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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(一部取消、一部維持) W030530
審判 全部申立て  登録を取消(一部取消、一部維持) W030530
審判 全部申立て  登録を取消(一部取消、一部維持) W030530
管理番号 1307556 
異議申立番号 異議2014-900361 
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2015-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2014-12-26 
確定日 2015-10-29 
異議申立件数
事件の表示 登録第5709886号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5709886号商標の指定商品中、第3類「洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,口中清涼剤,口臭用消臭剤,動物用防臭剤,せっけん類,義歯洗浄剤,その他の歯磨き,香料,薫料」、第5類「芳香消臭剤(身体用・動物用及び工業用消臭剤並びに口臭用消臭剤を除く。),その他の消臭剤(身体用・動物用及び工業用消臭剤並びに口臭用消臭剤を除く。),防臭剤(身体用・動物用及び工業用のものを除く。),脱臭剤(身体用・動物用及び工業用のものを除く。),その他の薬剤,サプリメント,食餌療法用食品,食餌療法用飲料,乳幼児用飲料,乳幼児用食品」及び第30類「食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー,ココア,口中清涼効果を有する菓子,口臭を消すための菓子,その他の菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,香辛料,即席菓子のもと」についての商標登録を取り消す。 本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5709886号商標(以下「本件商標」という。)は、「ブラッドオレンジミント」の片仮名を標準文字により表してなり、平成26年3月25日に登録出願、第3類「家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,口中清涼剤,口臭用消臭剤,動物用防臭剤,せっけん類,義歯洗浄剤,その他の歯磨き,香料,薫料」、第5類「芳香消臭剤(身体用・動物用及び工業用消臭剤並びに口臭用消臭剤を除く。),その他の消臭剤(身体用・動物用及び工業用消臭剤並びに口臭用消臭剤を除く。),防臭剤(身体用・動物用及び工業用のものを除く。),脱臭剤(身体用・動物用及び工業用のものを除く。),その他の薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,入れ歯安定剤,歯科用材料,乳幼児用粉乳,サプリメント,食餌療法用食品,食餌療法用飲料,乳幼児用飲料,乳幼児用食品」及び第30類「食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー,ココア,口中清涼効果を有する菓子,口臭を消すための菓子,その他の菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,香辛料,即席菓子のもと,食用グルテン」を指定商品として、同年9月2日に登録査定、同年10月10日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
1 登録異議申立1の理由
登録異議申立人株式会社明治(以下「申立人A」という。)は、本件商標の指定商品中、第30類「食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー,ココア,口中清涼効果を有する菓子,口臭を消すための菓子,その他の菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,香辛料,即席菓子のもと」について、下記の理由により、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申立て、証拠方法として資料1ないし資料4(枝番号を含む。以下、申立人Aが提出した証拠方法は「A甲○」という。)を提出した。
(1)登録商標について
食品業界において、「ブラッドオレンジ」は、「オレンジの一種」を意味する語として広く使われているもの(A甲1)であり、フルーツとミントとの組み合わせについては、風味を表す語として普通に使用されている。(A甲2)
ブラッドオレンジミント味の商品が生産、流通されている事実も認められる。(A甲3)
本件商標に一事業者への独占権を与えるということは、他の事業者が「原材料名」と「ミント」の風味であることを必要適切な表示として使用しようとする際に、それを躊躇させるものであり、到底看過されるべきではない。
事実、過去の「原材料名」と「ミント」の組み合わせの商標の出願について、商標法第3条によって拒絶になっている事例は多数存在する(A甲4)。
(2)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について
本件商標をその指定商品中「食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー,ココア,口中清涼効果を有する菓子,口臭を消すための菓子,その他の菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,香辛料,即席菓子のもと」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「ブラッドオレンジとミント風味の商品」であることを認識するにとどまり、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものというべきであり、かつ、上記以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある。
(3)むすび
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、登録異議申立に係る指定商品について、商標法第43条の2第1号により取り消されるべきものである。
2 登録異議申立2の理由
異議申立人株式会社ロッテ(以下「申立人B」という。)は、本件商標について、下記の理由により、商標法第3条第1項第3号、同項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申立て、証拠方法として甲第1号証ないしないし甲第17号証(枝番号を含む。以下、申立人Bが提出した証拠方法は「B甲○」という。)を提出した。
(1)登録商標について
「ブラッドオレンジ」及び「ミント」の語は、それぞれ「果肉が暗赤色のオレンジ」及び「薄荷」を意味するものとして取引者、需要者の間に広く認知されていると共に、第3類、第5類及び第30類の商品を取扱う業界において、商品の品質(内容)を表す際に一般的に採択使用されている事実がある(B甲2ないしB甲17)。
(2)商標法第3条第1項第3号、同項第6号及び同法第4条第1項第16号について
本件商標は、「ブラッドオレンジミント」の標準文字をもって表されてなり、その構成中「ブラッドオレンジ」の文字は、オレンジの一種である「果肉が暗赤色のオレンジ」を意味し(B甲2)、菓子等の食品、化粧品や香料の材料として使用されていると認定されており(B甲3の1及び2)、実際に商品の品質を表示するに際して広く用いられているものである(B甲4及びB甲5)。
また、「ミント」の文字は、「薄荷(はっか)」を意味し(B甲2及びB甲6)、一般にその意味内容が認知されていると共に、実際に商品の品質を表示する際に広く用いられているものである(B甲7ないしB甲9)。
さらには、商取引において、「ブラッドオレンジ」及び「ミント」の各語は、第3類、第5類及び第30類の商品との関係で、商品の原材料、風味、芳香を表す表示として極めて記述的、かつ、普通名称的に用いられている事実があることをも考慮すると(B甲10ないしB甲17)、本件商標全体からは「ブラッドオレンジ及びミント」程度の意味合いが容易に理解されるにすぎないものである。
そうとすると、普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる本件商標をその指定商品中の「ブラッドオレンジ及びミントを原材料とする商品」又は「ブラッドオレンジ及びミントの風味の商品」について使用しても、これに接する取引者、需要者は、単に商品の品質(内容)を表示した語と認識するにとどまるから、該文字は自他商品識別標識としての機能を果たし得ないというべきものであり、かつ、前記意味合いに照応する商品以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるというべきものである。
上述の点に加え、「オレンジミント」及び「ミント」の語が本件に係る指定商品の分野で広く記述的に使用されている現状にあり、これらの語は独占適応性に欠けると考えられることからすると、本件商標をその指定商品に使用した場合であっても、これに接する取引者、需要者は、その商品が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないというべきものである。
(3)むすび
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当し商標登録を受けることができないものであるから、その登録は、商標法第43条の1第1号により取消されるべきものである。
3 登録異議申立3の理由
異議申立人江崎グリコ株式会社(以下「申立人C」という。)は、本件商標について、下記の理由により、商標法第3条第1項第3号又は同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申立て、証拠方法として甲第1号証ないし甲第34号証(以下、申立人Cが提出した証拠方法は「C甲○」という。)を提出した。
(1)具体的理由
本件商標は、オレンジ類に属する果実を意味する「ブラッドオレンジ」と薄荷を意味する「ミント」をつなげて表記したにすぎないので、「ブラッドオレンジとミントの香味を有する」程度の意味の品質表示にすぎない。
したがって、本件商標は、指定商品中、そのような品質の第3類「口中清涼剤,口臭用消臭剤」、第5類「サプリメント」、第30類「食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー,ココア,口中清涼効果を有する菓子,口臭を消すための菓子,その他の菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,即席菓子のもと」に用いられた場合は、商標法第3条第1項第3号に該当し、それ以外の指定商品に使用する場合は同法第4条第1項第16号に該当する。
ア 指定商品中、第30類「口中清涼効果を有する菓子,口臭を消すための菓子,その他の菓子」について
「ブラッドオレンジ」は、かつて、うんしゅうみかん一辺倒だった日本の柑橘類が、オレンジ類の輸入自由化や嗜好の多様化に伴ってさまざまな外国原産の商品が輸入されるようになった中で、最近広く使われるようになった品種である(C甲2)。名前のとおり、血のような赤色が特徴であり、生食はもちろん、赤色が食欲をそそる色であることからブラッドオレンジ味の菓子等も多数販売されるに至っている。とりわけ、菓子においてはその使用事例は多く(C甲3ないしC甲15)、本件商標と同じ「ブラッドオレンジミント」での使用事例もある(C甲16)。このことから、果実においてはもちろん、「口中清涼効果を有する菓子,口臭を消すための菓子,その他の菓子」においても原材料を示すにすぎないことは疑いないものである。
一方、「ミント」は、ガム、キャンディなど一般になじみのある原料であり(C甲17)、「ミント」を含む商標について商標法3条拒絶事例は過去に多数ある。
したがって、「ブラッドオレンジミント」は原材料を2つ並べたにすぎないので、登録されるはずないものと考える。
例えば、ガムにおいては、日本チューインガム協会によれば「フルーツ」と「ミント」は2大主要フレーバーである(C甲18)。
ガムの味名のネーミングにおいては、ミント系であれば「ミント」を語尾に配した「○○ミント」というのが多く使われている。実際、例えば、ガムの大手企業の株式会社ロッテの商品一覧でも「○○ミント」が極めて多く、フルーツとの組み合わせであれば、例外なく「フルーツ名+ミント」の構成になっている(C甲19)。
とりわけ「清涼効果」、「口臭を消す」という効果においては、「ミント」は必須の材料と言え、むしろ、ミントを含まない製品を探すほうが困難である。また、ミントのみでは刺激が強いため、多くの人への汎用性という点から、フルーツの甘いフレーバーをセットにすることがこのような業界では一般的である。
このような点からすると、フルーツのフレーバーの中で一般的な「ブラッドオレンジ」を選択し、該菓子分野の基本原料の「ミント」をセットで用いることになんらの特殊性もない。「ブラッドオレンジミント」という味を標榜する該菓子が広く売られていればもちろんであるが、仮に、それほど多く売られていないとしても、「販売者が誰でも使えるようにしておくべき」商標であって、到底独占適応性があるとはいえない。「口中清涼効果を有する菓子,口臭を消すための菓子,その他の菓子」において、登録は取り消されるべきである。
イ 指定商品中、第3類「口中清涼剤,口臭用消臭剤」及び第5類「サプリメント」について
第3類「口中清涼剤,口臭用消臭剤」、第5類「サプリメント」及び第30類「菓子」は、指定商品としては類似していないが、これらは店舗において販売される棚が近接しているなどの理由により、需要者からは商品的に極めて近いものとみられていること、これら指定商品は同じような香味を付して販売されることが多いことから、本件商標のように「味名」を示す表現についてはセットで考えなければならない。
「口中清涼剤,口臭用消臭剤」としての具体的な商品は、口中にスプレーして、あるいは口をゆすぐ時に用いて口臭を予防、除去する「マウスウォッシュ」、「口内洗浄液」のほか、丸薬形状で口に含み、なめて上記の効果を示すものなども挙げられている(C甲23)。このように「口中清涼剤,口臭用消臭剤」の形状は多様であるし、後者の場合は、口中に含み、なめたり噛んだりして服用するという点で、医薬部外品の「薬用ドロップ」、「菓子(キャンデー)」、「菓子(ミント系清涼食品)」として売られているのどあめなどと、見かけ上あまり区別がつかず、「口中清涼剤」をキーワードとするネット検索でも、これらの商品は同じコーナーに記載されている(C甲24)。このほか、服用し、胃の中でカプセルがはじけることにより息を爽やかにすることで口臭除去を狙った製品まで「口中清涼剤」に記載されている。これについては服用して有効成分を摂取する性質上、第5類の「サプリメント」に属するか、属さないとしても限りなく近いものといえる。
近年売り上げが好調なドラッグストアの売り場を見れば、このように効果や使用方法が近い製品群は販売相乗効果を狙って「オーラルケア商品」として近接した棚に配置されるのが普通であるし、ネット販売においても近いカテゴリーで提示されている(C甲25及びC甲26)。
口中清涼剤の場合、「口をさっぱりさせる」という目的で使用される以上、「ミント」は必須成分と言っても過言でなく、さらに刺激を和らげるためにフルーツの香味を加えるということはガムなどの「菓子」と同様、十分に考えられることで、実際に行われている(とくに子供用。C甲28)。
また、サプリメントは多様であり、外出先でも水なしでロの中で溶かして服用できるサプリメントも多く、「チュアブル状」として指定商品でも認められている(C甲29)。サプリメントの有効成分は苦み、えぐ味があることが多く、それをごまかすために香料を加えることは常識であり、香料としてフルーツやミントは基本的なものである(C甲30ないしC甲33)。香料の中でも基本的な「ブラッドオレンジ」や「ミント」の風味がサプリメントに使われる蓋然性は十分ありうるものである。
これらの事実を加味すると、第3類「口中清涼剤,口臭用消臭剤」、第5類「サプリメント」においても「口中清涼効果を有する菓子,口臭を消すための菓子,その他の菓子」と同様、本件商標の登録は取り消すことが妥当であると考えられる。
ウ 指定商品中、第30類「食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー,ココア,その他の菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,即席菓子のもと」について
「菓子」と同じ類似群がつけられている「パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」は登録を取り消されるべきである。現代においては、加工食品には多かれ少なかれ香料は使用されているものであり、果物やミントの風味を付与することはどれに対してもされる可能性があることから、「菓子」同様に、「ブラッドオレンジミント」という味名に独占権を付与して自由な使用を阻害することは、商標本来の趣旨に則るものでない。
また、「食品香料(精油のものを除く。)」については、フルーツ香料、ミント香料などが多くあり、香料は複数のものを配合して食品原料とするのが普通であり、「茶」においては、「ミントティー」や、フルーツの香味を入れた「アップルティー」、「レモンティー」などが一般的なことから、本件商標は識別力を欠くというべきである。
さらに、「ココア」はチョコレートの飲料版ともいえることから「ミントチョコ」、「フルーツを入れたチョコ」が一般的なことを考慮すれば、「ココア」についても自他商品識別力を欠くというべきであり、「茶」や「ココア」と関連性もある「コーヒー」についても同様の判断が妥当である。
「即席菓子のもと」については、「ブラッドオレンジ」をミックスした製品もある(C甲34)。さらに製品パッケージの出来上がり写真にはミントの葉があしらわれるのがこの手の製品の定番であり、「即席菓子のもと」においても自他商品識別力を欠くことは明白である。
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号又は同法第4条第1項第16号に該当する。
(2)むすび
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号又は同法第4条第1項第16号に該当し商標登録を受けることができないものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号により取り消されるべきものである。

第3 本件商標に対する取消理由
当審において、平成27年6月19日付けで、商標権者に対して、本件商標の指定商品中、第3類「洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,口中清涼剤,口臭用消臭剤,動物用防臭剤,せっけん類,義歯洗浄剤,その他の歯磨き,香料,薫料」、第5類「芳香消臭剤(身体用・動物用及び工業用消臭剤並びに口臭用消臭剤を除く。),その他の消臭剤(身体用・動物用及び工業用消臭剤並びに口臭用消臭剤を除く。),防臭剤(身体用・動物用及び工業用のものを除く。),脱臭剤(身体用・動物用及び工業用のものを除く。),その他の薬剤,サプリメント,食餌療法用食品,食餌療法用飲料,乳幼児用飲料,乳幼児用食品」及び第30類「食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー,ココア,口中清涼効果を有する菓子,口臭を消すための菓子,その他の菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,香辛料,即席菓子のもと」について登録を取り消すべき旨の通知をした。
その理由は要旨次のとおりである。
1 登録異議申立人株式会社明治(申立人A)、株式会社ロッテ(申立人B)及び江崎グリコ株式会社(申立人C)(以下、申立人A、申立人B及び申立人Cをまとめて「申立人ら」という場合がある。)の提出に係る証拠によればの提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)本件商標の構成中の「ブラッドオレンジ」の文字は、オレンジの一種である「果肉が暗赤色のオレンジ」を意味する語であり、ブラッドオレンジを原材料等とする菓子、化粧品、香料、サプリメント等について、商品の品質、原材料、風味、芳香等を表示するために普通に使用されている(A甲1、B甲2ないしB甲5及びB甲10ないしB甲13、C甲2ないしC甲15、C甲31及びC甲34)。
(2)本件商標の構成中の「ミント」の文字は、「薄荷」を意味する語として広く知られ、ミントを原材料等とする菓子、化粧品、香料、サプリメント等について、上記ブラッドオレンジ同様、商品の品質、原材料、風味、芳香等を表示するために普通に使用されている(A甲2、B甲2、B甲6ないしB甲9及びB甲14ないしB甲17、C甲17ないしC甲19、C甲24、C甲28、C甲32及びC甲33)。
特に、ミントはフルーツ(果物)の風味と共に用いられることも多く、フルーツ名と組み合わせ、「ライムミント」、「ブラックベリーミント」、「アップルミント」等、「○○ミント」として商品の品質、原材料、風味、芳香等を表示するために普通に使用されている(A甲2、B甲16及びB甲17、C甲19、C甲24及びC甲28)。
上記「ブラッドオレンジ」と組合せ、「ブラッドオレンジミント」として使用されている例もある(A甲3、C甲16)。
2 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
本件商標は、前記第1のとおり、「ブラッドオレンジミント」の片仮名を標準文字で表してなるものであるところ、上記1の事実を総合すると、本件商標は、オレンジの一種である「果肉が暗赤色のオレンジ」の意味を有する「ブラッドオレンジ」の文字と「ミント」の文字とを結合したものであって、全体として「ブラッドオレンジ」及び「ミント」を原材料等とする商品であることを記述的に表示したものとして認識し理解されるものというべきである。そして、本件商標の指定商品には、商品特性としてフルーツやミントの風味、芳香等を有する(原材料等とする)商品が多く含まれている。
そうすると、本件商標は、その指定商品のうち、フツーツやミント等の風味や芳香等を有し得る(原材料等とする)商品といえる第3類「洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,口中清涼剤,口臭用消臭剤,動物用防臭剤,せっけん類,義歯洗浄剤,その他の歯磨き,香料,薫料」、第5類「芳香消臭剤(身体用・動物用及び工業用消臭剤並びに口臭用消臭剤を除く。),その他の消臭剤(身体用・動物用及び工業用消臭剤並びに口臭用消臭剤を除く。),防臭剤(身体用・動物用及び工業用のものを除く。),脱臭剤(身体用・動物用及び工業用のものを除く。),その他の薬剤,サプリメント,食餌療法用食品,食餌療法用飲料,乳幼児用飲料,乳幼児用食品」及び第30類「食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー,ココア,口中清涼効果を有する菓子,口臭を消すための菓子,その他の菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,香辛料,即席菓子のもと」中のブラッドオレンジ及びミントを原材料等とする商品について使用しても、単に商品の品質、原材料、風味、芳香等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として認識されるにとどまるものといえるから、商標法第3条第1項第3号に該当するものであり、また、ブラッドオレンジ及びミントを原材料等とする商品以外の上記商品について使用するときは、ブラッドオレンジ及びミントを原材料等とする商品であるかの如く、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるものというべきであるから、同法第4条第1項第16号に該当するものである。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、その指定商品中、第3類「洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,口中清涼剤,口臭用消臭剤,動物用防臭剤,せっけん類,義歯洗浄剤,その他の歯磨き,香料,薫料」、第5類「芳香消臭剤(身体用・動物用及び工業用消臭剤並びに口臭用消臭剤を除く。),その他の消臭剤(身体用・動物用及び工業用消臭剤並びに口臭用消臭剤を除く。),防臭剤(身体用・動物用及び工業用のものを除く。),脱臭剤(身体用・動物用及び工業用のものを除く。),その他の薬剤,サプリメント,食餌療法用食品,食餌療法用飲料,乳幼児用飲料,乳幼児用食品」及び第30類「食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー,ココア,口中清涼効果を有する菓子,口臭を消すための菓子,その他の菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,香辛料,即席菓子のもと」については、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから、その登録を取り消すべきものである。

第4 商標権者の意見
商標権者は、平成27年4月30日付け上申書及び同年8月3日付け意見書において、要旨下記の意見を述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第6号証(審決注:上申書及び意見書において、いずれも乙第1号証ないし乙第6号証を提出しているが、その内容は同一のものであるため、以下、これらをまとめて「乙○」等という。)を提出した。
(1)本件商標から認識される意味合い
本件商標は、「ブラッドオレンジミント」全体で一連一体、密接不可分な商標であり、申立人らが主張するがごとく、直ちに「ブラッドオレンジ」と「ミント」に分離されるものとしてのみ捉えられるものではない。
「ブラッドオレンジミント」は、看者によっては「ブラッド」と「オレンジミント」の語の結合と考え、これらの言葉の持つ意味内容などから全体のイメージを捉えると考えられる。「ブラッド」は、英語で「血液、元気、活力、生命力」といった意味を有し(乙1)、「オレンジミント」は、ペパーミントの変種でオレンジの香りがするミントとして知られている(乙2)ことから、全体として「血液を元気にするオレンジミント」、「血液のように赤いオレンジミント」、「元気・活力を呼びさますオレンジミント」、「生命力を呼び起こすオレンジミント」といった観念を生じさせる。
本件商標は、「ブラッド」、「オレンジ」及び「ミント」の結合、或いは「ブラッド」及び「オレンジミント」の結合、さらには「ブラッドオレンジ」及び「ミント」の結合というように、看者の捉え方によって多様なイメージ、観念を生じさせる商標である。このように、本件商標は、各語の組み合わせによる全体の観念、イメージに広がりを有し、需要者の期待感、好奇心といった感情を呼び起こさせるものであり、かかる点に着目したところに商標権者独自の創作性が発揮された、言わば一種の造語ともいうべき商標である。
本件商標は、想起される意味内容が一義的ではないから、商品の具体的内容(品質)は特定されておらず、商品の内容を直接的に表示するものとまではいえない。
(2)「ミント」の語を含む商標の拒絶事例について
申立人らは、「ミント」の語を含む商標の商標法第3条拒絶事例は過去に多数あるとして、「ミント」の語をその一部に含む本件商標について自他商品識別力を有さないとの主張をしているが、申立人らが指摘する過去の拒絶事例のほとんどは、出願人において、同法第3条の拒絶理由に対して意見書を提出して反論を試みることさえせず、その後拒絶査定となっている事例である(乙4)。
また、申立人らは、「原材料名」と「ミント」とを組み合わせた商標についての商標法第3条による拒絶例も挙げているが、このうち、意見書を提出して反論を行うことなく拒絶査定を受けている事例は、25件中18件である。
さらには、本件商標と事例を異にする拒絶例が過去にあるからといって、これを十把一絡げに商標法第3条第1項第3号あるいは同項第6号に該当し自他商品識別力を有さない類型のごとく主張することには理由がない。
申立人らの主張とは反対に、「ミント」を含む商標が登録されている事例も少なくない。
(3)「ブラッドオレンジミント」の使用例について
申立人らは、「ブラッドオレンジ」及び「ミント」が菓子等の商品に使用されている事例が多い旨を主張し、かかる主張を裏付ける証拠(B甲10ないしB甲17及びC甲3ないしC甲15)を提出している。そして、本件商標と同じ「ブラッドオレンジミント」での使用事例もあるとして証拠(C甲16)を提出しているが、たったの1件にすぎず、この1件の使用事実をもって、「ブラッドオレンジミント」が業界において広く使用され、独占適用性を有さないとするのは理由がなく失当である。
(4)本件商標の使用について
本件商標は、商標権者の絶え間ない企業努力の中で生まれたネーミングであり、それ自体で出所識別性を有する表示である。また商標権者の一定の商品の出所を表示するものとして現実に機能しているものである。
本件商標は、商標権者の製造する菓子類、口中清涼剤等にかかる商品についてのメインブランドのひとつである「ブレスケア」と共に使用されているものである。「ブラッドオレンジミント」は、2014年2月26日に発売されたものであり、「ブレスケア」の複数のシリーズのうち、「ブラッドオレンジミント」を使用している「噛むブレスケア」商品の年間売上は、2013年度で約26億円にもなり(乙6)、2014年度のデータは未整備であるものの同程度との見込みである。こうした年間売上を誇る商標権者の「噛むブレスケア」商品は菓子類、口中清涼剤等における人気商品となっており、とりわけ、噛むブレスケアに占める「ブラッドオレンジミント」の売上割合は2014年3月には6.2%、4月には8.3%にも上る(乙6)。
以上のことから、本件商標は、発売直後から需要者の購買意欲に訴え、本件の指定商品にかかる商品の売上に結び付いている事情があり、商標権者の業務に係る商品を表示するものとして広く知られるに至っているといえる。このことは、本件商標が自他商品の識別機能を果たしていることを示しているものである。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標は、指定商品との関係において、自他商品識別標識としての機能を損なうような単なる商品の品質を表示するものでも、商品の不実を表示するものでもないため、商標法第3条第1項第3号、同項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当するものではない。
したがって、同法第43条の3第4項の規定に基づき、本件登録を維持する旨の決定を求める。

第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について
本件商標について、上記第3の取消理由は妥当なものであるから、その指定商品のうち、フツーツやミント等の風味、芳香等を有し得る(原材料等とする)第3類「洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,口中清涼剤,口臭用消臭剤,動物用防臭剤,せっけん類,義歯洗浄剤,その他の歯磨き,香料,薫料」、第5類「芳香消臭剤(身体用・動物用及び工業用消臭剤並びに口臭用消臭剤を除く。),その他の消臭剤(身体用・動物用及び工業用消臭剤並びに口臭用消臭剤を除く。),防臭剤(身体用・動物用及び工業用のものを除く。),脱臭剤(身体用・動物用及び工業用のものを除く。),その他の薬剤,サプリメント,食餌療法用食品,食餌療法用飲料,乳幼児用飲料,乳幼児用食品」及び第30類「食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー,ココア,口中清涼効果を有する菓子,口臭を消すための菓子,その他の菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,香辛料,即席菓子のもと」中のブラッドオレンジ及びミントを原材料等とする商品について使用しても、単に商品の品質、原材料を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきであり、また、その指定商品中、ブラッドオレンジ及びミントを原材料等とする商品以外の上記商品について使用するときは、ブラッドオレンジ及びミントを原材料等とする商品であるかの如く、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるものというべきである。
したがって、本件商標は、その指定商品中、上記商品について、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものである。
2 商標法第3条第1項第6号について
商標法第3条第1項第6号は、同項各号の総括規定と解されているところ、本件商標は、上記1において述べたように、本件商標の指定商品中の上記商品については、同法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものである。
そうすると、該商品中に、その商品の品質、用途を表すものとして、自他商品の識別標識としての機能を有しないものがあるとしても、同法第3条第1項第6号を適用するまでもないものといえる。
一方、本件商標を上記商品以外の指定商品に使用した場合には、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないとすべき事情を認めることはできないから、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に該当しない。
3 商標権者の意見について
商標権者は、本件商標は、「ブラッド」、「オレンジ」及び「ミント」の結合、或いは「ブラッド」及び「オレンジミント」の結合、さらには「ブラッドオレンジ」及び「ミント」の結合というように、看者の捉え方によって多様なイメージ、観念を生じさせる商標であり、想起される意味内容が一義的ではないから、商品の具体的内容(品質)は特定されておらず、商品の内容を直接的に表示するものとまではいえない旨主張する。
しかしながら、本件商標は、「ブラッド」、「オレンジ」及び「ミント」の各語が一般によく知られた語であること、各語の結合、「ブラッド」及び「オレンジミント」の結合、又は「ブラッドオレンジ」及び「ミント」の結合というように、とらえ方によって多様な観念を生じさせることがあるとしても、上記第3のとおり、本件商標の指定商品との関係においては、「ブラッドオレンジ」及び「ミント」の各語が親しまれたものであることをも勘案するならば、その商品が「ブラッドオレンジ及びミントを原材料等とする商品」であることを認識する場合があるといえるものであり、さらに、本件商標は標準文字で表されたものであることからすれば、本件商標は、フツーツやミント等の風味、芳香等を有し得る(原材料等とする)商品といえる上記商品に使用したときは、商品の品質、原材料を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきであり、その指定商品中、ブラッドオレンジ及びミントを原材料等とする商品以外の上記商品について使用するときは、ブラッドオレンジ及びミントを原材料等とする商品であるかの如く、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるものというべきである。
したがって、商標権者の意見を採用することはできない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、上記第3の取消理由のとおり、本件商標の指定商品中、第3類「洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,口中清涼剤,口臭用消臭剤,動物用防臭剤,せっけん類,義歯洗浄剤,その他の歯磨き,香料,薫料」、第5類「芳香消臭剤(身体用・動物用及び工業用消臭剤並びに口臭用消臭剤を除く。),その他の消臭剤(身体用・動物用及び工業用消臭剤並びに口臭用消臭剤を除く。),防臭剤(身体用・動物用及び工業用のものを除く。),脱臭剤(身体用・動物用及び工業用のものを除く。),その他の薬剤,サプリメント,食餌療法用食品,食餌療法用飲料,乳幼児用飲料,乳幼児用食品」及び第30類「食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー,ココア,口中清涼効果を有する菓子,口臭を消すための菓子,その他の菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,香辛料,即席菓子のもと」についての登録は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたものといわざるを得ないから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものとする。
そして、本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品については、その登録を取り消すべき理由がないから、同法第43条の3第4項の規定により、登録を維持すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2015-09-18 
出願番号 商願2014-22596(T2014-22596) 
審決分類 T 1 651・ 272- ZC (W030530)
T 1 651・ 16- ZC (W030530)
T 1 651・ 13- ZC (W030530)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 平松 和雄 
特許庁審判長 林 栄二
特許庁審判官 梶原 良子
中束 としえ
登録日 2014-10-10 
登録番号 商標登録第5709886号(T5709886) 
権利者 小林製薬株式会社
商標の称呼 ブラッドオレンジミント、ブラッドオレンジ、ブラッド 
代理人 岡部 讓 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 田中 尚文 

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