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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W12
審判 全部申立て  登録を維持 W12
審判 全部申立て  登録を維持 W12
審判 全部申立て  登録を維持 W12
管理番号 1329319 
異議申立番号 異議2016-900394 
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-12-12 
確定日 2017-05-22 
異議申立件数
事件の表示 登録第5880892号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5880892号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5880892号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成27年10月23日に登録出願、第12類「緩衝器」を指定商品として、同28年8月17日に登録査定、同年9月9日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議の申立ての理由において引用する商標は、以下の登録商標(以下、これらをまとめていうときは「引用商標」という。)であって、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第5471329号商標(以下「引用商標1」という。)は、「PERFORMANCE DAMPER」の欧文字を上段に、「パフォーマンス ダンパー」の片仮名を下段に、上下二段に横書きしてなり、平成23年8月11日に登録出願、第12類「緩衝器」を指定商品として、同24年2月17日に設定登録されたものである。
2 登録第5434506号商標(以下「引用商標2」という。)は、「YAMAHA PERFORMANCE DAMPER」の欧文字を上段に、「ヤマハ パフォーマンス ダンパー」の片仮名を下段に、上下二段に横書きしてなり、平成21年3月13日に登録出願、第12類「緩衝器」を指定商品として、同23年8月26日に設定登録されたものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第21号証(枝番号を含む。)を提出した。
なお、枝番号すべてをいうときは、以下、枝番号を省略して記載する。
1 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、「CLOUD WALKER」と「High-Performance Damper」の欧文字を二段に横書きしてなり、上段に配された「CLOUD WALKER」の文字と下段に配された「High-Performance Damper」の文字との間に十分なスペースが設けられていると共に、両文字が異なる大きさで表されていることに鑑みると、「CLOUD WALKER」と「High-Performance Damper」の要素とに容易に分離して認識され得るものである。
さらには、下段に配された「High-Performance Damper」の要素は全体が極めて冗長であることに加え、「High」と「Performance Damper」の文字の間にはハイフン(-)が配されており、両文字が分離され易い態様で表されていることを考慮すると、当該要素の「High」の文字と「Performance Damper」の文字とが常に一体として把握されなければならないとする特段の事由は存在せず、むしろ、当該要素からは「Performance Damper」の文字が独立して看取され、その結果、本件商標からは「Performance Damper」の文字に照応した「パフォーマンスダンパー」の称呼をも生じ得るものである。
引用商標1は、申立人の業務に係る商品「緩衝器」を表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至っていたと共に、本件商標は、下段に配された「High-Performance Damper」の要素が極めて冗長であることもあいまって、需要者・取引者をして、その構成中の「Performance Damper」のみが抽出され易く、本件商標中に引用商標1と称呼を同一にする「Performance Damper」の文字が含まれているという事実が容易に把握できる以上、引用商標1と全体として同一又は類似の商標と考えられるものである。
また、引用商標2は、申立人のハウスマークたる「YAMAHA/ヤマハ」の文字を除いた、後半部の「Performance Damper」及び「パフォーマンスダンパー」の文字が独立して看取され、これらの文字に照応した「パフォーマンスダンパー」の称呼が生じることから、引用商標2と本件商標とは、「パフォーマンスダンパー」の称呼を共通にする全体として同一又は類似の商標といえるものである。
そして、本件商標と引用商標の指定商品は、同一又は類似するものである。
したがって、引用商標に係る出願日及び登録日のいずれもが本件商標に係る出願日及び登録日に先立つものであることも考慮すると、本件商標は、引用商標との関係において、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたといえる。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)申立人について
申立人たるヤマハ発動機株式会社は、日本楽器製造(現ヤマハ株式会社)のオートバイ製造販売部門を分離独立して1955年7月1日に設立された、静岡県磐田市新貝2500に本社を有する世界有数の輸送用機械器具の製造メーカーである(甲5)。
申立人の取扱い製品は、二輪自動車、船外機、水上オートバイ、ボート、ATV、スノーモービル、ゴルフカー、車いす、電動アシスト自転車、産業用無人ヘリコプター等の各種輸送用機械器具並びに自動車を含むこれらの輸送用機械器具の部品や関連製品に加え、プール、発電機、除雪機、汎用エンジン、表面実装機、産業用ロボット等の多岐にわたっており、これらの製品の製造販売を中心とする申立人の2015年12月期の売上高は1兆6,312億円に達している(甲5)。
(2)「パフォーマンスダンパー(PERFORMANCE DAMPER)」の周知性について
ア 輸送用機械器具の製造メーカーとして既に確固たる地位を築いている申立人にあっては、その事業の中核をなす二輪車の製造者としてのみならず、二輪車の製造で培った高い技術力を活かしたエンジン等の自動車部品の製造者としても広く知られており、1960年代にはトヨタ自動車株式会社と「トヨタ2000GT」の共同開発・生産を始め、既にエンジンを中心とする自動車部品の製造を手がけ、1980年代後半には世界最高峰の自動車レースであるF1グランプリにもエンジンの提供という形で参戦をしており、このことからも申立人が自動車の関連部品の分野でも高い評価を受けていることが推認できるものである(甲6)。
イ そして、このように自動車の関連製品の分野でも活発な事業活動を行っている申立人において、自動車等の車体の振動や変形を低減させ、「非稼動部に直接減衰を付与することで操舵安定性、乗り心地等の車体性能を向上させる」という画期的な着想に基づいて開発された新しい車体性能向上技術が組み込まれた車体制振装置(乗物用緩衝装置)が、「パフォーマンスダンパー(PERFORMANCE DAMPER)」であり、2000年秋にその基本概念が実走確認された後、2001年に特許出願が行われ(甲7)、同年にカスタマイズカーとしてトヨタクラウンアスリートVXに市販車として世界初の技術として搭載された。
申立人の開発したこのような車体制振装置(乗物用緩衝装置)は、局所的な剛性向上を狙わず、減衰要素の付加により車体の変形に対し常時適度な抵抗力を発生させ、車体全体から変形エネルギーを吸収・発散させるようしたことにより、ブレース等による車体の補強による強化では実現困難であった金属のしなやかさと剛性の両立を可能にしたものであって、市場投入当初から自動車業界で高い注目を集め、2004年にトヨタ自動車のカローラのスポーツグレード車等に量産車として採用されたのを皮切りに、日産自動車、本田技研工業、富士重工業等の我が国を代表する自動車製造メーカーの様々な車種に搭載されることとなった(甲8)。
また、申立人の業務に係る「パフォーマンスダンパー(PERFORMANCE DAMPER)」なる車体制振装置(乗物用緩衝装置)(以下「パフォーマンスダンパー」という。)は、乗り心地や走行性能を求められるハイグレードな仕様の車種を中心として採用されており、例えば、トヨタ自動車のレクサスシリーズ(CT、HS、NX、IS、RS)にも2011年から現在に至るまで採用されている(甲9、甲10)。
さらに、申立人の業務に係る「パフォーマンスダンパー」は、我が国の自動車メーカーのハイグレードな車種に搭載されていることに加え、フォルクスワーゲン、アウディ、BMW、ポルシェ、ボルボ、アルファロメオ、ロータス等の世界の名だたる自動車メーカーの車種に適合するアフターパーツとして採用されており(甲11?甲13)、すなわち、現在では、自動車の車体に出荷時点で組み込まれた態様だけではなく、自動車愛好家向けのアフターパーツとしても販売されているものである(甲14)。
ウ このような状況において、その革新的な技術や高品質性とあいまって、「パフォーマンスダンパー」は、一般の自動車雑誌でも申立人の業務に係る製品として頻繁に取り上げられ(甲15)、また、各種新聞にもその記事が掲載されている(甲16)。
この点に加え、申立人の業務に係る「パフォーマンスダンパー」が、輸送機器関連の様々な雑誌や機関紙等にて高い評価を受け、今日に至るまで、財団法人機械振興協会が主催する「第3回新機械振興賞 会長賞(2005年)」、社団法人自動車技術会が主催する「第56回自動車技術会賞 技術開発賞(2006年)」、財団新技術開発財団が主催する「第40回市村産業賞 貢献賞(2008年)」を受賞していること(甲17)をも鑑みると、申立人の業務に係る「パフォーマンスダンパー」が、自動車製造メーカーのみならず、一般の需要者にも十分に認知されていることが容易にうかがい知れるものである。
エ 上述の状況からすると、申立人の業務に係る「パフォーマンスダンパー」は、他に類を見ない画期的な技術であって、自動車等の輸送用機械器具の分野における技術革新に多大な貢献をしたことは想像に難くないが、2004年のトヨタ自動車による最初の採用から現在に至るまでに100万本を超える販売実績を誇っており(甲18)、商標「パフォーマンスダンパー(PERFORMANCE DAMPER)」が、車体制振装置(乗物用緩衝装置)との関係で申立人によって現在まで継続的に使用されていることからも(甲19)、これが取引者及び需要者の間において広く認識されていることは当然に理解できるものであるが、ここで、甲第20号証について触れると、同書証は東京商工会議所の発行に係る商標周知証明書である。
そして、東京商工会議所が公共的な性格を有する公益団体であって、同証明書が我が国のみならず諸外国における知的財産権に関する紛争で商標の周知・著名性を判断するための資料として非常に高く評価されているという背景から、その審査及び発行に際しては、商標の使用の継続性や商標の実際の商取引の実情も東京商工会議所自らが調査し検討するといった、非常に厳格かつ綿密な審査が行なわれ、客観性が担保されていることに鑑みると、本件においても、同証明書の信頼性は当然に尊重されるべきものである。
したがって、商標「パフォーマンスダンパー(PERFORMANCE DAMPER)」が、車体制振装置(乗物用緩衝装置)との関係で取引者・需要者の間に広く認識されているということは動かしようのない事実と捉えられて然るべきである。
なお、甲第20号証には、周知と認められる商標が「パフォーマンスダンパー」と記載されているが、申立人にあっては、「パフォーマンスダンパー」の片仮名と共に「PERFORMANCE DAMPER」の欧文字も車体制振装置(乗物用緩衝装置)について実際に使用しており(甲15?甲21)、故に「PERFORMANCE DAMPER」の欧文字からなる商標も申立人の業務に係る商品を表示するものとして、取引者・需要者に広く認識されているといい得るものである。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
申立人の使用に係る商標「パフォーマンスダンパー(PERFORMANCE DAMPER)」と同一の称呼を生じる「Performance Damper」の文字列を完全に包含し、かつ、当該文字列が容易に独立して看取される本件商標が付された本件指定商品「緩衝器」が実際の商取引に資された場合、これに接した需要者・取引者は、申立人たるヤマハ発動機株式会社又は同社の業務に係る「パフォーマンスダンパー(PERFORMANCE DAMPER)」を付した「車体制振装置(乗物用緩衝装置)」を容易に想起又は連想し、当該商品は申立人又はこれと経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生ずるおそれがあることは明らかであることから、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといえる。
3 むすび
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当し商標登録を受けることができないものであるから、本件商標の登録は商標法第43条の2第1号により取り消されるべきものである。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、別掲のとおり、「CLOUD WALKER」の欧文字を上段に、その上段の欧文字より小さく表示された「High-Performance Damper」の欧文字を下段に、上下二段に横書きしてなるところ、各構成及び態様に照らせば、これらを分離して観察することが、取引上不自然であると思われるほど一体不可分的に結合しているものとはいえないから、それぞれが分離して看取されるといえるものである。
そして、本件商標の構成中、「High-Performance」の文字は、「高性能な」の意味を、「Damper」文字は、「(機械・乗物の)揺れ止め.」の意味を有する英語(いずれも「ジーニアス英和辞典第5版」大修館書店発行)であるところ、「High-Performance」の語は、機械の製造・販売業において、「ハイパフォーマンスコンピュータ」や「ハイパフォーマンスカー」のように、「高性能な○○」(「○○」は機械名。)の意味合いで普通に使用されている事実があるから、本件商標の指定商品「緩衝器」との関係においては、「High-Performance Damper」の文字部分は、取引者、需要者に、その商品が「高性能な緩衝器」であることを表したものと直ちに理解、認識させるといい得るものである。
そうすると、本件商標の「High-Performance Damper」の文字部分は、その指定商品に使用する場合、「高性能な緩衝器」であると理解、認識させるにすぎず、商品の誇称表示として、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものとみるのが相当である。
他方、本件商標の構成中、「CLOUD WALKER」の文字は、それぞれ「雲」、「歩く人」の意味を有する英語(いずれも「ジーニアス英和辞典第5版」大修館書店発行)であって、「雲を歩く人」ほどの観念が生じ、「クラウドウォーカー」の称呼が生じる。
してみると、本件商標は、その指定商品に使用する場合、「High-Performance Damper」の文字部分のみをもって、取引に資されるということはできないものであり、また、「CLOUD WALKER」の文字部分が、独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものであるから、本件商標の構成全体から生じる「クラウドウォーカーハイパフォーマンスダンパー」の称呼のほか、「クラウドウォーカー」の称呼を生じ、それぞれに相応して、「雲を歩く人の高性能な緩衝器」又は「雲を歩く人」ほどの観念を生じるというのが相当である。
(2)引用商標
引用商標1は、「PERFORMANCE DAMPER」の欧文字を上段に、「パフォーマンス ダンパー」の片仮名を下段に、上下二段に横書きしてなるところ、その構成中、「PERFORMANCE」の文字は「(機械などの)性能」の意味を、「DAMPER」の文字は「(機械・乗物の)揺れ止め.」の意味を有する英語(いずれも「ジーニアス英和辞典第5版」大修館書店発行)であって、「パフォーマンスダンパー」の文字部分は、上段の英語の読みを特定したものといえるから、「パフォーマンスダンパー」の称呼を生じ、その指定商品「緩衝器」との関係においては「性能緩衝器」ほどの観念を生じるものである。
また、引用商標2は、「YAMAHA PERFORMANCE DAMPER」の欧文字を上段に、「ヤマハ パフォーマンス ダンパー」の片仮名を下段に、上下二段に横書きしてなるところ、その構成中、「YAMAHA」の文字は、申立人のハウスマークの略称であり、「PERFORMANCE」の文字は「(機械などの)性能」の意味を、「DAMPER」の文字は「(機械・乗物の)揺れ止め.」の意味を有する英語であって、「ヤマハ パフォーマンス ダンパー」の文字部分は、上段の英語の読みを特定したものといえるから、「ヤマハパフォーマンスダンパー」の称呼を生じ、その指定商品「緩衝器」との関係においては「ヤマハの性能緩衝器」ほどの観念を生じる。
さらに、「YAMAHA」及び「ヤマハ」の文字部分が申立人のハウスマークの略称であり、独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものであるから、「ヤマハ」の称呼及び「(申立人の代表的出所標識である)ヤマハ」の観念をも生じ、「YAMAHA」及び「ヤマハ」の文字部分から分離されて抽出された「PERFORMANCE DAMPER」及び「パフォーマンス ダンパー」の文字部分から「パフォーマンスダンパー」の称呼をも生じ、その指定商品「緩衝器」との関係においては「性能緩衝器」ほどの観念をも生じるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
ア 外観について
本件商標と引用商標とは、その構成中、「Performance Damper」と「PERFORMANCE DAMPER」の欧文字部分において近似するものの、全体としての構成文字及び構成文字数において明らかに相違するから、両者は、外観上、相紛れるおそれはない。
イ 称呼について
(ア)本件商標から生じる各称呼と引用商標1から生じる「パフォーマンスダンパー」の称呼とをそれぞれ比較すると、本件商標の「クラウドウォーカーハイパフォーマンスダンパー」の称呼については、引用商標1とは、「クラウドウォーカーハイ」の音の有無の差異があり、両者は、称呼上、相紛れるおそれはない。
そして、本件商標の「クラウドウォーカー」の称呼については、引用商標1とは、明らかに別異のものであり、両者は、称呼上、相紛れるおそれはない。
(イ)本件商標から生じる各称呼と引用商標2から生じる各称呼とをそれぞれ比較すると、本件商標から生じる「クラウドウォーカーハイパフォーマンスダンパー」の称呼と引用商標2から生じる「ヤマハパフォーマンスダンパー」の称呼については、「クラウドウォーカーハイ」と「ヤマハ」の音の差異があり、両者は、称呼上、相紛れるおそれはない。
そして、本件商標から生じる「クラウドウォーカー」の称呼と引用商標2から生じる「ヤマハパフォーマンスダンパー」の称呼とは、明らかに別異のものであり、両者は、称呼上、相紛れるおそれはない。
また、本件商標から生じる各称呼と引用商標2から生じる「パフォーマンスダンパー」の称呼については、上記(ア)と同様の理由により、両者は、称呼上、相紛れるおそれはない。
さらに、本件商標から生じる各称呼と引用商標2から生じる「ヤマハ」の称呼については、明らかに別異のものであり、両者は、称呼上、相紛れるおそれはない。
ウ 観念について
本件商標からは「雲を歩く人の高性能な緩衝器」又は「雲を歩く人」ほどの観念を生じ、引用商標からは「性能緩衝器」、「(申立人の代表的出所標識である)ヤマハ」又は「ヤマハの性能緩衝器」ほどの観念を生じるから、両者は、観念上、相紛れるおそれはない。
(4)まとめ
上記(3)のとおり、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれの点においても、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)「パフォーマンスダンパー(PERFORMANCE DAMPER)」の周知性について
ア 申立人が開発した「車体制振装置(乗物用緩衝装置)」の「パフォーマンスダンパー(PERFORMANCE DAMPER)」は、申立人の主張及び提供する証拠によれば、以下のとおりである。
(ア)2004年にトヨタ自動車のカローラのスポーツグレード車等に量産車として採用されたのを皮切りに、日産自動車、本田技研工業、富士重工業等の我が国を代表する自動車製造メーカーの様々な車種に搭載され(甲8)、また、トヨタ自動車のレクサスシリーズ(CT、HS、NX、IS、RS)にも2011年から現在に至るまで採用されている(甲9、甲10)。
さらに、フォルクスワーゲン、アウディ、BMW、ポルシェ、ボルボ、アルファロメオ、ロータス等の世界の名だたる自動車メーカーの車種に適合するアフターパーツとして採用され(甲11?甲13)、現在では、自動車の車体に出荷時点で組み込まれた態様だけではなく、自動車愛好家向けのアフターパーツとしても販売されている(甲14)。
(イ)一般の自動車雑誌でも取り上げられ(甲15)、また、各種新聞にもその記事が掲載されている(甲16)。
また、財団法人機械振興協会が主催する「第3回新機械振興賞 会長賞(2005年)」、社団法人自動車技術会が主催する「第56回自動車技術会賞 技術開発賞(2006年)」、財団新技術開発財団が主催する「第40回市村産業賞 貢献賞(2008年)」を受賞している(甲17)。
(ウ)2004年のトヨタ自動車による最初の採用から現在に至るまでに100万本を超える販売をしており(甲18)、申立人によって現在まで継続的に使用されている(甲19)。
(エ)東京商工会議所の発行に係る商標周知証明書がある(甲20)。
周知性の判断
上記アによれば、商標「パフォーマンスダンパー(PERFORMANCE DAMPER)」(以下「使用商標」という。)を付した「車体制振装置(乗物用緩衝装置)」(以下「使用商品」という。)が、我が国の自動車メーカーに採用され、その商品が、雑誌、新聞の記事に掲載され、各種の賞を受賞し、使用商品が2004年から現在に至るまでに100万本を超える販売をした事実は確認できる。
しかしながら、その販売実績をもって、使用商標を使用した使用商品についての市場占有率(シェア)等を把握することはできないし、使用商標の広告の範囲・回数等の具体的な事実を示す証拠の提出はない。
そうすると、申立人の提出した証拠のみをもってしては、使用商標が、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、その取引者及び需要者の間に広く認識されるに至っていたということはできない。
(2)本件商標と使用商標との類似性について
本件商標は、上記1(1)及び(3)のとおり、使用商標とは相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(3)出所の混同のおそれについて
使用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、申立人の業務に係る商品を表すものとして広く認識されるに至っていたということはできない。
また、上記(2)のとおり、本件商標と使用商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(4)まとめ
上記(1)ないし(3)のとおり、本件商標は、これをその指定商品に使用しても、取引者、需要者をして使用商標を連想し、又は想起させることはなく、その商品が申立人、あるいは、同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品及び役務であるかのように誤認し、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものではないから、商標法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲 (本件商標)





異議決定日 2017-05-12 
出願番号 商願2015-102760(T2015-102760) 
審決分類 T 1 651・ 262- Y (W12)
T 1 651・ 271- Y (W12)
T 1 651・ 261- Y (W12)
T 1 651・ 263- Y (W12)
最終処分 維持  
前審関与審査官 今田 尊恵 
特許庁審判長 青木 博文
特許庁審判官 半田 正人
原田 信彦
登録日 2016-09-09 
登録番号 商標登録第5880892号(T5880892) 
権利者 株式会社ムーンフェイス
商標の称呼 クラウドウオーカーハイパフォーマンスダンパー、クラウドウオーカー、クラウド、ウオーカー、ハイパフォーマンスダンパー、パフォーマンスダンパー、ハイパフォーマンス、パフォーマンス 
代理人 長谷川 哲哉 
代理人 田中 尚文 
代理人 岡部 讓 

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