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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W25
審判 全部申立て  登録を維持 W25
審判 全部申立て  登録を維持 W25
審判 全部申立て  登録を維持 W25
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審判 全部申立て  登録を維持 W25
管理番号 1332403 
異議申立番号 異議2017-900124 
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-10-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-04-14 
確定日 2017-09-08 
異議申立件数
事件の表示 登録第5913920号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5913920号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5913920号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成28年7月21日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴,水上スポーツ用ウエットスーツ」を指定商品として、同年12月9日に登録査定、同29年1月13日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議の申立てに引用する商標は、以下のとおりである。
(1)国際登録第1047435号商標(以下「引用商標1」という。)は、「CLOUDTEC」の文字を横書きしてなり、2010年6月23日に国際登録、2011年12月14日に日本国を事後指定し、第25類及び第28類に属する国際商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成24年10月12日に日本国において設定登録されたものである。
(2)国際登録第1257967号商標(以下「引用商標2」という。)は、「CLOUDRACER」の文字を横書きしてなり、2014年11月24日にスイス国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、2015年5月22日に国際登録、第25類、第28類及び第42類に属する国際商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成28年10月14日に日本国において設定登録されたものである。
(3)国際登録第1258067号商標(以下「引用商標3」という。)は、「CLOUDSURFER」の文字を横書きしてなり、2014年11月24日にスイス国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、2015年5月22日に国際登録、第25類、第28類及び第42類に属する国際商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成28年10月14日に日本国において設定登録されたものである。
(4)国際登録第1258068号商標(以下「引用商標4」という。)は、「RUN ON CLOUDS.」の文字及び記号を横書きしてなり、2014年11月24日にスイス国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、2015年5月22日に国際登録、第25類、第28類及び第42類に属する国際商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成28年10月14日に日本国において設定登録されたものである。
(5)国際登録第1259687号商標(以下「引用商標5」という。)は、「CLOUDCRUISER」の文字を横書きしてなり、2014年11月24日にスイス国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、2015年5月22日に国際登録、第25類、第28類及び第42類に属する国際商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成28年8月12日に日本国において設定登録されたものである。
(6)国際登録第1259783号商標(以下「引用商標6」という。)は、「CLOUDSTER」の文字を横書きしてなり、2014年11月24日にスイス国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、2015年5月22日に国際登録、第25類、第28類及び第42類に属する国際商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成28年8月12日に日本国において設定登録されたものである。
(7)国際登録番号第1303833号商標(以下「引用商標7」という。)は、「Cloudventure」の文字を横書きしてなり、2015年11月16日にスイス国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、2016年5月12日に国際登録、第25類、第28類及び第42類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品及び役務を指定商品及び指定役務とするものである。
(8)国際登録番号第1326078号商標(以下「引用商標8」という。)は、「Cloudflash」の文字を横書きしてなり、2016年4月22日にスイス国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、2016年10月24日に国際登録、第25類及び第42類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品及び役務を指定商品及び指定役務とするものである。
(9)国際登録番号第1326079号商標(以下「引用商標9」という。)は、「Cloudflow」の文字を横書きしてなり、2016年4月22日にスイス国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、2016年10月24日に国際登録、第25類及び第42類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品及び役務を指定商品及び指定役務とするものである。
(10)「Cloud」の文字を横書きしてなり、商品「ランニングシューズ」に使用していると主張する商標(以下「引用商標10」という。)。
(引用商標1?10をまとめていうときは、以下、単に「引用商標」という。)

3 登録異議の申立ての理由
(1)引用商標の周知・著名性
引用商標は、申立人の業務に係る商品「ランニングシューズ」(以下「申立人商品」という場合がある。)を表示するものとして、少なくとも本件商標の出願時には、我が国の需要者・取引者の間において、「Cloud」とのブランド名の下に形成された、一種のファミリー商標の如く認識され、一般に広く認識されるに至っており、また、その状態は、本件商標の登録査定時においても継続していた。
(2)商標法第4条第1項第10号該当性
「Cloud」を冠した引用商標の周知・著名性を考慮すれば、本件商標は、その構成中「cloud」の文字部分に相応して、引用商標10と共通の「クラウド」の称呼及び申立人商品の周知商標としての観念が生じる。
また、本件商標の指定商品中の「履物」は、申立人商品と類似する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第11号該当性
引用商標の周知・著名性を考慮すれば、本件商標の構成中「Cloud」の文字部分に相応して、引用商標と共通の「クラウド」の称呼及び申立人商品の周知商標としての観念が生じる。
また、本件商標の指定商品は、引用商標1?9の指定商品の一部と同一又は類似する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性
前記(1)のとおり、引用商標は、申立人商品の出所表示として、周知・著名なものとなっていた。そのため、本件商標が指定商品について使用された場合、本件商標に接する需要者・取引者は、当該商品があたかも申立人の業務に係るシリーズ商品の一つであるか、あるいは、申立人と組織的・経済的に何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかの如く誤認し、商品の出所について混同するおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第19号該当性
前記(1)のとおり、引用商標は、申立人商品の出所表示として、日本及び/又は欧米諸国において、周知・著名なものとなっていた。
本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)が、申立人の取引上の競業関係にあることを考慮すれば、「Cloud」を冠する申立人商品が、日本及び欧米諸国で一定の評価を得て販売されていることを認識する立場にあったと考えるのが自然である。そのため、偶然にも、申立人の周知・著名商標を結合した商標を採択したとは考えられず、「Cloud」を冠した引用商標の高い識別力ただ乗りし、また、これを減殺する目的、すなわち、不正の目的をもって本件商標を採択、使用されたものと考えざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に違反してされたものであるから、取り消されるべきである。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知・著名性
ア 申立人の主張及び提出した証拠(各項の括弧内に掲記)によれば、以下の事実を認めることができる。
(ア)申立人は、2010年(平成22年)1月に、ランニングシューズの製造、販売を業とする会社として、スイスにおいて設立された。2010年7月には、申立人の最初の商品である「Cloudsurfer」がヨーロッパでヒット商品となった。2011年(平成23年)1月に、「Cloudrunner」を発売し、申立人商品は、同年6月には、アメリカ、オーストラリア、シンガポールなど18カ国、500以上の店舗で販売される至った。さらに、2012年(平成24年)1月に「Cloudster」を、同年4月に「Cloudracer」を、それぞれ発売し、同年10月までに、申立人商品の販売数は10万足を超え、2017年(平成29年)7月10日現在、申立人商品は、世界のアスリート達に愛用されている(甲11、甲12)。
(イ)申立人商品は、日本において、2013年(平成25年)4月からアジア・太平洋地域の販売権を獲得したDKSHジャパンを介して販売が開始され(甲14の1、2(証拠によっては、「3月」と記載されているものがある:甲14の3、4)。)、申立人の日本法人であるオン・ジャパン株式会社は、2015年(平成27年)5月に設立された(甲15)。そして、申立人商品の日本での販売店舗は、2017年(平成29年)現在、164店舗が存在する(甲13)。この事実は、2015年6月から2016年(平成28年)5月までに、申立人が日本の顧客に宛てたインボイスから推認することができる(甲17の1?12。だたし、例えば、2016年5月発行の請求書番号:SIN060526(甲17の12の1枚目)は、「明細合計」において、数量が「5(単価はいずれも「12,800.00」)」、金額額が「64000.00」と記載され、「注文内容総計」及び「発送済内容合計」には、数量がいずれも「37」と記載され、「合計請求金額」が「JPY 41,472.00」と記載されていることが認められるところ、仮に「明細合計」の数量「5」の金額64,000円が、「40%」の文字より4割引とすれば、「Net Subtota」の金額38,400円と一致し、当該38,400円+「VAT8%」3,072円は、上記「合計請求金額」41,472円と一致するが、「明細合計」の数量「5」と「注文内容総計」及び「発送済内容合計」の数量「37」との関連性が不明である(なお、上記インボイスに記載の37足が日本に輸入されたとすれば、「Net Subtota」金額38,400円÷37≒1037.8で、1足約1,038円という極めて低廉な価格となり、「注文内容総計」及び「発送済内容合計」の数量「37」のみならず、インボイスそれ自体が信憑性に欠けるといわざるを得ない。)。そして、このようなインボイスは、上記以外にも散見されるばかりでなく、申立人は、インボイスに記載の販売数量等について何ら説明をしておらず、提出に係るインボイスからは、申立人商品が日本に輸入された数量を算定することはできない。)。
(ウ)申立人商品は、日本での発売開始前後から本件商標の登録査定日(平成28年12月9日)に至るまで、シューズ専門紙、「ランニングマガジン/courir」、「トライアスロン/ルミナ」、「ランニングスタイル」等のスポーツ専門雑誌をはじめ、「モノマガジン」、「Tarzan」、「GQ JAPAN」、「ナンバー・ドゥ」、「ポパイ」、「ウオモ」等様々な雑誌に紹介又は広告がされた(甲14の1?91)。紹介又は広告された主な商品は、「Cloudracer」、「Cloudsurfer」、「Cloud」と表示されたものであり、これらの商品には、「世界特許取得の“CloudTec(クラウドテック)システム”というソール・テクノロジーを最大の特徴とする。」(甲14の1、2)、「最大の特徴はOnの独自技術である『クラウドテック』システム。クラウドと呼ばれるソールのラバー製パーツが、脚に加わる垂直方向と水平方向の衝撃を吸収。その後、着地の衝撃でつぶされたクラウドの復元力によって反発性を発揮し、脚の力を効率的に地面に伝える。」(甲14の4)、「アウトソールはクラウドテックと呼ばれる、ゴムのチューブを縦に割って、張り付けたような構造をしている。」(甲14の6)、「『Cloud』と呼ばれるソールのラバー製パーツが衝撃を吸収する仕組み」(甲14の8)、「18個の薄型『CloudTec』システムが衝撃吸収と爆発的な推進力をサポートする。」(甲14の18)、「雲の上を走っているかのような履き心地からクラウドの名が。」(甲14の26)、「クラウドテックシステムの真髄を体感せよ。」(甲14の30)、「独自のソール形状『クラウドテック』が、着地の際に潰れることで衝撃を吸収し、蹴り出しの際には元の形状に戻ろうと反発力を生み出し、推進力を与えてくれる。」(甲14の32)などと記載され、さらに、新商品の紹介記事として、「スイス発のランニングブランド『on』の勢いが止まらない。『クラウド』、『クラウドサーファー』、『クラウドレーサー』ほか、モデルの充実が進む中、さらに、新モデルがリリースされた。モデル名は、『クラウドフロー』。」(甲14の91)と記載されている。
また、「ランニングマガジン/courir」編集部が主催した「シューズトライアル2014」(甲14の34)及び「シューズトライアル2015」(甲14の61)で、約166人(2015は「160人」)のランナーを対象に実施した“15ブランド60モデル(2015は「61モデル」)を履き比べた”アンケート調査は、(a)「最も気に入った1足」、(b)「次に買いたい1足」、(c)「現在、愛用しているシューズ」、(d)「試し履きした人が多かったシューズ」の質問項目があり、「シューズトライアル2014」において、(a)では、申立人の「クラウドレーサー」、「クラウドサーファー」がいずれも5位であり、(b)では、「クラウドサーファー」が4位、「クラウドレーサー」が9位、(d)では、「クラウドレーサー」が4位という結果であった。また、「シューズトライアル2015」において、(a)では、「クラウド」が1位、「クラウドサーファー」が3位、(b)では、「クラウド」が1位、「クラウドサーファー」が8位、(d)では、「クラウド」が3位という結果であった。
イ 前記アで認定した事実によれば、申立人は、2010年(平成22年)1月に、ランニングシューズメーカーとして、スイスにおいて設立され、その製造販売に係るランニングシューズには、申立人が開発した「クラウドテックシステム」と名付けられた技術が採用され、ラバー製ソールによる高い吸収性と反発性を備えたランニングシューズとして、2010年7月には、申立人の最初の商品である「Cloudsurfer」がヨーロッパでヒット商品となったこと、その後、申立人は、2011年(平成23年)1月に「Cloudrunner」、2012年(平成24年)1月に「Cloudster」、同年4月に「Cloudracer」との商標を使用したランニングシューズを発売し、同年10月までに、申立人商品の販売数は10万足を超えたこと、申立人商品は、我が国においては、2013年(平成25年)4月頃から販売が開始され、日本での販売店舗数は、2017年(平成29年)現在で164店舗が存在すること、また、申立人商品、特に「Cloudracer/クラウドレーサー」、「Cloudsurfer/クラウドサーファー」、「Cloud/クラウド」との表示のあるランニングシューズは、日本での発売開始前後から本件商標の登録査定日前に至るまで、主として、「ランニングマガジン/courir」等の陸上競技専門誌に多数紹介ないし広告がされたこと、さらに、約160人程のランナーを対象に実施した“15ブランド60モデル(「2015」は「61モデル」)を履き比べた”アンケート調査の結果において、申立人商品のうち、「クラウド」、「クラウドレーサー」、「クラウドサーファー」が、「最も気に入った1足」、「次に買いたい1足」、「試し履きした人が多かったシューズ」のいずれにも上位にランキングしたこと、などを認めることができ、以上よりすると、本件商標の登録出願日(平成28年7月21日)及び登録査定日の時点において、「Cloudracer/クラウドレーサー」、「Cloudsurfer/クラウドサーファー」、「Cloud/クラウド」の文字よりなる商標は、申立人の業務に係る商品「ランニングシューズ」を表示するものとして、我が国のランニングシューズを取り扱う分野の取引者・需要者の間においては、一定程度の周知性を獲得していたものと認め得るところである。
しかし、申立人商品が、本件商標の登録出願日前より登録査定日に至るまで、我が国において、どの程度の販売数量・売上高があったのか明らかではないし、また、ランニングシューズの分野におけるシェアも明らかではない。さらに、申立人商品の需要者は、広く一般の需要者に及ぶというものではなく、その範囲もある程度限定されているものと考えられ、これらを併せ考慮すると、「Cloudracer/クラウドレーサー」、「Cloudsurfer/クラウドサーファー」、「Cloud/クラウド」の文字よりなる商標をはじめ、引用商標が、我が国の一般的な取引者・需要者の間において広く認識されていたものとまでは認めることができず、その著名性が高いものであったとはいえない。
(2)商標法第4条第1項第10号について
ア 引用商標10の周知性
前記(1)認定のとおり、引用商標中の「Cloud」(引用商標10)は、「クラウド」とも表記され、本件商標の登録出願日には、申立人の業務に係る商品「ランニングシューズ」(申立人商品)を表示するものとして、我が国のランニングシューズを取り扱う分野の取引者・需要者の間においては、一定程度の周知性を獲得していたものと認められ、その周知性は、本件商標の登録査定日においても継続していたものといえる。
イ 本件商標と引用商標10との類否
(ア)本件商標
本件商標は、別掲のとおり、黒塗りの雲形様の図形内に、白抜きで「cloudwave」の文字を横書きしてなるものであるところ、該「cloudwave」の文字部分は、やや丸みを帯びた同一の書体で、黒塗りの雲形様の図形内に、外観上極めてまとまりよく一体的に表されているものであり、その構成中の「cloud」の文字部分のみが特に看者の注意を強く引く態様のものではない。さらに、本件商標より生ずると認められる「クラウドウェーブ」の称呼もよどみなく称呼し得るものである。また、「cloud」及び「wave」は、一般的には、前者は「雲」の意味を、後者は「波」の意味を、それぞれ有するものとして、我が国においてもよく知られている英単語といえるから、本件商標は、全体として「雲の波」(雲を波に見立てていう語。立ち重なった波を雲に見立てていう語。:広辞苑第6版)の意味合いを想起させるものといえる。
してみれば、本件商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても、構成全体をもって一つの商標を表したと把握・認識されるものであるから、本件商標に接する取引者・需要者がその構成中の「cloud」の文字部分のみを殊更分離・抽出して、これより生ずる称呼及び観念のみをもって、商品の取引に当たるとみることはできない。その他、本件商標を「cloud」の文字部分と「wave」の文字部分とに分離して、「cloud」の文字部分のみを抽出して観察すべき特段の理由は見いだせない。
したがって、本件商標は、その構成文字に相応して、「クラウドウェーブ」の一連の称呼のみを生ずるものであって、「雲の波」の観念を生ずるものと認める。
(イ)引用商標10
引用商標10は、前記2(10)のとおり、「Cloud」の文字を横書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して、「クラウド」の称呼及び「雲」の観念を生ずるものである。
(ウ)本件商標と引用商標10との対比
本件商標と引用商標10の構成は、前記のとおりであるから、外観上明らかに相違するものである。
また、本件商標より生ずる「クラウドウェーブ」の称呼と引用商標10より生ずる「クラウド」の称呼は、「クラウド」の音を共通にするとしても、「ウェーブ」の音の有無という顕著な差異を有するものであるから、該差異音が両称呼全体に及ぼす影響は極めて大きく、それぞれの称呼を全体として称呼した場合においても、その語調、語感が著しく相違したものとなり、互いに紛れるおそれはない。
さらに、本件商標は、「雲の波」の観念を生ずるものであるのに対し、引用商標10は、「雲」の観念を生ずるものであるから、両商標は、観念上明らかに相違するものである。
(エ)したがって、本件商標と引用商標10は、その外観、称呼及び観念のいずれの点についても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
ウ 以上によれば、引用商標10は、本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点において、申立人商品を表示するものとして、我が国のランニングシューズを取り扱う分野の取引者・需要者の間において、一定程度の周知性を獲得していたものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第10号にいう「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標」には該当しないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しないものである。
(3)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標
本件商標は、前記(2)イ(ア)のとおり、その構成文字に相応して、「クラウドウェーブ」の一連の称呼のみを生ずるものであって、「雲の波」の観念を生ずるものである。
イ 引用商標1?9
引用商標1?9は、前記2(1)?(9)のとおりの構成よりなるものである。
(ア)引用商標1は、「CLOUDTEC」の文字を同一の書体をもって、同一の大きさ・間隔で外観上まとまりよく一体的に表されているばかりでなく、これより生ずると認められる「クラウドテック」の称呼もよどみなく称呼し得るものであるから、構成全体をもって一体不可分の造語を表したものと把握・認識されるというのが相当である。
したがって、引用商標1は、その構成文字に相応して、「クラウドテック」の一連の称呼のみを生ずるものであって、特段の観念を有しない造語よりなるものと認める。
(イ)引用商標2は、これを構成する「CLOUDRACER」の文字の外観上の一体性及びこれより生ずると認められる「クラウドレーサー」の称呼の音数の程度からみて、引用商標1と同様の理由により、これより「クラウドレーサー」の一連の称呼のみを生ずるものであって、造語を表したものと認められる。
(ウ)引用商標3は、これを構成する「CLOUDSURFER」の文字の外観上の一体性及びこれより生ずると認められる「クラウドサーファー」の称呼の音数の程度からみて、引用商標1と同様の理由により、これより「クラウドサーファー」の一連の称呼のみを生ずるものであって、造語を表したものと認められる。
(エ)引用商標4は、これを構成する「RUN ON CLOUDS.」の文字及び記号の外観上の一体性及びこれより生ずると認められる「ランオンクラウズ」の称呼の音数の程度に加え、末尾のピリオドの存在により、構成全体が一つの文章を表したと理解され、これより「雲の上を走る。」の意味合いが生ずるものである。そうすると、引用商標4は、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても、構成全体をもって一体不可分の商標を表したと把握・認識されるというのが相当である。
したがって、引用商標4は、その構成文字に相応して、「ランオンクラウズ」の一連の称呼のみを生ずるものであって、「雲の上を走る。」の観念を生ずるものと認める。
(オ)引用商標5は、これを構成する「CLOUDCRUISER」の文字の外観上の一体性及びこれより生ずると認められる「クラウドクルーザー」の称呼の音数の程度からみて、引用商標1と同様の理由により、これより「クラウドクルーザー」の一連の称呼のみを生ずるものであって、造語を表したものと認められる。
(カ)引用商標6は、これを構成する「CLOUDSTER」の文字の外観上の一体性及びこれより生ずると認められる「クラウドスター」の称呼の音数の程度からみて、引用商標1と同様の理由により、これより「クラウドスター」の一連の称呼のみを生ずるものであって、造語を表したものと認められる。
(キ)引用商標7は、これを構成する「Cloudventure」の文字の外観上の一体性及びこれより生ずると認められる「クラウドベンチャー」の称呼の音数の程度からみて、引用商標1と同様の理由により、これより「クラウドベンチャー」の一連の称呼のみを生ずるものであって、造語を表したものと認められる。
(ク)引用商標8は、これを構成する「Cloudflash」の文字の外観上の一体性及びこれより生ずると認められる「クラウドフラッシュ」の称呼の音数の程度からみて、引用商標1と同様の理由により、これより「クラウドフラッシュ」の一連の称呼のみを生ずるものであって、造語を表したものと認められる。
(ケ)引用商標9は、これを構成する「Cloudflow」の文字の外観上の一体性及びこれより生ずると認められる「クラウドフロー」の称呼の音数の程度からみて、引用商標1と同様の理由により、これより「クラウドフロー」の一連の称呼のみを生ずるものであって、造語を表したものと認められる。
ウ 本件商標と引用商標1?9との対比
(ア)外観
本件商標と引用商標1?9の構成は、前記のとおりであるから、外観上明らかに相違するものである。
(イ)称呼
本件商標より生ずる「クラウドウェーブ」の称呼と引用商標1?9より生ずる「クラウドテック」、「クラウドレーサー」、「クラウドサーファー」、「ランオンクラウズ」、「クラウドクルーザー」、「クラウドスター」、「クラウドベンチャー」、「クラウドフラッシュ」、「クラウドフロー」の各称呼は、「クラウド」又は「クラウ」(引用商標4)の音を共通にするとしても、他の構成音の数・音質・音調等の差異により、それぞれの称呼を全体として称呼した場合においても、その語調、語感が著しく相違したものとなり、明瞭に聴別し得るものと認める。
(ウ)観念
本件商標は、「雲の波」の観念を生ずるものであるところ、引用商標1?9は、本件商標と同一又は類似の観念を生ずるものはなく、本件商標と引用商標1?9は、観念上明らかに相違するものである。
(エ)したがって、本件商標と引用商標1?9は、外観、称呼及び観念のいずれの点についても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
エ 以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないものである。
(4)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標の著名性
前記(1)認定のとおり、本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点において、「Cloudracer/クラウドレーサー」、「Cloudsurfer/クラウドサーファー」、「Cloud/クラウド」の文字よりなる商標は、申立人商品を表示するものとして、我が国のランニングシューズを取り扱う分野の取引者・需要者の間において、一定程度の周知性を獲得していたものと認めることができる。しかし、上記商標をはじめ、引用商標が、我が国の一般的な取引者・需要者の間において広く認識されていたものとまでは認めることができず、その著名性が高いものであったとはいえない。
イ 本件商標と引用商標との類否
前記(2)及び(3)認定のとおり、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの点についても、互いに紛れるおそれのない非類似の商標である。
ウ 以上によれば、本件商標に接する取引者・需要者が、引用商標を想起又は連想することはないというべきであるから、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、該商品が申立人又はこれと業務上何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標と認めることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しないものと認める。
(5)商標法第4条第1項第19号について
ア 前記(1)認定のとおり、本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点において、「Cloudracer/クラウドレーサー」、「Cloudsurfer/クラウドサーファー」、「Cloud/クラウド」の文字よりなる商標は、申立人商品を表示するものとして、我が国のランニングシューズを取り扱う分野の取引者・需要者の間において、一定程度の周知性を獲得していたものと認め得るところである。
しかし、前記(2)及び(3)のとおり、本件商標は、引用商標とは非類似の商標であるから、上記「Cloudracer/クラウドレーサー」、「Cloudsurfer/クラウドサーファー」、「Cloud/クラウド」の文字よりなる商標とも非類似の商標というべきである。
してみると、本件商標は、不正の目的をもって使用する商標であると認めることはできず、その他、本件商標が不正の目的をもって使用する商標であると認めるに足りる証拠の提出はない。
イ 申立人は、本件商標権者が、申立人の取引上の競業関係にあることを考慮すれば、「Cloud」を冠する申立人商品が、日本及び欧米諸国で一定の評価を得て販売されていることを認識する立場にあったと考えるのが自然であるから、本件商標権者が偶然にも、本件商標を採択したとは考えられず、「Cloud」を冠した引用商標の高い識別力に只乗りするなどの不正の目的をもって本件商標を採択、使用されたものと考えざるを得ない旨主張する。
しかしながら、「cloud」は、「雲」を意味する一般的な英単語であって、「cloud」の語それ自体又は「cloud」の語と他の語とを結合した構成は、商標として多数の者に採択・使用されやすいといえるから、格別独創性の高いものとはいえないばかりか、本件商標権者が、本件商標を採択したことについては、申立人の「Cloud」を冠した商標の使用とは無関係に、単に一般的な英単語としての面に着目した可能性が高いといえる。そして、前記認定のとおり、本件商標は、構成全体をもって一体不可分の商標を表したと認識されるものであるから、引用商標とは、いずれも非類似の商標である。
してみると、本件商標権者による本件商標の登録出願は、引用商標にフリーライドするなどの不正の目的をもってしたものと認めることはできないから、上記に関する申立人の主張は理由がない。
ウ したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する商標と認めることはできない。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれの規定にも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲(本件商標)


異議決定日 2017-08-31 
出願番号 商願2016-78238(T2016-78238) 
審決分類 T 1 651・ 263- Y (W25)
T 1 651・ 261- Y (W25)
T 1 651・ 25- Y (W25)
T 1 651・ 262- Y (W25)
T 1 651・ 222- Y (W25)
T 1 651・ 271- Y (W25)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高橋 謙司 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 田中 幸一
大森 友子
登録日 2017-01-13 
登録番号 商標登録第5913920号(T5913920) 
権利者 美津濃株式会社
商標の称呼 クラウドウエーブ 
代理人 黒川 朋也 
代理人 工藤 莞司 
代理人 森川 邦子 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 魚路 将央 

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