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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X09
管理番号 1308409 
審判番号 取消2014-300731 
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2014-09-11 
確定日 2015-11-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第2232652号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2232652号商標(以下「本件商標」という。)は、「SDAS」の文字を横書きしてなり、昭和62年5月19日に登録出願、第11類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成2年5月31日に設定登録され、その後、同12年1月25日及び同22年4月27日に商標権存続期間の更新登録がされ、さらに、同年6月16日に指定商品を第9類「配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品(医療機械器具に属するものを除く),磁心,抵抗線,電極」とする指定商品の書換登録がされたものである。
なお、本件審判の請求の登録は、平成26年10月7日にされている。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の指定商品中の『第9類 電子応用機械器具及びその部品(医療機械器具に属するものを除く)』についての登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した(以下、証拠の表記について、乙号証も含め、「甲1」、「乙1」のように表記する。)。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中の第9類「電子応用機械器具及びその部品(医療機械器具に属するものを除く)」について、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、継続して3年以上日本国内において使用した事実がないから、その登録は、商標法第50条の規定により、取り消されるべきである。
2 弁駁の理由
(1)商標法第50条の適用上、「商品」とは、市場において独立して商取引の対象として流通に供される物をいう。しかし、乙1(商標権者のWebサイト抜粋)には、「SDAS(エスダス)は、開発期間短縮を実現し、お客様のビジネスのスピードアップに貢献する為の総合システム開発体系」と記載されており、中段に示された説明図によれば、総合システム開発体系SDASは、企業システム全体計画の技術、保守を支える技術、アプリ開発を支える技術及びプロセス・プロマネを支える技術等からなる開発体系と理解できる。「総合システム開発体系SDAS」は、市場で取引され、代替性があり、かつ、流通性のある有体物とはいえないから、商標法上の商品に該当しないものと考えられる。
(2)乙2(商標権者のWebサイト抜粋)には、総合システム開発体系「SDAS」を構成するサービス・製品群の紹介があり、サービス、構築ツール/フレームワーク等の項目ごとにサービス・製品が列挙され、個々に2?3行程度の説明文が付されている。該サービス・製品群の中に商品名を「SDAS」とするものはなく、説明文においても総合システム開発体系SDASへの言及はない。唯一、その他に記載の「SDAS統合CASE AA開発ソリューションセット」には「SDAS」の文字が含まれているが、「SDAS統合CASE AA開発ソリューションセット」は、「SDAS統合CASE」と「AA開発ソリューションセット」の間に半角程度の隙間があることを除いて、同書、同大の文字を等間隔にまとまりよく表してなることから、一連一体の商標として理解、認識されるものであり、本件商標と称呼・観念において同一の商標とはいえない。
また、乙6(商標権者のWebサイト抜粋)に、「“SDAS統合CASE AA開発ソリューションセット”は、業務モデリングツールである・・・と、その必須ソフトウェアである・・・から構成されるCASEツール(セット商品)です。」との説明があることから、「SDAS統合CASE AA開発ソリューションセット」は、商標全体で商品の内容を表すものであり、商標の一体性が高いといえる。したがって、「SDAS」の文字部分のみが独立して出所識別標識として機能するものとはいえず、また、実際の取引の場において「SDAS」の文字を殊更に抽出して認識されるとすべき特段の理由もない。
さらに、乙8(商標権者のWebサイト抜粋)には、価格表が掲載されているが、前記のように、「SDAS統合CASE AA開発ソリューションセット」は、本件商標と同一の商標とはいえないことから、登録商標の使用に該当しない。
(3)乙1ないし乙5(商標権者のWebサイト抜粋)によれば、「SDAS」は総合システム開発体系の名称であって、総合システム開発体系「SDAS」を構成する製品群はそれぞれ異なる商品名となっている。商標権者のWebサイトは、商品に関する広告と認識されるというより、総合システム開発体系「SDAS」に関する詳細な説明と理解される。本件商標が商品について使用されたかどうかについては、被請求人は、登録商標を付した商品・商品の包装や、登録商標を付した商品に関する注文書・納品書等、実際に登録商標を付した商品が製造・販売されたことを示す具体的証拠を何ら提出していないため、明らかではない。
(4)使用時期に関して、被請求人は、乙1、乙2、乙9及び乙10(Webサイト抜粋)は、2013年にそれぞれ更新が行われたと主張するが、該主張の裏付けとなる証拠は提出されていない。乙1ないし乙11(Webサイト抜粋)は、ページ右下に「2014/11/19」と示されていることから、本件審判の請求日後の2014年11月19日に印刷されたものと推測できる。しかし、本件審判の請求の登録前3年以内においても、乙1ないし乙11に、同一の記載がされていたかどうかは明らかにされていない。また、雑誌「FUJITSU 2012-3月号(VOL.63,NO.2 )」(乙13)が2012年3月に発行されたものであるとしても、掲載記事「新たな地平の先に見えてきたソフトウェア技術」(乙12)は、技術体系について解説するものであって、本件商標がその指定商品について使用されたことを証明するものとはいえない。
(5)以上より、乙各号証を総合しても、本件商標が本件請求に係る指定商品について3年以内に日本国内において、商標権者によって使用されたことが証明されたとはいえない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙1ないし乙13を提出した。
1 使用の事実
(1)商標の使用者
Webサイト抜粋(乙1?乙10)には、商標権者のコーポレートロゴである「FUJITSUロゴ」が左上に表示され、右下には「Copyright 1994-2014 FUJITSU」が表示されている。また、当該Webサイト左下の「このサイトについて」の文字部分をコンピュータの画面上で押下して表示されるWebサイト(乙11)では、「FUJITSU日本ポータル http://jp.fujitsu.com/(以下、本ウェブサイト)は、富士通株式会社にて運営されております。」が表示される。
同様に、雑誌「FUJITSU 2012-3月号(VOL.63,NO.2)」に掲載された記事(乙12)は、商標権者のWebサイトに掲載され、何人も閲覧可能な状態にある(乙13)。
(2)使用に係る商品
Webサイト抜粋(乙1?乙10)には、請求に係る指定商品や「電子計算機用プログラム」等の商品名が記載されている。また、雑誌「FUJITSU 2012-3月号」(乙12)には、本件商標に係る商品の提供を実現するための技術等について言及されている。
(3)使用に係る商標
Webサイト抜粋(乙1?乙10)及び雑誌「FUJITSU 2012-3月号」(乙12)には、本件商標が記載されている。
(4)使用の時期
Webサイト抜粋(乙1?乙10)のうち、乙1のWebサイトは「2013年10月1日」に、乙2のWebサイトは「2013年5月10日」、乙9のWebサイトは「2013年5月7日」、乙10のWebサイトは「2013年9月3日」にそれぞれ更新を行っており、本件審判の請求日及びそれ以降も継続して閲覧可能な状態にある。また、雑誌「FUJITSU 2012-3月号」(乙13)は、その名称から「2012年3月」に発行されたことが分かる。
2 むすび
以上のとおり、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者により、請求に係る指定商品について使用されていたことが明らかである。

第4 当審の判断
1 使用の事実
(1)乙各号証によれば、以下の事実を認めることができる。
ア Webサイト抜粋(乙1?乙10)について
Webサイト抜粋(乙1?乙10)は、その内容がいつの時点で掲載されたものか明らかではないが、いずれも2014年(平成26年)11月19日にプリントアウトされたものと認められる。
(ア)乙1
「富士通の総合システム開発体系『SDAS』」の見出しの下、「SDAS(エスダス)(注1)は、開発期間短縮を実現し、お客様のビジネスのスピードアップに貢献する為の総合システム開発体系です。」、「新しい『SDAS』は、『短期間・高品質』のシステム開発を実現するとともに、『オープン性・国際標準』『ライフサイクル全般でのシステム最適化』『エンジニアリングとマネジメントを両輪とするプロジェクト遂行』を特長としています。これにより、システム開発期間を従来と比べ、概ね半減することが可能となり、ITの観点から、お客様のマーケットの動きを先取りしたビジネス展開を支援していくことで、競争優位確保に貢献します。」、「システム開発を『要件定義』『設計』『構築』『テスティング』の4フェーズに分け、それぞれのフェーズを最短化する開発手法、標準技術に基づくツール群およびテンプレートを適用することで、トータルの期間短縮を実現します。」、「注1 SDAS:System Development Architecture & Support facilities。1987年に当社が発表したお客様のアプリケーション開発における生産性向上を実現するための開発体系。」などと記載されている。
(イ)乙2
「富士通の総合システム開発体系『SDAS』」、「SDASを構成するサービス・製品群」の見出しの下、「サービス」の項目には、「TransMigrationサービス」及び「業務・システム最適化コンサルティング」が記載され、これらサービスとは項目を別立てにして、a「構築ツール/フレームワーク」、b「コンポーネント」、c「テスト支援ツール」、d「ドキュメント自動生成ツール」、e「ソフトウェア構成管理ツール」、f「その他」の各項目が記載されている。
そして、上記aには、(a)「Interstage Studio」の欄に「アプリケーションのスピーディーな開発を支援するEclipse3.2ベースの統合開発環境です。」、(b)「Interstage Application Server」の欄に「J2EEアプリケーションの短期開発を実現するフレームワーク機能を含んでいます。」、(c)「INTARFRM」の欄に「クラウド時代に対応した要件定義から設計・開発・運用・保守まで『ソフトウェアライフサイクル』を支える新しいアプリケーションフレームワーク製品です。」、(d)「InterDevelop」の欄に「業務アプリケ?ションの設計情報をもとに、Javaソースの自動生成・単体テストの自動化を実現します。フレームワークとしてINTARFRM、業務ロジック部分の開発にInterDevelopを利用することにより、システム全体の品質・効率性・継続性を確保することができます。」、(e)「Client J Framework IBRIDO」の欄に「Javaベースのリッチクライアントシステムを、高品質かつ短期間で実現するアプリケーションフレームワークです。」と記載されている。
同bには、「GKitTaglib」の欄に「JSPで使用されるカスタムタグライブラリ。電卓やカレンダ、入力フィールド、表部品等を提供します。これらの部品をWebアプリケーションに組み込むことによりWebアプリケーションに強力なプレゼンテーション力と高い開発生産性を実現します。」と記載されている。
同cには、(a)「Interdevelop AP Test エビデンスツール V7」の欄に「エビデンスの採取、およびレポート化作業を自動化するツールです。テスターのパワーを『システムの品質向上』に集中させることができます。」、(b)「Interdevelop AP Test 負荷テスト V7」の欄に「負荷テスト実施に必要なテストデータの作成から結果の検証までをフルサポートした性能・負荷テストツールです。」、(c)「Interdevelop AP Test リグレッションテスト V7」の欄に「リグレッションテストを自動化するツールです。テストデータの作成から検証までをサポートします。」、(d)「SIMPLIA/TF-LINDA」の欄に「アプリケーションプログラムを作成することなく、テストデータを汎用的に作成できるテストデータ作成支援ツール。」、(e)「SIMPLIA/TF-EXCOUNTER」の欄に「テスト時の品質向上を支援するためのツール。COBOL/Javaアプリケーションのテスト状況を客観的に判断したり、テスト漏れが無いかどうかを簡単に把握することができます。」、(f)「PGRelief Java」の欄に「Javaソースプログラムを静的解析する品質向上支援ツールです。」、(g)「SIMPLIA/Searchparty」の欄に「メンテンナンス時の調査・分析を支援するためのツール。グローバルサーバのCOBOL/YPSアプリケーションの仕様変更などの際、そのアプリケーションにどれほどの影響を及ぼすかを調査するために検索機能を提供します。」と記載されている。
同dには、「SIMPLIA/DF-COBDOC」の欄に「COBOL関連ドキュメント出力ツール。NetCOBOL、COBOL97、PowerCOBOL97およびSolaris版COBOLの開発資産から、設計書/一覧表/調査用資料を自動生成します。」と記載されている。
同eには、(a)「Interstage Application Development Cycle Manager」の欄に「アプリケーションの要件定義からリリースまでのライフサイクル管理と、アプリケーション資産と履歴の一元管理を実現するソフトウェアです。」、(b)「SIMPLIA/SC-Manager」の欄に「開発/保守プロセスとアプリケーション資産を統合的に管理し、アプリケーション開発および保守の生産性を高め、品質を向上させるためのソフトウェア構成管理ツール。プログラムソース、ドキュメントおよび実行形式ファイル等のアプリケーション資産を管理することができます。」と記載されている。
同fには、(a)「SIMPLIA/TF-MDPORT」の欄に「汎用機/オフコン・PC・UNIX機との間で、データやソースの流通を支援するツール。指定したレイアウトに従って、コード変換/ファイル形式変換を行います。」、(b)「SDAS統合CASE AA開発ソリューションセット」の欄に「業務モデリングツールである”AA/BRMODELLER”と、その必須ソフトウェアである”PowerGEM Plus”、”PowerWORDVIEW”から構成されるCASEツール(セット商品)です。」と記載されている。
(ウ)乙3
「富士通の総合システム開発体系『SDAS』」、「カタログ・資料」の見出しの下、「カタログ・紹介資料」の一覧表の「サービス・製品」欄には、「Interstage」、「INTARFRM」、「Clint J Framework IBRIDO」、「GKitTaglib」、「SIMPLIAシリーズ」と項目別に記載され、それぞれのカタログが存在することを示している(なお、「Clint J Framework IBRIDO」は紹介資料のみである。)。また、これらのカタログ・資料は、インターネット上で閲覧することができる。
(エ)乙5
「富士通の総合システム開発体系『SDAS』」、「導入事例」の見出しの下、a「B^(2).Sframework」、b「EJB」、c「SIMPLIA」、d「TransMigration」と項目別に、それぞれが導入された事例が記載されている。
(オ)乙6
「上流分析を支援するツール」、「FUJITSU Software」、「SDAS統合CASE AA開発ソリューションセット」の見出しの下、上記(イ)f(b)に記載の説明と同一の説明が記載されている。
(カ)乙8
「富士通の総合システム開発体系『SDAS』」、「SDAS統合CASE AA開発ソリューションセット」、「価格」の見出しの下、「SDAS統合CASE AA開発ソリューションセット」の価格がバージョンごと等に記載されている。
(キ)Webサイト抜粋(乙1?乙10)には、いずれも最初のページの上段部に「富士通の総合システム開発体系『SDAS』」の文字が表示されている。
イ 雑誌「FUJITSU 2012-3月号(VOL.63,NO.2)」に掲載された記事について
上記雑誌は、「新たな地平の先に見えてきたソフトウェア技術」の表題の下、「あらまし」の項目(108頁)には、「富士通は、1987年に総合システム開発体系『SDAS(System Development Architecture & Support facilities)』を発表した。当時はメインフレームを中心とした業務効率化のための新規システム開発全盛期ということもあり,SDASもシステムの『開発体系』を謳(うた)いつつ,開発を支援するツール群としての色彩が強かった。時代は流れ,ビジネスにおけるICTの役割は,単なる効率化ツールから業務の中核を担う,なくてはならないものへと変化している。一方,システム開発は一巡し,ハードウェア・ソフトウェア資産の運用・保守にICT投資の8割が割かれるという新たな局面を迎え,いかにこれらの現実に向き合い,真にビジネスに貢献する身軽で変化に強いICT資産へと変貌を遂げるかが,経営者や情報システム部門にとって喫緊の課題となっている。こうした時代背景に合わせ,SDASに,発表以来25年間にわたりICTの開発・運用現場で蓄積されたノウハウと最新の技術動向を加味する。そして,可視化,標準化,結合といったキーワードを基に,今後10年必要とされる『組み合わせて新たな価値を導出する発想とその検証』のための幅広い技術体系として再構成する。本稿では,この進化したSDASについて紹介する。」と記載されている(乙12)。また、当該雑誌は、「富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌」であり、インターネット上で閲覧することが可能である(乙13)。
(2)前記(1)で認定した事実によれば、以下のとおり判断するのが相当である。
ア 「総合システム開発体系」について
(ア)前記(1)ア(ア)によれば、商標権者の業務に係る「総合システム開発体系」とは、顧客(システム使用者)の業務に適合したコンピュータ用プログラムやコンピュータの運用等支援に関するコンピュータソフトウェアを含めたコンピュータシステムの開発期間の短縮化を実現し、顧客のビジネスのスピードアップを図るための総合システム開発体系であり、「SDAS」の文字よりなる商標が使用されていることが認められる(当事者間に争いのない事実)。
(イ)前記(1)ア(イ)及び(オ)によれば、「総合システム開発体系」は、「TransMigrationサービス」及び「業務・システム最適化コンサルティング」と称するサービスのほか、「構築ツール/フレームワーク」、「コンポーネント」、「テスト支援ツール」、「ドキュメント自動生成ツール」、「ソフトウェア構成管理ツール」及び「その他」といった用途に応じた機能を有する製品群より構成され、例えば、「構築ツール/フレームワーク」には、「INTARFRM」と称する「クラウド時代に対応した要件定義から設計・開発・運用・保守まで『ソフトウェアライフサイクル』を支える新しいアプリケーションフレームワーク製品」が存在し、「テスト支援ツール」には、「SIMPLIA/TF-LINDA」と称する「アプリケーションプログラムを作成することなく、テストデータを汎用的に作成できるテストデータ作成支援ツール」が存在し、また、「ソフトウェア構成管理ツール」には、「Interstage Application Development Cycle Manager」と称する「アプリケーションの要件定義からリリースまでのライフサイクル管理と、アプリケーション資産と履歴の一元管理を実現するソフトウェア」が存在し、さらに、「その他」には、「SIMPLIA/TF-MDPORT」と称する「汎用機/オフコン・PC・UNIX機との間で、データやソースの流通を支援するツール」及び「SDAS統合CASE AA開発ソリューションセット」と称する「業務モデリングツールである”AA/BRMODELLER”と、その必須ソフトウェアである”PowerGEM Plus”、”PowerWORDVIEW”から構成されるCASEツール(セット商品)」などが存在することが認められる。
また、前記(1)ア(カ)によれば、上記「SDAS統合CASE AA開発ソリューションセット」は、バージョンごと等に価格が設定されていることが認められる。
(ウ)前記(1)ア(ウ)によれば、「総合システム開発体系」のカタログ・資料は、「Interstage」、「INTARFRM」、「Clint J Framework IBRIDO」、「GKitTaglib」、「SIMPLIAシリーズ」と、機能ないし構成要素別に作成されており、それぞれインターネット上で閲覧することができることが認められる。
(エ)前記(1)ア(エ)によれば、「総合システム開発体系」の顧客への導入は、これを構成するサービス・製品のうちのいずれか、例えば、「SIMPLIA」、「TransMigration」というように、「総合システム開発体系」を構成するサービス又は製品が個別的にされている場合があることが認められる。
(オ)前記(1)イによれば、商標権者は、本件審判の請求の登録(平成26年10月7日)前3年以内である2012年(平成24年)3月に発行された雑誌「FUJITSU(VOL.63,NO.2)」に、商標権者が1987年に発表した総合システム開発体系「SDAS(System Development Architecture & Support facilities)」に関し、発表当時は、システムの開発を支援するツール群としての色彩が強かったが、発表以来25年の歳月が流れ、新しい時代背景に即した「組み合わせて新たな価値を導出する発想とその検証」のための幅広い技術体系として再構成する旨の記載及び進化したSDASについての紹介をしたことが認められる。また、当該雑誌は、商標権者の最新技術を隔月に紹介する情報誌であり、インターネット上で閲覧できるものである。
(カ)以上によれば、商標権者の業務に係る「総合システム開発体系」に使用される「SDAS」の文字よりなる商標は、1987年(昭和62年)の販売開始以来、少なくとも平成26年11月19日(乙1?乙10)の時点まで継続して使用されていたことを優に推認することができる。そして、「総合システム開発体系」を構成するサービス・製品群には、各種ツールとして具体的機能をもった個々のコンピュータソフトウェアを含むものであり、これらコンピュータソフトウェアは、用途に応じた機能(製品)ごとに、「INTARFRM」、「SIMPLIA」などのように、それぞれ個別的な商標が付されているものの、「総合システム開発体系」を構成するサービス・製品群であることを示す「SDAS」の表示のもとに、各サービス又は製品が個別的に取引に資されるものとして、インターネット上で紹介され、広告されたことが認められる。
してみると、商標権者の業務に係る「総合システム開発体系」に含まれる各機能を有するコンピュータソフトウェアは、それぞれ個別商品として、一般の流通市場において取引の対象となり得る流通性を有するものといえるから、商標法上の商品と解される。そして、コンピュータソフトウェアは、第9類「電子応用機械器具及びその部品(医療機械器具に属するものを除く)」の範ちゅうに属する商品と認めることができる。
イ 使用に係る商標
Webサイト抜粋(乙1?乙10)のそれぞれの最初のページの上段部に示された「富士通の総合システム開発体系『SDAS』」における「SDAS」の表示(前記(1)ア(キ))は、本件商標と同一と認められる商標というべきである。
また、前記(1)イのとおり、雑誌「FUJITSU(VOL.63,NO.2)」に掲載された「新たな地平の先に見えてきたソフトウェア技術」の表題のある総合システム開発体系の紹介記事(乙12)には、「総合システム開発体系『SDAS(System Development Architecture & Support facilities)』」ないし「SDAS」との表示があり、これより「SDAS」の表示が、「総合システム開発体系」を表示する商標であることを優に理解させるものであって、当該「SADS」の表示は、本件商標と同一と認められる商標というべきである。
したがって、使用に係る商標「SDAS」は、本件商標の使用ということができる。
ウ 使用時期
Webサイト抜粋(乙1?乙10)は、前記(1)アのとおり、その内容がいつの時点で掲載されたものか不明であるが、前記(2)ア(カ)認定のとおり、使用に係る商標「SDAS」は、商標権者の業務に係る「総合システム開発体系」について、1987年(昭和62年)の販売開始以来、少なくとも平成26年11月19日(乙1?乙10)の時点まで継続して使用されてきたことを優に推認することができる。
加えて、本件審判の請求の登録(平成26年10月7日)前3年以内である2012年(平成24年)3月に発行された雑誌「FUJITSU(VOL.63,NO.2)」は、商標権者の開発等に係る最新技術を隔月に紹介する情報誌であるから、同雑誌に、前記(2)イのとおり、「総合システム開発体系『SDAS(System Development Architecture & Support facilities)』」ないし「SDAS」との表示をもって、商標権者が、「総合システム開発体系」の紹介をした事実は、当該「総合システム開発体系『SDAS』」のサービス・製品群が優れたものであることを広く世間に知らしめるためということができ、したがって、商標権者は、同雑誌に、「総合システム開発体系『SDAS』」ないしこれを構成するサービス・製品群の広告をしたというべきである。
してみると、使用に係る商標「SDAS」の使用時期は、本件審判の請求の登録(平成26年10月7日)前3年以内であると認めることができる。
エ 登録商標の使用者が商標権者であることについては、請求人は争うことを明らかにしていない。
オ 以上によれば、商標権者は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件請求に係る指定商品「電子応用機械器具及びその部品(医療機械器具に属するものを除く)」の範ちゅうに属するコンピュータソフトウェアを含む「総合システム開発体系」について、本件商標を表示して広告をしたものと認めることができる。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、「総合システム開発体系SDAS」は、商標法上の商品ではない旨主張する(前記第2の2(1))。
しかし、前記(2)ア(カ)認定のとおり、商標権者の業務に係る「総合システム開発体系」を構成する個々のコンピュータソフトウェアは、一般の流通市場において取引の対象となり得る流通性を有するものといえるから、商標法上の商品と解されるというべきである。
したがって、請求人の上記主張は理由がない。
イ 請求人は、サービス・製品群の中に商品名を「SDAS」とするものはなく、説明文においても総合システム開発体系SDASへの言及はない(乙2)旨主張し、さらに、「その他」に記載の「SDAS統合CASE AA開発ソリューションセット」(乙2、乙6、乙8)には「SDAS」の文字が含まれているが、該表示は、一連一体の商標として理解されるから、本件商標と称呼・観念において同一の商標とはいえない旨主張する(前記第2の2(2))。
しかし、前記(2)ア(カ)認定のとおり、商標権者の業務に係る「総合システム開発体系」には、その販売開始以来、「SDAS」の文字よりなる商標が付されていたことは優に推認し得るところであり、該「SDAS」は、「総合システム開発体系」の代表的出所標識といえるのに対し、これを構成するサービス・製品群、特に製品群は、前記(1)ア(イ)のとおり、それぞれ機能別に分類され、他の製品と区別できるように、個別的に商標が付されているというべきである。そして、これら製品群は、「総合システム開発体系」を構成するものとして、「総合システム開発体系」の代表的出所標識といえる「SDAS」の文字よりなる商標のもとに、市場に流通していたものであるから、各製品に「SDAS」が付されていないとしても、これをもって、「総合システム開発体系」を構成する製品群に「SDAS」が使用されていないということはできない。このことは、「総合システム開発体系」を構成する製品群の一つである「SDAS統合CASE AA開発ソリューションセット」も同様に解されるというべきである。
また、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において発行されたと認め得る雑誌「FUJITSU(VOL.63,NO.2)」には、「総合システム開発体系」について、本件商標と同一の商標が付されていたことは、前記(2)イ認定のとおりである。
したがって、請求人の上記主張は理由がないというべきである。
ウ 請求人は、Webサイト抜粋(乙1?乙10)は、商品に関する広告と認識されるというより、総合システム開発体系「SDAS」に関する詳細な説明と理解され、本件商標が商品に使用されたかどうかについては、被請求人は、登録商標を付した商品・商品の包装や、登録商標を付した商品に関する取引書類、実際に登録商標を付した商品が製造・販売されたことを示す具体的証拠を何ら提出していないため、明らかではない旨主張する(前記第2の2(3))。
しかし、Webサイト抜粋(乙1?乙10)及び雑誌「FUJITSU(VOL.63,NO.2)」(乙12)は、商標権者の業務に係る「総合システム開発体系」について、これを構成するサービス・製品が優れたものであることを広く世間に知らしめるために詳細な説明をもって紹介をしたのであるから、「総合システム開発体系」ないしこれを構成するサービス・製品群の広告をしたというべきであって、商標法第2条第3項第8号にいう「使用」をしたということができる。
したがって、請求人の上記主張は理由がない。
エ 請求人は、被請求人が主張する、乙1、乙2、乙9、乙10についての更新を裏付ける証拠は提出されていないから、乙1ないし乙11(Webサイト抜粋)は、ページ右下の「2014/11/19」の記載から、本件審判の請求日後の2014年11月19日に印刷されたものと推測でき、これらの掲載内容が本件審判の請求の登録前3年以内においても、同一のものが掲載されていたかは明らかにされていない旨主張し、さらに、雑誌「FUJITSU(VOL.63,NO.2 )」(乙13)が2012年3月に発行されたものであるとしても、掲載記事(乙12)は、技術体系について解説するものであって、本件商標がその指定商品について使用されたことを証明するものとはいえない旨主張する(前記第2の2(4))。
被請求人が主張する、乙1、乙2、乙9、乙10についての更新を裏付ける証拠が何ら提出されていないことは、請求人の主張のとおりである。
しかし、乙1ないし乙10(Webサイト抜粋)は、商標権者の業務に係る「総合システム開発体系」がどのようなものであるか、すなわち、本件請求に係る指定商品の範ちゅうに含まれる商品であるかどうかを明らかにする証拠といえるものである。そして、前記(2)ア(カ)認定のとおり、商標権者の業務に係る「総合システム開発体系」には、独立して取引の対象となり得るコンピュータソフトウェアが含まれるものであって、かつ、本件商標と同一と認められる「SDAS」の文字よりなる商標がその販売開始以来、少なくとも平成26年11月19日(乙1?乙10)の時点まで継続して使用されてきたことを優に推認し得るところである。
また、商標権者は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において発行された雑誌「FUJITSU(VOL.63,NO.2)」において、「総合システム開発体系」について、本件商標と同一の商標を付したと認め得るところであって、雑誌「FUJITSU(VOL.63,NO.2)」は、「富士通の最新技術を隔月に紹介する」というその出版目的からして、商標権者の業務に係る「総合システム開発体系」が優れたものであることを広く世間に知らしめるために、紹介をしたものと認められるから、ここに使用商標が使用されることは、商標法第2条第3項第8号にいう「広告に使用する行為」というべきである。
したがって、請求人の上記主張は理由がない。
2 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が本件請求に係る指定商品中の「コンピュータソフトウェア」について、本件商標と同一と認められる商標の使用をしていたことを証明したと認め得るところである。
したがって、本件商標の登録は、その指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品(医療機械器具に属するものを除く)」について、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2015-08-10 
結審通知日 2015-08-13 
審決日 2015-09-28 
出願番号 商願昭62-55397 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (X09)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 手塚 義明
根岸 克弘
登録日 1990-05-31 
登録番号 商標登録第2232652号(T2232652) 
商標の称呼 スダス、エスダス、エスデイエイエス 
代理人 特許業務法人 小笠原特許事務所 
代理人 横山 淳一 

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