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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201422909 審決 商標
不服201414373 審決 商標
不服201419393 審決 商標
不服2014650001 審決 商標
不服201417484 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 取り消して登録 W29
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 取り消して登録 W29
管理番号 1299458 
審判番号 不服2013-24138 
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-06 
確定日 2015-04-10 
事件の表示 商願2013-14297拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願商標は、登録すべきものとする。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第29類「ヨーグルト」を指定商品として、平成25年3月1日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『カスピ海』の文字と『ヨーグルト』の文字とを縦書き2列に書してなり、『カスピ海ヨーグルト』の文字を表したと認められるところ、該文字は、『コンサイスカタカナ語辞典 第4版』(株式会社三省堂発行)によれば、『予防医学者の家森幸男が長寿地域として知られているヨーロッパ東部のコーカサス地方から日本に持ち帰ったことにより日本に広まったと言われているヨーグルト』を意味するものと認められ、これを本願指定商品『ヨーグルト』に使用しても、上記の意味合いのヨーグルトであることを認識させるにすぎず、単にその商品の品質(種類)を表示するにすぎないものと認める。また、出願人は、本願商標が出願人の業務に係る「ヨーグルト」を特定する自他商品識別標識として我が国において広く知られるに至った旨主張するが、使用による識別力を有するに至ったものとは認められない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、前記1のとおり、「カスピ海ヨーグルト」の文字を表してなるところ、その構成中の「カスピ海」の文字は、ロシア南部・カザフスタン南西部からイラン北部にかけて広がる中央アジアの西部にある世界最大の湖を表す地名であり、これに続く「ヨーグルト」の文字は、牛乳・羊乳・山羊乳などを乳酸発酵によって凝固させた食品の一般名称であって、本願の指定商品名である。
また、本願商標の構成文字は、毛筆風の丸みを帯びた書体であって大きさを同じくし、かつ、「カスピ海」及び「ヨーグルト」の各文字部分を縦2列に表すなど、全体としてやや特徴があるものの普通に用いられる構成態様の範ちゅうにとどまるといえる。
そして、平成25年1月27日付け刊行物等提出書(2及び3の2)、請求人(出願人)提出の甲第1号証及び甲第36号証によれば、1986年に予防医学者の家森幸男氏(以下「家森教授」という。)が、カスピ海の周辺国であるグルジアの各家庭において手作りされていた自家製ヨーグルトを日本に持ち帰り、これに含まれていたクレモリス菌をもとにしたヨーグルトが「カスピ海ヨーグルト」と称され国内の各家庭で手作りされるようになったこと、2002年からは、出願人が、家森教授らの依頼により、家森教授がグルジアから持ち帰った純正種菌を純粋培養し、「カスピ海ヨーグルト手づくり用種菌セット」として製造、頒布して、国内に広まっていったこと、さらに、2006年からは、出願人が、該純正種菌を使用した(プレーン)ヨーグルトを「カスピ海ヨーグルト(プレーン)」の商品名で販売していることが認められる。
そうとすると、本願商標は、「該種菌を用いて発酵されたヨーグルト」であると理解、認識されるにとどまり、単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示するものといわなればならない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項の該当性について
請求人は、本願商標は「ヨーグルト」について継続して使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できるものである旨主張するととに、原審及び当審において甲第1号証ないし甲第55号証(枝番を含む。ただし、以下、枝番のすべてを引用する場合は、その枝番の記載を省略する。)を提出した。
ア 出願人は、ヨーグルトを作る過程で雑菌が混入する問題を解消するため、家森教授らと共同研究を重ね、2005年に出願人独自の特徴あるヨーグルトを完成させ、2006年から該ヨーグルト商品の包装容器に、毛筆風でありながら粘り気の特徴を表現した本願商標を縦書きに表示して全国に販路を広げ、その生産、販売を年ごとにあげていったことが以下認められる。
(ア)家森教授らとの共同研究
1986年に、家森教授が、黒海とカスピ海にはさまれた旧ソ連コーカサス地方(現在のグルジア共和国)で伝統的に食べられているヨーグルトを持ち帰った。そのヨーグルトは、クレモリス菌FC株を基本成分とし、牛乳を加えることにより、種菌を株分け(培養)し、常温で発酵させると自家製ヨーグルトが家庭で簡単につくれることや、その健康効果などが口コミで伝わり、1996年頃からブームになった。
上記の株分けにより広まった自家製のヨーグルトは、「カスピ海ヨーグルト」と称されていたところ、株分けが個人レベルで無秩序に繰り返されると、雑菌の混じったものもできてくる危険性もあるため、家森教授は、安全な種菌をつくって、正しいカスピ海ヨーグルトの普及啓発を進める仕組みづくりのため、2002年に、NPO法人「食の安全と健康ネットワーク」と出願人に種菌の製造・頒布を要請した。そして、出願人が該NPO法人の委託を受ける形で家森教授との協力体制のもとカスピ海ヨーグルトの純正種菌を純粋培養し、手作り用種菌セットとして商品化し、頒布(発送)したところ、その健康効果が新聞などのマスコミに取り上げられるようになり、頒布の申し込みが急増し、2005年11月に頒布100万セットを達成した。NPO法人「食の安全と健康ネットワーク」による頒布活動は2006年3月末に終了したが、その後も、家森教授の協力の下、出願人による種菌の頒布活動は継続し、2013年に種菌の出荷が400万セットを突破したことが認められる(甲1、甲4の13,甲10の24、甲26の26・27)。
また、出願人は、2005年頃から2013年に至るまで、カスピ海ヨーグルトの健康効果を広め、その種菌の普及を促進するために、「カスピ海ヨーグルト フォーラム」を年に2回定期的に開催し(甲1、甲3、甲4、甲36)、カスピ海ヨーグルトの専門店「Caspia(カスピア)」を展開している(甲1、甲3の14、甲5の5)。
(イ)家森教授の意見陳述書
家森教授の2014年5月29日付け意見陳述書において、「私がコーカサス地方から持ち帰ったヨーグルトが『カスピ海ヨーグルト』として日本中で広く知られるようになったのは、NPO法人『食の安全と健康ネットワーク』に依頼され、そのヨーグルトから種菌を同定して純粋培養し、フリーズドライ種菌とプレーンヨーグルトそのものをフジッコ株式会社が商品化し、『カスピ海ヨーグルト』の商品名で日本全国で頒布・販売したからに他なりません。そして、現時点において『カスピ海ヨーグルト』と呼べるものは、唯一、私が持ち帰ったヨーグルトから脈々と受け継がれた種菌により生産されているフジッコ株式会社の商品のみです。つまり、商標『カスピ海ヨーグルト』は、フジッコ株式会社のプレーンヨーグルトの商品ブランドとして、日本で有名になったといえます。」の記載がある。
(ウ)出願人の取扱いに係る「カスピ海ヨーグルト(プレーン)」について
出願人は、2006年に、クレモリス菌FC株(カスピ海ヨーグルトの種菌)を基本成分とする(プレーン)ヨーグルトを「カスピ海ヨーグルト(プレーン)」の名称で商品化(以下「使用商品」という。)、関東地区の大手スーパーやコンビニエンスストア等で販売を開始し(甲1、甲6の5、甲36)、遅くとも2011年には全国の量販店で販売を開始した(甲6の13、甲36)。
使用商品の販売実績は、2006年度が147万個であり、その後、毎年増量し2013年度は1,065万個の見込みである(甲29)。また、日本経済新聞社が全国623店舗に対して行った調査「日経POS プレーンヨーグルト 月間ランキング<2014年7月>」によれば、使用商品のPI値(千人当たり金額)は279(8位)、平均価格は239.5円(4位)、配荷率80.9%(7位)である(甲39)。
(エ)本願商標の態様
本願商標のデザインに関して、「『カスピ海ヨーグルト』ロゴ体について」と題する凸版印刷株式会社が作成した2014年9月2日付け書面において、「本ロゴ体は、家森先生がグルジア地方から持ち帰られた特別なヨーグルトを、フジッコ株式会社様が製品化する開発段階に企画相談を受けた当社が、そのヨーグルトの特性をイメージさせるロゴデザインとして2006年に開発したものです。・・・『カスピ海ヨーグルト』のロゴは、・・・オリジナルの手書き書体です。・・・筆による書き文字で作成し、縦書き2行で表現しました。また、一般的なヨーグルトとの製品特徴の違いを書体の特徴で表すために、本品ロゴには丸みのある文字の中に柔らかくハネを持たせることで、『カスピ海ヨーグルト』の特徴である『もっちりとした粘り気』と『やわらかな舌触り』を表現したオリジナル性の高いロゴタイプとしました。・・・このロゴは、『縦書き』及び『毛筆体』というデザイン構成が大きな特徴であり、ヨーグルトユーザーに対する訴求力が強いロゴデザインとなっています。」の記載がある(甲37)。
出願人以外の取扱いに係るヨーグルト(商品)の包装容器について、その商品名が縦書きで表されることは一般的とはいえず、かつ、毛筆体で書されたものは極めて少ない(甲25の9・16、甲26の1・2・4・6・7・9?22、28・29・31、甲52の1、甲55)。
(オ)使用商標について
使用商品の包装容器には、別掲2又はこれと実質的に同一といえる書体と構成で、「カスピ海」及び「ヨーグルト」の各文字が大きく表されている(以下「使用商標」という。)。
そして、出願人は、使用商品を商品カタログ・パンフレットに掲載し、新聞・雑誌・テレビ・看板等の媒体により積極的に宣伝広告を行ってきており、また、近年の健康食品ブームと相俟って、使用商品が新聞・雑誌の記事やテレビ番組等で紹介されることも多く、さらに、使用商品を実際に販売する店舗は全国に多数存在するところ、そのほとんどの場合において、使用商品の包装容器の写真が用いられ、そこに大きく顕著に表された使用商標が目立つような態様で掲載・放送・展示・陳列されている(甲1、甲4、甲5の9、甲6の4?18、甲7の1、甲8、甲9の1?15、甲10の1・3・4・7?10、甲13の1?3、甲14の2?8・10?16、甲15、甲16、甲17の1?24・32?76、甲18の1?5・20?36・38、甲19の1?3・8・9・12?16、甲22、甲23の1・3・5?7、甲24、甲25の2?18、甲26の1・2・4・6・9?14・16?36、甲27、甲28の5・6・8・9・11・13?16、甲31、甲32の1?5・7、甲33、甲34、甲36、甲38、甲40、甲42、甲44、甲47の1・2、甲48、甲51の1、甲52の1、甲54)。
(カ)本願商標(使用商標)の認知度について
民間調査機関において、20歳ないし79歳の男女でヨーグルトを月1回以上購入し、食す者1,000人を対象として、本願商標(「カスピ海ヨーグルト」のロゴ)の認知度を調査した結果、「見たことがある」との回答が53%を占め、特に、本願商標が想起させるイメージとして「一般的なヨーグルトより価格が高い」との回答が46%、「健康効果が高い、体に良い」との回答が40%であることとも相俟って、女性の高齢者層(70歳ないし79歳)における認知度は80%を超えた。
また、上記で「見たことがある」と回答した者のうち85%が商品ブランドとして認識し、さらに、21%は具体的に出願人の商品ブランドであると回答した(甲45)。
イ 上記によれば、出願人は、2006年から約10年間継続して、使用商品の包装容器に大きく目立つ態様で使用商標を表示してきており、該包装容器における使用商標の構成部分は、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえる。
また、商品カタログや宣伝広告において、使用商標が明確に視認できる使用態様でその包装容器の写真を掲載し、実店舗において使用商品を販売する際にも、使用商標が明確に確認できる態様で陳列されていることが認められる。
さらに、使用商品の販売実績は年々増加しており、指定商品の分野において一定程度の実績が認められるものであって、かつ、使用商品は、新聞・雑誌・テレビ等で紹介され、これらにおいても、使用商標が明確に認識できる包装容器の写真が掲載されているものである。
そして、前記1及び上記(2)ア(オ)のとおり、使用商標は、本願商標と実質的に同一の標章であり、上記(1)のとおり、その構成文字は、毛筆風の丸みを帯びた書体であって大きさを同じくし、かつ、「カスピ海」及び「ヨーグルト」の各文字部分を縦2列に表すなど、これに接する需要者に商品を選択する際の目印として意識されやすい特徴を有する態様であるといえるものであり、加えて、本願商標を商品ブランドとして認識する否かについて、85%が認識すると回答したアンケート調査の結果がある。
そうとすれば、本願商標は、出願人又はその取扱いに係る商品「ヨーグルト」を表すものとして、本願の指定商品「ヨーグルト」に係る取引者、需要者に広く知られているものというべきである。
してみれば、本願商標は、その指定商品について出願人により使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識するに至ったものと判断するのが相当であるから、商標法第3条第2項の要件を具備するものである。
(3)むすび
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものの、同法第3条第2項の規定により商標登録を受けることができるものである。
その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
1 本願商標


2 使用商標
(1)使用商品の包装容器の側面


(2)使用商品の包装容器の上蓋



審決日 2015-03-31 
出願番号 商願2013-14297(T2013-14297) 
審決分類 T 1 8・ 13- WY (W29)
T 1 8・ 17- WY (W29)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大渕 敏雄 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 浦辺 淑絵
根岸 克弘
商標の称呼 カスピカイヨーグルト、カスピカイ 
代理人 特許業務法人 有古特許事務所 

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