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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2011890023 審決 商標
平成24行ケ10403審決取消請求事件 判例 商標
無効2013890034 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない W03
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W03
審判 全部無効 外観類似 無効としない W03
審判 全部無効 称呼類似 無効としない W03
審判 全部無効 観念類似 無効としない W03
管理番号 1296147 
審判番号 無効2014-890025 
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-04-15 
確定日 2014-12-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第5568588号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5568588号商標(以下「本件商標」という。)は、「BHAKU」の欧文字を横書きしてなり、平成24年8月9日に登録出願、第3類「化粧品」を指定商品として、同25年3月4日に登録査定、同月22日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人の引用する登録第5013891商標(以下「引用商標」という。)は、「HAKU」の欧文字を標準文字で表してなり、平成16年9月2日に登録出願、第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」を指定商品として、同18年12月22日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第第66号証を提出している。
2 請求の理由(要旨)
(1)引用商標の周知・著名性
ア 請求人は引用商標を、平成17年4月から、商品「美白効果を有する美容液(美白美容液)」について使用している。引用商標を付した美白美容液は、美白効果に特化した高級化粧品であって、請求人が独自に開発した美白有効成分「m-トラネキサム酸」を配合した美白効果の高い美容液である。美白有効成分である「m-トラネキサム酸」は、メラニンの生成を抑え、シミ・ソバカスを防ぐ効能効果を有し、医薬部外品として同14年(2002年)に厚生労働省の認可を得ている成分である(甲7、甲8)。さらに、同19年(2007年)3月には、新たに開発した美白有効成分「4MSK」と肌荒れ防止成分「トラネキサム酸」を配合した美白美容液「HAKU メラノフォーカス2」を発売した。美白有効成分「4MSK」は、「4-メトキシサリチル酸カリウム塩」からなり、メラニン色素の過剰生成を抑えて、シミ・ソバカスを防ぐ効果を有し、同15年(2003年)10月に薬事取得を得ている成分である(甲9、甲10)。
同21年(2009年)2月には、「白蓮果HA」を追加配合した「HAKU メラノフォーカスEX」を発売している。「白蓮果HA」は、ハス種子発酵液とヒアルロン酸を複合した保湿成分である(甲11、甲12)。同22年(2010年)2月には、シミが出来る肌特有のメラニン生成抑制・排出に着目した薬用美白マスク「HAKU メラノフォーカスEX マスク」を発売している。この薬用美白マスクは、美容液をたっぷりふくんだ新開発のマスクシートが肌にぴったり密着し、紫外線などのダメージによってシミリスクが気になる肌を集中的にケアすることを可能とした商品である(甲13、甲14)。
同23年(2011年)2月には、「4MSK」と「m-トラネキサム酸」を効果的に組み合わせた美白有効成分「抗メラノ機能体」を配合して、シミの原因となるメラニンの生成を抑える働きを強化した美白美容液「HAKU メラノフォーカスW」を発売した(甲15、甲16)。
同25年(2013年)2月には、従来の「抗メラノ機能体」に加えて、新たに発見した新成分「アンダーシールダー」を配合し、シミの出来る肌特有の状態を様々な方面から防ぎ、あらゆるルートでメラニンの過剰生成を効果的に抑止する「HAKU メラノフォーカスCR」を発売した。この新成分「アンダーシールダー」は、ホワイトリリー、塩酸グルコサミン、グリセリンを複合した整肌・保護成分であり、肌の奥のメラニン生成ルートに着目した成分である(甲17、甲18)。
イ 請求人のニュースリリースは、新製品を新聞、雑誌、テレビ等のマスメディアに発表するために配付された資料であり、この配付資料に基づいた記事が新聞等に掲載されている(甲19?甲22)。
ウ 請求人は、美白化粧品の先駆者であり、大正時代に既に近代的美白コスメの原型である美白化粧水を発売し、その後も節目節目において歴史的名品を送り出してきた。引用商標は、そのような美白化粧品の新たなブランドとして、1本5000円から10000円の高級化粧品であり、前述の「m-トラネキサム酸、4MSK」等の美白有効成分や、「白蓮果HA、抗メラノ機能体、アンダーシールダー」等のその他の成分の配合により、極めて有効な美白効果を発揮する化粧品として、平成17年(2005年)に新発売された後、同19年(2007年)、同21年(2009年)、同22年(2010年)、同23年(2011年)及び同25年(2013年)にそれぞれ新しい成分を配合した新商品が発売されている。そして、このことは雑誌「VOCE」同25年(2013年)5月号(甲23)に紹介されている。
エ 引用商標に係る高級美白化粧品は、新聞、雑誌、テレビ等で幅広く宣伝、広告されてきているが、特に美白化粧品の需要者である女性に向けて、「Oggi、VoCE、STORY、MAQUIA、Grazia、GLAMOROUS、FRAU、ViVi」等の多くの女性雑誌で宣伝広告している(甲24?甲31)。
そして、請求人は、かかる宣伝広告活動に毎年1億円前後の費用を支出しており、発売以来2012年までの7年間に、総額7億2000万円以上を支出している(甲32)。販売個数は、毎年100万本を超えており、2014年(平成26年)2月20日までの総販売個数は、マスクの販売個数を含めると1100万個を超えており(甲33)、又、販売金額は毎年100億円を超えており、2014年2月20日までの総販売金額は、1000億円を超えている(甲34)。引用商標に係る美白化粧品は、その商品の効能・効果に基づく品質の良さ、広告宣伝効果、販売数量及び金額の大きさから、我が国において需要者である女性を中心にして広く知られて来ており、周知、著名な商標となっている。引用商標が、周知、著名な商標であることは、同化粧品が、美白化粧品を代表する商品として多くの新聞、雑誌で紹介され(甲35?甲39)、商品の販売ランキングでも、しばしば上位にランキングされている(甲40?甲43)ことや、女性雑誌が毎年開催しているコスメ大賞で大賞や部門1位等を多数受賞している(甲47?甲66)ことからも明らかである。さらに、引用商標に係る化粧品は、その製品の製造工程、商品容器(レフィル)、コマーシャル内容等についても新聞紙上で紹介されており(甲44?甲46)、マスコミやユーザーの注目を集めている商品である。
以上のとおり、請求人は、平成17年(2005年)に独自に開発した美白効果の高い美白有効成分を配合した美白化粧品を、引用商標を付して販売開始した。当該美白ブランドである引用商標は、その後1、2年おきに新製品を発売し、メラニンの生成を抑え、シミ・ソバカスを防ぎ、高い美白効果を発揮し得る化粧品として、需要者である女性に広く受け入れられている。引用商標を付した美白化粧品は、その高い美白効果により、需要者である女性に広く受け入れられて来た結果、多くの女性雑誌が開催する「ベストコスメ」賞を受賞して来ており、我が国の化粧品業界において、引用商標は請求人が製造、販売する美白化粧品を指称する名称として、広く知られるに至っており、美白化粧品を代表する商標として、日本国内において周知・著名となっている。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標と引用商標とは、「B」の有無において相違するにすぎない。相違する「B」はアルファベットの1文字であり、特定の意味合いを感得させるものではなく、しばしば商取引においては記号として用いられることが多く、特別な出所識別機能を有しているとは言えない。「B」を付加した「BHAKU」は、全体として特定の意味、観念を奏しているとも考えられないものであり、単に「HAKU」に「B」を付加したにすぎないと容易に理解することが出来るものであって、「B」が記号的な意味合いを想起させるにすぎないことを考慮すると、両者は「HAKU」の部分が一致していることにより、需要者に対し、その出所が同じであると、誤認、混同を生じさせるおそれがある。又、本件商標は、「ビーハク」と称呼されるものと思われるが、「ビー」の部分は、英文字の「B」を念頭に置いて発音し、称呼するものであってみれば、「ビーハク」の称呼が、一連不可分に認識されるとは言えず、「B+HAKU」として直感的に認識され、「ビー+ハク」と認識され、単に「HAKU」に「B」が付加されたに過ぎないと理解されるものと思料する。「B」の付加により、全く別異の造語として認識されうるものではない。よって、本件商標は引用商標と類似するものであり、商標法第4条第1項第11号に該当し、商標登録を受けることができないものである。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標は、「HAKU」の頭部に「B」を付加した点で引用商標と相違しているが、引用商標は、主として美白化粧品を対象にして販売され、美白化粧品を指称する商標として、需要者の間に広く知られている商標である。そして、本件商標の「B」は、英文字1字であり、通常記号として認識されるものであり、全体としてみてもBを付加した「BHAKU」に特定の意味合いが生じているものではなく、単に「HAKU」に「B」を付加したと理解される表示にすぎない。又、「BHAKU」は、美白をローマ字表記した「BIHAKU」と極めて近似した表示であり、「ビハク」とも称呼され得る可能性がある。したがって、「BHAKU」は、「美白(BIHAKU)」用化粧品に特化して使用されている引用商標を容易に想起させ、引用商標のシリーズ商品との誤解を招来させるおそれが極めて高く、誤認混同を招来させる可能性があり、商標法第4条第1号第15号に該当し、商標登録を受けることができない商標である。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標は、引用商標に特定の意味、観念を生じさせることのない英文字1字「B」を付加したにすぎず、全体として特定の意味合いを感得させることのない名称であり、しかもわざわざ「B」の文字を付加して引用商標が主として使用し、周知、著名になっている「美白(BIHAKU)化粧品」と紛らわしい表示を用いているものであり、そこには、引用商標との誤認を一般需要者に招来させ、「HAKU」との誤認を生じさせることにより、あたかも著名商標と何等かの関連がある商標であるかの如き誤解を一般消費者に招来させ、そのことにより不正の利益を得る目的があるといわざるを得ない。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号の規定に該当し、商標登録を受けることができないものである。
(5)結び
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、無効とするべきものである。

第4 被請求人の主張
1 答弁の趣旨
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証を提出している。
2 答弁の理由(要旨)
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 指定商品の類否について
本件商標の指定商品は、第3類「化粧品」であるのに対し、引用商標の指定商品は、第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」であり、「化粧品」において、両者の指定商品は一致している。
イ 商標の類否について
(ア)本件商標
本件商標は、これを構成する文字が、同書体、同じ大きさで等間隔をもって表されており、視覚上も一体的に把握できるものである。そして、被請求人が本件商標の使用に際して予定する称呼「ビハク」、及び、単に本件商標から生じる「ビーハク」の称呼も格別冗長とはいえず、一連に称呼できるものである。
したがって、本件商標「BHAKU」から「HAKU」の文字部分が分離して把握されるということは到底できないというのが相当である。
この点について、請求人は、「本件商標と引用商標とは、『B』の有無において相違するが、……両者は『HAKU』の部分が一致していることにより、需要者に対し、その出所が同じであると、誤認、混同を生じさせるおそれがある。」と主張している。
しかしながら、「B」の文字部分を出所表示機能を有しない取引記号として捉え、「HAKU」の文字が引用商標と一致することから、本件商標が引用商標と類似し、誤認、混同を生じさせるおそれがあるとみるのは、本件商標の不自然な観察方法に他ならず、本件商標から「HAKU」の部分が分離させる旨をいう請求人の主張は明らかに失当である。
さらに、本件商標からは特定の観念は生じず、一連の造語として認識されるべき商標である。
(イ) 引用商標
これに対して、引用商標は、「HAKU」の欧文字よりなるものであり、「ハク」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
(ウ)本件商標と引用商標との類否について
以上によれば、本件商標と引用商標とは、外観上明確に区別でき、その称呼についても、本件商標から生じる「ビハク」又は「ビーハク」の称呼と、引用商標の要部から生じる「ハク」の称呼とは「ビ」又は「ビー」の音の有無の差異があることから、互に類似するということは到底できず、また、観念においても類似しないものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれからみても、決して類似しない商標であるといわざるを得ない。
したがって、本件商標と引用商標とは、指定商品において同一又は類似する関係にあるとしても、両商標は、混同を生じさせない互いに非類似のものというべきであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標は、専ら「美白美容液」及び「美容液をフェイスマスクに含浸させたパック用化粧品」に使用された結果、一定の業務上の信用を得ていた可能性は否定しない。
しかしながら、本件商標と引用商標とは、互に混同を生ずるおそれのない別異の商標に他ならない。したがって、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が、該商品が審判請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性について
請求人は、本件商標が、請求人である「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするもの」であると主張している。
しかしながら、本件商標と引用商標とは、互に混同を生ずるおそれのない別異の商標に他ならない。つまり、本件商標は、引用商標とは類似しないことは明らかであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する理由に欠ける。
(4)結び
以上の理由により、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものではないから、無効となり得ず、維持されるべきものである。

第5 当審の判断
1 引用商標の周知・著名性について
(1)請求人提出の甲各号証によれば、以下の事実が認められる。
ア 新商品の開発と販売について(ニュースリリースより)
(ア)請求人は、「シミ部位の皮膚が肌内部で慢性微弱炎症を起こしていることを発見/?新美白ブランド『HAKU』を発売?」との見出しの下、「m-トラネキサム酸を配合した新美白ブランド『HAKU』より、美容液『HAKU メラノフォーカス』(…/医薬部外品)を2005年4月21日に発売する。」旨のニュースリリースを公表した(甲8、平成17年(2005年)2月2日配布)。
(イ)請求人は、「HAKUがさらに進化/メラニン生成とメラニン排出に着目した『HAKU メラノフォーカス2』誕生」との見出しの下、「シミができる肌特有のメラニン生成とメラニン排出に着目した薬用美白美容液『HAKU メラノフォーカス2(医薬部外品)』(…)を2007年3月21日に発売する。」旨のニュースリリースを公表した(甲10、平成19年(2007年)2月20日配布)。
(ウ)請求人は、「メラニン生成抑制とメラニン排出に着目した美白美容液 『HAKU メラノフォーカス2』がさらに進化、『HAKU メラノフォーカスEX』として登場」との見出しの下、「シミができる肌特有のメラニン生成抑制・排出に着目した薬用美白美容液ブランド『HAKU』より、美白有効成分『4MSK』と肌あれ防止成分『トラネキサム酸』に加え、新成分『白蓮果HA』を配合し、なめらかで、ぬけるように澄んだ肌に導く『HAKU メラノフォーカスEX(医薬部外品)』(…)を2009年2月21日に発売する。」旨のニュースリリースを公表した(甲12、平成21年(2009年)1月14日配布)。同趣旨の新聞記事が、同年1月20日付け日本経済新聞にも掲載されている(甲19)。
(エ)請求人は、「資生堂『HAKU』より 薬用美白マスク 誕生」との見出しの下、「美白ブランド『HAKU』より、シミができる肌特有のメラニン生成抑制・排出に着目した薬用美白マスク『メラノフォーカスEX マスク』(…/医薬部外品/…)を2010年2月21日に発売する。」旨のニュースリリースを公表した(甲14、平成21年(2009年)12月16日配布)。同趣旨の新聞記事が、2010年1月6日付け日本経済新聞(甲20)及び同年2月19日付け北海道新聞にも掲載されている(甲21)。
(オ)請求人は、「資生堂『HAKU』より美白有効成分4MSK・m-トラネキサム酸の『抗メラノ機能体』を搭載した最新薬用美白美容液誕生」との見出しの下、「美白ブランド『HAKU』より、シミができる肌特有のメラニン生成抑制・排出に着目した薬用美白美容液『メラノフォーカスW』(…/医薬部外品/…)を2011年2月21日に発売する。」旨のニュースリリースを公表した(甲16、平成22年(2010年)12月21日配布)。同趣旨の新聞記事が、2011年2月21日付け日経産業新聞(甲45)、同年3月10付け中国新聞夕刊(甲22)にも掲載されている。
(カ)請求人は、「‘新たなメラニン生成ルート’を発見 『HAKU』より アンダーメラニン美白 誕生」との見出しの下、「美白ブランド『HAKU』より、新たに発見した、シミ、ソバカスのもとになる肌の奥のメラニン生成ルート『アンダーメラニンルート』に着目した薬用美白美容液『メラノフォーカスCR』(…/医薬部外品/…)を2013年2月21日に発売する。」旨のニュースリリースを公表した(甲18、平成24年(2012年)12月19日配布)。
イ 宣伝広告について
請求人は、本件商標の登録出願前である平成21年(2009年)6月23日発行の女性ファッション雑誌「Oggi(オッジ)2009年8月号」、同23年(2011年)6月23日発行の同「VoCE(ヴォーチェ)2011年8月号」、同24年3月1日発行の同「STORY2012年4月号」、同月23日発行の同「MAQUIA(マキア)2012年5月号」(以上甲24?甲27)に引用商標の広告を掲載し、また、本件商標の登録出願後、登録査定前である、平成25年(2013年)2月7日発行の女性ファッション雑誌「Grazia(グラツィア)2013年3月号」、同日発行の同「GLAMOROUS(グラマラス)2013年3月号」、同月12日発行の同「FRAU(フラウ)2013年3月号」、同月23日発行の同「ViVi(ヴィヴィ)2013年4月号」(以上甲28?甲31)に引用商標の広告を掲載している。
請求人はTVCMについて、自らCM放送している事実については立証していないが,平成24年3月16日付け「日経流通新聞」には、「CMナウ」の見出しの下、2月から放送している請求人の薬用美白美容液「HAKU」のCMについて、「HAKUの『白』とシミの『黒』のイメージを重ね、シミが目立たず白く整った肌が女性の自信に結びつく姿をアピールする。」などと記載されている(甲46)。
請求人は、HAKUの宣伝制作費について、平成18年(2006年)度から同24年(2012年)度までに、総額7億2000万円以上を支出している(甲32)。
ウ 販売実績等について
(ア)販売個数及び販売金額について
「HAKU」を付した美白美容液の販売個数は、毎年度100万本を超えており、平成17年(2005年)度から同25年(2013年)度(平成25年度は平成26年2月20日)までの総販売個数は、マスクの販売個数を含めると1100万個を超えており(甲33)、その販売金額は、毎年度100億円を超えており、総販売金額は、1000億円を超えている(甲34)。
(イ)新聞報道等について
a 一般記事
(a)平成17年(2005年)5月14日付け「日本経済新聞」プラスワンには、主な美白化粧品9社の商品が紹介されており、その中の一として請求人の「HAKU」が紹介されている(甲35)。
(b)同18年(2006年)8月16日付け「日本経済新聞」には、「夏の傷み残さず UVケア 少しぜいたくに『美白』商品5000円以上が好調」の見出しの下に、紫外線によるダメージを癒やす商品として7社の商品が紹介されており、その中の「シミ・そばかすの定着を抑える化粧品」の一として請求人の「HAKU メラノフォーカス」が紹介されている(甲39)。
(c)同21年(2009年)6月19日付け「熊本日日新聞」夕刊には、「気になる商品 美白化粧品 基本は毎日の手入れ」の見出しの下に、3社の商品が紹介されており、その中の一として請求人の「HAKUメラノフォーカスEX」が紹介されている(甲36)。
(d)同22年(2010年)5月18日付け「日刊工業新聞」には、請求人の美容液「HAKUメラノフォーカスEX20」の製品容器は、上部にらせん状の突起が入るなどデザイン性が高いことから、手作業による生産工程をどのように改善するかが問題となるが、その手作業工程を効率化し生産性を向上させたことが紹介されている(甲44)。
(e)日経BP社発行の雑誌「日経ヘルス2011年10月号」には、「コスメ厳選ガイド」「シミを撃退 肌に蓄積したメラニンがメラニンを呼ぶ“負のスパイラル”を断ち切る」「肌の奥で過剰に分裂する基底細胞は、シミが居座る原因になる。この生成を断ち切りシミを解消するW主剤が登場。」「今注目の成分/…W主剤…今年は資生堂が4MSKとmトラネキサム酸というW(ダブル)で主剤を配合。より速く美白効果が得られる。」などとして「HAKU メラノフォーカスW」が紹介されている(甲37)。
b 「HAKU」製品の販売評価について
(a)平成19年(2007年)5月11日付け「日経流通新聞」には、「『HAKU メラノフォーカス2』7週連続1位」の見出しの下、「『HAKU メラノフォーカス2(医薬部外品)45g』は7週連続首位。同17年(2005年)に発売した第1弾製品は1年半で200万本売れたヒット商品。今回は新たな美白成分を配合し、女性の根強い支持を集める。」などと記載されている(甲41)。
(b)平成20年(2008年)2月29日付け「日経流通新聞」には、「資生堂『ハク』白眉の美白戦略」の見出しの下、「売れ筋をみると美白美容液が上位に数多く入り、中でも請求人の美白美容液が金額シェア(9.5%)で二位以下に大きく差を付けた。」「美白美容液は上位十品目のうち四品目を占めた。一位の請求人『HAKU(ハク) メラノフォーカス2』は、請求人が05年に立ち上げた美白美容液の専門ブランド『HAKU(ハク)』の主力製品。肌を黒く見せる色素であるメラニンの生成を抑えるだけでなく、表皮細胞の生まれ変わりをスムーズにする成分も盛り込み、消費者をつかんでいる。」などと掲載されている(甲42)。
(c)本件商標の登録出願後、登録査定日である平成25年(2013年)3月4日付け「日経流通新聞」には、「店頭商品浮き沈み 日経POS情報サービス」の女性用美容液・エッセンスについて、「資生堂『HAKU』が首位に」の見出しの下、「首位はシェア15.5%の請求人『HAKU メラノフォーカスCR レフィル』。美白有効成分『抗メラノ機能体』に加え、『アンダーシールダー』と呼ぶ成分を配合した薬用美白美容液だ。」と掲載されている(甲43)。
(ウ)雑誌報道等について
平成19年(2007年)6月23日発行の雑誌「MAQUIA(マキア)2007年8月号」には、「2007上半期 ベスト・オブ・ベスト コスメ大賞」(甲47)、同日発行の雑誌「VoCE(ヴォーチェ)2007年8月号」には、スキンケア部門グランプリとして、請求人「HAKU メラノフォーカス2」(甲48)、雑誌「美的2011年2月号」には、「ベストコスメ」2010には「Mask マスク」の1位として、請求人「HAKU メラノフォーカスEXマスク」(甲49)、雑誌「MAQUIA2011年8月号」には、2011上半期ベスト・美白大賞として、請求人「HAKU メラノフォーカスW」(甲50)、雑誌「MORE2011年8月号」には、「MOREコスメ大賞 2011上半期」として「シミ」について、「HAKU メラノフォーカスW」(甲52)、雑誌「AneCan2011年8月号」には、「2011上半期発売の人気スキンケアコスメ」のシートマスク部門の1位として、請求人「HAKU メラノフォーカスEXマスク」(甲51)、雑誌「BAILA2011年8月号」には、美白美容液部門の2位として、請求人「HAKU メラノフォーカスW」(甲53)、雑誌「美的2012年2月号」には、美容液の3位として、請求人「HAKU メラノフォーカスW」(甲57)、雑誌「GLOW2012年1月号」には、GLOW読者が選んだ「買って良かったコスメ」を発表/G-1“実感コスメ”グランプリ2011の美容液第1位として、請求人「HAKU メラノフォーカスW」(甲55)、雑誌「Oggi2012年2月号」には、「ベストコスメ殿堂入り決定!」の美容液6年連続1位として、請求人「HAKU メラノフォーカスW」(甲58、甲54)、雑誌「Precious2012年2月号」には、「シミに効いたBEEST3コスメ」の1位美容液として、請求人「HAKU メラノフォーカスW」(甲56)などが掲載されている。
(2)以上によれば、請求人は、平成17年(2005年)4月から、新美白ブランド「HAKU」(引用商標)より、美容液「HAKU メラノフォーカス」の発売を開始した。その後も、同19年(2007年)3月に「HAKU メラノフォーカス2」、同21年(2009年)2月に「HAKU メラノフォーカスEX」、同22年(2010年)2月に「HAKU メラノフォーカスEX マスク」、同23年(2011年)2月に「HAKU メラノフォーカスW」及び同25年(2013年)2月に「HAKU メラノフォーカスCR」と新しい成分を追加配合した「美白美容液」又は「美白マスク」等の新商品を1年又は2年程度の間隔で発売しており、これらの商品にはいずれも引用商標が使用されていることが確認できる。
請求人は、遅くとも平成21年6月ころから同25年2月までに発行された各種女性ファッション雑誌に引用商標の広告を掲載していることが認められる。また、請求人は、遅くとも平成24年2月ころから引用商標のTVCM放送をしていると推認されるが、TVCM放送については甲第46号証1件が提出されているにすぎず、また、新聞広告についての立証はない。請求人は、引用商標の宣伝制作費について、平成18年度から同24年度までに、総額7億2000万円以上を支出していることが認められる。
「HAKU」を付した美白美容液の販売個数は、毎年度100万本を超えており、平成17年度から同25年度までの総販売個数は、マスクの販売個数を含めると1100万個を超え、その販売金額は、毎年度100億円を超えており、総販売金額は、1000億円を超えていることが確認できる。
引用商標が付された商品は、発売が開始された直後から商品紹介の新聞報道がなされ、各新商品についても商品紹介、販売動向やシェアなどについての新聞報道がなされている。
また、女性ファッション雑誌において、読者の投票により買って良かった化粧品についてのランキングや各種賞の授与を発表しているが、請求人の引用商標を付した「美白化粧液」や「美白マスク」については高順位に選ばれ、各種の賞を多数受賞していることが認められる。
以上を総合すると、引用商標は、甲各号証によれば、遅くとも本件商標の登録出願時には「美白化粧液」や「美白マスク」について、女性を中心とする需要者層において一定の著名性を獲得し、その著名性は本件商標の登録査定時まで継続していたというのが相当である。

2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、「BHAKU」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成各文字は、同じ書体、同じ大きさ、及び等間隔をもって、まとまりよく一連に表されており、かかる構成態様の本件商標にあって、「B」の部分と「HAKU」の部分に分離し、「HAKU」の文字部分のみが独立して強く認識され記憶され、当該文字部分に相応した称呼や観念をもって取引に資されるとすべき特段の事情は見いだせない。また、構成全体に相応して生じる「ビーハク」の称呼も、格別冗長ではなく一気一連に称呼できるものである。
してみると、本件商標は、「ビーハク」のみの称呼を生じるというべきであり、また、特定の観念を生じない造語として看取されるものである。
なお、請求人は、本件商標と引用商標は、「B」の有無において相違するにすぎず、該「B」は記号的な意味合いを想起させるもので、特別な出所識別機能を有しているとはいえず、「HAKU」に「B」が付されたにすぎないと理解されるものである旨述べているが、前記のとおり、まとまりよく一連に表された本件商標の構成態様にあっては、「B」の文字だけが抽出され、記号的な意味合いを理解させるとはいい難く、また、他に本件商標を「B」の文字と「HAKU」の文字とに分断すべき特段の事情も見いだせない。
(2)引用商標
引用商標は、「HAKU」の欧文字を標準文字で表してなるところ、該文字はその読みから「白」「伯」「泊」「拍」「博」などを想起させるが、指定商品「化粧品」との関係からは「白」を連想させ易いものであり(甲46参照)、該構成文字に相応して「ハク」の称呼を生じ、「白」などの観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標とを比較すると、その外観構成においては、両者は、本件商標が欧文字5文字、引用商標が欧文字4文字よりなり、いずれも比較的構成文字数が少ないものであるから、本件商標の第2文字以下が引用商標の構成文字と共通するとしても、外観の識別上重要な位置を占める語頭において「B」の文字の有無の差異を有することから十分区別することができ、外観上相紛れるおそれはないものである。
つぎに、本件商標から生ずる「ビーハク」の称呼と引用商標から生ずる「ハク」の称呼とを対比すると、両者は、本件商標の構成音数が4音、引用商標の構成音数が2音といずれも少ない構成音数からなり、本件商標の語尾音と引用商標の構成音全体の「ハク」の音を共通にするものの、称呼の識別上重要な位置を占める語頭において「ビー」の音の有無という差異を有するから十分聴別することができ、称呼上相紛れるおそれはないものである。
さらに、両商標は、本件商標から観念が生じないことから、比較することができず、観念上相紛れるおそれはないものである。
したがって、本件商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても、引用商標に類似する商標ということはできないものである。
(4)小括
以上によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものということはできない。

3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)商標の類似性について
前記2のとおり、本件商標は引用商標に類似する商標とは認められないものであるから、両者は、別異の出所を看取させる商標であるといわざるを得ないものである。
(2)前記1のとおり、引用商標は、「美白美容液」等について、女性を中心とする需要者層において一定の著名性を獲得していたと認められるものではあるが、両商標は別異の出所を看取させる非類似の商標といえるものであるから、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者・需要者が、引用商標又は請求人を想起、連想して、当該商品を請求人の業務に係るものであるとか、あるいは、同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く誤信するとは認められないものであるから、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標ということはできない。
(3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものということはできない。

4 商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)前記1のとおり、引用商標は、「美白美容液」等について、女性を中心とする需要者層において一定の著名性を獲得していたと認められるものではあるが、両商標は別異の出所を看取させる非類似の商標といえるものであるから、本件商標権者が、引用商標の著名性にただ乗り(フリーライド)することを意図して登録出願し、本件商標をその指定商品について使用することにより、不正の利益を得ようとする意図があったということはできず、本件商標は、不正の目的をもって使用する商標と認めることはできない。
(2)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものということはできない。

5 結論
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2014-10-17 
結審通知日 2014-10-21 
審決日 2014-11-07 
出願番号 商願2012-64927(T2012-64927) 
審決分類 T 1 11・ 263- Y (W03)
T 1 11・ 261- Y (W03)
T 1 11・ 271- Y (W03)
T 1 11・ 222- Y (W03)
T 1 11・ 262- Y (W03)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 裕子 
特許庁審判長 土井 敬子
特許庁審判官 野口 美代子
高野 和行
登録日 2013-03-22 
登録番号 商標登録第5568588号(T5568588) 
商標の称呼 ビイハク、ビハク 
代理人 永田 良昭 
代理人 木村 浩幸 
代理人 竹内 裕 
代理人 永田 元昭 

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