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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W1644
管理番号 1323747 
異議申立番号 異議2015-685033 
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-10-26 
確定日 2016-10-18 
異議申立件数
事件の表示 国際登録第1167261号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 国際登録第1167261号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件国際登録第1167261号商標(以下「本件商標」という。)は、「MAHARISHI YAGYA」の欧文字を書してなり、2012年9月12日にEuropean Unionにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2013年(平成25年)3月12日に国際商標登録出願、2015年(平成27年)4月13日に登録査定、第16類及び第44類に属する別掲のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年8月14日に設定登録されたものである。
第2 登録異議の申立ての理由(要旨)
商標登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当するから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証(枝番を含む。)を提出した。
1 マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏について
マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏は、1918年にインドにて生まれ、1955年から南インドにて「トランセンデンタル・メディテーション(超越瞑想)」と名付けた瞑想技術の教授を開始し、1960年代にはアメリカを中心として活動し、ヒッピーたちの3大グルの一人と称された人物である。
このような超越瞑想は多くの学術関係者からも注目を浴び、これを支持の学者たちによる「サイエンス」(1970年)や「サイエンティフィック・アメリカ」(1972年)等の権威ある雑誌への論文の寄稿をきっかけに同氏による超越瞑想の科学的研究が積極的に行われ、現在に至る瞑想や呼吸法の草分けとなり、我が国においても、1980年代中頃にはストレス解消法として広められ、企業の福利厚生としても取り上げられるに至り1990年代に入ると、オランダに拠点を移し、世界規模での活動を開始した(甲2)。
そして、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏は、2008年に引退を発表したが、自ら確立した瞑想方法や教えを更に広めるべく、Antoine Tony Nader氏を後継者に指名し、その権利を同氏に譲ることとした(甲3ないし甲6)。
その後、Antoine Tony Nader氏は「Maharaja Dhiraaj Raja Ram」と改名し、現在に至るまでマハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏による教えや超越瞑想を世界的に広めるべく、今日に至るまで尽力している。
上述の状況において、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏の教えや瞑想方法を広める活動は、2010年10月7日に設立されたMaharishi Global Country of World Peace Stichting(以下「NGCWP」という。(決定注:「MGCWP」の誤記と認める。以下同じ))が統括的立場で今日まで行われており、MGCWPの設立には、Antoine Tony Nader氏も名前を連ねており、MGCWPを介して、Maharaja Dhiraaj Raja Ram氏が中心となって、世界各地で様々な活動が行われている(甲7ないし甲11)。
我が国においても、MGCWPの傘下であるマハリシ総合研究所が超越瞑想を紹介し、その普及に努めており、その歴史は長く、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏の確立した教えや瞑想方法は、我が国の公衆にも広く認知されているといい得るものである(甲12)。
2 本件商標の出願人(以下「本件商標権者」という。)について
本件商標権者であるMaharishi Foundationは、過去にマハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏によって設立された法人であって、その株式もMGCWPが大半を所有しているものであることから(甲13)、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏のこれまでの功績、及びDhiraaj Raja Ram氏が後継人に指名され、現在は同氏が中心となってマハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏の教えや瞑想方法を世界各国で広めているといった事実を当然に認知しているといえる。
3 商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、「MAHARISHI YAGYA」の欧文字を横書きにして表されてなるものである。
これらの構成中の前半部の「MAHARISHI」の欧文字は、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏の略称たる「MAHARISHI」と同一といえる。また、後半部の「YAGYA」の欧文字は、ヒンディーのヴェーダ祭祀を語源とし、現在でもインド等で日常的に行われている伝統的・精神的な儀式を指し、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏による教えや超越瞑想と深い係わりを持つ語である(甲14及び甲15)。
そうとすると、本件商標「MAHARISHI YAGYA」が付された商品又は役務に接した需要者、取引者にあっては、これがマハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏と何らかの係わりのある、又は同氏の教えや超越瞑想等に由来する、あるいは同氏の教えや超越思想に基づいた儀式に関連する商品又は役務であると容易に理解し得ると考えられるものである。
そして、1972年からマハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏に教えを乞い、2008年まで同氏と行動を共にしてきたNeil Peterson氏による陳述書(甲16)で明らかなように、本件商標権者であるMaharishi Foundationは、チャネルアイランドに所在するMaharishi Foundation Limitedの責任者によって設立されたものである。
このような状況において、甲第17号証(決定注:甲第16号証の誤記と認める。)からは、Maharishi Foundation Limitedが同氏に係る知的所有権を保有する資格がないことは明らかであり、その責任者によって設立された本件商標権者も当然に前記の知的所有権を有することは認められないものであるが、本件商標権者(又はMaharishi Foundation Limited)にあっては、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏の正当な後継者であるMaharaja Dhiraaj Raja Ram氏やMGCWPの意向を無視して本件商標に加え、「MAHARISHI」の文字を含む複数の商標の出願、登録を試みている。
そして、このような行為は、自己の教えや超越瞑想をMaharaja Dhiraaj Raja Ramの下にMGCWPを中心として更に世界に広め、発展させていくというマハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏の意向に背くばかりか、その教えを乞う者のみならず、需要者、取引者の間に混乱を引き起こす行為であって、MGCWPの活動を不当に阻害するとの意図をもってなされたものであることは容易に理解できるものである。
すなわち、本件商標は、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏の承諾を得ていないばかりか、同氏の教えを広める立場にあるMGCWPや正当な後継者であるDhiraaj Raja Ram氏の許諾を受けることなく、MGCWPやDhiraaj Raja Ram氏の存在を十分に理解、認識している者によって、悪意の意図をもって出願されたものといえる。
このような状況に鑑みると、本件商標を、本件商標権者の商標として登録することは、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏の教えを広めようとするMGCWPやDhiraaj Raja Ram氏の施策進行を著しく阻害するおそれがあり、また、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏を崇拝する者をはじめとして同氏を敬愛する世界各国の国民の感情を害するおそれがあることは明らかである。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標といえるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号の規定に違反して登録されたものである。
第3 当審の判断
1 本件商標「MAHARISHI YAGYA」が、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏の「トランセンデンタル・メディテーション(超越瞑想)」と関係する語であるかについて
甲第2号証によれば、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏は、トランセンデンタル・メディテーション(超越瞑想)の創始者(マハリシとは「偉大な・聖者(見者)」という意味)であり、世界規模での活動を行ったと紹介されている。また、甲第12号証によれば、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏により現代に復活された瞑想法について、一般社団法人マハリシ総合教育研究所により、その著書や瞑想に関する広報が行われ、該研究所の組織として海外の機関が紹介されていることが確認できる。
しかし、これらの証拠からは、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏が瞑想法を提唱し世界規模での活動を行ったこと、一般社団法人マハリシ総合教育研究所が同氏の瞑想法に関する著書を始めとして瞑想やヴェーダ等を紹介する活動を行っていることはうかがえるものの、本件商標の構成中「MAHARISHI」の文字が、同氏の略称であること、及び、「YAGYA」の語が、同氏の超越瞑想と深い係わりを持つ語であることは、主張のみで、証拠の提出はない。
そうすると、本件商標「MAHARISHI YAGYA」の語が、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏と何らかの係わりのあるもの、又は、同氏が確立した教えや瞑想方法と深い係わりを持つ語を表すものとして、取引者、需要者に理解されるものとは認めることができない。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、「MAHARISHI YAGYA」の欧文字を書してなるところ、構成中の「MAHARISHI」の語は、「(ヒンドゥー教)宗教的賢者」等の意味(「小学館ランダムハウス英和大辞典」、株式会社小学館発行)を有する語であり、「YAGYA」の語は、辞書等に載録のない語であって、一般に親しまれた意味を有する成語ということはできないことから、本件商標は、その構成全体をもって特定の意味合いを有しない一体不可分の語句として認識し把握されるとみるのが自然であり、特段の観念を生じない造語というのが相当である。
そして、上記1のとおり、提出された証拠からは、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏が、本件商標を使用している事実は認められないから、同氏が確立した教えや瞑想方法と深い係わりを持つ語を表すものであると認めることができないものであるばかりか、本件商標権者は、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏が設立した団体であることからすると、その出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底認めることができないような場合には該当しないというべきである。
また、本件商標が、悪意の意思をもって出願されたというような、不正の目的を立証する証拠の提出もない。
してみれば、本件商標が、非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である又は、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合に該当するものということはできない。
その他、他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合や、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合等の事情は見いだせない。
3 申立人の主張について
申立人は、「本件商標権者は、知的所有権を保有する資格がないことは明らかであり、また、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏の承諾を得ていないばかりか、同氏の教えを広める立場にあるMGCWPや正当な後継者であるDhiraaj Raja Ram氏の許諾を受けることなく、MGCWPやDhiraaj Raja Ram氏の存在を十分に理解、認識している者によって、悪意の意図をもって出願されたものである。」旨を、主張している。
しかしながら、本件商標権者は、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー氏の設立した団体であることからすると、この問題は、同氏を中心とした関係者間による商標権の帰属等をめぐる問題であり、あくまでも、当事者同士の私的な問題として解決すべきものであるから、このような問題は、商標制度に関する公的な秩序の維持を図る商標法第4条第1項第7号の規定にかかわる問題と解することはできない。
よって、申立人の主張は、採用することができない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する商標と認めることはできない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲 本件商標の指定商品及び指定役務
第16類「Paper;cardboard;charts,wall charts and printed informational cards in the fields of astrology,divination,health and fitness,wellness,prevention oriented health care,meditation,relaxation,mindfulness,aromatherapy,management,personal development,self-improvement,consciousness based education and motivation;bookbinding material;stationery;artists’ materials;bookends;greeting cards;loose-leaf binders;writing implements;stickers.」
第44類「Medical services;hygienic and beauty care for human beings or animals;massage services;information services relating to massage;services rendered by a dietician;dietary and nutrition guidance;health clinic services;meditation services,namely therapy services;energy healing services,namely,stress management and stress reduction counselling for individuals to enhance their lives;physical therapy evaluation,identification,and management of movement dysfunction to restore,maintain,and promote optimal physical function preventing the onset,symptoms and progression of impairments,functional limitations,and disabilities resulting from disease,disorders,conditions,or injuries;stress management services,namely information relating to behavioural modification and stress management;conducting telephone and in-person personal lifestyle wellness assessments [physical and mental health services];consultancy services relating to personal behaviour,for therapeutic purposes;consulting in the field of health and wellness to bring about personal happiness;personal therapeutic services relating to muscle re-education;personal therapeutic services relating to circulatory improvement;personality assessment services;providing healthy lifestyle and nutrition services,namely,personal assessments,personalized routines,maintenance schedules,and counselling;providing wellness services,namely,personal assessments,personalized routines,maintenance schedules,and counselling.」
異議決定日 2016-10-12 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W1644)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鈴木 雅也薩摩 純一 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 大井手 正雄
中束 としえ
登録日 2013-03-12 
権利者 Maharishi Foundation
商標の称呼 マハリシヤギャ、マハリシヤグヤ、マハリシ、ヤギャ、ヤグヤ 
代理人 岡部 讓 
代理人 柴田 泰子 
代理人 田中 尚文 
代理人 高橋 孝仁 

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