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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W33
審判 全部申立て  登録を維持 W33
審判 全部申立て  登録を維持 W33
審判 全部申立て  登録を維持 W33
管理番号 1330337 
異議申立番号 異議2016-685024 
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-09-26 
確定日 2017-04-14 
異議申立件数
事件の表示 国際登録第1270926号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 国際登録第1270926号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件国際登録第1270926号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,2015年(平成27年)7月29日にEuropean Unionにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,同年8月7日に国際商標登録出願,第33類「Wines;sparkling wines.」を指定商品として,平成28年3月15日に登録査定,同年7月15日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,登録異議の申立ての理由として引用する登録第4121467号商標(以下「引用商標」という。)は,「SANTA ANA」の文字を横書きしてなり,平成7年11月28日に登録出願,第33類「果実酒,洋酒,薬味酒」を指定商品として同10年3月6日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号によりその登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第25号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標の要部及び外観について
本件商標は,中央に配したイラストを挟んで上部に「DULCE ANNA」の欧文字を,下部に「ANNA」の欧文字を書してなるものである。
このうち,「DULCE」とは,スペイン語で英語の「Sweet」を示す語であり,ワインにおいては「甘口」という味を示す語として一般に用いられているものである(甲3,甲4)。よって,本件商標の指定商品との関係においては,識別力を欠く語であることは明らかである。
また,本件商標のイラスト部分は,薄いグレーの淡色により,粗いデッサン風のタッチで描かれたもので,その細部は不明瞭なものであり,需要者に強い印象を与えるものとはいい難い。
一方で,「ANNA」の語は,商標の上部及び下部の2か所に書され,特に,商標下部の「ANNA」の文字は,本件商標中最も目を引く黒色,かつ一際大きなフォントで書されている。
実際に指定商品であるぶどう酒のラベルに付されている態様を見ても,本件商標は,その上部の文字及びイラストが不明瞭である一方で,下部の「ANNA」の文字の視認性が特段に高いことは一目瞭然である(甲5)。
さらに,本件商標を付した指定商品を販売するウェブサイトにおいては,「ANNA」の文字がダブルクォーテーションで囲まれ強調されており,取引の実情においても,本件商標は,「ANNA」の文字部分が識別標識として機能していることが見て取れる(甲5)。
したがって,本件商標の要部は,「ANNA」の文字である。
イ 本件商標の称呼について
本件商標の要部たる「ANNA」の文字は,特許庁においては「アンナ」の称呼のみが認定されているところ(甲1),「ANNA」の欧文字をローマ字読みした場合は「アナ」の称呼が生じ,この称呼が最も自然である。このことは,我が国においても映画「アナと雪の女王」の主人公「Anna」や,映画「プラダを着た悪魔」のモデルとなったことで有名なイギリス出身のファッション雑誌編集者「Anna Wintour」及び婦人服等を展開する米国のブランド名かつデザイナーの氏名である「ANNA SUI」等において,「ANNA」の名前が日本語では一般に「アナ」と表記されていることからも認められる(甲6?甲8)。
ウ 本件商標の観念について
「ANNA」は,前記イでも例示したように一般に女性の人名として知られているものであり「アナという女性の名前」という観念を生じる。また,「ANNA」という人名は,恩恵を意味するヘブライ語に由来し,同様に女性の人名である「ANA」と由来を同じくするものとされている(甲9)。
エ 本件商標と引用商標との対比
本件商標は,前記イでも述べたとおり,その要部たる「ANNA」の欧文字から「アナ」の称呼を生じると認めるのが自然である。一方,引用商標は,「SANTA ANA」の文字からなる商標であり「ANA」の欧文字からは,「アナ」の称呼を生じる。すなわち,両者は,「アナ」の称呼を共通にするものである。
また,本件商標からは前記ウで述べたとおり,「アナという女性の名前」という観念を生ずるものであり,「ANNA」と「ANA」は,称呼のみならずその由来をも共通にする女性名であるから,本件商標は,「ANA」の欧文字を含む引用商標と共通の観念を生ずるものである。
さらに,本件商標の要部であり,引用商標と共通する称呼及び観念を生ずる「ANNA」の欧文字は,前記アで述べたように,外観において本件商標で最も視認性が高いものであるところ,この文字を引用商標中の「ANA」と比較すると,「ANNA」の4文字中3文字が「ANA」と共通する。そして,唯一の差異である本件商標中の「N」は,二重子音にすぎず,その差異は外観において強い印象を与えるものではない。よって,本件商標は,引用商標と外観上も極めて近似した相紛らわしいものである。
すなわち,本件商標は,外観,観念及び称呼のいずれにおいても引用商標と類似する商標であり,また,本件商標の指定商品「Wines;sparkling wines.」は,引用商標の指定商品「果実酒,洋酒」と類似する。
そして,本件商標及び引用商標は,実際に,指定商品中「ぶどう酒(Wines)」という同一の商品に使用されているものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 申立人について
申立人は,アルゼンチンを代表するワイナリーグループであり,引用商標は,申立人傘下のワイナリー及びそこで生産されているワインを示すものとして用いられている(甲12,甲13)。SANTA ANAワイナリーは,1891年に設立され,現在では年間2,500万リットル以上の生産量を誇る地元でも有数のワイナリーである。また,輸出においてもアルゼンチンで5本の指に入るとされており,ウェブサイトにはその代表的な輸出先として我が国が挙げられている(甲12)。
イ 引用商標について
引用商標は,我が国及びアルゼンチンはもちろんのこと,ワインの一大市場であるフランス,スペイン,イタリア等を含む各国において,出願・登録されている(甲14?甲19)。
我が国において,SANTA ANAのワインは大手酒販会社であるアサヒビール株式会社(以下「アサヒビール」という。)や日本酒類販売株式会社(以下「日本酒類販売」という。)を通じて流通している(甲20,甲21)。甲第21号証に示すように,日本酒類販売は,2016年からSANTA ANAのワインを取り扱い始めたものであるが,既に,申立人に対し,一度の発注で1,620カートン(約2万本)や,一種類当たり7,200本といった大量の発注がなされており,我が国の市場においてSANTA ANAワインが相当程度流通していることが見て取れる(甲22)。また,SANTA ANAワインは,インターネット通信販売でも購入することができるものとなっている(甲23)。
アサヒビールのウェブサイトにおいてSANTA ANAのワインは,1997年から我が国で販売されていることが示されている。また,その日本向けの輸入量がアルゼンチンワインの中でNo.1であること,及びアサヒビールが「No.1ソムリエ推奨のワイン」として国内で大々的に宣伝・販売している事実も示されている(甲24)。
このように,引用商標は,申立人及びその傘下のワイナリー,並びにその業務に係る商品を表すものとして,本件商標の国際登録前から我が国において広く知られた商標である。
ウ 引用商標の需要者について
SANTA ANAワインは,安いものでは1,000円前後で小売りされている(甲21,甲23,甲24)。すなわち,SANTA ANAワインは,その手ごろな価格帯も一助となり需要者に広く普及している一方で,これに接する需要者層は,ワインに関する深い知識・造詣のないものも含む実に幅広いものということができる。
エ 本件商標の需要者及び使用状況について
これに対し,本件商標を付したワインは,いまだ我が国において販売はされていない模様である。
また,本件商標の権利者CODORNIU(コドーニュ)の他のワインは,1,000円台から小売りされていることが確認できる(甲25)。
そうすると,本件商標の権利者のワインは,引用商標に係るワインと価格帯が共通することから,需要者も共通するということができる。
オ 小括
我が国において既にSANTA ANAワインが普及しており,かつ,その需要者が前述のとおりワインに関する深い知識・造詣のない場合も少なくないという状況下において,本件商標がその指定商品について使用された場合,需要者が申立人及びその傘下のワイナリーの業務に係る商品と出所について混同するおそれがある。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものであるから,同法第43条の2第1号によって,その登録が取り消されるべきである。
4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は,別掲のとおり,女性の横顔の図形を表した上段に青緑色の「DULCE ANNA」の文字,下段に黒色の「ANNA」の文字を配した構成からなるところ,これらの3つの部分は,それぞれが判然と把握できるものであって,全体としてバランスよく配されている印象を与えるものである。
そして,上段の文字部分は,「DULCE」の文字と「ANNA」の文字との間に半角程度のスペースはあるものの,同じ書体,同じ大きさで,同じ色彩をもって表されており,かかる構成にあっては,構成中の「DULCE」の文字が「甘い」の意味を有するスペイン語であったとしても,該語が商品の品質を表示する語として,我が国の需要者に直ちに理解されるものとはいい難く,該文字部分は,「DULCE ANNA」の文字全体をもって把握されるのが相当である。
そして,「ANNA」の文字は,女性の名としての使用と理解されることからすれば,「アンナ」又は「アナ」の称呼を生ずるものであり,「DULCE ANNA」の文字部分は,構成文字に相応した「ドゥルセアンナ」又は「ドゥルセアナ」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。
そして下段の「ANNA」の文字からも同様に,「アンナ」又は「アナ」の称呼を生ずるものである。
イ 引用商標
引用商標は「SANTA ANA」の文字を横書きにしてなるところ,「SANTA」及び「ANA」の各文字は,その間に一文字分ほどのスペースを有するとしても,同じ書体,同じ大きさでまとまりよく表示されており,その構成全体から生じる「サンタアナ」の称呼も格別冗長ではなく,一連に称呼し得るものである。
また,引用商標は,その構成中の「SANTA」の文字が,「聖・・・」の意味を有する英語(株式会社研究社「研究社 新英和大辞典」)であって,これに続く言葉と一体的に把握されるとみるのが自然であり,これを捨象して,「ANA」の文字部分のみに着目するとみるべき特段の事情は見いだし得ない。
そうすると,引用商標は,その構成全体から「サンタアナ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないというのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標とは,それぞれ上記ア及びイのとおりの構成からなるものであるから,外観において明らかに相違し,相紛れるおそれはない。
また,本件商標から生じる「ドゥルセアンナ」,「ドゥルセアナ」,「アンナ」又は「アナ」と引用商標から生ずる「サンタアナ」とは,音構成,音数において顕著な差異を有するから,明確に聴別し得るものである。
そして,観念については,共に特定の観念が生じるものでないところ,これらが観念上紛れるおそれがあるという特段の事情は見いだせない。
以上のことから,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
エ 小括
以上のとおり,本件商標は,引用商標と類似するものとは認められないものであるから,本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が同一又は類似するとしても,商標法第4条第1項第11号には該当するとはいえない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標の周知性について
申立人の提出に係る証拠及び申立人の主張によれば,申立人は,アルゼンチンのワイナリーグループであり,引用商標は,申立人傘下のグループ会社であって,1891年に設立されたアルゼンチンのワイナリーの名称(以下「SANTA ANAワイナリー」という。)及びSANTA ANAワイナリーで製造しているワイン(以下「使用商品」という。)の名称であることが認められる。そして,SANTA ANAワイナリーは,年間2,500万リットル以上のワインを生産し,米国,カナダ,英国,ドイツ,日本,ブラシル等へワインを輸出している(甲12,甲21)。
また、引用商標は,アルゼンチン,フランス,スペイン,ベネルクス,ギリシア,ブラジルにおいて,登録されている(甲14?甲19)。
そして,引用商標を付したワインは,原料のぶどうの品種等により,数種類が製造,販売されており,我が国では,アサヒビールが1997年より販売し,日本酒類販売が2016年より,輸入,販売しているところ,日本酒類販売のNSH-15411の記載のあるオーダーシートには,合計1,620カートン(19,440本)とあり,NSH-16402の記載のあるオーダーシートには,合計750カートン(9,000本)の記載が認められる(甲20?甲22,甲24)。
さらに,使用商品は,我が国ではAmazon.co.jpにおいて,2013年10月24日より取り扱われていることが認められる(甲23)。
しかしながら,我が国のワイン輸入量及び販売量に対する使用商品の具体的なシェアを示す証拠は提出されていない。また,日本酒類販売で輸入取扱いを開始したのは,本件商標の国際商標登録出願日(2015年(平成27年)8月7日)以降の2016年である。さらに,使用商品の広告に関しては,アサビビール及び本件商標の国際商標登録出願日以降の日本酒類販売(2016年1月30日)のニュースリリースにとどまるものであり,各種メディア等への広告宣伝は確認できない。
したがって,申立人の提出した証拠をもってしては,引用商標がSANTA ANAワイナリー及び申立人の業務にかかる商品「ワイン」を表示するものとして,本件商標の国際商標登録出願日(2015年(平成27年)8月7日)及び登録査定日(平成28年3月15日)の時点において,我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
イ 本件商標と引用商標の類似性について
本件商標と引用商標とは,前記(1)と同様の理由により,相紛れるおそれのない非類似の商標である。
ウ 出所の混同のおそれについて
以上からすると,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品について使用しても,取引者,需要者が引用商標を連想又は想起することはなく,その商品が申立人若しくはSANTA ANAワイナリー又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当するとはいえない。
(3)むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものではないから,商標法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 【別記】

異議決定日 2017-04-11 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W33)
T 1 651・ 271- Y (W33)
T 1 651・ 263- Y (W33)
T 1 651・ 262- Y (W33)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鴨田 里果 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 大森 友子
酒井 福造
登録日 2015-08-07 
権利者 CODORNIU S.A.
商標の称呼 ドゥルセアンナ、ドルスアンナ、ダルシアンナ、ドゥルセ、ドルス、ダルシ、アンナ 
代理人 特許業務法人浅村特許事務所 

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