• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 007
管理番号 1304044 
審判番号 取消2014-300136 
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2014-02-25 
確定日 2015-07-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第3074574号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第3074574号商標の指定商品中、第7類「苗床幕」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3074574号商標(以下「本件商標」という。)は、「こもれび」の平仮名を横書きしてなり、平成4年9月4日に登録出願、第7類「農業用機械器具」を指定商品として、同7年9月29日に設定登録され、その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成26年3月14日にされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判請求書、弁駁書、口頭審理陳述要領書及び上申書において、要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。
1 本件商標の使用について
(1)被請求人は、乙第4号証として、桐生市西久方町1-2-23所在の「森産業株式会社」(以下「森産業」という。)と本件商標権者との間で締結された「取引基本契約書」を提出しているが、該契約書においては、「こもれび」や「コモレビ」の商品について記載されるところが一切ないから、該契約書によっては、森産業と本件商標権者とが何らかの取引関係にあることが分かるとしても、本件商標が使用されたことを何ら証明することにはならない。
また、乙第5号証に係る証明書についても、本件商標権者又は法人である本件商標権者に属する者のいわば宣誓にすぎず、何ら客観的な証拠とはなり得ない。
そうすると、森産業から本件商標権者にあてた「注文書」(乙1)や本件商標権者から森産業にあてた「請求伝票」(乙2)などに上記各証拠を加味したとしても、平成25年8月21日に、本件商標権者と森産業との間で「こもれび」又は「コモレビ」と称する商品が取引されたことがうかがえるにすぎず、該商品がいかなる商品であるかを客観的に把握することはできず、どのような態様で使用されているかも明らかになるものではない。
(2)乙第6号証に係る証明書についても、商品カタログ(乙3)においては、もともと「森産業営業所」との記載がなされているのであって、該証明書によって「森産業営業所」が森産業を示すことを推察し得るとしても、森産業と本件商標権者との関係は何ら明らかになるものではない。
なお、被請求人は、上記の点について、森産業が通常使用権者である旨述べているが、乙第4号証に係る「取引基本契約書」を含め、そのような事実を示す証拠は何ら提出されていない。
(3)上記(1)及び(2)によれば、被請求人が提出した各証拠をもってしては、本件商標権者又は通常使用権者が、本件審判の請求の登録前3年以内(以下「要証期間内」という場合がある。)に我が国において、本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標を使用したこと(商標法第2条第3項第8号)は認められない。
2 本件商標の使用に係る商品について
(1)「苗床幕」について
ア 一般に、「苗床」とは、「野菜・花卉類・樹木などの苗(移植前の幼い植物)を育てる場所。」等のこと(甲3、甲8)であり、また、「幕」とは、「広く長く縫い合わせて、物の隔て、または装飾として用いる布。たれ布。」等のこと(甲4)であるから、「苗床幕」とは、苗床を外部環境から守るために用いられるものであって、「野菜・花卉類・樹木などの苗を育てる場所を隔てるために用いる布。」ということができる。
イ 本件商標は、国際分類第6版に基づき、第7類「農業用機械器具」を指定商品としたものである(甲5)ところ、平成4年3月改訂の「類似商品・役務審査基準(改訂第7版)」においても、「農業用機械器具」に含まれる商品として「苗床幕」が明記されていた(甲6)が、同8年12月改訂の「類似商品・役務審査基準(改訂第8版)」においては、「苗床幕」が削除された代わりに、第17類に属する商品として「農業用プラスチックフィルム」が追加されている(甲7)。
そして、上記「苗床幕」及び「農業用プラスチックフィルム」がともに、その当時の商品分類下において、第20類「すだれ」及び第22類「日よけ」と備考類似の関係にあることからすると、第7類「苗床幕」は第17類「農業用プラスチックフィルム」に変更されたものであり、両商品は、実質的に同じ又は非常に近似する商品と考えられる。
ウ 上記ア及びイによれば、「苗床幕」とは、現在において、甲第9号証及び甲第10号証に示すようなプラスチックフィルム又は布等が該当するものと考えられる。
(2)本件商標の使用に係る商品について
ア 被請求人は、本件商標権者が本件商標を使用しているとする商品(以下「使用商品」という場合がある。)について、乙第3号証において、「人工ほだ(榾)場を覆う被覆材、すなわち椎茸等のキノコを栽培するための人工ほだ場の上面を覆って、通気性を阻害することなく日差しを部分的に遮断するための被覆材であることが明記されている」旨説明した上で、「農業用被覆材」であると主張しており、乙第3号証に係る商品カタログにおいては、「こもれび」の商標の下に該商品の写真が掲載されている。
そこで、乙第3号証を見るに、同号証には被請求人が主張するような明記はないが、掲載されている写真によれば、「椎茸等のキノコを栽培する人工ほだ場における日覆い」のような商品であるということができ、また、被請求人が「使用商品は、プラスチックフィルムであるポリエチレンフィルムをスリット加工して多数のテープヤーンを形成した上で、そのテープヤーンの一部をからみ織して製作したものである」と述べているとおり、幕状の商品でないことも明らかである。
イ 被請求人は、使用商品(農業用被覆材)について、その製造方式、使用様式及び流通経路を説明しつつ、その使用様式に係る写真(乙7の1ないし4)を提出しているが、これらから分かることは、使用商品(農業用被覆材)が、プラスチックフィルムであるポリエチレンフィルムを加工してなり、キノコやりんどう等を栽培するに当たって、通気性を阻害することなく日差しを遮断するための日覆いである、ということであるところ、「苗床幕」に「プラスチックフィルム」が含まれるとしても、使用商品(農業用被覆材)と「苗床幕」とは、プラスチックフィルムという原材料において共通するのみであり、また、たとえ、りんどう等の栽培に用いられるとしても、「日覆い」と「幕」とは明らかに異なるものであるから、製造方式や使用様式において何ら共通するところがあるとは思われない。
さらに、被請求人は、「苗床幕」が各地の農業協同組合等を通じて農業従事者に販売されている旨主張するが、そのような事実を示す証拠は何ら提出されておらず、使用商品(農業用被覆材)と「苗床幕」とが、その流通経路を同一にするとはいえない。
加えて、被請求人は、乙第7号証の1ないし4に係る商品が取引された事実を何ら示すことができていないから、該商品が、本件商標権者によって取引に資されたものであるか否か、乙第3号証に係る商品と同一のものであるか否かなどについては何ら明らかにされていない。
そうすると、乙第7号証の1ないし4によっては、本件商標の使用は何ら証明されていない。
ウ 「苗床幕」と使用商品との対比
(ア)「苗床幕」と使用商品とを比較すると、被請求人による使用商品についての説明及び商品写真によれば、両商品は、その原材料及び品質において何ら一致するところはなく、また、商品の用途や需要者の範囲等においても一見して相違すると考えられるから、使用商品が「苗床幕」、すなわち「野菜・花卉類・樹木などの苗を育てる場所を隔てるために用いる布」又はそのような「プラスチックフィルム」に該当しないことは明らかである。
(イ)被請求人は、「苗床幕」は「苗床を覆う被覆材」と推定され、「人工ほだ場を覆う被覆材と苗床を覆う被覆材とは、ともに農業用被覆材として認識されるものであり、社会通念上同一の商品である」旨主張するが、商標法第50条第1項に規定されているとおり、「社会通念上同一」なる概念が適用されるのは「登録商標」についてのみであり、指定商品について「社会通念上同一」なる概念が適用される余地はない。
省令別表(商標法施行規則第6条)に掲載されている商品の表示は、あくまで「例示」であって、それは本件商標の出願時、登録時においても同じであり、本件商標権者としては、本件商標の出願時において、その使用に係る商品が適切に保護されるよう、指定商品を具体的に記載することができるのであるから、商標登録を受けた後になって、「農業用機械器具」の指定商品をもって、「苗床幕」と使用商品とが社会通念上同一の商品であるとすることは失当である。
(ウ)被請求人は、乙第9号証を提出した上で、キノコは「植物」と認識されるものであり、キノコを栽培する人工ほだ場における木片はキノコ栽培のための苗床と認識することができるものであるから、人工ほだ場に使用される被覆材は、「野菜・花卉類・樹木・キノコなどの植物の苗を育てる場所を隔てるために用いる布」、すなわち「苗床幕」にほかならない旨主張するが、「苗」とは、「種子から発芽して間のない幼い植物。特に、移植前の幼い植物の称」等のこと(甲8)であるから、種子から発芽することのないキノコが「苗」の範ちゅうに含まれないことは、「苗」の意味からも明らかである。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人による主張及び同人提出の証拠によっては、本件商標権者又は通常使用権者が、要証期間内に、本件商標を第7類「苗床幕」について使用していることは立証されていないから、本件商標の登録は、その指定商品中の該「苗床幕」について、商標法第50条第1項の規定により、取消しを免れない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書及び上申書において、要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第9号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件商標の使用について
(1)乙第4号証から明らかなとおり、本件商標権者は、2012年(平成24年)11月2日に、桐生市西久方町1-2-23所在の森産業との間で「取引基本契約」を締結した。
そして、「こもれび金具なし黒(5本入り)」と明記された平成25年8月21日付け「注文書」(乙1)が森産業から本件商標権者あてに発行され、また、納品商品が「コモレビ クロ」と明記された同日付け「請求伝票」が本件商標権者から森産業あてに発行された。
上記事実に鑑みれば、本件商標又は本件商標と社会通念上同一と認められる「コモレビ」の商標の下に、本件商標権者から森産業へ商品が販売されたことが明らかであり、また、その販売に係る商品が乙第3号証に表示された「農業用被覆材」であることは、乙第5号証から明らかである。
(2)乙第6号証から明らかなとおり、森産業は、平成24年11月3日から同26年10月15日までの間、「農業用被覆材」のカタログないし広告ビラ(乙3)に本件商標を付して全国のキノコ栽培業者へ広く頒布している。
(3)以上によれば、本件商標権者が、要証期間内に、「農業用被覆材」に関する取引書類(乙2)に本件商標と社会通念上同一と認められる「コモレビ」の商標を使用したこと、及び本件商標権者が本件商標の使用を許諾した通常使用権者である森産業が、要証期間内に、「農業用被覆材」に関する取引書類(乙1)に本件商標を使用し、かつ、キノコ栽培業者へ頒布した「農業用被覆材」のカタログないし広告ビラに本件商標を使用したこと、について疑問の余地はなく、これらの使用は、いずれも商標法第2条第3項第8号にいう行為に該当する。
2 本件商標の使用に係る商品について
(1)本件商標の使用に係る商品「農業用被覆材」(使用商品)は、乙第3号証に明記されているとおり、人工ほだ(榾)場を覆う被覆材、すなわち椎茸等のキノコを栽培するための人工ほだ場の上面を覆って、通気性を阻害することなく日差しを部分的に遮断するための被覆材である一方、本件審判の請求に係る商品「苗床幕」は、苗床を覆う被覆材と推定されるから、両商品は、ともに農業用被覆材として認識されるものであり、社会通念上同一の商品である。
(2)使用商品(農業用被覆材)は、具体的に次のとおりのものである。
ア 製造方式
使用商品は、プラスチックフィルムであるポリエチレンフィルムをスリット加工して多数のテープヤーンを形成した上で、そのテープヤーンの一部をからみ織して製作したものである。
イ 使用様式
使用商品は、椎茸等のキノコを栽培するための人工ほだ場において、通気性を阻害することなく日差しを遮断するための日覆いとして、その上方に配設されるものである。
また、使用商品は、乙第7号証の1ないし4(本件商標権者の従業員が平成25年7月11日に岩手県北上市稲瀬町で撮影した写真)に示すとおり、りんどうの苗床について、通気性を阻害することなく日差しを遮断する日覆いとして、その上方に配置して使用されている。
ウ 流通経路
使用商品は、乙第3号証及び乙第7号証の1ないし4から明らかなとおり、各地の農業協同組合等を通じて、キノコ栽培又はりんどう等の花卉を栽培する農業従事者に販売されている。
なお、本件商標権者が製造、販売する商品は、数百社現存する販売代理店を通じて又は各地の農業協同組合を通じて、農家へ提供されているものであるため、乙第7号証の1ないし4に係る商品がいずれのルートを通じて流通されたものであるかを特定することはできなかったが、同号証に係る商品が本件商標権者の製造したものであって、乙第3号証に示す商品と同一のものであることは確認できた。
(3)他方、本件審判の請求に係る商品「苗床幕」は、請求人が主張するとおり、「野菜・花卉類・樹木などの苗を隔てるために用いる布」又はそのような「プラスチックフィルム」であって、各地の農業協同組合等を通じて、農業従事者に販売されているものである。
(4)上記(1)ないし(3)によれば、「苗床幕」と使用商品(農業用被覆材)とは、原材料としてのプラスチックフィルムを共通にし、流通経路が同一であり、りんどうのような花卉等を育てる場所を隔てる(例えば、通気性を阻害することなく日差しを遮断する)ために使用される点においても実質上同一であることが明らかであるから、両商品は、社会通念上同一の商品であることが明白である。
なお、請求人は、商標法第50条第1項において、「社会通念上同一なる概念が適用されるのは登録商標についてのみであり、指定商品についてそのような概念が適用される余地はない。」旨主張するが、同条項における「指定商品又は指定役務」が厳密に同一の商品又は役務のみならず社会通念上同一と認められる商品又は役務をも含有することは、学説上及び実務上広く認められている(乙8)。
また、乙第9号証から明らかなとおり、キノコ、すなわち菌類は、維管束植物(種子植物・シダ植物)・コケ植物等とともに、「植物」と認識されるものであり、キノコを栽培する人工ほだ場における木片は、キノコ栽培のための苗床と認識することができるものであるから、人工ほだ場に使用される被覆材は、「野菜・花卉類・樹木・キノコなどの植物の苗を育てる場所を隔てるために用いる布」、すなわち「苗床幕」にほかならないことが明白である。
3 結語
以上のとおり、本件商標は、その指定商品中、本件審判の請求に係る第7類「苗床幕」について、要証期間内に、本件商標権者又は通常使用権者により使用されているから、取り消されるべきものではない。

第4 当審の判断
1 被請求人は、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に、本件商標権者又は通常使用権者により、本件商標の指定商品中、その請求に係る第7類「苗床幕」について使用している旨主張し、乙各号証を提出しているところ、被請求人の主張及び同人の提出に係る証拠方法によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証は、森産業から「ダイオ化成(株) 東京」へあてた平成25年8月21日付け「注文書」の写しであり、その商品名欄には「こもれび金具なし・黒(5本入)」、数量欄には「1箱」、納期欄には「本日発」、発送先欄には「389-0602 長野県埴科郡坂城町中之条」の各記載がある。
(2)乙第2号証は、本件商標権者(ダイオ化成株式会社)から森産業へあてた平成25年(2013年)8月21日付け「請求伝票」の写しであり、現品送り先としての個人名(片山吉一)の記載があるほか、品名・規格欄に「コモレビ クロ 0.6 50 5本入」、数量欄に「500」の各記載がある。
(3)乙第3号証は、人工ほだ場を覆う被覆材のカタログとされるものであり、「自然林のような、さわやかな人工ほだ場を作る!!」及び「こもれび」の2段書きの見出しの下、その特長として、「自然の木かげに近い柔らかな光が広がります。」、「空気の対流が滑らかなので、ほだ場内の温度が上がりすぎません。」、「強風時でも棚やこもれびへの負担が少なく丈夫です。」及び「通風性、通水性が抜群で積雪の心配がありません。」の記載があるほか、商品本体の形状及び価格(高さ:60cm、長さ:50m、色:黒又はシルバー、販売単位:1箱5本入(250m)、小売価格:49,350円(税込・送料込))並びに「森式吊金具」(A又はB)の形状及び小売価格等がそれぞれの画像とともに掲載されており、さらに、最下段には「他にも、各種きのこ栽培関連資機材を多数取り揃えております。商品に関するお問い合わせ、ご注文は、最寄の森産業営業所、販売代理店まで。」の記載がある。
(4)乙第4号証は、森産業を「甲」とし、本件商標権者を「乙」として、2012年(平成24年)11月2日に両者間で締結された「取引基本契約書」の写しであるところ、該契約書は、乙が甲に販売する商品の継続的売買に関する基本事項を定めることを目的とするものであり、第1条(基本原則)として「乙は本契約に基づき甲に商品を売り渡し、甲はこれを買い受けるものとする。甲及び乙は、相互信頼と協調の精神に基づき、本契約定められた条項を信義誠実の原則に従って履行するものとする。」、第2条(本契約の適用)として「本契約に定める事項は、本契約の有効期間中に甲、乙間で行われる商品の売買契約のすべてにつき甲、乙間で特段の合意がない限り、共通に適用されるものとする。」、第3条(個別契約)として「甲、乙間の個別的な売買契約は、甲が乙に対して商品別の数量、受渡の日時、受渡場所を指示した発注書を発し、乙が予定納期を甲に通知した時点で成立するものとする。また、所有権は商品が甲の指定場所へ納品された時点で乙から甲へ移転するものとする。」及び第13条(契約期間)として「本契約の期間は、契約成立の日から1ヶ年とする。但し、当該期間満了の1ヶ月前までに甲、乙の一方より、相手先に対し、文書をもって解除又は変更の意思表示がないときは、更に1ヶ年延長するものとし、以後も同様とする。」との規定があるほか、全14か条で構成されている。
(5)乙第5号証は、本件商標権者の営業本部統括部長名による平成26年10月15日付け「証明書」とする書面であって、「添付の注文書に記載されている商品名『こもれび金具なし黒』と記載されている商品及び添付の請求伝票に記載されている品名『コモレビ』と称する商品は、添付のカタログに表示されている農業用被覆材に相違ありません。」との記載がされたものであり、乙第1号証ないし乙第3号証に係る「注文書」、「請求伝票」及び「カタログ」の各写しが添付されている。
(6)乙第6号証は、森産業の営業企画部長名による平成26年10月15日付け「証明書」とする書面であって、「桐生市西久方町1丁目2番23号所在の森産業株式会社は、添付のとおりの商品カタログを平成24年11月3日から本日まで、継続的に全国のきのこ栽培業者に広く頒布していることに相違ありません。」との記載がされたものであり、乙第3号証に係る「カタログ」の写しが添付されている。
2 上記1において認定した事実によれば、本件商標の使用については、以下のように判断すべきである。
(1)本件商標権者は、平成24年11月2日に、森産業との間での商品の継続的売買に関する契約を締結したところ、森産業は、該契約に基づき、同25年8月21日に、本件商標権者に対し、長野県埴科郡坂城町中之条所在の顧客へ「こもれび」と称する商品を発送するよう注文し、本件商標権者は、該注文に応じて、同日に指示された場所へ商品を送付するとともに、森産業に対し、売買代金の請求を行った。
また、森産業は、本件商標権者が販売する「こもれび」と称する商品についてのカタログを制作し、少なくとも平成24年11月3日から同26年10月15日までの間、全国のキノコ栽培業者へ頒布した。
(2)森産業がキノコ栽培業者向けに制作、頒布したカタログに係る「こもれび」と称する商品は、人工ほだ場(キノコの原木栽培を行うために人工的に設けられた場所)における光量や温度を調節するために、該ほだ場の上方に配置されるものであって、スリット加工したポリエチレンフィルム(テープヤーン)の一部をからみ織りしてなるものである。
なお、被請求人は、上記商品について、乙第7号証の1ないし4(本件商標権者の従業員が平成25年7月11日に岩手県北上市稲瀬町で撮影した写真とするもの)を提出して、りんどうの苗床用の日覆いとしても使用されている旨主張するところ、本件審判の合議体は、口頭審理において、被請求人に対し、その取引の事実を示すよう求めたが、被請求人からはその事実を認めるに足る証拠は何ら提出されなかったことから、同号証の写真に写っている物が上記商品と同一の商品と認めることはできない。
(3)本件商標は、前記第1のとおり、平成4年9月4日に登録出願され、第7類「農業用機械器具」を指定商品として、設定登録されたものであるところ、本件審判の請求に係る第7類「苗床幕」は、商標法施行規則第3条に係る別表(平成3年10月31日通商産業省令第70号)によれば、第7類に属する商品のうちの「十四 農業用機械器具」の範ちゅうに含まれる「(一)耕うん機械器具(手持ち工具に当たるものを除く。)」、「(二)栽培機械器具」、「(三)収穫機械器具」、「(四)植物粗製繊維加工機械器具」、「(五)蚕種製造用又は養蚕用の機械器具」((一)ないし(五)の各機械器具の下には、個別具体的な商品表示が例示列挙されている。)、「(六)飼料圧搾機 飼料裁断機 飼料配合機 飼料粉砕機」、「(七)牛乳ろ過器 搾乳機」及び「(八)育雛器 ふ卵器」の各例示に続けて、「(九)苗床幕」と例示されているものである。
また、「苗床」とは、「野菜・花卉類・樹木などの苗(種子から発芽して間のない植物。特に、移植前の幼い植物の称。)を育てる場所」のこと(甲3、甲8)であり、苗床による育苗に当たっては、光環境や温度環境等を調節すべく、例えば、遮光幕、保温幕等といった被覆資材を用いることが一般に広く行われている。
してみれば、本件審判の請求に係る第7類「苗床幕」とは、農業用の被覆資材のうち、苗床用の遮光幕又は保温幕等に該当するものとみるのが相当である。
(4)被請求人が主張する本件商標の使用に係る商品は、上記(2)のとおり、人工ほだ場における光量や温度を調節するために用いるものであることからすれば、農業用の被覆資材に含まれるものとはいい得るが、人工ほだ場におけるキノコの原木栽培に用いるほだ木は、上述した「苗床」の意味に照らせば、「苗床」の範ちゅうに属するものとはいい難い。
そうすると、本件商標の使用に係る商品と本件審判の請求に係る第7類「苗床幕」とは、いずれも本件商標の指定商品である「農業用機械器具」に含まれるものであって、農業用の被覆資材として用いられる点においては共通するものの、前者は人工ほだ場において用いるものであるのに対し、後者は苗床について用いるものであるから、それぞれ別異の商品というべきものである。
なお、被請求人は、商標法第50条第1項における「指定商品又は指定役務」には厳密に同一の商品又は役務のみならず社会通念上同一と認められる商品又は役務をも含有する旨主張するが、同条項は、登録商標については「登録商標(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名又はローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。)」と規定する一方、指定商品又は指定役務については、それらと社会通念上同一と認められるものを含む旨規定していないから、上記被請求人の主張は、採用することができない。
(5)上記(1)ないし(4)を総合勘案すれば、本件商標権者の商品を販売する森産業は、その販売に係る人工ほだ場における光量や温度を調節するために用いる農業用の被覆資材について「こもれび」の商標を付した商品カタログを制作し、少なくとも平成24年11月3日から同26年10月15日までの間に頒布したとはいい得るものの、その商品カタログは、本件審判の請求に係る第7類「苗床幕」とは別異の商品についてのものであるから、これをもって、本件商標権者又は通常使用権者が、要証期間内に、本件審判の請求に係る指定商品について登録商標の使用をしていたと認めることはできない。
3 まとめ
以上によれば、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品についての本件商標の使用をしていることを証明していない。
また、被請求人は、本件審判の請求に係る指定商品について本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、その指定商品中の「結論掲記の指定商品」について、商標法第50条第1項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2015-05-20 
結審通知日 2015-05-22 
審決日 2015-06-03 
出願番号 商願平4-174135 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (007)
最終処分 成立  
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 田中 亨子
田中 敬規
登録日 1995-09-29 
登録番号 商標登録第3074574号(T3074574) 
商標の称呼 コモレビ 
代理人 小野 尚純 
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所 
代理人 増田 さやか 
代理人 奥貫 佐知子 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ