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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 230
管理番号 1271250 
審判番号 取消2012-300361 
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2012-05-08 
確定日 2013-01-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第510872号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第510872号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、昭和32年1月16日に登録出願、第45類「他類に属しない食糧品及び加味品」を指定商品として、同年12月4日に設定登録、その後、4回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ、また、指定商品については、平成20年6月11日に、第29類「食肉,塩辛,うに(塩辛魚介類),このわた,寒天,ジャム,卵,かつお節,干しのり,焼きのり,とろろ昆布,干しわかめ,干しあらめ,肉のつくだに,水産物のつくだに,野菜のつくだに,なめ物,果実の漬物,野菜の漬物」、第30類「みそ,甘酒,こしょう」及び第31類「のり,昆布,わかめ,あらめ」とする指定商品の書換登録がなされているものである。
なお、本件審判の請求の登録は、平成24年5月25日にされている。
第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中、第30類「甘酒」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする旨の審決を求め、その理由、答弁に対する弁駁、口頭審理における陳述及び上申において要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第10号証を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第30類「甘酒」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
答弁の理由及び乙各号証のいずれからも、被請求人が、本件審判の請求登録日前3年以内(以下「要証期間内」という。)に、指定商品について本件商標を使用していることの確証は得られない。
(1)乙第1号証について
乙第1号証の写真はいずれも、本件審判の請求登録日後の平成24年6月24日に撮影されたものであるので、本件商標の使用を立証する証拠たり得ない。また、他の乙号証との関係を考慮しても、乙第1号証の写真に表示されたダンボール箱が、要証期間内に指定商品の取引に使用された事実を推認することはできない。
(2)業としての使用について
乙第2号証及び乙第3号証は、被請求人が要証期間内に指定商品「甘酒」をA商店に販売した事実をもって本件商標の使用を立証しようとするものである。
しかしながら、乙第2号証及び乙第3号証によっては、指定商品について本件商標を使用したとは認められない。
商標法第50条第1項は、「継続して三年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標・・・の使用をしていないときは」と規定する。「商標」とは、「業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの」(商標法第2条第1項第1号)であるので、商標法第50条の登録商標の使用といい得るためには、業としての使用でなければならない。さらに、「業として」とは、「一定の目的の下に反復、継続して行う行為として」と解されているので(甲第3号証)、商標法第50条の登録商標の使用といい得るためには、その使用が反復継続性を伴った行為として行われなければならない(甲第4号証)。
これを本件についてみるに、仮に被請求人が平成23年2月28日及び平成24年2月27日にそれぞれ甘酒(1個)をA商店に販売したことが事実であったとしても、使用に係る商品の取引が3年の間に僅か2回、しかも数個程度の極めて少数の商品数をいずれも同一の取引者との間で行ったという本件取引にあっては、それをもって反復、継続してなされた通常の商品取引の形態とみることはできず、したがって、そのことをもってしても本件商標をその指定商品について使用したとは到底いえないものである。
(3)証拠の真正について
請求人は、本件審判を請求するにあたり、事前に入念な使用調査を実施しており、特にその使用調査において、請求人の代理人が、平成24年5月7日付けで甘酒の販売の有無を被請求人に電話で問い合わせたところ、被請求人の従業員は、社内確認を行った上で、「弊社は、味噌及び醤油の製造・販売しか行っていないので、甘酒の販売は行っていない。受注生産も承っていない。」と回答した。これを受け、請求人は、指定商品について本件商標が使用されていない可能性が高いと判断し、本件審判を請求するに至ったのである。
被請求人は甘酒の製造・販売を事業目的としていないこと(甲第6号証及び甲第7号証)、被請求人と永年の取引があり(乙第4号証)、極めて強い利害関係がある特定の取引者(A商店)との間で作成された証拠のみをもって本件商標の使用事実を立証しようとしていること、本件審判の請求前に回答した内容には被請求人に利益はないが答弁書で主張する内容には被請求人に利益があることを考慮すれば、被請求人が提出した証拠の真正については、強度の疑問を抱かせるものというべきである。
3 口頭審理における陳述(平成24年11月8日付け口頭審理陳述要領書)
(1)平成24年9月28日付け審理事項通知書の暫定的な見解について
被請求人が提出した証拠によっては、被請求人の使用行為が「登録商標」の要件のうち「業として」の要件を満たすものとは認められないという点である。
甲第3号証によれば、「業として」とは、「一定の目的の下に反復、継続して行う行為として」と解されているので、商標法第50条の登録商標の使用といい得るためには、その使用が反復継続性を伴った行為として行われなければならない。産業構造審議会も同様の解釈を支持している(甲第8号証)。また、甲第4号証によれば、「使用に係る商品の取引が3年の間に僅か2回、しかも数個程度の極めて少数の商品数をいずれも同一の取引者との間で行ったという本件取引にあっては、それをもって反復、継続してなされた通常の商品取引の形態とみることはできない。」と判断されている。これらの解釈、判断は、「継続して」の要件の解釈と相反するものではない。すなわち、3年間のうち一度でも登録商標の使用の事実があれば本項の適用はないが、3年間のうちに反復継続性を伴わない標章の使用の事実が何度あっても本項の適用は免れない。請求人は、被請求人の使用行為が後者に該当することを主張するものである。
本件商標に係る指定商品「甘酒」は、書換時に、被請求人が積極的に指定したものではなく、書換ガイドラインに従って書換可能なすべての指定商品を機械的に指定した結果(甲第1号証及び甲第9号証)、その一部に含まれるに過ぎないものであること、被請求人が甘酒の製造・販売を事業目的としていないこと(甲第6号証及び甲第7号証)等の事情を考慮すれば、そもそも甘酒について本件商標を使用する意思は脆弱であるといわざるを得ない。
そして、被請求人の主張によっても、甘酒の販売が3年の間に僅か数回しかも数個程度の極めて少数しか行っていないことが認められるのみで、これに加え、請求人の問い合わせに対し被請求人が甘酒の販売及び受注生産を行っていない旨を回答していること、甘酒の販売先が被請求人と永年の取引があり(乙第4号証)極めて強い利害関係がある者であること等の事情を総合的に考慮すれば、被請求人の行為は、通常の商品取引の形態とは異なる極めて特異なものであって、甘酒の販売につき反復継続の意思も事実も認められない。
(2)売掛台帳について
乙第2号証の1及び乙第3号証の1の売掛台帳には、その作成日と思われる日付けとして「平成24年6月21日」と記載されている。同様に、乙第5号証の1及び乙第6号証の1の売掛台帳には「平成24年8月16日」及び「平成24年8月4日」と記載されている。これら日付けはいずれも、本件審判請求後の日付けであるので、乙第2号証の1、乙第3号証の1、乙第5号証の1及び乙第6号証の1の売掛台帳は、本件審判請求後に作成されたものであると認められるが、本件審判請求後に作成された証拠は、被請求人が内容をコントロール可能なものであるので、その真正については十分な裏付けが必要である。乙第2号証の1、乙第3号証の1、乙第5号証の1及び乙第6号証の1に対応する売掛台帳の原本を提出されたい。
(3)物品受領書について
乙第5号証の2の物品受領書には、認印の欄に「B」と押印されているが、これは誰でも購入可能な三文判であり、B…氏が押印したとは認められない。商標法第56条第1項において準用する特許法第151条において準用する民事訴訟法第228条第4項の規定によれば、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」とあるが、乙第5号証の2の物品受領書の押印が「本人又はその代理人」の押印であることは何ら証明されていない。
したがって、乙第5号証の2によっては、被請求人が、B…氏に対して同号証の物品受領書を展示又は頒布した事実(商標法第2条第3項第8号)、及び甘酒を販売した事実は立証されていない。
乙第2号証の2及び乙第3号証の2の物品受領書には、認印の欄に「A」と署名されているが、これだけでは誰が署名したのか判然とせず、A…氏又はA商店の関係者が署名したとは認められない。
乙第6号証の2の物品受領書についても同様である。
(4)売掛台帳の伝票番号と物品受領書の伝票番号について
審理事項通知書において、審判合議体は、売掛台帳の伝票番号と物品受領書の伝票番号が一致しているとの見解を示している。
しかしながら、乙第2号証の1の売掛台帳の伝票番号は「00486875」であるのに対し、乙第2号証の2の物品受領書の伝票番号は、同番号に枝番「-1」が付されている点で相違している。経理システム等では、同一の伝票番号に係るアイテムについて追加でデータを入力するような場合に枝番が付されることがある。システム上、枝番の有無には明確な区別があるのが通常であり、この点を鑑みれば、乙第2号証の2の物品受領書は、乙第2号証の1の売掛台帳の伝票番号「00486875」に係る「甘酒」について、新たに又は追加で作成されたものであるとの疑義が生じる。
(5)入金票について
被請求人は、平成24年10月26日付け口頭審理陳述要領書において、「物品受領書は前述のとおり、乙第7号証として提出した納品書と共に、コンピュータソフトにより自動的に作成されるもので、納品書は購入者に渡し、物品受領書は購入者の印、又は署名されて被請求人に残ります。」と主張している。
また、被請求人は、口頭審理陳述要領書において、「入金票は、前述のとおり領収書、領収書(控)との複写式で、代金受領時に領収書を購入者に渡し、」と主張している。
しかしながら、入金票には、購入者の押印又は署名がされていない。
これらの主張及び証拠によれば、入金票に対応する領収書及び物品受領書と対応する納品書はいずれも購入者に渡しているにもかかわらず、一方の物品受領書には購入者の押印又は署名をもらいながら、他方の入金票には購入者の押印又は署名をもらわないという商取引を行っているが、極めて不自然な商取引であり、乙第2号証の2の入金票の真正について疑義が生じる。
また、商標法第56条第1項において準用する特許法第151条において準用する民事訴訟法第228条第4項の規定によれば、購入者の押印又は署名のない乙第2号証の2の入金票は、真正に成立したものとは認められない。
乙第3号証の2、乙第5号証の2及び乙第6号証の2の入金票についても同様である。
(6)担当者について
乙第2号証の1の売掛台帳の伝票番号「03655823」については、担当者コードとして「00000017」が、乙第3号証の1の売掛台帳の伝票番号「03665008」についても、同様に「00000017」が付されている。
しかしながら、乙第2号証の1の売掛台帳の伝票番号「03655823」に対応する乙第2号証の2の入金票には、取扱者の欄に「C」と押印されているのに対し、乙第3号証の1の売掛台帳の伝票番号「03665008」に対応する乙第3号証の2の入金票には、取扱者の欄に「D」と押印されている。同一の担当者コードが付されているにもかかわらず取扱者が異なっている点で、乙第2号証の1と乙第2号証の2との対応関係、及び乙第3号証の1と乙第3号証の2との対応関係が不明確である。
(7)「売掛台帳と入金票の伝票番号の一致及び不一致について」に対する弁駁について
商標法第50条第2項は、「前項の審判の請求があった場合においては、その審判の請求の登録前三年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない。」と規定し、この証明は、証拠によってなされなければならないところ、被請求人は、売掛台帳と入金票の伝票番号の不一致についてその事情を述べるだけで、証拠によって何ら立証されていない。
また、入金票の伝票番号を入力しないことについての説明はあっても、入力伝票の伝票番号とは異なる伝票番号(例えば、乙第2号証の1、2の関係では「03655823」)を入力することについては合理的な理由が説明されていない。この点につき、被請求人は、コンピュータが自動的に付した番号と述べるが、乙第2号証の1の売掛台帳においては、入金票に着目すれば、当該伝票番号「03655823」の直前に付されている伝票番号が「03655733」と連番ではなく、コンピュータが自動的に付した番号とは考えられない。また、乙第2号証の1、乙第3号証の1及び乙第6号証の1の売掛台帳における入金票の伝票番号はいずれも上3桁が「036」と共通しているのに対し、乙第5号証の1の売掛台帳における入金票の伝票番号は上3桁が「004」(上3桁が「004」は物品受領書に付される伝票番号)と相違している点で一貫性、規則性がなく、この点でも、コンピュータが自動的に付した番号とは考えられない。また、乙第3号証の1の売掛台帳における入金票の伝票番号「03665008」については、その日付け「H24/6/12」が、乙第6号証の1の売掛台帳における入金票の日付け「H23/9/16」よりも後日であるにもかかわらず、乙第6号証の1の売掛台帳における入金票の伝票番号「03666210」よりも若い番号となっており、この点でも、コンピュータが自動的に付した番号とは考えられない。
また、被請求人は、納品書及び物品受領書については、これを作成する際に印刷する伝票番号とコンピュータに入力する伝票番号を一致させているのに対し、入金票、領収書及び領収書(控)については伝票番号を一致させないと単に述べるだけで、合理的な理由があるとは認められない。
(8)「入金票について」に対する弁駁について
被請求人は、入金票の後書きを自認した上でその事情を述べているが、後書きすることについて合理的な理由の説明もなければ、証拠によって何ら立証されていない。
また、乙第2号証の2及び乙第3号証の2の入金票に記載されている番号「2681」及び宛名「…町 A商店」は、乙第2号証の1及び乙第3号証の1の売掛台帳に記載されている「268100:(…町)A商店」と対応するものと思われるが、乙第5号証の2の入金票に記載されている番号「9999」及び宛名「天童市… B」は、乙第5号証の1の売掛台帳に記載されている「999900:諸口」とは対応していない。
また、乙第5号証の2の入金票においては「天童市…」も後書きと思われるが、これについては何ら説明がされていない。
(9)「物品受領書について」に対する弁駁について
被請求人は、商品は購入者が受領し、代金は購入者が被請求人に支払うものであると述べるだけで、証拠によって何ら立証されていない。
(10)結語
以上のとおり、答弁の理由及び乙各号証をもってしては、本件審判の要証期間内に日本国内において、被請求人が指定商品について本件商標の使用をしていたものということはできない。その他、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、指定商品について本件商標の使用をしていたことを確証させるものは見いだせない。また、被請求人は、指定商品について本件商標の使用をしてないことについて正当な理由があることを明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消されるべきである。
4 口頭審理における審理終結後の平成24年11月19日付け上申書における主張
(1)売掛台帳について
被請求人は、平成24年11月16日付け口頭審理において、「売掛台帳は、コンピュータ処理のため作成日が印刷日となるので、要証期間内に紙により作成された売掛台帳は存在しない。」と陳述している。
しかしながら、国税庁の通達(甲第10号証)によれば、売掛台帳等の帳簿書類は、紙による保存が原則となっており、電子計算機で作成した帳簿書類についても、電子計算機からアウトプットした紙により保存する必要がある。
したがって、乙第2号証の1、乙第3号証の1、乙第5号証の1及び乙第6号証の1の売掛台帳が税務申告の基礎となる帳簿書類であるならば、要証期間内に紙により作成された売掛台帳が保存されていなければならないところ、要証期間の初日から7年が経過していない現在において、これらが存在しないというのは、乙第2号証の1、乙第3号証の1、乙第5号証の1及び乙第6号証の1の真正について疑いを差し挟まざるを得ない。
(2)証拠の原本について
被請求人は、平成24年11月16日付け口頭審理において、乙各号証のうち乙第2号証、乙第3号証、乙第7号証及び乙第8号証しか原本を提出しておらず、他の乙号証の原本を提出しないことにつき正当な理由も認められない。特に、争点となっている乙第5号証及び乙第6号証が提出されていないので、これらの真正について疑義が解消されていない。
第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由、証拠申出書における主張及び口頭審理における陳述を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第9号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 答弁の理由
(1)被請求人は、江戸時代より事業を行っており、味噌、醤油の製造販売を業としている株式会社である。
被請求人は、味噌の原料の1つである「米こうじ」と手持ちの米を使って、商品「甘酒」を製造販売しており、その「甘酒」に本件商標を使用している。
(2)乙第1号証の1から3の写真は、被請求人の専務取締役 Eが、平成24年6月21日に撮影したもので、商品「甘酒」は包装用のビニール袋で包んだ後、ダンボール箱に入れて出荷されるものであり、そのダンボール箱の正面には「甘酒」の語と共に、本件商標が表示されている。
乙第1号証の1から3に示すように包装され、箱に入れられた商品「甘酒」は、件外、山形市…町… A商店(代表者 A…)に、平成23年2月28日及び平成24年2月27日に、各々8kgずつ販売されている。その事実は、乙第2号証の1、乙第3号証の1として示した被請求人の「売掛台帳」、及び乙第2号証の2、乙第3号証の2として示した前記A商店の「A」の署名のある被請求人の「物品受領書」により明らかであり、それらの伝票番号No.00486875(乙第2号証の1及び2)、No.00504897(乙第3号証の1及び2)が一致することにより、立証できるものである。
さらに加えれば、乙第2号証の2、乙第3号証の2として示す「物品受領書」は取引書類であり、それに本件商標と商品「甘酒」が表示されている事実は、本件商標が商品「甘酒」につき、平成23年2月及び平成24年2月に、被請求人により使用されていることが立証できるものである。
(3)以上の立証のとおり、本件商標は、商品「甘酒」につき被請求人により使用されており、その時期も乙第2号証の1及び2並びに乙第3号証の1及び2に示すとおり、要証期間内である。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に該当しないことが明らかである。
2 平成24年8月22日付け証拠申出書における主張
(1)証明すべき事実
乙第5号証の1、2及び乙第6号証の1、2は、さきに答弁書で提出した乙第2号証の1、2、乙第3号証の1、2と同様に、被請求人が商品「甘酒」を販売した事実を示すものである。そして、乙第5号証の2、乙第6号証の2には本件商標が使用されており、これら商品「甘酒」は、乙第1号証の1から3に示す、本件商標を使用した包装用箱に入れられて販売されたものである。
「甘酒」の販売は、購入者が「甘酒」を陶器や紙のコップに入れて、最終消費者に販売することが通常であり、乙各号証に示す購入者は、地域の祭りや運動会などの各種イベントにおいて、「甘酒」を供給している者である。そのため、被請求人の「甘酒」の販売は不定期であり、販売先も小規模な商店や個人が対象となるものである。
したがって、新聞、雑誌などの期日の明確な広告媒体に、本件商標と商品「甘酒」を掲載した証拠を示すことはできないが、答弁書にも述べたとおり、「米こうじ」を原料とする「味噌」を主力商品とする被請求人にとって、「甘酒」は重要な商品の一つである。
提出した乙各号証により、本件商標が商品「甘酒」につき、要証期間内に使用されていた事実は立証できたものである。
(2)証拠との関係
乙第5号証の2及び乙第6号証の2は、被請求人の「物品受領書写」であり、本件商標が示され、かつ商品「甘酒」及び販売先と日付が記載されている。また、乙第5号証の1及び乙第6号証の1は、被請求人の「売上台帳写」であり、商品「甘酒」と売上の日付が示されている。
これらにより、本件商標が商品「甘酒」につき、要証期間内に使用された事実が立証でき、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定に該当しないことは明らかである。
3 口頭審理における陳述
(1)平成24年10月26日付け口頭審理陳述要領書における陳述
ア 売掛台帳と入金票の伝票番号の一致及び不一致について
購入者から注文を受けた場合、購入者からの個別の指定伝票がない場合は、被請求人の納品書にて商品を納入することが決まる。その場合は、パソコンのソフトが納品書と物品受領書を作成する際に自動で番号を付してゆき、その同一番号が売掛台帳に記載される。
乙第7号証は、番号が記入される前の納品書と物品受領書で、これは連続して印刷された後、中央のミシン目で切断し、納品書は購入者に、物品受領書は被請求人に残る。
一方、入金票は、領収証、領収証(控)と三枚一組となった複写式であり、代金受領時に手書きで処理されるもので、この複写式の伝票には通し番号が打ってあり、その通し番号は前記したコンピュータが自動的に付する番号とは関連していない。
乙第8号証は、複写式の入金票と領収証、領収証(控)を別々に写した三枚一組の未使用の伝票で、領収証は商品の購入者に渡し、入金票に記載された内容、即ち宛名、商品名、数量、価格等は、翌営業日にコンピュータに入力を行うが、その場合の入金票の番号は、コンピュータが定めた番号と相違するため、入力を行わない。
以上が、物品受領書、売掛台帳の伝票番号と、入金票の番号が異なる理由である。
イ 入金票について
入金票の宛先の左上に記載された番号は、被請求人の定めた顧客番号である。その番号が複写後に記載される場合があることは、次のとおりである。
入金票は、領収証、領収証(控)との複写式で、代金受領時に領収書を購入者に渡し、入金票と領収証(控)は持ち帰り、コンピュータに翌日入力するが、その際に顧客番号が記載されていないこともある。その理由は、顧客番号は顧客にとっては必要なものではないからである。その場合、持ち帰った後に担当者、又はコンピュータ入力作業者が顧客番号を記載することがあり、認定のように宛先、金額などの記載時の後で、その番号が記載されることもあり得ることである。
乙第9号証は、さきに提出した乙第2号証の2、乙第3号証の2、乙第5号証の2、及び乙第6号証の2の下方に示された入金票に対応する領収証(控)である。この領収証(控)は購入者に渡した領収証と複写されるもので、同一の内容であり、同一番号が付されており、本件商標が明示されている。
ウ 物品受領書について
物品受領書は、乙第7号証として提出した納品書と共に、コンピュータソフトにより自動的に作成されるもので、納品書は購入者に渡し、物品受領書は購入者の印、又は署名されて被請求人に残る。
したがって、商品は購入者が受領し、代金は購入者が被請求人に支払うものである。
エ 請求人が提出した平成24年7月30日付の弁駁書について
(ア)請求人は、乙第1号証の1から3について、審判請求登録日後の撮影である旨を主張している。しかし、被請求人は本件審判請求を予想できず、撮影年月日が審判請求登録日以後であることは当然であり、そのことを以って乙第1号証の1から3の証拠価値を否定することはできない。
(イ)被請求人は、乙第2号証の1及び2、乙第3号証の1及び2、乙第5号証の1及び2、乙第6号証の1及び2を提出して、本件商標を商品「甘酒」に使用していることを立証している。
そして、被請求人は「米こうじ」を必須の原料とする「味噌」を主力商品とする会社であり、商品「甘酒」を製造販売することは当然の業務である。勿論、「甘酒」は季節商品でもあり、生きた商品であるので、一般消費者に直接大量に常時販売することはないが、常に販売できる状態にある商品である。
請求人は甲第3号証、甲第4号証を提出しているが、これら審決は、乙各号証によっては指定商品に当該商標を使用していることが立証できないため登録を取り消されたものであり、被請求人の提出した乙各号証により商品「甘酒」につき本件商標の使用が立証されている本件とは、事案を異にするものである。
(ウ)請求人は本件審判を請求するにあたり、電話で問い合わせた旨述べているが、被請求人は不知である。
請求人は甲第6号証を提出しているが、甲第6号証には「右に附帯する一切の事業」と書かれており、「甘酒」の製造販売がそれに該当することは明らかである。
また、甲第7号証は被請求人のホームページであることは認めるが、それに「甘酒」がないことと、「甘酒」を製造販売することとは何ら矛盾しないことである。
オ 結び
以上のとおり、被請求人は本件商標を商品「甘酒」に要証期間内に使用しており、その事実は取引書類である乙第2号証の2、乙第3号証の2、乙第5号証の2、乙第6号証の2として示す物品受領書に、商品「甘酒」と本件商標が明示されていること、乙第7号証として提出した納品書、乙第8号証として提出した領収証及び乙第9号証として提出した領収証(控)に本件商標が示されていること、さらに乙第1号証の1から3として示す写真に本件商標と商品「甘酒」が示されていることにより、立証されている。
(2)平成24年10月26日付け口頭審理陳述要領書以外の口頭審理における陳述
ア 売掛台帳は、コンピュータ処理のため作成日が印刷日となる。
イ 物品受領書の伝票番号の枝番は、物品受領書が複数枚にわたる時に使用するためのものである。
ウ 入金票に署名が無いのは、販売者用なので不自然ではない。
エ 売掛台帳の担当者コードは、主に顧客毎の者を当てている。
オ 売掛台帳は、コンピュータシステムで管理しているため、「3桁」の数字が相違する点と、伝票番号が「日付順」とならない点は、不明である。
第4 当審の判断
1 口頭審理において原本を確認し、成立の真正について争いがない証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第2号証の1の書類は、「売掛台帳」と称する書類であるところ、左上には、「268100:(…町) A商店」、住所等の記載があり、右上には、「平成24年 6月21日」及び「株式会社 紅谷醸造場」等の記載がある。
そして、「伝票日付/伝票番号」、「伝票種/種」、「商品コード/商品」及び「金額」の欄には、それぞれ「H23/ 2/28/00486875」、「売上」、「010146/甘酒8kg」及び「9,520」の記載があり、その下の行には、「商品コード/商品」及び「消費税」の欄に「消費税(納)」及び「476」の記載がある。
また、伝票日付が「H23/ 4/19」についての5行目には、「伝票日付/伝票番号」、「伝票種/種」、「商品コード/商品」及び「入金」の欄に、「03655823」、「入金」、「(入金)」及び「9,996」の記載がある。
(2)乙第2号証の2の上段の書類は、「物品受領書」と称する書類であるところ、その左上には「山形市…町…(…町) A商店 様」の記載があり、「お認印」の欄には、「A」の署名がある。
そして、右上には、「268100」、「平成23年 2月28日」、「伝票番号No.00486875-1」及び「株式/会社 紅谷醸造場」等の記載があり、これには、別掲2のとおりの構成からなる商標が表示されている。
また、「区分」、「品名」、「容量」、「個数」及び「金額」の欄には、それぞれ「1」、「甘酒」、「8kg」、「1」及び「9,520円」の記載があり、左下には、「区分:1売上・・・」の記載がある。
さらに、右下の「消費税等」及び「合計金額」の欄には、それぞれ「476」及び「9,996円」の記載がある。
(3)乙第2号証の2の下段の書類は、販売者用に使用する「入金票」と称する書類であるところ、その右上には、「平成23年4月19日」の記載がある。
そして、左側には、「2681」、「A商店 様」、「金額 ¥9996」及び「上記の金額を正に領収いたしました。」の記載がある。
また、右下には、「株式会社 紅谷醸造場」の記載がある。
(4)乙第3号証の1の書類は、「売掛台帳」と称する書類であるところ、左上には、「268100:(…町) A商店」、住所等の記載があり、右上には、「平成24年 6月21日」及び「株式会社 紅谷醸造場」等の記載がある。
そして、「伝票日付/伝票番号」、「伝票種/種」、「商品コード/商品」及び「金額」の欄には、それぞれ「H24/ 2/27/00504897」、「売上」、「010146/甘酒8kg」及び「9,520」の記載があり、その下の行には、「商品コード/商品」及び「消費税」の欄に「消費税(納)」及び「476」の記載がある。
また、伝票日付が「H24/ 6/ 7」についての7行目には、「伝票日付/伝票番号」、「伝票種/種」、「商品コード/商品」及び「入金」の欄に、「03665008」、「入金」、「(入金)」及び「9,996」の記載がある。
(5)乙第3号証の2の上段の書類は、「物品受領書」と称する書類であるところ、その左上には「山形市…町…(…町)A商店 様」の記載があり、「お認印」の欄には、「A」の署名がある。
そして、右上には、「268100」、「平成24年 2月27日」、「伝票番号No.00504897-1」及び「株式/会社 紅谷醸造場」等の記載があり、これには、別掲2のとおりの構成からなる商標が表示されている。
また、「区分」、「品名」、「容量」、「個数」及び「金額」の欄には、それぞれ「1」、「甘酒」、「8kg」、「1」及び「9,520円」の記載があり、左下には、「区分:1売上・・・」の記載がある。
さらに、右下の「消費税等」及び「合計金額」の欄には、それぞれ「476」及び「9,996円」の記載がある。
(6)乙第3号証の2の下段の書類は、販売者用に使用する「入金票」と称する書類であるところ、その右上には、「平成24年6月7日」の記載がある。
そして、左側には、「2681」、「…町/A商店 様」、「金額 ¥9996」及び「上記の金額を正に領収いたしました。」の記載がある。
また、右下には、「株式会社 紅谷醸造場」の記載がある。
2 以上の認定事実に基づき、判断する。
(1)使用者、使用商品及び使用商標
乙第2号証の2及び乙第3号証の2の物品受領書によれば、商標権者(被請求人)は、本件商標と社会通念上同一の商標を商品「甘酒」に関する取引書類に付してことが認められる。
(2)使用時期
ア 乙第2号証の2の物品受領書及び入金票によれば、「268100」又は「2681」なる顧客番号が付与された山形市のA商店は、平成23年2月28日に商標権者から当該「甘酒」を受領し、同商店は、同年4月19日に商標権者に対し、その代金を支払っていることが認められる。
そして、そのことは、平成24年6月21日印刷された乙第2号証の1の売掛台帳の「268100」の記載と一致しており、矛盾するものではない。
イ また、乙第3号証の2の物品受領書及び入金票によっても、前記アと同様、山形市のA商店は、平成24年2月27日に商標権者から当該「甘酒」を受領し、同商店は、商標権者に対し、その代金を支払っていることが認められる。
そして、そのことも、前記アと同様、平成24年6月21日印刷された乙第3号証の1の売掛台帳の記載と矛盾するものではない。
3 小活
以上によれば、商標権者は、要証期間内の平成23年2月28日及び同24年2月27日に、日本国内において、商品「甘酒」に関する取引書類に本件商標と社会通念上同一の商標を付して頒布していたものであるから、商標法第2条第3項第8号の取引書類に登録商標を付して頒布したものと認められるものである。
4 請求人の主張について
(1)請求人は、商品「甘酒」についての本件商標の使用行為に関し、「『業として』とは、『一定の目的の下に反復、継続して行う行為として』と解されているので、商標法第50条の登録商標の使用といい得るためには、その使用が反復継続性を伴った行為として行われなければならない。3年間のうち一度でも登録商標の使用の事実があれば本項の適用はないが、3年間のうちに反復継続性を伴わない標章の使用の事実が何度あっても本項の適用は免れない。」旨主張している。
確かに、「業として」とは、一般に、「反復継続的意思をもってする経済行為として」の意味合いに解されているところ、乙第2号証の1及び乙第3号証の1の各売掛台帳によれば、「しょうゆ」や「みそ」と同列に「甘酒」の販売が、また、乙第2号証の2及び乙第3号証の2の「物品受領書」によれば、「甘酒」の販売が、それぞれ認められるものであり、これより、商標権者の販売行為は、反復継続的意思をもってする経済行為として行う商取引とみるのが自然であって、「しょうゆ」や「みそ」と異なり、「甘酒」を業として販売していないということにはならない。
また、商標権者の販売に係る「しょうゆ」及び「みそ」については、甲第6号証の商標権者の「現在事項全部証明書」において、「目的」の欄には、「1、醤油味噌その他の調味料及漬物類の製造並に販売」と明示的に記載されている。また、「甘酒」については、明示的に記載はないが、同証明書、目的欄の「2、右に附帯する一切の事業」との記載からすれば、「しょうゆ」及び「みそ」と同列にみても差し支えないものであり、このことからも「甘酒」については、業として販売していないということにはならない。
したがって、商標権者は、要証期間内に日本国内において、「業として」、請求に係る指定商品「甘酒」について本件商標を使用していたとみて差し支えない。
(2)請求人は、「国税庁の通達(甲第10号証)によれば、売掛台帳等の帳簿書類は、紙による保存が原則となっており、電子計算機で作成した帳簿書類についても、電子計算機からアウトプットした紙により保存する必要がある。」旨主張している。
しかしながら、商標権者が売掛台帳等の帳簿書類を紙により保存していないことは、仮に、税法上の問題となり得ることがあるとしても、このことが、商標法第50条の登録商標の使用に関する判断を左右するものではないから、請求人の主張は採用できない。
5 まとめ
してみれば、被請求人は、商標権者が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、請求に係る指定商品「甘酒」について本件商標を使用していたことを証明したものというべきである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 【別記】


審理終結日 2012-11-16 
結審通知日 2012-11-16 
審決日 2012-11-28 
出願番号 商願昭32-938 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (230)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 渡邉 健司
井出 英一郎
登録日 1957-12-04 
登録番号 商標登録第510872号(T510872) 
商標の称呼 ベニタニ、キッコウベニタニ、ベニタニキッコウ、ベニヤ、キッコウベニヤ、ベニヤキッコウ 
代理人 渡部 仁 
代理人 稲木 次之 

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