからも明らかである(乙2の5)。
本件役務において,「受取り手」からの商品注文は「お申込みハガキ」により行われるものであるが,乙第7号証の1は,2015年5月1日に発行されたギフト券によって,カタログコース「桜 BOO」(乙4)カタログから選ばれたお申込み番号「8348-941」の商品「シチズン 婦人ウオッチ」を「受取り手」が注文したことを示しており,実際に,乙第4号証の本件カタログ12頁に,お申込番号「8348-941」の商品「シチズン 婦人ウオッチ」が掲載されている。
「ギフト券」は,本件役務のフロー(2)又は(3)のプロセスにあって,実際の販売業務を行う被請求人「シャディ」からカタログギフトが納品される時に発行され,最大で180日のお申込有効期限が設けられており,「ギフト券」に同封されるギフト用のカタログは,「ギフト券」お届け日ないしは発行日の年度のものが用いられ,例えば,2016年の末日に発行された「ギフト券」には2016年版のギフト用のカタログが同封され,2017年に到来する有効期限まで使用されることがあることから,2016年版のカタログは実質2016年と2017年の2年にわたって,当該役務の提供を受ける者の利用に供されるのである。
一方,ギフト用のカタログと,当該カタログに掲載される商品は,流行や消費者の好みの変化に応じて選択され,その年度毎に,お申込番号が付与されており,前年度と同じ商品が掲載されていてもお申込番号は相違していることから,本件カタログが2015年に発行され,本件役務の提供を受ける者の利用に供されていたことが明らかである。
5 本件カタログ2016年版による証明
(1)乙第8号証は,「至高」「桜」コース用のカタログ2016年版であり,その表紙には「至高」と共に「サクラ/桜」商標が付され,裏表紙には「BOO/サクラコース」の表示が付されている。
また,当該カタログ内には,紳士用腕時計及び婦人用腕時計等の「時計」に属する商品が掲載されている。
そして,奥付には,「お問い合わせは/スリーハート・コーポレーション(株)お客様センター」とあるように,このカタログが被請求人と同視できる「スリーハート」の発行に係るものであることが示されている。
さらに,裏表紙の下方の「BOO/サクラコース」表示の下方に「16-8012-252」の記載があり,冒頭の「16」の部分が西暦2016年の「16」を表示し,2016年版カタログであることを示している。
(2)乙第9号証は,本件役務のフロー(1)のプロセスにおいて使用された「加盟店」の「イナトウ本店(チェーンNo.63250-200)」から「シャディ」に送られた発注書「『ボーベル・至高カタログギフト』販売報告書」であり,カタログギフト購入者が,カタログコース「桜」を発注していることがわかる。
なお,下方のファクシミリ受信日時「2016 02/05 FRI 16:31」から被請求人「シャディ」が2016年2月5日(金)に発注書を受け取ったことを示している。
(3)乙第10号証は,取引期間を「2016.05.21から2016.06.20」として,6月14日に納品したカタログギフトに係り,前記2015年版と同様に,当該カタログギフトが「至高/桜カタログ2016年版」であることを示す「16至高・BOO桜カタログ」の記載が商品名欄にある。
(4)乙第11号証の1及び2は,本件役務のフロー(4)のプロセスにおいて使用された「ギフト券」で,受取り手から「スリーハート(シャディ)」に対して,「時計」に属する商品の注文があった事実を示すものである。
乙第11号証の1に示す「ギフト券」は,2016年10月14日に発行され,乙第8号証の「至高/桜カタログ2016年版」に掲載された商品から,お申込番号「8348-820」に係る商品「シチズン 紳士ウオッチ」が選択されている。同じ「シチズン紳士ウオッチ」は,その前年の2015年版(乙4)に掲げられているが,2016年版とは異なるお申込番号「8349-521」が付されている。このことから,乙第11号証の1の2016年10月14日発行のギフト券で注文されたお申込番号「8348-820」の「シチズン 紳士ウオッチ」は,乙第8号証の本件カタログ掲載の商品から選ばれたものであることが証明され,かかる本件カタログが2016年に発行され,取消請求役務の提供を受ける者の利用に供されていたことが明らかである。
6 その他の補強証明
(1)乙第12号証は,表紙に「至高」の「キンシバイ/金糸梅」商標を配し,裏表紙に「VOO/キンシバイコース」の表示があり,当該ギフト用のカタログの発行年度を示す「16-8012-287」の記号を付している。
(2)乙第13号証は,「シャクナゲ/石楠花」コースに係るもので,表紙に「シャクナゲ/石楠花」商標を配し,裏表紙に「AOO/シャクナゲコース」の表示があり,そして2016年版を表示する「16-8012-236」の記号も付されている。
(3)乙第14号証ないし乙第17号証も各々「至高」カタログギフトにおける「ヒノデラン/日の出蘭」コース,「コウバイ/紅梅」コース,「キキョウ/桔梗」コース,「スイセン/水仙」コースのギフト用のカタログの表紙,裏表紙の抜粋写しであり,いずれも乙第8号証,乙第12号証,乙第13号証と同様の形式で作成されており,各々「AEO/ヒノデランコース」,「BEO/コウバイコース」,「CE/キキョウコース」及び「CO/スイセンコース」の表示が施されている。なお,カタログギフト「至高」シリ-ズは,「桜」コース及び前記コースを含む全14のコースを展開している。
このことから,本件カタログの「サクラ/桜」は,他のカタログギフトコースと同様に「至高」のカタログギフトコースを表わすものであることが,より明らかになるものである。
ちなみに,前記した乙第10号証の請求書には,「商品名欄」に乙第8号証に係る「16至高・BOO桜カタログ」と共に「16至高・VOO金糸梅カタログ」,「16至高・AOO石楠花カタログ」,「16至高・AEO日の出蘭カタログ」及び「16至高・BEO紅梅カタログ」等々の記載があり,このことを参酌すれば,前記した「『16』が2016年版を表し,BLCが『至高』を表し,『桜』及び『BOO』がコース名/コース記号を表す」ことが,より明確になるものである。
(4)乙第18号証は,本件役務のフロー(1)のプロセスにおいて使用された2017年版「至高」「桜」コースのカタログギフトに係る代理店「ギフトプラザダイトー本店(チェーンNo.54060-010)から「シャディ」へ送られた発注書「『カタログギフト』販売報告書」である。乙第18号証から,カタログギフト購入者が,カタログコース「桜」を発注していることがわかる。乙第18号証上方のファクシミリ受信日時「2017年1月9日16時44分」から,2017年1月9日に当該ファクシミリを受信していることがわかる。
なお,乙第18号証には,被請求人「シャディ」の名称がファクシミリ受信欄等に表れていないものの,「コース金額/コース名」欄には,「至高」「桜(サクラ)BOO」コース以外のコース名称として示した乙第12号証ないし乙第17号証に示した,「水仙(スイセン)CO」コース,「桔梗(キキョウ)CE」コース,「石楠花(シャクナゲ)AOO」コース及び「日の出蘭(ヒノデラン)AEO」コース等の注文を行うことができる発注書となっていることから,紛れもなく「シャディ」及び「スリーハート」が取扱う力タログギフト「至高」に係る取引書類であることがわかる。
乙第19号証もまた,「至高」「桜」コースの発注書「注文書」であり,ファクシミリ受信日時から平成29年2月21日に発注されていることがわかる。乙18号証と同様に,「至高」の「BOO/桜」コース以外の「AOO/石楠花」コースが発注されていることから,「シャディ」及び「スリーハート」が取扱うカタログギフト「至高」に係る取引書類であることがわかる。
なお,乙第19号証は,「(株)たかやなぎ本店」から「シャディ」に送られた書類であるが,「チェーンNo.」が記載されていないことからもわかるように,前記発注者「(株)たかやなぎ本店」は被請求人のフランチャイズ「加盟店」ではなく,カタログギフトの販売代理店であることから,乙第5号証,乙第9号証及び乙第18号証の発注書と様式が異なっている。
このように,乙第18号証及び乙第19号証によって,「至高」「桜」コース用カタログが2017年においても継続的に存在してことが明らかであり,このことからも乙第4号証及び乙第8号証のギフト用カタログが各々2015年,2016年に発行されたものであることが明確になるものである。
7 まとめ
被請求人の営む「カタログギフト業」の各プロセスで実際に使用された取引書類を参酌しても明らかなように,乙第4号証及び乙第8号証は各々2015年版及び2016年版のギフト用カタログである。
そして,いずれも「サクラ/桜」(あるいは,「桜」)「サクラ」コースの商標が付され,当該カタログ中に「時計」に属する商品が掲載されており,さらに,乙第7号証の1,乙第11号証の1及び2における取引書類から証明されるように,実際に「時計」に属する商品が本件カタログから選択され,注文されているので,「『時計の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供』役務の提供を受ける受取り手(顧客)の利用に供するギフト用カタログに『サクラ/桜』を付する行為」及び「『時計の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供』役務の提供を受ける受取り手(顧客)の利用に供するギフト用カタログに『サクラ/桜』を付したものを用いて役務を提供する行為」が行われていたことに相違はなく,また,「サクラ/桜」,「桜」及び「サクラ」の表示は,本件商標「さくら/桜」と社会通念上同一のものであるから,本件商標に関し,商標法第2条第3項第3号及び同第4号に規定する「使用」行為が行われていたことが明らかである。

第4 当審の判断
1 被請求人が提出した証拠及びその主張によれば,以下のとおりである。
(1)乙第2号証について
ア 乙第2号証の1は,被請求人が作成した「被請求人の営むカタログギフト業に係るフローチャート」(別掲2)であるところ,これには,上部に左側から「シャディ/スリーハート」,「加盟店/(フランチャイジー)」,「ギフト購入者」及び「受取り手」の記載があり,被請求人の業務がフローチャートで記載されている。
そして,被請求人の主張及び該乙号証によれば,ギフト用カタログの発行者は「スリーハート」であるが,実質的な業務は,被請求人「シャディ」が行っていることから,被請求人「シャディ」及び「スリーハート」は取引における当事者としてフローチャートに示されている。
また,「シャディ」及び「スリーハート」の業務は,結婚内祝い等の贈答商品の贈り主等が,「シャディ」及び「スリーハート」のフランチャイジーである加盟店に,ギフト用のカタログと該カタログ掲載商品の「ギフト券による進物品」(以下「カタログギフト」という。)の購入を申し込むと,加盟店が「シャディ」及び「スリーハート」にカタログギフトを発注し,「シャディ」及び「スリーハート」から加盟店を通じ,カタログギフトが結婚内祝い等の贈答商品の贈り主,すなわちカタログギフトの購入者(以下「ギフト購入者」という。)に送付され,その後,カタログギフトは,結婚祝い等の内祝いを受け取る者(以下「受取り手」という。)に渡され(又は,「シャディ」及び「スリーハート」から直接送付される場合もある。),受取り手は,ギフト用カタログに掲載された商品から商品を選択し,ギフト券を使用して「シャディ」及び「スリーハート」に商品を注文すると,「シャディ」及び「スリーハート」は受取り手に商品を配送することを内容とするものである。
イ 乙第2号証の3は,「スリーハート」の「株主名簿」であるところ,1葉目に「株主名簿」の見出しの下,「スリーハート・コーポレーション株式会社」の記載,2葉目に「スリーハート・コーポレーション株式会社/株主一覧表」の表題において,「株主名」の項目に「ジャディ株式会社/代表取締役社長 氏名」,「合計所有株数」の項目に「600,000」,「決議権個数」の項目に「600,000」の記載があり,これ以外に株主名の記載はなく,下部に「本書は当社の株主名簿に相違ありません。」,「平成29年3月1日」,「栃木県栃木市岩舟町静戸343番1/スリーハート・コーポレーション株式会社/代表取締役社長 氏名」の記載及び代表取締役印が押印されている。
ウ 乙第2号証の4は,「スリーハート」のウェブページであり,「会社概要」の見出しの下,「商号」として,「スリーハート・コーポレーション株式会社/(英語名 Three Heart Corporation Co.,Ltd)」及び「事業所」として「松原統括管理部/大阪府松原市松ヶ丘4-20-12」の記載がある。
エ 乙第2号証の5は,被請求人のウェブページであり,「概要」の見出しの下,「社名」として,「シャディ株式会社(英語名 SHADDY CO.,LTD)」及び「大阪支社」として「大阪府松原市松ヶ丘4丁目20番12号」の記載がある。
(2)乙第4号証について
乙第4号証は,「スリーハート」発行の2015年版ギフト用カタログの抜粋の写しとされるものであるところ,その表紙の上部には,「至高」の文字が大きく縦書きで表示され,その下部には,「サクラ/桜」の文字が表示されている。
そして,そのカタログの12頁には「腕時計」の写真及びその下に商品名「2 シチズン 婦人ウオッチ」,その下に「お申込番号 8348-941」及び商品説明が記載されている。
また,奥付には,「お問い合わせは」の項において,「大阪府松原市松ヶ丘4丁目20番12号/スリーハート・コーポレーション(株)お客様センター」の記載がある。
さらに,裏表紙には,「至高」及び「桜」の表示があり,その下には,「BOO/サクラコース」,「15-8012-306」及び「15-8002-300」の表示がある。
(3)乙第5号証の1について
乙第5号証の1は,カタログギフトを販売する「加盟店」から「シャディ」へ宛てた「販売報告書」の写しであるところ,その上部に「シャディ様 ←アオキ 豊田店 2015年2月1日(日)16:29」の表示があり,「発行日」として「27年2月1日」,「店名」として「ギフトアオキ豊田店(B)」,「ご依頼主様」として依頼者の氏名,住所及び電話番号の記載があり,そして,その下に「ご使用コースのご報告」として,「価格コース」として「20,500円」,「販売報告カタログNo.」として「15-8002-300」,「コース名」として「桜」及び「ご使用枚数」として「1枚」の記載がある。
(4)乙第6号証について
乙第6号証は,被請求人(シャディ)がカタログギフトを販売する加盟店である「勝原商事 竹原店 ボーベル」に宛てた「請求書」の写しであるところ,上部には「15.10.21から15.11.20まで」の記載があり,その下部の表には,「カタログNo.」,「商品名又は注文名」,「日付」,「伝票No.」,「数量」,「単価」及び「金額」などの項目があり,最下部には,「カタログNo.」として「15-8012-306」,「商品名又は注文名」として「15至高・BOO桜カタログ」,「数量」として「1」の記載があり,その単価,金額,合計等の記載がある。
(5)乙第7号証の1について
乙第7号証の1は,カタログギフトの受取り手から,「スリーハート」へ送付された,「お申込みハガキ」(以下「ハガキ」という場合がある。)の写しであるところ,「お申込み期限」として「2015年5月1日から180日間」の記載がある。
そして,該ハガキの上部に「ご希望商品の申込番号」として「8348-941」,商品名として「シチズン/婦人ウオッチ」の記載,その下部に「コース名/コース記号」として「15 桜 BOO」の記載,さらに,下部に「スリーハート・コーポレーション(株)/カタログギフト係/大阪府松原市松ヶ丘4丁目20番12号」の記載がある。
2 上記1からすれば,次のとおり判断できる。
(1)使用者について
ア ギフト用カタログ(乙4)の奥付には,問い合わせ先として「スリーハート・コーポレーション(株)お客様センター」の表示があることからすれば,当該カタログの作成者は,「スリーハート」であるといえる。
そして,乙第2号証の3によれば,「スリーハート」の株式は,全て被請求人が所有していることから,「スリーハート」は被請求人の子会社であり,被請求人は,「スリーハート」に本件商標の使用についての黙示の使用許諾を与えているとみて差し支えない。
したがって,「スリーハート」は,本件商標の通常使用権者と認められる。
イ 上記のとおり,ギフト用カタログ(乙4)の作成者は,「スリーハート」である。
ウ また,加盟店が「シャディ」に宛てた「販売報告書」(乙5の1)に記載の「カタログNo.」及びコース名と「スリーハート」が作成したギフト用カタログ(乙4)の裏表紙に記載されている「15-8002-300」の番号及び「サクラコース」が一致し,また,「シャディ」が「加盟店」に宛てた「請求書」(乙6)に記載の「カタログNo.」及び「商品名又は注文名」と「スリーハート」が作成したギフト用カタログ(乙4)の裏表紙に記載されている「15-8002-300」の番号及び「サクラコース」が一致し,さらに,「ハガキ」(乙7の1)に記載されている申込番号及び「コース名/コース記号」とギフト用カタログ(乙4)の12頁に掲載されている申込番号及び裏表紙の「BOO/サクラコース」が一致している。
エ 上記のことから,フローチャート(乙2の1)のフロー(1)の「発注」の証拠として,「加盟店」から「シャディ」宛てに「販売報告書」(乙5の1)があり,フロー(2)の「シャディ」及び「スリーハート」と「加盟店」の間の「納品」の証拠として,「シャディ」から「加盟店」への「請求書」(乙6)があり,さらに,フロー(4)の「商品注文」の証拠として,「受取り手」から「スリーハート」宛ての「ハガキ」(乙7の1)があることから,「シャディ」及び「スリーハート」は,「カタログの作成」,「カタログの受注」及び「カタログ販売の請求」などの業務を分担して行っているものといえる。
オ さらに,被請求人「シャディ」の大阪支社と「スリーハート」の松原統括管理部は,同じ住所に所在していることが認められる。
カ 小括
以上のことから,被請求人(商標権者)である「シャディ」と通常使用権者である「スリーハート」は,同一の住所において,業務を分担し,共同して事業を行っているといえるから,本件商標の使用者は,「シャディ」及び「スリーハート」である。以下,この2社をまとめて「シャディ等」という。
(2)使用商標について
ギフト用カタログ(乙4)の表紙には,「桜」の漢字の上段に「サクラ」の片仮名を配した表示がされているところ,本件商標は,「桜」の漢字の上段に「さくら」の平仮名を配した構成からなり,上段の文字に片仮名か平仮名の違いはあるものの,両者とも「サクラ」の称呼及び「桜」の観念を生じるものであり,称呼及び観念を同じくするものであるから,使用商標は本件商標と社会通念上同一の商標と認められるものである。
(3)使用時期について
申込期限が「2015年5月1日から180日間」の「ハガキ」(乙7の1)に記載の商品名及び申込番号とギフト用カタログ(乙4)の12頁に掲載されている商品の商品名及び申込番号が一致し,該ハガキのコース名「15桜BOO」と該商品が掲載されたギフト用カタログの裏表紙の「BOO/サクラコース」は,コース名が一致していることから,「受取り手」は,ギフト用カタログ(乙4)に同封された「ハガキ」を使用して,上記申込期限内に該商品の申込みをしたものといえる。
したがって,少なくとも要証期間内である2015年(平成27年)5月には,表紙に本件商標と社会通念上同一の商標が表示されたギフト用カタログ(乙4)が「受取り手」に渡っていたものと認められる。
(4)使用役務について
ギフト用カタログ(乙4)には,「腕時計」の写真並びにその申込番号,商品説明が記載されているところ,この商品は,「時計」の範ちゅうの商品である。
また,ギフト用カタログ(乙4)に掲載された商品「腕時計」について,「受取り手」から「シャディ等」へ商品の申込みが該ハガキによってされていることからすれば,該商品は,「シャディ等」から受取り手である需要者へ送付,すなわち,譲渡,引き渡しをされたものといえ,該商品は,「シャディ等」から需要者へ譲渡,引き渡しをする商品としてギフト用カタログに掲載されていたものというのが相当である。
そして,「シャディ等」が事業として行っていると主張する「カタログギフト業」の内容とは,各種商品をカタログに掲載し,該カタログの受取り手が好みの商品を選べる形式で商品を販売する事業であって,カタログギフトの受取り手,すなわち需要者は,各種の商品が取りそろえられ,掲載されたギフト用カタログを見るだけで商品の選択及び注文ができるようになっていることから,「シャディ等」は,需要者に対して商品の選択の便宜のために販売する商品が掲載されたカタログの提供を行っているということができるものであり,これは,小売業者が顧客に対して行う便益の提供に該当するといえるものである。
してみれば,被請求人(シャディ)及び通常使用権者(スリーハート)は,「時計」の範ちゅうの「腕時計」についての小売等役務を提供したものといえ,被請求人(シャディ)及び通常使用権者(スリーハート)の提供する上記小売等役務に使用される当該ギフト用カタログは,「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」というのが相当である。
(5)小括
上記(1)ないし(4)によれば,本件商標の商標権者及び通常使用権者は,要証期間内にその請求に係る指定役務中「時計の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の範ちゅうに含まれる「腕時計の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について,その役務の提供に当たり,ギフト用カタログ(役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物)に,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付したものと認められ,また,これを用いて役務を提供したものと認めることができ,これは商標法第2条第3項第3号「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付する行為」及び同第4号「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為」に該当するものである。
3 請求人の主張について
請求人は,「答弁書によると被請求人,通常使用権者が営む『カタログギフト業』は,被請求人又は通常使用権者が『ギフトカタログ』を加盟店に納入し,そのカタログを『ギフト購入者』が購入して『受取り手』に贈り,『受取り手』が被請求人に商品を注文する,という流れで進められるものである。ここにおいて役務に対して対価を支払うのは上記『ギフト購入者』である。そして,『ギフト購入者』が購入するのは『カタログ』であるが,それには『ギフト券』が含まれるものであり,被請求人,通常使用権者が販売しているものは究極的には『ギフト券』である。・・・有効期間が6ヶ月を超える『ギフト券』は前払式手段として財務局への登録等が義務付けられているとのことである。そうであれば,被請求人,通常使用権者が提供している役務は,『小売業務』ではなく,『前払い式証票の発行』あるいは『ギフトカタログの販売』である。」旨を主張している。
しかしながら,「シャディ等」の業務をフローチャート(乙2)全体で捉えてみれば,「ギフト購入者」が商品代金を含んだギフト用カタログを「シャディ等」から購入し,「受取り手」が該カタログから商品を選び,「シャディ等」に申込みをし,「シャディ等」から商品を受け取るという内容のものであり,「ギフト購入者」と商品の受取り手が異なり,商品の受取り前に「ギフト購入者」が商品代金を支払っているとしても,全体としてみれば,顧客は,「シャディ等」が作成したギフト用カタログから商品を選び「シャディ等」から商品を購入しているといえるものであって,「シャディ等」は商品を販売している。
すなわち,「シャディ等」は,小売業を営んでいるといえるものであり,その際に,顧客による商品の選択の便宜を図るため,「シャディ等」は,商品が掲載されたカタログを作成し,顧客に提供しているとみるのが相当である。
してみれば,「シャディ等」は,商品の小売り業務において,顧客による商品選択の便宜を図るために,各種商品が掲載されたカタログを提供しているとみるべきであって,これを,「ギフト用カタログ」の譲渡のみを捉え,「前払い式証票の発行,ギフト用カタログの販売」とみるのは妥当ではない。
したがって,請求人の主張は採用できない。
4 むすび
以上のとおり,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者及び通常使用権者が取消請求役務中の「時計の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の範ちゅうに含まれる役務「腕時計の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について本件商標の使用をしていることを証明したと認め得るところである。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定によりその指定役務中の取消請求役務について取り消すことはできない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本件商標)



別掲2(原本については,乙第2号証の1参照。),



審理終結日 2017-10-02 
結審通知日 2017-10-06 
審決日 2017-10-25 
出願番号 商願2010-68222(T2010-68222) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (X35)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 中束 としえ
榎本 政実
登録日 2011-03-25 
登録番号 商標登録第5401699号(T5401699) 
商標の称呼 サクラ 
代理人 並川 鉄也 
代理人 川瀬 幹夫 
代理人 貴答 信介 
代理人 塚田 美佳子 
代理人 小谷 昌崇 
代理人 橋本 千賀子 

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