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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W33
審判 全部申立て  登録を維持 W33
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審判 全部申立て  登録を維持 W33
管理番号 1323715 
異議申立番号 異議2016-900137 
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-06-01 
確定日 2016-12-22 
異議申立件数
事件の表示 登録第5831613号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5831613号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5831613号商標(以下「本件商標」という。)は、「TORO D’ORO」の欧文字を標準文字で表してなり、平成27年9月10日に登録出願され、第33類「果実酒」を指定商品として、同28年1月19日に登録査定、同年3月4日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標は、次のとおりである。
登録第1589817号商標(以下「引用商標」という。)は、「CONCHA Y TORO」の欧文字を横書きしてなり、昭和54年3月22日に登録出願、第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同58年5月26日に設定登録され、その後、平成16年8月4日に指定商品を第33類「ぶどう酒,その他の果実酒,洋酒」とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号又は同項第19号に違反して登録を受けたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により取り消されるべきである旨申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第38号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 申立人について
申立人は、1883年に創設されたラテンアメリカ最大のワイン製造メーカーであり、その製品であるワインの輸出先は、145カ国を超える。申立人は、チリ共和国の首都サンティアゴに本社を構えており、チリ共和国、アルゼンチン共和国及びアメリカ合衆国合わせて、総計10,000ヘクタール以上のブドウ畑を所有しており、その従業員数は、およそ3,600名を超える(甲3)。
2 申立人商標の周知性について
申立人は、1883年に創業され(甲4の1)、以来、自己の業務に係るワインに、ハウスマーク「CONCHA Y TORO(コンチャ・イ・トロ)」を継続して使用している。申立人は、様々なワインブランドを展開し、それらのシリーズ化したブランドに、ハウスマークである「CONCHA Y TORO」(以下「申立人商標」という。)を表示している(甲4の2?5)。
近年、我が国においては、チリ産のワインの輸入量が年々増加しており、2015年、チリ産のワインの輸入量は、フランス産を抜き、首位となっている(甲5の1、2)。
その中でも、申立人は、チリ共和国において、ワインの輸出量第1位を誇るワインメーカーであり、チリ共和国におけるワイン輸出量全体の、実に32%のシェアを占めている(甲6)。
また、ワインの売上額でみると、2014年は、およそ1,080億円(米国ドル=108円で換算)、12本入りケースの個数でみると、およそ3,400万ケースの売上実績を上げ、これは、世界のワインメーカーの中でも、第5番目の規模である(甲6)。加えて、申立人の所有する、10,000ヘクタールを超えるブドウ畑の敷地面積は、世界で第2番目の規模である(甲6)。
このように、ワインの輸出額、売上額、ブドウ畑の面積等で世界有数の規模を誇る世界的ワインメーカーである申立人は、145カ国を超える地域で愛飲されており、世界各地で高く評価されている。
例えば、英国に拠点を置くブランド評価会社が発表する2015年度のスピリッツ・ワインに係るブランド評価レポートにおいて、申立人は、「MOST POWERFUL WINE BRANDS」として、2年連続で第1位に選出されている(甲6、甲7の1、2)。また、英国のアルコール飲料専門業界紙で、申立人は、2015年度の「International Best Drinks Company of the Year」を受賞している(甲6、甲8)。
その他、食料雑貨商、卸売業者、コンビニ業界からの投票によって選出する英国の「Grocer Gold Awards 2016」において、申立人は、2016年度の「Branded Alcohol Supplier of the Year」として選出されている(甲9)。また、同賞において、申立人の人気ブランドの1つである「Casillero del Diablo」が「Drinks Brand of the Year」を受賞している(甲10)。
上述のとおり、申立人及び申立人の製造・販売するワインは、世界各地で高く評価されており、さらに、わが国においても、例えば、日本最大級のワイン審査会である、第3回「サクラアワード」(2016年度)において、申立人の製造・販売する多くのワインが受賞している(甲11の1、2)。
上述のとおり、チリ産ワインの輸入量がフランスを抜き、首位になったことからも伺えるように、近年、わが国において、チリ産ワインは、その高い品質と手頃な値段から非常に注目を集めており、様々なワイン業界紙・専門誌、あるいは、その他の雑誌において、申立人及び申立人のワインが紹介されている。
申立人の人気ブランドの1つである「カッシェロ・デル・ディアブロ」の販売においては、各地のスーパーマーケットの酒売り場において大々的に販売促進キャンペーンを行っている。具体的には、「カッシェロ・デル・ディアブロ」シリーズ専用のディスプレイコーナーや、バナー、ポスター、POP広告等を利用して、申立人のワインの周知活動を積極的に行っている(甲18)。
このように、申立人商標を付したワインは、本件商標が出願された平成27年(2015年)9月10日以前から大量に輸入されていたことが認められ、申立人のワインは、業界紙等、種々の媒体において記事として取り上げられている。
さらに、申立人及びその販売代理店等のたゆまない営業努力により、申立人商標は、日本におけるワイン愛好家、取引者及び需要者の間において、申立人のハウスマークとして広く親しまれることとなり、現在においても、日本へ大量の輸出が継続して行われている。よって、周知性を失うような事情は見受けられない。
上述のとおり、申立人商標は、本件商標の出願前(平成27年9月10日)には、「ワイン」を示す名称として、日本におけるワイン愛好家、取引者及び需要者の間において、広く知られていたことが明らかである。
3 商標の類似性について
(1)本件商標について
本件商標は、欧文字「TORO D’ORO」を横一列に配してなる。本件商標中、構成文字「TORO」の語は、「雄牛」を意味するイタリア語であり(甲19)、構成文字「D’ORO」の語は、「金色の、貴重な」を意味するイタリア語である(甲20)。構成文字「TORO」と構成文字「D’ORO」の間には約1文字分のスペースが配されている。
ここにおいて、本件商標の構成後半の「D’ORO」の文字は、「ワイン」を取り扱う業界において、その商品の品質が「高級、優秀」であることを表示する、ある種の誇称表示として普通に使用されている実情が認められる。
本件商標中、構成後半「D’ORO」の文字は、「ワイン」を取り扱う業界において、ワインの名称、ワイナリーの名称、ワイン専門店の名称として普通に使用されており(甲21?甲30)、簡易迅速を尊ぶ商取引の実際においては、取引者・需要者によって無意識に捨象されてしまう可能性が高く、取引者・需要者は、本件商標の構成前半「TORO」を出所標識として認識し、取引にあたる可能性が高い。
すなわち、本件商標において、「D’ORO」は「TORO」に比して自他商品識別力が弱く、本件商標の要部は、「TORO」であると考えられる。
本件商標は、識別力の軽重に大きな差があり、「TORO」の方に強い識別力が認められ、本件商標の要部は、「TORO」である。
よって、本件商標からは、要部の構成文字「TORO」に相応して「トロ」の称呼が生じるとともに、観念においては、「雄牛」が想起されるものである。
(2)申立人商標について
申立人商標は、欧文字「CONCHA Y TORO」を同書同大同間隔にて横一列に配してなる。申立人商標中、「CONCHA」の語は「貝殻」等を意味するスペイン語(甲35)であり、「Y」の語は並列を表す接続詞であり、日本語の「?と」や英語の「&」に相当するスペイン語である(甲36)。「TORO」の語は「雄牛」を意味するスペイン語又はイタリア語である(甲37)。
ここにおいて、上記3語の間には、それぞれ約1文字分のスペースが配されており、申立人商標の真ん中に位置する「Y」の文字は、上述のとおり、日本語の「?と」、又は、英語の「&」に相当する語であるため、識別力は弱い。すなわち、申立人商標は、全体構成において、「A+B」という構造を有しており、スペースを含めて全体で13文字構成である申立人商標は、一目で認識が可能なほど、格別に簡潔であるとはいえず、簡易迅速を尊ぶ商取引の実際においては、取引者・需要者によって、「+」としての機能を有する「Y」と「Y」の両側に位置する語「A」及び「B」のうち、何れかが無意識に捨象され、取引者・需要者は、申立人商標の構成中の「CONCHA」又は「TORO」を出所標識として認識し取引にあたる可能性が少なからずある。
そうすると、申立人商標は、商標全体として自他商品識別力を発揮する場合の他に、「Y」の文字を挟む「CONCHA」と「TORO」各々が、それぞれ、申立人商標の要部として自他商品等識別力を発揮する可能性があると考えられる。
したがって、申立人商標から生じ得る観念については、「貝殻と雄牛」が想起される場合の他、「貝殻」のみ、「雄牛」のみが想起される場合も考えられる。そして、申立人商標から生じ得る称呼は、「コンチャイトロ」、「コンチャ」及び「トロ」である。
(3)商標の対比
本件商標は、構成文字の間で、識別力の軽重に大きな差があり、「TORO」に強い自他商品識別力が認められるため、本件商標の要部は「TORO」と考えられる。一方で、申立人商標は、商標全体として自他商品識別力を発揮する場合の他に、「CONCHA」又は「TORO」が自他商品識別力を発揮する場合が考えられる。
そして、両商標は、要部を「TORO」とした場合に、外観、観念及び称呼を同一にするため、近似する商標であるといえる。本件商標に係る指定商品「果実酒」は、申立人商標にかかる商品「ワイン」の上位概念であり、近似するものである。
したがって、本件商標は、申立人商標に類似するものである。
4 商標法第4条第1項第11号について
引用商標は、申立人商標と実質同一の文字構成・文字配列であり、ワインを意味する「ぶどう酒」を含む指定商品に関するものである。すなわち、本件商標と引用商標は互いに類似するものである。
そして、引用商標は、本件商標の出願日(平成27年9月10日)より前に出願された登録商標であり、本件商標に係る指定商品は、引用商標に係る指定商品と同一又はこれに類似する商品について使用をするものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
5 商標法第4条第1項第10号について
上述のとおり、申立人商標は、「ワイン」との関係において、申立人の業務に係るものを示すものとして、取引者・需要者の間に広く認識されている実情が認められる。そして、申立人商標と本件商標は、構成文字の「TORO」を要部とする点で共通し、よって、両商標は、外観、観念及び称呼において、相紛らわしいものである。
すなわち、本件商標は、申立人商標に類似する商標であって、その商品又はこれに類似する商品について使用するものである。
上記の点から、本件商標が「ワイン」について使用され、日本市場において取引に資される場合には、取引者・需要者に出所の混同を生じせしめるおそれが極めて高い。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
6 商標法第4条第1項第15号について
(1)申立人商標は、申立人のハウスマークであり、1883年の創業以来、申立人の業務に係るワインの出所識別標識として、申立人に使用されており、申立人及びその輸入販売店等による、たゆまない販売促進活動及び営業努力の成果により、現在までに、ワインの取引者・需要者の間において広く知られていることは上述のとおりである。そして、本件商標の出願・査定前までに、申立人の業務に係る商品の名称として、広く親しまれていたことは明らかである。
(2)本件商標は、(ア)その外観、観念及び称呼が、申立人商標と近似し、かつ、(イ)申立人商標が「ワイン」を示す名称として周知であること、(ウ)申立人は、チリ産ワインのワインメーカーとして世界的に評価が高いこと、(エ)申立人の業務に係るワインは、「ワイン」の愛好者、取引者及び需要者の間において強い顧客吸引力を発揮していること、を総合的に勘案すると、本件商標が「ワイン」に使用された場合には、「ワイン」の取引者・需要者は、本件商標に係る商品について、申立人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の取引者・需要者が商品の出所について混同するおそれがあることは明らかである。
また、本件商標に係る指定商品は、大量消費財であり、取引者・需要者の注意力も格別高いと認められる事情も見受けられない。
(3)上述のとおり、申立人商標の周知性及び取引者・需要者の商品に対する注意力の程度とが相俟ることにより、本件商標に接した取引者・需要者は、本件商標に係る商品について、申立人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同するおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
7 商標法第4条第1項第19号について
上述のとおり、「ワイン」業界において、申立人及び申立人の商品は、世界中で広く知られており、ワイン製造・販売に関わる業務を行う商標権者は、本件商標の出願前より、申立人商標を知悉していたことは明らかである。
このように、本件商標権者が、申立人商標の顧客吸引力を利用し、申立人が継続して使用する商標と酷似する商標を、自己の「ワイン」について使用する行為は、申立人商標の顧客吸引力を利用(フリーライド)したブランド商品を市場に蔓延させることとなり、その結果として、申立人が長年の営業努力によって築いた当該商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等の毀損を招来させる。
すなわち、本件商標権者は、申立人商標の顧客吸引力を利用(フリーライド)することを意図して、本件商標を取得したことは明らかであって、不正の目的をもって使用するものである。
以上のとおり、申立人商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されており、また、本件商標は、申立人商標と類似しており、そして、不正の目的をもって使用をするものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
8 商標法第4条第1項第7号について
上述のように、申立人商標は、「ワイン」に関する主たる取引者・需要者の間で広く知られている。
そして、本件商標は、申立人商標と近似する文字部分「TORO」が要部となるものである。
このような本件商標を、申立人とは何ら関係を有しない他人である本件商標権者が使用することは、本来自らの営業努力によって得るべき業務上の信用を、申立人商標の著名性にただ乗り(フリーライド)することにより得ようとすることにほかならず、申立人商標に化体した莫大な価値を希釈化させるおそれがある。よって、本件商標を不正の目的をもって使用し、申立人商標が持つ顧客吸引力等にただ乗りしようとする意図があると推認することは至極妥当である。このような行為は、社会公共の利益に反し、社会の一般道徳観念に反するので、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 当審の判断
1 申立人商標の周知性について
(1)申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 甲第4号証の1は、日本リカー株式会社のウェブページである(2016年8月31日プリントアウト)ところ、そこには、「チリNo.1ワイナリーのコンチャ・イ・トロ」の見出しの下、「1883年、スペインの名門貴族コンチャ家のドン・メルチョー氏が、世界有数のワイン銘醸地ボルドーからブドウの苗をチリへ持ち込み、ブドウ栽培に最適な気候を持つマイポ・ヴァレーにブドウ畑を開拓し、コンチャ・イ・トロの基礎を築きました。」との記載がある。
イ 甲第4号証の2は、キリン株式会社のウェブページである(2016年8月31日プリントアウト)ところ、そこには、「コンチャ・イ・トロ それは、チリNo.1ワイナリー。」の見出しの下、「1年のほとんどが晴れるという理想的な環境のチリのブドウ産地に、コンチャ・イ・トロが自社で保有する畑面積は、合計9,000ヘクタール以上。優れた栽培技術、130年以上の歴史に培われた醸造技術と、熱い情熱の融合によって生み出される世界トップ水準のワインは、今日も世界中のみなさまに楽しまれています。」、「コンチャ・イ・トロは、1969年創設のイギリス有名ドリンク雑誌(ドリンクス・インターナショナル)に2011、2012、2013年の3年連続『世界で最も称賛されるワインブランド』に選出されました。」との記載がある。
ウ 甲第4号証の3ないし5は、キリン株式会社のウェブページである(2016年8月31日プリントアウト)ところ、そこには、商品「ワイン」の写真が掲載されており、商品ラベルの下部に「CONCHA Y TORO」の表示がある。
エ 甲第5号証の1は、2016年2月8日付けの日経ビジネスオンラインのウェブページであり、甲第5号証の2は、2016年1月28日付けのワイン&スピリッツ専門誌「ウォンズ」のウェブページであるところ、我が国における2015年のワイン輸入量について、チリ産のワインがフランス産のワインを超えてトップになった旨の記載がある。
オ 甲第6号証は、英語で記載された申立人の「CORPORATE PRESENTATION 2016」と題するプレゼンテーション資料であるところ、申立人ワインは、チリ共和国におけるワイン輸出量の32%のシェアを占めていること、ワイン売上量について、2014年は、およそ1,080億円(米国ドル=108円で換算)、12本入りケースの個数は、およそ3,400万ケースの売上であったことが記載されている。
カ 甲第6号証は、申立人のプレゼンテーション資料であり、甲第7号証ないし甲第10号証は、いずれも英語で記載された雑誌又はウェブページであり、これらには、申立人又は申立人ワインに関する賞が紹介されているところ、申立人ワインが2015年に「MOST POWERFUL WINE BRAND」に、申立人が「International Best Drinks Company of the Year」を受賞したこと(甲6、甲7の2、甲8)、2016年にイギリスのロンドンにおいて賞を受賞したこと(甲9,甲10)が認められる。
キ 甲第11号証ないし甲第17号証は、我が国において申立人又は申立人ワインに関する紹介などが記載されたウェブページ、新聞記事、雑誌記事であるが、いずれも本件商標の登録出願日及び登録査定時より後のものであるか、掲載時期が不明なものである。
(2)以上によれば、申立人は、1883年に創業され、自己の業務に係る商品「ワイン」に「CONCHA Y TORO」の文字を使用していること、申立人が主張するチリ共和国におけるワイン輸出量全体のシェアや2014年の売上実績(甲6)、そして、申立人が130年以上の歴史のあるワイン生産者であり、チリNo.1ワイナリーと紹介されていること(甲4の1、2)、また、例えば、イギリスのドリンク雑誌に2011、2012及び2013年の3年連続で「世界で最も称賛されるワインブランド」に選出されたこと(甲4の2)などからすれば、引用商標は、申立人及び申立人ワインを表示するものとして、チリ共和国の需要者の間に相当程度知られていたとみるのが相当である。
しかしながら、我が国の2015年のワイン輸入量において、チリ産がフランス産を超え第1位であった(甲5)という状況が認められるとしても、申立人商標に関し、我が国における商標の使用開始日、商品の販売数量などの取引実績を客観的に把握し得る証左や、本件商標の登録出願日前における新聞、雑誌等による広告内容や広告費等についての実情を具体的及び量的に把握し得る証左は提出されていない。
そうすると、申立人の提出にかかる証拠をもって、申立人商標が本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品であることを表示するものとして、我が国の需要者の間に広く知られていたとは認められない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり、「TORO D’ORO」の欧文字を標準文字で表してなるところ、該文字は、「TORO」の文字と「D’ORO」の文字との間に1文字程度のスペースを有するが、同一の書体をもって、同一の大きさで、まとまりよく表されているものである。また、その構成中の「TORO」の文字が「雄牛」の意味を有するイタリア語又はスペイン語であり、「D’ORO」の文字が「金色の、貴重な」の意味を有するイタリア語であるとしても、我が国でのイタリア語及びスペイン語の普及度を考慮するといずれも本件指定商品の需要者間に馴染まれた語であるとは認められないものである。
そうとすれば、本件商標は、その構成文字全体をもって、一種の造語として認識されるとみるのが相当であり、また、一般的に、特定の意味を有さない欧文字からなる造語にあっては、我が国において親しまれた外国語である英語読みをもって称呼されるとみるのが自然である。
したがって、本件商標は、「TORO D’ORO」の構成文字全体から「トロドロ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないというのが相当である。
(2)引用商標について
引用商標は、「CONCHA Y TORO」の欧文字を横書きしてなるところ、該文字は、「CONCHA」、「Y」、「TORO」の各文字との間に1文字程度のスペースを有するが、同一の書体をもって、同一の大きさで、まとまりよく表されているものである。また、その構成中「CONCHA」の文字が、「貝殻」の意味を有するスペイン語であり、「TORO」の文字が、「雄牛」の意味を有するスペイン語又はイタリア語であり、そして、「Y」の文字が、日本語の「?と」や英語の「&」に相当するスペイン語であるとしても、我が国でのスペイン語及びイタリア語の普及度を考慮するといずれも本件指定商品の需要者間に馴染まれた語であるとまでは認められない。
してみると、引用商標は、その構成文字全体をもって、一種の造語として認識されるとみるのが相当であり、本件商標と同様に英語読みをもって称呼されるとみるのが自然であるから、「コンチャワイトロ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないというのが相当である。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標は、それらの構成上、明らかに区別し得る差異を有するものであるから、外観において相紛れるおそれはない。
そして、本件商標と引用商標の称呼については、上記(1)及び(2)のとおり、本件商標からは「トロドロ」の称呼が生じ、また、引用商標からは「コンチャワイトロ」の称呼が生じるところ、両称呼は、構成音数、構成音に明確な差異を有するものであり、互いに聴き誤るおそれはないとういうべきであるから、両商標は、称呼において相紛れるおそれはない。
また、本件商標と引用商標は、上記(1)及び(2)のとおり、いずれも特定の観念が生じないものであるから、観念において相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(4)まとめ
本件商標と引用商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第10号及び同項第15号該当性について
上記2のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、引用商標と同一の文字からなる商標と認められる申立人商標もまた本件商標とは非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
また、上記1のとおり、申立人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品であることを表示するものとして、我が国の需要者の間に広く知られていたといえないものであるから、本件商標は、これをその指定商品について使用したとしても、これに接する需要者が、これから申立人商標ないしは申立人を連想、想起するようなことはなく、該商品が申立人又は申立人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生じるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標は、上記3のとおり、申立人商標とは非類似の商標であり、申立人商標は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品であることを表示するものとして、我が国の需要者の間に広く知られていたといえないものである。
また、申立人商標がチリ共和国において相当程度知られていたとしても、本件商標と申立人商標とは、類似しない別異の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号の該当性の要件を欠くものである。
さらに、申立人の提出に係る証拠のいずれをみても、商標権者が本件商標を申立人商標に化体した信用、名声、顧客吸引力などを毀損させ、その出所表示機能を希釈化させるといった不正の目的をもって使用すると認めるに足る事実は、見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人商標は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品であることを表示するものとして、我が国の需要者の間に広く知られていたといえないものであり、また、本件商標と申立人商標とは類似しない別異の商標であるから、商標権者が、申立人商標に化体した信用等にただ乗り(フリーライド)し、不正の利益を得るために使用する目的で出願するなど、本件商標の出願の経緯等に著しく社会的相当性を欠くものがあるということはできず、商標権者による本件商標の使用が、商取引の信義則に反するものともいえない。
さらに、本件商標は、上記第1のとおりの構成からなるものであって、それ自体何らきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるものではなく、また、本件商標をその指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するものとすべき事由はなく、かつ、他の法律によってその使用が禁止されているものとも認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
6 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2016-12-14 
出願番号 商願2015-87529(T2015-87529) 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W33)
T 1 651・ 222- Y (W33)
T 1 651・ 263- Y (W33)
T 1 651・ 271- Y (W33)
T 1 651・ 25- Y (W33)
T 1 651・ 262- Y (W33)
T 1 651・ 261- Y (W33)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 松江 
特許庁審判長 大森 健司
特許庁審判官 土井 敬子
原田 信彦
登録日 2016-03-04 
登録番号 商標登録第5831613号(T5831613) 
権利者 ソシエダード アグリコラ レキングア リミターダ
商標の称呼 トーロドーロ、トーロ、ドーロ、オーロ、オオアアルオオ 
代理人 土生 真之 
代理人 杉村 憲司 
代理人 大塚 啓生 
代理人 中山 健一 
代理人 中村 仁 

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