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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W09
審判 全部申立て  登録を維持 W09
審判 全部申立て  登録を維持 W09
審判 全部申立て  登録を維持 W09
管理番号 1328081 
異議申立番号 異議2017-900005 
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-06-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-01-10 
確定日 2017-05-18 
異議申立件数
事件の表示 登録第5886768号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5886768号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5886768号商標(以下「本件商標」という。)は、「うま味の素センサ」の文字を標準文字で表してなり、平成28年4月5日に登録出願、第9類「測定機械器具及びその部品としての使い捨てカートリッジ,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」を指定商品として、同年9月7日に登録査定、同年10月7日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立ての理由の要旨
(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性
本件商標は、これをその指定商品に使用しても、「うま味の素であるグルタミン酸等を測定し、数値化する商品」又は「うま味の素であるグルタミン酸等を測定し、数値化する機能を有する商品」であることを容易に認識、理解させるにすぎず、商品の品質、用途を表したにすぎないものである。
また、本件商標は、「うま味の素であるグルタミン酸等を測定、数値化する商品」又は「うま味の素であるグルタミン酸等を測定、数値化する機能を有する商品」以外の商品に使用された場合は、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第8号該当性
本件商標は、その構成中に、申立人の著名な略称である「味の素」の文字を含んでいるものである。
したがって、本件商標は、他人の著名な略称を含む商標であって、申立人の承諾を得ているものではないから、商標法第4条第1項第8号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性
申立人の著名な略称である「味の素」を含む本件商標がその指定商品に使用された場合、申立人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の需要者が商品の出所について混同するおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号、同法第4条第1項第16号、同項第8号及び同項第15号に違反してされたものであるから、同法第43条の2第1号により取り消されるべきものである。

3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について
ア 申立人の提出した証拠によれば、本件商標の登録査定時(平成28年9月7日)において、以下の事実を認めることができる。
(ア)味覚の基本となる要素である甘味、苦味、酸味、塩味、うま味の5つを基本味という(甲6)。
(イ)グルタミン酸又はL-グルタミン酸ナトリウムは、「うま味の素」といわれていた(甲8、甲17)。
(ウ)「日本薬学会第135回シンポジウム」(平成27年3月28日)において、「簡易グルタミン酸測定器の開発と利用」との標題の報告がされ、当該報告書には、「うま味は、食べ物の味を構成する基本味の1つであり、アミノ酸であるL-グルタミン酸(以下、グルタミン酸)や、核酸であるイノシン酸、グアニル酸の塩によってもたらされる。中でもグルタミン酸は食べ物の味に関与するのみならず、食欲亢進作用、口腔機能改善作用・・などを発揮する多機能生理活性分子であることが最近の研究によって明らかにされつつあることから、医療分野において患者や高齢者のQOLの向上に役立つことが期待されている。そこで、グルタミン酸塩を、うま味を呈する調味料として適正量使用するのみならず、生理機能物質として医療現場で積極的に活用するためには、グルタミン酸濃度の簡便な測定法が不可欠と考えられる。・・・基本味成分の簡易測定法としては、糖濃度(甘味)を測定する屈折糖度計、・・・があり、いずれも持ち運び可能なハンディ型が汎用されている。しかしながら、タンニン、クロロゲン酸、キニーネといった苦味を呈する物質、及びグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸といったうま味を呈する物質に関しては、筆者らの知る限り、これまでに簡易型の測定器は存在しなかった。うま味物質のグルタミン酸を含めて、食品中の遊離アミノ酸の分析方法は簡便とは言い難い。・・・こうした状況を反映して測定場所や使用者を限定せず、より簡便でコストパフォーマンスに優れたグルタミン酸測定法が望まれてきた。」(1335頁、1336頁)、「本総説は、従来のアミノ酸分析法よりも簡便でコストパフォーマンスに優れた測定法として新たに開発された簡易グルタミン酸測定器について、実用化を目標にその基本性能の評価と実際に各種サンプルの測定を行った結果をまとめたものである。」(1342頁)などと記載されている(甲18、甲19)。
(エ)「『京都産業大学日本文化研究書紀要』第18号・平成25年(2013)3月」において、「京都発『うま味』の発見と商品化-調味料をめぐる産学連携-」との見出しのもと、「菊苗は精力的に研究を続け、1907(明治40)年に酸甘塩苦の四基本味以外の味成分を、うま味と名づけて、昆布の旨み成分がグルタミン酸ナトリウムであることを発見する。翌1908年(明治41)年にグルタミン酸ナトリウムを主成分とする調味料の製造方法を発明して、その特許を取得する。」(402頁)などと記載されている(甲28)。
(オ)発明の名称を「L-グルタミン測定キット」とする特許出願が平成27年4月6日にされた。同発明の公開特許公報の「発明の詳細な説明」の「技術分野」には、「本発明はL-グルタミンの測定試薬および、当該試薬を含むキットに関する。」と記載され、同「背景技術」には、「L-グルタミンは抗体医薬や組換えタンパク質製剤などのバイオ医薬品の製造過程において、そのタンパク生産効率や糖鎖構造に影響を及ぼすことが知られる。また、各種サプリメントの機能性成分や、微生物・培養細胞の培地における栄養源としてもきわめて有用な成分であり、その濃度管理は非常に重要である。」と記載されている。(甲20)
イ 職権による調査によれば、以下の事実を認めることができる。
(ア)調理用語辞典(株式会社調理栄養教育公社発行)の「うまみ【旨味】」の項目には、「甘・酸・塩・苦の味を混合しても作りえない独立した基本味の一つである。昆布のグルタミン酸、カツオ節のイノシン酸、シイタケのグアニル酸などで代表される味で、だしやスープに共通して存在する呈味成分である。」と記載されている。
(イ)2014年8月1日付け化学工業日報6頁には、「食品添加物 メニュー専用調合品拡大・調味料(企画記事)」の見出しのもと、「食品添加物としての調味料は、アミノ酸、核酸、有機酸、無機塩の4つのグループに分かれ、何種類かの調合による相乗効果でうま味を引き出す使用方法が一般的である。・・・調味料の代表格は、昆布のうま味成分として知られるL-グルタミン酸ナトリウム。・・・核酸系では、かつお節や煮干し、肉などに多く含まれる5’-イノシン酸二ナトリウムや、干しシイタケのうま味である5’-グアニル酸二ナトリウムなどが多く、全体で3万4000トンほどの世界需要があるようだ。このほか、有機酸系では貝類特有のうま味成分であるコハク酸ナトリウム、無機塩系では岩塩から精製される塩化カリウムなどが、主要な調味料となる。」と記載されている。
(ウ)1993年8月14日付け東京読売新聞(夕刊)には、「『うま味』世界で認知 5番目の基本味 舌や脳に専用回路 海外でも研究進む」の見出しのもと、「明治四十一年、東大農学部の池田菊苗博士が、コンブに含まれるグルタミン酸ナトリウムが『うま味成分』として働いていることを発見した。その後も、かつお節のイノシン酸、しいたけのグアニル酸(どれもアミノ酸の一種)とわが国の研究者が『うま味の素』を突き止めてきた。」と記載されている。
(エ)コンサイスカタカナ語辞典(第4版 株式会社三省堂発行)の「センサー(sensor)」の項目には、「感応信号装置。感知器。音や光などの物理的な刺激に反応して電子・電気的に信号を発する装置。」と記載されている。
ウ 前記ア及びイで認定した事実によれば、以下のとおりである。
(ア)うま味物質について
味覚の基本味のうちのうま味は、主にアミノ酸であるグルタミン酸や、核酸であるイノシン酸、グアニル酸など、その他のコハク酸やその塩類などによって生じる味の名称であること、うま味物質の発見は、1900年代初頭に、池田菊苗博士によって、昆布の中から発見されたグルタミン酸が最初であり、その後、我が国の研究者により、鰹節から抽出したイノシン酸や、しいたけ中から抽出したグアニル酸もうま味成分であることが解明されたこと、これらのうま味物質を「うま味の素」と称していること、などを認めることができる。
(イ)測定機器の分野の実情について
うま味物質の一つであるグルタミン酸は、食品のうま味を増す働きがあるばかりでなく、医療の分野においても多機能生理活性分子として、患者の生活全体の向上を目指すためのものとして期待されており、その使用に当たって、適正な分量を使用するために、グルタミン酸の濃度の計測機器が開発されている実情にあること、グルタミン酸と同じアミノ酸であるL-グルタミンに関して、発明の名称を「L-グルタミン測定キット」とする特許出願がされている事実が存在すること、さらに、「センサー(sensor)」の語は、「感知器」を意味するものであること、などを認めることができる。
エ 本件商標は、前記1のとおり、「うま味の素センサ」の文字を標準文字で表してなるものであるところ、前記ウで認定した事実に照らすと、その構成中の「うま味の素」の文字部分は、主にアミノ酸であるグルタミン酸や、核酸であるイノシン酸、グアニル酸など、その他のコハク酸やその塩類などによって生じるうま味物質を総称する語であり、また、「センサ」の文字部分は、「感知器」を意味する語であることが認められる。
そうすると、本件商標中の「うま味の素」の文字部分は、多数あるうま味物質のうちのどの物質であるか必ずしも特定されているわけではなく、「感知器」を意味する「センサ」と一体となって、どのようなうま味物質を感知する機器であるのか具体的であるとはいえない。
してみると、本件商標に接する取引者・需要者が、これより直ちに「グルタミン酸等を測定し、数値化する商品」などの意味合いを表したと認識するとみることは困難であるといわざるを得ない。
また、本件商標の指定商品を取り扱う分野において、「うま味の素センサ」の語が、上記意味合いをもって、商品の品質、用途等を表示するためのものとして普通に使用されている事実も見出せない。
そうすると、本件商標は、商品の品質、用途等を具体的、かつ、直接的に表示するものではなく、むしろ構成全体をもって特定の意味合いを想起させない一種の造語を表したと認識されるとみるのが相当である。
してみれば、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、商品の品質、用途等を表示するものはなく、また、その指定商品のいずれについて使用しても、商品の品質について誤認を生じさせるおそれもないものである。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号のいずれにも該当しない。
(2)商標法第4条第1項第8号について
ア 商標法第4条第1項第8号が、他人の肖像又は他人の氏名、名称、著名な略称等を含む商標は、その他人の承諾を得ているものを除き、商標登録を受けることができないと規定した趣旨は、人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像、氏名、名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。すなわち、人は、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがない利益を保護することにあるところ(最高裁平成17年7月22日第二小法廷判決・裁判集民事217号595頁)、問題となる商標に他人の略称等が存在すると客観的に把握できず、当該他人を想起・連想できないのであれば、他人の人格的利益が毀損されるおそれはないと考えられる。そうすると、他人の氏名や略称等を「含む」商標に該当するかどうかを判断するに当たっては、単に物理的に「含む」状態をもって足りるとするのではなく、その部分が他人の略称等として客観的に把握され、当該他人を想起・連想させるものであることを要すると解すべきである(知財高裁平成21年(行ケ)第10074号、同21年10月20日判決参照)。
イ 前記アについて検討すると、本件商標は、前記1のとおり、「うま味の素センサ」の文字を標準文字で表してなるものであるところ、該文字は、同一の書体をもって、同一の大きさ、等間隔で表されているものであり、また、該文字から生ずる「ウマミノモトセンサ」の称呼も、無理なく一連に称呼できるものであるから、前記(1)認定のとおり、構成全体をもって特定の意味合いを想起させない一種の造語を表したと認識されるとみるのが相当である。
そうすると、後記(3)認定のとおり、「味の素」の表示が申立人の略称として、我が国の需要者の間に広く認識されているものであるとしても、本件商標は、その構成中の「味の素」の文字部分のみが独立して把握、認識されるものではないから、これに接する需要者をして、申立人を想起、連想させることはないというべきである。
したがって、本件商標は、他人の著名な略称を含む商標ということはできないから、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 申立人の略称の著名性
(ア)申立人の提出した証拠によれば、以下の事実を認めることができる。
a.1907年(明治40年)に、東京帝国大学理学部化学科の教授であった池田菊苗によって、グルタミン酸が味覚の5つの基本味のうちのうま味の成分の一つであることが発見された。池田教授は、1908年(明治41年)4月に「グルタミン酸を主要成分とせる調味料製造法」について特許出願をし、同年7月に、特許を取得した。池田教授から事業経営を請け負った鈴木三郎助(当時鈴木製薬所代表)は、1909年(明治42年)5月に、L-グルタミン酸ナトリウムに「味の素」という商品名をつけ、製造販売事業を開始し、現在の味の素株式会社へと発展をした。(甲6、甲28等)
b.「酒類食品統計月報 2015年6月」の「うま味調味料(MSG)の社別国内販売量(推定)」によれば、申立人は、2012年(平成24年)から2014年(平成26年)にかけて、業務用で市場構成比34.4%、家庭用で市場構成比100%であった(甲29)。また、「酒類食品統計月報 2016年6月」の「うま味調味料(MSG)の社別国内販売量(推定)」によれば、申立人は、2013年(平成25年)から2015年(平成27年)にかけて、業務用で市場構成比31.5%、家庭用で市場構成比100%であった(甲30)。
c.申立人は、「うま味」についての理解を広めるための活動を2006年(平成18年)頃から継続して行っている(甲32、甲33)ことに加え、「うま味」をキーワードにした様々な宣伝広告活動を行っている(甲36?甲38)。
d.申立人は、1990年代初め頃から、食品以外の電子材料等の事業も手掛けている(甲39、甲40)。
e.申立人は、「味の素」の文字よりなる登録第641075号商標について、防護標章登録を受けている(甲27)。
(イ)前記(ア)で認定した事実によれば、申立人及びその略称である「味の素」は、「味の素」の文字からなる商標を使用した商品「うま味調味料」の製造販売会社として、本件商標の登録出願時及びその登録査定時(平成28年9月7日)において、我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたものと認めることができる。
イ 出所の混同のおそれ
前記ア認定のとおり、「味の素」の表示は、申立人の製造販売に係る商品「うま味調味料」に付される商標として、その周知の程度が高まるに伴い、申立人の略称としても、我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたものと認められる。
しかし、本件商標は、前記(1)及び(2)認定のとおり、その構成全体をもって一体不可分の造語からなるものと把握、認識されるとみるのが相当であって、その構成中の「味の素」の文字部分のみが独立して把握、認識されるものではないから、申立人の略称である「味の素」の表示とは、全く別異の商標というべきである。
さらに、本件商標の指定商品である第9類「測定機械器具及びその部品としての使い捨てカートリッジ,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」と申立人の主たる業務に係る商品「うま味調味料」とは、商品の用途、性質、機能、原材料等において著しく相違するばかりでなく、その生産者、取引系統、販売場所等においても著しく相違するものであるから、両商品の関連性は極めて薄いというべきである。
そうすると、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、その取引者・需要者をして、該商品が申立人又はこれと何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれのある商標ということはできない。
なお、申立人は、1990年代初め頃から、食品以外の電子材料やアミノ酸の解析等の事業も手掛けている旨主張し、甲第39号証ないし甲第44号証を提出するが、これらの証拠をもって、申立人が、食品、とりわけ調味料の製造販売の事業以外に、電子材料の製造販売やアミノ酸の解析等の事業を手掛ける企業として、本件商標の登録出願前から、我が国の取引者・需要者の間に広く知られていたと認めることはできない。
ウ したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号、同法第4条第1項第16号、同項第8号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2017-05-10 
出願番号 商願2016-39034(T2016-39034) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W09)
T 1 651・ 23- Y (W09)
T 1 651・ 272- Y (W09)
T 1 651・ 13- Y (W09)
最終処分 維持  
前審関与審査官 綿貫 音哉 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 田中 幸一
藤田 和美
登録日 2016-10-07 
登録番号 商標登録第5886768号(T5886768) 
権利者 株式会社エンザイム・センサ
商標の称呼 ウマミノモトセンサ、ウマアジノモトセンサ、ウマミノモト、ウマミ、ウマアジノモト、アジノモト 
代理人 古関 宏 

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