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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W21
審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W21
管理番号 1317259 
異議申立番号 異議2014-900046 
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2014-02-14 
確定日 2016-07-04 
異議申立件数
事件の表示 登録第5629707号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5629707号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5629707号商標(以下「本件商標」という。)は、「tumbler」の欧文字を標準文字で表してなり、平成25年1月29日に登録出願され、第21類「ガラス製包装用容器(「ガラス製栓・ガラス製ふた」を除く。),鍋類,コーヒー沸かし(電気式のものを除く。),鉄瓶,やかん,携帯用アイスボックス,米びつ,食品保存用ガラス瓶,水筒,魔法瓶,調理用具,アイスペール,こしょう入れ,砂糖入れ,ざる,塩振り出し容器,しゃもじ,じょうご,ストロー,膳,栓抜,卵立て,タルト取り分け用へら,ナプキンホルダー,ナプキンリング,鍋敷き,はし,はし箱,ひしゃく,ふるい,盆,ようじ,ようじ入れ,清掃用具及び洗濯用具」を指定商品として、平成25年9月25日に登録査定、同年11月15日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
1 登録異議申立人「荒木規雄」(以下「申立人1」という。)は、本件商標の登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨次のように主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第16号証(枝番を含む。)を提出した。
なお、申立人1が提出した甲号証を、以下「申立1甲○」という場合がある。
(1)「tumbler」や「タンブラー」の語の解釈について
本件商標の審査において、審査官は本件商標を構成する「tumbler」の意味を「平底の大型コップ」等と判断し、その結果、商品「タンブラー」は審査基準上の「食器類」の範囲の商品に属すると判断している。
確かに、「タンブラー」が商品「食器類」の一種を意味する語であることは否定しない。しかしながら、平成8年(1996年)にアメリカのコーヒーチェーンである「スターバックスコーヒー」が日本に出店し、円筒形の蓋付きの容器も「タンブラー」として販売するようになり、また、現在では、その他のコーヒーショップや飲料容器のメーカーが同様の商品を「タンブラー」として販売している実情があり、「タンブラー」の語に接する現在の需要者・取引者は「飲料を保存・貯蔵して携帯可能な(持ち運びが容易な)容器であって、かつ、食器と同様に直接飲食に利用可能な容器」という意味合いも想起し、審査基準上の商品「食器類」の一種である食器としての「タンブラー」のみを想起するものではない。
(2)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について
本件の審理においては、現在の需要者・取引者は、「タンブラー」の語から従来の「平底の大型のコップ」の意味だけではなく、「飲料を保存・貯蔵して携帯可能な(持ち運びが容易な)容器であって、かつ、食器と同様に直接飲食に利用可能な容器」という意味合いも想起することを認めるべきである。
そして、そのような意味で「タンブラー」の語を理解すれば、本件商標は、その指定商品中の「飲料を保存・貯蔵して携帯可能な(持ち運びが容易な)容器(例えば、魔法瓶・水筒)であって、かつ、食器と同様に直接飲食に利用可能な容器(例えば、魔法瓶・水筒)」について使用するときは、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品(例えば、「飲料を保存・貯蔵できないガラス製包装容器」や「携帯に適さないポット式の魔法瓶」)に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるので、同法第4条第1項第16号に該当する。
(3)まとめ
以上により、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号により取り消されるべきものである。
2 登録異議申立人「サーモス株式会社」(以下「申立人2」といい、申立人1と合わせて「申立人ら」という。)は、本件商標の登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨次のように主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第35号証を提出した。
なお、申立人2が提出した甲号証を、以下「申立2甲○」という場合がある。
(1)商標法第3条第1項第3号について
本件商標の指定商品中「水筒,魔法瓶」については、容器本体に蓋を取り付けて携帯可能にした商品について「タンブラー」と称していることから、本件商標は、水筒・魔法瓶の形状・タイプ名を表示するにすぎず、自他商品識別標識としての機能を果たし得ない。
(2)商標法第4条第1項第16号について
本件商標の指定商品中「水筒,魔法瓶」について、上記(1)が認められないとしても、同じ飲料容器に係る商標であるから、本件商標は、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある。
それ以外の商品についても、第21類に属するキッチン用品等の性格を考慮すれば、本件商標は、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある。
(3)むすび
本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号により取り消されるべきものである。

第3 取消理由通知
当審において、商標権者に対して平成28年3月8日付けで通知した取消理由は、次のとおりである。
1 「tumbler」及び「タンブラー」の語について
(1)本件商標は、前記第1のとおり、「tumbler」の欧文字を標準文字で表してなるところ、該語は、「(平底で柄のない)大ぶりなグラス。タンブラー。」の意味を有する英語であり、その表音である「タンブラー」の片仮名語は、「広辞苑第六版」(株式会社岩波書店)に「タンブラー【tumbler】」の見出し語の下、「平底の大型コップ。」と載録されているのを始め、各種国語辞典にも同様に載録されていることなどから、外来語として慣れ親しんでいるといい得るものである。また、「現代用語の基礎知識/カタカナ外来語/略語辞典(第4版)」(2011年3月株式会社自由国民社発行)において、「タンブラー(tumbler)」の見出し語の下、「(a)水などを飲むときに使う足や柄のない平底のコップ。(b)スターバックスの持ち帰り用プラスチック製容器。お客がこの容器を持って飲み物を買うと代金が割り引かれる。デザインの良さでも知られる。(c)・・・」と載録されていることが認められる(申立1甲6)。
(2)申立人1が提出した甲号証(本件登録出願の登録査定前のものであることが確認できるもの。)によれば、以下の事実が認められる。
ア 円筒形の携帯用飲料容器が「タンブラー」と称されてインターネット上で販売されていること(申立1甲7の1,同甲7の2)
イ コーヒー販売店で円筒形の携帯用飲料容器が、「タンブラー」の語をもって紹介ないし販売されていること
(ア)「東京タワー限定オリジナルタンブラー」との表示とともに円筒形の携帯用飲料容器が紹介されていること(申立1甲8の2)
(イ)「『ホテル青森オリジナルコーヒータンブラー』販売中です。ご自宅や会社で気軽に本格的なコーヒーをお愉しみ頂けます。」との説明とともに円筒形の携帯用飲料容器が紹介されていること(申立1甲8の3)
ウ 「THERMOS 真空断熱ケータイタンブラー」として、円筒形の携帯用飲料容器がインターネット上で紹介されていること(申立1甲9の1)
エ 円筒形の携帯用飲料容器が「タンブラー」と称されてインターネット上で販売ないし紹介されていること
(ア)「ウミウシ柄のタンブラーが新登場」として、円筒形の携帯用飲料容器の販売紹介がされていること(申立1甲13の2)
(イ)「サーモマグ スプラッシュプルーフタンブラー ブルー」として、円筒形の携帯用飲料容器の販売紹介がされていること(申立1甲13の3)
(ウ)「持ち運びに便利!お花がかわいい大型タンブラー」として、円筒形の携帯用飲料容器の販売紹介がされていること(申立1甲13の4)
(エ)「THERMOS 真空断熱ケータイタンブラー」として、円筒形の携帯用飲料容器の販売紹介がされていること(申立1甲13の5)
オ 「タンブラー」の語を使用した携帯用飲料容器についての記事が新聞に掲載されていること
(ア)2005年12月22日付け東京読売新聞朝刊において、「[挑戦新話・地域発エコ社会]『みやぎ・環境とくらし・ネットワーク』=宮城」の見出しの下、「◇仙台市◆タンブラーでゴミ削減・・・ベガルタ仙台のオフィシャルショップ『オーレ・ベガルタ』。サポーター向けのグッズが並ぶ店内で、スタッフの・・・に人気商品を尋ねると、450ミリ・リットルサイズの樹脂製タンブラーを取り出してくれた。・・・通常の使い捨ての紙コップの代わりに、再生利用可能なタンブラーを持参して飲み物を注いでもらえば、・・・。2004年にスタジアムで販売したビールの4割が、タンブラーでの注文だったという。」との記載がある(申立1甲14の1)。
(イ)2006年5月31日付け産経新聞東京朝刊において、「『マイカップ』制続々と 自治体、大学の自販機など・・・」の見出しの下、「こうしたマイカップ制度の火付け役といわれるのは、コーヒーショップ『スターバックスコーヒー』のタンブラー販売。プラスチック製の容器に飲み口のついたふたが付いていて持ち運びしやすい。」との記載がある(申立1甲14の2)。
(ウ)2009年4月19日付け大阪読売新聞朝刊において、「おしゃれマイカップで社会貢献 売上金寄付、アジアに井戸を/大丸梅田店」の見出しの下、「大丸梅田店は・・・ファッションブランドと共同で『コラボレーションタンブラー』を発売する。・・・タンブラーは、ふたの付いた筒形の大きなマグカップ。保温・保冷効果もあり、飲み物を入れて持ち歩く。紙コップやペットボトルと違って容器ごみにならないので、マイカップとして利用する人もいる。」との記載がある(申立1甲14の3)。
(エ)2009年7月8日付け毎日新聞地方版において、「お茶のあずま園:エコとおいしさ一石二鳥 水筒などに好みのお茶サービス」の見出しの下、「『お茶のあずま園』が、水筒などを持参すれば好みのお茶を入れてくれる『給茶』のサービスを進めている。・・・水筒やタンブラーなど『マイボトル』を繰り返し使うことでゴミの減量にもなり、・・・さんは『・・・新鮮で安全な専門店のお茶を家でいれて持ち歩く習慣が広がれば』と期待している。」との記載がある(申立1甲14の4)。
(オ)2009年8月12日付け日本経済新聞地方経済面において、「大宮でも『マイボトル』、そごう大宮店の4店で。」の見出しの下、「そごう大宮店・・・の店内の喫茶店4店は、水筒やタンブラーなど『マイボトル』の持参を促す試みを始めた。マイボトル持参で飲み物を割り引くほか、持ち帰りも可能とする。」との記載がある(申立1甲14の6(枝番を含む。))。
(カ)2009年10月22日付け日本経済新聞地方経済面において、「『まなびピア』でタンブラー配布、埼玉りそな銀、無料で。」の見出しの下、「埼玉りそな銀行は・・・飲み物を入れるタンブラー=写真=3000個を無料で配る。」との記載とともに円筒形の携帯用飲料容器の写真が掲載されている(申立1甲14の7(枝番を含む。))。
(キ)2010年5月9日付け朝日新聞朝刊において、「増えるマイボトル派 エコ・節約志向が背景 カフェでも販売、自治体でも後押し」の見出しの下、「タリーズコーヒージャパンは、この春から各店で、筒状のステンレスボトルの販売を始めた。これまで携帯用タンブラーを中心に販売してきたが、水筒を持ち歩く人が増えてきたため『ニーズに対応』(同社)という。」との記載がある(申立1甲14の8)。
(ク)2010年6月5日付け毎日新聞朝刊において、「水と緑の環境:2010年 MOTTAINAIキャンペーン プロジェクト始動」の見出しの下、「環境月間の6月、水筒やタンブラーなどフタで密閉して持ち運びできる飲料容器『マイボトル』を普及させようという取り組みが相次いで始まった。」との記載がある(申立1甲14の9)。
(ケ)2010年7月10日付け毎日新聞朝刊において、「みんなの広場:心に『エコ』を定着させたい・・・」の見出しの下、「水筒やタンブラーなどフタで密閉して持ち運びできる飲料容器を普及させようという取り組みです。」との記載がある(申立1甲14の10)。
(コ)2010年7月16日付け毎日新聞夕刊において、「キャンパる・なにコレ!?:マイカップで容器ゴミ削減 フェリス女学院が実施」の見出しの下、「同大の学生モニター400人を集め、専用タンブラーを500円で販売。構内2カ所に設置された給水機で、購入したタンブラーを使って2カ月過ごすというもの。・・・」との記事がある(申立1甲14の11)。
(サ)2010年8月17日付け日本経済新聞電子版において、「マイボトル派広がれ 大学・自治体が後押し、ゴミ削減に期待」の見出しの下、「水筒やタンブラーなどを『マイボトル』として持ち歩き、紙コップやペットボトルのごみを抑える試みが大学や自治体で広がっている。」との記事がある(申立1甲14の12)。
(シ)2010年10月8日付け日経産業新聞において、「北海道エネルギー、給油所に給水機、ペット容器利用削減狙う。」の見出しの下、「このほど直営5店舗でフタ付きのタンブラー計2500個を無料配布し、スタンドで無料給水の実証を始めた・・・タンブラーをマイボトルとして使ってもらうことでペットボトルの削減を図る。」との記事がある(申立1甲14の13(枝番を含む。))。
(ス)2010年10月21日付け日本経済新聞において、「埼玉県、マイボトル運動推進、携帯に特典情報配信。」の見出しの下、「埼玉県は水筒やタンブラーなどマイボトルの持参を促す『みんなでマイボトル運動』を推進する・・・マイボトルを持参すると協力店は値段を割り引きしたり、飲料の量を増量したりする特典を付ける。」との記事がある(申立1甲14の14(枝番を含む。))。
(セ)2011年2月1日付け発売の月刊販売革新(117ページ)において、「断熱技術を使ったライフスタイルを提案する サーモス(株)・・・」の見出しの下、「最近、自宅から『マイボトル』に入れたお茶を持ってくる人や、コーヒーショップで『マイタンブラー』に入れてもらう人をよく見掛けるようになった。・・・」との記事がある(申立1甲14の15(枝番を含む。))。
(ソ)2011年11月20日付け読売新聞朝刊東京版において、「東経大の地下水 学生が列 ごみの削減『マイ容器運動』契機=多摩」の見出しの下、「学生は自分のカップやタンブラーを持参。・・・今年9月末には、学生がデザインしたタンブラー1000個を用意、すでに200個を配布した。・・・」との記事がある。(申立1甲14の16)。
(タ)2013年1月1日付け発売の日経WOMAN(92?93ページ)において、「・・・目からウロコの節約ワザ&貯めワザ、一挙紹介!」の見出しの下、「スタバで無線LANを使う。タンブラー持参でドリンク代20円引き」との記事がある(申立1甲14の17(枝番を含む。))。
(チ)2013年5月17日付け日経産業新聞において、「デザインここで勝負 三菱レイヨン・クリンスイ 携帯浄水器『クリンスイタンブラー』」の見出しの下、「『マイボトル』で飲み物を持ち運ぶ人が増えるなか、『浄水器を持ち運ぶ』という生活様式を提案した。ペットボトルに比べてゴミを減量できるうえ、飲みたい時にだけ水を入れればいいため、持ち運びにも便利だ。」との記事がある(申立1甲14の18(枝番を含む。))。
カ 「タンブラー」の語について、インターネット上に配信された新聞記事において、以下の内容が掲載されていること
(ア)2012年10月25日付け朝日新聞において、「マイナビムック『タンブラーランチ はじめてセット&ヘルシーメニュー?密閉型タンブラーとロングスプーン付き?』・・・」の見出しの下、「飲み物を入れて持ち運ぶ『タンブラー』。今、そのタンブラーをお弁当箱として使う『タンブラーランチ』が注目を集めています。」との記事がある(申立1甲15の1)。
(イ)2013年8月1日付け朝日新聞において、「三菱レイヨン・クリンスイクリンスイ・タンブラー・・・」の見出しの下、「水道水に含まれる残留塩素を除去してくれる持ち運び可能なタンブラー浄水器です。」との記事がある(申立1甲15の4)。
(ウ)2013年8月1日付け朝日新聞において、「『天保水滸伝』キャラのタンブラー発売 千葉」の見出しの下、「・・・町を舞台とした『天保水滸伝』のアニメキャラクターでデザインしたタンブラーを販売している。」との記事とともに、その商品の写真が掲載されている(申立1甲15の5)。
(エ)2010年6月21日付け原宿新聞において、「タンブラーで寄付促進へ、清掃活動のNPO・・・」の見出しの下、「・・・活動を支える一定額以上の寄付者に、タンブラーをプレゼントする運動を始め、話題を呼んでいる。夏に向かうシーズンに、飲み物などを入れて持ち歩くのに便利で、シンプルな中にもシャレたデザインが特徴。」との記事とともに、その商品の写真が掲載されている(申立1甲15の6)。
(オ)2012年10月26日付け日本経済新聞において、「外出先で振って浄水 三菱レイヨン・クリンスイ」の見出しの下、「・・・携帯型浄水器『クリンスイ タンブラーTM804』 密閉タイプのキャップで水をこぼれにくくし、片手でもワンタッチで開閉できる広い飲み口にした。ふたを取らずに注水できる。」との記事とともに、その商品の写真が掲載されている(申立1甲15の7)。
(カ)奈良新聞において、2012年12月3日付け掲載の記事として、「・・・人気のタンブラー型浄水器・・・新発売」のタイトルの下、「いつでもどこでも水道水をおいしく飲めることで人気になっているタンブラー型浄水器は、・・・持ち歩きできるサイズで・・・」の記事とともに、その商品の写真が掲載されている(申立1甲15の8)。
(キ)日経BizアカデミーBizCOLLEGEのウェブサイトにおいて、2012年10月24日付けの記事として、「オシャレな『タンブラー弁当』ヒットの背後に女子たちの意外な弁当感」のタイトルの下、「念のため、コーヒーのタンブラーっていうのは、・・・ある程度の保温性があって、ちょっとやそっと揺らしたくらいではコーヒーがこぼれない密封性もある。しかも縦型だから、横にせずにバッグに入れられて、持ち歩きがしやすい。」との記載がある(申立1甲15の10)。
(ク)ガジェット通信において、2012年5月16日付けの記事として、「保温・保冷効果があって、飲み物をどこにでも運べるタンブラー。スターバックスなどコーヒーショップに持ち込めば、カップの節約代として20円程度が割引となったり・・・」との記載がある(申立1甲15の11)。
キ 「円筒形の携帯用飲料容器」が「タンブラー」と称されてインターネット上の情報として配信されている事実があること(申立1甲16(枝番を含む。))。
(3)申立人2が提出した甲号証(本件商標登録出願の登録査定前のものであることが確認できるもの。)によれば、以下の事実が認められる。
ア 円筒形の携帯用飲料容器が「真空断熱携帯タンブラー」と称されてインターネット上で販売されていること(申立2甲2)
イ 円筒形の携帯用飲料容器が「ステンレスタンブラー」と称されてインターネット上で販売されていること(申立2甲5)
ウ 円筒形の携帯用飲料容器が「ステンレスタンブラー 夏は冷たく、冬は温かい飲み物を入れて、そのまま飲めるタンブラータイプ」として、インターネット上で販売されていること(申立2甲7)
エ 「ニコンダイレクト、レンズそっくりの『ニッコールタンブラー』 24-70」とのタイトルの下、円筒形の携帯用飲料容器がインターネット上で紹介されていること(申立2甲13)
オ 徳間書店2013年7月15日発行の雑誌「グッとくるコーヒー」108頁には「ステンレスコンコルド\タンブラーシルバー」及び「東京12タンブラー」とのタイトルにより、円筒形の携帯用飲料容器が紹介されていること(申立2甲22)
カ 小学館2011年2月10日発行の雑誌「BE-PAL」78頁には「真空断熱ケータイタンブラーも忘れずに。」との文章とともに、円筒形の携帯用飲料容器が紹介されていること(申立2甲23)
キ 日経BP社2010年5月2日発行の雑誌「日経ヘルス」23頁には「『ボタニカルズ』の茶こし付きタンブラー。ハーブティーにも使える。耐熱温度は-30?90℃」との説明とともに、円筒形の携帯用飲料容器が紹介されていること(申立2甲24)
ク サンケイリビング社2011年5月21日発行の「リビングむさしの」8面には「“きこりん”のタンブラーが1人1個プレゼントされます。」との表示とともに、景品である円筒形の携帯用飲料容器が掲載されていること(申立2甲25)
ケ 雑誌「Bicycle magazine」2008年2月号には、「タンブラーブームを巻き起こしたスターバックスのタンブラー」との説明とともに、円筒形の携帯用飲料容器が掲載されていること(申立2甲26)
コ 雑誌「MONOQLO」2009年10月号には、「ステンレスタンブラー」、「ティータンブラー」とのタイトルの下、円筒形の携帯用飲料容器が掲載されていること(申立2甲27)
サ 雑誌「モノ・マガジン」2008年6月16日号22頁には、「サーモタンブラー」とのタイトルの下、円筒形の携帯用飲料容器が掲載されていること(申立2甲28)
シ 日経BP社の雑誌「日経ヘルス」2009年4月号の30頁には「toolbarサーモタンブラー」として、円筒形の携帯用飲料容器が紹介されていること(申立2甲29)
ス 雑誌「ガルヴィ」2007年1月号5頁には、「この『マジックタンブラー10oz』は、本体が二重構造になっている、保温性の高いタンブラー」との説明とともに、円筒形の携帯用飲料容器が掲載されていること(申立2甲30)
セ サンケイリビング社発行の情報誌「あんふぁん」2011年1月号36頁には、「保温マグ&タンブラー見せて」とのタイトルの下、円筒形の携帯用飲料容器が複数掲載されていること(申立2甲32)
ソ 情報誌「マリオン・ライフ」2007年8月号3面には、「スターバックス コーヒー ロゴタンブラー」とのタイトルの下、円筒形の携帯用飲料容器が掲載されていること(申立2甲33)
タ パール金属株式会社2010年11月発行の商品カタログ40頁には、「クレール フタ付タンブラー」として、円筒形の携帯用飲料容器が掲載されていること(申立2甲34)。
(4)小括
上記(1)ないし(3)を総合してみれば、本件商標を構成する「tumbler」の語は、片仮名「タンブラー」に通じるものであって、この語は、保温・保冷機能が付いたものを含む円筒形の携帯用飲料容器を意味し、それが「タンブラー」と称されて、本件商標登録出願前から、インターネットや新聞、雑誌において紹介・説明・報道され、また、インターネット上で通信販売されていたことが認められ、かつ、本件商標登録出願の登録査定時には、既に、これが、円筒形の携帯用飲料容器を意味するものとして、一般の消費者の間に知られていたということができるものである。
2 円筒形の携帯用飲料容器(タンブラー)と「水筒」及び「魔法瓶」との関係について
申立人らが提出した甲各号証及び当審における職権調査によれば、以下の事実が認められる。
(1)「水筒」との関係について
ア 2013年2月28日付け朝日新聞において、「『サーモス・真空断熱タンブラー』3月1日より全国で発売開始!」とのタイトルにより、当該商品について、「水筒と同じ魔法びん構造のタンブラーです。」との説明がされている(申立1甲15の2)。
イ 2010年11月5日付け金沢経済新聞において、「オリジナル『金箔タンブラー』、金沢・竪町のジーンズショップが商品化」とのタイトルの下、「洋服のメークも手がける金沢のジーンズショップ・・・は11月3日、オリジナルの『金箔タンブラー』を発売した。タンブラーは、持ち運びしやすいプラスチック製の水筒。」との記載がある(申立1甲15の3)。
ウ インターネット上の個人のブログ記事において、「スタバのタンブラー」として、「スターバックスでタンブラー(保温性のある持ち運び用の水筒状グッズ)が買えること、ご存じですか?」、「『クエリエイト ユア タンブラー』なら、底が外せるため、好みの写真やモノ(砂やビーズ)を入れることも可能です。・・・あと、水やお茶を入れて水筒代わりのもなりますし、」との記載がある(申立1甲16の24)。
エ 毎日新聞社発行の雑誌「ここち」2007年6月30日号には、「すいとう」とのタイトルの下、「水筒って懐かしい……。・・・『1号店オープンのときからオリジナルのタンブラーを販売しています。・・・』(スターバックス・・・さん)・・・すいとうのもう一つのメリットは、中身を自分で選べることですよね。・・・」との記事とともに、各社の円筒形の携帯用飲料容器が掲載されている(申立2甲31)。
オ 2007年3月23日付け朝日新聞東京朝刊において、「(情報ファイル)タンブラー持参で割引額アップ タリーズコーヒージャパン」の見出しの下、「全国で約300店を展開するタリーズコーヒージャパンは、29日からタンブラー(簡易式水筒)を持参した場合のコーヒーなど飲み物の割引価格を現行の20円から30円に拡大する。環境に配慮し、使い捨てカップを減らす狙い。」との記事が掲載されている(当審の職権調査)。
カ 2009年12月6日付け朝日新聞東京地方版において、「会津漆器、若手とコラボ 職人が実現 東京でバイヤー向け展示会 /福島県」の見出しの下、「都内の元中学校舎にある世田谷ものづくり学校で4日から開いている展示会『愛づナチュラリズム』では、オフィスでお茶やコーヒーなどを入れて水筒のようにつかう『タンブラー』や、カップめん専用のおわん、帯留めなどのアクセサリーに応用できる漆タイル、若者を中心に人気があるタブレット菓子を収納するケースなどが並べられ、都内のセレクトショップのバイヤーらが訪れた。」との記事が掲載されている(当審の職権調査)。
キ 2011年1月28日付け読売新聞大阪版朝刊において、「エココン2010 立命館大サークル入賞 学内で野菜栽培、食堂に提供=滋賀」の見出しの下、「・・・レコラボは、廃食油を燃料として再利用する『菜の花エコプロジェクト』に興味を持った学生たちが、2004年に設立した。楽しく、おしゃれに環境問題や循環型社会への関心を高めようと、学内の大型プランターで野菜を栽培して学生食堂に提供したり、タンブラー(水筒)を持参すればカフェで10円安くコーヒーが飲める仕組みを作ったりしてきた。」との記事が掲載されている(当審の職権調査)。
(2)「魔法瓶」との関係について
ア 2013年2月28日付け朝日新聞において、「『サーモス・真空断熱タンブラー』3月1日より全国で発売開始!」とのタイトルにより、当該商品について、「水筒と同じ魔法びん構造のタンブラーです。」との説明がされている(申立1甲15の2:上記(1)アと同じ内容のもの)。
イ インターネット上の個人のブログ記事において、「タンブラー」について、「近年は魔法瓶の構造を応用して、内容物を冷めにくくしたタンブラーもあり、セルフ式コーヒーショップなどでオリジナル商品が売られていることも多い。」との説明がされている(申立1甲16の4)。
ウ 2009年7月30日付け朝日新聞東京版夕刊において、「夏を満喫する小物」との見出しの下、「神宮前の『サスギャラリー』では、表面加工が風合いのあるチタン製タンブラーシリーズ=写真。機能も優れており、タンブラーは中空構造で真空なので、いわばふたのない魔法瓶のようなもの。保冷性は抜群だ。グラスの表面に結露ができることもなく、飲み物の味を変えることもない。最後までビールがおいしくいただけそう。」との記事が掲載されている(当審の職権調査)。
(3)小括
上記(1)及び(2)によれば、円筒形の携帯用飲料容器である「タンブラー」は、飲料を持ち歩く容器である「水筒」や、真空二重構造により保温・保冷機能を有する「魔法瓶」と同様の機能を有するものとして、本件商標登録出願前から、インターネットや新聞、雑誌において紹介・説明・報道され、本件商標登録出願の登録査定時には、既に、一般の消費者の間においても、そのような機能を有する商品であるとの認識がされていたということができるものである。
3 本件商標の商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
本件商標は、「tumbler」の欧文字を標準文字で表してなるところ、該語は、上記1(1)のとおり、「(平底で柄のない)大ぶりなグラス。タンブラー。」の意味を有する英語であり、その表音である「タンブラー」の片仮名語は、「平底の大型コップ。」を意味する外来語として慣れ親しんでいるといい得るものである。
また、近年においては、「現代用語の基礎知識/カタカナ外来語/略語辞典(第4版)」(2011年3月株式会社自由国民社発行)において、「タンブラー(tumbler)」の見出し語の下、「(a)水などを飲むときに使う足や柄のない平底のコップ。(b)スターバックスの持ち帰り用プラスチック製容器。お客がこの容器を持って飲み物を買うと代金が割り引かれる。デザインの良さでも知られる。(c)・・・」と載録されているように、狭い意味での食器の概念を超えて用いられる語となっていることが認められる。
このことは、上記1(4)のとおり、保温・保冷機能が付いたものを含む円筒形の携帯用飲料容器を「タンブラー」と称されて、インターネットや新聞、雑誌において紹介・説明・報道され、また、インターネット上で通信販売されていたことなどから、本件商標の登録査定時には、既に、「tumbler」あるいは「タンブラー」の語が、円筒形の携帯用飲料容器を意味するものとして、一般の消費者の間に知られていたことからもいうことができるものである。
また、「タンブラー」と称される商品は、上記2(3)のとおり、「水筒」あるいは「魔法瓶」の機能を有する商品も存在することが、一般の消費者の間においても認識されていたということができるものである。
そうとすれば、本件商標は、これをその指定商品中、「水筒,魔法瓶」に使用する時には、それが、円筒形の携帯用飲料容器であることを表しているにすぎないものであり、当該指定商品の用途、機能、品質を有する商品であることを、普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるといわなければならず、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであったというべきである。
また、本件商標を、その指定商品中、「水筒,魔法瓶」以外の商品に使用する時には、商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標というべきであり、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当するものであったといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものといわなければならない。

第4 商標権者の意見
前記第3の取消理由に対し、商標権者は、何ら意見を述べるところがない。

第5 当審の判断
本件商標についてした前記第3の取消理由は、妥当なものと認められる。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録したといわざるを得ないから、本件商標の登録は、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2016-05-24 
出願番号 商願2013-5063(T2013-5063) 
審決分類 T 1 651・ 13- Z (W21)
T 1 651・ 272- Z (W21)
最終処分 取消  
前審関与審査官 岩崎 安子佐藤 淳 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 堀内 仁子
酒井 福造
登録日 2013-11-15 
登録番号 商標登録第5629707号(T5629707) 
権利者 タイガー魔法瓶株式会社
商標の称呼 タンブラー 
代理人 木戸 一彦 
代理人 木戸 良彦 

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