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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X42
管理番号 1333319 
審判番号 取消2015-300901 
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-12-11 
確定日 2017-09-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第5491818号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5491818号商標の指定役務中、第42類「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査・分析・評価・研究又はこれらに関する情報の提供」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5491818号商標(以下「本件商標」という。)は、「クリニプロ」の片仮名を標準文字で表してなり、平成23年12月7日に登録出願、第10類、「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査・分析・評価・研究又はこれらに関する情報の提供」を含む第42類及び第44類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同24年5月11日に設定登録されたものである。
その後、商標権の一部取消審判により、指定商品及び指定役務中、第10類「全指定商品」、第42類「医薬品の開発」及び第44類「医業,健康診断,医薬研究用試薬の調剤,栄養の指導,医療用機械器具の貸与,ジェネリック医薬品に関する医療情報の提供」については、その登録を取り消すべき旨の審決がされ、同28年1月15日にその確定審決の登録がされたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、同28年1月6日である。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を、審判請求書、審判弁駁書、口頭審理陳述要領書及び上申書において、要旨以下のように主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。

1 審判弁駁書における主張
被請求人は、本件商標が、本件審判請求日前の3年以内(以下「要証期間」という場合がある。)に日本国内において商標権者たる被請求人によって、第42類「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査・分析・評価・研究又はこれらに関する情報の提供」(以下「取消請求役務」という場合がある。)に使用されていると主張する。
しかしながら、これらの証拠によっては、本件商標と社会通念上同一の商標が指定役務について使用されてきたことを立証しているとはいえないから、本件商標の登録は取り消されるべきである。
(1)本件商標と使用商標の同一性について
本件商標は、「クリニプロ」であるが、使用商標は、「クリニプロ株式会社」であり、商号を示す「株式会社」の有無が認められる。すなわち、本件商標と使用商標では、商標の外観、観念、称呼を異にするものであり、本件商標と社会通念上同一の商標を被請求人が使用していなかったことは明らかである。
特許庁の審決も、本件と同じように、商号を示す「株式会社」の有無を考慮して、社会通念上の同一性はないと判断している(甲1)。
(2)本件商標の指定役務「医薬品の試験」への使用について
本件商標の指定役務「医薬品の試験」への使用を立証する証拠として、クリニプロ株式会社の履歴事項全部証明書の写しが乙第1号証として提出されているが、そこには会社の目的が記載されているにすぎないから、本件商標の取消請求役務への使用を立証したことにならない。
乙第2号証としては、クリニプロ株式会社のウェブサイトの写しが提出されて、そこには、「医薬品の試験」の記載はなく、また、後述するように、被請求人が「医薬品の臨床試験」を実際に行っていないことは明らかであるから、ウェブサイトの広告をもって、本件商標の指定役務「医薬品の試験」への使用を立証していないことは明らかである。
裁判所も、使用実態を前提としない広告は、名目的な使用として登録商標の使用を認めていない(甲2)。
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」第80条の2第2項によると、治験を行うには、厚生労働大臣に治験の計画を届け出る必要があるが、被請求人は、このような届出書を証拠として提出していない。このことからも、被請求人自らが、取消請求役務を行っていないことは明らかである。
被請求人は、乙第3号証として、「治験管理基本契約書」を提出しているが、この契約書には、被請求人は、治験実施医療機関の業務の管理、代行及び支援を行うとの記載はあるものの、被請求人自らが治験を行うとの記載は一切ない。かかる契約書からも、被請求人が本件指定役務「医薬品の試験」の提供を行っていないこと、本件商標が取消請求役務に使用されていないことは明らかである。
(3)本件商標の取消請求役務への使用について
上述したように、乙第1号証は、会社の目的を記載したにすぎないから、本件商標の取消請求役務の使用を立証したことにならない。
乙第2号証は、被請求人の広告であるが、「治験の支援」についての記載はあるものの、取消請求役務の記載はなく、また、本広告は、実際の役務の提供を伴わない広告であるから、名目的な使用であり、本件商標の取消請求役務への使用を立証していないことは明らかである。
取消請求役務が実際に提供されているのであれば、本件商標と取消請求役務が記載された請求書、領収書などの取引の実態を立証する証拠が提出されてしかるべきであるが、このような証拠は一切提出されていない。
また、乙第3号証として、治験管理基本契約書の写しが提出されているが、ここにも、取消請求役務が記載されていない。
以上述べたところより、被請求人が取消請求役務を行っていないこと、本件商標が取消請求役務に使用されていないことは明らかである。

2 口頭審理陳述要領書における主張
(1)本件商標権者のウェブページ(乙2)及び治験管理基本契約書(乙3)に付された「クリニプロ株式会社」が、本件商標と同一又は社会通念上同一と認められるか
本件商標と使用商標では、外観において「株式会社」の有無の違いがあり、観念において、商号(商人が営業について自己を表示するための名称)か否かの違いがあり、称呼において、「カブシキカイシャ」の有無の違いがある。
本件商標は、「クリニプロ」のカタカナの構成のみからなるのに対して、使用商標は、商号の構成からなるから、商号か否かという点において、明らかに登録商標の識別性に影響を与えるものであり(パリ条約5条(c)(2))、本件商標と使用商標の間には社会通念上の同一性がないことは明らかである。
特許庁の審決も、本件と同じように、商号を示す「株式会社」の有無を考慮して、社会通念上の同一性はないと判断している(甲1)。
当該審決は、(a)使用商標が、郵便番号、住所、電話及びFAX番号を伴って標記されているため、使用商標が商標としてではなく、商号として使用されていること、(b)株式会社の有無により、その構成、称呼、観念を異にするので、両商標は、社会通念上同一とはいえないと述べている。
(2)本件商標権者の提供する役務が、取消請求役務の範ちゅうであるか、否か
ア 本件商標の使用に係る役務が「医薬品・化粧品・食品の試験・検査・分析・評価・研究」の範ちゅうに属するか否か
(ア)商標法上の役務とは、「他人のためにする労務又は便益であって、独立して商取引の目的たり得るもの」である(平成23年10月13日判決言渡、平成23年(行ケ)第10128号審決取消請求事件)。
本件商標の指定役務「医薬品の試験」の場合には、「製薬企業のために、独立して行う臨床試験の提供」ということになる。
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」第80条の2第2項によると、「医薬品の試験」を行うには、厚生労働大臣に治験の計画を届け出る必要があり、また、その報告義務があるが、被請求人はこのような届出書を提出することも、その報告をすることも行っていない(乙1?乙10)。
「医薬品の試験」を行えるのは医療機関のみである。
このことは、(a)「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に基づく「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」第35条に規定された実施医療機関の要件、(b)厚生労働省のWEB(甲3)において、「治験は病院で行われます。治験を行う病院は、『医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令』という規則に定められた要件を満足する病院だけが選ばれます。」の記載があること、さらに、(c)日本SMO協会のWEBに、「治験は、製薬会社の依頼により、医療機関で行われます」と記載されていることからも明らかである(甲4)。
被請求人は、法律上の要件を満たした医療機関ではないから、被請求人が「医薬品の試験」を行っているとの主張は失当である。
被請求人が行っている、他人のためにする労務又は便益で独立して商取引の目的たり得るものは、「医療機関のための、医薬品の試験の支援、サポート」のみである。これは上記SMO協会のWEB(甲4)においても、被請求人であるSMOの役割は「支援」や「補助」であることが明確に記載されていることからも明らかである。
(イ)被請求人が役務提供を行っていると主張する役務は、以下にあるように、「医薬品の試験」とは別途の独立した役務として、特許庁において商標登録が認められているものである。
・事務の代行(第35類)
・医薬品の試験・検査・研究又は臨床試験に関する契約締結の事務の代行(第35類)
・実施医療機関における医薬品の試験の実施のための計画の補助(第42類)
・医薬品の試験のコンサルティング(第42類)
・医療機関における医薬品の試験に関する臨床データの収集及び管理(第44類)
(ウ)被請求人は、平成28年8月29日付けの口頭審理陳述要領書において、乙第2号証における役務の内容を説明し、同号証における以下の記載内容にアンダーラインを引いている。
・クリニプロの臨床試験支援業務
・クリニプロは提携先医療機関のひとつである「東京駅センタービルクリニック」と業務提携し、「臨床試験ボランティア会」の構築支援業務を行っております。
・治験経験・疾病知識の高いCRC・専門性の高い医師の協力により、質の高い臨床試験を提供します。
・専門施設の提携により、主に下記領域の受託が可能です。
しかしながら、上記に述べたのと同じように、いずれも、「医薬品の試験」には該当せず、「医薬品の試験の支援、サポート」に該当するものであり、本件商標の指定役務についての主張・立証としては失当である。
(エ)被請求人は、平成28年8月29日付けの口頭審理陳述要領書において、乙第4号証(請求書)、乙第7号証(新規治験実施可能性調査に関する表明・確約書)、乙第7号証-2(調査票)、乙第8号証(治験管理基本契約書)、乙第9号証(見積書)及び乙第10号証(治験実施提案資料)を提出して、コメントしている。
しかしながら、これらの証拠における「他人のためにする労務又は便益であって、独立して商取引の目的たり得るもの」は、いずれも、「医薬品の試験」ではなく、「医薬品の試験の支援、サポート」に該当するものであるから、本件商標の指定役務についての主張・立証としては失当である。
(オ)被請求人は、別件の不使用取消審判請求事件(取消2015-300903、取消2015-300904)においても本件と同じ証拠を提出して、本件商標の42類「医薬品の試験・検査又は研究に関する情報の提供並びにこれらに関するコンサルティング」、44類「医療機関における医薬品の臨床試験に関する臨床データの収集及び管理」についての使用を主張・立証していることからも(甲5、甲6)、本件商標が「医薬品の臨床試験」に使用されていないことを自ら立証していることは明らかである。
イ 本件商標の使用に係る役務が取消請求役務の範ちゅうに入るか否か
商標法上の役務とは、「他人のためにする労務又は便益であって、独立して商取引の目的たり得るもの」であるから、本件商標の指定役務「医薬品の試験に関する情報の提供」の場合には、「医薬品の試験の情報を独立して提供する行為」ということになる。
被請求人の提供している役務は、「医薬品の試験の支援、サポート」であり、「医薬品の試験に関する情報を独立して提供する行為」は行っていない。
また、「医薬品の試験に関する情報を独立して提供する行為」に対する対価を得ているものでもない。被請求人が何等かの情報を提供する行為をしたとしても、それは、「医薬品の試験の支援、サポート」の付随的な役務提供行為にすぎない。
よって、取消請求役務を被請求人が行っているとの主張は失当である。
(3)本件商標権者のウェブページ(乙2)について、本件商標の名目的な使用か、否か
乙第2号証には、以下の記載があるが、上記(2)において述べたように、実際に、「医薬品の試験」、「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査・分析・評価・研究に関する情報の提供」を行っておらず、被請求人は、「医薬品の試験」を行える医療機関でもないから、以下記載は名目的な使用といわざるを得ない。
・治験経験・疾病知識の高いCRC・専門性の高い医師の協力により、質の高い臨床試験を提供します。

3 上申書における主張
(1)指定役務「化粧品又は食品の試験・検査・分析・評価・研究又はこれらに関する情報の提供」について
当該役務について、被請求人は、本件商標が使用されているとの主張をしておらず、また、証拠も提出していない。
(2)指定役務「医薬品の検査・分析・評価・研究」について
当該役務について、被請求人は、本件商標が使用されているとの主張をしておらず、また、証拠も提出していない。
(3)指定役務「医薬品の試験・検査・分析・評価・研究に関する情報の提供」について
ア 指定役務「医薬品の試験・検査・分析・評価・研究に関する情報の提供」の意味
「情報」とは、「あることがらについての知らせ。判断を下したり行動を起こしたりするために必要な、種々の媒体を介しての知識。」の意味であり(広辞苑、甲7)、「医薬品の試験・検査・分析・評価・研究に関する情報の提供」は、「医薬品の試験等に関する知識の提供」を意味する。
イ 被請求人が提供している役務「新規治験実施可能性調査」の意味
一方、「調査」とは、「ある事項を明確にするためにしらべること。とりしらべ。」の意味であり(広辞苑、甲8)、被請求人が提供している役務「新規治験実施可能性調査」とは、「新規な治験の実施の可能性について、明確にするためのしらべ」を意味する。
ウ 指定役務「医薬品の試験・検査・分析・評価・研究に関する情報の提供」と被請求人が提供している役務「新規治験実施可能性調査」
指定役務「医薬品の試験・検査・分析・評価・研究に関する情報の提供」は、「医薬品の試験等に関する知識の提供」であり、被請求人の提供している役務「新規治験実施可能性調査」は、「新規な治験の実施の可能性について、明確にするためのしらべ」であるから、その内容には、「知識の提供」と「しらべ」という大きな違いがあり、この役務を同一の役務ということはできない。
よって、被請求人が指定役務「医薬品の試験・検査・分析・評価・研究に関する情報の提供」を行っていないことは明らかである。
エ 被請求人の主張について
被請求人は、平成28年10月12日付け上申書において、(a)「新規治験実施可能性調査を行い、その調査結果を製薬会社に対して報告するという業務を行っている」(乙7)、(b)「このような調査業務を行うことのできる環境を有していることこそが、被請求人にとって、一般的なSMOの業務と差別化することのできる要因の1つとなっている。」と、被請求人の役務は、「調査」であることを強調している。
また、平成28年10月12日付け上申書において、「被請求人は、医療機関が新規治験に関する業務を受託する前に、製薬会社からの依頼を受けて、上記表明・確約書(乙7)に基づき、独自に、当該製薬会社に対して新規治験実施可能性調査及びそれに関する情報の提供を行っているのである。」と、被請求人の役務は、「調査」であることを強調している。最後に「それに関する情報の提供を行っている」とあるが、ここにおける「情報の提供」は、新規治験実施可能性調査の結果の報告であり、「新規治験実施可能性調査」に付随する役務であり、独立して商取引の対象となるものではない。
このような付随する役務は、商標法上の役務に該当しないとことは、tabitama事件(東京地判平成17年3月31日・最高裁ホームページ)でも裁判所が認めているところである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を、審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書及び上申書において、要旨以下のように主張し、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第11号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 審判事件答弁書における主張
(1)乙第1号証について
乙第1号証は、被請求人であるクリニプロ株式会社の履歴事項全部証明書であり、会社設立の目的として、「医薬品・化粧品又は食品の臨床・非臨床試験・調査・研究開発又はこれらに関する情報提供」を行うことが記載されている。
同号証は、被請求人が本件商標を取消請求役務に使用していたという事実を直接的に立証するものではないが、これより、少なくとも被請求人が取消請求役務に関する業務を行うことを目的として登記された会社であることがわかる。
(2)乙第2号証について
ア 乙第2号証の説明
乙第2号証は、インターネット・アーカイブ(Internet Archive)という会社が、そのウェブサイト(https://archive.org/index.php)上に記録及び保存している被請求人のウェブページを印刷したものである。インターネット・アーカイブは、インターネット上のウェブページを自動的に電子保存するサービスを行っており、乙第2号証で示したウェブページの右上には、インターネット・アーカイブによって電子保存された年月日が示されている。
同号証は、本審判事件の審判請求書の提出日前の2015年7月11日時点におけるウェブページと、2015年6月20日時点におけるウェブページとをまとめたものである。なお、インターネット・アーカイブのウェブサイトに保存されているウェブページの印刷物に、不使用取消審判において登録商標を使用した日付を立証する能力があることは、例えば取消2009-300510号審判事件においても認められている。
イ 被請求人が本件商標を取消請求役務に使用していたこと
乙第2号証に示された被請求人のウェブページには、被請求人が提供する役務が記載されているとともに、本件商標と社会通念上同一である「クリニプロ株式会社」という商標が付されている。
また、被請求人は、同号証において、医薬品の臨床試験(治験)の支援事業を行うこと、臨床試験に関する基礎知識、実務知識、及び医学知識の研修を行うこと、治験についての説明会や新薬開発に関する医療セミナーを行うこと、治験開始前、治験実施、治験終了後にわたって、治験情報・医療情報の伝達を含む支援業務を行うことを提示している。
そして、このような被請求人が提供する支援事業や、研修事業、説明会などにおいて、医薬品の試験・検査・分析・評価・研究に関する情報の提供が行われていることは明らかである。
また、被請求人が同号証に示されたウェブページに「クリニプロ株式会社」という標章を付する行為は、役務に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する使用行為に該当する(商標法第2条第3項第8号)。
よって、同号証は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者たる被請求人が、本件商標と社会通念上同一の商標である「クリニプロ株式会社」を、取消請求役務について使用(商標法第2条第3項第8号)していた事実を示すものである。
(3)乙第3号証について
ア 乙第3号証の説明
乙第3号証は、2015年4月1日付けにて、治験施設支援機関である被請求人と治験実施医療機関のクリニックとの間で締結された治験管理基本契約書の写しである。この契約書では、クリニックが治験の実施に係る業務の管理、代行及び支援を被請求人に委託することが定められており、被請求人に委託された業務の細目は別紙に詳細に記載されている。
イ 被請求人が本件商標を取消請求役務に使用していたこと
乙第3号証に示された治験管理基本契約書の表紙には、本件商標と社会通念上同一の商標である「クリニプロ株式会社」が付されており、最終ページにも、契約書の記名として、「クリニプロ株式会社」が付されている。
また、同号証の別紙に記載された委託業務の細目をみると、被請求人がクリニックに対して、治験実施前に、医療機関内治験関係者の教育及び訓練をすること、治験実施医療機関及び責任医師選定のための資料を提示すること、治験受託の可能性検討及び資料の提示すること、説明会を開催して治験分担医師及び治験協力者に治験実施計画書を周知徹底することを含む役務を提供していたことがわかる。
また、同号証の別紙を見ると、被請求人がクリニックに対して、治験実施中に治験依頼者に対して連絡、報告及び協議をすること、治験実施中の医療機関の長に報告することを含む役務を提供していたことがわかる。
また、同号証の別紙を見ると、被請求人がクリニックに対して、治験実施後に、治験終了報告書を作成することや、治験依頼者へ治験終了関連の通知を行うことを含む役務を提供していたことがわかる。
そして、このような被請求人がクリニックに対して提供する役務には、医薬品の試験・検査・分析・評価・研究に関する情報の提供が含まれていることは明らかである。
また、被請求人が同号証に示された治験管理基本契約書に「クリニプロ株式会社」を付する行為は、役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付する使用行為に該当する(商標法第2条第3項第3号)。
よって、同号証は、本審判の請求日前の3年以内に日本国内において、商標権者たる被請求人が、本件商標「クリニプロ」と社会通念上同一の商標である「クリニプロ株式会社」を、取消請求役務について使用(商標法第2条第3項第3号)していた事実を示すものである。

2 口頭審理陳述要領書における主張
(1)被請求人の主張の追加
被請求人は、被請求人のウェブページにおいて、「クリニプロ株式会社」という「株式会社」の文字を伴った商標だけでなく、「クリニプロ」という文字が単独で示された商標も複数の箇所に付している。例えば、乙第2号証の2ページ「クリニプロの特徴」、8ページ「クリニプロの臨床試験支援業務」及び「クリニプロ提携医療機関の受託領域」、14ページ「クリニプロがサポートします」及び「クリニプロ臨床試験支援の特徴」、20ページ「クリニプロヘのお問合せ」などの記載が挙げられる。
これらの被請求人のウェブページに付された「クリニプロ」という商標は、すべて本件商標と同一の商標である。そして、被請求人が当該ウェブページに「クリニプロ」という本件商標を付する行為は、取消請求役務に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する使用行為に該当する(商標法第2条第3項第8号)。
(2)本件商標権者のウェブページ(乙2)及び治験管理基本契約書(乙3)に付された「クリニプロ株式会社」が、本件商標と同?又は社会通念上同一と認められるか否か
ア 請求人の主張
請求人は、特許庁の審決(甲1)を例に挙げて、本件商標「クリニプロ」と使用商標「クリニプロ株式会社」は社会通念上同一の商標ではないと主張する。
イ 被請求人の反論
(ア)請求人が提示した審決例と今回の審判とでは事情が異なること
上記審決(甲1)では、「株式会社 味工房」の文字がその下段に郵便番号、住所、電話番号及びFAX番号を伴っているという事実が、登録商標「味工房」と使用商標「株式会社味工房」とが社会通念上同一の商標ではないという判断の根拠となっている。
これに対し、本審判事件において、被請求人のウェブページ(乙2)及び治験管理基本契約書(乙3)に付与された使用商標「クリニプロ株式会社」は、郵便番号、住所、電話番号及びFAX番号等の記述的な文字を伴うものではなく、それ単独で看取し得るものであるといえる。
そうすると、請求人が証拠として提出した審決と本審判事件は、全く事情が異なるものであり、当該審決における判示事項を、本審判事件にそのまま適用することは妥当ではない。
(イ)「株式会社」の有無による差異があっても社会通念上の同一性を認めた審決例があること
取消2002-30131号審判事件(乙5)及び取消2003-30508号審判事件(乙6)の審決は、いずれも、登録商標と使用商標に「株式会社」の有無による差異があったとしても両商標は社会通念上同一の商標であると認められると判断したものである。
(3)本件商標権者の提供する役務が、取消請求役務の範ちゅうであるか否か
ア 本件商標権者の提供する役務が「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査・分析・評価・研究」の範ちゅうであること
(ア)請求人の主張
請求人は、要するに、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下「薬機法」という。)の第80条の2第2項によると、治験を行うには厚生労働省に治験の計画を届け出る必要があるが、被請求人は、このような届出書を証拠として提出していないから、被請求人自らが本件指定役務の提供を行っていないことは明らかであると主張している。
(イ)被請求人の反諭
a 治験計画の届出書は、製薬会社が作成して厚生労働省に提出するものであること
一般的に、治験に関わる機関としては、治験を依頼する「製薬会社」、治験を実際に行う「医療機関」及び主として医療機関における煩雑な治験業務の支援を行う「SMO」(Site Management Organization:治験施設支援機関、以下「SMO」という。)が存在する。
製薬会社は、治験という役務の提供を受ける側の立場にあり、医療機関及びSMOは、治験という役務を提供する側の立場にある。なお、被請求人は、ここにいうSMOに相当する機関である。
ここで、請求人が指摘する薬機法第80条の2第2項には、治験計画の届出書は、薬機法上、治験を依頼する者又は自ら治験を実施する者、すなわち製薬会社自らが作成して厚生労働省に届け出なければならないと定められているのである。
すなわち、他人(製薬会社)のために治験という役務を提供する立場にある医療機関やSMOは、治験計画の届出書を厚生労働省に提出することが法律上できない。このため、治験計画の届出書に、医療機関やSMOの商標が付されることはあり得ない。その結果、被請求人が治験を提供しているとしても、このような治験計画の届出書を被請求人自らが厚生労働省に提出したという事実を、本件指定役務の提供を行っていることの証拠として提出するということは不可能なのである。このように、請求人が指摘するような治験計画の届出書は、そもそも、他人に治験という役務を提供する際に登録商標を使用していることの証拠にはなり得ないものである。
よって、被請求人が治験計画の届出書を証拠として提出していないから被請求人自らが本件指定役務の提供を行っていないことは明らかであるという請求人の主張は、失当である。
b 被請求人は医療機関と一体となって「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査・分析・評価・研究」を製薬会社に提供していること
(a)被請求人の主張の概要
(i)一般的なSMOの役割
本件指定役務のうち、「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査・分析・評価・研究」(以下「医薬品の試験等」という。)には、上述したような医薬品の治験が含まれる。このような医薬品の試験等に関わる機関には、上述したとおり、「製薬会社」、「医療機関」及び「SMO」が存在する。
一般的には、製薬会社と医療機関の間で治験の実施に関する業務委託契約が交わされ、医療機関とSMOとの間で治験の支援に関する業務委託契約が交わされる。このように、一般的なSMOは、薬機法第80条の2の厚生労働省令「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」の第39条の2に定められたように医療機関との契約を締結して、治験を行う医療機関の支援に徹するものであり、製薬会社との間で何らかのやり取りをすることはなく、製薬会社との間で何らかの契約を交わしたりする必要もない。
(ii)被講求人(クリニプロ)の特徴
一般的なSMOは医療機関の支援に徹し製薬会社と直接の交渉等を行うことはない。
これに対して、被請求人は、医療機関の支援に留まらず、医療機関に代わって製薬会社と直接の交渉等を行い、新規治験の営業活動から、治験中の業務支援業務、治験後の費用の支払いに関する業務までを含むワンストップサービスを提供する。
また、被請求人は、一般的なSMOと同様に医療機関を支援し、医療機関はこの被請求人の管理指導の下で治験を実施する。
このように、被請求人のビジネスモデルにおいては被請求人が治験の窓口及び支援機関として機能しているため、役務の提供を受ける製薬会社は、被請求人と医療機関が一体となって治験を提供しているものと理解するといえる。その結果、治験終了後には、役務の提供を受けた製薬会社からの業務上の信用は、医療機関の商標のみならず、被請求人の登録商標にも化体するのである。
このような被請求人の特徴的な業務内容に鑑みれば、被請求人は、医療機関と一体となって、製薬会社に対し、医薬品の試験等の役務を提供しているといえる。
以下この点について、証拠を提示してさらに詳しく説明する。
(b)被請求人の特徴的業務を示す証拠
被請求人の特徴的なビジネスモデルにおける製薬会社、被請求人(クリニプロ)及び医療機関の関係性とともに、本審判事件において被請求人が提出した証拠を整理すると別掲の被請求人のビジネスモデルと提出証拠との関係性を示した図のとおりとなる。
(i)乙第2号証:ウェブページ
乙第2号証の8ページないし9ページは、「製薬会社の皆様へ」というタイトルのウェブページであり、被請求人のウェブページを参照すれば、役務の提供を受ける製薬会社は、被請求人が治験を実際に行う医療機関と提携していること、被請求人が提携先医療機関とともに質の高い臨床試験を提供していること、及び被請求人が専門施設との提携によって治験の受託可能であることを理解できる。
そうすると、役務の提供を受ける立場にある製薬会社から見れば、被請求人は提携先医療機関と一体となって医薬品の試験等の役務を提供しているものであると理解するはずである。このため、乙第2号証の記載から、被請求人が医療機関と一体となって製薬会社に対して医薬品の試験等の役務を提供していることは明らかである。
そして、被請求人が乙第2号証に示されたウェブページに「クリニプロ」及び「クリニプロ株式会社」を付する行為は、役務に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する使用行為に該当する(商標法第2条第3項第8号)。
よって、乙第2号証は、本審判の請求日前の3年以内に日本国内において、商標権者たる被請求人が、本件商標「クリニプロ」又はこれと社会通念上同一の商標である「クリニプロ株式会社」を、本件指定役務「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査・分析・評価・研究又はこれらに関する情報の提供」について使用(商標法第2条第3項第8号)していた事実を示すものである。
(ii)乙第7号証、乙第7-2号証及び乙8号証:新規治験実施可能性調査に関する表明・確約書等
乙第7号証は、平成27年11月12日付けで、被請求人が製薬会社に提出した表明・確約書である。この表明・確約書には、以下の記載がある(*は伏せ字を意味する。以下同じ。)。
「[クリニプロ株式会社](以下、「SMO」という)」は、****株式会社(以下、「****」という)が実施を検討している新規治験に関する治験実施可能性調査において、****に情報提供するにあたり、****に対して以下の事項を表明し、確約する。」
「1.SMOは、本書添付の調査票に記載された医療機関(以下、「対象施設」という)から、対象施設が未受託の新規治験(以下、「未受託治験」という)に関する営業活動、治験依頼者に対する情報の提供及び未受託治験の受託に関する治験依頼者との交渉(以下合わせて、「受託業務」と総称する)を、受託していること。」
また、乙第7-2号証は、表明・確約書に記載された「本書添付の調査票」である。この調査票には、東京駅センタービルクリニックが被請求人の提携先であることが示されている。
そうすると、この表明・確約書から、被請求人は、製薬会社に対して、調査票に記載された提携先医療機関(具体的には東京駅センタービルクリニック)から、新規治験に関する営業活動、治験依頼者(製薬会社)に対する情報の提供、及び治験依頼者(製薬会社)との交渉を受託していることを表明及び確約していることがわかる。
また、乙第8号証は、2009年3月2日に締結され、その後2011年9月1日に改定された被請求人と提携先医療機関(具体的には東京駅センタービルクリニック)との治験管理基本契約書である。この治験管理基本契約書は、上記した表明・確約書(乙7)において被請求人が製薬会社に対して表明及び確約した事項の根拠となるものである。具体的に説明すると、被請求人は、上述のとおり、表明・確約書において、医療機関の代わりに新規治験の営業活動、製薬会社に対する情報の提供、及び製薬会社との交渉が行う権限を有していることを表明及び確約しているが、その根拠は、治験管理基本契約書(乙8)の第2条(2)や第3条にある。すなわち、第2条(2)や第3条には以下の記載がある。
第2条(委託業務の内容)
甲が乙に委託する委託業務の内容は、以下のとおりとする。・・・
(2)治験依頼者からの治験実施の問い合わせ、要請の対応に関する業務・・・」
第3条(治験受託に関する業務の代行)
甲は、治験の受託に関し、以下の事項に関する業務を乙に代行させることとする。
(1)治験依頼者との間で締結する治験実施契約に関する受託費用その他契約条件の折衝
(2)治験実施契約締結後の契約条件の変更及び解除
(3)受託費用の収受
(4)その他、治験依頼者との間で行う折衝及び連絡に関する事項」
このように、被請求人は、一般的なSMOのように医療機関に対して治験実施中の支援業務を行うだけでなく、治験開始の前に、医療機関の代わりに製薬会社に対して新規治験の営業活動を行ったり、製薬会社に対して治験に関する情報を提供したり、さらには、製薬会社との間で治験実施契約に関する受託費用等の交渉などを行っているのである。
また、被請求人は、一般的なSMOと同様に医療機関を支援し、医療機関はこの被請求人の管理指導の下で治験を実施する。
このように、被請求人のビジネスモデルにおいては被請求人が治験の窓口及び支援機関として機能しているため、役務の提供を受ける立場にある製薬会社からすると、医療機関だけでなく、医療機関と被請求人(SMO)が一体となって医薬品の試験等の役務を提供しているものと理解するといえる。すなわち、被請求人も、医薬品の試験等の役務を提供しているのである。
このような事情に鑑みれば、被請求人は、医療機関と一体となって、製薬会社に対して医薬品の試験等(医薬品・化粧品又は食品の試験・検査・分析・評価・研究)の役務を提供しているといえる。
また、被請求人が製薬会社に対して提供した表明・確約書(乙7)に「クリニプロ株式会社」を付する行為は、役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付する使用行為に該当する(商標法第2条第3項3号)。
よって、乙第7号証は、本審判の請求日前の3年以内に日本国内において、商標権者たる被請求人が、本件商標「クリニプロ」と社会通念上同一の商標である「クリニプロ株式会社」を、本件指定役務「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査・分析・評価・研究又はこれらに関する情報の提供」について使用(商標法第2条第3項3号)していた事実を示すものである。
(iii)乙第4号証及び乙第9号証:請求書及び見積書
乙第4号証は、2014年5月27日付けにて被請求人が治験依頼者の製薬会社に対して発行した医薬品の製造販売後臨床試験にかかる費用の請求書の写しである。
乙第4号証には、「医療機関費用」とあり、その項目として「製造販売後臨床試験薬管理費」や、「試験管理経費(間接費)」、「被験者負担軽減費」とある。このような「医療機関費用」は、治験を実施するにあたり医療機関において発生した費用を被請求人が製薬会社から収受するためのものであり、被請求人は、ここで製薬会社から収受した費用を医療機関に後日支払う。
乙第9号証は、2015年10月19日付けにて被請求人が治験依頼者の製薬会社に対して発行した医薬品の臨床試験にかかる費用の見積書の写しである。
乙第9号証には、「(1)臨床試験研究経費等」とあり、その項目として「1 研究費」や、「2 治験薬管理費」、「3 管理費」、「4 間接経費」、「5 治験薬投与前脱落症例対応費」、「6 監査対応費」、「7 実施調査対応費」とある。また、ここでの「(1)臨床試験研究経費等」の支払先はすべてSMO(被請求人)となっていることが判る。このような「(1)臨床試験研究経費等」も、治験を実施するにあたり医療機関において発生した費用を被請求人が製薬会社から収受するためのものであり、被請求人は、ここで製薬会社から収受した費用を医療機関に後日支払う。
上記乙第4号証及び乙第9号証が示すように、被請求人のビジネスモデルにおいては、製薬会社は、治験の実施後に、医療機関費用とSMO費用を含む治験に関する全ての費用を被請求人に一括して支払うこととなる。すなわち、一般的な治験では、製薬会社と医療機関が直接契約を交わすため、治験の実施後には製薬会社から医療機関に対して治験に関する費用が直接支払われることとなるが、被請求人のビジネスモデルにおいては、治験の実施後に製薬会社から被請求人(SMO)に対して治験に関する費用が一括して支払われるのである。
このような費用の支払いの流れの観点からも、被請求人のビジネスモデルにおいて、役務の提供を受ける立場にある製薬会社は、被請求人と医療機関が一体となって医薬品の試験等の役務を提供しているものと理解するといえる。
このような事情に鑑みれば、製薬会社の立場から見ると、被請求人は、医療機関と一体となって、製薬会社に対して医薬品の試験等(医薬品・化粧品又は食品の試験・検査・分析・評価・研究)の役務を提供しているといえる。
また、被請求人が製薬会社に対して提供した請求書(乙4)及び見積書(乙9)に「クリニプロ株式会社」を付する行為は、役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付する使用行為に該当する(商標法第2条第3項第3号)。
よって、乙第4号証及び乙第9号証は、本審判の請求日前の3年以内に日本国内において、商標権者が、本件商標「クリニプロ」と社会通念上同一の商標である「クリニプロ株式会社」を、本件指定役務「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査・分析・評価・研究又はこれらに関する情報の提供」について使用(商標法第2条第3項第3号)していた事実を示すものである。
(iv)乙第10号証:治験実施提案資料
乙第10号証は、新規治験の営業活動において被請求人が製薬会社に対して提示した治験実施提案資料の写しであり、その作成日は2015年6月16日である。被請求人は、乙第10号証に記載された提携医療機関(「新宿リサーチパーククリニック」、「東京センタービルクリニック」、「福和クリニック」)の代わりに、2ページ?6ページ及び10ページ?14ページに記載された資料を製薬会社に対して提示して、新規治験の営業活動を行っている。
そうすると、役務の提供を受ける製薬会社は、被請求人と医療機関が一体となって医薬品の試験等の役務を提供しているものと理解するといえる。したがって、被請求人は、医療機関と一体となって、製薬会社に対して医薬品の試験等(医薬品・化粧品又は食品の試験・検査・分析・評価・研究)の役務を提供しているといえる。
また、乙第10号証の1ページ目やその他資料の適所には、「クリニプロ株式会社」の文字が付されている。被請求人が製薬会社に対して提供した治験実施提案資料(乙10)に「クリニプロ株式会社」を付する行為は、役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付する使用行為(商標法第2条第3項第3号)又は商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示若しくは頒布する使用行為(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
よって、乙第10号証は、本審判の請求日前の3年以内に日本国内において、商標権者たる被請求人が、本件商標「クリニプロ」と社会通念上同一の商標である「クリニプロ株式会社」を、本件指定役務「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査・分析・評価・研究又はこれらに関する情報の提供」について使用(商標法第2条第3項第3号又は第8号)していた事実を示すものである。
(c)被請求人が医薬品の試験等を提供しているといえること
商標権者が指定役務を提供しているといえるかどうかは、当該指定役務の提供を受ける者がどのように捉えるかを基準として判断すべきである。商標法の真の保護対象は商標に化体した業務上の信用であるが、役務の提供を受ける者が商標権者から当該役務の提供を受けていると理解するのであれば、その者から発生した業務上の信用は当該商標権者が当該役務について使用する登録商標に化体することになるからである。つまり、役務の提供を受ける者が当該役務を商標権者から受けていると理解する場合に、当該商標権者は当該役務を提供しているといえる。
ここで、上述したとおり、被請求人は、SMOという立場でありながら、医療機関の支援に留まらず、医療機関の代わりに、医薬品の試験等の役務の提供を受ける立場にある製薬会社に対して新規治験の営業活動を行ったり、治験に関する情報を提供したり、さらには治験実施契約に関する受託費用等の交渉などを直接行っている。
また、被請求人は、治験の実施にあたり医療機関を支援し、医療機関はこの被請求人の管理指導の下で治験を実施する。さらに、被請求人は、治験実施後に、治験に関わる全ての費用を製薬会社から収受することとしている。このため、被請求人のビジネスモデルにおいて、製薬会社は、医療機関と直接やり取りをする機会が極めて少なく、むしろ製薬会社は被請求人(SMO)との間で治験に関わる様々なやり取りを行うのである。
このような被請求人特有のビジネスモデルにおいては、被請求人が治験の窓口及び支援機関として機能しているため、製薬会社は、医療機関だけでなく、被請求人と医療機関とが一体となって医薬品の試験等の役務の提供をしていると理解するはずである。
そうすると、治験の実施後に製薬会社から発生する業務上の信用は、医療機関の商標のみならず、被請求人の登録商標にも化体する。むしろ、製薬会社は被請求人と治験に関わるやり取りを頻繁にしているのであるから、製薬会社からの業務上の信用は、被請求人の登録商標により大きく化体するものであるといえる。このため、被請求人特有のビジネスモデルを利用して治験を行った製薬会社は、もう一度同じ様な質や内容の役務の提供を受けたいと考えたときに、医療機関に直接治験を依頼するのではなく、被請求人の登録商標を頼りにして、被請求人に治験を依頼しようと考えるのが自然である。
したがって、被請求人と医療機関とによって製薬会社に対して医薬品の試験等の役務を提供したときに、その役務に関して製薬会社から得られる業務上の信用は、被請求人の登録商標にも化体しているといえる。
以上の観点から、被請求人は、実質的に、製薬会社に対して医薬品の試験等の役務を提供しているといえる。
そして、乙第2号証、乙第4号証、乙第7号証、乙第7-2号証、乙第8号証、乙第9号証及び乙第10号証を提示して説明したとおり、被請求人は、製薬会社に対して医薬品の試験等の役務を提供するにあたり、本件商標又はこれと社会通念上同一の商標を使用している。
イ 本件商標権者の提供する役務が「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査・分析・評価・研究に関する情報の提供」の範ちゅうであること
(ア)請求人の主張
請求人は、要するに、乙第2号証における「治験の支援」に関する記載が本件指定役務における「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査・分析・評価・研究に関する情報の提供」についてのものではないこと、請求人が本件商標と本件指定役務が記載された取引の実体を立証する証拠を提出していないこと及び乙第3号証の治験管理基本契約書に本件指定役務が記載されていないことを主張している。
(イ)被請求人の反論
まず、被請求人は、答弁書において、乙第2号証のウェブページにおける「治験の支援」に関する記載のみが、本件指定役務に対応するものであると主張したのではない。
被請求人は、被請求人が商標「クリニプロ株式会社」が付されたウェブページ(乙2)において、医薬品の臨床試験(治験)の支援事業を行うことだけでなく、臨床試験に関する基礎知識、実務知識及び医学知識の研修を行うこと、治験についての説明会や新薬開発に関する医療セミナーを行うこと、治験開始前治験実施治験終了後にわたって治験情報・医療情報の伝達を含む支援業務を行うことを提示していることを説明した。そして、被請求人は、このような治験の支援事業や、研修事業、説明会などを行うことが、医薬品の試験・検査・分析・評価・研究に関する情報の提供に対応していると主張したのである。
被請求人が提供する治験の支援事業や、研修事業、説明会において本件指定役務が提供されていることは明らかであるが、請求人は、この点について具体的な反論をしていない。この点において、被請求人の主張は失当である。
また、請求人は、弁駁書において請求人が本件商標と本件指定役務が記載された取引の実体を立証する証拠を提出していないと主張しているが、答弁書において主張したとおり、乙第3号証の治験管理基本契約書がこのような取引の実体を立証する証拠に相当する。
答弁書において主張したとおり、治験管理基本契約書を参照すれば、被請求人が医療機関に対して、医薬品の試験・検査・分析・評価・研究に関する情報の提供を行っている実体があることは明らかであり、また、この治験管理基本契約書には本件商標と社会通念上同一の商標が使用されている。よって、この点においても、請求人の主張は失当である。
さらに、請求人は乙第3号証の治験管理基本契約書に本件指定役務が記載されていないことを主張しているが、この治験管理基本契約書に本件指定役務が記載されていることは答弁書において説明したとおりである。
さらに付言すると、乙第7号証の「新規治験実施可能性調査に関する表明・確約書」には、「[クリニプロ株式会社](以下「SMO」という。)」は、****株式会社(以下「****」という。)が実施を検討している新規治験に関する治験実施可能性調査において、****に情報提供するにあたり、****に対して以下の事項を表明し、確約する。」との記載や、「1.SMOは、本書添付の調査票に記載された医療機関(以下「対象施設」という。)から、対象施設が未受託の新規治験(以下「未受託治験」という。)に関する営業活動、治験依頼者に対する情報の提供及び未受託治験の受託に関する治験依頼者との交渉(以下合わせて、「受託業務」と総称する)を、受託していること。」との記載がある。
また、乙第10号証の「治験実施提案資料」は、製薬会社に対して治験に関する情報を提供するための資料である。これらの証拠に鑑みれば、請求人が本件指定役務「医薬品の試験・検査・分析・評価・研究に関する情報の提供」を提供している実体があることは明らかである。
(4)本件商標権者のウェブページについて本件商標の名目的な使用か否か
ア 請求人の主張
請求人は、被請求人が「医薬品の臨床試験」を実際に行っていないことは明らかであるから、乙第2号証に示したウェブサイトの広告をもって、本件商標の本件指定役務「医薬品の試験」への使用を立証していないことは明らかであると主張する。
イ 被請求人の反論
被請求人が、本件商標の本件指定役務のうち、「医薬品の試験」及び「医薬品の試験に関する情報の提供」を行っている実体があることは、被請求人の答弁書及び本口頭審理陳述要領書において繰り返し説明したとおりである。
したがって、被請求人のウェブページ(甲2)についての本件商標又はこれと社会通念上同一の商標の使用は、名目的な使用ではない。

3 上申書における主張
(1)被請求人が製薬会社に情報を提供する行為が「医薬品の試験の支援、サポート」の付随的な役務提供行為ではないこと
ア 請求人の主張の要旨
請求人は、商標法上の役務とは「他人のためにする労務又は便益であって、独立して商取引の目的たり得るもの」であり、被請求人が本件商標を本件指定役務「医薬品の試験に関する情報の提供」について使用しているというためには、医薬品の試験に関する情報を独立して提供していることが必要であるものの、被請求人が製薬会社に対して何等かの情報を提供する行為は「医薬品の試験の支援、サポート」の付随的な役務提供行為にすぎないため、その結果、被請求人は本件商標を本件指定役務に使用しているとはいえないと主張する。
イ 被請求人の反諭
被請求人は、たしかに医療機関における医薬品の試験(治験)の支援をも行う者である。
しかし、被請求人は、医療機関が新規治験に関する業務を製薬会社から受託する前の段階において、製薬会社からの依頼に基づいて、その未受託治験を受託可能な医療機関や対象患者層の調査、すなわち「新規治験実施可能性調査」を行い、その調査結果を製薬会社に対して報告するという業務を行っている(乙7)。
また、一般的なSMOは、医療機関が行う治験の支援を主たる業務とするものであり、上記した被請求人が行う新規治験実施可能性調査のように、治験受託前にその未受託治験を受託可能な医療機関や対象患者層を調査するような業務を製薬会社に対して提供することはしない。
これに対して、被請求人たるクリニプロ株式会社は、一般的なSMOとは異なり、製薬会社から別途依頼があったときに、上記新規治験実施可能性調査やそれに関する情報の提供を行うのであり、このような調査業務を行うことのできる環境を有していることこそが、被請求人にとって、一般的なSMOの業務と差別化することのできる要因の1つとなっている。
このように、新規治験実施可能性調査及びそれに関する情報の提供は、医療機関が新規治験に関する業務を正式に製薬会社から受託する前の段階で、被請求人が製薬会社に対して独自に提供する役務であるから、請求人が主張するような「医薬品の試験の支援、サポート」の付随的な役務提供行為ではない。すなわち、被請求人による新規治験実施可能性調査及びそれに関する情報の提供が、請求人が主張するような「医薬品の試験の支援、サポート」の付随的な役務提供行為であるというのであれば、その役務は、医療機関が新規治験に関する業務を正式に製薬会社から受託した後に、当該医療機関からの依頼により行われるはずである。そうではなく、被請求人は、医療機関が新規治験に関する業務を受託する前に、製薬会社からの依頼を受けて、「新規治験実施可能性調査に関する表明・確約書」(乙7)に基づき、独自に、当該製薬会社に対して新規治験実施可能性調査及びそれに関する情報の提供を行っているのである。そうすると、被請求人が行う新規治験実施可能性調査及びそれに関する情報の提供は、「医薬品の試験の支援、サポート」の付随的な役務提供行為などではなく、別途独立した役務提供行為であることが明らかである。
さらに付言すると、被請求人による行為が「独立して商取引の目的たり得るもの」(商標法上の役務)であるかどうかは、その行為に対して被請求人に対して独立して対価が支払わられているかどうかのみを基準とするべきではなく、役務の提供を受ける者から被請求人に対して独立した依頼があったかどうかを基準とすべきである。
上述したとおり、被請求人は、製薬会社から、新規治験実施可能性調査及びそれに関する情報の提供に関する業務の依頼を受けて、独自にこれを提供するものである(乙7)。
したがって、このことからも、被請求人が行う新規治験実施可能性調査及びそれに関する情報の提供は、「医薬品の試験の支援、サポート」の付随的な役務提供行為などではなく、別途独立した役務提供行為であることが明らかである。
そして、被請求人による新規治験実施可能性調査に関する情報の提供は、本件指定商品における「医薬品の試験に関する情報の提供」に相当する。
また、被請求人が製薬会社に対して提供した「新規治験実施可能性調査に関する表明・確約書」(乙7)に「クリニプロ株式会社」を付する行為は、役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付する使用行為に該当する(商標法第2条第3項第3号)。
よって、乙第7号証は、要証期間に日本国内において、商標権者たる被請求人が、本件商標「クリニプロ」と社会通念上同一の商標である「クリニプロ株式会社」を、本件指定役務「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査・分析・評価・研究又はこれらに関する情報の提供」について使用(商標法第2条第3項第3号)していた事実を示すものである。
(2)仮に被請求人が製薬会社に情報を提供する行為が「医薬品の試験の支援、サポート」の一環であるとしても、当該情報提供行為は、商法上(審決注:「商標法上」の誤記と認める。以下同じ。)の役務提供行為と認められるべきものであること
本件商標は、本審判事件に係る指定役務の他にも、「医療情報の提供」(第44類)及び「医療機関における医薬品の臨床試験に関する臨床データの収集及び管理」(第44類)を指定役務とするものであるが、これらの指定役務については、すでに別の商標登録取消審判事件において、被請求人による行為が商法上の役務提供行為に該当すると認められたうえで、登録商標が被請求人によって各指定役務に使用されたものであると認められている(取消2015-300904号審決及び取消2015-300905審決)。
ところで、仮に、上述した被請求人が製薬会社に対して新規治験実施可能性調査に関する情報を提供する行為(「医薬品の試験に関する情報の提供」)が「医薬品の試験の支援、サポート」の一環であるとするならば、上記別の審判事件に係る「医療情報の提供」や「医療機関における医薬品の臨床試験に関する臨床データの収集及び管理」に相当する被請求人の役務も、これと同様に、「医薬品の試験の支援、サポート」の一環として提供される役務であるといえる。
なお、請求人も、「事務の代行」(第35類)、「医薬品の試験・検査・研究又は臨床試験に関する契約締結の事務の代行」(第35類)、「実施医療機関における医薬品の試験の実施のための計画の補助」(第42類)、「医薬品の試験のコンサルティング」(第42類)及び「医療機関における医薬品の試験に関する臨床データの収集及び管理」(第44類)は、被請求人が役務提供を行っていると主張する役務であると認めているが、これらの請求人が挙げる役務も、いうなれば、上述した新規治験実施可能性調査に関する情報を提供する行為(「医薬品の試験に関する情報の提供」)と同様に、「医薬品の試験の支援、サポート」の一環として提供される役務である。
つまり、「医療機関における医薬品の試験に関する臨床データの収集及び管理」(第44類)等に相当する被請求人の役務提供行為が、商法上の役務提供行為であると認められるのであれば、これと同様に、本件指定役務に係る「医薬品の試験に関する情報の提供」に相当する被請求人の役務提供行為も、商法上の役務提供行為であると認められて然るべきである。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出した証拠によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)乙第1号証について
乙第1号証は、本件商標権者の履歴事項全部証明書の写しであるところ、平成26年1月1日変更の「目的」の欄には、「8.次の物品に関する研究開発、臨床・非臨床試験、調査および試験の企画、立案、支援、情報の収集、処理および情報提供ならびにコンサルティング業務」、「(1)医薬品」の記載がある。
(2)乙第2号証について
乙第2号証は、インターネットアーカイブ(waybackmachine)のウェブサイトに保存されている本件商標権者のウェブページの写しである。
ア 2015年7月11日の本件商標権者のウェブページの1枚目には、そのページの最上段に、「クリニプロ株式会社」、「『たゆまない信頼』それがクリニプロの理念です。」の記載、同2枚目には、「クリニプロの特徴」の見出し並びに「治験依頼・契約」、「治験サポート」及び「事務局支援」の記載がある。
また、同3枚目には、会社概要の「事業内容」に「臨床試験支援事業」の記載がある。
イ 2015年6月20日の本件商標権者のウェブページの1枚目には、上記アと同様に「クリニプロ株式会社」の記載があり、「製薬会社の皆様へ」の見出しの下、「クリニプロの臨床試験支援業務」の記載がある。
また、同7枚目には、「医療機関の皆様へ」、「病院・クリニックの皆様へ」の見出しの下、「クリニプロがサポートします。・・・GCPに精通し、臨床試験業務に熟知した私たちクリニプロが全面的にサポートします。」、並びに、「クリニプロ臨床試験支援の特徴」の見出しの下、「◆IRB、必須文書作成等の医療行為以外の部分を支援します。」、「◆スケジュール調整などを含め、被験者管理業務を支援します。」及び「◆質の高いCRCを派遣し、治験プロセス全体を効率的に支援します。」の記載がある。
そして、同9枚目には、「医療機関の皆様へ」、「支援業務」の見出しの下、「概要」の項には、「治験情報・医療情報の伝達、被験者選定支援から診察補助、外注検体処理、服薬指導補助、スケジュール管理支援、依頼者対応まで責任を持って支援いたします。」の記載がある。
(3)乙第3号証について
乙第3号証は、「クリニプロ株式会社」と記載された、本件商標権者とクリニック(名称の一部がマスキングされている。)との2015年4月1日付け「治験管理基本契約書」の写しである。
第1条(目的)には、「甲(審決注:治験実施医療機関)は、甲の施設において実施する治験等の円滑な実施と質の向上を目的として、第2条に定める甲の治験実施に係わる業務の管理、代行及び支援業務(以下『委託業務』という)を乙(審決注:本件商標権者)に委託し、乙はこれを受託する。」の記載がある。
第15条(契約期間)には、「本契約の契約期間は、西暦2015年4月1日から西暦2016年3月31日までの1年間とする。」の記載がある。
ウ 別紙の「治験管理基本契約書 第2条第2項に基づく委託業務の細目」には、「治験実施前」の項に「2.治験依頼問い合わせ等への対応(治験事務局業務補助)」として、「1)治験実施医療機関及び責任医師選定のための資料の提示」、「2)治験受託の可能性検討及び資料の提示(協議)」、・・・「4)治験実施スケジュールの調整提示」の記載がある。
(4)乙第4号証について
乙第4号証は、本件商標権者が発行した、製薬会社(名称の一部がマスキングされている。)宛の2014年5月27日付け請求書の写しであり、以下の記載がある。
「下記の通り請求申し上げます。」、「試験契約締結時(2014年5月26日締結)請求分として。」、「治験課題名:****(審決注:マスキングされていることを表す。以下同じ。)製造販売後臨床試験(****併用長期投与)」、「実施医療機関:医療法人社団****クリニック」、「治験審査委員会開催日:2014年5月13日」、「東京都中央区・・・/クリニプロ株式会社/代表取締役・・・」の記載がある。
また、同号証2枚目の2014年5月27日付け請求明細書の写しには、「医療法人社団****クリニック、****製薬株式会社及びクリニプロ株式会社において、2014年5月26日締結の製造販売後臨床試験契約書『第12条(本治験に係る費用およびその支払方法)』における以下費用項目に関し、請求申し上げます。」の記載があり、「第12条(本治験に係わる費用およびその支払方法)」の見出しの下、「医療機関費用」の「項目」として、「・製造販売後臨床試験薬管理費 (固定費)」、「・試験管理経費(間接費) (固定費)」及び「・被験者負担軽減費・・・ (変動費)」の記載、「SMO費用」の「項目」として、「臨床試験基本費用 (固定費)」及び「試験事務局支援費用 (変動費)」の記載、「IRB費用」の「項目」として、「初回審査 (固定費)」の記載がある。
(5)乙第7号証について
乙第7号証は、「新規治験実施可能性調査に関する表明・確約書」(以下「表明・確約書」という。)と題する書面であり、被請求人によれば、平成27年11月12日付けで、被請求人が製薬会社に提出した書面である。
乙第7号証には、以下の記載がある。
「[クリニプロ株式会社](以下、「SMO」という)」は、****株式会社(以下、「****」という)が実施を検討している新規治験に関する治験実施可能性調査において、****に情報提供するにあたり、****に対して以下の事項を表明し、確約する。」
「1.SMOは、本書添付の調査票に記載された医療機関(以下、「対象施設」という)から、対象施設が未受託の新規治験(以下、「未受託治験」という)に関する営業活動、治験依頼者に対する情報の提供及び未受託治験の受託に関する治験依頼者との交渉(以下合わせて、「受託業務」と総称する)を、受託していること。」
「2.SMOは、前項記載の受託業務のために、対象施設に関する情報及び未受託治験の対象患者層に関する情報等、対象施設の営業活動のために必要な情報を、****を含む治験依頼者に開示する権限を付与されていること。」
また、乙第7-2号証は、被請求人によれば、表明・確約書の1.に記載された「本書添付の調査票」であり、この調査票には、医療機関名「医療法人社団旭和会 東京駅センタービルクリニック」などの記載がある。
(6)乙第8号証について
乙第8号証は、治験実施医療機関である医療法人社団旭和会 東京駅センタービルクリニック(以下「甲」という。)と治験施設支援機関である本件商標権者(以下「乙」という。)との2011年9月1日付け「治験管理基本契約書」の写しである。
第1条(目的)には、「甲は、甲の施設において実施する治験等の円滑な実施と質の向上を目的として、第2条に定める甲の治験実施に係わる業務の管理、代行及び支援業務(以下『委託業務』という)を乙に委託し、乙はこれを受託する。」の記載がある。
第2条(委託業務の内容)には、「甲が乙に委託する委託業務の内容は、以下のとおりとする。」として、・・・「(2)治験依頼者からの治験実施の問い合わせ、要請の対応に関する業務」、・・・「2.委託業務の細目は、別紙記載のとおりとする。」の記載がある。
ウ 別紙の[治験管理基本契約書 第2条第2項に基づく委託業務の細目]には、「治験実施前」の項に「2.治験依頼問い合わせ等への対応(治験事務局業務補助)」として、「1)治験実施医療機関及び責任医師選定のための資料の提示」、「2)治験受託の可能性検討及び資料の提示(協議)」、「3)治験受託概算費用算定及び提示」、「4)治験実施スケジュールの調整提示」及び「5)治験実施契約書案の作成及び依頼者との調整並びに締結」の記載がある。
第2条(委託業務の内容)には、「3.乙及び乙の従事者は、すべての医療行為、薬剤師の業務、診療の補助等、その他医学的な判断をともなう業務をすることはできない。」の記載がある。
第8条(治験実施費用)には、「甲が治験を実施するにあたり生じる費用については、第3条第1項(1)に従い予め甲乙協議し決定した算定方法に基づき、乙より治験依頼者に提示し治験依頼者が承諾した金額とする。」及び「2.治験依頼者からの前項の費用の収受は、第3条第1項(3)に従い、予め治験依頼者と乙が取り決めた方法により、乙が代行し行うこととする。」の記載がある。
第15条(契約期間)には、「本契約の契約期間は、西暦2011年9月1日から西暦2012年8月31日までの1年間とする。」の記載があり、その2.には、「甲または乙は、契約期間満了の日から起算して3か月前までに、文書をもって相手方に対し更新拒絶の通知をしないときは、契約期間満了の日の翌日から1年間自動的に更新するものとし、それ以後もこの例による。」の記載がある。
(7)乙第9号証について
乙第9号証は、被請求人によれば、2015年10月19日付けで被請求人が治験依頼者の製薬会社に対して発行した医薬品の臨床試験にかかる費用の見積書の写しである。
同号証には、治験課題名、「実施医療機関名:医療法人社団****東京駅センタービルクリニック」の記載のほか、「(1)臨床試験研究経費等」として、「1 研究費」、「2 治験薬管理費」、「3 管理費」、「4 間接経費」、「5 治験薬投与前脱落症例対応費」、「6 監査対応費」、「7 実施調査対応費」の記載がある。
また、同号証の備考欄には、「支払先に関する補足説明:医療法人社団****東京駅センタービルクリニックとクリニプロ株式会社間にて、2009年3月2日付締結・2011年9月1日改定の『治験管理基本契約書』第8条2項(治験依頼者からの費用の収受は、クリニプロ株式会社が代行し行う)に基づき、(1)-1?7の費用の支払先はSMO(クリニプロ株式会社)となります。」の記載がある。
(8)乙第10号証について
乙第10号証は、被請求人によれば、新規治験の営業活動において被請求人が製薬会社に対して提示した治験実施提案資料の写しであり、その作成日は2015年6月16日とのことである。
同号証の1ページには、「Diabetic mellitus Protocol/実施ご提案内容」のタイトルの記載があり、「コンテンツ」として、「1.ご提案内容」、「2.2型糖尿病プロトコル エンロールメント実績」、「3.実施候補医療施設」、「4.候補患者数とエンロールメント期間」及び「5.弊社及び弊社支援施設活用のメリット」の記載がある。
同号証の1ページないし3ページ、7ページないし10ページ及び12ページないし14ページには、各資料の右下隅に、「クリニプロ株式会社/CliniPro co.,Ltd.」の表示がある。
同号証の7ページには、「3.実施候補医療機関」のタイトルの下、「実施ご提案医療機関」として、「医療法人社団旭和会/東京駅センタービルクリニック」、「新宿リサーチパーククリニック」及び「医療法人社団福和会/福和クリニック」のアクセス情報などが記載され、「3医療機関協同の患者会(継続受診患者にて構成)を保有、/コンパクトなエリアにて、少数施設多症例の効率的な治験実施が可能」の記載がある。

2 上記1で認定した事実によれば、当審の判断は、以下のとおりである。
(1)乙第2号証について
乙第2号証のウェブページが公開されていたとされる2015年6月20日及び同年7月11日が乙第3号証及び乙第8号証の治験管理基本契約書の契約期間に含まれることからすれば、該ウェブページがインターネットアーカイブ(waybackmachine)に保存されているものであるとしても、これが、上記年月日にウェブ上に存在していたことは、優に推認できるものである。
(2)乙第10号証について
乙第10号証の治験実施提案資料は、被請求人によれば、その作成日は2015年6月16日とのことであり、新規治験実施可能性調査に関する表明・確約書(乙7)、調査票(乙7-2)及び見積書(乙9)との関係から、乙第10号証の作成日について不自然な点はないから、同号証の作成日を2015年6月16日と認めて差し支えない。
(3)本件商標権者の提供する役務について
被請求人の主張によれば、本件商標権者のビジネスモデルは、別掲のとおりの図に示されるものであるところ、被請求人が提出した全証拠によれば、当該図に示された、請求書(乙4)、新規治験実施可能性調査に関する表明・確約書(乙7)、調査票(乙7-2)、見積書(乙9)及び治験実施提案資料(乙10)は、本件商標権者と提携医療機関との間で交わされた、治験管理基本契約書(乙3、乙8)に定められた行為について、当該契約に従って本件商標権者が行った行為の結果が製薬会社に示されたものというべきである。
すなわち、本件商標権者は、提携医療機関の依頼を受けて、当該医療機関のために、治験管理基本契約書(乙3、乙8)の範囲内で、治験に関する支援に係る労務を行ったのであり、特定の製薬会社の依頼により、本件商標権者が治験管理基本契約書(乙3、乙8)から離れて、直接特定の製薬会社に対して、取消請求役務の提供をしたとはいえない。
また、乙第1号証の履歴事項全部証明書の目的に、「8.次の物品に関する研究開発、臨床・非臨床試験、調査および試験の企画、立案、支援、情報の収集、処理および情報提供ならびにコンサルティング業務(1)医薬品・・・」との記載があるからといって、これより直ちに取消請求役務の提供を行っていると認めることはできない。
さらに、被請求人が提出した証拠からは、特定の製薬会社に対して取消請求役務を提供していることを認め得る事実は見いだせない。
以上から、本件商標権者は、取消請求役務の提供を行っていると認めることはできない。
(4)使用に係る商標について
ア 本件商標権者のウェブページ(乙2)には、上記1(2)アのとおり、「クリニプロ株式会社」の文字が表示されており、これは、当該ウェブページにおける情報の提供元と認識されるとともに、自他役務の識別標識としての機能を果たしているものといえる。
そして、「クリニプロ株式会社」の構成文字中、「株式会社」の文字は、法人の種類を示すものであって、識別標識としての機能を果たし得ないものであり、同機能を果たすのは「クリニプロ」の文字部分にあるとみるのが相当であって、当該文字は、本件商標と同一の文字綴りからなるものである。
また、本件商標権者のウェブページ(乙2)には、上記1(2)アのとおり、「『たゆまない信頼』それがクリニプロの理念です。」や「クリニプロの特徴」の記載もあるところ、その文脈から判断して、当該記載中「クリニプロ」の文字は、当該ウェブページ情報の提供元と認められる「クリニプロ株式会社(本件商標権者)」の略称であると、ごく自然に理解することができ、商標としての機能を果たし得るものといえる。
したがって、当該ウェブページにおける「クリニプロ株式会社」及び「クリニプロ」の文字の使用は、本件商標と社会通念上同一の商標の使用であると認めることができる。
イ 治験実施提案資料(乙10)には、上記1(8)のとおり、「クリニプロ株式会社」の文字が表示されており、これは、当該資料の作成元と認識されるとともに、自他役務の識別標識としての機能を果たしているものといえる。そして、上記アと同様に、「クリニプロ株式会社」の文字の使用は、本件商標と社会通念上同一の商標の使用であると認めることができる。
(5)使用時期について
ア 上記(1)のとおり、本件商標権者のウェブページ(乙2)が公開されている時期は、2015年6月20日及び同年7月11日と認めることができ、いずれも、要証期間のものである。
イ 上記(2)のとおり、治験実施提案資料(乙10)の作成日は2015年6月16日と認めることができ、要証期間のものである。
(6)小括
以上によれば、本件商標権者は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたと認めることができる。
しかしながら、本件商標権者は、取消請求役務に係る役務の提供を行っていると認めることはできない。
3 むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る指定役務について、本件商標を使用していたことを証明したものと認めることはできない。
また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により指定役務中「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査・分析・評価・研究又はこれらに関する情報の提供」についての登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(被請求人のビジネスモデルと提出証拠との関係性を示した図)




審理終結日 2017-06-30 
結審通知日 2017-07-04 
審決日 2017-07-31 
出願番号 商願2011-88115(T2011-88115) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (X42)
最終処分 成立  
前審関与審査官 清棲 保美 
特許庁審判長 青木 博文
特許庁審判官 大森 健司
小松 里美
登録日 2012-05-11 
登録番号 商標登録第5491818号(T5491818) 
商標の称呼 クリニプロ 
代理人 柳生 征男 
代理人 廣瀬 隆行 
代理人 中田 和博 
代理人 関 大祐 
代理人 青木 博通 

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