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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W18
管理番号 1293844 
異議申立番号 異議2014-900017 
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2014-12-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2014-01-14 
確定日 2014-10-30 
異議申立件数
事件の表示 登録第5623626号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5623626号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5623626号商標(以下「本件商標」という。)は、「CAROL」の欧文字を標準文字で表してなり、平成25年2月26日に登録出願、第18類「 かばん金具,がま口口金,蹄鉄,皮革製包装用容器,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,皮革」を指定商品として、同年10月2日に登録査定、同月18日に設定登録されたものである。

2 引用商標
ア 使用商標 「CAROLL」
イ 使用商品 「被服,履物,かばん類」
ウ 使用開始時期及び使用場所
フランスにおいて1963年(昭和38年)より使用開始
日本おいて2002年(平成14年)より使用開始

3 登録異議の申立ての理由の要点
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、以下の理由及び証拠(甲1?甲37(参考資料1?8を含む。))から明らかなように、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきものであると主張している。
(1)引用商標の周知著名性
ア 申立人について
申立人は、1963年に創業したアパレルブランド「CAROLL」の商品の製造販売を業とするフランス法人であり、引用商標を使用するものである(甲2、甲37)。
イ ブランド「CAROLL」の周知著名性について
「CAROLL」(キャロル)というブランドは、1963年、フランス・パリにて、ラファエル レヴィとジョゼフ ビギオによってニットウェアブランドとしてスタートしたものである(甲21)。1980年になると、フランスで初めての店舗を構え、84年には支店をオープンさせ、徐々に店舗数を増やすことに成功し、94年には、需要者の要望や嗜好を敏感にとらえ、大きなサイズの女性に向けたハイクオリティーな洋服の展開をスタートさせたが、これが大変な成功をおさめ、97年にはフランス国外の展開にも成功し、現在では、日本を含めた世界各国に468店舗を有するまでに拡大した(甲3)。そして、ニットウェアブランドとして始まった「CAROLL」は、現往では、カジュアルからオフィス対応、ドレスアップまでトータルファッションにおいて対応できるブランドとして、多様な嗜好を有する女性達を対象とした幅広い商品を取り扱っている(甲21、甲32、甲33)。これらの商品には「CAROLL」の文字からなる商標(引用商標)が付されている。
フランスやドイツといったヨーロッパの雑誌では、「CAROLL」ブランドの商品紹介がなされ(甲21?甲31)、ブランド創立から50周年を迎えた2013年には、それに合わせて女性らしい自然な美しさを備えた英国出身の女優シエンナ・ミラー(Sienna Miller)を起用したことが、ヨーロッパだけでなく、日本のファッションニュースに取り上げられるなど話題になった(甲34、甲35)。これらの結果、「CAROLL」ブランドのヨーロッパにおける売上高は、2012年度は386億3千万円、2013年度は379億7千万円に及んでいる(甲2)。
このようにヨーロッパを中心に有名なブランドであった「CAROLL」の商品は、2002年と早くから日本の取引者・需要者へも紹介がされはじめ、商品が輸入されるなどしている。そして、例えば、東京の青山や日比谷にブティックを構え、また、情報番組の女性アナウンサーが「CAROLL」ブランドの洋服を着用する等、その販売促進に努めてきた(甲2の添付資料7)。
申立人の「CAROLL」ブランドの広告が、平成25年(2013年)に働く女性を対象とする女性誌「Oggi」(甲2の添付資料8)において紹介された。インターネットの第三者による海外ファッション通販サイトでも大きく取り上げられるなどしている(甲36、甲37)。このように、「CAROLL」ブランドの商品は、わが国においてもフランス発祥のファッショナブルなブランドとして高い人気を博している。その結果、日本においても、2004年から2013年まで、毎年3億円から4億円前後、多いときは4億5千万円前後の売り上げを挙げている(甲2)。
以上の次第で、「CAROLL」ブランドは、本国フランスはもちろんのこと、ヨーロッパの女性を中心に広く認識されたブランドであり、その周知著名性がわが国にも及んでいることは明らかである。そして、そのようにヨーロッパを中心に周知著名なブランドに使用される商標として引用商標もわが国の取引者及び需要者の間に、本件商標の出願時である2013年時点において、広く認識されている。
(2)本件商標と引用商標の類似性の程度
ア 本件商標について
本件商標「CAROL」は、「キャロル」の称呼が生じ、また、欧米人のファーストネーム「キャロル」といった意味を有する語である。
イ 引用商標について
引用商標「CAROLL」は、「キャロル」の称呼が生じ、欧米人のファーストネーム「キャロル」という観念が生じる。また、引用商標は、遅くとも、本件商標の出願時(平成25年(2013年)2月26日)までには周知となっていることから、引用商標からは、申立人の製造販売するアパレルブランド「CAROLL」との観念も生じる。
ウ 本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標とを対比すると、語尾の「L」の有無の差異はあるものの、残りの「CAROL」部分はすべて同一綴りの欧文字であって、実質的にほとんど同一といえるものであり、その称呼は同一の「キャロル」であり、その観念も、欧米人のファーストネームという実質同一の観念が生じ紛らわしく、外観も近似し紛らわしいものである。したがって、本件商標と引用商標は、互いに類似する商標というべきである。
さらに、ブランド「CAROLL」の周知性を考慮すれば、本件商標に接した需要者、取引者は本件商標の「CAROL」部分より、周知な「CAROL」を容易に想起し、連想する結果、両者を混同して認識するおそれは優に認められるから、本件商標と引用商標は、同一又は類似の商品に使用された場合には相紛らわしく、その商品の出所について混同を生じるおそれのある類似商標というのが相当である。
(3)商品間の関連性,取引者,需要者の共通性
本件商標の指定商品は上記1のとおりであり、他方、引用商標は「被服,バッグ」等のファッション関連商品に使用されヨーロッパを中心に周知となっているものである。そうすると,本件商標の指定商品は、引用商標が使用されて周知となった商品である被服やバッグと全く同一あるいは非常に密接な関述性を有するものであるから,その需要者の範囲や取引・流通経路も一致することの多いものである。
(4)まとめ
以上のとおり、引用商標は、50年以上の歴史を誇り、ヨーロッパを中心に広く人気を獲得して周知著名となっているブランドであり、引用商標と本件商標は、語尾の一文字を除いた構成文字のほぼ全てにおいて共通し、本件指定商品と引用商標が使用される商品は、いずれも被服及びバッグ等の服飾品に関連する点において高い関連性を有し、需要者、取引者も共通することを総合勘案すれば、本件商標権者が本件商標をその指定商品について使用した場合、需要者、取引者はその「CAROL」の文字部分から周知著名な「CAROLL」ブランドを想起、連想し、本件商標権者の取扱いに係る商品が、フランス発のブランド「CAROLL」と経済的若しくは組織的になんらかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、その出所につき混同を生じるおそれが極めて高い。さらには、本件商標の登録と使用を容認すれば、周知なブランドである引用商標の指標力が希釈化され、毀損されることは明らかである。
したがって、本件商標は、申立人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 当審の判断
(1)本件商標と引用商標の類否について
ア 本件商標
本件商標は、前記1のとおり、「CAROL」の欧文字を標準文字で表してなるところ、該文字は「聖歌、賛美歌」等の意味を有する英語であるから、「キャロル」の称呼及び「聖歌、賛美歌」等の観念を生ずる。
イ 引用商標
引用商標は、前記2のとおり、「CAROLL」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成文字に相応して「キャロル」の称呼が生じ、特定の意味合いを有しない一種の造語と認識されるものであるから、特定の観念は生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標は、外観においては、語尾が「L」であるか「LL」」であるかの差異を有するにすぎないから、近似した印象を与えるものである。
次に、称呼においては、両商標は共に「キャロル」の称呼を生じるものである。
また、観念においては、引用商標からは特定の観念を生じないものであるから、両者は観念において比較することはできない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、観念において比較し得ないとしても、外観において近似した印象を与え、「キャロル」の称呼を共通にするものであるから、外観、称呼、観念を総合的に判断すると、類似する商標というのが相当である。

(2)引用商標の周知著名性について
本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するためには、引用商標は、少なくとも、本件商標の登録出願時及び登録査定時のいずれにおいても、我が国において広く知られていることが必要であると解される。
そこで、以下、申立人の提出した証拠について検討する。
ア 甲第2号証は、申立人会社の最高経営責任者ジョセ・アパリジ氏の陳述書(参考資料1?8が添付)であり、同参考資料1ないし6によれば、同社は遅くとも平成24年(2012年)1月ころから茅ヶ崎、たまプラーザ東急、青山、日比谷、西宮、松山に店舗を有し、これらの店舗に「CAROLL」の文字からなる標章を掲げて「被服、かばん類」を展示していたことが確認できる。
そして、我が国において平成14年(2002年)から販売が開始されたこと、同16年(2004年)から同25年(2013年)まで、毎年3億から4億前後、多いときは4億5千万円前後の売上げがあったと陳述しているが、これらを裏付ける客観的な証拠資料は提出されていない。
また、資料7により平成23年(2011年)にTBS系のバラエティ番組でメインキャスターをつとめる女性アナウンサーに「CAROLL」ブランドの洋服を着用してもらった旨陳述するが、資料7に示す女性が着用している洋服がどのように紹介されたかなどは明らかでない。さらに、積極的な販促活動を行ったとして資料8を挙げるが、同資料8である「Oggi 2014年1月号」は、平成25年(2013年)11月28日発売のものであり、本件商標の登録出願後に発行されたものである。
イ 甲第25号証は、2013年(平成25年)2月22日発行のフランスの雑誌「ELLE」であるが、女優シエンナ・ミラーへのインタビュー記事が掲載されており、和訳によれば、「CAROLL」ブランドのための撮影を2日間行ったこと、撮影は楽しく行われ、当該ブランドが大好きで、自分に合っているなどという、インタビュー内容が掲載されている。
ウ 甲第30号証は、ドイツの雑誌「sensa」2012年9月?11月号における引用商標に関する記事、写しとされるものであるところ、「CAROLL」の標章が表示され、短い欧文が記述されていることは認められるものの、その記事内容は不明である。
エ 甲第31号証は、2006年(平成18年)、2007年(平成19年)及び2009年(平成21年)コレクションカタログとされているが、いずれも欧文で作成されたもので、記事内容は不明である。なお、申立人は、2006年から2009年にかけてのものと説明しているが、2008年のカタログは確認できない。
オ 甲第33号証は、読売オンライン「発言小町」と題する読者の投稿掲示版であり、同サイトに2008年5月14日に投稿された「背高の女性、洋服どこで買いますか」に対して、同日「…フランスのCaroll(キャロル)というOL向けブランドがサイズ展開豊富です。…」との回答が掲載されている。
カ これら以外の甲各号証は、本件商標の登録出願日以前に引用商標の使用事実等を掲載したものではなく(甲第1号証は本件商標の商標公報、甲第3号証は店舗の所在、甲第4号証ないし第20号証は各国における商標登録又は国際登録、甲第21号証ないし第24号証並びに甲第26号証ないし第29号証は本件商標の登録出願日後に発行された雑誌、甲第32号証及び甲第34号証ないし第37号証はウェブサイト記事であるが掲載日が不明で打ち出しの日が本件商標の登録出願日後のもの又は掲載日が本件商標の登録出願日後のもの)、我が国における引用商標の著名性を認定する資料としては適切なものとはいえない。
キ 小活
以上のとおり、申立人の提出に係る甲各号証及び甲第2号証に添付の参考資料1ないし8によれば、本件商標の登録出願時には、茅ヶ崎、たまプラーザ東急、青山、日比谷、西宮、松山の6店舗において、「CAROLL」を店舗名として掲げ、商品「被服,かばん類」を展示、販売していたであろうことは認められる(商品「履物」についての確認はできない。)ものの、各店舗に係る販売実績等は明らかでなく、また、陳述書で述べる、2004年から2012年までの毎年3億から4億円前後とする我が国における売上高は、我が国の衣料品の市場規模(例えば、2009年は10.2兆円。 別掲参照)からすれば、それほど大きいものとはいえず、さらに、我が国における販促活動の証拠として提出された参考資料8は、上記アのとおり本件商標の登録出願後に発行された雑誌であること等からすれば、これらの証拠からでは、引用商標が、本件商標の登録出願時に周知・著名性を獲得していたということはできない。そして、そのほかの雑誌、カタログ等の証拠については、欧文等で書かれ、その記載内容が不明であること上記のとおりであるから、これらも周知著名の証拠とはなり得ない。
そうとすれば、提出された証拠は、本件商標の登録出願日以前の引用商標に係る商業活動を、具体的に(例えば、販売数量、販売金額、市場占有率、広告宣伝の媒体、広告内容・期間・回数・地域・金額など)、かつ、客観的な資料に基づいて立証しているとは認められないものであるから、本件商標の登録出願日以前に、我が国において「CAROLL」の文字からなる引用商標が、申立人の業務に係る商品「被服,履物,かばん類」を表示する商標として、取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めるに足る証拠とはいえない。
したがって、申立人の使用する「CAROLL」の文字からなる引用商標は、「被服,履物,かばん類」について商品の出所を表示する商標として、本件商標の登録出願日以前に周知・著名性を獲得していたものと認めることはできない。

(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
本願商標と引用商標は、前記1のとおり、外観において近似し、「キャロル」の称呼を共通にする類似の商標ではあるが、引用商標は、上記(2)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品「被服,履物,かばん類」を表示する商標として、周知・著名性を獲得していたとは認められないものである。
そうとすると、商標権者が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者が、引用商標ないし申立人を想起、連想するようなことはないというべきであり、該商品が申立人又は申立人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生じさせるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものでないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
「Mizuho Industry Focus Vol.90」
アパレル企業の現状と展望/-アパレル企業に求められる成長戦略とは-/〈要旨〉○我が国の衣料品小売市場は1991年の15.2兆円をピークに減少が止まらない。……2005年以降は再び減少に転じ、2009年には10.2兆円まで減少している。……
(http://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/sangyou/pdf/mif_90.pdf)


異議決定日 2014-10-20 
出願番号 商願2013-13053(T2013-13053) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W18)
最終処分 維持  
前審関与審査官 浦崎 直之 
特許庁審判長 土井 敬子
特許庁審判官 野口 美代子
大森 健司
登録日 2013-10-18 
登録番号 商標登録第5623626号(T5623626) 
権利者 株式会社マルイ
商標の称呼 キャロル、カロル 
代理人 木村 正俊 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 宮川 美津子 
代理人 田中 克郎 
代理人 佐藤 俊司 
代理人 池田 万美 

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