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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない X32
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X32
管理番号 1271170 
審判番号 不服2012-871 
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-17 
確定日 2013-02-18 
事件の表示 商願2011-10460拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は,「天然水素水」の文字を標準文字で表してなり,第32類「水素を含有するミネラルウォーター」を指定商品とし,平成23年2月16日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由(要点)
原査定は,「『特定の水源から採取された地下水で,沈殿,ろ過,加熱殺菌以外の処理を行っていない水』の意味を表すものとして『天然水』の文字が,『水素を含有する水』の意味を表すものとして『水素水』の文字が使用されており,また,水素を含有する天然水が製造・販売されている事実があるから,本願商標をその指定商品に使用しても,これに接する取引者・需要者は,該商品が『水素を含有する天然水』であることを認識するにとどまるので,本願商標は,単にその商品の品質を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものと認める。また,出願人は,本願商標が商標法3条1項3号に該当するとしても,本願商標は商標法3条2項の要件を具備する旨主張するが,提出した証拠によれば,出願人が,全国に向けて『水素を含有するミネラルウォーター』の広告宣伝を行っている事実が認められるとしても,証拠のほとんどは,『天然水素水』の文字が単独で使用されているものでなく,『Vana H』の文字が付されて使用されているものであり,また,出願人とは別の複数の業者によって,『天然水素水』の文字が,『水素を含有するミネラルウォーター』の名称として使用されている事実があるから,本願商標が使用された結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったということができない。したがって,本願商標は,商標法3条1項3号に該当し,かつ,同条2項の要件を具備すると認めることができない。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 本願商標が商標法3条1項3号に該当することについて
本願商標は,前記第1のとおり,「天然水素水」の文字を表してなるものであるところ,このうち「天然」の文字は,「人為の加わらない自然のままの状態。」(「広辞苑 第六版」株式会社岩波書店)の意味を有するものであり,飲料の分野において,「天然果汁」「天然水」のように,他の語(果汁,水)に冠されて,それ(果汁,水)が自然のままの状態であること程度の意味合いを表すものとして使用されている(例えば「天然果汁」について「のま果樹園」に係るウェブサイト(http://item.rakuten.co.jp/kajuen/180069/#180069),「天然水」について「兵庫県名水・天然水・湧水・兵庫名水情報」に係るウェブサイト(http://kobe-mari.maxs.jp/natural_water/index.htm)。
また,「水素水」の文字は,飲料水の分野において,例えば「ケンコーコム」に係るウェブサイト(http://www.kenko.com/product/seibun/sei_751369.html)にて,「水素水とは水素を含むように作られたお水です。・・・水に直接水素分子を含ませて作られたもののほかに,天然に水素を含んでいるミネラルウォーターもあります。」と記載され,商品の写真が掲載されているように,「水素を含んだ水」程度の意味合いで,使用されている。
そうすると,本願商標「天然水素水」がその指定商品に使用されるとき,これに接する需要者は,「自然のままの状態の,水素を含んだ水(天然の水素水)」程度の意味合いを認識するといえる。
このことは,以下のとおり,「自然のままの,水素を含んだ水(天然の水素水)」程度の意味合いを表す語として,「天然水素水」「天然の水素水」が使用されていることからもいえるものである。
(1)「ocean」に係るウェブサイトにて,「天然水素水」の見出しの下,「水素は宇宙でもっとも多く軽い元素です。水素は気体(ガス)なので,水の中に長期間溶存される事自体,科学では考えられないそうです。しかし大三島の水素水は,季節によって水素の量が変動を見せたり,ありえないくらいの含有量をたたき出します。」「不思議なことに天然の大三島の水素水は,ペットボトルなのに微量ですが水素が長期にわたって溶存が確認されます。」の記載と共に,ペットボトルの写真が掲載されている(http://www.balneo-stonetherapy.com/hydrogenwater/index.html)。
(2)「日本百選」に係るウェブサイトにて,「愛媛県大三島水素水は,天然水素水です。電気分解や水素スティックによる水素水ではありません。大三島水素水は,極めて限られた自然環境の中のみで存在し,従来の常識では考えられない資源として太古の昔より存在していました。このおいしい,まろやかな天然の良水をさらに進化した天然の水素水として誕生させました。」の記載と共に,ペットボトルの写真が掲載されている(http://www.japan100.jp/item_index/details/id/20/category/22/)。
(3)「カラメル」に係るウェブサイトにて,「体の酸化を防ぎ,活性酸素を抑える効果が期待できる水素水。神の島といわれる愛媛県今治市大三島の地下から汲み上げた完全天然水素水です。」の記載と共に,ペットボトルの写真が掲載されている(http://calamel.jp/go/item/32007822)。
(4)「《日田天領水》ウォーターサーバー」と題するウェブサイトにて,「日本にも良質の天然水素水があるのをご存じですか?」「九州耶麻溪の“日田天領水”は天然の水素水として知られています。天然水素水の“日田天領水”を自宅で手軽に飲めるウォーターサーバーとして提供しているのが 『ウォーターエナジー』/『ウォーターエナジー』が提供する“日田天領水”は汚染の心配がない地下深くから汲み上げ衛生的なHACCP認定工場で安全にボトリングされ家庭に宅配されます。」と記載されている(http://www.水素水比較.biz/wtenergy-h2sv.html)。
(5)「天然水素水とは?」と題するウェブサイトにて,「水素を多く含有する水素水の作り方は,一般の水道水やミネラルウォーターなどに『水素スティック』を呼ばれるもの(『ドクター水素水』など)を入れる方法などがあり,人工的に作られパックになった商品も多いですが,実は天然水素水というのも存在します。世界的に見ると,『ノルデナウの水』(ドイツ)『ルルドの泉』(フランス)『トラコテの水』(メキシコ)などは水素を多量に含んでいる『天然水素水』であると言われています。・・・日本国内では,大分県日田市の『日田天領水』が天然活性水素水として有名です。この日田天領水は,先にあげたドイツの『ノルデナウの水』よりはるかに多い活性水素を含有しているそうです。・・・『日田天領水』の場合,私が調べた商品では,2リットルペットボトルあたり200円強とこれもお手頃でお安い値段だと思います。」と記載されている(http://h2.winmsy.com/archives/89247.html)。
(6)「水素水でアンチエイジング」と題するウェブサイトにて,「天然の水素水」の見出しの下,「ルルドの水やノルデナウの水,トコラテの水といった言葉を耳にしたことがあるでしょう。この水を飲んでさまざまな難病が治ったという人が続出し『万病が治る奇跡の水』として評判になりました。後に調べたところこれらの湧き水には水素が豊富に含まれていることが分かったのです。天然の『水素水』だったわけですね。」と記載されている(http://woman-produce.com/suiso/syouhin/page/6.html)。

してみれば,「天然水素水」の文字を表してなる本願商標が,その指定商品に使用された場合,これに接する取引者,需要者は,「自然のままの,水素を含んだ水(天然の水素水)」程度の意味合いを容易に認識し,そしてそれにとどまるというのが相当である。
したがって,本願商標は,自他商品を識別する機能を有さず,その指定商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから,商標法3条1項3号に該当する。
なお,請求人は,「『天然水素水』の文字自体が商品の品質を表したものであることに疑義を差し挟むものではない」(平成24年1月17日受付の審判請求書10頁11行?12行)旨,認めている。

2 本願商標が商標法3条2項の要件を具備しないことについて
請求人は,本願商標が,出願人による使用の結果,需要者が出願人の業務に係る商品であることを認識することに至ったものである旨主張し(平成23年9月7日受付の手続補正書。以下単に「手続補正書」という。),「使用によって特別顕著性が発生した」旨主張(平成24年1月17日受付の審判請求書)しているところ,これらは,商標法3条2項の要件を具備するから,本願商標は登録されるべきである旨の主張と思われるので,本願商標が同条同項の要件を具備するか否かについて,以下検討する。
商標登録出願された商標が,商標法3条2項所定の「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」に該当するか否かは,出願に係る商標と外観において同一と見られる標章が指定商品とされる商品に使用されたことを原則として,その使用開始時期,使用期間,使用地域,使用態様,当該商品の生産・販売数量又は売上高,広告宣伝の方法・回数等及び当該商品又はこれに類似した商品に関する当該標章に類似した標章を出願人以外の者が使用しているか否かなどの事情を総合考慮して判断されるべきである。
ところで,本願商標の指定商品は,「水素を含有するミネラルウォーター」であり,ミネラルウォーターの一種であるところ,日本ミネラルウォーター協会によれば(http://minekyo.net/index.php?id=5),ミネラルウォーター類の生産数量は,2011年で2,582,632キロリットルであり,PET容器での生産数量は,同年で2,401,338キロリットルである。PET容器による生産数量が,すべて2リットル入りのPET容器によるものだと仮定すると,PET容器によるミネラルウォーター類は,12億本以上生産されていたことになる。
そして,販売されているミネラルウォーターには,例えば「四季の恵み 自然湧水 木曽」「サントリー 天然水(南アルプス)」「コントレックス」「Volvic(ボルヴィック)」「黒松内 水彩の森」「アサヒ おいしい水 六甲」「キリンのやわらか天然水」「森の水だより」「I LOHAS(い・ろ・は・す)」「クリスタルガイザー」「キリン アルカリイオンの水」「日田天領水」「Evian(エビアン)」「Vittel(ヴィッテル)」など(「Amazon.co.jp」のウェブサイトを参照した。http://www.amazon.co.jp/b?ie=UTF8&node=71444051),多数の種類が存在する。
また,ミネラルウォーターは,スーパーやコンビニエンスストア,駅の売店等,一般的な需要者が日常的に利用する場所で販売されている。
そうすると,ミネラルウォーターは,国内で極めて大量に生産され,需要者にとって,近しい販売店で目にすることの多い,日常的に親しまれたものであり,多数の種類の商品が販売されているから,商品選択の幅は,相当程度広い上,需要者層が特定の年齢層や性別,職業や居住地等に限定されるとは考え難く,老若男女の幅広い一般的な者が需要者層であるというのが自然である。
してみれば,本願商標が「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」に該当するか否かを判断するに当たっては,以上を踏まえて,本願商標の使用開始時期,使用期間,使用地域,商品の生産・販売数量又は売上高,広告宣伝の方法・回数等を総合考慮する必要がある。

(1)広告宣伝の方法及び実績について
ア 甲1(枝番を含む。以下,特段の表記ない限りは同様。)は,パンフレットとチラシである。パンフレットが3種類,チラシが8種類提出されているが,これらが,どの程度の範囲の地域に,何部配布されたのかについては,証拠の提出がなく,確認することができない。
イ 甲2は,ホームページの写しである。甲2の1は請求人自身のホームページと認められるから,他人のホームページにおいて広告されているものは,甲2の2?2の4の3箇所である。
ウ 甲3は新聞広告の写しである。これによれば,2006年10月5日?2011年4月30日の約4年半にかけて,全国で2回,中部地方で4回,沖縄県で3回,山形県で2回,新聞広告が行われ,中国地方,岩手県,北海道,長崎県,長野県,群馬県,福岡県,佐賀県,秋田県,静岡県,青森県,新潟県では,いずれも1回,新聞広告が行われたことが確認できる。
エ 甲5の1は,メインスポンサー提供番組及び協賛番組の録画(抜粋)である。これによれば,ゴルフトーナメントや,プロ野球中継などにおいて,請求人がスポンサーとしてあるいは協賛として,広告宣伝が行われている。
ゴルフトーナメントにおいては,例えば,賞品として本願商標を使用した商品が賞品として提供され,プロ野球中継においては,例えば,球場のフェンスの看板などにおいて,広告宣伝が行われている。
オ 甲5の2及び5の3は,ゴルフトーナメントにおける広告宣伝の様子を撮影した写真の写しである。これによれば,2009年及び2010年に,1回ずつ,ゴルフトーナメントの会場において,横断幕やのぼり,看板等を用いて広告宣伝が行われている。
カ 甲6は,雑誌の写し及び原本である(雑誌は2種類)。これによれば,それぞれの雑誌において広告宣伝が行われている。それぞれの雑誌の流通先や,発行部数については証拠の提出がなく,確認できないが,甲6の2に係る雑誌は,「山梨県版」と掲載されているから,流通範囲は山梨県内と推測される。
キ 甲7はポスターの写真の写しであり,14種類ある。印刷時期や印刷枚数を裏付ける証拠(納品書など)は提出されていないが,請求人は,甲7の1?9について,「約1万枚」作成し,広告範囲を「当社会員」としている(手続補正書16?17頁)。会員数・会員の範囲や,ポスターが掲示されている様子に関しては証拠の提出がなく,これらを確認することができない。
ク 甲8は,テレビコマーシャルの実施状況及び録画である。これによれば,2007年から,継続的にテレビコマーシャルが行われている。
(2)本願商標が使用された商品の生産量,販売数量,販売先(流通範囲)について
これらに関しては証拠の提出がなく,確認することができない。
(3)本願商標の指定商品と実際に使用している商品との同一性について
本願商標の指定商品は,前記第1のとおり,「水素を含有するミネラルウォーター」である。
これに対し,例えば甲3の6では,「天然水素水VanaHは世界の名水と言われる水のなかでも溶存水素量が豊富です。」の記載と共に,ミネラルウォーターと思われる商品(ペットボトル)の写真が掲載されている。甲1の7では,「富士の自然が育み続けたナチュラルミネラルウォーター」の記載と共に,甲3の6と同じ商品(ペットボトル)の写真が掲載されているから,この商品は,「水素を含有するミネラルウォーター」であると認められる。
そして,他のほとんどの証拠においても,同じ商品(ペットボトル)の写真が掲載されており,この商品が,請求人が実際に使用している商品といえるから,請求人が実際に使用している商品と,本願商標の指定商品は,同一といえる。
(4)使用している標章について
ア 甲1の1においては,表紙を1頁として数えて4頁目に,「天然水素水」と「VanaH」の文字が上下2段に横書きされている。ただし,「VanaH」の文字は,「天然水素水」の文字に比して3倍程度の大きさで書されているものである(以下,同様の構成からなる標章を「天然水素水\VanaH」と表す。)。
ここで使用されている「天然水素水」の標章は,通常の明朝体と思われる書体で書されており,標準文字で表された本願商標「天然水素水」と同視し得るものといえる。
ただし,「VanaH」の文字は,「天然水素水」の文字に比して約3倍もの大きさで書されているから,「天然水素水\VanaH」に接する需要者に対しては,「天然水素水」の標章よりも「VanaH」の方が強い印象を与えるというのが自然である。
加えて,「天然水素水」は,前記1のとおり,自他商品を識別する機能を有しないものである一方,「VanaH」は,特段の語義を有しない造語と認められるものであり,自他商品を識別する機能は比較的強いから,この点からも,「天然水素水\VanaH」に接する需要者に対しては,「天然水素水」の標章よりも「VanaH」の方が強い印象を与えるというのが自然である。
このような「天然水素水\VanaH」は,例えば,甲1の4,1の7,1の8?11,2の1?3,3の3?23,5,6の2,7の4?14,8の3にも見受けられる。
イ 甲1の1において,表紙を1頁として数えて5頁に,「『天然水素水VanaH』は,富士山国立公園内の地下深層から採水されます。富士山に降る雪や雨が厚さ1000メートルにも及ぶ七層からなる玄武岩層を永い歳月を経て天然水素水になります。」との記載がある。6頁には「世界が欲しい水は,富士山が生んだ天然水素水。」との記載がある。20頁には「富士山深層から生まれる天然水素水。」との記載がある(アンダーラインは,当方が記載。)。
同様の記載は,例えば,甲1の5及び1の6に「富士山深層から生まれる天然水素水。」,甲1の7及び1の8に「高濃度の天然水素,天然バナジウムを多く含むVanaHは,富士山麓の特有な地質構造が育みつづけてきた天然水素水。」,甲1の9に「富士山に降り積もる雪や雨が玄武岩層にしみ込み永い年月を経て天然水素水となる。」,甲6の1に「『VanaH』は,富士山麓の地下深層から採水された水を使った天然水素水。」がある。
これらにおいて使用されている「天然水素水」の標章は,通常の明朝体又はゴシック体と思われる書体で書されており,標準文字で表された本願商標「天然水素水」と同視し得るものといえる。
ただし,上記のように使用される「天然水素水」の標章は,商品を説明する文章中において,他の語とフォントや色を変えずに,また,カギ括弧で囲うこともなく使用されているから,商品を説明する文章に埋没しているものといえる。
そして,「天然水素水」の語が「自然のままの,水素を含んだ水(天然の水素水)」程度の意味合いを容易に認識させるものであることを踏まえれば,これらの「天然水素水」の標章に接する需要者は,「天然水素水」を,商標として認識するというよりも,商品の品質を説明するための語として認識するとみるのが自然である。
ウ 甲1の1において,表紙を1頁として数えて5頁に,「天然水素水VanaH」の記載がある。同様の記載は,例えば,甲1の3?6,2の4,3の3?7,6の1などに見受けられる。
これらにおいて使用されている「天然水素水」の標章は,通常の明朝体又はゴシック体若しくはこれらに類するフォントと思われる書体で書されており,標準文字で表された本願商標「天然水素水」と同視し得るものといえる。
ただし,「天然水素水」は,前記1のとおり,自他商品を識別する機能を有しないものである一方,「VanaH」は,特段の語義を有しない造語と認められるものであり,自他商品を識別する機能は比較的強いから,「天然水素水VanaH」に接する需要者に対しては,「天然水素水」の標章よりも「VanaH」の方が強い印象を与えるというのが自然である。
エ 甲1の4において,請求人が使用する商品の容器(ペットボトル)の写真が掲載されており,これには,富士山の写真を背景に白色で書された「VanaH」の文字の下に,黄土色のように見える色で,やや特殊な書体で,「VanaH」の文字の3分の2程度の大きさで,「天然水素水」の文字が記載されている(以下,商品の容器(ペットボトル)に使用されるこの態様の標章を,「VanaH\天然水素水(ペットボトル)」という。)。そして,請求人が使用する商品の容器(ペットボトル)の写真(映像)は,パンフレット,チラシ,新聞広告,テレビコマーシャルなどに表示され,その容器には,「VanaH\天然水素水(ペットボトル)」の標章が使用されている(新聞広告については,モノクロの証拠が提出されている。)。
この「天然水素水」の文字は,通常の明朝体や通常のゴシック体とは異なる,やや特殊なフォントが使用されているものの,「天然水素水」の文字が書されていることは容易に看取できるから,本件において商標法3条2項の要件を具備するか否かを判断するに際しては,本願商標と同視し得る標章が使用されているといえないこともない。
ただし,「VanaH」の文字は,商品(ペットボトル)において,比較的目立ちやすい中央に,大きく,青地に白色という,比較的着目されやすい色で書されている一方,「天然水素水」の文字は,その下段に,「VanaH」の約3分の2程度の大きさで,青地に黄土色という,比較的着目され難い色で書されているから,「VanaH\天然水素水(ペットボトル)」に接する需要者に対しては,「天然水素水」の標章よりも「VanaH」の方が強い印象を与えるというのが自然である。
加えて,「天然水素水」の語は,前記1のとおり,自他商品を識別する機能を有しないものである一方,「VanaH」は,特段の語義を有しない造語と認められるものであり,自他商品を識別する機能は比較的強いから,この点からも, 「VanaH\天然水素水(ペットボトル)」に接する需要者に対しては,「天然水素水」の標章よりも「VanaH」の方が強い印象を与えるというのが自然である。
(5)請求人以外の者が,「自然のままの,水素を含んだ水」である商品を表す語として,「天然水素水」を使用していることについて
前記1(1)?(5)のとおり,請求人以外の者が,「自然のままの,水素を含んだ水」である商品を表す語として,「天然水素水」を使用している。
(6)本願商標が商標法3条2項の要件を具備するか否かについて
以上(1)?(5)で認定した事実によれば,上記(3)(4)のとおり,請求人は,本願商標と同視し得る標章を,本願商標の指定商品と同一の商品に使用していると認められる。
そして,テレビコマーシャルや新聞,スポンサー提供や協賛番組を通じて請求人が行っている「水素を含有するミネラルウォーター」の広告宣伝により,本願商標は,一定程度,需要者に知られているものと認められる。
しかしながら,新聞広告に関しては,約4年半の間,全国での広告は2回にとどまり,1回のみの広告にとどまっている県も多く見受けられるから,これによって,本願商標が,広い範囲の需要者の記憶に強くとどまったとはいい難い。
雑誌の広告については,わずか2種類の雑誌に,1回のみ,広告されたにとどまっているし,うち1の雑誌については,流通範囲が山梨県内にとどまるものと推測される。
パンフレットは3種類,チラシは8種類,ポスターについては14種類も作成されていることが認められるが,これらの配布・掲示範囲や,掲示されている様子が確認できないから,パンフレット・チラシ・ポスターによって,どの程度の範囲の需要者に,本願商標が知られるに至ったのか,確認することができない。
さらに,本願商標が使用された商品の生産量,販売数量,販売先(流通範囲)に関する証拠は提出されていないから,本願商標が使用された商品がどの程度生産され,どの範囲にまで流通し,販売され,2011年で2,582,632キロリットル生産されるミネラルウォーター類において,どの程度のシェアを占めているのか,確認できず,どの程度の範囲の需要者に,どの程度,本願商標が知られるに至ったのか,確認することができない。
加えて,実際に使用されている標章は,前記(4)ア,ウ,エのとおり,いずれも「VanaH」と共に使用されているところ,「天然水素水」の語は,自他商品を識別する機能を有しないものである一方,「VanaH」は,特段の語義を有しない造語と認められるし,また,「VanaH」の方が「天然水素水」よりも大きく書されていたり,上段に書されていたり,着目されやすい色で書されていたりするものも存するから,「VanaH」の方が需要者に対し強い印象を与え,「天然水素水」の文字は比較的印象が弱い印象を与えるにすぎないといわざるを得ない。
また,前記(4)イのとおり,請求人自身が,「天然水素水」の標章を,商標としてではなく,商品の品質を説明するための語であることを需要者に認識させるものとして使用している場合もある。
以上のことや,請求人以外の者が,「自然のままの,水素を含んだ水」である商品を表す語として,「天然水素水」を使用していること,ミネラルウォーターは,国内で極めて大量に生産され,需要者にとって,近しい販売店で目にすることの多い,日常的に親しまれたものであり,多数の種類の商品が販売され,老若男女の幅広い一般的な者が需要者層であることを踏まえて総合考慮すると,本願商標は,使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものということができない。
したがって,本願商標は,商標法3条2項の要件を具備するものではない。

3 請求人の主張について
請求人は,「証拠のほとんどは,『天然水素水』の文字が単独で使用されているものではなく,本願商標以外の『VanaH』の文字が付されて使用されている,と拒絶査定で指摘されているが,本願商標『天然水素水』は『VanaH』とは独立した商標として認識されるべき」旨主張する。
当審判体は,「天然水素水」の標章が「VanaH」と共に使用されていることをもって,「天然水素水」が「VanaH」と不可分一体のものとして使用されているとか,本願商標と同視し得る標章が使用されているとはいえないとか,「天然水素水」の標章のみが注目されることはない,と認定するものではない。
しかし,実際に使用されている標章は,いずれも「VanaH」と共に使用されているところ,「VanaH」の自他商品を識別する機能は「天然水素水」よりも強いし,また,「VanaH」の方が「天然水素水」よりも大きく書されていたり,上段に書されていたりするものも存するから,「VanaH」の方が需要者に対し強い印象を与え,「天然水素水」の文字は比較的弱い印象を与えるにすぎないといわざるを得ない。
なお,実際に使用されている標章が常に「VanaH」の文字と共に使用されていることのみをもって,本願商標が商標法3条2項の要件を具備しないものと認定,判断しているわけではないことは,前記2のとおりである。

そのほか,請求人は縷々主張するが,いずれも採用の限りでない。

4 結語
以上の次第であるから,本願商標が商標法3条1項3号に該当し,かつ,同条2項の要件を具備するものとはいえないとして本願を拒絶した原査定は,妥当であって,これを取り消すことはできない
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2012-12-14 
結審通知日 2012-12-17 
審決日 2013-01-07 
出願番号 商願2011-10460(T2011-10460) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (X32)
T 1 8・ 17- Z (X32)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大渕 敏雄豊田 緋呂子 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 守屋 友宏
小川 きみえ
商標の称呼 テンネンスイソスイ、テンネンスイソ、スイソスイ 
代理人 土橋 博司 

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