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審決分類 審判 全部無効 商3条柱書 業務尾記載 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W33
管理番号 1300740 
審判番号 無効2014-890066 
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-09-30 
確定日 2015-05-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第5531096号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5531096号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第5531096号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成24年4月11日に登録出願、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同年9月11日に登録査定、同年10月26日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第44号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)利害関係
請求人は、平成25年10月3日に、第33類「清酒」を指定商品として商標登録出願(商願2013-77179)をしたところ、当該出願に係る商標について、本件商標を引用した拒絶理由が通知され、当該出願は、現在審査に係属している(甲19ないし甲21)。
したがって、請求人は、本件審判を請求するにつき利害関係を有する。
(2)請求の理由
本件商標の登録は、以下の理由により、商標法第3条第1項柱書に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号により無効にすべきものである。
ア 商標法第3条第1項柱書の趣旨
商標法第3条第1項柱書には、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる場合を除き、商標登録を受けることができる。」と規定されているところ、「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説[第19版]」には、上記規定中の「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする」の解釈として、「指定商品又は指定役務に係る自己の業務が現在又は将来において存在しないのに自己の業務に係る商品又は役務についてその商標使用をすることは論理的にありえない。指定商品又は指定役務に係る自己の業務が現に存しないときは、少なくとも将来において指定商品又は指定役務に係る自己の業務を開始する具体的な予定がなければならないと考えられる。また、『使用をする』は現在使用をしているもの及び使用をする意思があり、かつ、近い将来において信用の蓄積があるだろうと推定されるものの両方を含む。なお、この要件は査定時に備わっていればよい。」と記載されている(甲22)。
また、同規定の趣旨について、東京地裁平成22年(ワ)第11604号判決(平成24年2月28日判決、「グレイブガーデン事件」)は、「商標法1条が『この法律は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。』と規定していることなどに鑑みると、商標法は、商標の使用を通じてそれに化体された業務上の信用が保護対象であることを前提とした上で、出願人が現に商標を使用していることを登録要件としない法制(いわゆる登録主義)を採用したものであり、その上で、商標法3条1項柱書きが、出願人において『自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標』であることを商標の登録要件とした趣旨は、上記のような法制の下において、他者からの許諾料や譲渡対価の取得のみを目的として行われる、いわゆる商標ブローカーなどによる濫用的な商標登録を排除し、登録商標制度の健全な運営を確保するという点にあるものと解される。そして、このような法の趣旨に鑑みれば、商標法3条1項柱書きの『自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標』とは、出願人が自己の業務に現に使用する商標又は近い将来において自己の業務に使用する意思がある商標であることを要し、また、ここでいう『自己の業務に使用する意思がある』といえるためには、単に出願人が主観的に使用の意図を有しているというのみでは足りず、自己の業務での使用を開始する具体的な予定が存在するなど、客観的にみて、近い将来における使用の蓋然性が認められることを要するものと解するのが相当である。」と判示する(甲23)。
イ 商標権者の業務
商標権者の履歴事項全部証明書によれば、商標権者は、平成16年12月に成立した会社法人であり、その目的欄には、多数の業務が記載されているが、酒類の販売等に関する業務は記載されていない(甲24)。
ここで、酒類の販売業をしようとする場合には、酒税法第9条の規定に基づき、酒類の販売業免許を受ける必要がある。また、法人として酒類の販売業免許を申請する際には、履歴事項全部証明書及び定款の写しの提出が必要とされるが(甲25)、税務署の酒類指導官に確認したところ、提出された履歴事項全部証明書及び定款の写しの目的欄に酒類の販売等に関する記載がなければ免許を付与しない取扱いを従前より行っているとのことであり、当該申請を代理する業務を行う行政書士のウェブサイトにも、これと同様のことが記載されている(甲26及び甲27)。
したがって、商標権者が、酒類の販売等に関する業務を現在行っているか又は過去に行っていたとは到底考えられない。請求人が調べた限りにおいても、そのような事実は発見できなかった。
ウ 商標権者の行為
(ア)商標権者のウェブサイトの「ご挨拶」ページ(甲28の2)に、次のような記載がある。
「・・・弊社は知的財産権の取得保有及び運用を業として営業している会社です。この度、知的財産権を取り扱う日々の業務の中で、権利者が没した後50年を経過した著作物等を誰もが自由に使用できるものとする常識に捉われることなく弊社内での解釈に基づき、特許庁に有名版画の商標登録申請を行ったところ認可を得て商標登録を完了することができました。弊社ではこの期に北斎・広重など有名版画を『東海道五十三次』と題してシリーズ化し、日本文化を基調とした知的財産権を獲得、推進して参る所存です。・・・弊社は日本固有の版画、絵画、文字、名称などをご使用の事業者様又は今後ご使用をご検討される事業者様にお取引をねがい『東海道五十三次』シリーズの基盤強化を図りより多くの商標権を取得保持し、知的財産権の使用管理システムを開示、お客様各位には強力な武器として業務発展に邁進して頂きたく存じます。現在、類似する版画・浮世絵・絵画・書物・キャラクターなどご使用の事業者様又は今後ご使用を検討中の事業者様は、この機会に是非ご一報頂きたくご案内申し上げます。」
(イ)同ウェブサイトの「商標のご案内」ページ(甲28の4)には、本件商標を含む計17件の登録商標に係る版画絵、分類、登録番号、指定商品が、表形式で示されている。これらの登録商標は、いずれも、商標権者が平成23年1月から平成24年5月の間に出願し、登録を受けたものである(甲29ないし甲44)。
(ウ)同ウェブサイトの「料金」ページ(甲28の5)には、「商標登録ご使用につきまして管理、維持運営費用と致しましてご使用料のご協力金をお願いしたいと思います。ご興味ありましたら、ご連絡ください。」と記載されている。
(エ)さらに、商標権者は、請求人に対し、解釈によっては本件商標の使用料の要求とも受け取れる葉書(甲18)を送付しており、同様の葉書が請求人以外にも送付されているものと推測される。
エ むすび
以上の事実に照らせば、商標権者は、本件商標の登録査定時(平成24年9月11日)において、自己の業務として本件商標の指定商品の販売等を行っていたか又は当該業務を開始する具体的な予定があったとは認められず、本件商標の登録出願は、他者からの使用料の取得のみを目的として行われた可能性が極めて高いといえる。
よって、本件商標の登録は、商標法第3条第1項柱書の規定に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号により無効にすべきものである。

3 被請求人の主張
被請求人は、前記2の請求人の主張に対し、何ら答弁するところがない。

4 当審の判断
(1)商標法第3条第1項柱書の趣旨について
商標法第3条第1項柱書は、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。」と規定し、登録出願に係る商標が、その出願人において「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」であることを商標の登録要件の一つとして定めているところ、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」とは、現に行っている業務に係る商品又は役務について現に使用している場合に限らず、将来行う意思がある業務に係る商品又は役務について将来使用する意思を有する場合も含むと解される。
そこで、本件商標が、その登録査定時(平成24年9月11日)において、商標権者が現に行っている業務に係る商品について現に使用している商標に該当していたか、あるいは、将来行う意思がある業務に係る商品について将来使用する意思を有する商標に該当するかについて、以下検討する。
(2)酒税法等について
ア 本件商標の指定商品は、前記1のとおり、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒」であるところ、「商品・サービス国際分類表[第10-2012版]アルファベット順一覧表 日本語訳 類似群コード付き」(http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/kokusai_bunrui_10-2012.htm)の「商品及びサービスの類別表(注釈付き)対訳表」の当該第33類をみてみると、「Alcoholic beverages (except beers). アルコール飲料(ビールを除く。)」が記載されているとともに、「この類には,特に,次の商品を含まない。」として「アルコールを除去した飲料(第32類)」が記載されていることから、これらの商品は、いずれもアルコール飲料である。
イ 酒税法(昭和28年2月28日法律第6号、以下同じ。)、酒税法施行令(昭和37年3月31日政令第97号、以下同じ。)及び酒税法施行規則(昭和37年3月31日大蔵省令第26号、以下同じ。)では、アルコール飲料を「酒類」とし、その酒類の製造免許及び酒類の販売業免許等に関し、以下の規定がある。
(ア)酒税法
a.第7条第1項:酒類を製造しようとする者は、政令で定める手続により、製造しようとする酒類の品目(第3条第7号から第23号までに掲げる酒類の区分をいう。以下同じ。)別に、製造場ごとに、その製造場の所在地の所轄税務署長の免許(以下「製造免許」という。)を受けなければならない。以下略。
b.第8条第1項:酒母又はもろみを製造しようとする者は、政令で定める手続により、製造場ごとに、製造免許を受けなければならない。以下略。
c.第9条第1項:酒類の販売業又は販売の代理業若しくは媒介業(以下「販売業」と総称する。)をしようとする者は、政令で定める手続により、販売場(継続して販売業をする場所をいう。以下同じ。)ごとにその販売場の所在地(販売場を設けない場合には、住所地)の所轄税務署長の免許(以下「販売業免許」という。)を受けなければならない。以下略。
d.第54条第1項:第7条第1項又は第8条の規定による製造免許を受けないで、酒類、酒母又はもろみを製造した者は、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
e.第56条第1項:次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
1 第9条第1項の規定による販売業免許を受けないで酒類の販売業をした者
2ないし7略。
(イ)酒税法施行令
a.第12条
(a)第1項:法(審決注:酒税法、以下同じ。)第7条第1項の規定により酒類の製造免許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を当該税務署長に提出しなければならない。
1 申請者の住所及び氏名又は名称
2 製造場の所在地及び名称
3 製造しようとする酒類の品目及び範囲
4 製造方法
5 製造免許を受けた後一年間の酒類の製造見込数量
6 試験のために酒類を製造しようとする者にあつては、その旨及び目的
7 製造場の設備の状況
8 その他財務省令で定める事項
(b)第2項:前項の申請書には、申請者が法第10条第1号から第8号までに規定する者及び破産者で復権を得ていない者に該当しないことを誓約する書面その他財務省令で定める書類を添付しなければならない。
b.第13条
(a)第1項:法第8条の規定により酒母又はもろみの製造免許を受けようとする者は、その製造しようとするこれらの物ごとに、次に掲げる事項を記載した申請書を当該税務署長に提出しなければならない。
1 申請者の住所及び氏名又は名称
2 製造場の所在地及び名称
3 製造方法
4 製造の目的
5 その他財務省令で定める事項
(b)第2項:前項の申請書には、申請者が法第10条第1号から第8号までに規定する者に該当しないことを誓約する書面その他財務省令で定める書類を添付しなければならない。
c.第14条
(a)第1項:法第9条第1項 の規定により酒類の販売業免許を受けようとする者は、当該販売業免許を受けようとする酒類の販売業又は販売の代理業若しくは媒介業(以下「販売業」と総称する。)の区分の異なるごとに、次に掲げる事項を記載した申請書を当該税務署長に提出しなければならない。
1 申請者の住所及び氏名又は名称
2 販売場(継続して販売業をする場所をいう。以下同じ。)の所在地及び名称
3 販売しようとする酒類の品目、範囲及びその販売方法
4 博覧会場、即売会場その他これらに類する場所で臨時に販売場を設けて酒類の販売業をしようとする者にあつては、その旨及び販売業をしようとする期間
5 その他財務省令で定める事項
(b)第2項:前項の申請書には、申請者が法第10条第1号から第8号までに規定する者及び破産者で復権を得ていない者に該当しないことを誓約する書面その他財務省令で定める書類を添付しなければならない。
(ウ)酒税法施行規則
a.第7条第2項:令(審決注:酒税法施行令、以下同じ。)第12条第2項に規定する財務省令で定める書類は、次に掲げる書類とする。
1 申請者の履歴書及び住民票の写し又はこれに代わる書類(法人にあっては、役員の履歴書並びに定款の写し及び登記事項証明書)
2ないし6略。
b.第7条の2第2項:令第13条第2項に規定する財務省令で定める書類は、次に掲げる書類とする。
1 申請者の履歴書及び住民票の写し又はこれに代わる書類(法人にあっては、役員の履歴書並びに定款の写し及び登記事項証明書)
2ないし4略。
c.第7条の3第2項:令第14条第2項に規定する財務省令で定める書類は、次に掲げる書類とする。
1 申請者の履歴書及び住民票の写し又はこれに代わる書類(法人にあっては、役員の履歴書並びに定款の写し及び登記事項証明書)
2ないし5略。
ウ 請求人の提出した証拠(各項の括弧内に掲記)によれば、以下の事実を認めることができる。
(ア)国税庁が発行した「一般酒類小売業免許申請の手引」(平成26年6月改訂:甲25)によれば、酒類販売業免許には、酒類小売業免許(消費者、料飲店営業者又は菓子等製造業者に対して酒類を継続的に販売(小売)することが認められる酒類販売業免許)と酒類卸売業免許(酒類販売業者又は酒類製造者に対して酒類を継続的に販売(卸売)することが認められる酒類販売業免許)とがあり、酒類小売業免許は、一般酒類小売業免許、通信販売酒類小売業免許及び特殊酒類小売業免許とに分類されること、一般酒類小売業免許の申請は、酒税法令に定められた事項を記載した「酒類販売業免許申請書」及び所定の添付書類を、販売業免許を受けようとする販売場の所在地の所轄税務署長に提出すること、酒類販売業免許を受ける者が法人である場合は、上記添付書類の一つとして、当該法人の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)及び定款の写しが必要であること、などの記載が認められる。
(イ)「酒販免許クイック東京/定款と登記の目的欄の記載について」のウェブサイト(甲26)には、「・・・役所の営業許可を受ける場合には、定款の目的に適切な記載がなければ許可申請が受理されないことがあります。酒類販売業免許を取得する場合にも、定款と登記の目的にこうした記載があることが求められます。」、「酒類販売業免許を法人で取得する場合、定款の目的欄に酒類販売業を営む旨の記載がない場合には、株主総会を開催して定款変更手続きをとるとともに、目的変更登記も済ませなければなりません。」などの記載がある。
また、「いしい行政書士オフィス」のウェブサイト(甲27)においても、「国税庁の手引書に載っていない酒販免許申請ノウハウ・Q&A」の見出しの下、「酒類販売業免許を法人として申請する場合、原則、定款の事業目的に酒類の販売、小売り、通信販売といった事業目的が記載されている必要があります。」などの記載がある。
(ウ)商標権者の履歴事項全部証明書(平成26年8月29日岐阜地方法務局証明:甲24)によれば、商標権者は、「1.紳士服・婦人服・子供服の製造販売 2.グラッフィックデザイン、商業デザイン、広告、宣伝、パンフレット、印刷物の企画、製作 3.キャラクター商品(個性的な名称や特徴を有している人物、動物等の画像を付けたもの)の企画及び著作権、商標権、意匠権の管理業務 4.特許権、実用新案、著作権、商標権、意匠権の保有、売買 5.販売促進に関する指導ならびに講習会、研修会の開催 6.インターネットにホームページを制作する業務 7.インターネットを利用した通信販売業務 8.コンピューターの利用に関するコンサルタント業務 9.損害保険代理業ならびに自動車損害賠償保障法に基づく保険代理業 10.生命保険の募集に関する業務 11.食品、紅茶、ハーブ、香辛料、カーペット、家庭用品雑貨、日用雑貨、インテリア小物、装飾雑貨、カバン、皮革製品、衣料品、スポーツ用品の輸出入および販売 12.飲食店、喫茶店、うどん店の経営 13.各種菓子、パン、弁当、惣菜等調理食品の製造、販売および宅配業 14.飲食店のフランチャイズチェーンシステムによる加盟店募集および加盟店の指導業務 15.前各号に附帯する一切の事業」を目的として、平成16年12月15日に設立された会社であることが認められる。
(3)商標権者のウェブサイト上の記述等について
ア 商標権者のウェブサイトをみると、以下の記載が認められる。
(ア)「歴史的名画を使って自社の商品をPRしてみませんか?この度特許庁より有名版画絵商標登録認可になりました」の記載とともに、「北斎」、「広重」、「写楽」の文字及びこれらの制作に係る著名な版画及び浮世絵の絵が表示されている(甲28の1)。
(イ)「商標登録 版画 浮世絵のご案内/・・・弊社は知的財産権の取得保有及び運用を業として営業している会社です。この度、知的財産権を取り扱う日々の業務の中で、権利者が没した後50年を経過した著作物等を誰もが自由に使用できるものとする常識に捉われることなく弊社内での解釈に基づき、特許庁に有名版画の商標登録申請を行ったところ認可を得て商標登録を完了することができました。弊社ではこの期に北斎・広重など有名版画を『東海道五十三次』と題してシリーズ化し、日本文化を基調とした知的財産権を獲得、推進して参る所存です。・・・弊社は日本固有の版画、絵画、文字、名称などをご使用の事業者様又は今後ご使用をご検討される事業者様にお取引をねがい『東海道五十三次』シリーズの基盤強化を図りより多くの商標権を取得保持し、知的財産権の使用管理システムを開示、お客様各位には強力な武器として業務発展に邁進して頂きたく存じます。現在、類似する版画・浮世絵・絵画・書物・キャラクターなどご使用の事業者様又は今後ご使用を検討中の事業者様は、この機会に是非ご一報頂きたくご案内申し上げます。」の記載がある(甲28の2)。
(ウ)「会社概要」の見出しの下、社名として「株式会社キングスコート」、設立年として「平成16年」などの記載がある(甲28の3)。
(エ)「商標のご案内/ご興味のある版画絵をクリックしてください」の表示のもと、歌川広重、葛飾北斎の版画及び写楽の浮世絵からなる商標17件(本件商標を含む。)とその商品区分(第16類、第29類、第30類、第32類、第33類)・登録番号・指定商品並びに「東海道五十三次」の文字よりなる商標8件の商品区分(第16類、第18類、第25類、第29類、第30類、第31類、第43類)・登録番号・指定商品及び指定役務を記載した一覧表が表示されている(甲28の4)。
なお、上記17件の登録商標は、平成23年1月26日から平成24年5月23日にかけて登録出願され、平成23年10月28日から平成24年11月2日にかけて設定登録されたものである(甲1、甲29?甲44)。
(オ)「商標登録ご使用につきまして管理、維持運営費用と致しましてご使用料のご協力金をお願いしたいと思います。ご興味有りましたら、ご連絡ください。」の記載がある(甲28の5)。
イ 商標権者から請求人に宛てた平成25年9月9日消印の葉書の裏面には、「ご案内/・・・この度、特許庁より北斎広重の版画浮世絵が商標登録に認可されました。信頼のブランド、シンボルマーク、テーマとして商品にご使用ください。今回、商標登録済、第32類、33類のご紹介を致します。」などの文字とともに、商品区分第32類及び第33類における指定商品並びに登録第5481129号、同第5481130号、同第5531096号及び同第5473626号の登録番号が付された歌川広重及び葛飾北斎の制作に係る版画よりなる商標が表示されている(甲18)。
(4)判断
ア 上記(2)及び(3)で認定した事実によれば、以下のとおり認めることができる。
(ア)本件商標の指定商品は、前記1のとおり、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒」であり、これらは、アルコール飲料である。
ところで、酒税法、酒税法施行令及び酒税法施行規則によれば、アルコール飲料である酒類の製造及び酒類販売業をしようとする者は、所在地の所轄税務署長の免許を受ける必要があり、その免許を受けるためには酒税法施行令に定められた事項を記載した申請書に、法人の場合は役員の履歴書並びに定款の写し及び登記事項証明書を添付して、当該税務署長に提出しなければならないところ、その定款や登記の事業項目の欄には、「酒類の販売業」などのような適正な記載がなされていなければならないとされている。そして、そのような適正な記載がない場合には、株主総会を開催して定款変更手続きをとり、その上で、目的変更登記もしなければならないこと、酒類販売業免許を受けないで酒類の販売業をした者は、酒税法第56条第1項の規定に基づく罰則が適用されることなどが認められる。
(イ)甲第24号証の「履歴事項全部証明書」によれば、平成16年12月15日に設立された商標権者は、平成26年8月29日に岐阜地方法務局によって履歴事項全部証明が証明されるまでの間に、履歴事項全部証明書の目的欄に、酒類の製造や販売などの業務の記載が一切ないことが認められる。
(ウ)商標権者は、自社のウェブサイトにおいて、自社について「商標登録 版画 浮世絵のご案内/・・・弊社は知的財産権の取得保有及び運用を業として営業している会社です。」と述べ、加えて、甲第24号証の事業目的の欄には、「3.キャラクター商品(個性的な名称や特徴を有している人物、動物等の画像を付けたもの)の企画及び著作権、商標権、意匠権の管理業務 4.特許権、実用新案、著作権、商標権、意匠権の保有、売買」が記載されている一方で、自社が酒類の製造、販売等を目的としている旨は記述されていない。
そして、商標権者は、平成23年1月26日から同24年5月23日までの間に、本件商標を含む歌川広重、葛飾北斎の版画及び写楽の浮世絵からなる商標17件を登録出願し、平成24年11月2日までにその登録を受け、「商標登録ご使用につきまして管理、維持運営費用と致しましてご使用料のご協力金をお願いしたいと思います。」などとして金銭を求める文言を掲載して、商標権者のウェブサイトにおいて宣伝、広告をし、加えて、本件商標の設定登録後1年も経たない平成25年9月9日消印の葉書をもって請求人へ本件商標を含む登録商標の使用に関する案内を送付していたことを認めることができる。
イ これら事実、さらには、商標権者が、本件商標をその指定商品について使用していることに関し、酒類の製造又は販売業の免許を受けているか否かを含め、現に業として行っているか、或いは、将来業として行う予定にあるかについて、何らの答弁をしていないことを併せ考慮すれば、商標権者が、本件商標を自己の業務に係る商品について使用するために商標権を取得したというよりは、むしろ、その指定商品について、本件商標を他人に使用させるために登録出願したとみるのが相当であって、商標権者は本件商標をその指定商品に使用する意思が登録出願当初からなかったといわざるを得ないものである。
したがって、本件商標は、その登録査定時において、その指定商品について、商標権者が現に使用している商標に該当しないばかりか、将来使用する意思を有する商標にも該当するとはいえないから、本件商標の登録は、「自己の業務に係る商品について使用をする商標」についてされたものと認めることはできない。
(5)むすび
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第3条第1項柱書に違反してされたものであり、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 (本件商標)

(色彩については、原本参照)

審理終結日 2015-03-03 
結審通知日 2015-03-06 
審決日 2015-03-24 
出願番号 商願2012-28589(T2012-28589) 
審決分類 T 1 11・ 18- Z (W33)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山根 まり子 
特許庁審判長 林 栄二
特許庁審判官 梶原 良子
中束 としえ
登録日 2012-10-26 
登録番号 商標登録第5531096号(T5531096) 
商標の称呼 フガクサンジューロッケー、フガクサンジューロクケー 
代理人 岸本 瑛之助 
代理人 松村 直都 
代理人 名古屋国際特許業務法人 
代理人 渡辺 彰 

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