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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W33 |
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管理番号 | 1323664 |
審判番号 | 無効2016-890035 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2016-05-30 |
確定日 | 2016-12-26 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5499969号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第5499969号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5499969号商標(以下「本件商標」という。)は、「シャンパークリング」の文字を標準文字で表してなり、平成24年1月10日に登録出願、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同年5月11日に登録査定、同年6月8日に設定登録されたものである。 第2 請求人の主張の要点 請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由の要旨を以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第48号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 無効事由 本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから、本件商標の登録は、同法第46条第1項第1号により、無効とされるべきものである。 2 無効原因 (1)原産地統制名称又は原産地表示としての「シャンパン(CHAMPAGNE)」 ア 原産地統制名称又は原産地表示の統制と保護 (ア)請求人の一方である「コミテ アンテルプロフェッショネル デ ヴァン ドゥ シャンパーニュ」(以下「CIVC」という。)は、「シャンパーニュ地方ぶどう酒生産同業委員会」を意味するものであって、フランス国シャンパーニュ地方における酒類製造業者の利益の保護を目的の1つとして設立されたフランス法人である(甲2?甲5、甲24、甲33)。 また、請求人のもう一方である「アンスティテュ ナショナル ドゥ ロリジン エ ドゥ ラ カリテ」(以下「INAO」という。)は、「国立原産地・品質研究所」を意味するものであって、2007年1月のフランスの法改正により、1935年設立のフランス公法人である「アンスティテュ ナショナル デ ザペラシオン ドリジン」(フランス国立原産地品質研究所)から組織変更されたものであり、その設立以降、フランス国内及び国外において、フランスにおける原産地統制名称の保護をその活動の大きな柱の1つとして取り組んでいる。 (イ)フランス国においては、原産地統制名称又は原産地表示が厳格に統制されており、その中核をなすのが、1935年に制定された原産地統制呼称法である(甲6?甲8、甲14、甲15、甲18、甲25の5(215頁)、甲33、甲37)。この法律は、優れた産地のぶどう酒を保護・管理することを目的とし、政府の機関であるINAOによって運用されている(甲2、甲9、甲34の2、甲37、甲38)。同法において、原産地統制名称ぶどう酒(A.O.C.)は、原産地、品質、最低アルコール含有度、最大収穫量、醸造法等の様々な基準に合うように製造されなければならず、その基準に合格して初めてA.O.C.名称を使用することができるが、鑑定試飲会の際に不適当であるとみなされたものは、その名称を使用する権利を失うことになっており、厳格な品質維持が要求されている。原産地統制名称は、産地の名称を法律に基づいて管理し、生産者を保護することを第一の目標とし、また、名称の使用に対する厳しい規制は、消費者に対して品質を保証するものとなっている。 (ウ)ヨーロッパにおいては、限られた地域で特定の材料・製法により生産される農産物等の伝統的特産物が数多く存在している。かかる伝統的特産物には、他の地域の産物との区別のために産地名が使用され、特に良質な産品であって国際的に名声を得たものについては、その産地を保護する必要性が生じてきたことから、ヨーロッパ連合は、1992年に農産物の原産地表示保護のための理事会規則2081/92号を制定した。本規則で保護される原産地表示は、本規則にて定められた品目に限られ、EC委員会において審査された後、「保護地理的表示」ないしは「保護原産地呼称」として登録された場合に、本規則の保護対象となり、ヨーロッパ全土で保護される。なかでも、「保護原産地呼称」として認定されるためには、定められた製法で生産・加工・調整されることを要するといった非常に厳格な基準が設けられている。上記のとおり、ヨーロッパでは、原産地表示保護のための独自の制度を設けることにより、原産地表示を手厚く保護している(甲10)。「Champagne」(シャンパン)は、最も厳しい基準を要求される「保護原産地呼称」として認定され、ヨーロッパにおいて保護されている(甲11)。 イ 「シャンパン」の表示の著名性及び顧客吸引力 (ア)「シャンパン」(CHAMPAGNE)は、原産地統制呼称法による原産地統制名称であり、シャンパーニュ地方産の発泡性ぶどう酒にのみ使用を許される名称であって、この表示を付した商品(シャンパン)は、我が国においても、高品質で稀少価値を有する商品として広く販売されており、産地を表示する標章の代表的な1つとして極めて著名となっている(甲12?甲37)。 そうすると、「CHAMPAGNE(シャンパン)」は、a)フランス北東部の地名であって、同地で作られる発泡性ぶどう酒をも意味する語であり、b)生産地域、製法、生産量等の所定の条件を備えたぶどう酒についてのみ使用できるフランス国の原産地統制名称であり、c)「CHAMPAGNE」を表す邦語として「シャンパン」が普通に使用されており、d)シャンパンが発泡性ぶどう酒を代表するほど世界的に著名であり、e)我が国における数多くの辞書、事典、書籍、雑誌又は新聞等がシャンパンの説明に多くの紙面を割いていることなどを総合すると、我が国において、「CHAMPAGNE(シャンパン)」の表示は、「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして、一般需要者の間に広く知られており、当該表示には多大な顧客吸引力が備わっていることが明らかである。 (イ)CIVC及びINAO(以下、両者を合わせて「請求人ら」という場合がある。)は、フランス国とともに、「シャンパン」の表示が有する上記著名性及びそれに伴う顧客吸引力の維持のために永年努力を重ねてきた。すなわち、国内外の取引者、需要者が想起する「シャンパン」の表示の信頼性や評判を損なわぬよう、シャンパーニュ地方のぶどう生産者やぶどう製造業者を厳格に管理・統制し、厳格な品質管理・品質統制をして、これらの者と関係のない他人が「シャンパン」を無断で使用又は登録することにより、請求人らやシャンパーニュ地方のぶどう生産者やぶどう製造業者らの努力により蓄積・維持されてきた「シャンパン」の表示のイメージが毀損されることを防止するための活動を積極的に行ってきた。 このような請求人らの努力により、「シャンパン」の表示は、現在までの長きにわたり、著名性を保ち続け、高い名声、信用、評判が形成されているものであり、ぶどう酒の商品分野に限られることなく、一般消費者に至るまで、多大な顧客吸引力が化体するに至っている。 (2)商標法第4条第1項第7号該当性 ア 商標法第4条第1項第7号の趣旨 (ア)商標法は、不正競争防止法と並ぶ競業法であって、登録商標に化体された営業者の信用の維持を図るとともに、商標の使用を通じて商品又はサービスに関する取引秩序を維持することを目的とされている。そして、商標法第4条第1項第7号は、上記目的を具現する条項の1つであり、過去の裁判例や特許庁の審決によれば、その商標の構成自体がきょう激、卑わいな文字、図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも、その時代に応じた社会通念に従って検討した場合に、当該商標を採択し、使用することが、社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反する場合、あるいは他の法律によってその使用が禁止されている商標、若しくは国際信義に反するような商標である場合も含まれるものとみるのが相当と解されている(甲38、甲39等)。 (イ)知的財産高等裁判所の平成18年9月20日判決(甲40)は、いかなる商標が商標法第4条第1項第7号の公序良俗に反するかにつき、a)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、c)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、d)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきであるとして、上記5つの具体的事情を考慮して検討すべきとの指針を示している。 また、上記判決は、どのような商標登録が特定の国との国際信義に反するかどうかについても、「当該商標の文字・図形等の構成、指定商品又は役務の内容、当該商標の対象とされたものがその国において有する意義や重要性、日本国とその国の関係、当該商標の登録を認めた場合にその国に及ぶ影響、当該商標登録を認めることについての日本の公益、国際的に認められた一般原則や商慣習等を考慮して判断すべきである。」と判示している。 イ 著名な原産地名称については保護すべきであること (ア)著名商標の保護については、従前から、周知・著名商標の保護の明確化の要請が高まってきたことに伴い、国内又は外国において広く認識されている商標が不正な目的で使用されることを防ぐことを目的として、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)により、商標法第4条第1項第19号の規定が不登録事由として設けられたところ、特許庁の「商標審査便覧」において、当該規定の趣旨について、「多年に亘って企業が努力を積み重ね、多大な宣伝広告費を掛けることにより、需要者間において広く知られ、高い名声、信用、評判を獲得するに至った周知、著名な商標は、十分に顧客吸引力を具備し、それ自体が貴重な財産的価値を有するものといえる。これらの周知、著名商標については、第三者の使用により出所の混同のおそれまではなくとも、出所表示機能を希釈化させたり、その周知、著名商標の持つ名声を毀損させることが可能であり、このような目的を持った不正な使用から十分保護する必要がある。」と説明されている。 (イ)「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の文字は、上述したとおり、著名なフランスの原産地統制名称として、その使用が厳格に管理・統制されているものであって、請求人らによる永年にわたる厳格な品質管理・品質統制の努力の結果、高い名声、信用、評判が形成されているものであり、ぶどう酒の商品分野に限られることなく、一般消費者に至るまで、世界的に著名な原産地名称として広く知られている。 原産地名称は、商品が産出された土地の地理的名称をいい、商標とは地理的名称に限定されること及びその商品の品質、社会的評価、その他の特性が、産出地固有の気候、地味等の自然条件又は産出地の人々が有する伝来の生産技術、経験若しくは文化等の人的条件といった地理的要因に基づくこと等の点において異なるが、商標とは、商品の出所表示機能、品質保証機能及び広告機能を有する点において、共通するものと考えられる。そうすると、原産地名称のうち、著名な標章については、著名商標の有するこれら機能が商標法によって保護されているのと同様に保護されることが望ましいというべきである(甲42の2)。 してみれば、商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれのある商標」には、著名な原産地名称を含む表示からなる商標を同法第4条第1項第17号によって商標登録を受けることができないとされているぶどう酒又は蒸留酒以外の商品に使用した場合に、当該表示へのただ乗り(フリーライド)又は当該表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがある等、公正な取引秩序を乱すおそれがあると認められるものや国際信義に反すると認められるものも含まれると解すべきである。 したがって、著名な原産地名称を原産地と離れた特定個人又は企業が自己の商標として登録し、使用することは、商標法第4条第1項第7号に該当するものとして、認められるべきではなく、商標法の下、著名な原産地名称については保護されるべきである。 ウ 本件商標について 本件商標は、「シャンパークリング」の片仮名を標準文字で表してなるものであり、当該文字に相当する既成の語は存しないと思料するところ、被請求人は、本件商標を商品名とする自己の商品を「ワイン感覚スパークリング梅酒」として製造、販売していることから、本件商標の構成中の「パークリング」の文字部分は、「スパークリングワイン」に通じる「スパークリング」の第2文字以降を採択したものと推察される(甲1の2)。 しかしながら、「Champagne(シャンパン)」は、発泡性ワイン(スパークリングワイン)の中でもフランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ワインについてのみ使用が認められているものであるから、「Champagne(シャンパン)」は、概念上、「スパークリングワイン」に含まれるものである。 また、本件商標の構成中の「シャンパ」の文字部分は、「CHAMPAGNE」の片仮名表記に相当する「シャンパン」の語頭から4文字に当たり、同じく、「シャンパー」の文字部分は、「CHAMPAGNE」のフランス語読みに相当する「シャンパーニュ」の語頭から5文字と同一のものである(甲1)が、アルコール飲料の分野において、「シャンパン」や「シャンパーニュ」以外に、一般に知られている「シャンパ(ー)」で始まる語は存しない。 そうすると、本件商標は、その構成中の語頭から4文字の「シャンパ(ー)」が「シャンパン(CHAMPAGNE)」を意味する部分として無理なく受け取られるから、本件商標からは、「シャンパン(CHAMPAGNE)」と「スパークリングワイン(発泡性ワイン)」という近似した2つの観念が生じるというべきである。 エ 本件商標が国際信義に反すること (ア)被請求人は、自己のウェブサイトにおいて、本件商標を使用した商品を掲載しているところ、その商品説明において、「心地よい炭酸感で、スパークリングワインを連想させる絹の様な細かい泡感をお楽しみいただけます。」や「パッケージは、スパークリングワインと梅酒を想像させるようなゴールドを基調とし、上下に梅のイラストを配置。細やかな泡が底からプクプクと立ちのぼり、心地よい炭酸感を想像させます。」といった記述をしており、その商品のパッケージには、シャンパングラスに注がれた同商品が現されている(甲1の2)。 (イ)既述のとおり、「Champagne(シャンパン)」が、概念上、「スパークリングワイン」に含まれるものであることは、シャンパンやスパークリングワインの愛飲者でなくとも、我が国においても広く一般に知られている事実であり、少なくとも、被請求人は、アルコール飲料(梅酒)の製造販売業者(甲1の2)であるから、シャンパンがスパークリングワインの中でもフランスのシャンパーニュ地方で作られるものについてのみ使用が認められているものであって、概念上、スパークリングワインに含まれるものであることを知らないはずはない。 また、「シャンパン(Champagne)」が細やかでエレガントな泡立ちを有する発泡性ワインとして広く一般に知られていることも顕著な事実(甲26の3、甲26の4等)であるから、「心地よい炭酸感で、スパークリングワインを連想させる絹の様な細かい泡感」や「細やかな泡が底からプクプクと立ちのぼり、心地よい炭酸感を想像させます。」といった記述は、「スパークリングワイン」を超えて、「シャンパン(Champagne)」を想起させる記述であり、現に本件商標を使用した商品を試した一般消費者が、同商品を「シャンパンのような梅酒」と評する書き込みをした事実がある(甲1の3)。 さらに、「スパークリングワインと梅酒を想像させるようなゴールドを基調」にするというパッケージの説明についても、「ゴールド」の文字は、「金、金色」の意味を有する外来語として親しまれ、商品の色彩表示としてもしばしば用いられる語であり(甲41の22)、とりわけ、特許庁が「シャンパンゴールド」を各種商品の色彩を表示する語として広く一般に使用されていると認めていること(甲41の31)からすれば、上記商品説明にいう「ゴールド」とは、「シャンパンゴールド」の色彩の意味に通じることが合理的に導き出されるといえる。 (ウ)請求人らは、本件商標について、商標法第4条第1項第7号等に違反して登録されたものであるとして、平成24年8月27日付けで商標登録異議の申立てをしたところ、同25年2月28日付け異議決定において、本件商標は、その構成文字全体をもって、「シャンパークリング」とのみ称呼される一体不可分の造語を表したものと認識されるものであるとして、その登録を維持する旨の判断がされた。 しかしながら、「シャンパークリング」が一体不可分の造語であるとしても、本件商標が「シャンパン」と「スパークリングワイン」という近似した2つの観念を想起させるものである以上、本件商標については、「シャンパン」から離れた全く無意味な造語と考えるべき合理的な理由はない。この点について、東京高等裁判所の昭和44年9月2日判決(甲41の32)が、「造語であるが故に、直ちに無意味な語として一体にのみ把握しなければならないという合理的な根拠はな」いと明確に述べていることに照らせば、当該説示は、「シャンパン」と「スパークリング」が一単語化した造語と見てとれる本件商標にもそのまま当てはまり得る(同旨判決として、甲41の33)。 (エ)上記(ア)ないし(ウ)によれば、被請求人は、本件商標の構成中の「シャンパ(ー)」の文字部分を「シャンパン(Champagne)」を想起させるものとして採用したことは明らかであるから、本件商標に接する取引者、需要者が有する通常の注意力としては、当該「シャンパ(ー)」の文字部分に強く印象付けられ、ここから発泡性ぶどう酒又はその著名な原産地統制名称を想起、連想し、著名な原産地統制名称である「シャンパン」という印象をもって取引にあたると考えられ、その商品に対し、「シャンパン」について理解し、認識されているエレガントで高級感あふれる品質を想起し、そうした品質が含まれていないアルコール飲料と比較した優位性を当然に期待する。 (オ)上記(1)イにおいて述べた事実(甲12?甲37)によれば、「シャンパン(Champagne)」は、我が国において、本件商標の登録査定時には著名な原産地統制名称として一般需要者の間に広く知られていたことは明らかであって、著名な原産地統制名称である「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」は、極めて高度な商品の出所表示機能、品質保証機能及び広告機能を有する著名商標と同様に、商標法によって保護されるべきものである。 また、請求人らは、国内外の取引者、需要者が想起する「シャンパン」の表示の信頼性や評判を損なわぬよう、厳格な品質管理・品質統制をし、これらの者と無関係の他人が「シャンパン」を無断で使用ないし登録することで、請求人らやシャンパーニュ地方のぶどう生産者やぶどう製造業社らの努力により蓄積・維持されてきた「シャンパン」の表示のイメージが毀損されることがないように活動を続けてきており、そのような活動により、「CHAMPAGNE(シャンパン)」は、現在まで長期にわたって著名性を保ち続け、高い名声、信用、評判を獲得し、ぶどう酒の商品分野に限られることなく、一般消費者に至るまで、多大な顧客吸引力が化体するに至っている。 さらに、請求人らは、「シャンパン」の表示のイメージが毀損される可能性がある限り、「CHAMPAGNE(シャンパン)」の語をそっくりそのまま含むものに限らず、これをもじった名称や商標等も、「シャンパン」の表示を軽蔑ないし嘲笑するようなものとして、フランス国において不快感などの国民感情を生じさせるおそれがあるため、当然に使用が規制されるべきものと考える。 したがって、本件商標は、上記原産地統制名称の希釈化をきたすおそれがあり、また、フランス国民に不快感などの国民感情を生じさせるおそれもあるため、国際信義に反するといわざるを得ないものである。 オ 裁判例並びに特許庁の異議決定及び無効審決 (ア)知的財産高等裁判所の平成24年12月19日判決(甲38)は、請求人らが被告となったものであり、「飲食物の提供」等を指定役務とする商標「シャンパンタワー」について、「本件商標は、『シャンパンタワー』なる商標であるところ、そのうち『シャンパン』の語が、上記のとおり、『フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒』を意味するものとして、周知著名であり、当該表示には多大な顧客吸引力が備わっていることに照らすと、本件商標からは、『シャンパンタワー』のみならず『シャンパン』という称呼及び観念も生ずるということができる。・・・そして、フランスの法律に基づいて設立された被告は、INAOとともに、『シャンパン』表示が有する上記のような周知著名性や信頼性を損なわないよう、シャンパーニュ地方のぶどう生産者やぶどう酒製造業者を厳格に管理・統制し、厳格な品質管理・品質統制を行ってきた。このような、被告を始めとするシャンパーニュ地方のぶどう生産者やぶどう酒製造業者らの努力により、『シャンパン』表示の周知著名性が蓄積・維持され、それに伴って高い名声、信用、評判が形成されているものであり、フランス及びフランス国民の文化的所産というべきものになっている。(引用略)『シャンパン』という表示は、我が国においても、ぶどう酒という商品分野に限られることなく一般消費者に対しても高い顧客吸引力が化体するに至っていることが認められる。・・・以上のような、本件商標の文字の構成、指定役務の内容並びに本件商標のうちの『シャンパン』の表示がフランスにおいて有する意義や重要性及び我が国における周知著名性等を総合考慮すると、本件商標を飲食物の提供等、発泡性ぶどう酒という飲食物に関連する本件指定役務に使用することは、フランスのシャンパーニュ地方における酒類製造業者の利益を代表する被告のみならず、法律により『CHAMPAGNE』の名声、信用、評判を保護してきたフランス国民の国民感情を害し、我が国とフランスの友好関係にも影響を及ぼしかねないものであり、国際信義に反するものといわざるを得ない。」と判示したものであり、当該判示は、本件審判請求事件における請求人による「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」に関する主張を全面的に認めるものである。 (イ)「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の文字を構成中に含む商標について、その指定商品又は指定役務を問わず、商標法第4条第1項第7号に該当すると判断した特許庁の審決及び異議決定は、多数存在する(甲41の1?甲41の29)。 こうした多数の先例の判断に照らせば、「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の文字を構成中に含む商標は、国際信義に反するものであり、公序良俗に違反するとの登録実務が特許庁において定着しているといえるが、「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」をもじった商標についても、原産地統制名称として著名な「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」を想起させる以上、「シャンパン」の表示に対するただ乗り(フリーライド)及び同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあるばかりでなく、シャンパーニュ地方のぶどう生産者やぶどう酒製造業者はもとより、国を挙げてぶどう酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがあることは明らかであるから、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるとして、公の秩序を害するおそれがあるものといわなければならない。 なお、近年においては、無効審判や登録異議申立てで争われるまでもなく、「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の文字を構成中に含む商標について、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反することから商標法第4条第1項第7号に該当するとして、拒絶査定又は拒絶審決となっている(甲42の1?甲42の23)。 カ 「CHAMPAGNE(シャンパン)」以外の原産地統制名称を含む商標に関する特許庁の判断 原産地統制名称を含む商標については、「CHAMPAGNE(シャンパン)」に限らず、その希釈化を引き起こすおそれや公正な取引秩序を乱すおそれがあるとして、商標法第4条第1項第7号に該当すると判断された先例が多数存在する(甲43の1の1?甲43の10)。 これらの異議決定や審決は、いずれも、当該商標に含まれる原産地名称が、フランス国が国内法令を制定し、INAO等が中心となって統制、保護を図ってきたものであること、当該原産地名称が著名性を獲得したものであることを理由に挙げており、さらに、当該商標をその指定商品等に使用するときは、著名な原産地名称の表示へのただ乗り(フリーライド)や同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあるばかりでなく、生産者及び製造者はもとより、国を挙げてぶどう酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがある等と判断している。 このように、「CHAMPAGNE(シャンパン)」以外の原産地名称を含む商標に対して下された異議決定及び無効審決に照らしても、本件商標をその指定商品に使用した場合、著名性を獲得した原産地名称である「CHAMPAGNE(シャンパン)」の表示へのただ乗り(フリーライド)及び同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあることのみならず、本来、限定された発泡性ぶどう酒にのみ付されるべき同表示が、別の商品又は役務に使用されることによって、同表示の汚染(ポリューション)を生じさせるおそれがあり、また、国を挙げてぶどう酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがあることは明らかというべきである。 したがって、本件商標を登録することは、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがあると判断するのが相当であり、商標法第4条第1項第7号により、取り消すべきものである。 キ 諸外国でのケース 著名な原産地統制名称をもじった商標に対しては、諸外国において、当該名称の名声を毀損するなどとして、登録を拒絶され、又は取消しないし無効とすべき旨の判断が下されており(甲46?甲48)、これらの判断は、本件商標が「シャンパン」と「スパークリング」を一単語化させた造語と考えられることからすれば、本件商標にもそのまま当てはまり得るものである。 また、著名な原産地統制名称である「CHAMPAGNE」がその著名標章の信用へのフリーライドから引き起こされる不利益から保護されるべきであることは、請求人らがフランス、イギリス、スイス等において提訴した事件においても認められている(甲2、甲3、甲8、甲44、甲45)。 ク 小括 以上のとおり、著名な原産地統制名称である「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」は、フランス国の政府機関たる請求人らによる不断の努力によって、高い名声、信用、評判が維持されているものであって、これを容易に想起させ、原産地とかけ離れた特定個人が自己の商標として登録し、使用することは、公序良俗を害するものというべきである。 すなわち、本件商標は、著名な原産地名称である「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の名声を僭用し、「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」に化体している高い名声、信用、評判から不正な利益を得るために使用する目的でなされたものであるから、「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」という表示へのただ乗り(フリーライド)及び同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあり、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるため、商標法によって登録され、保護されるに値しない商標というべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものというべきである。 (3)むすび 以上に述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから、その登録は、同法第46条第1項第1号により、無効とされるべきものである。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、前記第2において述べた請求人の主張に対し、何ら答弁していない。 第4 当審の判断 1 「CHAMPAGNE(Champagne)」及び「シャンパン(シャンパーニュ)」について (1)請求人の主張及び同人の提出に係る甲各号証によれば、以下の事実が認められる。 ア 「Europian Intellectual Property Review」(1994年第4号)において、「この訴訟は、フランスの国営組織the Institut National des Appellations d’Origine(INAO又は国立原産地呼称統制機関)及びthe Comite Interprofessionnel du Vin de Champagne(CIVC又はシャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会)により開始された。INAOの任務は、フランス国内及び海外において原産地統制呼称を促進かつ保護することであり、一方CIVCは、シャンパーニュ地方ワイン製品の専門的利益を防禦する。」の記載がある(甲2)。 イ 「シャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会」(C.I.V.C)において、「シャンパーニュの生産者及び販売者は商業協会の中心で、調和して働いている-シャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会」の記載のほか、「シャンパーニュ名称の司法的保護」として、「INAOと協力して、その活動は2つのレベルを有している:原産地統制名称の保護に関する法律及び規制の創造及び拡大 組織的な監視活動の役割として、全ての主な市場で発見された全ての形態の乱用に対する法的措置」の記載がある(甲3)。 ウ 「シャンパーニュ委員会(CIVC)」(2001年(平成13年)12月13日)において、「フランスの各ワイン生産地に同業委員会がありますが、なかでもシャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会(CIVC)は最も古く、1941年4月21日付法令に基づく法定団体であり、他地方の1968年の法令に基づく委員会よりも強い拘束力をもっています。・・・準公的機関として、シャンパーニュ市場の管理、規制、指導、対外的にはシャンパーニュ原産地の名称の保護を行っています。シャンパーニュメーカーとなるためには、委員会から業者登録番号の交付を受けなければなりません。現在約5200の、すべてのメーカー、醸造元を統率しています。現在年間、約2億9千万本のシャンパーニュがシャンパーニュ地方から出荷されますが、そのうちの約35%が140余カ国に輸出されています。それらのうち主要輸出国上位10カ国に、委員会は外国事務所をおいています。・・・日本事務局は、1992年9月1日に開設されました。 主な目的 1.シャンパーニュ(シャンパンと呼び名も含めて)という名称の保護『シャンパン(シャンパーニュ)と呼べるのは、フランス・シャンパーニュ地方産の発泡ワインだけである』」の記載がある(甲5)。 エ 「1935年7月30日付けフランス国政令『原産地統制呼称法』」において、「原産地統制呼称の認定」に係る第20条に「ワイン、オー・ド・ヴィ原産地名称国立委員会が設立され、これに法人格が与えられる。[国立委員会は1947年7月16日付デクレの規定に従い、ワイン、オー・ド・ヴィ原産地名称国立研究所とする。]」の記載があり、同じく、第21条に「『統制』と言われる原産地名称の部門が設けられる。[改定。1984年11月16日付第84。1008号法律]関係擁護組合の意見を受け、原産地名称国立研究所は名称の権利を与える生産区域を限定し、各原産地統制呼称のワイン及びオー・ド・ヴィが満たすべき諸生産条件を決定する。これらの諸条件とは、特にワインの生産区域、ブドウ品種、生産高、最低天然アルコール純度、栽培方法、醸造方法、蒸溜方法に関するものである。」の記載がある(甲7)。 オ 「農事法典第3章 原産地名称国立研究所」において、「L641-5条」の下、「原産地名称国立研究所は、法人格を有する公立行政機関である。その内訳は以下の通りである。 1.ワイン、オー・ド・ヴィ、シードル、ポワレ(梨酒)、及びシードル、ポワレまたはワインを主原料としたアペリティフ(食前酒)を管轄する国立委員会。」の記載があり、「L641-6条」の下、「原産地名称国立研究所は、フランス及び外国にて、本章に言及する原産地名称の振興及び擁護、本文第II章に言及する保護対象の原産地名称及び保護対象の地理的表示の擁護に貢献する。」の記載がある(甲9)。 カ 「コンサイスカタカナ語辞典」(1996年10月1日、株式会社三省堂発行)において、「シャンパン[フ champagne]」の見出し語の下、「発泡ワインの1種。フランス北東部シャンパーニュ地方産の美酒。・・・シャンパーニュ地方以外でつくられる発泡ワインはスパークリング-ワインと呼んで区別される。」の記載がある(甲12)。 キ 「広辞苑第六版」(2008年(平成20年)1月11日、株式会社岩波書店発行)において、「シャンパーニュ【Champagne】」の見出し語の下、「フランス北東部、パリ盆地東部の地方(州)。ブドウ栽培・シャンペン製造で知名。」の記載があり、「シャンパン【champagneフランス】」の見出し語の下、「発泡性の白葡萄酒。厳密にはフランス北東部シャンパーニュ地方産のものを指す。」の記載がある(甲13)。 ク 「新版 世界の酒事典」(1982年(昭和57年)5月20日、株式会社柴田書店発行)において、「シャンパン(Champagne)」の見出し語の下、「フランスのシャンパーニュ地方でつくられているスパークリング・ワイン。正式の名称をバン・ド・シャンパーニュ(Vin de Champagne)という。世界の各地で、各種のスパークリング・ワインがつくられているが、このうちシャンパンと呼ばれるものは、フランスのシャンパーニュ地方、特にプルミュール・ゾーン(ランヌ山とマルヌ谷との一等地)、ドゥジェーム・ゾーン(マルヌ県のうち一等地以外の村落群)産のスパークリング・ワインにかぎると1911年の法律で定められている。」の記載がある(甲14)。 ケ 「明治屋酒類事典 改訂版」(1988年(昭和63年)8月1日、株式会社明治屋本社発行)において、「Champagne(仏)(英)シャンパン」の見出し語の下、「フランスの古い州の名『シャンパーニュ』をとってワインの名に用いたものである。現在『統制された名称』であって、何ら形容詞を付けないで単に『シャンパーニュ』と称する資格を有するのは、マルヌ県の一定地域のブドウを原料にし、その地域内で、『シャンパン法』でつくった『白』スパークリング・ワインである。最高生産量にも制限があって、それを超えた分には形容詞がつく。」の記載があり、「統制名称」の見出し語の下、「シャンパンは、詳しくは『ヴァン・ド・シャンパーニュ』であるが、『シャンパーニュ』という地名を名乗るには資格がいる。1908年(明治41年)初めて法律ができて、『シャンパーニュ』という名称が『法律上指定された』名となった。・・・要するにシャンパンの条件は1)シャンパン地区の生産であること。2)シャンパン法(ビン内で後発酵を行い、発生したガスをビン内に封じ込める)で製造したものであること。3)白ワインであること。(原料ブドウには黒ブドウと白ブドウとを、メーカーの秘伝の比率で混和するけれど、でき上がりは白ワインである)4)その年度の最高の生産高に制限があること、の4条件を具えなければならない。・・・戦前、わが国でもシャンパンの名称を乱用した歴史があるが、敗戦の結果、サンフランシスコ講和条約の効果として、マドリッド協定に加入を余儀なくされ、以来フランスの国内法を尊重している。」の記載がある(甲15)。 コ 「ワイン紀行」(1991年(平成3年)9月25日、株式会社文藝春秋発行)において、「第IV章 シャンパーニュ村」の見出しの下、「シャンパンは特殊なワインだ。炭酸ガスの泡の出る白ワインである。二回発酵させる、熟成期間が長いなど、人の手が随所に介入して作りあげる“人工”のワインである。瓶に詰めてからも最低一年間は製造元の醸造庫に置くことが義務づけられている。これを怠れば『シャンパン』と呼ばれる資格がない。一年は最低で、三年、四年とゆっくり寝かせ、栓が抜かれる準備が完了してから地上へ送り出される。」の記載のほか、シャンパンの歴史及び製法等を紹介する記載がある(甲16)。 サ 「フランスのワインとスピリッツ」(1987年(昭和62年)、フランス食品振興会(SOPEXA)発行)において、「ワインの分類」の見出しの下、ワインが、EC(欧州共同体)の規則では「指定地域優良ワイン(V.Q.P.R.D.)」と「テーブルワイン」とに分類され、さらに、フランスでは、前者が「原産地統制名称ワイン(A.O.C.)」と「上質指定ワイン(V.D.Q.S.)」に、後者が「ヴァン・ド・ペイ(地酒)」及び「その他のテーブルワイン」に、それぞれ細分類されるものであって、「シャンパーニュ(Champagne)」は「原産地統制名称ワイン(A.O.C.)」に分類されるものであること、及び、「原産地統制名称ワイン(A.O.C.)」が、「上質指定ワイン(V.D.Q.S.)」に比して、その原産地、品種、最低アルコール含有度、最大収穫量、栽培法、剪定、醸造法等がより厳しく規制されており、A.O.C.名称の使用は、そのために要求される様々な基準を満たし、かつ、鑑定試飲会において不適当とみなされない必要があること、などといった記載があり、「シャンパーニュ(CHAMPAGNE)」の見出しの下、シャンパーニュ地方の立地並びにシャンパーニュの歴史及び製法等を紹介する記載がある(甲18)。 シ 「田崎真也のフランスワイン&シャンパーニュ事典」(1996年(平成8年)9月30日、日本経済新聞社発行)において、「PART1-シャンパーニュ」の見出しの下、「私たちはシャンパーニュという言葉を聞いただけで、心が浮き浮きしてくる。それだけシャンパーニュは特別な意味をもったワインなのだ。近頃は日本でもシャンパーニュが本格的にレストランやワインバーで飲まれるようになったのはうれしい限りだ。」の記載がある(甲19)。 ス 「最新版 Theワイン」(1987年(昭和62年)10月14日、読売新聞社発行)において、「シャンパンでディナーを」の見出しの下、「シャンパーニュ地方でつくられる、発泡酒だけに名付けられるシャンパン」の記載がある(甲20)。 セ 「世界の酒4 シャンパン」(1990年(平成2年)6月30日、株式会社角川書店発行)において、「シャンパーニュの丘」の見出しの下、「シャンパーニュのワインの歴史に、さらにひとつの栄光のエピソードが加わった。それは発泡性ワインの誕生である。この画期的な発見、発明は、その後の研究者たちの努力によって、発泡性ワイン、シャンパンの名声を、ヨーロッパのみならず世界的なものにしたのであった。」の記載があり、「シャンパーニュのぶどう畑」の見出しの下、「シャンパーニュというのは、この地方の古くからの一般的呼称である。・・・シャンパーニュには、他の産業もいろいろとあるが、何といってもシャンパンで世界的に知られている。」の記載がある(甲21)。 ソ 「最新日本語版 ザ・ワールド・アトラス・オブ・ワイン」(1991年(平成3年)5月27日、ネスコ(日本映像出版株式会社)発行)において、「Champagne シャンパーニュ」の見出しの下、「シャンパーニュという名前は、ボルドーの呼称などのように、限定された区域に適用されるだけでなく、この名前を名乗るまでに1滴ずつのワインが経なければならない一連の手法をも指す。」の記載がある(甲22)。 タ 「世界のワインカタログ1999 by Suntory」(1998年(平成10年)12月1日、サントリー株式会社発行)において、「シャンパーニュ」の見出しの下、「フランスの葡萄産地としては最北部にあたるシャンパーニュは、言うまでもなく、あのシャンパンの産地です。この地でつくられるスパークリングワインのシャンパンは、スパークリングワインの代名詞として使用されるほど、世界で最も有名なワインのひとつです。その名にふさわしく、大変手間のかかる伝統的な手法をかたくなに守り続けて、素晴らしい風味を生み出しています。」の記載がある(甲23)。 チ 「料理王国1月号別冊(季刊ワイン王国NO.5)」(2000年(平成12年)1月20日、株式会社料理王国社発行)において、「シャンパン味わいの多様性チャート」の見出しの下、「ひとくちにシャンパンといっても一様でないのはそれもそのはず、シャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会(CIVC)がまとめているすべての醸造元の数は5200にものぼる。委員会は、シャンパン消費量上位10カ国に外国事務所をおいて、『シャンパンと呼べるのは、シャンパーニュ地方産スパークリングだけ』ということを訴えてきたが、’93年頃から『5200の醸造元があれば5200様のシャンパンがある』ということもアピールするようになった。」の記載がある(甲24)。 ツ 「’80改訂版 世界の名酒事典」(1980年(昭和55年)5月30日、株式会社講談社発行)において、「スパークリング・ワイン」の見出しの下、「パリから約百七十キロ東へ行くと、ランスという古い町がある。この町から南一帯をシャンパーニュ地方といい、この地方でつくられる発泡性のワインをシャンパンという。・・・この地方は、フランスのワイン産地でも最も北に位置するので気温が低く、ぶどうの糖分も少ない。しかし、白亜質の土壌と、伝統ある製造技術によって良質のシャンパンを作りあげているのである。使われるぶどうの品種は、黒ぶどうのピノ・ノワール、ピノ・ムーニエ。それに白ぶどうのシャルドネである。」の記載のほか、シャンパーニュ地方の立地及びシャンパンの製法等を紹介する記載がある(甲25の1)。また、同事典の「’82-’83年度版」、「’84-’85年度版」、「’87-’88年版」、「’90年版」、「’91年版」、「’92年版」、「’93年版」、「’94年版」、「’95年版」、「’96年版」、「’97年版」、「’98年版」、「’99年版」、「2000年版」、「2001年版」、「2002年版」、「2003年版」、「2004年版」、「2005年版」、「2006年版」、「2008-09年版」、「2010-11年版」、「2012年版」、「2013年版」及び「2014年版」においても、概ね同様の記載がある(甲25の2?甲25の26)。さらに、同事典の「’90年版」には、「ワインの法律」の見出しの下、「ヨーロッパではEC(欧州共同体)においてワイン法を制定し、加盟各国はこれに基づいてそれぞれ国内法を設けている。」の記載とともに、ECのワイン法による「指定地域優良ワイン」と「並酒(テーブル・ワイン)」が、フランスのワイン法では、前者が「V.D.Q.S.ワイン」及び「A.O.C.ワイン」に、後者が「ヴァン・ド・ターブル」及び「ヴァン・ド・ペイ」に細分化される旨の記載がある。加えて、同事典の「2008-09年版」及び「2010-11年版」には、「『シャンパーニュ』という名称は、シャンパーニュ地方で造られたスパークリング・ワインにのみ許されている。」旨の記載、同じく、「2012年版」、「2013年版」及び「2014年版」には、「『シャンパーニュ』の名称は、フランスのシャンパーニュ地方において、伝統的製法を用いて醸造された発泡性ワインにのみ認められている。」の記載がある。 テ 「The一流品 決定版」(1986年(昭和61年)4月17日、読売新聞社発行)において、「SPARKLING WINE スパークリングワイン/シャンパン」の見出しの下、「スパークリングワイン、発泡性で炭酸ガスを多量に含んだワインである。いちばん有名なのがシャンパン。フランスではマルヌ、オーブ、エーヌ、セーヌ・エ・マルヌ四県のぶどう畑でとれたものを原料にしたものだけをほんとうのシャンパンと証明している。」の記載があり(乙26の1)、「The一流品 PART3」(1988年(昭和63年)5月6日、読売新聞社発行)において、「CHAMPAGNE シャンパン」の見出しの下、「エレガントな泡立ちをもち、お祝いの席には欠かせないこのワインは、シャンパーニュ地方で産するものだけに、名称を使うことができる。」の記載があり(乙26の3)、「The一流品 PART4」(1989年(平成元年)6月16日、読売新聞社発行)において、「シャンパン CHAMPAGNE」の見出しの下、「エレガントな泡立ちをもち、お祝いの席に欠かせないこのワインは、シャンパーニュ地方産。」の記載がある(甲26の4)。 ト 「家庭画報特選 Made in EUROPE ヨーロッパの一流品 女性版」(1982年(昭和57年)11月1日、株式会社世界文化社発行)において、「CHAMPAGNE シャンパン」の見出しの下、「シャンパンという名称は、フランスのシャンパーニュ地方で造られる発泡性ワイン(スパークリング・ワイン)の総称で、それ以外のものは単にスパークリングと呼ばれます。」の記載がある(乙27)。 ナ 「家庭画報編 女性版 世界の特選品’84」(1983年(昭和58年)11月1日、株式会社世界文化社発行)において、「CHAMPAGNE シャンパン」の見出しの下、「パリから170キロ東の、ランスより南一帯がシャンパーニュ地方。ここでつくられる発泡性ワインがシャンパンです。」の記載がある(甲28)。 ニ 「男の一流品大図鑑’86年版」(1986年(昭和61年)5月20日、株式会社講談社発行)において、CHAMPAGNE(シャンパン)が、一流品の1つとして紹介されている(甲29)。また、同図鑑の「’87年版」及び「’88年版」においても、同様の紹介がされている(甲30、甲31)。 ヌ 「はじめてのシャンパン&シェリー」(1999年(平成11年)、株式会社宙出版発行)において、「シャンパンの定義」の見出しの下、「シャンパンというと,発泡性ワインの代名詞のようなイメージがありますが、正確には、フランスのシャンパーニュ地方で伝統的な醸造法を用いて造られた発泡性ワインのみを指します。シャンパンの規定は、フランスのワイン法(AOC)で細かく定められています。シャンパーニュ地方で栽培されたブドウを用いること、伝統的なシャンパーニュ方式で製造すること、製造の全行程を指定地域内で行うことなど、さまざまな条件を満たすことが義務付けられています。ほかの国や地域で、シャンパンと同様の製法を用いた発泡性ワインが造られたとしても、それをシャンパンと呼ぶことはできないのです。」の記載があるほか、シャンパンの歴史及び製法等を紹介する記載がある。また、「一目で分かるシャンパンのデータ」の見出しの下、フランスからの総出荷量が、1993年(平成5年)の22,909万本(750ml/本。以下同じ。)から1998年(平成10年)の29,246万本へ増加しており、1998年(平成10年)における我が国への出荷量が、フランス、イギリス、ドイツ、アメリカ、ベルギー、スイス、イタリアに次いで多い(298万本)こと等の記載がある(甲32)。 ネ 1989年(昭和64年)1月5日付け「日本経済新聞」(夕刊、5頁)において、「シャンパン(産地)」の見出しの下、「シャンパンはフランス・シャンパーニュ地方で造られたスパークリングワイン(発泡酒)のこと。」の記載がある(甲33の1)。 ノ 1989年(平成元年)6月13日付け「日本経済新聞」(夕刊、14頁)において、「シャンパン人気急上昇-発泡性ワイン、輸入量5割増(アーバンNOW)」の見出しの下、「現在ではフランスの原産地名称国立研究所(INAO)により、『シャンパン』と名のれるのはその“生誕地”シャンパーニュ地方の発泡性ワインのみと規定されている。昨年、日本に輸入された発泡性ワインは、前年の五割増に当たる二千四百キロリットル強で、本数にしてざっと三百二十万本(一本=七百五十ミリリットル)。・・・フランス食品振興会の統計によると昨年の日本への輸出量の内、約四割が“本家”のシャンパンだった。」の記載がある(甲33の2)。 ハ 1990年(平成2年)1月27日付け「朝日新聞」(朝刊、11頁)において、「シャンパンの輸入量、90年の日本は66%増(情報ファイル・国際)」の見出しの下、「日本の昨年のシャンパン輸入が初めて100万本を突破し、前年に比べて実に66.65%増の128万本に達したことが25日明らかになった。・・・日本の輸入の伸び率は世界一。輸入量も、カナダの147万本に次いで世界第10位にのし上がった。」の記載がある(甲33の4)。 ヒ 1990年(平成2年)11月16日付け「朝日新聞」(朝刊、9頁)において、「商品の外国地名使用ご用心(素顔のウルグアイ・ラウンド)」の見出しの下、「祝賀パーティーの乾杯に欠かせないシャンパンといっても、厳密には『シャンパン』と『スパークリング(発泡性)ワイン』の区別がある。どちらも、泡の立つ白ワインに違いはないが、前者はフランスのシャンパーニュ地方産、後者はそれ以外の国や地域で醸造されたものをさす。12月の最終決着に向け、大詰めの協議が続く関税貿易一般協定(ガット)のウルグアイ・ラウンド(新多角的貿易交渉)で、欧州共同体(EC)は、『スパークリング・ワイン』を勝手に『シャンパン』として売るな、と主張している。・・・アルコール類などの『産地名』に対する保護は、欧州諸国が約100年前につくったマドリード協定でうたわれている。『シャンパン』と『スパークリング・ワイン』との区別も、この協定に沿ったものだ。ただし、産地名保護は、『消費者に誤解を与える場合』に限ってのこと。ウルグアイ・ラウンドでのEC側の主張は、『どんな場合』でもダメ、と厳しいルールを求めている。」の記載がある(甲33の5)。 フ 1991年(平成3年)4月27日付け「朝日新聞」(夕刊、13頁)において、「スパークリングワイン、手ごろな値段で楽しめる(カタログ)」の見出しの下、「グラスの中の細かい泡立ち、すっきりした口当たりが売り物のスパークリングワインが最近、人気を集めています。・・・代表的な銘柄であるシャンパンの高級品は1本数万円しますが、手ごろな値段のスパークリングワインも数多くあります。・・・シャンパンはシャンパーニュ地方で、瓶内発酵法によってつくるなど、法律で基準が細かく決まっており、この地方以外でつくられるスパークリングワインをシャンパンと呼ぶのは禁止されている。」の記載がある(甲33の6)。 ヘ 1992年(平成4年)7月27日付け「毎日新聞」(夕刊、1頁)において、「バルセロナ五輪・第2日 ワインの里を疾走??女子自転車・個人ロードレース」の見出しの下、「『シャンパン』はフランスのシャンパーニュ地方だけで作られるワインの発泡酒の名称。」の記載がある(甲33の7)。 ホ 「<特別法コンメンタール>不正競争防止法」(1986年(昭和61年)6月30日、第一法規出版株式会社発行)において、「第1条[不正競争行為の禁止]1項3号」に係る説明中に、「『シャンパーニュ』と発砲葡萄酒のように、地名と商品との結びつきが極めて強固である場合などは、いかなる打消表示によっても、原産地誤認のおそれは排除されないと解する。」の記載がある(甲34)。 マ 「パリ条約講話第13版」(2007年(平成19年)12月28日、社団法人発明協会発行)において、「2 マドリッド協定との関係」に係る説明中に、「『地方的名称』は、都市町村の名称、その他特定の地域に与えられている呼び名をいいます。この『地方的名称』や『ぶどう生産物の原産地の地方的名称』については何ら規定はありませんが、後者について現在の国際慣行上大体一般に認められている地方的名称のうちでわが国によく知られている主なものとしては、シャンパン(champagne)、ポート(porto)、コニャック(cognac)等があります。」の記載がある(甲35)。 ミ 「1985年、制定50周年を迎える原産地統制名称(AOC)」において、「フランスにおけるワインの生産と品質管理の伝統は、何百年から地域によっては何千年と非常に古いものです。しかしながら、こうした生産と品質管理の基準、そして、フランスワインの品質や固有の性質のもととなるブドウ栽培やワイン醸造の方法は、50年前に基本法として成文化されたばかりです。今年は、ワイン生産諸国におけるワイン名称のもととなったフランスの『ワイン名称に関する法律』制定50周年を記念し、さまざまな行事がフランス国内のみならず海外でも行われる予定です。」の記載及び「原産地統制名称とワインおよびオー・ド・ヴィ原産地名称国立研究所(INAO)は、1935年7月30日に設立されました。」の記載があるほか、INAOの重要な任務として、「AOCワインおよびオー・ド・ヴィの承認を行う」及び「原産地統制名称ワインを発生し得る災害から保護する」の2つがあり、後者には「フランス国内外を問わず、不正と偽造行為に対する戦い」が含まれる旨の記載がある(甲36)。 ム 「フランス原産地統制名称の国際的保護のためのINAOのアクションに関するメモ」(1994年(平成6年)11月28日)において、「原産地統制名称国立研究所(INAO)は、同業種間の公の機関でフランスの法律のもと、農務省の管轄下にあり、原産地名称の製品を(ワイン、ブランデー、チーズ、果物、家禽等)定義、管理、保護する。・・・INAOは、フランスに限らず外国においても、常にその名称について権利のない製品を流通させるための、原産地統制名称の使用に異議を申し立ててきた(例えば、ボージョレのオーストラリアン ボージョレ、ノンアルコール飲料のエルダー シャンパーニュ)。この名称の保護は、市場にオリジナルで唯一の製品を出すために、いくつかの規制と統制が不可欠だと知った、地域の生産者達によって取得された権利の正当な救済となる。この保護は、同時に消費者に対する、製品の地理的出所のごまかしに対する救済となり、また豊かな品質、つまり製品がその生産条件より、備えることのできた特色を守ることにもなる。INAOは名称の著名性の悪用とも戦っている。その名称が、名称の規制の恩恵に浴する製品と、同一または類似でない製品に使用されたとき。(例えば、マルゴーの靴)」の記載がある(甲37)。 (2)上記(1)において認定した事実によれば、「CHAMPAGNE(Champagne)」は、フランス北東部の地名(シャンパーニュ地方)であるとともに、1935年(昭和10年)に制定され、政府機関であるINAOにより運用されている同国の原産地統制呼称法に基づく厳格な統制の下に、同地方で収穫されたピノ・ノワール、ピノ・ムーニエ及びシャルドネの3種のぶどうのみを原料とし、シャンパン法(シャンパーニュ法)といわれる伝統的な製法で作られた発泡性ぶどう酒(スパークリングワイン)にのみ使用を許された原産地統制名称と認められる。 また、請求人の一方であるINAOは、原産地名称の使用の権利を与える生産区域の限定やぶどうの品種、生産高、最低天然アルコール純度、栽培方法、醸造方法、蒸留方法といった生産条件を決定したり、フランス国内外での原産地統制名称の保護促進などを行っている者であり、請求人のもう一方であるCIVCは、1941年(昭和16年)の法令に基づくシャンパーニュ地方のぶどう生産者やぶどう酒製造業者を統率する法定団体であって、同地で生産される発泡性ぶどう酒の市場管理等のほか、INAOと協力して、その原産地統制名称の保護のための活動を行っている者であることから、原産地統制名称である「CHAMPAGNE(Champagne)」は、両者により、その使用が厳格に管理、統制されているものといえる。 そして、我が国において、「CHAMPAGNE(Champagne)」は、「シャンパン」と訳され、辞書類において、「フランスのシャンパーニュ地方でつくられているスパークリング・ワイン。」などと紹介され、雑誌や新聞等においても、「シャンパン」の名称を用いることができるのは、フランスのシャンパーニュ地方で伝統的な製法により作られた発泡性ぶどう酒(スパークリングワイン)に限られる旨や同酒の代名詞として使用されるほどに世界的に知られたぶどう酒の1つである旨などの記載とともに、しばしば紹介されており、高品質で、かつ、稀少価値のあるぶどう酒などとして、広く販売されている。 そうすると、「CHAMPAGNE(Champagne)」の邦語である「シャンパン」は、我が国において、本件商標の登録出願日(平成24年1月10日)はもとより、本件商標の登録査定日(同年5月11日)においても既に、「フランスのシャンパーニュ地方及び同地方で作られる発泡性ぶどう酒(スパークリングワイン)」を意味する語として、一般需要者の間に広く知られていたとみるのが相当である。 2 本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について (1)本件商標は、前記第1のとおり、「シャンパークリング」の文字を標準文字で表してなるものであるところ、当該文字は、辞書類に載録された既成の語とは認められないことからすれば、造語の一種として看取、把握されるものとみるのが相当である。 ところで、本件商標の商標権者は、主として梅酒等のアルコール飲料を製造、販売する事業者であり、本件商標をその指定商品中に含まれる「発泡性の梅酒」について使用している(甲1の2)ところ、当該「発泡性の梅酒」に係る広告においては、例えば、「スパークリングワイン感覚で、甘すぎずスタイリッシュに楽しめるスパークリング梅酒」、「心地よい炭酸感で、スパークリングワインを連想させる絹の様な細かい泡感をお楽しみいただけます。」といった商品紹介とともに、顕著に表された「ワイン感覚スパークリング梅酒」、「Champarkling」及び「シャンパークリング」の各文字並びにシャンパングラスと思しき絵図が商品容器(缶)の中央部に付されている状態の画像が掲載されている。 また、本件商標の使用に係る上記「発泡性の梅酒」については、その需要者をして、「シャンパンのような梅酒でとても美味しかったです。・・・素敵な気分を味わうことのできるちょっとおしゃれなスパークリング梅酒です。」と評された事実がある(甲1の3)。 これらのことに、上記1において述べたとおり、我が国において、「シャンパン」の語が、「フランスのシャンパーニュ地方及び同地方で作られる発泡性ぶどう酒(スパークリングワイン)」を意味する語として、一般需要者の間に広く知られていたことを併せ考慮すると、本件商標は、その構成自体からすれば、造語の一種として看取、把握されるものではあるものの、「シャンパン」の語と「スパークリング(ワイン)」の語とを掛け合わせた又はもじったものと理解、認識される場合も少なくないとみるのが相当である。 そうすると、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、「フランスのシャンパーニュ地方及び同地方で作られる発泡性ぶどう酒(スパークリングワイン)」である「シャンパン」を連想、想起することも少なからずあるといえる。 (2)請求人らは、上記1のとおり、長年にわたり、フランス国内外において、シャンパーニュ地方のぶどう生産者やぶどう酒製造業者らの代表として、原産地統制名称である「CHAMPAGNE(Champagne)」の保護を行ってきており、その結果として、我が国においても、その邦語である「シャンパン」という表示について、周知著名性が蓄積、維持され、それに伴って高い名声、信用、評判が形成されているといえることからすると、当該表示は、シャンパーニュ地方のみならず、フランス及びフランス国民の文化的所産というべきものになっているというべきである。 そうすると、上記(1)のとおり、「シャンパン」を連想、想起させる本件商標をその指定商品について使用することは、シャンパーニュ地方のぶどう生産者やぶどう酒製造業者らの利益を代表する請求人らのみならず、長年にわたり、法律に基づき、原産地統制名称である「CHAMPAGNE(Champagne)」の保護を行ってきたフランス国民の感情を害し、ひいては我が国とフランスとの友好関係にも影響を及ぼしかねないものであり、国際信義に反するものといわざるを得ない。 (3)以上によれば、本件商標は、国際信義に反するものであって、公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標であり、商標法第4条第1項第7号に該当する。 3 まとめ 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-09-30 |
結審通知日 | 2016-10-04 |
審決日 | 2016-11-14 |
出願番号 | 商願2012-768(T2012-768) |
審決分類 |
T
1
11・
22-
Z
(W33)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 日向野 浩志 |
特許庁審判長 |
青木 博文 |
特許庁審判官 |
高橋 幸志 田中 敬規 |
登録日 | 2012-06-08 |
登録番号 | 商標登録第5499969号(T5499969) |
商標の称呼 | シャンパークリング |
代理人 | 佐藤 俊司 |
代理人 | 阪田 至彦 |
代理人 | 田中 克郎 |
代理人 | 池田 万美 |
代理人 | 阪田 至彦 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 佐藤 俊司 |
代理人 | 池田 万美 |
代理人 | 田中 克郎 |