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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W293043
審判 一部申立て  登録を維持 W293043
審判 一部申立て  登録を維持 W293043
管理番号 1310901 
異議申立番号 異議2015-900197 
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-03-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-06-18 
確定日 2016-02-15 
異議申立件数
事件の表示 登録第5750699号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5750699号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5750699号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成26年10月31日に登録出願、第30類「茶」を含む、第29類、第30類及び第43類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同27年2月13日に登録査定、同年3月20日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由として引用する国際登録第1070980商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、2012年(平成24年)5月2日に国際商標登録出願(事後指定)、第30類「Tea sold in loose tea form, in caddies, bags or capsules; tea-based preparations; pastries, biscuits and confectionery; herbal teas and infusions, non-medicinal.」、第5類及び第43類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成25年3月15日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、その指定商品中、第30類「茶」については、商標法第4条第1項第11号に該当するから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 商標の類否について
(1)外観対比
本件商標は、上記第1のとおり、黒塗りされた円形状と、かかる円形状内に特徴的な筆記体で表されたローマ文字「B」を灰色で表して成るものである。
本件商標の構成中、黒塗りされた円形状自体は、極めて単純なものであり、識別力を有さない部分と考えるのが極めて妥当である。
一方で、本件商標の構成中のローマ文字「B」の部分をみるに、極めて特徴的な筆記体で表されて成るものであり、通常の取引者・需要者がかかる部分に着目して本件商標を認識するものと考えるのが自然である。
以上のことから、本件商標は、その構成中の「B」の文字部分を要部として把握すべきものであり、また、背景の黒塗りされた円形状部分とは外観上分離・独立して看取され取引に当たるものと考えるのが相当である。
他方、引用商標は、上記第2のとおり、背景に薄い灰色で表された線模様が配され、かかる背景線模様に重ねて特徴ある筆記体で表されたローマ文字「B」が表されて成るものである。
以上の構成からなる引用商標においては、薄い灰色で表された背景線模様と一部重なってはいるものの、敢えて特徴ある筆記体で表されたローマ文字「B」の形状のみを濃い黒色で強調されているところ、かかる色調の相違から外観上分離して看取されるのみならず、これらを常に一体的に把握しなければならないとする観念上その他の密接な関係を有するものとも認められない。
したがって、引用商標構成中の特徴ある筆記体で表されたローマ文字「B」の文字部分と薄い灰色で表されている他の背景線模様部分とは、外観上分離して看取され得るものであり、引用商標は、特徴ある筆記体で表されたローマ文字「B」の文字部分が独立して目印となり、取引に当たる場合も少なくいないと考えるのが自然である。
本件商標の要部と引用商標の要部とは、単にローマ文字「B」をモチーフにしたものとして同一という域を超え、線の太さ等の細部に至るまですべてが完全に一致する同一形状と認められるものである。
すなわち、両商標全体を直接対比すれば、それぞれ異なる識別力を有さない部分等を有することが認められるが、かかる差異は、時と場所を異にして離隔的に観察する場合には、強烈に印象づけられる両商標の要部の同一性の前に埋没し、その着想、構図において構成の軌を一にするものと認識されるものと考えるのが至極自然である。
したがって、商標としての機能を発揮するそれぞれの要部が外観上完全に一致する両商標は、着想、構図において、その構成の軌を一つにするものと認められるから、これらに接する通常の取引者・需要者に外観上酷似した印象を与えるものであって、相紛れるおそれが極めて高い彼此類似の商標であると言うべきである。
(2)称呼・観念対比
本件商標の要部は特徴ある筆記体で表されたローマ文字「B」であり、その文字構成に則して「ビイ」の自然称呼が生ずるものである。
また、本件商標からはその要部文字構成に則して「ローマ文字B」と言うほどの観念が生じるものである。
一方、引用商標の要部もまた本件商標と同一形状のローマ文字「B」であるところ、当然のことながら本件商標と同一の称呼及び観念が生ずるものであるから、両商標は外観のみならず称呼及び観念をも共通にする類似の商標と考えるのが至極自然である。
なお、一般にローマ文字1字で構成される商標の類否を判断する場合、便宜上そこから特定の称呼及び観念は生じないもの、あるいはこれを無視して扱われる場合がある。
例えば、対比される商標が、同じローマ文字「A」をモチーフとして成るものであるとしても、それぞれ外観が著しく異なる場合には、彼此共通の称呼「エー」及び「ローマ文字A」なる観念を生ずるものであるとしてもこのことのみで両商標を類似と判断することは行きすぎである。
すなわち、抑も本来ローマ文字1字では自他商品の識別力を発揮し得ず、主として外観上普通に用いられるものではない限り商標とはなり得ないことを鑑みれば、ローマ文字1字のモノグラムからは便宜上称呼は生じないものと考えること自体に何ら不都合は生じないものと考えられるからである。
しかしながら、たとえローマ文字1字の商標であるとしても現実的には表示されているローマ文字に即して称呼及び観念が生ずることは、現実の取引界の実情を鑑みても否定し得えず、対比される商標の類否を判断する場合にも、決して無視し得ない場合がある。
例えば、対比される商標が、同じローマ文字「G」とローマ文字「C」をモチーフとしてなるモノグラム・図形の場合、これらが近似する外観を呈していたとしてもそれぞれ明確に異なる自然称呼「ジー」「シー」が生ずる場合には、外観形状の近似点にのみ拘泥することなく称呼及び観念上の明確な相違をも類否判断の要素に加えて総合的に判断すべきである。
けだし、通常の注意力を有する取引者・需用者は、たとえローマ文字1字のモノグラム・図形であっても外観、称呼、観念の観点から得られる情報すべてを総合的に看取して記憶し、その情報を的確に他者に伝達しようと努力するものだからである。
したがって、本件商標と引用商標との類否判断を行うにあたっても、ローマ文字「B」1字のモノグラム・図形であるからとして、安易に称呼・観念が生じないものとして扱うことは許されず、上述の通り双方の商標要部が外観上が完全に一致することに加え、ここから生ずる称呼及び観念をも総合的に勘案して行うべきである。
すなわち、上述の通り両商標はその要部において外観が完全に一致するものであることに加え、その要部から生ずる称呼及び観念をも完全に一致することをも総合的に勘案すれば、直接対比観察で双方の識別力の弱い部分の差異が見い出せるとしても、かかる差異は、時と場所を異にして離隔的に観察する場合には、強烈に印象づけられる両商標の要部の外観、称呼、観念の完全なる同一性の前に埋没し、その結果、両商標はその着想、構図において構成の軌を一にするものと認識される類似のものと考えるのが至極自然である。
2 指定商品の類否について
引用商標の指定商品には第30類「Tea sold in loose tea form, in caddies, bags or capsules; tea-based preparations; pastries, biscuits and confectionery; herbal teas and infusions, non-medicinal.(包装容器に入れていない状態で、茶缶・ティーバックスはカプセルに入れて販売されている茶、茶を主原料とする調製品、薬草茶及び浸出液(医療用のものを除く))」を含むものである(甲第2号証)。
一方、本件商標の指定商品には、第30類「茶」が含まれている。
かかる両商標の指定商品は、同一若しくは類似の商品であることは明らかである。
3 引用商標の商標権者による取引の実情
申立人は、1919年に仏国パリで紅茶の専門店を開始して今日に至っており、紅茶専門店の老舗として広く知られている(甲第3号証)。
また、申立人は長年に渡り高品質の商品を提供し続けてきた結果、仏国で最も権威のあるグルメ誌「Le guide des Goumands」の紅茶部門で4年連続で金賞を受賞するに至り、フランスの5つ星ホテルや有名レストランにもその商品が提供されているなど、その品質の高さはフランス国内にとどまらず世界の紅茶愛好家等を含めた取引者・需要者の間に広く知られるに至っている(甲第3号証)。
一方、日本国内においては、2012年3月2日に、東京都千代田区丸ノ内に直営店を開設したのを皮切りに、東京都港区六本木にも直営店を開設して、待望されていた申立人の商品を手軽に入手することが可能となった結果、忽ちのうちに日本国内の取引者・需要者の間にも広く知られるに至っている(甲第3号証)。
なお、引用商標は長年に渡り申立人が提供する紅茶等商品の包装物、店舗看板、WEBサイト、取引書類その他において使用されており、申立人の業務にかかる商品を示すものとして取引者・需要者の間に広く知られるに至っている(甲第3号証)。
以上の申立人による取引の実情を鑑みるに、引用商標に類似する本件商標がその指定商品中「茶」に使用される場合、申立人の業務にかかる商品であるかのごとく誤認・混同を生ずることは明らかである。
4 むすび
上述したとおり、本件商標は、甲第2号証の登録商標と類似のものであり、また、その指定商品「茶」も同一又は類似のものである。
したがって、本件商標登録の指定商品のうち第30類「茶」については、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである。

第4 当審の判断
1 本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり、輪郭を灰色とした黒塗りの円図形内に、欧文字の「B」をスクリプト書体の一種であるエドワーディアン・スクリプト書体により灰色で表してなるものであり、この書体により表された欧文字「B」単独では、きわめて簡単で、かつ、ありふれた標章というべきものであって、自他商品の識別標識としての機能を有していないというのが相当である。
したがって、本件商標は、円輪郭を含めたその外観全体をもって自他商品の識別標識としての機能を果たしているものと認められ、特定の称呼及び観念は生じないというべきである。
2 引用商標について
引用商標は、上記第2のとおり、エドワーディアン・スクリプト書体で表した欧文字「B」と、それを縮小して左右を反転させ灰色で表したものとを組み合わせたモノグラムであって、ここから特定の部分が分離して観察されるとはいえず、その外観全体をもって取引に資され、特定の称呼及び観念は生じないとみるのが相当である。
3 引用商標の取引の実情について
申立人は、甲第3号証(枝番号を含む。)を提出し、引用商標は、長年に渡り申立人が提供する紅茶等商品の包装物、店舗看板、WEBサイト、取引書類その他において使用されており、申立人の業務にかかる商品を示すものとして取引者・需要者の間に広く知られるに至っている旨主張している。
しかしながら、申立人がフランスの紅茶専門店であり、我が国にも店舗を開設していることは確認できるものの、この号証をもってしては、引用商標を使用した商品の販売額や取引量、宣伝広告の程度など、引用商標の周知性を推しはかる具体的な情報は把握することができないものである。
したがって、これについての申立人の主張は採用することはできず、本件商標が引用商標とその出所について混同のおそれがあると解されるような格別の取引の実情は認められない。
4 本件商標と引用商標との類否について
本件商標は、エドワーディアン・スクリプト書体の欧文字「B」を円輪郭内に配置した商標であり、他方、引用商標は、エドワーディアン・スクリプト書体の欧文字「B」を基調とするモノグラムであって、互いの外観の相違は顕著なものというべきである。
また、本件商標と引用商標とは、その称呼及び観念において比較できないものであるから、互いに紛れるおそれはない。
以上によれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1 本件商標



別掲2 引用商標

異議決定日 2016-02-04 
出願番号 商願2014-92152(T2014-92152) 
審決分類 T 1 652・ 263- Y (W293043)
T 1 652・ 261- Y (W293043)
T 1 652・ 262- Y (W293043)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鈴木 雅也 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 堀内 仁子
小松 里美
登録日 2015-03-20 
登録番号 商標登録第5750699号(T5750699) 
権利者 株式会社スリーボンドホールディングス
商標の称呼 ビイ 
代理人 特許業務法人センダ国際特許事務所 
代理人 中里 浩一 
代理人 川崎 仁 
代理人 中里 卓夫 
代理人 三嶋 景治 

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