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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z24
管理番号 1320298 
審判番号 取消2015-300680 
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-09-25 
確定日 2016-09-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第4627732号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4627732号商標の指定商品中の第24類「織物製テーブルナプキン」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
登録第4627732号商標(以下「本件商標」という。)は、「HEIDI」及び「A GIRL OF THE ALPS」の欧文字を2段に横書きしてなり、平成13年5月25日に登録出願、第24類「織物,メリヤス生地,フェルト及び不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布,布製身の回り品,織物製テーブルナプキン,ふきん,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製いすカバー,織物製壁掛け,織物製ブラインド,カーテン,シャワーカーテン,テーブル掛け,どん帳,織物製トイレットシートカバー,遺体覆い,経かたびら,黒白幕,紅白幕,布製ラベル,のぼり及び旗(紙製のものを除く。)」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」を指定商品として、同14年12月6日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成27年10月14日にされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判請求書、審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)及び口頭審理陳述要領書において、要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第11号証を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、少なくとも、本件審判請求日前3年以内に日本国内において、その指定商品中、第24類「織物製テーブルナプキン」について使用されていない。
したがって、商標法第50条第1項の規定により、「織物製テーブルナプキン」について、登録を取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、本件商標をその指定商品のうち、第24類「織物製テーブルナプキン」について使用している旨主張し、その証拠方法として、種々の証拠物件を提出し、本件商標が、審判請求の登録前3年以内(以下「要証期間内」という。)に「織物製ナプキン」について日本国内で使用されていると主張している。しかしながら、それらの証拠のいずれもが、要証期間内の日本国内における、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者による、本件審判の取消請求に係る指定商品についての登録商標の使用を裏付けるものではない。
(2)まず、被請求人が呈示する証拠のうち、本件商標と社会通念上同一の商標が付されている、すなわち、商標的な使用がされていることを示唆するといい得るものは、乙第9号証のみである。乙第9号証の写真四枚に写された商品は、被請求人曰く、また、乙第5号証によれば、「ランチクロス」(商品名は「ランチクロス ユキちゃん」「ランチクロス ハイジ&ヤギ」)として販売されており、同写真中、三枚目及び四枚目には、大きめに表された「HEIDI」の欧文字及び小さめに表された「A GIRL OF THE ALPS」の欧文字が2段併記の態様で構成された標章が商品タグと思しきものに表示されていることが確認できる。
(3)しかしながら、乙第9号証の写真四枚は、本件商標と社会通念上同一の商標が本件取消審判請求に係る指定商品「織物製テーブルナプキン」(以下「請求に係る指定商品『織物製テーブルナプキン』」という。)について使用されていることを証するものではない。なぜなら、同写真四枚のうちの三枚目及び四枚目に写された商品タグが、一枚目及び二枚目に写された「ランチクロス」と思しき商品に付されたものとは断定できず、そもそも、「ランチクロス」は「織物製テーブルナプキン」にあたる商品ではないからである。
被請求人が呈示する乙第10号証には、「ランチクロス」とは、「給食ナプキン」、「給食ナフキン」、「ランチョンマット」ともいわれ、「給食の際、学校の机に敷くまたはトレーに載せる布」、「園児または小学生がお昼ごはんの際使う布製の敷物」であると記載されている。ウェブ検索サイト「Google」でキーワードを「ランチクロス」として画像検索すると、人気キャラクターなど様々な図柄の正方形又は長方形の布と思しきものが多数表示され、それらの一部は、弁当箱を包んだ状態になっている(甲第1号証)。弁当箱を包む布は、食事の際には当然解かれ、弁当箱の下に敷かれた状態になり、これは、上述の「お昼ごはんの際使う布製の敷物」の定義に合致するものである。また、「ランチクロス」と同義語とされている「ランチョンマット」は、「食卓で皿やナイフ・フォーク・コップなどを載せるために使われる小さな敷物。ランチマット」とされており、「Google」で「ランチョンマット」を画像検索すると、さまざまな図柄の正方形又は長方形の布製等の敷物が多数表示される(甲第2号証及び甲第3号証)。したがって、「ランチクロス」とは、「弁当箱を包み、また、食事の際に弁当箱の下に敷かれる布」として理解され、通用しているということができる。
被請求人が呈示する乙第7号証の納品書によれば、商品「ランチクロス ハイジ&ヤギ」は、「ランチボックス」、「箸セット」といった別の商品と同時に納品されており、また、乙第11号証の写真では、ランチクロス、弁当箱及び箸が一式となって写っており、乙第13号証の写真では、ランチクロスは、販売店舗において、弁当箱、箸などと並んで陳列されている。これらのことからすると、ランチクロスは、弁当箱とセットで使用されるもので、いわば、弁当箱の専用品又は付属品というべきものである。
「特許情報プラットフォーム[J-Plat Pat]『商品・役務名検索』」によれば、「弁当箱の付属品としての袋」「弁当箱専用の巾着」が、本体たる「弁当箱」と同じ、第21類(類似群コード 19A03)の商品として容認されている(甲第4号証)。すなわち、被請求人が本件商標を付したとする商品「ランチクロス」は、その用途・機能に着目して捉えた場合、第21類(類似群コード 19A03)の商品というべきものである。
その一方で、被請求人が呈示する乙第8号証の納品書によれば、商品「ランチクロス ハイジ&ヤギ」は、「ミニハンカチタオル」と同時に納品されている。国際分類に即して定められた「商標法施行規則別表」に対応する「類似商品・役務審査基準」によれば、「タオル」、「ハンカチ」は、第24類「布製身の回り品」(類似群コード 17B01)にあたる商品とされている。
「ランチクロス」は、上述のとおり、「弁当箱を包み、また、食事の際に弁当箱の下に敷かれる布」で、主に園児や小学生といった子どもが昼食時に使う、いわゆる身の回り品であるから、そのような用途・特徴に着目したときには、「タオル」、「ハンカチ」と同じく、第24類「布製身の回り品」(類似群コード 17B01)にあたる商品と考えられる。また、「ランチクロス」は、「ものを包み、解かれたときは包まれていたものの下に敷かれる布」で、いわゆる「ふろしき」と機能が共通するものである。上述の「商標法施行規則別表」に対応する「類似商品・役務審査基準」では、「ふろしき」もまた、第24類「布製身の回り品」(類似群コード 17B01)にあたる商品とされている。
これらのことからすれば、「ランチクロス」は、仮に、弁当箱の専用品又は付属品として捉えるのではなく、別個の商品として捉えたときには、その用途・機能からして、「ハンカチ」、「タオル」、「ふろしき」と同じく、第24類「布製身の回り品」(類似群コード 17B01)にあたる商品というべきである。
これに対して、「ナプキン」とは、「食事中に口や指をふいたり、衣服を汚さないように胸やひざにかけたりする布や紙」、「食事の際に、油などの飛散による衣服の汚れを防止したり、食後に口の周りを拭いたりするための布」で、「テーブルナプキン」と呼ばれることもあるとされている(甲第5号証及び甲第6号証)。これは、「Google」で「テーブルナプキン」を画像検索すると、そのような用途、機能を有するとみられるさまざまな図柄の布等が多数表示されることからも明らかである(甲第7号証)。
したがって、「ランチクロス」が「弁当箱を包み、また、食事の際に弁当箱の下に敷かれる布」で、「弁当箱の付属品としての布」と考えれば、第21類(類似群コード 19A03)の商品であり、また、これを弁当箱とは離れた別個の商品と捉えるならば、第24類「布製身の回り品」(類似群コード 17B01)にあたる商品とされるべきなのに対して、「テーブルナプキン」は「食事の際に使う胸かけ・ひざかけ」であるから、両者が全く異なる商品であることは明らかである。
したがって、被請求人が本件商標と社会通念上同一の商標を使用したと主張する商品は、請求に係る指定商品「織物製テーブルナプキン」にあたるものでないというべきである。
(4)また、乙第9号証の写真が示唆するように、いわゆる「ランチクロス」たる商品に、本件商標と社会通念上同一の商標が付された事実があったとしても、要証期間内に日本国内で現実に使用されたことは、乙第9号証を含む全ての証拠によっても全く不知である。
(5)アニメーション「アルプスの少女ハイジ」に係る著作物の著作権者である被請求人が、株式会社サンクリエート(以下「サンクリエート社」という。)に、同著作物の利用、すなわち、著作物を使用した商品の販売等を許諾する契約を締結し、サンクリエート社によって本件商標が、請求に係る指定商品「織物製テーブルナプキン」について使用されていたと主張する商品は、「ランチクロス ユキちゃん」である。
(6)しかしながら、「ランチクロス ユキちゃん」の商品が、乙第5号証が示唆するとおり、2009年5月に発売された事実であったとしても、2009年5月は、本件審判においての要証期間内ではなく、要証期間内に同商品が販売されていたことを証するものではない。また、乙第6号証及び乙第13号証の商品が店舗に陳列された写真に添付された証明書は、それぞれ、平成25年2月10日及び平成25年4月21日に撮影されたとされているが、現実にその日に撮影されたという事実は証明されていない。
そもそも、上記(3)で述べたとおり、「ランチクロス」は、請求に係る指定商品「織物製テーブルナプキン」にあたるものではなく、本件商標と社会通念上同一の商標が、乙第9号証の写真の商品「ランチクロス ユキちゃん」に確かに付されていたかも疑わしい。
(7)また、乙第7号証、乙第8号証及び乙第16号証、すなわち、「ランチクロス ユキちゃん」を含む商品の納品書又はお買い上げ明細書(納品書)のうち、乙第7号証の納品書三枚中の一つ「No.13954」が平成25年3月21日付け、乙第8号証のお買い上げ明細書(納品書)が2013年11月17日付け、乙第16号証の納品書が2013年4月26日付けで、これらは要証期間内であり、その期間中に「ランチクロス ユキちゃん」が販売されていたであろうと推測することも不可能ではない。
しかしながら、上記(3)及び(6)で述べたように、そもそも、「ランチクロス」は、請求に係る指定商品「織物製テーブルナプキン」にあたるものでない上に、本件商標と社会通念上同一の商標が「ランチクロス ユキちゃん」に確かに付されていたかは疑わしい。
3 口頭審理陳述要領書
(1)被請求人は、平成27年11月30日付けで審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)において、「ランチクロス ユキちゃん」という商品名で、要証期間内に、請求に係る指定商品「織物製テーブルナプキン」について使用されていたと主張する。
さらに、被請求人は、口頭審理陳述要領書において、「ランチクロス」が「ナプキン」としても使用できると主張している。
これらは、いずれも、「ランチクロス」が「ナプキン」又は「テーブルナプキン」としても使用でき、テーブルナプキンが、ひざ掛けや口元を拭う用途だけでなく、お弁当の包みとしても利用できるといったように、一つの商品が、さまざまな用途・場面で使われることがあることを述べているものであり、乙第17号証ないし乙第31号証に係る書証もこのことを示すものである。
しかしながら、これらの点をもって、被請求人が本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたと主張する「ランチクロス」が、請求に係る指定商品「織物製テーブルナプキン」に当たるとするのは妥当ではない。
(2)まず、請求に係る指定商品「織物製テーブルナプキン」が第24類の商品として位置付けられているのか、という点からみると、ニース協定の国際分類リストにおいて、「serviettes of textile」、「table napkins of textile」という商品が第24類の商品として挙げられており(甲第8号証)、これに相当する商品が「織物製テーブルナプキン」であり、それゆえ、この商品が第24類の商品となっているのである。
そこで、「serviettes of textile」、「table napkins of textile」の意味、特に「serviettes」、「table napkins」の意味についてみると、ここからは、「食事の際衣服を汚さないよう胸にかけ、また手や口をふくために用いる布や紙」という意味が導かれるものであり(甲第9号証)、この意味合いは甲第5号証及び甲第6号証で示される「ナプキン」の意味合いとも合致するところである。したがって、このような商品であるということを前提として、それが「紙製」ではなく、「織物製」であり、かつ、「table」の文字とも相まって、それが「食卓用のもの」と認識される商品(甲第10号証)であって初めて第24類の「織物製テーブルナプキン」に当たるといえるのである。
上記の点に基づいて被請求人の主張をみると、被請求人は、「『ランチクロス』の『クロス(cloth)』の意味は、『織物、布、テーブルクロス、ふきん、壁紙、布装など』として普通に知られており、『ランチクロス』も広い意味では、ランチ(給食、昼食)時に使用する布製品ということになる。」と主張しているが、ここからは「紙製」は存在しないことになるし、「食卓用のもの」として用いられるという概念にも当てはまらないことになる。つまり、「ランチクロス」と「テーブルナプキン」とは、それぞれの有する主たる用途・機能を異にする別異の商品、すなわち、「ランチクロス」は「ランチクロス」であって、「テーブルナプキン」ではない、というべきものなのである。
さらに、被請求人は、一つの商品がさまざまな用途・場面で使われることがあるとし、それを取引の実情として取り上げ、「ランチクロス」が「ナプキン」又は「テーブルナプキン」としても使用することができることをもって、被請求人商品は「織物製テーブルナプキン」に当たると主張しているようであるが、上記のような国際分類の解釈を踏まえた上で、需要者・取引者をして、いかなる取引過程の下、その商品が取引に資されているか、という点をもってその商品の位置付けが決せられるものであり、被請求人において、この点からの主張はなされていない。そして、被請求人も「レストランで洋食が提供される際、通常、白いテーブルナプキンが用意されているので、あのようなテーブルナプキンであれば理解が容易であるが、?」と認識しているように、一般に「テーブルナプキン」と認識される商品と「ランチクロス」が同じような取引過程の下に取引に資されていると認識し得ないことは明らかである。
したがって、被請求人の「ランチクロス」が、請求に係る指定商品「織物製テーブルナプキン」に当たるとする余地などないのであり、被請求人において、商品の分類体系自体を十分に認識することなく、取引の実情を云々いうのは、失当に過ぎるといわざるを得ない。
なお、ある商品が、国際分類に即して定められた「商標法施行規則別表」に対応する「類似商品・役務審査基準」に記載された商品のいずれの範ちゅうに属するかという商品の帰属については、客観的に決定されるべきものであって、取引者の主観的な意図や需要者の主観的な転用の可能性によって左右されてはならないところであるが、この点は、特許庁審判事件(取消2003-30385)でも支持されているところである(甲第11号証)。
最後に、被請求人が、「請求人は、『ランチクロス』は『ランチョンマット』と同義語であると主張したり、『弁当箱専用の巾着』として『弁当箱』と同じ類似コードになると主張したり、『タオル・ハンカチ』として、『布製身の回り品』にあたるとも主張しているが、主張に一貫性がなく、いずれの主張も失当である。」と述べている点についてであるが、請求人に立証が求められるのは、被請求人商品がどの商品に当たるか、ということではなく、請求に係る指定商品「織物製テーブルナプキン」に当たらないことの立証であり、その点では一貫した主張である。
(3)以上の点を踏まえると、被請求人が、本件商標を使用していたと主張する「ランチクロス ユキちゃん」の商品名で販売されている被請求人の「ランチクロス」は、被請求人自身が示すように、その本来の用途・機能は、あくまでも「給食の際、学校の机に敷くまたはトレーに載せる布」、「園児または小学生がお昼ごはんの際使う布製の敷物」(乙第10号証)であって、給食や弁当を包んだり、弁当袋として使ったり、ひざ掛けや口元を拭うナプキンに転用して使うこともできるにすぎないものであるから、「食事中に口や指をふいたり、衣服を汚さないように胸やひざにかけたりする布や紙」、「食事の際に、油などの飛散による衣服の汚れを防止したり、食後に口の周りを拭いたりするための布」、いわゆる「食事の際に使う胸かけ・ひざかけ」を本来の用途・機能とする「ナプキン」又は「テーブルナプキン」とは、全く別異の商品といわざるを得ない。
したがって、被請求人が本件商標と社会通念上同一の商標を使用したと主張する「ランチクロス」は、請求に係る指定商品「織物製テーブルナプキン」に当たるものでない。
(4)以上より、被請求人が呈示する証拠をもっては、要証期間内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、審判請求に係る指定商品のいずれかについて、登録商標の使用をしていることを被請求人が証明したということはできず、その指定商品についてその登録商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにしたとはいえないものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を審判事件答弁書及び口頭審理陳述要領書において、要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第32号証を提出している。
1 答弁の理由
(1)本件商標の権利者である被請求人は、スイスの作家ヨハンナ・スピリの児童文学として著名な「アルプスの少女ハイジ」をアニメーションで企画・制作した会社としてつとに知られている。
「アルプスの少女ハイジ」は、1974年1月6日から12月29日の一年間に渡り、フジテレビ系列の毎週日曜日夜7:30?8:00に放送された。被請求人によるアニメ化は、日本人にとっては大変に親しみ易くアレンジされたので、その普遍性が海外に輸出された際に、世界の多くの地域においても違和感なく受け入れられ、上質な内容、アニメーション技術と相まって高く評価されたことで、日本発の(子供から大人まで楽しめる)ファミリー向けTVアニメでは、世界中で代名詞的扱いにされるほど著名な作品になっていると評価されている(乙第1号証)。
アニメーションの「アルプスの少女ハイジ」の著作権者である被請求人は、関連の登録商標11件を有しているが、本件商標はそのうちの1件である。
そして、被請求人は、「アルプスの少女ハイジ」を含むテレビ用アニメーション4作品の著作物について、サンクリエート社と平成13年3月16日に「著作権管理委託契約書」を結び、この契約は今日まで有効に継続している(乙第2号証)。
この契約に基づき、サンクリエート社は、第5条により、著作物の利用内容として、商品化、広告使用、催事使用、店舗、施設使用、情報サービス、商品販売、ゲーム化などの使用許諾及び利用許諾を受けている。また、サンクリエート社は、被請求人に代わって、第三者と交渉し、第三者に対し利用にあたる必要契約を締結することも認められている。
(2)本件商標に係る商品について
ア 本件審判に係る取消しの対象とされた商品は「織物製テーブルナプキン」である。「テーブルナプキン」は、食事の際に、油などの飛散による衣服の汚れを防止したり、食後に口の周りを拭いたりするための布であり、通常、食事中は膝のうえに広げておいておく。
「テーブルナプキン」に関する通販ショップをみると、サイズやデザインが豊富で、和柄、レース、キャラクター、フラワー、ストライプなどがあり、カラーバージョンも豊富である。そのため、「テーブルナプキン」は、特定のサイズ、カラー、模様に限定されるものではなく、また、本来の使用方法の他に、テーブルコーディネートとしてテーブルを華やかに飾ることができる。
イ 「アルプスの少女ハイジ」のキャラクターの商品化に関する使用権者であるサンクリエート社は、公式ショップである自社直営のハイジクラブ両国店を有しており、ぬいぐるみ、タオル、シール、カード、文具、陶器、食器、ランチ小物、バッグなど各種商品を展示し販売しており、公式ホームページにより通信販売も行っている(乙第4号証)。
請求に係る指定商品「織物製テーブルナプキン」は、ランチ小物のひとつとして2種類、商品名を「ランチクロス」として販売している。
一つは、ピンクの地色に人形のハイジと花びらと白いヤギの模様をちりばめた「ランチクロス ハイジ&ヤギ」であり、もう一つは、黄色の地色に右下に左側面を見せて立っている赤い首輪を付けた白いヤギの模様からなる「ランチクロス ユキちゃん」の2種類であり、2009年(平成21年)5月から発売している(乙第5号証)。
サンクリエート社の両国店では、上記2種類の「ランチクロス」を平成21年5月7日より平成25年11月17日まで展示し販売していたのであり、サンクリエート社の「証明書」及びそれに添付した店内の写真によって、上記2種類の「ランチクロス」が展示されていることが明らかに見てとれる(乙第6号証)。
サンクリエート社が展示し販売した「ランチクロス」は、サブライセンシーである株式会社モノコムから平成25年3月21日に納品されている(乙第7号証)。また、平成24年9月27日にも納品されていることが明らかであるが、要証期間内には入っていない(乙第7号証)。しかし、これによって、継続して商品が生産され販売されていた事実を明らかにすることができる。
2013年(平成25年)11月17日付けの「お買上げ明細書(納品書)」は、通販ショップでの売り上げであるが、「ランチクロス ハイジ&ヤギ」が1点含まれている(乙第8号証)。たとえ、1点であっても商品が販売されたことは事実である。
(3)本件商標の使用について
ア 上記2種類の商品のうち、「ランチクロス ハイジ&ヤギ」は、完売したため現物がないが、「ランチクロス ユキちゃん」の現物の写真を提出する(乙第9号証)。
「ランチクロス」の裏面の織ネームには、「HEIDI」の欧文字とその下に「A GIRL OF THE ALPS」の欧文字が縫い込まれており、本件商標が表示されていることは明らかである。また、「品質表示:綿100%」の表示もあり、「織物製」であることも明らかである。
また、アニメーション「アルプスの少女ハイジ」の著作権者である被請求人の著作権表示もなされている。
請求に係る指定商品「織物製テーブルナプキン」は、商品名を「ランチクロス」としているが、「ランチクロス」は、「アルプスの少女ハイジ」のキャラクターの商品化であり、かつ、そのかわいらしい模様からみて幼稚園児や小学低学年の子供用として、幼稚園や学校での給食時に使用されることを想定している。
イ あるサイトに、“「ランチクロス」って「給食ナプキン」と同じモノなのでしょうか?”という質問が掲載されていた。それによると、「給食の際、学校の机に敷くまたはトレーに乗せる布は『給食ナプキン』『給食ナプキン』『ランチョンマット』『ランチクロス』、呼び名は4つのうちのいずれかのようです。市販の正方形のものは『ランチクロス』と呼ばれていることが多いです。」(乙第10号証)といわれている。
本件商標に係る「ランチクロス」は、幼稚園児や小学低学年のお昼の給食時に使用されることを念頭に提供しているので、「ランチクロス」と称しているが、単に「ナプキン」、あるいは「テーブルナプキン」と同一視されるものである。
すなわち、テーブルの上で、弁当箱の横に畳んでおいて、食事中は、食事のこぼれやよごれを防ぐために膝の上に広げておいておくことができるので、「テーブルナプキン」といえるのであり、テーブルの上に広げると「ランチクロス」といういい方もできる(乙第11号証)。
レストランで洋食が提供される際、通常、白いテーブルナプキンが用意されているので、あのようなテーブルナプキンであれば理解が容易であるが、食事の際に使用する正方形のクロスであれば、デザインや色彩に捉われず、「テーブルナプキン」と称することができるのである。
よって、「ランチクロス ユキちゃん」に本件商標が使用されていることは明らかであり、かつ、すでに完売した「ランチクロス ハイジ&ヤギ」にも同様の織ネームが付いていたことは確かであるから、「織物製テーブルナプキン」について、本件商標が使用されているのは確かな事実である。
ウ また、サンクリエート社は、東京駅地下街で開催した公式催事「アルプスの少女ハイジ プレミアムフェア」において、平成25年4月18日より平成25年4月24日まで、上記2種類の「織物製テーブルナプキン(ランチクロス)」を展示し販売した(乙第12号証)。その詳細は、サンクリエート社の「証明書」に記載されており、添付の展示写真によって、商品がはっきりと見てとれる(乙第13号証)。
東京駅地下街の催事は、東京ステーション開発株式会社が運営しており、イベントスペースの「いちばんプラザ」で開催された(乙第14号証)。
この催事では、運営会社の東京ステーション開発株式会社が売り上げのレジを一括管理し、催事終了後、先に納品した商品の返品がなされた後、返品分を差し引きしたうえで、販売数量を確認し、仲介のイベント・催事の企画会社に全商品の売り上げを報告する仕組みになっている。
このとき仲介の催事企画会社は、有限会社ゆうプロジェクトであった(乙第15号証)。すなわち、サンクリエート社は、有限会社ゆうプロジェクトに対して「納品書」という書類において、取り扱った全商品の売り上げを報告しているのであり、「ランチクロス ハイジ&ヤギ」が6枚、「ランチクロス ユキちゃん」が5枚の売り上げがあったことになる(乙第16号証)。
その後、サンクリエート社の全商品の売り上げに対して、有限会社ゆうプロジェクトから必要経費などを差し引いて、サンクリエート社に振り込まれるので、それがサンクリエート社の最終売り上げとなる。
サンクリエート社は、この催事では、商品の売り上げをその場で受け取ることはできないので、個々の商品についての売り上げ伝票は作成していない。
(4)まとめ
以上のとおり、請求に係る指定商品「織物製テーブルナプキン」は、商品名を「ランチクロス」として、幼稚園児や小学低学年の給食の際に使用されることを想定して商品化されたものであり、乙第5号証ないし乙第6号証、乙第9号証、乙第11号証及び乙第13号証のとおりの商品であり、乙第9号証のとおり、本件商標が使用されていることは明らかである。
よって、請求人の主張には理由がなく、第24類「織物製テーブルナプキン」について、本件商標が取消される理由はない。
2 口頭審理陳述要領書
(1)請求人の「弁駁書」では、「『ランチクロス』とは、『弁当箱を包み、また、食事の際に弁当箱の下に敷かれる布』として理解され、通用しているということができる。」と主張している。
さらに、請求人は、「『ナプキン』とは、『食事中にロや指をふいたり、衣服を汚さないように胸やひざにかけたりする布や紙』、『食事の際に、油などの飛散による衣服の汚れを防止したり、食後の口の周りを拭いたりするための布』で、『テーブルナプキン』と呼ばれることもあるとされている。」と主張している。
しかしながら、子供の学校給食用の「ランチクロス」は、「給食ナプキン(ナフキン)」と同じ意味で使用されており、区別して販売されたり、使用されたりはしていない。すなわち、「ランチクロス」としても、「ナプキン」としても使用できるのであり、1枚のクロスについて、請求人が主張する上記の二つの意味を持つ商品ということになる。
また、「テーブルナプキン」についても、ディナー用のナプキンとして、また、お弁当を包んだりと幅広く使用できる商品であるという紹介がされている。
すなわち、「ランチクロス」は「給食ナプキン(ナフキン)」と同じ商品として認識され、かつ、販売されており、用途に合わせて使用することができるものである。
(2)被請求人は、そのような事実について、証拠方法を追加提出して、主張立証する。
なお、以下の資料では、「ナプキン」と「ナフキン」の両方の名称が使用されているが、同じ意味であり、どちらを使用しても構わないとされているため、資料に合わせて記載する。
ア ウェブ検索サイト【楽天市場】キッチン用品>ナフキン(乙第17号証)
「こちらの商品は、高級レストラン、結婚式場に卸されている商品なんです。某百貨店では、1枚1000円前後で売られております。今回は、10枚セットでの販売ですので、1万円相当!!」
「使い方は色々♪♪・通常のナプキンとして利用・友達の引越し祝いなどに・テーブルセンターとしてもOK・花瓶置きの敷物として・お弁当の包み袋・MY箸の包み袋・無地の物は、端切れ(布切れ)としても使われます。」
イ ウェブ検索サイト【楽天市場】artekアルテック〔SIENA〕ナプキン ランチクロス...(乙第18号証)
〔SEENA〕ナプキン(ブルー)
「洗練されたテーブルナプキンで食卓を演出。お弁当にも◎。ディナー用のナプキンとして、また小物のカバーにしたりお弁当を包んだりと、幅広くお使い頂けます。」
ウ ウェブ検索「子供用ランチクロス」(乙第19号証)。
「大きめサイズで、ご飯の下に広げるのはもちろん、ナプキンとして使用したりと、用途に合わせていろいろ使い方のできるランチクロスです。」
「楽しいお食事/ランチクロス・給食ナフキン」
「お料理の下に敷いたり、膝に掛けたり等いろんな用途でお使い頂けます。」
資料ウには、デザインが豊富でカラフルな数多くの「ランチクロス・給食ナフキン」が掲載されている。
エ ウェブ検索サイト『Amazon』「楽しいお食事ランチクロス・給食ナフキン2枚セット」(乙第20号証)
「商品特長 4.用途いろいろ、食事マナーの意識付けにお役立ち!お弁当を包む以外に食事の際に机に敷くなど、活用度大!また、普段からひざや首元に掛けたり口元を拭いたりすることで、きちんとしたいときにお行儀よくできるよう意識付けるのにも最適です。」
オ ウェブ検索サイト『楽天市場』「ランチクロス・給食ナフキン(2枚セット)」(乙第21号証)
「商品の特長 4.用途いろいろ、食事マナーの意識付けにお役立ち給食ナフキン以外にも、包む、敷く、拭くなど使い方は色々!普段からひざや首元に掛けたり口元を拭いたりすることで、きちんとしたいときにお行儀よくできるよう意識付けるのにも最適です。」
カ ウェブ検索「妖怪ウォッチ キャラクターランチクロス」(乙第22号証)
「妖怪ウォッチ キャラクターランチクロス/★ナフキン★」
「お弁当を包んだり食事中はひざの上に乗せてお行儀良くと使い方色々♪」
キ ウェブ検索「NHKスクエア」<おさるジョージ ランチクロス>(乙第23号証)
「かわいいジョージがいっぱいのランチクロスです。ランチョンマットにしたり、お食事にひざに掛けたり、使い方いろいろです。」
ク ウェブ検索サイト【楽天市場】LBボーダーナプキンランチクロスドゥ・セー(乙第24号証)
「LBボーダーナプキン ランチクロスドゥ・セー」
「正方形のランチクロスはお弁当包みや給食ナフキンに♪」
ケ ウェブ検索サイト【楽天市場】マドレーヌラッピングクロス ランチクロス ナフキン(乙第25号証)
「お弁当や給食に♪マドレーヌちゃんのランチクロス/正方形のクロスは、お弁当包みはもちろん、給食ナフキンとしても大活躍してくれます。お気に入りを組み合わせて、毎日楽しくすごして下さいね♪」
コ ウェブ検索サイト【楽天市場】【ムーミン】ランチクロス(リトルミイ)(乙第26号証)
「ランチクロス(ナフキン)」
「商品説明/みんなから愛されているムーミンからランチグッズが登場です☆かわいいナフキンです♪幼稚園や学校の給食セットに♪お弁当を包んで使ったり♪同じシリーズのお弁当グッズで揃えて一緒に使うと可愛いよ!」
サ ウェブ検索サイト【楽天市場】ランチクロス アルテックの通販(乙第27号証)
「artekアルテック〔SIENA〕ナプキン ランチクロス」
シ ウェブ検索サイト「Amazon.co.jp:【ハンドメイド】ランチクロス【北欧柄:ドット柄】(乙第28号証)
「ランチクロス【北欧柄:どっと柄】ダークブルー給食ナフキンにも最適」
「子供用ランチクロス・ナフキン/デザイン豊富100柄以上!安心の国内縫製おしゃれキッズの給食ナフキン満載」
ス ウェブ検索サイト「Amazon.co.jp:らくがきな世界 マスカットランチクロス(2枚セット)」(乙第29号証)
「給食用ナフキンとしての使用もOK」
「商品の説明/子どもがらくがきをしたような素朴で可愛い柄のプリントのランチクロス。給食用ナフキンとしても使えます。」
セ ウェブ検索サイト「Amazon.co.jp:<キャラクター・ランチクロス>ディズニー・ツム...」(乙第30号証)
<キャラクター・ランチクロス>ディズニー・ツムツム
「ランチ(給食)ナフキンはもちろんの事、お弁当包みにもなります。」
ソ ウェブ検索サイト「Amazon.co.jp:<キャラクター・ランチクロス>スターウォーズ」(乙第31号証)
<キャラクター・ランチクロス>スターウォーズ(ブルー)<給食なふきん・ランチョンマット>
「ランチ(給食)ナフキンはもちろんの事、お弁当包みにもなります。」
(3)上記(2)アないしソから明らかなように、通常のテーブルナプキンあるいはディナー用のナプキンであってもお弁当を包む布にも利用できるのであり、また、ランチクロスとされていてもテーブルナプキンにもなるのであり、使う者によって、使い方がいろいろとなるにすぎない。
特に、テーブルナプキンは、カラーもデザインも豊富であり、お気に入りの色やデザインのナプキンをひざ掛けや口元を拭う用途だけではなく、子どもから大人まで、持参するお弁当の包みとして利用することができるのであり、すでにそのように、日常的に利用されており、お弁当の時間を楽しくしてくれる。
また、上記資料の多くは、「ランチクロス・給食ナフキン(ナプキン)」という商品表示で販売されており、区別することなく、同一の商品として扱われていることも明らかである。
そして、上記資料のエ、オ及びスは、「ランチクロス・給食ナフキン」が「2枚セット」として販売されている。同じサイズ・同じ柄であるため、1枚はお弁当包みに、1枚はひざ掛けや手や口元を拭うナフキンとして使用したり、取替え用にしたりすることができるのであり、このような時に、「ランチクロス」と「ナフキン」は別の商品であり、区別して使うべきだと考える者などいないはずである。
「ランチクロス」の「クロス(cloth)」の意味は、「織物、布、テーブルクロス、ふきん、壁紙、布装など」として普通に知られており、「ランチクロス」も広い意味では、ランチ(給食、昼食)時に使用する布製品ということになる。しかるに、実質的に同じ1枚のクロスが商品の名称を異にしているだけであるから、請求人が主張するように、「ランチクロス」はお弁当を包んだり、お弁当の下に敷いたりするものである、「ナプキン」は膝に掛けたり、口元を拭ったりするものであると決め付けて、全く別の商品であるかの如く区別することに何ら意味はない。
よって、被請求人が本件商標を使用している「ランチクロス」は、布製であり、「ナプキン(ナフキン)」と同一視される商品であるところから、「織物製テーブルナプキン」の範ちゅうに入る商品である。
(4)被請求人が、上記のとおり主張立証したことにより、請求人が「ランチクロス」は、「織物製テーブルナプキン」にあたる商品ではないとする主張は明らかに失当である。
そして、請求人は、「ランチクロス」とは、「弁当箱を包み、また、食事の際に敷かれる布」として理解され、通用しているということができると限定的な意味として主張しているが、被請求人が挙げた上記アないしソの資料によると、「ナプキン(ナフキン)」と同じ商品であり、「ランチクロス」と称される商品であっても、ひざに掛けたり口元を拭いたり、使い方はいろいろである。
請求人の主張は、取り引きの実情に沿っていない。
さらに、請求人は、「ランチクロス」は「ランチョンマット」と同義語であると主張したり、「弁当箱専用の巾着」として「弁当箱」と同じ類似コードになると主張したり、「タオル・ハンカチ」として、「布製身の回り品」にあたるとも主張しているが、主張に一貫性がなく、いずれの主張も失当である。
次に、請求人は、本件商標の使用について、本件商標と社会通念上同一の商標が、乙第9号証の写真の商品「ランチクロス ユキちゃん」に確かに付されていたかも疑わしいものであると主張しているが、本件商標とほぼ同一の書体をもって、織ネームとして使用している。
この写真の商品は、透明な袋でカバーされたままであり、作為的に商標を付すことなどあり得ない。「疑わしい」とされたままでは納得することはできないので、念のため、乙第9号証の商品について、カラーコピーをもって、使用態様を明らかにする(乙第32号証)。
「ランチクロス ハイジ&ヤギ」は、本件事件の答弁書を提出する時点では完売していたので現物の写真を提出することができなかったが、乙第6号証ないし乙第8号証、乙第13号証及び乙第16号証により販売されていたことは明らかである。特に、乙第6号証及び乙第13号証では、「ランチクロス ユキちゃん」と「ランチクロス ハイジ&ヤギ」が商品棚に並べてあり、販売されていたことは事実であると共に、双方に同様の商標が付されていた。
それゆえ、「ランチクロス ユキちゃん」の商品に明確に本件商標と社会通念上同一の商標が付されているので、それを否定する請求人の主張は失当である。
(5)以上、詳細な主張立証のとおり、被請求人の「ランチクロス」は、「ナプキン(ナフキン)」と同一視される商品であり、「織物製テーブルナプキン」の範ちゅうに入る商品である。
また、被請求人の「ランチクロス」には、本件商標と社会通念上同一の商標が使用されているのも明らかである。
よって、被請求人は、要証期間内における本件商標の使用を立証することができたので、本件審判請求は成り立たないとの審決を求めるものである。

第4 当審の判断
1 請求人の提出した甲各号証及び被請求人の提出した乙各号証によれば、以下の事実が認められる。
(1)被請求人である瑞鷹株式会社は、サンクリエート社と「アルプスの少女ハイジ」を含む著作物の利用及び管理に関する契約を締結しており、該契約の内容を表した「著作権管理委託契約書」の第5条には、本著作物の利用内容として、「商品化使用」、「広告使用」及び「商品販売」等が規定されており、サンクリエート社が瑞鷹株式会社の有する著作物を利用し、商品販売等を行うことができることとなっている(乙第2号証)。
(2)正方形の黄色地に右下にヤギの絵が描かれている商品は、「JANコード」に「4514190023078」、「商品名」に「ランチクロス ユキちゃん」及び「素材」に「綿100%」と記載されていることが認められる(乙第5号証、以下、当該商品を「ランチクロス ユキちゃん」という。)。
(3)「ランチクロス ユキちゃん」は、その右下の背面にある織ネームに「HEIDI」及び「A GIRL OF THE ALPS」の欧文字が2段書きされていること及び「ランチクロス ユキちゃん柄」と記載されていることが認められる(乙第9号証及び乙第32号証)。
(4)「ランチクロス ユキちゃん」は、サンクリエート社が有限会社ゆうプロジェクトに宛てた2013年4月26日付け納品書に、「品番・品名」の項目に上から5番目の欄に「4514190023078」及び「ランチクロス ユキちゃん」と記載され、その商品に対応する数量の欄には「5」と記載されていることが認められる(乙第16号証)。
(5)「ハイジクラブ両国店」のウェブサイトにおいて、「ランチ小物」の項目が認められる(乙第4号証)。
(6)平成25年2月10日に撮影された「ハイジクラブ両国店」及び平成25年4月21日に撮影された東京駅の東京キャラクターストリート内の「いちばんプラザ」の商品の陳列においては、弁当箱、箸、水筒及びカップ等のお弁当に関する商品とともに、「ランチクロス ユキちゃん」が展示されていることが認められる(乙第6号証及び乙第13号証)。
(7)商品「ランチクロス」については、以下のことが認められる。
ア 乙第10号証によれば、「『ランチクロス』って『給食ナフキン』と同じものなのでしょうか?」の見出しの下、「給食の際、学校の机に敷くまたはトレーに載せる布は『給食ナプキン』『給食ナフキン』『ランチョンマット』『ランチクロス』呼び名は4つのうちいずれかのようです。・・・どちらも『園児または小学生がお昼ご飯の際使う布製の敷物』」との記載がある。
イ 甲第1号証は、検索エンジン「Google」における「ランチクロス」の語の画像検索の結果であるところ、立方体状のものを布で包んである絵図及び傍らに弁当箱が置かれている四角形状の布の絵図が多く認められる。
ウ 乙第19号証ないし乙第31号証は、商品「ランチクロス」の販売に係るウェブサイトの写しであるところ、そのうち乙第20号証及び乙第21号証には「お子さま自身がお弁当を包む際にも、包みやすい大きさ。」、乙第22号証には「お弁当を包んだり」、乙第25号証には「お弁当包みはもちろん」、乙第26号証には「お弁当を包んで使ったり」並びに乙第30号証及び乙第31号証には「お弁当包みにもなります。」との記載がある。
(8)「ナプキン(「テーブルナプキン」の表示を含む。)」については、以下のことが認められる。
ア 甲第5号証によれば、「ナプキン」の見出しの下、「1 食事中に口や指をふいたり、衣服を汚さないように胸やひざにかけたりする布や紙」との記載がある。
イ 甲第6号証によれば、「ナプキン」の見出しの下、「ナプキン(napkin)は、食事の際に、油などの飛散による衣服の汚れを防止したり、食後に口の周りを拭いたりするための布・・・生理用のナプキンと区別するために『テーブルナプキン』と呼ぶこともある。」との記載がある。
ウ 甲第9号証は、「ジーニアス英和辞典第4版」の写しであるところ、「napkin」の項目に、「テーブルナプキン・・・《食事の際衣服を汚さないよう胸にかけ,また手や口をふくために用いる布や紙》」との記載がある。
エ 甲第10号証は、「旺文社英和中辞典」の写しであるところ、「napkin」の項目に、「[布・紙製の食卓用の]ナプキン(table napkin)」との記載がある。
(9)商品「ランチクロス」及び商品「テーブルナプキン(「ナフキン」及び「ナプキン」と称するものを含む。)」の取引の実情について、以下の事実が認められる。
ア 乙第17号証には、「大切な記念日、来客時にちょっとお洒落にたたまれたナフキンがお皿の上に乗ってあるとなんかお洒落でカッコイイですよね♪一家に何枚かは是非おいていただきたい Table Napkin」及び「使い方は色々♪♪・通常のナプキンとして利用・・・お弁当の包み袋」との記載がある。
イ 乙第18号証には、「洗練されたテーブルナプキンで食卓を演出。お弁当にも◎」、「大きめのサイズで使い勝手の良い綿100%のナプキンです。」及び「ディナー用のナプキンとして、また小物のカバーにしたりお弁当を包んだりと、幅広くお使いいただけます。」との記載がある。
ウ 乙第19号証には、「大きめのサイズで、ご飯の下に広げるのはもちろん、ナプキンとして使用したりと、用途に合わせていろいろな使い方のできるランチクロスです。」との記載がある。
エ 乙第20号証には、「用途いろいろ、食事のマナーの意識付けにお役立ち!お弁当を包む以外に食事の際に机に敷くなど、活用度大!また、普段から膝や首元に掛けたり口元を拭いたりすることで、きちんとしたいときにお行儀良くできるよう意識付けるのにも最適です。」との記載がある。
オ 乙第21号証には、「用途いろいろ、食事のマナーの意識付けにお役立ち 給食ナフキン以外にも、包む、敷く、拭くなど使い方は色々!普段からひざや首元に掛けたり口元を拭いたりすることで、きちんとしたいときにお行儀良くできるよう意識付けるのにも最適です。」との記載がある。
カ 乙第22号証には、「こどもに大人気『妖怪ウォッチ』のかわいいランチクロスです。お弁当を包んだり食事中はひざの上に乗せてお行儀良くと使い方色々♪」との記載がある。
キ 乙第23号証には、「かわいいジョージがいっぱいのランチクロスです。ランチョンマットにしたり、お食事時にひざに掛けたり、使い方いろいろです。」との記載がある。
2 上記1において認定した事実によれば、以下のとおり判断することができる。
(1)通常使用権者について
本件商標の商標権者である株式会社瑞鷹とサンクリエート社とは、株式会社瑞鷹が有する著作物を利用して、サンクリエート社が「商品化使用」、「広告使用」及び「商品販売」等を行う許諾契約を締結しているところ、該契約は著作物に関するものであるが、該契約に基づくサンクリエート社の取扱い商品に株式会社瑞鷹の商標権に係る商標が使用されている場合は、サンクリエート社が該商標権の通常使用権者であるとみて差し支えないといえる。
(2)本件商標の使用について
本件商標は、「HEIDI」及び「A GIRL OF THE ALPS」の欧文字を2段に横書きしてなるところ、該文字と同一の標章が「ランチクロス ユキちゃん」の織ネームに使用されている。
(3)本件商標を使用する商品について
「ランチクロス ユキちゃん」は、2013年4月26日付けの通常使用権者といえるサンクリエート社から有限会社ゆうプロジェクトに宛てた納品書において、数量の欄に「5」と記載されていることから、要証期間内に本件商標が付された「ランチクロス」が引き渡されたと推認し得るものである。
(4)本件商標を使用する商品と請求に係る指定商品について
ア 「ランチクロス」について
「ランチクロス」は、「園児または小学生のお昼ご飯の際使う布製の敷物」で「給食ナプキン」「給食ナフキン」と同義であると紹介され、お弁当を包む用途もあり、ランチクロスの画像検索の結果において、布地で包んでいる絵図があることから、「園児または小学生がお昼ご飯の際に食器や弁当箱の下に敷き、弁当箱を包むために供される布製のもの」を指称する商品ということができる。
イ 「ナプキン」について
「ナプキン」(「テーブルナプキン」を含む。以下同じ。)は、「食事中に口や指をふいたり、衣服を汚さないように胸やひざにかけたりする布製または紙製のもの」を指称するものであって、請求に係る指定商品「織物製テーブルナプキン」は、該商品のうち「布製のもの」を指称する商品とみるのが相当である。
ウ 「ランチクロス」と「ナプキン」の同一性について
上記ア及びイのとおり、「ランチクロス」と「ナプキン」とは、その用途が明らかに相違するものであるから、別異の商品であるといわなければならない。
(5)本件商標が使用されている商品について
そこで、本件商標が使用されている商品「ランチクロス ユキちゃん」の取引についてみると、「ランチクロス ユキちゃん」は、通常使用権者が運営するウェブサイトの通信販売において、被請求人の主張によれば「ランチ小物」の項目に分類されているもので、また、「ハイジクラブ両国店」及び「いちばんプラザ」の両店舗における商品の陳列では、弁当箱、箸、水筒及びカップ等のお弁当に関する商品とともに展示されているものであるから、昼食で利用される「ランチクロス」として把握、認識されるものである。
また、「ランチクロス ユキちゃん」は、平成24年9月27日付け納品書では「ハイジ ランチクロス ユキちゃん」と、2013年4月26日付け納品書では「ランチクロス ユキちゃん」と、それぞれ記載されており、また、商品に付された織ネームには「ランチクロス ユキちゃん柄」と記載されていることから、「ランチクロス」であることが明示されている。
そうすると、「ランチクロス ユキちゃん」は、「ランチクロス」として取引されているというべきであり、「ナプキン」としても取引されているということはできない。
(6)小括
以上のとおり、被請求人が提出した証拠からは、要証期間内に日本国内において、通常使用権者が、商品「ランチクロス」について、本件商標を使用するものということはできても、請求に係る指定商品「織物製テーブルナプキン」に使用するものということはできない。
3 被請求人の主張について
「テーブルナプキン」は、食事の際に、油などの飛散による衣服の汚れを防止したり、食後に口の周りを拭いたりするための布であり、通常、食事中は膝のうえに広げておいておく。請求に係る指定商品「織物製テーブルナプキン」は、ランチ小物のひとつとして、商品名を「ランチクロス」として販売しているが、「アルプスの少女ハイジ」のキャラクターの商品化であり、かつ、そのかわいらしい模様からみて幼稚園児や小学低学年の子供用として、幼稚園や学校での給食時に使用されることを想定している。テーブルの上で、弁当箱の横に畳んでおいて、食事中は、食事のこぼれやよごれを防ぐために膝の上に広げておいておくことができるので、「テーブルナプキン」といえるのであり、テーブルの上に広げると「ランチクロス」という言い方もできる。
そして、子供の学校給食用の「ランチクロス」は、「ランチクロス」としても、「ナプキン」としても使用できるのであり、また、「テーブルナプキン」についても、ディナー用のナプキンとしてのみならず、お弁当を包むものと幅広く使用できる商品であるという紹介がされている実情がある。
したがって、被請求人の商品である「ランチクロス」は、「ナプキン」と同一視される商品であり、「織物製テーブルナプキン」の範ちゅうに入る商品である旨主張する。
しかしながら、上記2のとおり、「ランチクロス」と「テーブルナプキン」とは別異の商品であるといわなければならず、それぞれの取引において、双方の用途が明示されている場合があるからといって、同一視される商品であるということはできないし、被請求人の証明に係る「ランチクロス ユキちゃん」は、「ランチクロス」として取引されているものであって、「テーブルナプキン」として取引されているということはできない。
したがって、請求人の主張を採用することはできない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人が提出した証拠からは、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、請求に係る指定商品「織物製テーブルナプキン」について、本件商標を使用していることを証明したものということができない。
したがって、本件商標の指定商品「織物製テーブルナプキン」の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決日 2016-08-03 
出願番号 商願2001-47162(T2001-47162) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Z24)
最終処分 成立  
前審関与審査官 網谷 麻里子 
特許庁審判長 青木 博文
特許庁審判官 原田 信彦
高橋 幸志
登録日 2002-12-06 
登録番号 商標登録第4627732号(T4627732) 
商標の称呼 ハイディ、ハイジ、ヘイディ、アガールオブザアルプス、ガールオブザアルプス 
代理人 今岡 智紀 
代理人 矢崎 和彦 
代理人 特許業務法人東京アルパ特許事務所 
代理人 高田 泰彦 
代理人 柏 延之 
代理人 勝沼 宏仁 
代理人 宮嶋 学 
代理人 本宮 照久 

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